GPUの現在の価格について【2022年8月版】

2022年8月時点のデスクトップ向けGPUの現在価格についてのまとめです。予測は出来た部分ですが、ハイエンドGPUの値下がりが大きい月になりました。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年8月24日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

概要

GPU価格の動向を調査した記事です。GPUに値下がりの兆候が見えた2022年2月頃から毎月更新しながら投稿しています。

具体的には、現在のGPUの市場価格と予想適正価格との差を調べて確かめていきます。また、先月の同時期にも同様の記事を投稿したので、そちらの結果も利用して先月からの価格の動向も同時に確認していきます。

数ヶ月ほど前から引き続き、懸念はやはり円安と新世代GPUの発売が近付いている点です。

円安については、記事執筆時点(2022年8月時点)だと約137円程度となっています。一時はもっと下がり円高傾向の時期もありましたが、少し戻して結局は先月の同時期とほぼ同じ水準になっています(約136円)。

全体の価格としては、次世代GPUの登場がより近付き、GPUメーカーやAIBパートナーによる積極的な既存のGPUの在庫処分が進んでいます。特にハイエンド帯はその動きが活発です。

先月にはNVIDIAによるRTX 3080 12GB以上のモデルの値下げが行われた他、噂レベルながらNVIDIAが値下げが実施されたGPUについて買い取りを行ったり、RTX 3080 12GBの再生産を始めたなどの情報も出ています。

情報の真偽は置いておくとしても、8月のハイエンド帯の値下がりは非常に大きかったのは事実です。正直、ひと月でここまで下がるとは私には予想外でした。

とはいえ、以前としてハイエンド帯については待てるなら次世代を待った方が良いとは思うものの、現在ゲーミングPCを所有していない人が高性能PCを求めるなら選択肢としては無くはないくらいの価格には入ってきているかもしれません。

何にせよ、実際のデータを見ていきましょう。

適正価格の計算と市場価格について

本記事では、現在のGPUの販売価格に加え、本来の予想適正価格を載せています。

その計算方法ですが、それぞれのGPUにはメーカーの希望小売価格(ドル)が大体公開されているため、そこから為替や流通マージンなどを考慮して算出しています。内訳は、今回の記事では1ドル137円(記事執筆時点のおおよその為替レート)で計算し、流通などのマージンは全て合わせて雑に20%としています。しっかりした比較ではないため、その点はご了承ください。

市場価格は筆者が各ショップや価格比較サイトを見回った際に、すぐに購入可能だった(在庫がある)ものの最安値です。また、特別なセール等で大幅に安い価格で販売されていたりすることもありますが、それが明らかな場合には筆者の判断で除外することもあるので、あらかじめご了承くださいませ。

NVIDIA:GeForce

まずはNVIDIAのGeForceです。RTX 3080 12GB以上のモデルの希望小売価格は値下げ後のものを記載しています。

GPU希望
小売価格
(値下げ後)
国内予測
適正価格
市場価格
※2022年
8月24日時点
適正価格
との差
先月の価格
※2022年
7月24日時点
先月比
GeForce RTX 3090 Ti1,499ドル¥246,636¥195,000-20.9%¥219,000-11.0%
GeForce RTX 30901,299ドル¥213,556¥178,000-16.6%¥188,000-5.3%
GeForce RTX 3080 Ti1,099ドル¥180,676¥118,003-34.7%¥148,500-20.5%
GeForce RTX 3080 12GB799ドル¥131,356¥98,303-25.2%¥119,800-17.9%
GeForce RTX 3080 10GB699ドル¥114,916¥94,800-17.5%¥99,800-5.0%
GeForce RTX 3070 Ti599ドル¥98,476¥79,499-19.3%¥80,800-1.6%
GeForce RTX 3070499ドル¥82,036¥69,800-14.9%¥71,800-2.8%
GeForce RTX 3060 Ti399ドル¥65,596¥64,000-2.4%¥65,800-2.7%
GeForce RTX 3060329ドル¥54,088¥46,800-13.5%¥46,8000%
GeForce RTX 3050249ドル¥40,936¥31,800-22.3%¥35,800-11.2%
GeForce RTX 2060 12GB299ドル¥49,156¥37,800-23.1%¥36,480+3.6%
GeForce RTX 2060 6GB299ドル¥49,156¥35,480-27.8%¥35,980-1.4%
GeForce GTX 1660 Ti279ドル¥45,868¥32,980-28.1%¥35,800-7.9%
GeForce GTX 1660 SUPER229ドル¥37,648¥25,800-31.5%¥28,800-10.4%
GeForce GTX 1650 GDDR6149ドル¥24,496¥22,880-6.6%¥22,626+1.1%
GeForce GTX 1630?ドル¥18,800¥20,800-9.6%

まずはGeForceですが、ついに全モデルが予想適正価格を下回りました(希望小売価格が不明なものを除く)。今でも人気の「RTX 3070」や「RTX 3060 Ti」もじわじわと価格が下がってきています。

全体の値動きとしては、ハイエンドGPUの値下がりが大きいです。特に「RTX 3080 Ti」と「RTX 3080 12GB」は先月から2割前後と大きく値下がりしています。多少値下がりすることは予測できましたが、さすがにひと月でここまで下がるとは予想外でした。

額としては「RTX 3080 Ti」は先月から約3万円、「RTX 3080 12GB」は約2万円の値下げとなりました。「RTX 3080 Ti」に関しては予想適正価格を約34.7%も下回るほどの下落となっており、次世代GPUの到着までに何としても在庫を捌きたいという意図が見えます。

ここまで価格が下がれば現状ではコスパは悪くないですし、今出来るだけ高性能なゲーミングPCを求めるなら悪くはないかなというレベルにはなったと思います。しかし、次世代GPUの存在を考えるとやはりおすすめはできないかなという印象。上記二つはRTX 3090などと違ってメモリも圧倒的なものがある訳ではないですし、それならRTX 4080を待った方が明らかに良い可能性が高いと思います。

ハイエンド以外については、まず比較的人気の「RTX 3080」「RTX 3070」「RTX 3060 Ti」「RTX 3060」は、値下がりは続いているものの動きは小さかったです。先月から0%~5%の値下がりでした。予想適正価格を20%以上下回るモデルも多くなっている中、これらの人気モデルはまだ17.5%未満に収まっています。未だに一定の需要があるのか値下げは小刻みです。

いくら次世代GPUが近付いているから待った方が良いとは言われているものの、今現在ゲーミングPCを所有していない人からすれば、今ゲームがしたいのに数ヶ月から半年待てというのは厳しい話です。そういう人にとっては、恐らく現状コスパの良い先に挙げたモデルが対象となるはずで全く売れなくなることがないため、無理な値下げが行われにくいのかなと思います。

実際、ハイエンドモデルが大きく値下がりしたとはいえ、今でも最もコスパが良さそうなのは「RTX 3070」だと思います。また、仮に「RTX 4070」が「RTX 3070」と同じ価格設定だったとしても、その場合には予想適正価格は8万円を超えます。「RTX 3070」が仮に5万円台になろうものなら普通に次世代GPUを考慮しても安さ的に暫くは選択肢に入れても良いレベルになると思うので、6万円台に突入したこれからの値下げは鈍化してしまうのかなと感じます。

ミドルレンジ下位で注目の値下げが大きかったモデルは「RTX 3050」です。先月から約11.2%値下がりし、現在では最安31,800円で購入することができます。性能は高いとはいえず、電力効率も良くないですが、3万円クラスのGPUが次世代GPUで置き換えられるのは相当先になると思うので、かなり選び易くなったと思います。

安さとコスパ特化で数ヶ月前から目立っている「GTX 1660 SUPER」も値下がりは続いており一見魅力的ですが、機能面で注意が必要です。RTX 30シリーズでは対応している「AV1デコード」「DLSS」「ハードウェアレイトレーシングアクセラレーション」の3つが無いのはやはり将来性的に大きなデメリットとなる可能性は留意する必要があります。性能の低さだけなら安さの代償として我慢できると思いますが、機能の有無はどうしようもないので、数千円高くても「RTX 3050」を選ぶ方が個人的にはおすすめです。

AMD:Radeon RX

次にAMDのRadeonです。

GPU希望
小売価格
国内予測
適正価格
市場価格
※2022年
8月24日時点
適正価格
との差
先月の価格
※2022年
7月24日時点
先月比
Radeon RX 6950 XT1,049ドル¥180,676¥149,800-17.1%¥159,800-6.3%
Radeon RX 6900 XT999ドル¥164,236¥130,673-20.4%¥133,064-1.8%
Radeon RX 6800 XT649ドル¥106,696¥95,800-10.2%¥117,480-18.5%
Radeon RX 6800579ドル¥95,188¥85,800-9.9%¥107,980-20.5%
Radeon RX 6750 XT549ドル¥90,256¥69,800-22.7%¥73,800-5.4%
Radeon RX 6700 XT479ドル¥78,748¥62,980-20.0%¥67,480-6.7%
Radeon RX 6650 XT399ドル¥65,596¥49,980-23.8%¥54,480-8.3%
Radeon RX 6600 XT379ドル¥62,308¥45,800-26.5%¥49,800-8.0%
Radeon RX 6600329ドル¥54,008¥35,152-35.0%¥37,800-7.0%
Radeon RX 6500 XT199ドル¥32,716¥21,010-35.8%¥24,800-15.3%
Radeon RX 6400149ドル¥24,496¥19,800-19.2%¥18,780+5.4%

AMDのRadeonもついに全モデルが予想適正価格を下回りました。これでNVIDIAとAMDのGPU全てが予想適正価格を下回ることとなり、市場全体が在庫処分モード全開という感じになっています。

Radeonで特に気になるのは、やはり「RX 6800」と「RX 6800 XT」です。これまで中々価格が下がらなかった2モデルですが、先月からどちらも約20%程度と一気に値下がりしました。どちらも先月から2万円程度の値下がりです。

「RX 6800 XT」はハイエンドの中では電力効率も良いモデルということもありますし、今高性能なゲーミングPCを買うなら「RTX 3080」よりも若干優位かもと思える価格まで下がりました。ハイエンド帯はやはり次世代GPUを待てるなら待った方が良いとは思いますが、恐らく次世代のハイエンドGPUは暫くは10万円超えが一般的になると思うので、どうしても今高性能なゲーミングPCが欲しいなら悪くはないかもくらいの域にはなったと思います。

そして、やや評価が難しいのが「RX 6800」です。先に言っておくと、BTOでの採用は皆無に近いので、ほぼ自作の人専用です。性能はハイエンドとミドルハイの間くらいの微妙な位置付けで、TDPも250Wとハイエンドと比べるとやや少ないのが魅力で、効率面ではRTX 3070にも劣らない素晴らしいものを持っていますが、8万円台中盤と微妙な価格のため評価が難しいです。

次世代GPUを考えると微妙に見える価格だけど、新製品も発売から暫くは高そうなことを考えると、8万円台なら悪くはないか…?的ななんとも言えないモデルです。

ただ、RTX 3070 Tiよりは明らかに良いのは間違いないですし、効率面でも現状ではトップクラスだと思うので、RTX 3070を検討しているけどもうちょっとだけ高性能なものが良いという人には悪くない選択かもしれません。

ミドルレンジ帯Radeonは、おおよそ5%~8%程度の値下がりが見られます。やや動きが鈍化していたGeForceよりも値下げが進行しています。

特に気になったのは「RX 6700 XT」です。先月から約5,000円程度値下がりした62,980円が最安となっており、RTX 3060 Tiを下回る価格となっています。また、確認時には無かったものの5万円台後半の販売もちらほら見られ、まだ値下がりの可能性が高いのも注目する理由の一つです。

「RX 6700 XT」は6万円前後ならレイトレ以外の処理性能コスパでは「RTX 3070」「RTX 3060 Ti」を上回ることになりますし、メモリ容量が12GBという点での利点もありますから、一気に魅力的なモデルとなります。BTOメーカーなどでも明らかな在庫処分価格での販売も多く見られ、旧世代化手前という微妙な時期ながらコスパトップ競争に乗り上げてきました。

メーカーがどれぐらい在庫を抱えているか具体的にはわからないため何とも言えないものの、「RTX 3070」と違い未だに順調に値下がりしているので、安さでもう一声欲しい人は注目のモデルだと思います。

「RX 6650 XT」「RX 6600 XT」「RX 6600」のミドルレンジモデルについても値下がりは進行しており、どれもコスパが良くて魅力的な点は先月まで変わらずです。価格はおおよそ3万円台後半~5万円です。

ですが、今までは7万円台が主流だった「RX 6700 XT」「RTX 3070」「RTX 3060 Ti」が価格を少し下げており、6万円台に突入しているのが気になります。ここまで下がってくると、順番に出てくる次世代GPUのハイエンドモデルよりも安さの優位性を保てる期間も長くなっていると思うので、そこでの優位性がやや小さくなった6600シリーズはわずかに地位を下げたかなという印象です。とはいえ、やはり次世代GPUが控える今は5万円未満で高コスパで省電力なGPUは魅力的なので、以前として今買うなら後悔はしにくい部類のGPUであると思います。

一応「RX 6500 XT」と「RX 6400」にも触れておくと、「RX 6500 XT」については大きく価格を下げたものの、正直選択肢には入らないです。おすすめしません。いくらコスパが良くても1080pですら高いとは言えないパフォーマンスに、AV1デコードどころかエンコード機能が一切無いのは論外です。この辺りを検討するくらいなら、若干高くはなりますが、ドライバ面での不安があるとはいえ間もなく登場するであろう「Arc A380」か「RTX 3050」をおすすめします。

GeForceとRadeonの価格比較

競合しているNvidiaのGeForceとAMDのRadeonについて、同価格帯のGPUがどれなのかが分かり易いように表にまとめています。結構雑に置いてるので、そこはご了承ください。

GeForce価格
(2022年8月時点)
Radeon
RTX 3090 Ti200,000円
RTX 3090180,000円
150,000円RX 6950 XT
130,000円RX 6900 XT
RTX 3080 Ti120,000円
110,000円
RTX 3080 12GB100,000円
RTX 308095,000円RX 6800 XT
85,000円RX 6800
RTX 3070 Ti80,000円
75,000円
RTX 307070,000円RX 6750 XT
RTX 3060 Ti65,000円RX 6700 XT
60,000円
50,000円RX 6650 XT
RTX 306045,000円RX 6600 XT
RTX 206035,000円RX 6600
RTX 3050
GTX 1660 Ti
30,000円
GTX 1660 SUPER25,000円
GTX 1650
GTX 1630
20,000円RX 6500 XT
RX 6400

現在価格から見たコスパと電力効率

価格比較の次は、コスパと電力効率です。

Windowsのゲーム用の主要APIのDirectX 12(DX12)と、レイトレーシング用のDirectX Raytracing(DXR)の3DMarkのベンチマークスコアを利用し、2022年8月25日時点の価格を基に算出しています。

電力効率に関しては価格との関連性はないですが、購入の参考になる部分という事で載せています。

MEMO

DX12性能:3DMark Time SpyのGraphics Scoreです。DirectX 12(DX12)の1440pゲーミングのベンチマークスコアになります。新しめの3Dゲームで主流の方式(API)です。

レイトレ性能:3DMark Port Royalのスコアです。DirectX Raytracing(DXR)のベンチマークスコアになります。

コスパ:1円あたりの性能スコアです。小数点以下が多すぎて見難いので、各数値100倍して見易い数値にしています。

電力効率:1Wあたりの性能スコアです。

性能スコアの参考https://www.3dmark.com/

基本情報
GPUTDPDX12性能
(3DMark Time Spy)
レイトレ性能
(3DMark Port Royal)
RX 6950 XT335W22,23610,946
RTX 3090 Ti450W21,97714,844
RX 6900 XT300W20,06210,365
RTX 3090350W19,93213,641
RTX 3080 Ti350W19,60813,297
RX 6800 XT300W18,7929,545
RTX 3080 10GB320W17,69211,564
RX 6800250W15,7147,783
RTX 3070 Ti290W14,8258,871
RTX 3070220W13,7898,302
RX 6750 XT250W13,4926,447
RX 6700 XT230W12,5745,941
RTX 3060 Ti200W11,8936,978
RX 6650 XT180W9,7464,786
RX 6600 XT160W9,6984,407
RTX 3060170W8,8675,157
RX 6600132W8,0653,779
RTX 2060 12GB184W7,9964,443
RTX 2060 6GB160W7,6614,152
GTX 1660 Ti120W6,4031,654
RTX 3050130W6,2783,605
GTX 1660 SUPER125W6,1221,566
RX 6500 XT107W4,975483
GTX 1650 GDDR675W3,669
GTX 163075W2,091
RX 640053W3,496


コスパ(DX12)

コスパ(TimeSpy / DX12)
GPUコスパ
GTX 1660 SUPER
23.7
RX 6500 XT
23.7
RX 6600
22.9
RTX 2060 6GB
21.6
RX 6600 XT
21.2
RTX 2060 12GB
21.2
RX 6700 XT
20.0
RTX 3070
19.8
RTX 3050
19.7
RX 6800 XT
19.6
RX 6650 XT
19.5
GTX 1660 Ti
19.4
RX 6750 XT
19.3
RTX 3080 12GB
19.2
RTX 3060
18.9
RTX 3080 10GB
18.7
RTX 3070 Ti
18.6
RTX 3060 Ti
18.6
RX 6800
18.3
RX 6400
17.7
RTX 3080 Ti
16.6
GTX 1650 GDDR6
16.0
RX 6900 XT
15.6
RX 6950 XT
14.8
RTX 3090 Ti
11.3
RTX 3090
11.2
GTX 1630
11.1

恐らく現在最も主流であるDX12のコスパです。

トップ層の顔ぶれには、先月と同じく旧世代CPUがトップ層に多く並んでいます。トップは「GTX 1660 SUPER」で、3万円未満が当たり前になっており、安さ&コスパ特化なら非常に魅力的な選択肢です。ただし、旧世代GPUでAV1デコードに対応していない他、GTX 16シリーズに関してはレイトレーシングアクセラレーションやDLSSに対応しないため、長期利用を見据えた将来性や汎用性という点では大きなデメリットを抱えている点は留意です。個人的にはあまりおすすめはしないGPUです。

最新世代GPUでトップ層に食い込んでいて魅力的なのも、先月と同じく「RX 6600」と「RX 6600 XT」です。レイトレーシング性能は低いものの、上述のAV1デコードなどの最新機能を一通り備えている上にコスパも電力効率も良いので手を出し易いです。

そして、「RTX 3070」もやはり魅力的です。値下がり幅的には小さかったものの、コスパではまだ上位層に位置しており、上位の他のGPUと比べると一段高い性能を持っています。電力効率も良くメモリ性能も高いので、ある程度高い性能を持ちつつのコスパ重視ならやはり最有力となるGPUだと思います。

と、ここまでは先月とほぼ同じ感じの評価ですが、ここからは先月までと変わった部分に触れていきたいと思います。

まず、値下がりで上位層に一気に上がってきているのが「RX 6700 XT」です。現在では6万円台前半で購入することができ、RTX 3060 Tiよりも安くて若干高性能でコスパが良いです。メモリも12GB搭載で、他の上位層のGPUよりも多いのも嬉しいです。電力効率が「RTX 3070」「RX 6600 XT」などと比べると少し悪いのが気になるものの、高性能かつメモリ容量重視のコスパなら強力な選択肢だと思います。

そして、個人的に注目しているのは同じく一気に上位層に上がってきている「RTX 3050」です。性能としては高いとは言えないですが、最新機能を一通り揃えており、31,800円から購入できます。1080pゲーミングでそれなりの環境があれば良いというライトユーザーには最適なGPUになっていると思います。電力効率も良くはないですが、TDP130Wと消費電力自体は少ないため電源や排熱面でも高性能モデルよりも無視できますし、メモリも一応8GB搭載でクリエイティブ用途でも使えますし、安さ&コスパ特化GPUなら「GTX 1660 SUPER」を選ぶよりは「RTX 3050」を私は推します。

ミドルレンジ以下のGPUを先に触れましたが、値下がりしたハイエンドGPUも一部はコスパで上位層に入っているものがあります。「RTX 3080 10GB/12GB」や「RX 6800 XT」などですね。

予想を超える値下げによりここまでコスパを上げたのは正直驚きましたが、それでも有力なミドルレンジGPUにようやく肉薄するというレベルなので、次世代GPUの存在と価格・消費電力的に優れた選択とは言い難いです。予算が潤沢、もしくはどうしても出来るだけ高性能なGPUが今欲しいという人以外には候補には挙げられないと思います。


電力効率(DX12)

電力効率(TimeSpy / DX12)
GPU電力効率
RX 6900 XT
67.8
RX 6950 XT
66.4
RX 6400
66.0
RX 6800
62.9
RTX 3070
62.7
RX 6800 XT
62.6
RX 6600
61.1
RX 6600 XT
60.6
RTX 3060 Ti
59.5
RTX 3090
56.9
RTX 3080 Ti
56.0
RTX 3080 10GB
55.3
RX 6700 XT
54.7
RX 6650 XT
54.1
RX 6750 XT
54.0
RTX 3080 12GB
53.9
GTX 1660 Ti
53.4
RTX 3060
52.2
RTX 3070 Ti
51.1
GTX 1660 SUPER
49.0
GTX 1650 GDDR6
48.9
RTX 3090 Ti
48.8
RTX 3050
48.3
RTX 2060 6GB
47.9
RX 6500 XT
46.5
RTX 2060 12GB
43.5
GTX 1630 (50Wで計算)
41.8

DX12での電力効率です。価格が影響しないため先月とほぼ同じ内容です。

DX12の電力効率はRadeonが上位を占めています。トップは「RX 6900 XT」で、次点も「RX 6950 XT」です。10万円を大きく超えるハイエンドGPUなので、次世代GPUが控える今は手を出しにくいです。また、この二つはGeForceのハイエンドGPUと比べて価格低下が小さかったこともあり、トップ層ながら優位性としては微妙そう。今なら電力効率重視でも安くなった「RX 6800 / RX 6800 XT」の方が上な印象です。メモリ性能もほぼ同じです。

TimeSpy(DX12)のコスパで上位に位置していた「RX 6600 XT」と「RX 6600」も優れた電力効率となっています。当然ながら上で触れた「RX 6800」以上よりも圧倒的に安価なので、安さや効率面を重視した場合にはこの二つはかなり強力だと思います。

GeForceで上位に食い込んでいるのは「RTX 3070」と「RTX 3060 Ti」です。ですが、どちらも今月は他のGPUと比べると値下げ幅が小さかったモデルなのが気になるところです。特に、「RTX 3060 Ti」は「RTX 3070」と5,000円ほどしか価格が変わらないので、性能でも効率でもやや上な「RTX 3070」の方が良いですし、「RX 6800」との価格差も2万円程度まで縮まっているので、悪くない位置に付けていながら「RTX 3060 Ti」が最有力となる場面は意外と減ってきているかもしれません。


コスパ(レイトレーシング)

コスパ(Port Royal / DXR)
GPUコスパ
RTX 3080 12GB
12.7
RTX 3080 10GB
12.2
RTX 3070
11.9
RTX 2060 12GB
11.8
RTX 2060 6GB
11.7
RTX 3050
11.3
RTX 3080 Ti
11.3
RTX 3070 Ti
11.2
RTX 3060
11.0
RTX 3060 Ti
10.9
RX 6600
10.8
RX 6800 XT
10.0
RX 6600 XT
9.6
RX 6700 XT
9.4
RX 6750 XT
9.2
RX 6650 XT
9.2
RX 6800
9.1
RX 6900 XT
7.9
RTX 3090
7.7
RTX 3090 Ti
7.6
RX 6950 XT
7.3
GTX 1660 SUPER
6.1
GTX 1660 Ti
5.0
RX 6500 XT
2.3
RX 6400
GTX 1650 GDDR6
GTX 1630

レイトレーシングコスパでは、性能で優位なRTXシリーズが上位を独占しています。

トップは先月から約2万円という大きな値下がりを見せた「RTX 3080 12GB」でした。そこに「RTX 3080 10GB」、「RTX 3070」と続きます。「RTX 3080」の二つはレイトレ重視なら優れたコスパとなっており、価格が下がったことによりその他のコスパも良化しているので、効率重視のハイエンドGPUとしては先月から大きく改善しています。「RTX 3070」も優れた効率で今は最もおすすめできるGPUなのは間違いないですが、レイトレや4Kではやはり荷が重い感はあるので、ハイエンド用途にも使うことを前提とした総合コスパでは「RTX 3080」が優位です。

ですが、やはり今は9万円台後半のTDPが320W~350WのハイエンドGPUに手を出すのは賢いとは言えず、2万円以上安くて、DX12でのコスパや電力効率も現行世代では上位の「RTX 3070」の方が魅力的だと思います。もう恒例になりつつありますが、RTX 3070はどの方面から見ても優れたコスパで、かつ高すぎない価格と丁度良い高性能さで、総合コスパ最強筆頭GPUだと思います。

また、「RTX 2060 6GB / 12GB」も上記のGPUに続き優れたレイトレコスパを発揮していますが、RTX 2060はレイトレーシング性能自体が低い点があるため、レイトレーシングならおすすめと言えるかは怪しいところです。

Radeonに関してはGeForceには劣りますが、トップは「RX 6600」となっています。ただし、RTX 2060と同様にレイトレーシング性能自体が低いので、レイトレーシングならおすすめという感じには言えないかなと思います。

先月から大きく変わった点では、価格が大きく下がった「RX 6800 / RX 6800 XT」がやや改善してる点がありますが、やはりGeForceと比べると差が大きいためレイトレ重視なら微妙かなという感じです。


電力効率(レイトレーシング)

電力効率(Port Royal / DXR)
GPU電力効率
RTX 3090
39.0
RTX 3080 Ti
38.0
RTX 3070
37.7
RTX 3080 10GB
36.1
RTX 3080 12GB
35.6
RTX 3060 Ti
34.9
RX 6900 XT
34.6
RTX 3090 Ti
33.0
RX 6950 XT
32.6
RX 6800 XT
31.8
RX 6800
31.1
RTX 3070 Ti
30.6
RTX 3060
30.3
RX 6600
28.6
RTX 3050
27.7
RX 6600 XT
27.5
RTX 2060 6GB
26.0
RX 6700 XT
25.8
RX 6750 XT
25.8
RX 6650 XT
25.6
RTX 2060 12GB
24.1
GTX 1660 Ti
13.8
GTX 1660 SUPER
12.5
RX 6500 XT
4.5
RX 6400
GTX 1650 GDDR6
GTX 1630

レイトレーシングでの電力効率です。価格に影響されない指標なので、先月とほぼ同じ内容です。

レイトレの電力効率もRTXシリーズの方がRadeonよりも有利です。また、レイトレの電力効率はレイトレ用のコアが多く搭載されるハイエンドGPUほど良くなる傾向があります。レイトレは非常に高負荷な処理なので、メモリも高性能なハイエンドGPUの方が有利ということもあると思います。

ただし、GeForceであっても旧世代の「RTX 2060」や、「RTX 3070 Ti」「RTX 3060」「RTX 3050」についてはレイトレの電力効率は良くない点は注意が必要です。この辺りは「RX 6600」や「RX 6800」などのRadeonの高効率モデルと大して変わらない電力効率なので、レイトレ面でもRadeonより優位とは言えなかったりする点は誤解されそうなことも多そうなので気を付ける必要があります。

トップ2は「RTX 3080 Ti」と「RTX 3090」ですが、10万円を大きく超える高価格なので一般の人には基本的に選択肢から外れることを考えると、実質トップは「RTX 3070」となります。効率を見るとどこから見ても本当に魅力的なGPUです。

今GPUを買うべきなのか

先月も触れた問題ですが、今月も性能帯別に軽く触れていこうかと思います。ただし、憶測と主観がメインの内容なので、あくまで参考程度にしてください。

ハイエンド:避けた方が無難だけど、多少マシになった

ハイエンドGPUは基本的に今購入するのはおすすめしません。

先月も書きましたが、まず理由の一つ目はハイエンドGPUは非常に高価格のため、人気のミドルレンジやアッパーミドルクラスのGPUよりもコスパが悪いためです。上のコスパのグラフを見てもわかりますが、上位はミドルレンジのGPUが独占しており、ハイエンドGPUは大きな値下がりを見せたにも関わらず、最も良いものでも中段あたりが限界です。また、次世代GPUは基本的にハイエンドモデルから順に登場しますから、旧世代化までの期間が最も短いです。すぐに更にコスパが悪化するのが目に見えているということもあります。

二つ目は消費電力が非常に多く、モデルによっては電力効率も良くないためです。ハイエンドモデルが消費電力が多くても競争力を保っていられるのはトップクラスの性能の高さ故ですが、当然ながら次世代GPUが到着すると旧世代のハイエンドGPUはトップ層からは基本的に転落します。そうなると、性能が高いとはいえトップでないのに、消費電力はめちゃくちゃ多くいGPUが残ります。しかも、購入時の価格も非常に高いため、新しく到着したGPUと比べるとコスパはありえないくらい悪かったという事が基本の立場の推移になります。どんなに値下がりが進行しても消費電力の多さや電力効率は変わらないため、正直どうしようもないです。

ただし、今月は「RTX 3080 Ti」「RTX 3080 12GB」「RX 6800 / RX 6800 XT」などは2万円以上の大きな値下げが見られ、現状のコスパでいえば悪くなく、多少マシになりました。

次世代GPUを待った方が良いというのは変わりませんが、今ゲーミングPCを持っておらず、どうしても今ハイエンドゲーミングPCが欲しいという場合なら以前ほどは強く止める程では無くなったと思います。

ミドルレンジ中位~上位:高コスパモデルは安さ重視ならアリ

ミドルレンジモデルに関しては絶対待った方が良いということはなく、今欲しいのであれば普通に検討して良いと思います。

一番の理由は、一部の人気モデルは価格低下が鈍化していたものの、未だに値下がりを続けており、しばらくは次世代GPUよりも安さでは優位性を保てる可能性が高いためです。

先に述べた通り次世代GPUはハイエンドモデルから順に登場する傾向があるため、ミドルレンジは旧世代化するまでの期間がやや長い可能性があります。少なくとも今年中に置き換えられる可能性はほぼないです。

それに、現在のミドルレンジGPUは現行世代では効率的なモデルが集まっています。希望的観測ではありますが、「RTX 2060」「RTX 2060 SUPER」「GTX 1660 SUPER」などのように、旧世代においても特に効率的なモデルは意外と悪くない感じで生き残る可能性もあることも期待できます。

具体的なモデルとしては、現行世代で特に効率的なミドルレンジGPUは「RTX 3070」「RX 6700 XT」「RX 6600 XT」「RX 6600」なので、今選ぶならこの辺りがおすすめです。また、最近では突発的な大幅な値引きも結構多いので、その他のモデルも価格次第では選択肢に入れても良いと思います。

といった感じで、現在ではミドルレンジ帯の効率に優れたGPUは最も購入しても後悔しにくいと思います。ただし、個人の主観による見解なので、あくまで参考程度にしてください。

コスパのみを考えるなら次世代GPUを待った方が良いというのは念頭に置くことは忘れず、それを今のGPUへの欲求と照らし合わせた上で考えることが大事です。上記のGPUの話は、購入するべきとか待つべきかという視点ではなく、どうしても欲しくて買おうとなった時に、購入しても価値が大きく落ちる可能性が低いものという程度のものと考えてください。

ミドルレンジ下位~:RTX 3050が安さ重視ならアリかも。他は微妙。

上の方は先月の記事からのコピペです。

ミドルレンジ下位クラスは、RTX 3050やRX 6500 XTなど一部のモデルを除き、ほとんどが旧世代GPUで構成されています(主にGTX 16シリーズ)。

ここで注意しなければならないのが機能面です。旧世代GPUは機能面で最新世代に劣ります。特に、現在非常に低価格化が進んでおり検討していそうな人が多い「GTX 1660 SUPER」を含むGTX 16シリーズですが、ハードウェアのレイトレーシングアクセラレーションには対応せず、DLSSも利用できません。

また、レイトレやDLSSは今は主流ではないですし、ライトゲーマーなら我慢できる部分だと思いますが、特に気になるのはAV1デコードがサポートされていない点です。AV1映像コーデックは、ロイヤリティフリーで現在恐らく最も将来性のある映像コーデックと言われており、YouTubeを含む主要な動画サイトでも採用が進んでいます。

現状ではAV1のみに対応した動画というのはほとんどないため困ることはないですが、長期利用を想定するなら後々にネックとなる可能性が出てきます。上述のレイトレーシングやDLSSの面も含め、将来性を考えての機能性は最新世代に大幅に劣る点は要注意です。

また、RX 6500 XTとRX 6400は最新世代GPUですが、AV1デコードには対応していないどころか、エンコードにすら対応していない点は要注意です。動画編集とかクリエイティブ用途向けの機能は切り捨てられており、ほぼゲーミング専用のGPUです。低価格帯でコスパも良いのに価格が大きく下がり続けている理由は、主にこのコーデック機能面のせいだと思います(各所のレビューでも結構酷評されていました)。

といった感じで、コスパと安さで悪くないにしても旧世代GPUやRadeonのエントリーGPUは正直おすすめできません。となると、最新機能を一通り揃えているミドルレンジ下位クラスは「RTX 3050」のみというレベルです。

その「RTX 3050」ですが、先月までは最安35,800円程度となっており、「RX 6600」との価格差が小さかったため微妙でした。しかし、今月は最安31,800円と大きく価格を下げました。これにより低価格での優位性を広げ、同時に「GTX 1660 SUPER」とのコスパ差も縮まったので、選び易さがアップしました。

3.2万円という価格は次世代GPUに置き換えられるにも相当な時間を要することは間違いないので、安さという優位性は暫く保たれる点も大きいです。

性能自体は高くなく、1080pゲーミングでそれなりに動けば良いくらいのライトユーザー向きという点は留意ですが、今月予想外に地位を上げたGPUです。

先月の記事では従来のゲーミング性能のみに特化して安さとコスパさえ良ければ良いなら「GTX 1660 SUPER」も悪くないと書きましたが、今月の値動きで「RTX 3050」一択に近い感じになったかなと思います。

ただし、やはり約5,000円程度のプラスで「RX 6600」が見えることを考えると、総合コスパでは劣っている感は否めないので、強力な選択肢とは言えないかなとは思います。その点は留意です

それに、恐らく旧世代GPUを優先して売り捌きたいがために、BTOショップなどでは「RTX 3050」の方が大きく高価なことが今は多いも難しい点です。ビジネス的に仕方ないことだとは思いますが、単体価格では「RTX 2060」より安いし、「GTX 1660 SUPER」とも5,000円くらいしか変わらないんですけどね…。

おわりに

恒例のGPUの価格動向の8月分でした。ハイエンド帯の大きな値下がりが目立つ月になりました。

上でも語りましたが、「RTX 3080 12GB」と「RTX 3080 Ti」についてはひと月でここまで下がるとは思わずに驚きました。ただし、その値下げ込みでも、やはり次世代GPUの存在が気になるため有力になるかは微妙なところです。

むしろ気になったのは「RX 6800」「RX 6700 XT」「RTX 3050」あたりです。いずれも今までは競争の有力な選択肢としては挙がらなかったモデルですが、先月から大きく値下がりしたおかげで競争に加わっています。また、有力ではないながらハイエンドGPUも今までよりは価格が改善しています。

今までのように「RTX 3070」や「RX 6600 XT」「RX 6600」は依然として強力です。ただし、上記のような選択肢が増えたことと、次世代GPUがより近付いたことにより、消費者としてはGPUを安く手に入れることが出来るようになった反面、購入を渋る可能性もどんどん高くなっていっていると思います。まだ在庫処分価格で値下がりする可能性は期待したいです。

GeForceの人気のミドルレンジ帯の「RTX 3070」~「RTX 3060」あたりは値下げ幅が小さくなっているものの、Radeonは競争に加わったばかりということもあってか、魅力的なミドルレンジ帯GPUがまだ順調に値下がりしているので、更に安くなると、次世代GPUの存在込みでも購入をより検討しやすくなるので嬉しいですね。

今度こそ値下げが頭打ちになる可能性もあると思いますが、来月を楽しみに待ちたいと思います。

といった感じで、本記事の内容は以上になります。また来月にも同様の記事を投稿したいと思います。

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