Intel第8世代の「Core i7 8700K」と、圧倒的なマルチスレッド性能を持つAMDのRyzenの第2世代「Ryzen 7」の両者の比較記事です。(2019/3/20更新)
参考サイト
簡易比較表
最新の第8世代Core i7と第2世代Ryzenの主要スペックを表にまとめました。
今回の記事では「Core i7 8700K」と「Ryzen 7 2700X」の二つを詳しく見ていきますが、下位モデルも参考に載せています。
CPU名称 |
Ryzen 7 2700X
|
Ryzen 7 2700
|
Core i7 8700K
|
Core i7 8700
|
---|---|---|---|---|
コア/スレッド数 |
8/16
|
8/16 | 6/12 | 6/12 |
定格クロック
|
3.7GHz | 3.2GHz | 3.7GHz | 3.2GHz |
TB時クロック(最大)
|
4.3GHz | 4.1GHz | 4.7GHz | 4.6GHz |
TDP(消費電力) | 105W | 65W | 95W | 65W |
ベンチマークスコア | 17300 | 15900 | 16100 | 15300 |
内蔵GPU | × | × | UHD 630 | UHD 630 |
CPUクーラー付属 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
参考価格 | 34,000円 | 31,000円 | 44,000円 | 39,000円 |
※ベンチマークスコアは、PassMarkのスコアを参考にしたおおよその値。
※参考価格は2019年3月時点での価格.comの最安値。
初代のRyzen 7は、末尾XのモデルにはCPUクーラーが付属しませんでした。しかし、第2世代では全モデルで付属しています。
Core i7は8700には付属していますが、8700Kには付属していませんので、まずここで少し差が生まれました。
また、8700の付属しているCPUクーラーも質が高いとはいえないのに対して、Ryzen 7に付属しているものは静音性・冷却性共にそこそこ良いものが付属しています。
ベンチマークスコアに関しては、「Ryzen 7 2700X」がトップの性能となっています。
ただ、TDPが105Wと少し高めになっているので、ワットパフォーマンスとしては他モデルと同じか少し劣る程度になっています。
CPU性能
CPU性能について、今回はCinebench R15 のスコアを基に見ていきます。
Cinebench R15 は、CPUに静止画のレンダリングをさせ、その完了に掛かった時間などでスコアを決定するベンチマークソフトです。
マルチスレッド性能はもちろん、シングルコア性能の算出にも対応しています。
Cinebench R15 シングルスレッド
【シングルスレッド性能】
CPU名称 |
スコア
|
---|---|
Core i7 8700K | 191 |
Ryzen 7 2700X | 179 |
シングルスレッド性能が高いと、軽い処理の速度が速くなる他、マルチスレッド処理への最適化不足の影響を受けにくいです。
こちらはCore i7 がリードしています。
Ryzenも初代から比較すると向上していますが、シングルスレッド性能は依然Core i7 有利なようです。
Cinebench R15 マルチスレッド
【マルチスレッド性能】
CPU名称 | スコア |
---|---|
Ryzen 7 2700X | 1768 |
Core i7 8700K | 1428 |
マルチスレッド性能がが高いと、マルチタスクの処理やエンコードの速度が速くなります。
こちらはRyzen 7 が大きくリードしています。「Ryzen 7 2700X」は、約4万円でこのマルチスレッド性能は驚異的です。
ただ、「Ryzen 7 2700X」はTDPが105Wで、「Core i7 8700K」の95Wより高いのでその点は注意です。
ただやはりマルチスレッド性能は、Ryzen側の圧勝と言っても良いでしょう。
CPU性能まとめ
CPU名称 |
Ryzen 7 2700X
|
Core i7 8700K
|
---|---|---|
コア/スレッド数 |
8/16
|
6/12 |
定格クロック
|
3.7GHz | 3.7GHz |
TB時クロック(最大)
|
4.3GHz | 4.7GHz |
TDP(消費電力) | 105W | 95W |
ベンチマークスコア | 17300 | 16100 |
シングルスレッドスコア | 179 | 191 |
マルチスレッドスコア | 1768 | 1428 |
内蔵GPU | × | UHD 630 |
CPUクーラー付属 | 〇 | × |
参考価格 | 40,000円 | 41,000円 |
※シングル・マルチスレッドスコアはCinebenchi R15の数値
Ryzen 7 はマルチスレッド性能、Core i7 はシングルスレッド性能特化のCPUという事がわかります。
ベンチマークスコアはRyzen 7の方が高いものの、TDPが高い点を考慮するとCPU単体としてのコスパはほぼ差が無いと言えるでしょう。
となるとCPU本体以外の面での比較になりますが、これは概ねRyzen 側の方が有利といった印象です。
差を分けたのは、CPUクーラーの有無です。
Core i7 8700KにはCPUクーラーが付属しないのに対し、Ryzen 7 2700XにはCPUクーラーが付属します。
更にレビュー等を見てみると、Ryzen側の付属クーラーはそれなりに質の良いものである事が判っています。
別途で用意するとなると、TDP95Wクラスなら最低でも2000円程度は必要となるので、この差は結構大きいと思います。
もう一つ大きな違いとして内蔵GPUの有無があります。が、
しかし、このクラスのCPUだと増設用のグラフィックボード搭載が当たり前なので、コスパ比較にはほぼ影響なしとしました。
よって、全体的な商品としてのコスパではRyzenの方が若干ですが上といった印象を受けました。
グラフィック性能(ゲーミング性能)
CPU性能の次はゲーミング性能を見ていきます。同じグラフィックボードを使用した場合のゲームプレイ時の1秒間のフレームレート数(以下:FPS)を比較する形になります。実は前世代Ryzenには、Intel製のCPUよりグラフィックボードの性能を十分に発揮出来ないといった問題が確認されていました。その点にも注目していきましょう。
Ryzen 7のゲーミング性能がCore i7より低い
シングルスレッド性能の低さや最適化不足が問題と言われていますが、詳しい原因は判明していません。
この問題があるせいで、初代Ryzenは高いマルチスレッド性能を持っていながらもCore i7安定と言われていました。
今回はハイエンドGPUの「Geforce GTX 1080 Ti」と併せての使用で行われたテストを基に見ていきます。
その他詳しいテスト環境は、下記参考サイトに記載されています。
PUBG[PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS]

まずは、3Dのバトルロワイヤル系のFPS/TPSゲームの通称「PUBG」の平均FPSを見ていきます。
【PUBG平均FPS】
CPU名称 |
平均FPS
|
---|---|
Core i5 8400 | 137.2 |
Core i7 8700K
|
136.0 |
Ryzen 5 2600X | 128.9 |
Ryzen 7 2700X | 126.3 |
Ryzen 7 1800X | 122.8 |
Ryzen 5 1600X | 115.5 |
Ryzen 7 1700 | 108.7 |
「Ryzen 7 2700X」よりも「Core i7 8700K」の方が約7.6%良い数値を出しています。
依然としてCore i7が優勢という事が確認出来ます。
総合ゲーミング性能レート
20種のゲームでのフレームレート数の確認テストを行った結果から、平均FPSを算出したものを見ていきます。
これで、総合的なゲーミング性能の良し悪しの比較ができます。
【総合ゲーミング性能】
CPU名称 |
平均FPS
|
---|---|
Core i7 8700K | 110.1 |
Core i7 8400
|
108.1 |
Ryzen 7 2700X | 100.3 |
Ryzen 5 2600X | 97.8 |
Ryzen 7 1800X | 95.1 |
Ryzen 5 1600X | 92.7 |
Ryzen 7 1700 | 90.9 |
こちらも「Core i7 8700K」が「Ryzen 7 2700X」をリードしている状況です。
やはりCore i7が優勢となっています。
ゲーミング性能まとめ
CPU名称 | Ryzen 7 2700X | Core i7 8700K |
---|---|---|
PUBG平均FPS |
126.3
|
136.0 |
総合平均FPS
|
100.3 | 110.1 |
内蔵GPU | × | UHD 630 |
参考価格 | 41,000円 | 40,000円 |
FPSを見ると一目瞭然ですが、ゲーミング方面関連では、Core i7のが全面的に有利です。
Ryzenのグラフィックボードの性能を十分に発揮出来ない問題は、第2世代になっても未だ健在のようでした。
数値の向上は見られるものの、CPU自体の性能向上分といった程度でした。根本的な問題はそのままに思えます。
ただ、これはCore i7と比較した場合の話で、Ryzen 7の数値も決して低い数値ではないのでその点は注意しましょう。
まとめ(用途別評価)
ゲーミング用途ならCore i7
ゲーミング性能がCore i7の方が明らかに良いため、ゲーミング用途ならCore i7安定です。
今回の記事では触れていませんが、Core i7の方がFPSの上げ下げの幅が狭く、安定して動作していたという点もありました。
また、Core i7は内蔵GPUを搭載しているため、グラフィックボードが故障してしまった場合などに繋ぎの製品が必要無い点もメリットです。
マルチタスク処理・動画エンコード用途ならRyzen 7
Ryzen 7はCore i7よりもマルチスレッド性能では大きく優れています。
そのため、マルチスレッド性能が重視される処理を行う用途ではRyzen 7が有利と言えます。
純粋なマルチスレッド性能が必要とされる処理で代表的なのはCPU動画エンコードです。
その他、複数のアプリケーションを同時に動作させるマルチタスクの処理に関しても、マルチスレッド性能が必要とされる処理なのでRyzen 7が有利となるでしょう。
ライブ配信用途はちょっと複雑
最近流行しているライブ配信用途についてですが…これはちょっと難しいです。
ライブ配信は、「配信ソフト」「ブラウザ」「コメントビューワー」等のマルチタスク環境で行うのが基本なので、その点ではRyzen 7が優位に見えます。
しかし、最近非常に人気なコンテンツの一つとして「ゲーム配信」があります。
ゲーム配信
ゲーム配信は、その名の通りゲームのプレイ画面を配信するものです。ゲーム配信の場合は「Ryzen 7が優れるマルチタスク処理性能」と「Core i7が優れるとするゲーミング性能」両方が必要となります。そのため、どちらが有利と判断しにくいです。
ただ、最新の3Dゲームの処理より重いものはそうそうないはずなので、Core i7が安定に見えますが、正直断言は出来ません。
総評
どちらも良さのある素晴らしいCPU
まず、「Core i7 8700K」も「Ryzen 7 2700X」もどちらも素晴らしいCPUです。
「Core i7 8700K」のゲーミング性能の高さも、「Ryzen 7 2700X」のマルチスレッド性能の高さも魅力的で、一概にどちらが良いとは正直言えません。ただ、安定という意味では「Core i7 8700K」だと感じました。
理由は、やはりRyzenのゲーミング性能の低さです。現在はPCゲームが世界的に流行しており、ゲーミング用途重視でPCを求める人も非常に多いです。その点を考えるとCore i7の方が需要はあると思いました。
ただ、Ryzenのゲーミング性能も決して低いという訳ではないので、正直好みと言っても良いレベルです。双方良さがあり良い感じに拮抗しています。ただ、「安定・無難」という意味なら「Core 8700K」といった感じです。
まとめ
- 「ゲーミング用途」「安定・無難」は Core i7 8700K
- 「マルチタスク処理メイン」「コスパ特化」は Ryzen 7 2700X
- 両者とも非常に素晴らしいCPU
それでは、記事はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。