ハイエンドGPU「Radeon VII」の評価・まとめ記事です。ゲーミング向けのシリーズにラインナップされているので、ゲーミング面で見ていきます。
世界初の7nmプロセス採用のゲーミングGPUとの事ですが、その実力はどうなのか見ていきます。(ちなみに2019年2月現在は14nmが主流)
本記事のに内容は、記事執筆時点(2019年2月)のものです。現在は異なる可能性があるため注意してください。
簡易比較表
「Radeon VII」とその他の現在主要なGPUとの簡易比較表です。 価格は記事投稿時点での、主に価格.com最安値となっています。
GPU名称 |
3DMark
|
メモリー
|
TDP |
ワット
パフォーマンス
|
コスパ |
価格
|
---|---|---|---|---|---|---|
RTX 2080 Ti | 33500 | 11GB GDDR6 | 250W | 134 | 0.197 | 170000円 |
RTX 2080 | 27900 | 8GB GDDR6 | 215W | 129.8 | 0.279 | 100000円 |
GTX 1080 Ti | 27800 | 11GB GDDR5 | 250W | 111.2 | 0.278 | 100000円 |
Radeon VII | 27800 | 16GB HBM2 | 300W | 92.7 | 0.299 | 93000円 |
RTX 2070 | 22400 | 8GB GDDR6 | 185W | 121.1 | 0.345 | 65000円 |
GTX 1080 | 22000 | 8GB GDDR5 | 180W | 122.2 | 0.338 | 65000円 |
RTX 2060 | 18300 | 6GB GDDR6 | 160W | 114.4 | 0.381 | 48000円 |
GTX 1070 | 18000 | 8GB GDDR5 | 150W | 120 | 0.4 | 45000円 |
GTX 1660 Ti | 16000 | 6GB GDDR6 | 120W | 133.3 | 0.410 | 39000円 |
GTX 1060(6GB) | 12900 | 6GB GDDR5 | 120W | 107.5 | 0.461 | 28000円 |
GTX 1050 Ti | 7700 | 4GB GDDR5 | 75W | 102.7 | 0.428 | 18000円 |
参考 UL BenchmarksUL Benchmarks
GTX 1080 TiやRTX 2080と同程度
3DMarkでの性能はGeForceのGTX 1080 TiやRTX 2080と同じくらいになっています。文句無しのハイエンドです。Radeonのゲーミング性能がGeForceより低めとはいっても、まず困る事はない性能だと思います。
コスパは悪くないが、TDPが高すぎる
単純な性能と価格のコスパは、発売から日が浅くて価格の高い今でも、RTX 2080よりもやや上なので悪くないです。
ですが、とにかくTDP(消費電力の目安)が高い。300Wは異常です。その分の電源容量も確保しないといけないし、熱も気になるし、ここまで高いと電気料金も気になってくる…。
7nmプロセス(小型プロセス)の大きな利点の一つには低消費電力化があった気がするんですが、何かの間違いだったのかなと思ってしまうレベル。
ワットパフォーマンスが悪い
300WとこれだけTDPが高いと、当然ワットパフォーマンスは悪いです。300Wでゲームで「悪くないワットパフォーマンス」と言われるためには、RTX 2080 Tiをも超える性能が必要ですからね。
最近のGeForceは、ワットパフォーマンスが飛躍的に向上してきているので、その事も考慮してワットパフォーマンスが悪い事は印象が良くないですね。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。
実際にゲームを動作させた際のFPS数で比較されます。
今回は、17種類のゲームでのデータを基に見ていきます。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 2080 Ti | 198.3 |
RTX 2080 | 184.5 |
GTX 1080 Ti | 177.5 |
RTX 2070 | 163.9 |
Radeon VII | 163.4 |
GTX 1080 | 156.6 |
RTX 2060 | 149.9 |
GTX 1070 Ti | 149.1 |
RX Vega 64 | 147.6 |
RX Vega 56 | 137.0 |
GTX 1070 | 134.4 |
GTX 1060(6GB) | 104.2 |
RX 580 8GB | 103.0 |
GTX 1060(3GB) | 98.3 |
RX 570 GB | 90.7 |
GTX 1050 Ti | 65.2 |
GTX 1050 | 51.5 |
ゲーミング性能は RTX 2070 と同程度
ゲームでの実測値は、「RTX 2070」とほぼ同程度という結果でした。3DMarkで見るよりも大分落ちる印象ですね。
ハイエンドGPUに最も求められるのは「ゲーミング性能」だと思うので、これはいただけない。まぁ、GeForceよりRadeonがゲーミング性能が低いのは元々なんですが。
「RTX 2070」が6万円台中盤で買えるので(2019年3月15日時点)、9万円以上する「Radeon VII」のコスパは凄く悪いです。もちろん性能自体は文句無しのハイエンドの高性能ですが、あえて選ぶ理由は正直無さそうです。
しかも、GeForceのRTXシリーズは、現状ゲーミング性能にほとんど関係ないコアを搭載し、その分のコスト(価格の上昇)がありながらの数値です。
「Radeon VII」はレイトレーシング機能は当然持っておらず、他に何か新しい機能を利用できるコアも搭載していません。7nmプロセスにしかない利点があれば別だったかもしれないですが、仕様上はそのようなものは無いように見えます。正直褒めるところが無いです。
まとめ
良い点・悪い点
- 世界初の7nmプロセス採用のゲーミングGPU(話題性)
- ハイエンドGPU
- 非常に高い倍精度(FP64)の計算能力
- ワットパフォーマンスが悪い
- TDPが300Wとめちゃくちゃ高い
- ゲーミング性能が低い(同価格帯のGeForceと比較して)
- 価格が高い(2019年3月15日時点で9万円以上)
総評
正直微妙、ゲーム用途であえて選ぶ必要は無さそう
見出しの通り、正直魅力をあまり感じません。
TDPは300Wとめちゃくちゃ高いし、その割には性能こそ高いものの、ゲーミング性能は「RTX 2070」と同程度。しれっとメモリーを16GBも積んでいるのだから、もう少し頑張って欲しかったですね
倍精度(FP64)の計算能力は非常に高い
ゲーミング面では正直微妙だったRadeon VII。しかし、主に金融や研究などで役立つと言われる高度な計算処理、倍精度(FP64)においては非常に高い計算能力を持っています。倍精度の計算能力は、たとえばRTX 2080は約0.314TFLOPSなのに対し、Radeon VIIは約3.46TFLOPSと10倍以上です。ゲーミングGPUとしてラインナップされていますが、その能力は明らかにゲーム向けではありません。倍精度(FP64)が活きる分野では高い能力を発揮する点は留意しておくべきです。
これからの値下がりに期待
Radeonでは、初動の価格は高くて、そこから数万円値下がりというのがよくあります。値下がり後の価格によっては、選択肢に入るかもしれません。
具体的には、同程度のゲーミング性能の「RTX 2070」の6万円台までは下がらないと話にならない気がします。
TDPが300Wということを考えると、更に一段安い5万円台にならないと厳しいかもしれない…。
記事はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。