「Arc B580」ざっくり評価【性能比較】

Intel「Arc B580 」のざっくり性能比較・評価です。海外レビューを参考に性能をざっくりと確認していきます。

注意

本記事の情報は記事執筆時点(2024年12月14日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

仕様

まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。

簡易比較表

※価格は2024年12月13日時点での米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
※GPU名のリンクはAmazonのものです。

GPUシェーダー
ユニット数
メモリタイプVRAM速度
VRAM帯域幅
レイトレ用
ユニット数
ダイサイズ
(おおよそ)
消費電力
(TGP等)
参考価格
RTX 409016384GDDR6X
24GB 384bit
21.0Gbps
1008GB/s
128608㎟450W1,599ドル
RTX 4080 SUPER10240GDDR6X
16GB 256bit
23.0Gbps
736.3GB/s
80380㎟320W999ドル
RTX 40809728GDDR6X
16GB 256bit
22.4Gbps
716.8GB/s
76380㎟320W1,199ドル
→廃止予定
RX 7900 XTX6144GDDR6
24GB 384bit
20Gbps
960GB/s
9636.6㎟*6 +
300㎟
355W969ドル
RX 7900 XT5376GDDR6
20GB 320bit
20Gbps
800GB/s
8436.6㎟*6 +
300㎟
315W799ドル
→749ドル?
RTX 4070 Ti SUPER8448GDDR6X
16GB 256bit
21.0Gbps
672GB/s
66295㎟285W799ドル
RTX 4070 Ti7680GDDR6X
12GB 192bit
21.0Gbps
504GB/s
60295㎟285W799ドル
→廃止予定
RTX 3090 Ti10752GDDR6X
24GB 384bit
21.0Gbps
1008GB/s
84628.4㎟450W1,499ドル
RTX 309010496GDDR6X
24GB 384bit
19.5Gbps
936GB/s
82628.4㎟350W1,299ドル
RX 7900 GRE5120GDDR6
16GB 256bit
18Gbps
576GB/s
8036.6㎟*6 +
300㎟
260W549ドル
RX 6950 XT5120GDDR6
16GB 256bit
18Gbps
576GB/s
80519㎟335W949ドル
RX 6900 XT5120GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
80519㎟300W699ドル
RTX 3080 Ti10240GDDR6X
12GB 384bit
19Gbps
912GB/s
80628.4㎟350W1,099ドル
RTX 3080 10GB8704GDDR6X
10GB 320bit
19Gbps
760GB/s
68628.4㎟320W699ドル
RTX 4070 SUPER7168GDDR6X
12GB 192bit
21.0Gbps
504GB/s
56295㎟220W599ドル
RTX 40705888GDDR6X
12GB 192bit
21.0Gbps
504GB/s
46295㎟200W549ドル
前:599ドル
RX 7800 XT3840GDDR6
16GB 256bit
19.5Gbps
624GB/s
6037.5㎟*4 +
200㎟
263W499ドル
RX 6800 XT4608GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
72519㎟300W599ドル
RTX 3070 Ti6144GDDR6X
8GB 256bit
19Gbps
608GB/s
48392㎟290W599ドル
RX 68003840GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
60519㎟250W549ドル
RX 7700 XT3456GDDR6
12GB 192bit
18Gbps
432GB/s
5437.5㎟*4 +
200㎟
245W419ドル
前:449ドル
RTX 4060 Ti 8GB4352GDDR6
8GB 128bit
18Gbps
288GB/s
34190㎟160W399ドル
RTX 30705888GDDR6
8GB 256bit
14Gbps
448GB/s
46392㎟220W499ドル
RX 6750 XT2560GDDR6
12GB 192bit
18Gbps
432GB/s
40336㎟250W419ドル
RTX 3060 Ti4864GDDR6
8GB 192bit
14Gbps
448GB/s
38392㎟200W399ドル
RX 6700 XT2560GDDR6
12GB 192bit
16Gbps
384GB/s
40336㎟230W379ドル
Arc A770 16GB4096GDDR6
16GB 256bit
17.5Gbps
560GB/s
32406㎟225W349ドル
Arc A770 8GB4096GDDR6
8GB 256bit
16Gbps
512GB/s
32406㎟225W329ドル
Arc B5802560GDDR6
12GB 192bit
19Gbps
456GB/s
20272㎟190W249ドル
RX 7600 XT2048GDDR6
16GB 128bit
18Gbps
288GB/s
32204㎟190W329ドル
RTX 40603072GDDR6
8GB 128bit
17Gbps
272GB/s
24156㎟115W299ドル
RX 6650 XT2048GDDR6
8GB 128bit
17.5Gbps
288GB/s
32237㎟180W299ドル
RX 76002048GDDR6
8GB 128bit
18Gbps
288GB/s
32204㎟165W269ドル
RX 6600 XT2048GDDR6
8GB 128bit
16Gbps
256GB/s
32237㎟160W
Arc A7503584GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
28406㎟225W289ドル
RX 66001792GDDR6
8GB 128bit
14Gbps
224GB/s
28237㎟132W239ドル
RTX 30603584GDDR6
12GB 192bit
15Gbps
360GB/s
28276㎟170W329ドル
RTX 30502560GDDR6
8GB 128bit
15Gbps
224GB/s
20276㎟130W249ドル

今回見ていくのはIntelの約2年ぶりの新世代となるデスクトップ版ディスクリートGPUの第2世代の初投入モデルArc B580」です。12GB VRAMを搭載しながら希望小売価格は249ドルと安価なのが魅力のミドルレンジGPUです。

更新されたXe2アーキテクチャ採用が採用された新世代GPUとなっており、開発コードネームは「Battlemage」です。名前は先代の「Arc A」シリーズから「Arc B」シリーズになります。プロセスには「TSMC N5(5nm EUV)」が採用されています。

ちなみに、同アーキテクチャはモバイル向けの「Core Ultra 200V」プロセッサのGPUにて既に採用・発売されており、そちらでは高い性能と電力効率の向上が見受けられたのでデスクトップ版にも期待したいところです。

アーキテクチャの詳しい詳細は割愛しますが、先代と比べるとコアあたりのパフォーマンス(SIMD)は70%向上、ワットあたりのパフォーマンスは50%向上しており、RTX 4060を10%程度上回るとIntelは主張しています。本当なら先代とは打って変わってGeForceやRadeonにも対抗できる非常に強力なGPUとなるはずです(ドライバの安定性さえ大丈夫ならですが)。

「Arc B580」の米国における希望小売価格は249ドルに設定にされており、「RTX 4060」の発売時の299ドルよりも50ドルも安く、「RX 7600」と比べても20ドル安いという安価な価格設定です。

12GB VRAMを搭載しつつ、ゲーム性能ではRTX 4060を上回りつつも安価ということで、低価格ゲーミングPC用の選択肢としてどうなのかというところで期待が高まっているモデルです。

しかし、記事執筆時点で判明している国内の想定価格は5万円前後とされており、発売直後はやや高価になると思われます。

12GB VRAMでRTX 4060を超える性能なら5万円でも需要はあると思いますが、RTX 4060が現在では最安4.2万円程度から購入できる現状を考えると、明確に優位性を誇示できるほどのものではないと思います。

それに、来年の初頭からRTX 50シリーズやRX 8000シリーズが登場するとされており、しかもミドルレンジモデルも従来より早い投入が噂されていたりもします。

そのため、現状でも妥当なくらいのコスパで、ドライバの安定性に不安があったIntel GPUをメイン機に採用しようという人は多くなさそうなので、そう遠くない内に値下がりするのかなという気はします。

GeForceやRadeonも新世代が近付き、12GB~の高コスパGPUである「RTX 4070」や「RX 7700 XT / RX 7800 XT」も適性価格よりも大分安めになっていることも値下げを進める要因となりそうな気がします。

次に物理仕様を見てみると、まずプロセスは「5nm(TSMC N5)」となっています。ダイサイズは約272㎟となっており、先代の406㎟よりも大幅に小さくなっています。

Xeコアの数は20基で、シェーダーユニット数は2560です。先代の「A580」では24基だったので約16.7%減った形にはなりますが、GPUクロックの向上が1.5倍以上(970MHz)と非常に大きいので、マイナス要素というほどでもないかなと思います。

消費電力の仕様はTBPが190Wとなっています。B580の185Wからほぼ据え置きですが、性能は大きく向上しているはずなので電力効率も大きく向上していることが期待できます。OCモデルでなければ補助電源も8pin1本で済むはずなので(ボード次第ですが)、先代のA770よりも扱い易く高性能ということで、その点でも導入しやすくなっていると思います。

メモリ性能ですが、VRAMは12GB 192bitで、メモリクロックは19.0Gbps、メモリバス帯域幅は456GB/sです。249ドルのGPUとしては破格の性能となっており、これがB580の最大の魅力と言えると思います。

最近ではAIやレイトレーシングの活用も広まっていることや、フルHDから1440pへと切り替える人も増えていくであろう現状なので、200ドル台で12GBは低価格ゲーミングPC用のGPUとして非常に有難いです。

近い価格で大容量VRAMを備える対抗製品としては「RX 7600 XT(16GB)」が挙げられますが、Radeonは高いAI性能を持つ「ROCm」がWindowsのネイティブ環境で現状使えないのがネックなのに対し、Arcの「Open VINO」はWindowsでも使える点で優位性があるため、低価格でAI処理を行うお手軽AI用GPUとしても期待ができそうです。

といった感じで、カタログスペックについてはここまでとして、下記から実際の各性能について見ていきたいと思います。

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。

まずは、レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態での性能、いわゆるラスタライズ性能を見ていきます。

使用されたグラフィックボードは「Intel Arc B580(Intel純正 Limited Edition)」、CPUは「Ryzen 7 9800X3D」で、OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。


フルHD(1920×1080)

フルHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2024年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。ただし、最新世代のハイエンドGPUでは低負荷感も大きくなっているものもあります。

平均FPS(1080p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
224.9
RTX 4080
187.8
RX 7900 XTX
184.1
RTX 4070 SUPER
148.0
RTX 3090
141.8
RX 7900 GRE
141.2
RTX 4070
129.7
RX 7800 XT
128.7
RTX 3080 10GB
127.2
RX 6800 XT
126.1
RX 7700 XT
110.5
RTX 3070
101.2
RTX 4060 Ti 16GB
99.8
RTX 4060 Ti 8GB
99.0
RX 6700 XT
89.0
RTX 3060 Ti
88.6
Arc B580
82.6
RX 7600 XT
78.9
RTX 4060
78.6
RX 7600
72.1
Arc A770 16GB
71.8
RX 6600 XT
68.8
RTX 3060 12GB
68.6
RX 6600
59.0
Arc A580
58.5
RTX 3050 8GB
48.3
参考:TechPowerUp

フルHDでは「RTX 4060」を約5.1%上回る

フルHD(1080p)のラスタライズ性能では「RTX 4060」を約5.1%上回る性能でした。希望小売価格は50ドル安くてこの性能はコスパが良いです。

初動の実売価格はRTX 4060の現状の最安値よりも8,000円前後ほど高価になる予測のため、その価格では高コスパというほどではないですが、VRAM 12GBの優位性を考えれば十分に許容できる価格かなと思います。

しかし、来年から登場が予測されているGeForceおよびRadeonの新世代では安価なモデルがいつもよりも早めの投入になるという噂があり、現状で5%程度の優位性は覆されてしまう可能性も高いと思いますので、どちらかというとそちらの方が懸念点かなと思います。


1440p(2560×1440)

WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。

平均FPS(1440p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
179.1
RTX 4080
143.3
RX 7900 XTX
142.8
RTX 4070 SUPER
108.4
RTX 3090
107.5
RX 7900 GRE
104.5
RX 7800 XT
95.6
RTX 3080 10GB
95.3
RX 6800 XT
93.8
RTX 4070
94.0
RX 7700 XT
80.7
RTX 3070
75.5
RTX 4060 Ti 8GB
72.2
RTX 4060 Ti 16GB
70.9
RX 6700 XT
64.6
RTX 3060 Ti
64.5
Arc B580
61.4
RX 7600 XT
55.7
RTX 4060
56.9
Arc A770 16GB
54.5
RTX 3060 12GB
50.0
RX 7600
49.7
RX 6600 XT
47.7
Arc A580
43.4
RX 6600
40.9
RTX 3050 8GB
34.6
参考:TechPowerUp

1440pでは「RTX 4060」を約7.9%上回る性能で、フルHDから差を広げる

1440pでは「RTX 4060」を約7.9%上回る性能でした。フルHDからわずかに差を広げており、VRAM容量の差が少し出ているのかなという印象です。

重量級ゲームが中心の最高設定でも平均60fps以上を記録しており、1440pでも動作には問題がないです。VRAM 12GBは8GBと比べると極端なパフォーマンス低下の心配も少ないのも嬉しいです。200ドル台で1440pでも実用的な性能というのは凄いと思います。


4K(3840×2160)

「超高解像度の代名詞」という感じの解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。

平均FPS(4K 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
111.8
RTX 4080
86.2
RX 7900 XTX
84.7
RTX 3090
64.4
RTX 4070 SUPER
62.4
RX 7900 GRE
59.3
RTX 3080 10GB
57.2
RX 7800 XT
54.7
RTX 4070
54.1
RX 6800 XT
53.4
RX 7700 XT
44.6
RTX 3070
43.7
RTX 4060 Ti 16GB
38.6
RTX 4060 Ti 8GB
38.3
RTX 3060 Ti
36.3
Arc B580
36.2
RX 6700 XT
35.8
Arc A770 16GB
31.8
RX 7600 XT
30.3
RTX 4060
31.5
RTX 3060 12GB
29.8
RX 7600
24.7
RX 6600 XT
24.7
Arc A580
24.6
RX 6600
20.7
RTX 3050 8GB
18.7
参考:TechPowerUp

4Kはさすがにfps的に厳しいけど、重量級ゲームじゃなければ実用的な範囲

4Kにおいてはやはりfps的にやや厳しめです。重量級ゲームが中心とはいえ、平均fpsは36.2fpsとなっており一気に低下します。

ただし、重量級ゲームでなければ平均40fpsを超えるものも多く、軽いゲームなら60fpsも超えるので、割と実用的なレベルです。

「RTX 4060」への優位性も約16%と大きくなっており、やはりVRAM 12GBの恩恵は大きそうです。8GB組と比べると4Kでも大分使える部類のGPUとなっています。

200ドル台ながら、高負荷な用途への対応力の高いGPUとなっていると思います。強化版の「RTX 3060 12GB」といった印象を受けます。

電力関連

消費電力

ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。

GPU平均消費電力(ゲーミング)
GPU名称消費電力
RTX 4060
128
RTX 3050 8GB
132
RTX 4060 Ti 8GB
152
RX 7600
152
RX 6600 XT
159
RTX 4060 Ti 16GB
165
RTX 3060 12GB
183
Arc B580
185
RX 7600 XT
193
RTX 4070
201
RTX 3060 Ti
205
Arc A580
209
RTX 4070 SUPER
218
RX 6700 XT
224
RX 7700 XT
228
RTX 3070
232
Arc A770 16GB
235
RX 7800 XT
250
RX 7900 GRE
265
RTX 4070 Ti
277
RTX 4070 Ti SUPER
292
RX 6800 XT
294
RX 6900 XT
300
RTX 3070 Ti
302
RTX 4080 SUPER
302
RTX 4080
304
RX 7900 XT
312
RTX 3080 10GB
336
RX 7900 XTX
353
RTX 3090
368
RTX 4090
411
参考:TechPowerUp

ゲーム消費電力はRTX 4060には大敗

ゲーム時の消費電力は性能を考えるとやや多めです。TBPの190Wよりは若干少ない185Wでしたが、RTX 4060は128Wなので大敗です。1割弱の性能差を考えても補えない多さです。

「RX 7600」よりもやや多く、これから旧世代化する競合GPUに対して負けています。

前世代の「Arc A」シリーズよりは確実に改善はしているものの、消費電力面では前世代から引き続き競合モデルよりは悪めという立ち位置に変わらずといった感じになりそうです。

とはいえ、安価なVRAM 12GB GPUは非常に魅力的です。「RTX 3060 12GB」が未だに人気GPUの一つとなっていることもその裏付けになっています。

競合モデルより消費電力が多いとはいえ200W未満ですし、性能も少し上回っていることを考えれば許容できるレベルだと思います。

また、表には載せていませんが、前世代からあった「アイドル時の消費電力がかなり多い(競合モデルが10W前後なのに対し、30W~40Wも消費する)」という問題は引き続き残っているようなので、気になる場合にはASPMを有効にするのを忘れないようにしないといけない点は注意が必要です。

ワットパフォーマンス

ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています

環境は消費電力はおよび4Kは「Cyberpunk 2077(Ultra/レイトレ無効)」時のもので、1080pは上記で示した25ゲーム平均fpsを使用したものです。一応、1080p時のものは各ゲームでの効率を求めたものではなく消費電力は同じもので算出しており、正確な値ではなく参考値となっているため注意してください。

ワットパフォーマンス(1080p/25ゲーム平均)
GPU名称1フレームあたりの消費電力
RTX 4070 SUPER
1.47
RTX 4060 Ti 8GB
1.54
RTX 4070
1.55
RTX 4080
1.62
RTX 4060
1.63
RTX 4060 Ti 16GB
1.65
RTX 4090
1.83
RX 7900 GRE
1.88
RX 7900 XTX
1.92
RX 7800 XT
1.94
RX 7700 XT
2.06
RX 7600
2.11
Arc B580
2.24
RTX 3070
2.29
RX 6600 XT
2.31
RX 6800 XT
2.33
RTX 3060 Ti
2.34
RX 7600 XT
2.45
RX 6700 XT
2.52
RTX 3090
2.60
RTX 3080 10GB
2.64
RTX 3060
2.67
RTX 3050 8GB
2.73
Arc A770 16GB
3.27
Arc A580
3.57
参考:TechPowerUp
ワットパフォーマンス(4K/Cyberpunk 2077)
GPU名称1フレームあたりの消費電力
RTX 4080 SUPER
4.0
RTX 4080
4.0
RTX 4070 SUPER
4.1
RTX 4090
4.2
RX 7900 XTX
4.4
RTX 4060 Ti 8GB
4.5
RTX 4070
4.5
RX 7900 XT
4.7
RTX 4070 Ti SUPER
4.7
RTX 4070 Ti
4.7
RX 7900 GRE
4.8
RX 7800 XT
4.9
Arc B580
4.9
RTX 4060 Ti 16GB
5.1
RTX 4060
5.3
RX 7600
5.7
RX 7700 XT
5.7
RTX 3070
6.0
RX 6900 XT
6.2
RTX 3060 Ti
6.2
RTX 3090
6.3
RX 6600
6.3
RX 6800 XT
6.5
RTX 3080 10GB
6.5
RX 7600 XT
6.6
RX 6600 XT
6.9
RTX 3070 Ti
7.3
Arc A770 16GB
7.3
RX 6700 XT
7.4
RTX 3060
7.5
RTX 3050 8GB
8.0
Arc A580
8.2
参考:TechPowerUp

フルHD効率は前世代からは劇的に改善するも、「RTX 40」や「RX 7000」にはまだやや劣る

ワットパフォーマンスは前世代の「Arc A」シリーズからは劇的に改善しています。先代のA580と比べると約37%も向上しています。

正直に言うと前世代が悪すぎたというのはありますが、1世代での向上率としては驚異的な数値です。

しかし残念なことに、最終的な効率は競合モデルと比べるとやや悪めとなっています。具体的には、「RTX 4060」の方が約27.2%優れた効率となっており、「RX 7600」にも若干負けています。

これからGeForceやRadeonは新世代が出てくることを考えると不安の強い立ち位置です。

一応、4Kゲーム時には性能差が大きくなるため、「RTX 4060」をも少し上回る効率にはなる点では優位性があります。価格・性能的に4Kやレイトレーシングを主軸に考えるGPUではないものの、そこを視野に入れれるのが強みのGPUではあるため、用途によっては普通に悪くない可能性もあるのは考慮しておいて良いと思います。

また、一つ前の項目でも触れましたが、やはりVRAM 12GBの安価なGPUというのは大きな優位性です。効率が競合モデルにやや劣るとはいっても、旧世代GPUは基本上回っているので、前世代ほどの圧倒的な悪さでもないですし、そうなるとVRAM 12GBによる対応力の高さの魅力の方が上回ると考えると人も多いと思います。

まとめると、消費電力の多さも含めて、電力面を考えるなら現状でも競合モデルよりやや劣るのが「Arc B580」ではあるものの、VRAM 12GBの優位性が大きいため、1440p以上の解像度やレイトレーシングや後述のAIなどのVRAM容量が重要な処理で使いたいのなら、そこを無視してでも選ぶ価値は感じるGPUにはなっていると思います。

レイトレーシング性能

レイトレーシング性能

レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはメインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。

また、レイトレーシングはVRAMを大量に使う処理な上、VRAMが不足するとパフォーマンスが一気に低下するので、特に1440p以降はVRAM 8GB以下のようなGPUは大きく不利になっています。

※従来は各ゲームの幾何平均fpsの値を再計算して載せていたのですが、参考ページで全GPUの詳細fps値が示されなかったため、今回は相対性能を見ていきます。

レイトレーシングFPS(1080p 平均)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
298
RTX 4080
244
RTX 4070 SUPER
189
RTX 3090
177
RX 7900 XTX
176
RTX 3080 10GB
159
RTX 4070
155
RX 7900 GRE
134
RTX 4060 Ti 16GB
128
RX 7800 XT
124
RTX 4060 Ti 8GB
124
RTX 3070
119
RX 6800 XT
113
RX 7700 XT
105
RTX 3060 Ti
102
Arc B580
100
RTX 4060
97
RX 6800
96
Arc A770 16GB
86
RTX 3060 12GB
81
RX 6700 XT
79
RX 7600 XT
71
RX 7600
45
参考:TechPowerUp
レイトレーシングFPS(1440p 平均)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
317
RTX 4080
251
RTX 4070 SUPER
186
RX 7900 XTX
179
RTX 3090
178
RTX 3080 10GB
159
RTX 4070
151
RX 7900 GRE
130
RTX 4060 Ti 16GB
123
RX 7800 XT
117
RX 6800 XT
109
RX 7700 XT
101
Arc B580
100
RTX 3070
98
RX 6800
94
RTX 4060 Ti 8GB
93
RTX 3060 Ti
86
Arc A770 16GB
86
RTX 4060
78
RTX 3060 12GB
78
RX 6700 XT
73
RX 7600 XT
65
RX 7600
38
参考:TechPowerUp
レイトレーシングFPS(4K 平均)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
565
RTX 4080
424
RTX 3090
305
RX 7900 XTX
294
RTX 4070 SUPER
256
RX 7900 GRE
212
RTX 3080 10GB
212
RTX 4070
198
RTX 4060 Ti 16GB
195
RX 7800 XT
190
RX 6800 XT
178
RX 6800
150
RX 7700 XT
149
Arc A770 16GB
142
RTX 3070
140
RTX 4060 Ti 8GB
130
RTX 3060 Ti
125
RTX 3060 12GB
110
RX 6700 XT
110
RTX 4060
109
RX 7600 XT
102
Arc B580
100
RX 7600
44
参考:TechPowerUp

「RTX 4060」を上回るレイトレーシング性能で、1440pではその差が顕著に

フルHDのネイティブのレイトレーシング性能は、「RTX 4060」を約3%上回る性能です。ほぼ同等ですね。

しかし、VRAM容量の要求値が高くなる1440pではその差が大きく広がり、「RTX 4060」20%以上も上回る性能となっています。

レイトレーシングはVRAMを大量に使用する上に、容量が不足すると一気にパフォーマンスが低下するという特性上、やはり8GBでは厳しいので、12GBだと大きな優位性があります。

また、フルHDではそこまでの差が見えないものの、ゲームによっては要求値が8GB超えることも珍しくはないので、12GBの方が安定感があります。

更に、アップスケーリングやフレーム生成等を併用する場合には更にVRAMを追加で要求されるので、やはりレイトレーシングにおいては8GBと12GBでは大きな差があると思います。

そのため、レイトレーシングも実用的な色んなシーンで使いたいのであれば、「Arc B580」は現状の5万円以下クラスのGPUでは非常に強力だと思います

コストパフォーマンス

上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。

元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。4Kなどではやや結果が異なる可能性がある点に注意です。


1フレームあたりの価格(ラスタライズ)

まずはラスタライズ性能のコスパです。上述の1440pゲーム時の性能と現在の市場価格を基に、1フレームあたりの価格を算出し、コスパとして比較しています。

1fあたりの価格(1440p@RT無し)
GPU名称1フレームあたりの価格価格
Arc A580
538
¥23,800
Arc A770 16GB
730
¥39,800
RTX 4060
738
¥41,980
RX 7600
744
¥36,980
Arc B580 ※値下がり想定
746
¥45,800
RX 7700 XT
780
¥62,980
RTX 4060 Ti 8GB
787
¥56,800
RX 7800 XT
793
¥75,800
RTX 3060 12GB
800
¥39,980
RTX 3050 8GB
809
¥27,980
Arc B580
827
¥50,800
RTX 3080 10GB
837
¥79,800
RTX 4070
883
¥82,800
RTX 4070 SUPER
921
¥99,800
RX 7900 GRE
945
¥99,800
RX 6800 XT
957
¥89,800
RTX 4060 Ti 16GB
977
¥69,280
RX 7900 XTX
1050
¥149,800
RTX 4080
1206
¥172,800
RTX 4090
1808
¥323,800
参考:TechPowerUp

ラスタライズのコスパは今後の価格次第。初動価格ではやや悪めで「RTX 4060」にはやや劣る

ラスタライズのコスパは、初動価格だと競合の低価格モデルよりやや悪めです。価格的にはやや上になるものの、「RX 7700 XT」にも若干負けているのが気になるところでもあります。

5000円ほど値下がりする想定の45,800円で算出してみると一気に地位を上げて、「RTX 4060」とほぼ同等のコスパになります。ここまで下がれば、電力面さえ妥協できるなら「Arc B580」の方が基本的に良いと言えるレベルです。

249ドルという希望小売価格や他の新世代GPUが迫っていることを考えると、もう少し値下がりしても良いかなとは思うので、どこまで下がるかが注目のGPUですね。

ただ、現状でも5万円以下クラスでVRAM 12GBを搭載して「RTX 4060」超えの性能なら需要は十分あると思うので、値下がりも断言はできず、予想のしにくいGPUだと思います。


1フレームあたりの価格(レイトレーシング)

次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。

1fあたりの価格(1440p@RT)
GPU名称1フレームあたりの価格価格
Arc A580
888
¥23,800
Arc B580 ※値下がり想定
1157
¥45,800
Arc A770 16GB
1188
¥39,800
Arc B580
1283
¥50,800
RTX 3060 12GB
1351
¥39,980
RTX 4060
1510
¥41,980
RTX 3050 8GB
1546
¥27,980
RTX 4060 Ti 16GB
1546
¥69,280
RX 7700 XT
1559
¥62,980
RTX 4060 Ti 8GB
1632
¥56,800
RX 7600
2465
¥36,980
参考:TechPowerUp

レイトレーシングコスパは低価格帯では頭一つ抜けた強さ

レイトレーシングコスパは低価格帯では頭一つ抜けた強さです。やはり12GB VRAMのおかげで、競合GPUよりも極端fps低下が発生せずに安定したfpsを出せるのが大きい印象です。

やや高価な初動価格でも競合モデルを大きめに上回るコスパを発揮しており、安価で安定したレイトレ性能を求めるなら強力です。

クリエイティブ用途

比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。

一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能、「Blender」におけるGPUレンダリング性能、「SPECworkstation 4.0 Handbrake」によるビデオエンジン性能、「Procyon」ベンチマークを用いたAIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。

また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Ryzen 7 9800X3D」と「DDR5-6000 CL28 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。

理論演算性能(FP32)

FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。

一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、まず参考に見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。

FP32(単精度浮動小数点演算)
GPU名称FP32(TFLOPS)
RTX 4090
24GB 1008GB/s
82.58
RX 7900 XTX
24GB 960GB/s
61.42
RTX 4080 SUPER
16GB 736.3GB/s
52.22
RX 7900 XT
20GB 800GB/s
51.48
RTX 4080
16GB 716.8GB/s
48.74
RX 7900 GRE
16GB 576GB/s
45.98
RTX 4070 Ti SUPER
16GB 672GB/s
44.10
RTX 4070 Ti
12GB 504GB/s
40.09
RX 7800 XT
16GB 624GB/s
37.32
RTX 4070 SUPER
12GB 504GB/s
35.48
RX 7700 XT
12GB 432GB/s
35.17
RTX 3080
10GB 760GB/s
29.77
RTX 4070
12GB 504GB/s
29.15
RX 7600 XT
16GB 288GB/s
22.57
RTX 4060 Ti
8GB / 16GB  288GB/s
22.06
RTX 3070 Ti
8GB 608GB/s
21.75
RX 7600
8GB 288GB/s
21.75
RX 6800 XT
16GB 512GB/s
20.74
RTX 3070
8GB 448GB/s
20.31
Arc A770 16GB
16GB 560GB/s
17.20
RTX 3060 Ti
8GB 448GB/s
16.20
RX 6800
16GB 512GB/s
16.17
RTX 4060
8GB 272GB/s
15.11
Arc B580
12GB 456GB/s
13.67
RX 6700 XT
12GB 384GB/s
13.21
RTX 3060 12GB
12GB 360GB/s
12.74
RX 6600 XT
8GB 256GB/s
10.61
RTX 3050
8GB 224GB/s
9.10
RX 6600
8GB 224GB/s
8.93

理論性能コスパはあまり良くない

理論性能コスパはあまり良くないです。安価さとVRAM性能コスパと安価ながらの機能性・対応力の高さが魅力なのが「Arc B580」で、そこが反映されない指標なので仕方ないですね。

実際にはVRAM性能も重要ですし、参考程度の情報なので、あまり気にしないで良いと思いますが、VRAMが8GBで足りる用途ならやや弱い立ち位置になると思います。


Blender(GPUレンダリング)

「Blender」は人気のある定番のレンダリングソフトです。「Blender 4.3.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。

「Blender 4.3.0」では、Nvidia Optix、Intel OpenAPI、AMD HIPをサポートしており、それぞれが最善の性能が出せる方法で計測されています。しかし、それぞれの最適化には差があり、特にメインのGPUコアでも幅広い用途に対応できる「Nvidia Optix」が特に高い性能を出すため、現状Blenderのレンダリングは基本的にGeForce一強です。

Blender Benchmarks(4.3.0)
GPU名称総合スコア(幾何平均)
RTX 4060
1007.1
Arc A770 16GB
716.4
Arc A750
709.0
Arc B580
583.4
RX 7600 XT
424.3
RX 7600
426.6
参考:Tom’s Hardware

Blenderのレンダリング性能はGeForce一強

BlenderのGPUレンダリング性能は現状ではGeForce一強レベルです。

また、GPUレンダリングは基本的にシェーダーユニット数が重要なので、その点では「Arc B580」は不利であり、前世代の「Arc 750/770」にも劣っています。


SPECworkstation 4.0 Handbrake(ビデオトランスコーディング)

「SPECworkstation 4.0 Handbrake」はビデオトランスコーディングのテストで、ビデオエンジンの処理性能を測定します。

動画の編集をよく行う方や、ライブ配信等を行う人が注目したい性能です。

SPECworkstation 4.0 Handbrake
GPU名称スコア
Arc B580
332.08
RX 7600
262.20
RX 7600 XT
260.55
RTX 4060
227.95
Arc A770 16GB
216.74
Arc A750
214.05
参考:Tom’s Hardware

優れたビデオエンジン性能

動画のコーディングテストでは競合モデルを大きく上回る性能を発揮しています。

「RTX 4060」と比較すると約45.7%も上回る性能となっており、「RX 7600 XT」と比べても約27.5%も上回っています。

実はビデオエンジン関連の機能性の高さとコスパは前世代から悪くない評価を受けていた部分でしたが、そこから基本性能が大きく向上し、一気に優位になりました。

動画関連のクリエイターの方などには嬉しい要素かなと思います。


Procyon Stable Diffusion(AIイラスト生成)

現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」での画像生成性能をUL Procyonの「AI Image Generation Benchmark」を用いて比較しています。

「Stable Diffusion 1.5」は512×512の比較的低負荷な環境でのテストで、「Stable Diffusion XL」は1024×1024の高負荷なテストとなっています。XLではVRAM容量の要求度が高くなるため、特にVRAMが8GB以下のようなGPUではパフォーマンスが極端に低下したり、テストそのものが不可能なケースが基本となります。

ベンチマークではFP32、FP16、INT8といったデータ型のオプションがありますが、各GPUで最適な環境を採用しています。

また、各社のGPUにはAIの推論性能を高めるために特化したAPIとして、Tensor RT(NVIDIA)、Open VINO(Intel)、ROCm(AMD)といったものがありますが、2024年12月時点ではROCm(AMD)は現状Windowsでのネイティブ動作に対応していません(Linux前提で、WSLを用いてWindows上でLinuxを動作させて使用することは一応可能だけど)。

そして、ProcyonがWindowsを前提としたベンチマークであるため、サポートしているのはTensor RT、Open VINO、汎用のDirect ML(ONNX)の3つとなっており、AMD製のGPU(Radeon等)のみ汎用のDirect ML(ONNX)を使わざるを得ず、低めの性能となっている点に注意が必要です。

Procyon Stable Diffusion 1.5(512×512)
GPU名称スコア
Arc B580
1517
RTX 4060
1203
Arc A770 16GB
1102
Arc A750
1031
RX 7600 XT
737
RX 7600
705
参考:Tom’s Hardware
Procyon Stable Diffusion XL(1024×1024)
GPU名称スコア
Arc B580
1606
Arc A770 16GB
1101
Arc A750
1020
RTX 4060
891
RX 7600 XT
547
RX 7600
381
参考:Tom’s Hardware

AI画像生成速度は「RTX 4060」を上回るし、VRAM容量の優位性も嬉しい

「Arc B580」(OpenVINO)のStable Diffusionにおけるイラスト生成速度は、「RTX 4060」を大きく上回っています。低解像度テストでは約26.1%高速となっています。

12GB VRAMのおかげで他の低価格GPUよりも安定した動作が期待できますし、安価なAI用のGPUとしては非常に魅力的な製品になっていると思います。

前世代最上位の「Arc A770 16GB」と比べてみても約37.7%も上回っており、劇的に改善していることがわかります。フルHDゲームテストでは15%程度の優位性だったので、AIの方が向上率が高く、最適化が優れており、インテルが力を入れていることがわかります。

更に、やや高解像度テスト(1024×1024)では、VRAMが8GBだと基本ネックとなりパフォーマンスが大きく低下したりエラーで正常に終了できなかったりするため、「RTX 4060」も大きくスコアを落としますが、12GBの「Arc B580」ではネックになっておらず、差を更に広げる結果となっています。

AI分野はこれから更に発展していくでしょうし、低価格ながら重めの処理も視野に入れれるGPUというのは非常に大きな強みです

インテルはモバイル向けの「Core Ultra 200V」でも競合モデルよりもAI性能を一段高く仕上げた例もありますし、AI分野では絶対に後れを取らないという意思が見えます。

まとめ

Arc B580 12GB

良い点
  • 比較的安価(249ドル)
  • フルHDで優れたパフォーマンスで、1440pでも実用的な性能
  • 安価で12GB VRAM搭載
  • 安価ながら重量級タイトルでなければ実用的なレイトレーシング性能
  • 優れたレイトレーシング性能コスパ
  • 安価ながら悪くないAI性能
  • 優れたAI性能コスパ
  • 価格の割に優れたビデオエンジン性能
  • AV1デコードおよびエンコードをサポート

気になる点
  • 性能に割に多めの消費電力(TBP:190W)
  • 競合モデルに劣るワットパフォーマンス
  • 初動国内想定価格がやや高め(5万円前後)
  • Resizable BARが有効じゃないとパフォーマンスが低下
  • GPUレンダリング性能が低い(シェーダーユニット数が少ない)
  • アイドル時の消費電力が多い(ASPM有効で改善はする)

Arc B580:比較的安価で12GB VRAMによる対応力の高さが魅力の高コスパGPU

「Arc B580」は5万円以下クラスという比較的安価ながら12GB VRAMと価格の割に優れたレイトレーシング性能・AI性能・ビデオエンジン性能などを備えているという、高い対応力が魅力の高コスパGPUです。

印象としては、「RTX 3060 12GB」の性能が大体20%ほど上がったGPUと考えると分かり易いかもしれません。

Intelの発表で対抗製品として挙げられた「RTX 4060」にもほぼ全項目で少し上回る性能となっており、200ドル台中盤のGPUとしては優れた性能を持ち、実用コスパが優れています。

また、そもそも5万円以下では12GB以上のVRAMを搭載するGPUが少ないのでそれだけで価値がありますが、特に注目度の高いAI性能で思ったよりも優れた性能を発揮していたのが魅力を大きく押し上げる要因となっていると思います。

AI以外でも、レイトレーシング性能も価格の割に優れていますし、多くの用途で12GB VRAMのおかげで他の低価格GPUよりもボトルネックに引っ掛かることが少ないというのが非常に良いです。比較的低価格でAIを含めた多方面の用途に対応できる高コスパGPUとして魅力的な仕上がりになっていると思います。

一方で少し残念だったのは電力面です。

前世代と比べると格段に改善しているものの、それは前世代が正直酷過ぎたからであり、最終的な数値としては「RTX 40」シリーズと比べてもやや劣るレベルでした。

まもなく「RTX 50」シリーズや「RX 8000」シリーズが登場がしてくると思われる状況で、旧世代間近のGPUに対しても電力面で不利を抱えたままというのは懸念点です。

B580の高評価な部分はVRAM性能による部分が大きいため、電力面が劣る以上、競合の新世代の競合GPUが10GB以上のVRAMを搭載してくると、一気に競争力を失ってしまう可能性もあります。

そのため、現状では十分な魅力と競争力があり、特に低価格で生成AIや1440pゲームを視野に入れるGPUとしては非常に良い選択肢ですが、初動価格(5万円前後)は希望小売価格を考えると少し高価な印象ですし、待てるなら「RTX 50」や「RX 8000」の下位モデルの情報を待っても良いかなという気がするGPUです。


といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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