Intelの主流CPUシリーズのCoreシリーズと、AMDの主流CPUシリーズのRyzenシリーズの違いについてざっくり解説しています。(Core iの末尾Xシリーズや、Ryzen Threadripperシリーズは除外しています)
デスクトップPC向けの最新世代(2023年6月1日時点)のものを対象としています。
はじめに
主にデスクトップPC向けの最新世代CPUが対象
本記事は、PCの主流CPUであるIntelのCoreシリーズとAMDのRyzenシリーズ各種の主にデスクトップPC向けの最新世代のものを対象としています(前世代でも品薄にならない内は同時に掲載)。
現在(2023年3月3日時点)の最新は「Core」は第13世代(13000番台)で、「Ryzen」は7000シリーズ(7000番台)です。
超ざっくり比較
まずは、細かい数値を見ていく前に「Core」と「Ryzen」の各性能についてざっくりとした比較を載せています。「なんとなく各シリーズの特徴を掴めれば」といった感じのかなりざっくりとした比較です。しっかりとした比較ではないため、そのことを頭の中に置いた上でご覧ください。
Core 第13世代 | Ryzen 7000 | |
---|---|---|
コア Pコア:高性能コア Eコア:高効率コア |
4~24 コア
Eコア:0~16コア
|
6~16 コア
Pコアのみ
|
スレッド |
8~32 スレッド
Eコア:0~16スレッド
|
12~32 スレッド
Pコアのみ
|
マルチスレッド性能 (Cinebench R23) |
◎ (~39,956) |
Ryzen 9:◎ その他:〇 (~38,657) |
シングルスレッド性能 (Cinebench R23) |
◎ (~2,271) |
〇 (~2,071) |
ゲーミング性能 ※高性能GPU使用時 |
◎ |
X3D:◎
その他:〇 |
価格 | Core i9:~108,000円 Core i7:~57,980円 Core i5:~45,980円 Core i3:~21,800円 |
Ryzen 9:~107,800円 Ryzen 7:~71,800円 Ryzen 5:~37,800円 |
対応メモリ (サポートの最大) |
DDR5-5600 DDR4-3200 |
DDR5-5200 |
内蔵GPU (3DMark Time Spy) |
×~△ (無~800程度) ※末尾FはGPU非搭載 |
△ (2CU:720程度) |
付属クーラー ※BOX版 |
TDP:65W以下のみ付属 (性能は良くはない) |
TDP:65W以下のみ付属 (性能は良くはない) |
消費電力・発熱 (Blender Testの消費電力) |
Ryzenより悪い (~約287W) |
Coreより良い (~約237W) |
まずは処理性能面のざっくり比較です。タイトルの通りで、Core i9 / Ryzen 9の最上位モデル同士の比較なら同等レベル(わずかにCore i9が有利)ですが、Core i7 / Ryzen 7 以下同士の比較では、Eコアの差が大きく第13世代Coreの方が大幅に有利です。
第13世代Core ※Core i5以上 |
Ryzen 7000 | |
---|---|---|
コア数 Pコア:高性能コア Eコア:高効率コア |
10~24 コア
Eコア:4~16コア
|
6~16 コア
Pコアのみ
|
スレッド数 |
16~32 スレッド
Eコア:4~16スレッド
|
12~32 スレッド
Pコアのみ
|
マルチスレッド性能 Cinebench R23 |
Core i9は同等
Core i9:~39,956Core i7以下では大きく有利 Core i7:~31,062
Core i5:~24,525
|
Ryzen 9(16コア)のみ同等
Ryzen 9:16コア~38,657Ryzen 9 12コア:~29,516 Ryzen 7:~20,399
Ryzen 5:~15,315
|
シングルスレッド性能 Cinebench R23 |
わずかに有利
Core i9:~2,271Core i7:~2,126
Core i5:~2,026
|
わずかに不利
Ryzen 9:~2,072Ryzen 7:~2,010
Ryzen 5:~1,976
|
ゲーミング性能 ※高性能な外部GPU使用時 |
◎ |
X3D:◎
その他:〇 |
※同モデルナンバー内での比較(Core i9とRyzen 9等)
※2023年3月現在で最新のCPUが対象
※ゲーミング性能は高性能なGPU(グラフィックボード・ビデオカード)と同時に利用した場合のもの。
性能比較のポイントは「Eコア」です。第13世代Coreは通称「Eコア(高効率コア)」と呼ばれる、小型で低消費電力に特化した高効率コアを多数搭載しており、マルチスレッド性能を大きく引き伸ばしています。これに対しRyzen 7000では従来のメインの高性能コア(通称:Pコア)しか搭載しておらず、そのPコアの数がRyzen 7以下では第13世代Coreと同じのため、Eコア分の差で負けている点がポイントです。そのため、Ryzen 9に関しては同等の性能ですが、Ryzen 7以下ではCoreの方が圧倒的に有利という状況になっています。
更に、ゲーミングコスパでもCoreの方がやや有利なため、コスパと安さを重視で、Core i7 / Ryzen 7 以下を検討する場合には、第13世代Coreが無難です。
ただし、後述のワットパフォーマンスではRyzenの方が有利のため、高負荷で酷使する場合にはRyzenが有利になる場合もあります。また、Ryzenの「3D V-Cache」搭載の「X3D」モデル(例:Ryzen 9 7950X3D)なら、ゲーミング性能はCore i9に匹敵するレベルになります。価格が一段高価なためコスパ的には良いという訳ではありませんが、予算よりも性能と効率を重視したい場合のゲーミングCPUとしてはおすすめできます。
後付けですが、以下にシングルスレッド性能とかマルチスレッド性能とかのざっくりとした説明を載せておきますので、ご存じない方は参考程度にご覧くださいませ。
- シングルスレッド性能
1スレッド(1コア)あたりの性能です。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理の速さ(レスポンス)が良くなる他、基本的にどのような用途でも有利に働くため非常に重要です。
- マルチスレッド性能
CPUの全コア稼働時の処理性能です。マルチスレッド性能が高いと、動画エンコードやレンダリングなどの膨大な処理を必要とする作業で特に有利になる他、複数の処理を並行して行う場合などでも有利です。シングルスレッド性能と違い、用途によっては高くても恩恵をほとんど感じない要素という点に注意。
- ゲーミング性能
文字通りゲームをする際の性能。ただし、内蔵GPUではなく、高性能なグラボ(ハイエンド)と併用した際のものです。ゲームのフレーム生成の主体はGPU(グラボ)で、CPUではない点に注意です。高性能なグラボを使用する際には、GPUの足を引っ張らないように高性能なCPUが必要になるという感じです。
モデルによって多少の差異はあるものの、競合モデル同士の価格は基本5,000円以内程度に収まっており、大差はないです。ほぼ同等と言って良いレベルかなと思います。
Core i7 / Ryzen 7 以下についてはRyzen側が少し安いですが、コア数はCoreの方が多くて高性能なので、コスパ的にはむしろCoreの方が勝ります。
下記が2023年4月11日時点でのおおよその市場価格です。
第13世代Core | Ryzen 7000 | |
---|---|---|
Core i9 / Ryzen 9 | 79,680円~108,980円 | 62,600円~107,800円 |
Core i7 / Ryzen 7 | 52,980円~58,530円 | 46,550円~71,800円 |
Core i5 / Ryzen 5 | 28,980円~45,980円 | 33,680円~37,500円 |
Core i3 / Ryzen 3 | 17,800円~21,100円 | 未登場 |
このように競合モデル同士の価格ではほぼ同等レベルとなっていますが、Core i7 / Ryzen 7 以下ではCoreの方がマルチスレッド性能で大きく勝るため、コスパでは第13世代Coreの方が大きく有利ということになります。
そのため、コスパ重視で「7」以下のモデルを検討する場合にはCoreの方がおすすめです。
メモリについては、Ryzen 7000シリーズはDDR5しか対応していないのに対し、第13世代CoreはDDR5に加えてDDR4にも対応しています(DDR4とDDR5は互換性がなく、マザーボードによって決まるので注意)。
2023年4月現在ではまだDDR5の方が容量単価でやや高価なので、安価な選択肢があるDDR4の方が有利と言えますが、帯域幅については現在のDDR4の主流がDDR4-3200なのに対し、DDR5は基本DDR5-4800~ですから、大幅にDDR5の方が上回ります。
用途によって有利不利は変わってくると思いますが、現状の多くのアプリケーションではパフォーマンスが大して変わらない(参考:https://www.techspot.com/review/2351-intel-core-i9-12900k/)という検証結果もあるため、特にメモリの帯域幅が重要な処理を行う場合や、将来性を見据えたい場合でなければ、DDR4でも現状大きく劣る場面はほぼないようです。そのため、DDR4も予算節約を重視する場合には選択肢に入ります。
とはいえ、これから出てくるCPUはDDR5に統一されていくと思いますし、大分価格も下がってきているので、将来性も加味すれば出来ればDDR5の方が良いかなと思います。
電力面についての比較です。これはRyzen 7000の方が有利です。
メーカーによって名称は異なるものの、最近のCPUの電力設定は基本的に、TDP(PL1/ベース電力)とTDP(PL2)という二つの値によって制御されており、この数値を見ることで大体の消費電力がわかります(正確とは言えないですが)。下記に表を載せているのでそちらを見てみましょう。基本的にTDP(PL2)を実質の最大消費電力と見ると良いです。
第13世代Core | Ryzen 7000 | ||||
---|---|---|---|---|---|
※Coreの末尾Fは省略 | 末尾 | PL1 | PL2 | PL1 | PL2 |
Core i9 / Ryzen 9 | K / X,X3D | 125W | 253W | X:170W X3D:120W |
X:230W X3D:162W |
無印 | 65W | 219W | 65W | 88W | |
Core i7 / Ryzen 7 | K / X,X3D | 125W | 253W | X3D:120W 105W |
X3D:162W 142W |
無印 | 65W | 219W | 65W | 88W | |
Core i5 / Ryzen 5 | K/X | 125W | 181W | 105W | 142W |
無印 | 65W | 148W~ | 65W | 88W | |
Core i3 / Ryzen 3 | 無印 | 58W~ | 89W | – | – |
また、やや抜けはありますが、実測の電力テストの結果も併せて載せておきます(海外レビュー参考)。
CPU名称 | 消費電力 |
---|---|
Ryzen 5 5600X |
61W
|
Ryzen 7 5700X |
61W
|
Core i5-12400F |
64W
|
Core i5-13400F |
65W
|
Core i5-12600 |
67W
|
Ryzen 7 7800X3D |
77W
|
Ryzen 7 7700 |
82W
|
Ryzen 7 5800X3D |
90W
|
Ryzen 5 7600X |
115W
|
Ryzen 9 5950X |
117W
|
Core i5-12600K |
121W
|
Ryzen 7 5800X |
125W
|
Ryzen 9 5900X |
126W
|
Ryzen 7 7700X |
138W
|
Ryzen 9 7950X3D |
140W
|
Core i7-12700K |
167W
|
Core i5-13600K |
189W
|
Ryzen 9 7900X |
200W
|
Core i9-12900K |
244W
|
Core i7-13700K |
252W
|
Ryzen 9 7950X |
254W
|
Core i9-13900K |
276W
|
CPU名称 | 1Wあたりのスコア |
---|---|
Ryzen 9 7950X3D |
253.3
|
Ryzen 7 7800X3D |
232.7
|
Ryzen 7 7700 |
231.6
|
Core i5-13400F |
228.3
|
Ryzen 7 5700X |
223.0
|
Ryzen 9 5950X |
221.1
|
Core i5-12400F |
188.2
|
Ryzen 5 5600X |
186.3
|
Core i5-12600 |
178.3
|
Ryzen 9 5900X |
169.7
|
Ryzen 9 7950X |
158.4
|
Ryzen 7 5800X3D |
157.1
|
Ryzen 9 7900X |
152.2
|
Core i5-12600K |
148.7
|
Ryzen 7 7700X |
146.9
|
Core i7-12700K |
138.6
|
Ryzen 5 7600X |
136.2
|
Core i9-13900K |
130.5
|
Core i5-13600K |
125.1
|
Core i7-13700K |
121.4
|
Ryzen 7 5800X |
116.9
|
Core i9-12900K |
110.8
|
上述の表を見ると、消費電力ではRyzenの方が全体的に少なく、効率でもRyzenの方が良いことがわかります。電力面ではRyzenの方が有利です。
そのため、性能で拮抗するCore i9 / Ryzen 9では電力面を加味すればRyzen 9の方がやや優秀です。純粋な性能ではCore i9の方がわずかに勝るものの、電力面での差は結構大きいため、総合的にはRyzen 9有利な印象です。
ただし、7以下のモデルでは、Eコアのおかけで第13世代Coreの方がマルチスレッド性能が大幅に高いため、電力面の有利を考慮してもRyzen有利とは言いにくいです。電力のみに焦点を当てればRyzen有利なのは確かですが、性能が高いほど処理を早く終えることができる分の時間が節約できるなどのメリットもありますし、Core i7 / Ryzen 7 以下ほどの性能差があると、Core側が最大電力設定を多少下げてもマルチスレッド性能では優位に立つことが出来る事情もあるため、そのあたりの設定が出来る前提での評価なら7以下ではCoreの方が優勢です。
付属クーラーについての比較ですが、CoreとRyzenのどちらともTDP(PL1)が65W以下のモデル(KやXが付かないモデル)のBOX品において付属します。TDPが65Wを超えるモデルについては付属しないため注意してください。
付属モデルを見てもわかるように、CPU付属クーラーは低発熱モデルのみに付属する低性能なものです。そのため、性能は使えれば良いというレベルのものです。静音性と冷却性は共に良くはないので、その点は留意した上で使用するか検討する必要があります。BTOで購入する場合には初期構成では標準クーラーの場合もあるため、注意です。
別売りの2,000円~のクーラーでも大きく性能が向上するため、出来れば別途用意することを個人的にはおすすめしたいですが、騒音さえ気にならないなら正直問題はないレベルだと思います。
また、クーラーが付属するのが低発熱モデルであり、クーラー性能は両メーカー共に良くはないので、大きな差となることは基本ありませんが、CPU自体の電力設定や発熱には差があるため、安定性などを考えると考慮の余地はあります。
仕様を見てみると、Ryzen 7000のクーラー付属モデルのTDPの最大値は88Wで統一されているのに対し、第13世代CoreはCore i3でも89Wとなっており、Core i5なら148W~、Core i7 / i9では219Wとなっており、明らかに多いです。余裕がない場合には低い電力制限値で動作するため、実際に使用していて困るという事はありませんが、安定性やパフォーマンスの最大化を気にするなら、88Wと少ない電力で統一されているRyzenの方が安心です。
正直、付属クーラーを選択の要にするのは微妙だとは思いますが、付属クーラー運用を考えるならRyzenの方がややおすすめです。
内蔵GPUの性能です。グラフィックボードを搭載する場合には基本気にする必要がない部分ですが、搭載しない場合には重要です。GPUを搭載しないモデルもあるので、搭載モデルに注意してください。
Ryzenの末尾Gモデルのみ少し高性能となっています。他に関しては基本同等レベルですが、どのモデルでも重い処理は厳しい点には注意してください。
項目 | 第13世代Core | Ryzen 7000 |
---|---|---|
内蔵GPU名 | Intel UHD Xe Graphics 770 Intel UHD Xe Graphics 730 ※Core i5下位以下 |
Radeon Graphics (RDNA2 / 2CU) ※末尾G除く |
内蔵GPUの有無 |
ほぼ有
※一部モデルでは無効(末尾F) |
全モデル搭載 |
ゲーム性能 (3DMark Time Spy) |
低性能
無~800 程度 |
低性能 720 程度 ※末尾Gモデル以外 |
搭載モデルに関しては、第13世代Coreは従来通り末尾Fのモデルでは内蔵GPUがありませんが、Ryzen 7000で全モデルでGPUが搭載されることとなりました。
Ryzenは従来では末尾GのAPUモデルでしか内蔵GPUを搭載していませんでしたが、Ryzen 7000では全モデル搭載となりました。特にオフィスPCなどでの利用を考えると大きなプラス要素です。
次に性能面ですが、Ryzen 7000(末尾G除く)にはRDNA 2アーキテクチャを採用した「Radeon Graphics」が搭載されています。ただし、コンピュートユニットは2つしかなく、性能は低いです。基本的に画面出力などの最低限の処理のみを前提とした仕様となっている点は注意です。とはいえ、内蔵GPUが元々そういうものですし、AV1デコードも含め主要な映像コーデックにも一通り対応しているので、とりあえず用としては及第点だと思います。
第13世代Coreでは、Fモデル以外では「UHD Xe Graphics 770」もしくは「UHD Xe Graphics 730」というGPUが搭載されています。性能としてはRyzen 7000の内蔵GPU(2CU)とほぼ同等です。。やはり性能自体は低性能なので、重い処理は厳しいという点は変わりません。
前の世代では、RyzenのVegaがAV1へのハードウェア対応が無かったために劣る印象でしたが、Ryzen 7000ではその弱点が解消されたため、ほぼ同等の評価となりました。
また、Ryzenの内蔵GPUは、わずか2つのCUでCoreの内蔵GPUに匹敵しているので、後に末尾GのRyzen APUモデルが投入されれば、一強となるかもしれない期待もあります。
まだ明確な発売予定は発表されていないので、待った方が良いと断言はできませんが、予算を抑えたいライトゲーマーには魅力的な製品となるかもしれません。
各モデルごとの比較【最新世代】
各モデルごとに、少し詳しく比較・解説しています。
Core シリーズとRyzen シリーズは、Core i9にはRyzen 9、Core i7にはRyzen 7といったように、各モデルナンバーごとに対抗製品が存在します。
そのため、各対抗製品同士を比較することによって、両者の差をより分かり易く知る事ができます。
以下から最新シリーズ(第13世代のCoreとRyzen 7000)の主流製品をざっくりと比較しながら見ていきます。また、両者の最新世代シリーズが円安の影響が大きく前世代よりも大幅に値上がりしてしまったため、前世代も価格やコスパの面で一部モデルは未だに選択肢に入るレベルとなっているので、当面は併せて掲載しています。
- 第12、13世代Coreでは高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)の2種類のコアが搭載されていますが、クロックは高性能コアのものを掲載しています。
- Coreシリーズは末尾F、Ryzen 5000シリーズは末尾G以外では内蔵GPUが利用できない点に注意(Ryzen 7000シリーズは全モデル搭載)。
- TDP(PL2)が実質の最大消費電力の目安です。PL1やベース電力は、PL2を維持するには冷却や電力に問題がある場合に適用されます。また、省電力モデルでは冷却などに問題がなくてもPL2の継続持続時間に制限が設けられており、一定時間後にPL1に移行するようになっているモデルもあります。
Core i9 と Ryzen 9
Core i9およびRyzen 9は主流CPUにおける最上級モデルです。いわゆるハイエンドと呼ばれる区分に含まれ、ハイエンドの中でも最上位の製品群となります。
主流CPUとしてトップの性能を誇り、両者素晴らしい性能を持っています。その代わり価格は非常に高く、人気モデルの価格は7~9万円程度となっています(2023年1月時点)。
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーミング |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
![]() |
Core i9(第13世代)
|
||||
![]() |
Ryzen 9(7000番台)
|
||||
![]() |
Core i9(第12世代)
|
||||
![]() |
Ryzen 9(5000番台)
|
Core i9とRyzen 9の人気モデルを一部抜粋して比較しています。
CPU | Cinebench R23 Multi |
コア/ スレッド |
動作クロック 定格/最大 |
TDP (PBP/PL1) |
TDP (PL2) |
コスパ | 電力効率 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i9-13900K | 39,652 | 24/32 | 3.0 / 5.8GHz | 125W | 253W | 0.482 | 157.9 | 82,980円 |
Core i9-13900KF | 39,652 | 24/32 | 3.0 / 5.8GHz | 125W | 253W | 0.501 | 157.9 | 79,780円 |
Ryzen 9 7950X | 38,657 | 16/32 | 4.5 / 5.7GHz | 170W | 230W | 0.437 | 168.1 | 88,400円 |
Ryzen 9 7950X3D | 35,769 | 16/32 | 4.2 / 5.7GHz | 120W | 162W | 0.332 | 220.8 | 107,800円 |
Core i9-13900 | 32,605 | 24/32 | 2.0 / 5.6GHz | 65W | 219W | 0.367 | 148.9 | 88,800円 |
Core i9-13900F | 32,605 | 24/32 | 2.0 / 5.6GHz | 65W | 219W | 0.375 | 148.9 | 86,800円 |
Ryzen 9 7900X | 29,516 | 12/24 | 4.7 / 5.6GHz | 170W | 230W | 0.472 | 128.3 | 62,600円 |
Ryzen 9 7900X3D | 27,084 | 12/24 | 4.4 / 5.6GHz | 120W | 162W | 0.293 | 167.2 | 92,500円 |
Ryzen 9 7900 | 25,062 | 12/24 | 3.7 / 5.4GHz | 65W | 88W | 0.380 | 284.8 | 65,920円 |
Ryzen 9 5950X | 28,641 | 16/32 | 3.4 / 4.9GHz | 105W | 142W | 0.414 | 201.7 | 69,180円 |
Core i9-12900K | 27,198 | 16/24 | 3.2 / 5.2GHz | 125W | 241W | 0.340 | 112.9 | 80,000円 |
Core i9-12900KF | 27,198 | 16/24 | 3.2 / 5.2GHz | 125W | 241W | 0.349 | 112.9 | 78,000円 |
Core i9-12900 | 26,455 | 16/24 | 2.4 / 5.1GHz | 125W | 202W | 0.339 | 130.1 | 78,000円 |
Core i9-12900F | 26,455 | 16/24 | 2.4 / 5.1GHz | 125W | 202W | 0.339 | 130.1 | 78,000円 |
Ryzen 9 5900X | 21,878 | 12/24 | 3.7 / 4.8GHz | 105W | 142W | 0.448 | 154.4 | 48,800円 |
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K |
39652
|
Ryzen 9 7950X |
38657
|
Ryzen 9 7950X3D |
35769
|
Ryzen 9 7900X |
29516
|
Ryzen 9 5950X |
28641
|
Core i9-12900K |
27198
|
Ryzen 9 7900X3D |
27084
|
Ryzen 9 7900 |
25062
|
Ryzen 9 5900X |
21878
|
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-13900K |
2271
|
Ryzen 9 7950X |
2072
|
Ryzen 9 7950X3D |
2043
|
Ryzen 9 7900X |
2041
|
Ryzen 9 7900X3D |
2041
|
Core i9-12900K |
2002
|
Ryzen 9 7900 |
1964
|
Ryzen 9 5950X |
1639
|
Ryzen 9 5900X |
1622
|
コスパ重視ならCore i9、電力面重視ならRyzen 9 7950系(16コア)
Core i9(第13世代)とRyzen 9(7000シリーズ)は処理性能やコスパではわずかにCore i9が有利で、電力面ではRyzen 9の方がやや優れています。下記から、それぞれの仕様を確認しながら比較していきます。
ただし、Ryzen 9については16コアの「Ryzen 9 7950X」と12コア「Ryzen 9 7900X/無印」で性能に大きく差があるので、まずは16コアの「Ryzen 9 7950X」とCore i9との比較について触れていきます。
まずはコア仕様についてみていきます。第13世代のCore i9は24コア32スレッドという仕様です。24コアによるマルチスレッド性能は驚異的で、前世代のCore i9も遥かに上回る性能です。ただし、24コアの内16コアは小型で低消費電力に特化した高効率コア(Eコア)となっており、Pコアよりは低性能な点は要注意です。また、Eコアについてはハイパースレッディングも未使用なので、24コアながら合計スレッド数は32となっており、コアの割には少ないです。そのため、16コア32スレッド「Ryzen 9 7950X」とスレッド数は同じで、マルチスレッド性能もほぼ同等となっています。
ただし、Pコア数の差があまり関係ないゲーミング性能およびシングルスレッド性能ではCore i9が基本上回っており、Ryzenでは「3D V-Cache」を搭載した「Ryzen 9 7950X3D」のみが第13世代のCore i9のゲーミング性能に匹敵しています。ただし、「Ryzen 9 7950X3D」は発売時で約11万円という驚異的な高価格になっているため、コスパではCore i9に負けており、処理性能によるコスパ勝負ではCore i9がやや有利となっています。
ただし、Eコアを大量に搭載する第13世代のCore i9は、全コア稼働時の電力効率が対抗のRyzen 9に大きく劣るのが弱点です。そのため、長期間継続して高負荷な処理をさせたい場合にはRyzenの方が最適というケースもあります。特に、「Ryzen 9 7950X3D」は「Core i9-13900K」よりも大きく少ない電力で同等のゲーミングパフォーマンスも提供できるので、総合的な意味での最強ゲーミングCPUが欲しいなら最適です。
Ryzen 9 7900系(12コア)はコスパ的には微妙だけど、電力面は非常に強力
次に、一つ下位の12コアのRyzen 9であるRyzen 9 7900X / 無印についてですが、12コア24スレッドという仕様になっており、こちらも全てがPコアです。12コアながら、前世代の16コアCPUである「Ryzen 9 5950X」や「Core i9-12900K」に匹敵するマルチスレッド性能を持ちます。
マルチスレッド性能自体は非常に高性能でハイエンドと言えるものですが、第13世代Core i9や7950Xと比べると一段劣る性能となっており、この価格帯のCPUを検討する人は最高性能を求める人が多いため、第一候補となることは少ないと思います。また、性能的には第13世代のCore i7に近いのに、価格は大幅に高いため、特にマルチスレッド性能コスパでは大きく負けてしまいます。最上位CPUと比べるとコスパは悪くないものの、実質的に競合するCore i7よりは少し悪いという感じで、決して悪いCPUではないものの、やはり第一候補にはなりにくそうです。
とはいえ、他のCore i9 / Ryzen 9よりは一段少ない消費電力で稼働することができるため、その点は魅力です。特に無印の「Ryzen 9 7900」は約7万円(発売時)という価格で他のCore i9やRyzen 9よりも安価な上、標準設定なら最大88Wという12コアとは思えない省電力さを発揮し、抜群の電力効率の良さです。クーラーや電源の費用を節約したい場合には優れた選択肢になりますし、性能重視の場合でもPBOという疑似オーバークロック機能を有効にすれば7900Xと少ししか変わらない性能で稼働できたりもするので、設定をいじってみたいという人にもおすすめできる高コスパで扱いやすいハイエンドCPUに仕上がっていると思います。
総評:ゲームやコスパ重視ならCore i9だけど、ゲーム以外なら電力面で勝るRyzen 9も魅力的
冒頭でも触れましたが、純粋な性能やコスパではCore i9の方がわずかに有利だけど、電力面ではRyzen 9がやや大きめに有利という感じです。正直好みや用途の話になり、ゲーム特化ならCore i9で、そうでないならRyzen 9というのが一般的な選択肢になると思います。ただし、個人的には効率の良いCPUが好みなので、Ryzenの方を推したい気持ちがあります。
Core i9はコスパに優れ、非常に魅力的ですが、Eコアで押し上げた性能は電力面での問題を抱えています。現状8コアあれば性能が大して変わらないと言われているゲームに関してなら差は生まれないですが、ゲーム以外の効率は正直Ryzenに大きく劣ります。Ryzen 9は12コアモデルがあり、一段安い上に空冷での運用も十分視野に入れれるため、選択の幅が広いのも嬉しいです。
更に、少し違う側面から見ると、ソケット(マザーボード)面でもRyzenの方がやや有利です。第13世代CoreのソケットはLGA1700で、これは恐らく次の世代から変更となるため、マザーボードも既存のものでは対応できなくなるのに対し、Ryzen 7000シリーズのAM5は最低でも2025年までのサポートが名言されています。新しい世代が登場しても、CPUだけを交換できる状況が続くのは嬉しい点です。
このクラスのCPUを搭載するPCはマザーボードや他パーツも基本的に高価で高品質なので、パーツを交換する機会はあまり無いかもしれませんが、一応判断材料の一つにはなるかもしれません。
Core i7 と Ryzen 7
Core i7およびRyzen 7は主流CPUにおける上級モデル(上から2番目)です。いわゆるハイクラスと呼ばれる区分に入ります。
価格はおおよそ4万円~6万円となっています(2023年6月時点)。
性能はCore i9やRyzen 9よりはやや劣るものの、十分に高性能です。ハイエンド用途でも使える性能を持ち、ゲーミング性能だけならCore i9やRyzen 9とも大差ないことが大きく、性能もさほど妥協しないコスパ重視CPUとして人気のシリーズとなっています。
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーミング |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
![]() |
Core i7(第13世代)
|
||||
![]() |
Ryzen 7(7000番台)
|
||||
![]() |
Core i7(第12世代)
|
||||
![]() |
Ryzen 7(5000番台)
|
Core i7とRyzen 7の人気モデルを一部抜粋して比較しています。
CPU | Cinebench R23 Multi |
コア/ スレッド |
動作クロック 定格/最大 |
TDP (PBP/PL1) |
TDP (PL2) |
コスパ | 電力効率 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i7-13700K | 31,062 | 16/24 | 3.4 / 5.4GHz | 125W | 253W | 0.536 | 122.8 | 57,980円 |
Core i7-13700KF | 31,062 | 16/24 | 3.4 / 5.4GHz | 125W | 253W | 0.549 | 122.8 | 56,580円 |
Core i7-13700 | 24,770 | 16/24 | 2.1 / 5.2GHz | 65W | 219W | 0.446 | 113.1 | 55,500円 |
Core i7-13700F | 24,770 | 16/24 | 2.1 / 5.2GHz | 65W | 219W | 0.477 | 113.1 | 51,980円 |
Core i7-12700K | 22,812 | 12/20 | 3.6 / 5.0GHz | 125W | 190W | 0.415 | 120.1 | 56,300円 |
Core i7-12700KF | 22,812 | 12/20 | 3.6 / 5.0GHz | 125W | 190W | 0.415 | 120.1 | 55,000円 |
Core i7-12700 | 21,568 | 12/20 | 2.1 / 4.9GHz | 65W | 180W | 0.431 | 119.8 | 50,000円 |
Core i7-12700F | 21,568 | 12/20 | 2.1 / 4.9GHz | 65W | 180W | 0.459 | 119.8 | 47,000円 |
Ryzen 7 7800X3D | 18,475 | 8/16 | 4.2 / 5.0GHz | 120W | 162W | 0.272 | 114.0 | 67,980円 |
Ryzen 7 7700X | 20,399 | 8/16 | 4.5 / 5.4GHz | 105W | 142W | 0.457 | 143.7 | 44,600円 |
Ryzen 7 7700 | 18,720 | 8/16 | 3.8 / 5.3GHz | 65W | 88W | 0.409 | 212.7 | 45,780円 |
Ryzen 7 5800X | 15,245 | 8/16 | 3.8 / 4.7GHz | 105W | 142W | 0.448 | 107.4 | 34,000円 |
Ryzen 7 5800X3D | 15,003 | 8/16 | 3.4 / 4.5GHz | 105W | 142W | 0.255 | 105.7 | 58,800円 |
Ryzen 7 5700X | 14,211 | 8/16 | 3.4 / 4.6GHz | 65W | 76W | 0.527 | 187.0 | 26,980円 |
Ryzen 7 5700G | 14,041 | 8/16 | 3.8 / 4.6GHz | 65W | 88W | 0.488 | 159.6 | 28,780円 |
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i7-13700K |
31062
|
Core i7-13700 |
24770
|
Core i7-12700K |
22812
|
Core i7-12700 |
21568
|
Ryzen 7 7700X |
20399
|
Ryzen 7 7700 |
18720
|
Ryzen 7 7800X3D |
18475
|
Ryzen 7 5800X |
15245
|
Ryzen 7 5800X3D |
15003
|
Ryzen 7 5700X |
14211
|
Ryzen 7 5700G |
14041
|
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i7-13700K |
2126
|
Core i7-13700 |
2107
|
Ryzen 7 7700X |
2010
|
Core i7-12700K |
1939
|
Ryzen 7 7700 |
1916
|
Core i7-12700 |
1862
|
Ryzen 7 7800X3D |
1817
|
Ryzen 7 5800X |
1594
|
Ryzen 7 5700X |
1522
|
Ryzen 7 5700G |
1517
|
Ryzen 7 5800X3D |
1491
|
性能やコスパはCore i7の大幅有利、電力面ではRyzen 7が有利だけど、性能差が大きすぎるので微妙
Core i7(第13世代)とRyzen 7(7000シリーズ)は、性能はCore i7の方が圧倒的に有利で、電力面ではRyzen 7の方が優れているという感じになっています。ただし、基本的にはCore i7が安定の選択だと思います。
第13世代のCore i7は合計16コア24スレッドとなっており、高性能コア(Pコア)が8コア、高効率コア(Eコア)が8コアという構成です。前世代のCore i9と同じ構成です。対するRyzen 7はPコアが8コアのみなので、コア構成はCore i7の方がEコア8つ分上回る形になっています。そのため、マルチスレッド性能は圧倒的にCore i7の方が有利であり、約1.5倍も高性能となっています。
また、シングルスレッド性能およびゲーミング性能でも若干Core i7の方が有利なので、処理性能はどの方面から見ても基本的にCore i7が有利です。価格はRyzen 7の方がやや安価ですが、マルチスレッド性能がCore i7の方が圧倒的に高いので、コスパ的にもCore i7の方がやや有利です。
ただし、「Ryzen 7 7800X3D」に関しては、「3D V-Cache」というL3キャッシュを大容量搭載したことでゲーミング性能が向上しており、性能的にやや特殊な立ち位置です。とはいえ、価格が67,980円(2023年6月時点)と頭一つ抜けて高額なため、総合コスパではやはり微妙です。「ゲーム特化ならアリなんじゃないの?」と思うかもしれませんが、ゲーム性能の高さというのも「RTX 4090」レベルの超高性能GPUで使用しない限りはその差は基本わずかです。Core i7やRyzen 7では恐らくもう少し性能の低いミドルレンジ上位あたりのGPUと組み合わせる人が多いと思うので、恩恵を感じる人は多分ほとんど居ないと思います。そのため、基本的にはやはりCore i7の方が有利という印象です。
ただし、第13世代のCore i7(K付き)は消費電力が非常に多い点は要注意です。K付きモデルのTDP PL2はCore i9と同じ253Wとなっており、従来のCore i9をも少し上回るレベルです。また、K無しでも219Wとなっており、省電力とは言い難いレベルの多さです。Core i7という肩書きですが、Kの有無に関わらず高負荷な処理を前提とするならそれなりに高性能なクーラーが必要となる点は注意です。
また、K無しモデルはTDP PL1の制限値を解除(=PL2と同値)にすることでK付きモデルと大差ないレベルまで性能が向上しますので、高性能なクーラーを導入できる場合には設定するのがおすすめです。
ただし、Ryzen 7の優位性として消費電力が第13世代Core i7より圧倒的に少ない点があります。末尾XのTDP PL2は142Wとなっており、第13世代Core i7(K付き)の253Wとの差は100W以上です。非常に大きいです。無印モデルなら88Wと更に差が大きくなります。マルチスレッド性能差は大きいものの、圧倒的に少ない電力で稼働する上に、電力効率でもRyzen 7の方がやや優れています。Ryzen 7なら高負荷な処理前提でも空冷クーラーで運用が十分可能なレベルですし、電源でも余裕が出ますから、電力面ではRyzen 7の圧倒的に有利となっています。
価格も、発売後からRyzen 7000シリーズが軒並み値下がりしたことが大きく、Ryzen 7(X3D除く)の方が安価なので、電力面を重視しつつ予算も抑えるならRyzen 7はありな選択肢です。とはいえ、Core i7も設定をいじれる人であれば省電力運用が可能ですし、Ryzen 7とは性能差が非常に大きいこともあり、多少制限しても性能面での優位は揺らぎませんから、それを考慮すればやはり実質的にはCore i7の一択レベルに感じてしまいます。
最後にまとめると、性能重視ならCore i7の方が大きく優れていて、消費電力や発熱面を重視するならRyzen 7の方が優れている上にやや安価、という評価になります。一見差別化はできているように見えますが、やはり先にも挙げた通り、価格がほぼ同じなのにCore i7の方が最大性能が圧倒的に上な点はかなり大きいです。CPUは処理性能の高さが非常に重要で魅力的ですから、正直Core i7一択レベルだと思います。細かく設定をいじる気がある人なら電力面のデメリットも薄れますし、やはり総合的に見ると第13世代Core i7が無難な選択になるのかなと感じます。
また、登場当初は前世代の第12世代Coreも安さの点で選択の余地がありましたが、無印モデルの登場で第一候補となるケースはほぼなくなり、あえて選ぶ必要性はなくなってしまったかなと思います。
Core i5 と Ryzen 5
Core i5およびRyzen 5は主流CPUにおける中級モデルです。いわゆるミドルレンジに区分されます。
中級とはいっても現在では十分に高性能で、「可・不可」でいえば不可能な事はないレベルの高性能さです。数年前のハイエンドCPUを大きく上回るレベルの性能を持っています。価格はやや幅が広く、おおよそ2万円~4万円台となっています。
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーミング |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
![]() |
Core i5 K付き
(第13世代)
|
||||
![]() |
Core i5-13400(F)
(第13世代/10コア)
|
||||
![]() |
Ryzen 5(7000番台)
|
||||
![]() |
Core i5 K付き
(第12世代)
|
||||
![]() |
Core i5 無印
(第12世代)
|
||||
![]() |
Ryzen 5(5000番台)
|
Core i5とRyzen 5の人気モデルを一部抜粋して比較しています。
CPU | Cinebench R23 Multi |
コア/ スレッド |
動作クロック 定格/最大 |
TDP (PBP/PL1) |
TDP (PL2) |
コスパ | 電力効率 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i5-13600K | 24,525 | 14/20 | 3.5 / 5.1GHz | 125W | 181W | 0.533 | 135.5 | 45,980円 |
Core i5-13600KF | 24,525 | 14/20 | 3.5 / 5.1GHz | 125W | 181W | 0.575 | 135.5 | 42,680円 |
Core i5-13500 | 21,135 | 10/16 | 2.5 / 5.2GHz | 65W | 154W | 0.579 | 137.2 | 36,480円 |
Core i5-12600K | 17,660 | 10/16 | 3.9 / 4.9GHz | 125W | 150W | 0.420 | 117.7 | 42,000円 |
Core i5-12600KF | 17,660 | 10/16 | 3.9 / 4.9GHz | 125W | 150W | 0.442 | 117.7 | 40,000円 |
Core i5-13400 | 15,890 | 10/16 | 2.5 / 4.6GHz | 65W | 154W | 0.484 | 96.5 | 32,800円 |
Core i5-13400F | 15,890 | 10/16 | 2.5 / 4.6GHz | 65W | 148W | 0.548 | 100.4 | 28,980円 |
Ryzen 5 7600X | 15,315 | 6/12 | 4.7 / 5.3GHz | 105W | 142W | 0.467 | 107.9 | 32,780円 |
Ryzen 5 7600 | 14,240 | 6/12 | 4.7 / 5.3GHz | 65W | 88W | 0.385 | 161.8 | 36,970円 |
Core i5-12400 | 12,454 | 6/12 | 2.5 / 4.4GHz | 65W | 117W | 0.408 | 106.4 | 30,500円 |
Core i5-12400F | 12,454 | 6/12 | 2.5 / 4.4GHz | 65W | 117W | 0.461 | 106.4 | 27,000円 |
Ryzen 5 5600X | 11,268 | 6/12 | 3.7 / 4.6GHz | 65W | 76W | 0.420 | 148.3 | 26,800円 |
Ryzen 5 5600 | 11,077? | 6/12 | 3.5 / 4.4GHz | 65W | 76W | 0.508 | 145.8 | 21,800円 |
Ryzen 5 5600G | 11,077 | 6/12 | 3.9 / 4.4GHz | 65W | 88W | 0.508 | 125.9 | 21,800円 |
Ryzen 5 5500 | 10,605 | 6/12 | 3.6 / 4.2GHz | 65W | 88W? | 0.536 | 120.5 | 19,800円 |
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i5-13600K |
24525
|
Core i5-12600K |
17660
|
Core i5-13400 |
15890
|
Ryzen 5 7600X |
15315
|
Ryzen 5 7600 |
14240
|
Core i5-12400 |
11448
|
Ryzen 5 5600X |
11268
|
Ryzen 5 5600G |
11077
|
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i5-13600K |
2026
|
Ryzen 5 7600X |
1976
|
Core i5-12600K |
1918
|
Ryzen 5 7600 |
1856
|
Core i5-13400 |
1794
|
Core i5-12400 |
1716
|
Ryzen 5 5600X |
1572
|
Ryzen 5 5600G |
1504
|
まず言っておきたいのが、Core i5やRyzen 5と聞くと性能に不安を感じる人も居ると思いますが、今では十分に高性能と言えるレベルの性能を持っていることです。基本的に不可能なことは無いくらいの高性能さを持ちつつも価格が上位モデルよりも安いため、一般用途でのコスパが非常に良いのが魅力です。
中でもゲーミングコスパが非常に良い点は魅力的です。基本的にゲーミング単体のコスパであれば5が一番強いです(特に安価なモデル)。「ゲーミングといえばCore i7 / Ryzen 7以上」という印象の方は多いと思いますが、上位モデルとの決定的な差はコア数の差などによるマルチスレッド性能です。確かにCore i5 / Ryzen 5は上位モデルよりもコア数が少ないためマルチスレッド性能では劣りますが、ゲーミング性能に限れば話は別です。
ほとんどのゲームではCPUに全てのコアを全力で稼働させるほどの負荷が掛かることがないので、同じGPUであればゲームでのfpsはマルチスレッド性能差ほど低下することはまずありません。そのため、ゲーミング単体なら価格が安いCore i5 / Ryzen 5の方がコスパが良いという感じになります。
コスパと性能はCore i5の大幅有利、電力面ではRyzen 5やや有利
Core i5(第13世代)とRyzen 5(7000シリーズ)は、性能はCore i5の方が大きく有利で、電力面ではRyzen 5の方がやや有利という感じになっています。基本的にはCore i7 / Ryzen 7と同じ傾向です。
それぞれK付きとX付きの上位モデルから見ていくことにします。まず第13世代のCore i5(K付き)は合計14コア20スレッドとなっており、高性能コア(Pコア)が6コア、高効率コア(Eコア)が8コアという構成です。対するRyzen 5はPコアが6コアだけなので、コア構成はCore i5(K付き)の方がEコア8つ分上回る形になっています。EコアはPコアに劣る性能とはいえ、8コア差はさすがに非常に大きいです。そのため、マルチスレッド性能は圧倒的にCore i5の方が有利であり、約1.6倍も高性能となっています。
また、シングルスレッド性能およびゲーミング性能でも若干Core i5の方が有利なので、処理性能はどの方面から見ても基本的にCore i5が有利です。
価格を見ると、Core i5-13600K(F)とRyzen 5 7600Xでは、Core i5の方が約1万円ほど高価ではあるものの、1.6倍の性能差が非常に大きいため、コスパはやはりCore i5の方が勝ります。しかし、一応ゲームの単体動作なら性能は大差ないため、安価なRyzen 5 7600Xの方がマルチスレッド性能を重視しない場合かつ予算重視なら一応優位にはなります。とはいえ、やはりマルチスレッド性能があまりにも大きいので、個人的には総合コスパを考えればCore i5-13600K(F)一択レベルかなと感じます。
ただし、消費電力は「Core i5-13600K(F)」の方が大幅に多いです。TDP PL2は181Wとなっています。Ryzen 5 7600Xは142Wなので大幅に少ない上、実際には高負荷時にも142Wよりもやや少ない電力で稼働します。実質的に高負荷時には最低でも40W以上の消費電力差があるため、電源容量に余裕が出る上、クーラーも安価な空冷で十分なのはメリットです。そのため、Ryzen 5も安さや電力面では優位性があるため魅力的ではあります。
とはいえ、「Core i5-13600K(F)」の消費電力の数字だけ見ればRyzen 5とは大きな差があるものの、発熱自体は空冷でも事足りるレベルに収まっているのが大きいです。ちょっと良い空冷クーラーを導入するだけで事足ります。電源面でも、50W程度の余裕は元々持たせていることがほとんどだと思うので、Ryzenと比べて追加予算も基本必要ないと思います。そのため、上位モデルほどは消費電力も問題にはなりにくいので、やはりCore i5の方が強い印象です。
次に省電力モデルです。Core i5といえば、安価な400番台の下位モデルも魅力的です。むしろこちらが本題かもしれません。
Core i5-13400(F)は10コア16スレッドというコア構成で、Pコアが6、Eコアが4という構成です。K付きモデルと比べるとEコアが4つ減ってしまうものの、10コアで3万円前後という安価と、少ない消費電力が魅力です。
対するRyzen 5は、シンプルな6コアCPUですが、Core i5の下位モデルよりも1コアあたりの性能が高いです。10コアの「Core i5-13400(F)」にコア数では劣るものの、総合のマルチスレッド性能は同等ですし、ゲーム性能では少し上回ります。コア数が4つも劣るため、一見性能は不利に見えますが、実際には同等クラスです。
しかし、価格がRyzen 5の方がやや高いので、省電力モデルも総合コスパではやはりCore i5の方がやや有利な印象です。
また、基本自作専用となると思いますが、Core i5-13500は14コア(6P+8E)という多コアながら3万円台後半で購入でき、コア単価が非常に安くてコスパが良くて非常に良いです。先にも述べた通り、BTOや既製品ではほとんど採用されないモデルになるのが難点ですが、自作を予定している方で安さ&コスパ特化PCを検討しているなら非常におすすめできるモデルとなっています。
といった感じで、総合的に見るとやはりCore i5が大きく有利だと思います。電力面で差があるといっても、どちらも空冷でなんとかなるレベルなら優先度としては高くないと思いますので、コア数で勝るCore i5が魅力的だと思います。
Core i3 と Ryzen 3(Ryzen 3未登場)
※Ryzen 3がRyzen 5000シリーズから消費者向けモデルが発売されていないので、Core i3のみの評価になります。
Core i3およびRyzen 3は主流CPUにおける中の下くらいに位置するモデルです。いわゆるミドルレンジ下位くらいに区分されます。価格は安く、おおよそ1万円台前半~2万円程度となっています。
価格の安さが魅力のモデルなので、性能はCore i5 / Ryzen 5以上と比較すると低いです。
とはいえ、現在ではWeb閲覧やOffice作業などの軽作業であれば十分すぎるくらいの性能は持っています。その安価さのおかげで、特に重い作業をしないのであればコスパは良いです。また、消費電力や発熱も少ないため、小さなケースで運用するのにも適しています。また、ゲーミング用途でも、上位モデルと比べるとパフォーマンスが劣るというだけで、普通に使えはします。
ですが、価格差の割にCore i5やRyzen 5との性能差が大きいことと、CPUは一度導入すると交換が難しいことが気になるため、優先して選ばれることはあまりないです。少し予算をプラスしてCore i5やRyzen 5を買うだけで性能が大幅に上昇するため、「3を買うなら、少しプラスして5買った方がお得」というのが明らかなので、他モデルより人気は低めです。
そのことをメーカーも承知しているのか、特にデスクトップではIntelもAMDもCore i3およびRyzen 3の販売にあまり積極的ではない印象です。実際、Ryzenに至っては、2023年1月時点でRyzen 5000シリーズおよびRyzen 7000シリーズで消費者向けモデルが1つも投入されていません。
CPU名 |
マルチ
スレッド |
シングル スレッド |
ゲーミング |
消費電力
発熱
|
|
---|---|---|---|---|---|
![]() |
Core i3(第13世代)
|
||||
![]() |
Core i3(第12世代)
|
||||
![]() |
Ryzen 3(5000番台)
※未投入なので評価無し
|
Core i3とRyzen 3の人気モデルを一部抜粋して比較しています。
CPU | Cinebench R23 |
コア/ スレッド |
動作クロック 定格/最大 |
TDP (PBP/PL1) |
TDP (PL2) |
クーラー の付属 |
コスパ | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i3-13100 | 8,812 | 4/8 | 3.4 / 4.5GHz | 60W | 89W | 〇 | 0.408 | 21,580円 |
Core i3-13100F | 8,812 | 4/8 | 3.4 / 4.5GHz | 58W | 89W | 〇 | 0.490 | 17,980円 |
Core i3-12100 | 8,172 | 4/8 | 3.3 / 4.3GHz | 60W | 89W | 〇 | 0.484 | 16,880円 |
Core i3-12100F | 8,172 | 4/8 | 3.3 / 4.3GHz | 58W | 89W | 〇 | 0.584 | 14,000円 |
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i3-13100 |
8812
|
Core i3-13100F |
8812
|
Core i3-12100 |
8172
|
Core i3-12100F |
8172
|
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i3-13100 |
1716
|
Core i3-13100F |
1716
|
Core i3-12100 |
1679
|
Core i3-12100F |
1679
|
2023年3月時点ではRyzen 3が未登場のためCore i3一択。性能は微妙なので、出来れば上位モデルの検討を
Ryzen 3の比較モデルがないため、軽い紹介程度に触れていきます。
第12世代および第13世代CoreのCore i3は4コア8スレッドCPUです。Eコアの追加もなく、コア数は据え置きです。
コア自体の性能が以前よりも向上しているため、重い処理も不可能ではないですが、やはり上位モデルと比べると低性能感が強いのは否めません。マルチスレッド性能は、3万円前後のCore i5-13400(F)の方が約1.8倍も高性能です。
多少費用が節約できるといっても、Core i5の下位モデルと比べれば1万円~1.5万円程度です。PCの合計金額から見た割合でみれば1~2割程度の節約になると思いますが、それで性能が4割も失われてしまうのは、どう見ても割に合わないです。
軽作業前提の実用コスパという点では、安さも含めて優位性はもちろんあります。しかし、各ソフトから求められる性能は年々高くなっていくものですから、現時点でも不満がある性能のPCを悪いコスパで導入するのはおすすめはできない選択です。ある程度長く使うPCなら、やはり最低でもCore i5以上をおすすめしたいです。
結局どっちが良い?
最後に「どっちが良いか?」という点について個人的なおすすめを述べています。あくまで参考までにご覧ください。
Core i7 / Ryzen 7 以下では第13世代Coreがコスパで明らかに有利
Core i7 / Ryzen 7 以下のモデルはPコアの数は同じながらCoreではEコアが追加されているため、Coreの方がマルチスレッド性能が大きく有利です。そのため、性能コスパは第13世代Coreが明らかに有利です。
電力面ではRyzen有利なものの、性能差がかなり大きいため、価格がほぼ同等なら性能を重視したい人が多いと思いますし、電力面は後から調整も可能な部分です。そのため、基本的にコスパ重視(ハイエンド除く)PCなら第13世代Coreの方が有利なので、Coreが無難な選択肢です。
相変わらずCore i5とCore i7のK無しモデルは強力だけど、K付きのコスパも良い
従来通りという感じですが、総合コスパでは Core i5 および Core i7 の無印(K無し)モデルが筆頭だと思います。Core i7-13700(F)とCore i5-13400(F)に加え、ほぼ自作専用のCore i5-13500の3つという感じですね。ただし、Core i7については電力制限を解除(TDP PL1=PL2)前提です。少し設定を調整する必要がありますが、難しくはないので、性能重視で高性能なクーラーを搭載しているならやっておきましょう。
選び方としては、コスパ特化なら「Core i7-13700(F)」、安さ&コスパ重視なら「Core i5-13400(F)」もしくは「Core i5-13500(自作かカスタマイズで選べる場合)」が無難な既定路線になると思います。ただし、第13世代のCore i5の無印モデルは主要なコア仕様を前世代から維持しているため、キャッシュ量が少なくゲーム性能が少し低いので、ハイエンドGPUを使用する場合にはCore i5はK付きの方がおすすめです。
また、Core i7のK付きもコスパは実はほとんど変わらず優秀です。価格も数千円高いだけで、性能が少し向上するので、特に少しでもゲーム性能を高めたい場合には有力な選択肢となります。最大の消費電力と発熱が多くなる点は注意ですが、元から冷却性の十分なクーラーを用意する前提の場合には特に問題ないかと思うので、始めからK付きを導入する方が設定の手間も省けて良いかもしれません。
第13世代のCore i5(K付き)が新たな高性能モデルの定番に入るかも?
人気モデルになるかは微妙なところですが、Core i5(K付き)が価格や性能的に従来のCore i7のような立ち位置に居るので、もしかしたら定番に仲間入りするかもしれません。
該当モデルであるCore i5-13600K(F)のコア数は14コアとなっており、マルチスレッド性能も前世代のCore i7を上回るほどで性能は十分で、ゲーミング性能もCore i7と大差ないので、ゲーミング性能を出来るだけ保ちつつ価格を抑えるには最適なモデルに仕上がっています。
もちろん第13世代でもCore i7(無印)は十分魅力的ですし、定番としては君臨するでしょうけれど、今までは正直影が薄かったK付きのCore i5が存在感を増してくるかもしれないと思いました。
ハイエンドのコスパはCore i9が少し有利だけど、電力面ではRyzen 9が少し有利
性能特化のハイエンドモデル Core i9 / Ryzen 9 を検討する場合ですが、コスパやゲーム性能重視ならCore i9、電力面重視ならRyzen 9 7950系(16コア)という形になります。また、予算が潤沢でゲームがメイン用途の場合に限っては「Ryzen 9 7950X3D」がやや優位かなという感じです。
しかし、性能差はどれも実は小さめなので、正直好みレベルの差という印象です。強いて言うなら、迷うなら個人的には電力効率に優れるRyzenを勧めたいかなという程度の差になります。あと、先にも触れましたが、Ryzen 7000のソケットAM5の方が恐らく長期サポートとなる点もおすすめしたい理由の一つです。
とはいえ、Core i9 / Ryzen 9クラスのCPUを導入して、1~2年でCPUを交換したいという人もあまり居ないとは思うため、気にするまでもないかもしれません。やはり好みレベルだと思います。
また、Ryzen 9の12コアモデルに関しては、やはりコア数が他の9モデルより少ないのが厳しく、第一候補にはなりにくいと思います。予算重視ならCore i7の方が良いですし、性能重視なら16コアのRyzenや24コアのCore i9の方が良いです。電力面では少し優位性があるものの、そもそも7万円~クラスのCPUを検討するならやはり性能に特化したいということだと思いますから、7950XやCore i9の方が魅力的に感じる場合が多いと思われ、候補の上位に挙がってくることはなさそうな印象です。
Ryzen 9 7900(無印)の電力面が物凄く優秀で、意外に強力?
省電力モデルの「Ryzen 9 7900」ですが、これが意外と強力です。
その魅力はやはり省電力さと電力効率です。標準設定ではMTPが88Wとなっており、12コアとは思えない省電力さとなっており、小さめの空冷でも冷却が可能なレベルです。クーラーや電源の費用を節約することが出来るのはメリットの一つです。
性能も、7900Xと比べるとマルチスレッド性能はさすがにやや低下するものの、16コアの第3世代Core i7より少し低い程度に収まっており、十分にハイエンドな性能です。その仕様によって、電力効率は物凄く良くなっているため、性能重視だけど電力効率も重視したい場合には非常に強力な仕様です。
価格は発売時で約7万円台となっており、他のCore i9やRyzen 9よりは一段安くなっていることもあり、コスパは普通に良い部類です。性能と価格的にはCore i7と競合する形になっており、本体価格では負けてしまっていますが、上述の電力面でクーラーや電源の費用が節約することが出来ることに加え、電力効率や省電力性で圧倒的に優位なので、長期的に見れば実質費用もそこまで負けていないかなという印象です。
更に、「Ryzen 9 7900」ではPBOという疑似的な自動オーバークロック機能を利用することができ(Xモデルでは標準で有効になっている機能)、それを有効にすれば7900Xに近い性能で運用することも可能になります。電力面ではクーラーは高い性能を要求されるレベルまでになってしまうものの、簡単に切り替えることが出来るので、選択肢があるのは良いことです。
このように、「Ryzen 9 7900」は高い性能と効率を備えながら、省電力CPUにも性能重視CPUにもなる面白いCPUだと思います。
とはいえ、やはり純粋なコスパでは第13世代のCore i7に負けるのは事実であり、どうせ高い性能を求めるなら高性能なクーラーは必要となりますから、ゲーミングPC向けのCPUとして勧めるならやはりCore i7にはなってしまうとは思います。
第一におすすめすることはあまり無いCPUだとは思いますが、総合力とポテンシャルは非常に高いCPUとして紹介しておこうと思います。
Ryzen 9 7950X3D は予算に糸目をつけない人ならおすすめ
かなり限定的にはなりますが、50万円~クラスのPCを予算度外視で検討中のゲームメインの人の場合には、「Ryzen 9 7950X3D」は個人的にはおすすめしたい選択肢です。
マルチスレッド性能は「Core i9-13900K」に若干負けるものの、差は大きくないですし、電力効率は圧倒的に優れています。ゲーム性能も平均では同等レベルです。総合的に見れば個人的には「Core i9-13900K」よりも評価は少し高いです。
ただし、価格差が2023年4月時点で約3万円もあるため、予算の節約や本体価格から見たコスパを気にするなら、やはり「Core i9-13900K」の方が少し上です。
しかし、効率の良さは「Core i9-13900K」を明らかに凌駕しており、消費電力の少なさのおかげで電源や熱による負荷も少なくなることが期待できますから、長く使える超高性能PCが欲しい場合には結構おすすめだと思っています。限定的ですが、気になる方はチェックしてみてください。
それでは、内容はここまでとなります。ご覧いただきありがとうございました。
詳しい解説参考になります。
年内を目途にデスクトップPCの新調を考えているのですが、ゲームも”少し”したいと考えています。
現在だとryzenよりintelの方がよいとのことですが、他所で聞くと、ゲームならryzen、という意見もあり、他のサイトも色々拝見しているのですが、決めかねているところです。
実際のところ、したいゲームによって最適化されているcpuが違うというのもあるのかと思いますが、全体的な傾向として、ゲームをするのならこっちが無難、という意見はありますでしょうか?
最初に書きましたように”少し”したい程度なのでグラボの購入はしない予定ですが、予算は10万程なので、GTX1650搭載機なら手の届くところではあります。
このあたりも踏まえてアドバイスいただけますと幸いです。
はじめまして。
グラボを使用した際のゲーム性能を「第13世代Core」と「Ryzen 7000」で比較した場合、全体の傾向でいうとCoreの方が少し優れている傾向があります(RyzenのX3Dモデルは除く)。とはいえ、ゲームによってはRyzenが有利になるケースもあるため、一応やるゲーム次第という形にはなります。
ただし、上記は質問者様のケースでは恐らく気にする必要はないと思います。
理由は、一般的にCPUのゲーム性能というのは、ボトルネック差を出来るだけ詳細に知るために、高性能なハイエンドGPU(グラボ)を使用した際のfpsで比較するものとなっているためです。ゲームでCPUに求められる処理というのは、GPUが処理した量(主にフレーム数)に応じて増えるため、基本fpsが高いほど高性能なCPUが求められます。「GTX 1650」レベルのエントリークラス以下のGPUを使用する際には非常に軽いゲームでしか高いfpsは出ないため、現在の最新CPU(Core i5 / Ryzen 5 以上)ならボトルネックが発生することはほとんど無く、ゲーム性能差はほとんど出ません。そのため、質問者様のケースではCPUのゲーム性能はあまり気にする必要はないかと思います。その他の処理も同時に処理したりする場合には多少差が出てくる可能性も考えると、どちらかというとマルチスレッド性能差の方が重要かもしれません。
あと、余談にはなりますが、エントリーレベルのGPUを今検討するなら「GTX 1650」よりも「Arc A380」の方がコスパ的には良いと思います。Arcは発売当初は最適化不足が深刻で評価されませんでしたが、現在ではドライバによる改善が結構進んでいる上に値下げも進み、結構お得になっています。
また、「GTX 1650」ではAV1と呼ばれる映像コーデックに対するサポートが無いのが気になります。詳しくは触れませんが、AV1は将来性が期待されており採用率が増えているコーデックです。今購入するPCでは、出来ればデコードは対応しておきたいです。一応、「第13世代Core」も「Ryzen 7000」も内蔵GPUの方でAV1デコードのサポートがあるので、アプリケーションごとに指定したりすれば対応は不可能ではないかもしれませんが、あまりメジャーとは言えない方法にはなりますし、CPU負荷を下げるためにも出来ればグラボ側で対応しておきたいです。
詳細なアドバイスに感謝いたします。
エントリークラスのグラボだとCPUはボトルネックにならないのでどちらでもよいが、動画再生面で足を引っ張る可能性があるということですね。
となると下手にグラボに予算をさくくらいなら、少しでも高性能なCPUに予算を割り振るべき、という考えもあるのでしょうか?
所詮内蔵GPUはそれなりなので、ゲームをするなら安物でもグラボを積む方がよい、と思っているのですがどうでしょう?
それとも、予算を少し超えてでもGTX1660程度は積むべきでしょうか?
私の場合、買ったPCは6年以上使うつもりなので、ひとまず内蔵GPUで使ってみて後々必要になった時点でグラボを検討するという方が結果的に無駄が少なくなりそうでしょうか?(中途半端なCPUとグラボの両方を買い替えすることと比べて)
私が何に比重を置くのか次第になるのかとは思いますが、さらなるアドバイスいただけますと幸いです。
全体を通して概ね正しい認識だと思います。
現状の3万円以下のエントリーレベルのグラボではAV1のサポートが無いものがほとんどなので、AV1コーデックの動画再生では役に立ちません。AV1はまだ普及段階なので現状で困ることはほぼないですが、最低6年使うと考えるならAV1対応の優先度は高いと思います。
ゲームとCPUに関しても概ね認識の通りです。内蔵GPUの性能も向上しているとはいえ、現状はゲームに限れば安物でもグラボの方が高性能なことが基本です。一応、今年後半の発売が予測されている「Ryzen 7000」のAPUモデル(恐らく末尾G)では飛躍的に内蔵GPU性能が向上することが期待できますので、それが登場すれば少し事情が変わるかもしれませんが、現状では重めのゲームも視野に入れるならグラボは必須に近いです。
グラボ分の予算をCPUに予算を割り振るのも、ゲームを意識しないなら十分理にかなった選択肢です。ただし、低グレードなCPUからアップグレードすることを考えると、CPUクーラーで更なる予算追加が必要になったりする点には注意が必要です。
重いゲームが用途に含まれていないなら、内蔵GPUで様子を見るのも手かなと思います。ただ、質問者様がプレイしたいゲームの重さがわからないので、具体的には何とも言えないです。
一応、最後に低価格帯のグラボについてざっと触れておきますが、まず、「GTX 1650」や「GTX 1660」を含む「GTX 16」シリーズは共通してAV1のハードウェアサポートが無いので、個人的には今購入するのはおすすめしません。
今の市場でいうと、2万円台なら「Arc A380」ほぼ一択で、少し予算を増やせるなら「RTX 3060」、「RX 6600 / 6600 XT / 6650 XT」、「Arc A750 / A770」あたりになるかと思います。
詳しく解説いただきありがとうございます。
今すぐ購入するというわけではないので、Ryzen 7000での大幅な性能向上が見込めるとのことを期待してしばらく待つことにします。
大変参考になりました。
全然ありな選択だと思います。
ただ、一応予測で確定情報という訳でもないので、間違っていたらその際には申し訳ありません。
core i7-12700とRyzen7 5700XのPCで12700の方が5700Xよりも2万円ほど高い構成を見つけたのですが、その値段の差に見合う性能は見られるのでしょうか。その他の構成は同じものとします。
用途とGPUによると思います。
まず、「Core i7-12700」の方がコア数が多い新しいCPUのため、マルチスレッド性能が「Ryzen 7 5700X」の約1.5倍と大幅に高いです。そのため、高負荷なマルチスレッドが重要な処理で使う場合には十分価値はあると思います。一般的なものでいうと、マルチタスク処理全般や、CPUレンダリング・エンコードなどがあります。
関連して、12700の方がGPUのボトルネックもやや発生しにくい他、単純なゲーム性能もCore i7-12700の方が若干上なので、ハイエンドGPUと組み合わせる際には12700の方が有利になると思います。
総評としては、ベンチマークスコアを見るとやはりマルチスレッド性能差が大きく違うため、2万円(恐らく全体の10%~15%程度?)で1.5倍と考えると価格差から得られる性能としては十分な上、ゲームパフォーマンスやボトルネック面でも少し優秀な「Core i7-12700」の方が純粋なコスパは上だと思います。
ただし、重いマルチスレッド処理を頻繁にする訳でなく、ゲームパフォーマンスなども少しでも高い方が良い訳でないなら、実際の使用感はほぼ変わらないと思うので、安い「Ryzen 7 5700X」の方が良いとなると思います。
また、CPU以外の構成は同じものということでしたが、CPUクーラーが低性能なもので統一されている場合には、省電力な「Ryzen 7 5700X」の方が良いという可能性もあると思います。
返信ありがとうございます。
この場合のハイエンドGPUというと何番あたりからのことを指すのでしょうか。
また、12700の発熱ではBTOでよく使われるクーラーでは排熱は足りないですか。その場合、どの程度のクーラーが必要ですか。
ゲームや解像度にもよるので一概には言えないですが、ベンチマークテストの3DMark Time Spyのスコアを参考に見てみると、
【RTX 3060】
5700X:8874(-2.8%)
12700:9128
【RTX 3060 Ti】
5700X:11523(-2.8%)
12700:11855
【RTX 3070】
5700X:12932(-4.4%)
12700:13531
【RTX 3080】
5700X:15929(-6.5%)
12700:17029
上記のような感じになっているので、RTX 3070から少しボトルネック差が出てきているという感じになります。
排熱については、PCケースにもよりますし、CPUクーラーについても具体的な製品がわからないと何とも言えないですが、Core i7-12700の安さ重視製品では120mmファン1基の空冷が多い印象なので、その場合には十分とは言えないかなと思います。
とはいえ、高負荷時に少しだけ性能が落ちるかもって程度で、後から調整も可能な部分なので、CPU付属のクーラーでなければ気にするほどでもないかもしれません。余計なことを言ってしまったかもしれません。
一応、Core i7-12700で空冷なら120mmファン2基 or 140mmファン1基のクーラーがあると安心ではあると思います。
AMD Ryzen 7 5700GとIntel Core i5-12400で迷てます。
タスクをたくさん開くので一度Ryzenを使ってみたいのですがソフトの相性や不具合、故障が
心配です。
恐らく想像しているほどRyzenの方が問題が多発している状況は今ではないと思います。
逆にCoreの方で脆弱性や不具合が発生していることも普通にありますし、よく使用するソフトで問題が多発していないか事前に調べるのは必要だと思いますが、個人的にはそれ以上は気にしても仕方無いのではないかと思います。
ありがとうございました。
今までIntelばかり使用していたので不安でした。
ちなみに、とねりんさんは、どちらがお勧めですか。
価格差と自作とBTOなどで購入するかでも話が変わりますし、どちらが良いとは言えないですね。
理解されているような気がしますが、Ryzen 7 5700Gの他の競合モデルよりゲーミング性能がやや低い点と、Core i5-12400の方がややマルチスレッド性能が低い点を踏まえ、自分の用途や予算などを考慮して決めることになると思います。
また、Ryzenは次世代からチップセットやソケット形状が刷新されるため新世代のものへの交換は不可能になる可能性が高いですが、Coreの方は次世代(13世代)でもソケット形状は維持され既存のマザーボードでも対応されることが予測されているため、後のCPU換装を考えるならCoreの方が有利な点や、DDR5メモリへの対応などでも差があります。
ありがとうございました。
BTOで Ryzen 7 5700GはWindows10でi5-12400はWindows11で価格は同額です、
とねりんさんのおっしゃる通り後の事も考えて、パソコンショップに行って来ます。
差し支えなければ、もう少し詳しい構成(もしくは型番)と価格を教えていただけないでしょうか?
今は次世代のCPUやGPUが控えていて難しい時期なので、一応コスパチェック的なことくらいは出来るかなと思うので、良ければ。
Ryzen3 3250UとRyzen5 4500Uのどちらを購入しようか検討しております。
用途としては初心者のword,excel練習用で、コスト重視です。
どちらがおすすめですか?
オフィス程度の軽作業なら、処理性能はRyzen 3 3250Uでも十分だと思います。
ただ、Ryzen 5 4500Uの方が処理性能は圧倒的に高く、電力効率も大幅に良いです。
長期利用を想定しており、バッテリー駆動時間も長い方が良い場合にはRyzen 5 4500Uの方がおすすめです。
コメントありがとうございます!
有益なご意見とても参考になります。
再度、検討致します。