「GeForce RTX 3070 Ti(FE版)」のざっくり性能比較・評価です。正直効率面で微妙な印象を受けるGPUでした。
追記:マイニング性能が制限されている点を追記しました。
本記事の情報は記事執筆時点(2021年6月10日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは、主要な仕様だけざっくりと載せています。
簡易比較表
GPU | シェーダー ユニット数 | メモリタイプ メモリ容量 | メモリ転送速度 メモリ帯域幅 | レイトレ用 コア数 | ダイサイズ | 消費電力 (TDP等) | 北米参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB | 19.5Gbps 936GB/s | 82基 | 628.4㎟ | 350W | 1,499ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB | 19Gbps 912GB/s | 80基 | 628.4㎟ | 350W | 1199ドル |
RTX 3080 | 8704 | GDDR6X 10GB | 19Gbps 760GB/s | 68基 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 72基 | 519㎟ | 300W | 649ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB | 19Gbps 608GB/s | 48基 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 60基 | 519㎟ | 250W | 579ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB | 14Gbps 448GB/s | 46基 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB | 16Gbps 384GB/s | 40基 | 336㎟ | 230W | 479ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB | 14Gbps 448GB/s | 38基 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB | 15Gbps 360GB/s | 28基 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
「GeForce RTX 3070 Ti」は希望小売価格が600ドルとなっており、約500ドルのRTX 3070と約700ドルのRTX 3080の中間を丁度埋める価格帯として登場しています。RTX 3070から見ると約2割価格が上昇しています。
コア仕様はRTX 3070から約4%程度上昇していますが、非常に小さい向上なのでほとんど変わらないといっても良いレベルです。また、TDPは220Wから290Wに上昇しています。その代わり、VRAMがGDDR6(14Gbps)からGDDR6X(19Gbps)になっており、メモリ帯域幅が大幅に向上しています。この変更がもたらす向上は用途や解像度などによって違うとは思いますが、その上昇が価格や消費電力の上昇に見合うものなのか注目です。
また、本モデルはマイニング性能が制限されているLHR(低ハッシュレート)モデルとなっています。ゲーマー等の一般消費者への供給が減らないようにするための対策ですが、以前のLHRモデルでは制限を解除する方法が見つかってしまい、実質意味が無いという状況もありました。今回はそうならないで欲しいですが、どうなるでしょうか。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は22種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。使用されたCPUは「Ryzen 7 5800X」となっています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2021年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPS数を維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RX 6900 XT | 211.6 |
RTX 3090 | 208.2 |
RTX 3080 Ti | 205.3 |
RX 6800 XT | 202.8 |
RTX 3080 | 194.6 |
RX 6800 | 181.4 |
RTX 3070 Ti | 174.1 |
RTX 3070 | 167.9 |
RTX 2080 Ti | 163.5 |
RX 6700 XT | 159.3 |
RTX 3060 Ti | 152.4 |
RTX 2080 | 138.0 |
RTX 2070 SUPER | 129.2 |
RX 5700 XT | 127.1 |
RTX 3060 | 119.3 |
GTX 1660 SUPER | 84.4 |
十分な性能だけど、3070との差は小さい
1080pのゲーミング性能はRTX 3070より約3.7%高速です。性能自体は優れていますが、約20%の価格アップから考えると微妙な向上率です。1080pでは向上したメモリ帯域幅が活かされにくいと思うので仕方ないですが、高fps目的の1080p運用でのコスパは微妙に見えます。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。1080pでは性能を少し持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 173.7 |
RX 6900 XT | 171.3 |
RTX 3080 Ti | 170.9 |
RX 6800 XT | 163.6 |
RTX 3080 | 159.6 |
RX 6800 | 144.9 |
RTX 3070 Ti | 138.4 |
RTX 3070 | 130.6 |
RTX 2080 Ti | 126.7 |
RX 6700 XT | 121.4 |
RTX 3060 Ti | 115.4 |
RTX 2080 | 104.1 |
RTX 2070 SUPER | 96.7 |
RX 5700 XT | 93.2 |
RTX 3060 | 88.3 |
GTX 1660 SUPER | 60.6 |
優れたパフォーマンス
1440pではRTX 3070より約6%高速で、1080pよりも差を広げています。20%の価格上昇に見合うかは微妙ですが、メモリのスペックアップがやや活きている印象です。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。グラフィックの綺麗さや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 112.5 |
RTX 3080 Ti | 110.9 |
RX 6900 XT | 105.8 |
RTX 3080 | 100 |
RX 6800 XT | 98.7 |
RX 6800 | 86.7 |
RTX 3070 Ti | 83.8 |
RTX 3070 | 77.5 |
RTX 2080 Ti | 76.4 |
RX 6700 XT | 68.5 |
RTX 3060 Ti | 67.3 |
RTX 2080 | 61.2 |
RTX 2070 SUPER | 56.4 |
RX 5700 XT | 52.6 |
RTX 3060 | 50.3 |
GTX 1660 SUPER | 33.7 |
4Kでも快適なパフォーマンス、144fpsも狙えそう
4KではRTX 3070よりも約8%高速となっており、1440pよりも更に差を広げています。価格差を考えると何とも言えないところですが、一応良さは出ています。
また、RTX 3080と比べると約15.2%遅れており、価格差も約14.3%と同じくらいなので、コスパ的には同じくらいです。ただし、消費電力が多いため電源等はRTX 3080とほぼ同じ水準のものが必要となりますし、安さ・電力面重視ならRTX 3070、性能重視ならRTX 3080という部分に一石を投じるほどの良さがあるかというと微妙な気がしてしまいます。
レイトレーシング性能
レイトレーシング利用時のパフォーマンスを見ていきます。測定タイトルはMetro Exodusです。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 153.9 |
RTX 3080 Ti | 153.2 |
RTX 3080 | 138.9 |
RX 6900 XT | 121.5 |
RX 6800 XT | 115.6 |
RTX 3070 Ti | 112.8 |
RTX 3070 | 107.2 |
RX 6800 | 98.9 |
RTX 3060 Ti | 92.6 |
RTX 2080 SUPER | 85.9 |
RX 6700 XT | 78.5 |
RTX 2070 SUPER | 74.9 |
RTX 3060 | 70.2 |
RTX 2070 | 64.0 |
RTX 2060 SUPER | 62.9 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 113.5 |
RTX 3080 Ti | 112.0 |
RTX 3080 | 104.6 |
RX 6900 XT | 87.5 |
RTX 3070 Ti | 82.5 |
RX 6800 XT | 82.0 |
RTX 3070 | 76.2 |
RX 6800 | 66.2 |
RTX 3060 Ti | 65.0 |
RTX 2080 SUPER | 60.9 |
RX 6700 XT | 51.0 |
RTX 2070 SUPER | 49.0 |
RTX 3060 | 48.7 |
RTX 2070 | 43.6 |
RTX 2060 SUPER | 42.2 |
3070から少し強化されたレイトレーシング性能
レイトレーシング性能はおおよそ6%~8%程度の向上となっています。やはり価格差を埋めれるほどの差ではないですが、コア上昇分よりは伸びているため、メモリが活きている印象です。
ただし、RTX 3080の方が約25%前後と大幅に高速なので、レイトレーシング目的ならそちらを選んだ方が明らかにコスパが良いです。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「2560×1440」です。
GPU名称 | 消費電力(W) |
---|---|
RTX 3090 | 355 |
RTX 3080 Ti | 354 |
RTX 3080 | 318 |
RX 6900 XT | 302 |
RTX 3070 Ti | 298 |
RX 6800 XT | 292 |
RTX 2080 Ti | 265 |
RTX 2080 SUPER | 253 |
RX 6800 | 223 |
RX 6700 XT | 221 |
RTX 3070 | 220 |
RX 5700 XT | 210 |
RTX 2070 SUPER | 206 |
RTX 3060 Ti | 199 |
RTX 2070 | 192 |
RTX 3060 | 189 |
RTX 2060 SUPER | 179 |
RTX 3070より大幅に多い消費電力
平均消費電力は約298Wとなっており非常に多いです。RTX 3070よりも約35%も上昇してしまっています。
ワットパフォーマンス
ゲームプレイ時(高負荷時)のワットあたりのパフォーマンス(フレーム数)を見ていきます。前述の消費電力の項と同じテストでの値になります。
GPU名称 | 1Wあたりのフレーム |
---|---|
RX 6800 | 0.310 |
RX 6900 XT | 0.284 |
RX 6800 XT | 0.273 |
RTX 3070 | 0.254 |
RX 6700 XT | 0.251 |
RTX 3060 Ti | 0.244 |
RTX 3090 | 0.231 |
RTX 3080 Ti | 0.228 |
RTX 3080 | 0.221 |
RTX 2080 Ti | 0.216 |
RTX 2070 SUPER | 0.211 |
RTX 3070 Ti | 0.205 |
RTX 2080 SUPER | 0.195 |
RTX 3060 | 0.195 |
RX 5700 XT | 0.183 |
最新世代のハイエンドGPUとしては悪めの電力効率
電力効率は最新世代の他のハイエンドGPUと比べると悪めです。RTX 3070より約20%、RTX 3080より約8%劣ります。性能や価格面から考えて、電力効率は最低でもRTX 3080と同等クラスであって欲しかったですが、そうはいきませんでした。
RX 6800 XTや6900 XTに近い明らかなハイエンドGPUの消費電力で、性能的にはハイエンド上位クラスと比べると届かないくらいなので、計算前からある程度予測はできましたが、ちょっと厳しめです。
まとめ
GeForce RTX 3070 Ti
- 1440pで優れたパフォーマンス
- 4Kでも使える
- 優れたレイトレーシング性能
- RTX 3070より約2割高い(希望小売価格 599ドル)
- 消費電力が非常に多い(TDP:290W)
- RTX 3070よりコスパが悪い
- 電力効率が悪い(競合の他のハイエンドGPUと比較して)
- マイニング性能が制限されている(LHR:低ハッシュレート)
コスパは良くないし、電力効率は悪め
RTX 3070 TiはRTX 3070(無印)から約20%高くなっていますが、コア数は約4%とわずかな上昇です。メモリの速度や帯域幅は大きく上昇しているものの、ゲーミングにおける性能向上は4Kでも最大8%程度なので、コスパ的には明らかに悪くなっています。RTX 3080と比較するとRTX 3070よりはマシに見えるものの、レイトレーシング性能では大きく負けてしまっていますし、電力効率も負けているので厳しいです。
コスパはもちろんですが、特に気になるのは消費電力と電力効率です。RTX 3070からの性能向上は少しなのにも関わらず、消費電力は3割以上も上昇してしまっています。そのため、競合の他のハイエンドGPUと比べても、電力効率は悪めとなっています。
主な比較対象が効率面で優れているRTX 3070というのも印象が悪い要因の一つだとは思いますが、それを除いても高評価は与えにくいGPUな気がします。
RTX 3070 Tiが選択肢に入るのは、在庫面で他の選択が厳しい場合を除くと、メモリの帯域幅と性能を重視したいけれど、RTX 3080にするための+2~4万円をどうしても追加できないという場合に限るかなという感じです。
コスパや電力効率重視ならRTX 3070、性能重視ならRTX 3080で良い
見出しの通りです。RTX 3070 Tiは、正直あえて必要性は薄いという印象です。やはり厳しいのは価格と消費電力で、性能の割にはどちらも高すぎるというのが率直な感想です。
RTX 3070には効率面では全面的に負けており、当然安さ・コスパ・電力効率等の一般消費者が特に重視したい項目全て負けているため厳しいです。
コスパ自体はRTX 3080とは同等レベルではありますが、レイトレーシング性能では大きく負けますし、電力効率も負けています。性能重視ならRTX 3080の方が優秀ですし、価格をもう少し抑えたいという場合にもRadeon RX 6800(XT)という選択肢があります。在庫が3070 Tiしかないという場合以外には有力な選択肢とはなりにくいいと思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。
こんにちは。
素人質問で申し訳ないのですが、
3070tiの電力効率等がソフト面でのアップデートで改善されることは考えられますでしょうか?
過去の例でソフト面からの支援で、パフォーマンスが上がったようなGPUはありますか?
追記:過去の例を聞かれているのに答えていなかったので、例を追加して内容を少し修正しました。
こんにちは。
ドライバやソフトの最適化等などによってパフォーマンスが変化する可能性は考えられると思います。
たとえば最近では、レイトレーシングなどは初発時よりも最適化によって同じGPUでもパフォーマンスが向上していると思いますし、Resizable BARなどのメモリ関連機能の追加によりパフォーマンスが向上することもありました。
ただ、システム面での修正等は、特定のGPUではなく同世代の同じアーキテクチャ採用GPU全てに対して行うと思われるため、RTX 3070 Tiのみ性能が改善するということはないと思います。
また、ソフトからの支援についてですが、もしそれでパフォーマンスが上がったとしても、それはGPUのパフォーマンスではなくソフトやCPU処理側の改善と見るべきかなと思います。なので、最適化や機能の追加、ソフト側などによって性能が向上して電力効率が上昇することは考えられますが、RTX 3070 Tiだけでなく同世代の競合製品全てが恩恵を受ける可能性が高いので、RTX 3070 Tiが地位を上げる事には繋がらない可能性が高いと思います。
素早い返信ありがとうございます。
特に目立った欠点はないということで、安心しました。また、漠然とした質問で大変申し訳ないのですが、この商品に近い価格で、管理人様がおすすめするようなpcはありますでしょうか?
動画編集も考えていたりするので、hddが積んであるものだと尚嬉しいです。
最新のGPUがまだ高価なモデルしか登場していない点とGPUの高騰もあり、正直コスパと価格で張り合える他の製品はほぼ無さそうに見えます。
挙げられた製品は今の相場では非常に安く、同価格帯では最高クラスのコスパだと思います。
ありがとうございます。
管理人様が仰った通り、どうやらGPUの高騰は今後しばらく続くとのことで他メーカーの大きな値下げもなさそうだと思うので、今回はこちらを購入する方針で固めようと思います。
丁寧にご相談に乗って頂き、ありがとうございました。
初めまして。いつもサイトを拝見させて頂いてます。
現在、初のゲーミングpc購入を検討しており、素人なりに調べた結果、以下のサイト(https://h20547.www2.hp.com/is-bin/INTERSHOP.enfinity/WFS/Directplus-Customer-Site/ja_JP/-/JPY/DisplayProductInformationForConsumer-Frame?Param_DeviceKbn=sp&CategoryName=SERI:4282&ProductSKU=BASE:27902)にあるpcであれば、重すぎないゲームであればFHDでそこそこのFPSがでるのではないかという結論に至りました。
性能と価格のバランスの点と、このメーカーのゲーミングpcを使っている人があまりいないようなのですが、これには何か欠点などがあるからなのかという点についてご意見をいただきたいです。
よろしくお願いします。
はじめまして。いつもご覧いただきありがとうございます。
CPUとGPUが旧世代のものですが、特に安くてコスパの良いものが採用されているため、コスパはかなり良いと思います。また、標準でWi-FiとBluetoothが使えるのは地味に嬉しいです。100fps基準とかであれば、RTX 2060なら重いゲームでもFHDなら普通に出せると思いますよ。
安さとコスパ重視の製品なので性能面等は除くとして、製品自体に明らかな欠点みたいなものは無いと思います。
強いてあげるなら電源容量が若干少ない気がするくらいですが、GOLD電源ですし全然許容範囲内だと思います。日本であまり海外メーカーのゲーミングデスクトップPCが見られないのは、日本のBTOより最新パーツ搭載がやや遅いことや、日本のBTOが人気でコスパも悪くないこと、海外メーカーということでサポート面で不安がある方が多い、などの点などがあるのだと思います。
また、ゲーミングPCでは普通ですが、光学ドライブ類(CD・DVD・BD)はケースの仕様上利用できない点に注意するくらいだと思います(5.25ドライブベイが無いので増設もできません。USB接続のものなら使えます)。