2022年2月時点のデスクトップ向けGPUの現在価格と高騰具合のまとめです。
本記事の内容は記事執筆時点(2022年2月24日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
追記:RTX 2060の希望小売価格(MSRP)を実際よりも50ドル高い349ドルと表記していました。お詫びして訂正いたします。
概要
2022年2月現在、GPUが本来の適正価格よりも大幅に高騰しています。ですが、海外市場では若干の値下がり傾向が見られています。マイニングによる収益性が低下していることが主な要因と言われています。メーカーも供給は2022年後半には改善すると主張していたりすることもあって、もしかすると長らく続いた高騰が徐々に収束に向かっていく可能性もあるかもしれないので、月1くらいでGPUの価格動向を見ていこうかなと思いました。
具体的には、それぞれのGPUにはメーカーの希望小売価格が大体公開されていますが、そこから為替や流通マージンなどを考慮してざっくりとした本来の適正価格を算出し、現在の市場価格と比較しています。今回の記事では1ドル115円で計算し、流通などのマージンは全て合わせて雑に20%としています。しっかりした比較ではないため、その点はご了承ください。
市場価格は、筆者が各ショップや価格比較サイトを見回った際に、すぐに購入可能だった(在庫がある)ものの最安値です。
また、今回は初回の比較ですが、2回目以降は前月との結果を使用してその差も見ていきたいと思います。
NVIDIA:GeForce
まずはNVIDIAのGeForceです。
GPU | 希望 小売価格 | 国内予測 適正価格 | 市場価格 ※2022年2月24日時点 | 差 |
---|---|---|---|---|
GeForce RTX 3090 | 1,499ドル | ¥206,862 | ¥279,800 | +35.3% |
GeForce RTX 3080 Ti | 1,199ドル | ¥165,462 | ¥185,000 | +11.8% |
GeForce RTX 3080 10GB | 699ドル | ¥96,462 | ¥145,000 | +50.3% |
GeForce RTX 3070 Ti | 599ドル | ¥82,662 | ¥102,000 | +23.4% |
GeForce RTX 3070 | 499ドル | ¥68,862 | ¥109,799 | +59.5% |
GeForce RTX 3060 Ti | 399ドル | ¥55,062 | ¥84,800 | +54.0% |
GeForce RTX 3060 | 329ドル | ¥45,402 | ¥68,900 | +51.8% |
GeForce RTX 3050 | 249ドル | ¥34,362 | ¥47,800 | +39.1% |
GeForce RTX 2060 12GB | 299ドル | ¥41,262 | ¥56,800 | +37.7% |
GeForce RTX 2060 6GB | 299ドル | ¥41,262 | ¥55,800 | +35.2% |
GeForce GTX 1660 Ti | 279ドル | ¥38,502 | ¥47,800 | +24.1% |
GeForce GTX 1660 SUPER | 229ドル | ¥31,602 | ¥47,564 | +50.5% |
GeForce GTX 1650 GDDR6 | 149ドル | ¥20,562 | ¥26,980 | +31.2% |
GeForceはRTX 3080RTX 3070RTX 3060 TiRTX 3060など、コスパや電力効率に優れた人気モデルの高騰が大きく、+50%~+60%程度の価格上昇となっています。
最も高騰していたのはRTX 3070で、+59.5%でした。RTX 3060 Tiと並び、RTX 30シリーズの中では電力効率もコスパも特に優れており、マイニング・ゲーミング用途のどちらでも需要のあるモデルなので、この高騰は納得です。
ハイエンドモデルではRTX 3080の+50.3%が最も高かったです。元値が高すぎるRTX 3080 TiやRTX 3090は多少安くてもコスパが良くないため、ハイエンドモデルの中ではコスパも電力効率も比較的悪くないRTX 3080に人気が集まり、高騰するのも自然な流れです。
対して、最も価格上昇が小さかったのはRTX 3080 Tiで、+11.8%でした。希望小売価格より少し高いくらいの価格で購入することが可能です。ですが、それでもRTX 3080よりは4万円(+27.6%)も高い上、ゲーミング性能は3DMark Time Spy Graphicsだと1割程度しか変わらないので、コスパは明らかに悪いです。在庫はあまり気味で人気はない印象です。
また、ハイエンドに近いRTX 3070 Tiも+23.4%と控えめな高騰で、大きく高騰中で下位のRTX 3070の価格を下回るという珍しい現象が起きています。しかし、こちらもRTX 3070との性能差が小さいためコスパは凄く良いというほどにはならず、しかもRTX 3070 TiはRTX 3070よりも大幅に電力効率も悪いので、あまり印象が良くないこともあってか在庫はあまり気味で人気がない印象です。
最後に、直近で発売されたRTX 3050は+39.1%の高騰と人気モデルよりは若干控えめの高騰具合です。価格の安さとコスパだけ見れば悪くない選択肢ですが、メモリ性能も含めRTX 2060やRTX 3060に性能で大きめに劣ることと、電力効率も悪いこともあってか、思ったより人気にはなっていない印象です。発売当初は初回販売限定の39,800円のモデルがあり破格という扱いでしたが、このままだともう少し値下がりする可能性も高いと思うので、言うほど破格でも無かったということになりそうな気がします。
AMD:Radeon RX
次にAMDのRadeonです。
GPU | 希望 小売価格 | 国内予測 適正価格 | 市場価格 ※2022年2月24日時点 | 差 |
---|---|---|---|---|
Radeon RX 6900 XT | 999ドル | ¥137,862 | ¥175,780 | +27.5% |
Radeon RX 6800 XT | 649ドル | ¥89,562 | ¥139,800 | +56.1% |
Radeon RX 6800 | 579ドル | ¥79,902 | ¥137,500 | +72.1% |
Radeon RX 6700 XT | 479ドル | ¥66,102 | ¥89,800 | +35.9% |
Radeon RX 6600 XT | 379ドル | ¥52,302 | ¥62,980 | +20.4% |
Radeon RX 6600 | 329ドル | ¥45,402 | ¥54,800 | +20.7% |
Radeon RX 6500 XT | 199ドル | ¥27,462 | ¥29,552 | +7.6% |
AMDのRadeonは、RX 6800 XTとRX 6800が飛び抜けて高騰していることがわかります。RX 6800 XTは+56.1%で、RX 6800は+72.1%の高騰です。どちらもハイエンドながら電力効率が非常に良く、RTX 3080を上回っていることがやはり大きいのかなと思います。もちろんコスパも良いです(適正価格なら)。RX 6900 XTも劣らず電力効率は良く非常に高性能ですが、RX 6800 XTより大幅に高い割には差が小さいため、やはり予算が潤沢な人向けです。
Radeon RX 6000シリーズは、レイトレーシング性能がRTX 30に劣る弱点がありますが、RX 6800以上のハイエンドクラスなら、RTX 30には劣るけど普通に使える性能だというのも大きいかもしれません。RX 6800とRX 6800 XTはどちらもまだ大きく高騰はしていますが、在庫は普通に見つける事ができ、「RX 6800 XT」はこれでも一番高騰してた時期に比べれば安くなった方だったりします。RTX 3080と比較して、多少のレイトレーシング性能よりも電力効率の良さを重視したい場合には選択肢に入るくらいにはなっていると思います。
RX 6800についてはさすがに高騰しすぎなので、一般の人はこれを選ぶくらいならRX 6800 XTかRTX 3080の方が良いです。ただ、電力効率は最新世代の中ではかなり良いので、めちゃくちゃ大量の処理を日常的にさせたい場合にはこの価格でも選択肢に入らなくはないと思います。
RX 6700 XTは、競争力のある価格・性能帯ながら+35.9%となっており、GeForceの人気モデルと比べれば落ち着いているように見えます。なのですが、そもそも元値でのコスパが悪かったので、今の価格でも正直微妙です。RX 6700 XTより少し安価なRTX 3060 Tiと性能差があまり無い上、レイトレーシング性能に関しては負けているので、RX 6700 XTはもっと安くならないと優先して選ばれることは無いかなと思います。
ミドルレンジ帯ではRX 6600およびRX 6600 XTが約+20%となっており、お得に見えます。実際、他のGPUと比較するとコスパはかなり良いと思います。電力効率も良いですし、非常に効率的なGPUです。在庫も普通に見つける事ができますし、もっと人気が出ても良い気がします。
上述のRTX 2060もコスパは良いのに人気モデルにはなっていない点とも似ていますし、コスパの良さに割に人気が無いのは、高解像度やレイトレーシングなどの将来性を見据えて選択している人が多いのでしょうか。高騰時の今は特に高額な買い物となりますし、みんな慎重になっているのかもしれません。
最後に、直近で発売されたRX 6500 XTを見ると、+7.6%となっています。かなり適正価格に近い額で購入することが可能です。ただ、これは単純にGPU自体の性能・評価が良くないことが起因していると思われるので、お得というわけではないので注意です。
この高騰下でも3万円で手に入る安さは魅力ですが、正直それだけです。性能は最新世代の他GPUより大幅に低い上、更に電力効率も最新世代の中では悪く、一応レイトレーシング用のコアを持っていますが、使えると言って良いのかわからないレベルの低性能さです。価格の安さのおかげで、1080pでのコスパも他の人気GPUよりは良いですが、どうしても予算的に他の選択肢がない場合以外にはおすすめしないモデルです。
現在価格から見たコスパと電力効率
価格比較の次は、コスパと電力効率です。
Windowsのゲーム用の主要APIのDirectX 12(DX12)と、レイトレーシング用のDirectX Raytracing(DXR)の3DMarkのベンチマークスコアを利用し、2022年2月24日時点の価格を基に算出しています。
DX12性能:3DMark Time SpyのGraphics Scoreです。DirectX 12(DX12)の1440pゲーミングのベンチマークスコアになります。新しめの3Dゲームで主流の方式(API)です。
レイトレ性能:3DMark Port Royalのスコアです。DirectX Raytracing(DXR)のベンチマークスコアになります。
コスパ:1円あたりの性能スコアです。小数点以下が多すぎて見難いので、各数値100倍して見易い数値にしています。
電力効率:1Wあたりの性能スコアです。
性能スコアの参考:https://www.3dmark.com/
GPU | 市場価格 (22/2/24 時点) | TDP | DX12性能 (3DMark Time Spy) | レイトレ性能 (3DMark Port Royal) |
---|---|---|---|---|
RX 6900 XT | ¥175,780 | 300W | 20,062 | 10,365 |
RTX 3090 | ¥279,800 | 350W | 19,932 | 13,641 |
RTX 3080 Ti | ¥185,000 | 350W | 19,608 | 13,297 |
RX 6800 XT | ¥139,800 | 300W | 18,792 | 9,545 |
RTX 3080 10GB | ¥145,000 | 320W | 17,692 | 11,564 |
RX 6800 | ¥137,500 | 250W | 15,456 | 7,783 |
RTX 3070 Ti | ¥102,000 | 290W | 14,825 | 8,871 |
RTX 3070 | ¥109,799 | 220W | 13,789 | 8,302 |
RX 6700 XT | ¥89,800 | 230W | 12,574 | 5,941 |
RTX 3060 Ti | ¥84,800 | 200W | 11,893 | 6,978 |
RX 6600 XT | ¥62,980 | 160W | 9,698 | 4,407 |
RTX 3060 | ¥68,900 | 170W | 8,867 | 5,157 |
RX 6600 | ¥54,800 | 132W | 8,065 | 3,779 |
RTX 2060 12GB | ¥56,800 | 184W | 7,996 | 4,443 |
RTX 2060 6GB | ¥55,800 | 160W | 7,661 | 4,152 |
GTX 1660 Ti | ¥47,800 | 120W | 6,403 | 1,654 |
RTX 3050 | ¥47,800 | 130W | 6,278 | 3,605 |
GTX 1660 SUPER | ¥47,564 | 125W | 6,122 | 1,566 |
RX 6500 XT | ¥29,552 | 107W | 4,975 | 483 |
GTX 1650 GDDR6 | ¥26,980 | 75W | 3,669 | – |
GPU | コスパ (DX12) | 電力効率 (DX12) | コスパ (レイトレ) | 電力効率 (レイトレ) |
---|---|---|---|---|
RX 6900 XT | 11.4 | 66.9 | 5.9 | 34.6 |
RTX 3090 | 7.1 | 56.9 | 4.9 | 39.0 |
RTX 3080 Ti | 10.6 | 56.0 | 7.2 | 38.0 |
RX 6800 XT | 13.4 | 62.6 | 6.8 | 31.8 |
RTX 3080 10GB | 12.2 | 55.3 | 8.0 | 36.1 |
RX 6800 | 11.2 | 61.8 | 5.7 | 31.1 |
RTX 3070 Ti | 14.5 | 51.1 | 8.7 | 30.6 |
RTX 3070 | 12.6 | 62.7 | 7.6 | 37.7 |
RX 6700 XT | 14.0 | 54.7 | 6.6 | 25.8 |
RTX 3060 Ti | 14.0 | 59.5 | 8.2 | 34.9 |
RX 6600 XT | 15.4 | 60.6 | 7.0 | 27.5 |
RTX 3060 | 12.9 | 52.2 | 7.5 | 30.3 |
RX 6600 | 14.7 | 61.1 | 6.9 | 28.6 |
RTX 2060 12GB | 14.1 | 43.5 | 7.8 | 24.1 |
RTX 2060 6GB | 13.7 | 47.9 | 7.4 | 26.0 |
GTX 1660 Ti | 13.4 | 53.4 | 3.5 | 13.8 |
RTX 3050 | 13.1 | 48.3 | 7.5 | 27.7 |
GTX 1660 SUPER | 12.9 | 49.0 | 3.3 | 12.5 |
RX 6500 XT | 16.8 | 46.5 | 1.6 | 4.5 |
GTX 1650 GDDR6 | 13.6 | 48.9 | – | – |
DX12でのコスパ
恐らく現在最も主流であるDX12のコスパは、分かりやすくミドルレンジ帯の方が良くなっています。一番良いのはRX 6500 XTですが、これは他の項目が壊滅的で評価が低いGPUなためだと思うので、例外的な立ち位置として見ています。
RX 6500 XTを除くと、次点はRX 6600 XTです。レイトレ面ではやはりRTX 30シリーズに劣りますが、そこを除けばコスパが非常に良く効率的なGPUなので、レイトレ性能を重視しない場合にはおすすめできます。RX 6600も似たような傾向となっており優秀です。
GeForceではRTX 3070 TiとRTX 3060 Tiが良いコスパを示しています。ですが、この二つならやはりRTX 3060 Tiを個人的には推したいです。表を見るとわかりますが、RTX 3070 TiはRTX 3060やRTX 3070に対し、一段劣っているのが気になります。単純なコスパと最大性能は高いので選ぶ価値は十分にあるとは思いますが、個人的には効率的なGPUが好きなので、評価は低めです。
DX12での電力効率
DX12での電力効率は、低性能帯のGPUが悪いことが目立ちます。前世代のGPUもあるので当たり前とも言えますが、最新世代でもRTX 3050やRX 6500 XTの電力効率も悪いので、現代のGPUは使う電力が少なくなるほど電力効率が悪くなる傾向があるように見えます。電力効率を重視するなら、最低でもRX 6600以上の性能のものを選ぶのが無難かもしれません。
一番良かったのはRX 6900 XTでした。RTX 3090と比較しても約15%優れた数値となっています。レイトレーシング性能は劣りますが、素の電力効率の良さのおかげでレイトレでも電力効率では悪くはないレベルになっています。非常に高価なので簡単には手を出し辛いですが、電力効率を最重視するなら優秀です。
ただし、価格的にやはり一般的とは言えないので、現実的な価格のモデルで注目してみると、RX 6800 XT、RX 6800、RTX 3070、RTX 3060 Ti、RX 6600 XT、RX 6600あたりが有力です。中でも、レイトレでの電力効率も考慮すると、優秀なのはRTX 3070、RTX 3060 Tiの二つなので、レイトレも重視する効率的なGPUを探している人はどちらかがおすすめです。
また、旧世代GPUほどではないけど、ミドルレンジ以上の最新世代で電力効率が悪いGPUとしてRTX 3060とRTX 3070 Tiがあります。どちらも価格の割には優れたメモリを搭載しているのが特徴のGPUなので、そこを活かせる用途なら良いと思いますが、そうでない場合には効率的には良くないGPUとなる点に留意です。
レイトレーシングでのコスパ
レイトレーシング(DXR)でのコスパは、ミドルレンジ帯が良いものが多いです。一番良いのはRTX 3070 Tiでした。後述の電力効率はあまり良くない点は気になりますが、レイトレコスパは全GPU中でもかなり優れており、DX12でのコスパも良いので、最大性能や純粋なコスパを重視する場合には最適だと思います。
電力効率も込みで考えると、RTX 3080、RTX 3070、RTX 3060 Tiが優秀です。
レイトレーシングでの電力効率
レイトレーシング(DXR)での電力効率は、上位GPUほど良くなる傾向があります。レイトレ支援用のコア数が上位モデルほど多くなるので当然ですけれど。
中でも良い数値を示しているのがRTX 3090、RTX 3080、RTX 3080 Ti、RTX 3070あたりです。分かりやすくRTX 30シリーズの上位モデルです。レイトレをするならやはりRTXの上位モデル安定と言えると思います。
ミドルレンジ以下では軒並みハイエンドクラスに比べると一段落ちる電力効率となっており、RTX 3060 Tiだけがちょっと良いくらいです。RTX 3060 Tiはレイトレコスパも優れているので、ハイエンドは厳しいけどレイトレも出来るだけ楽しみたいという場合には最適のGPUだと思います。
まとめ
2022年2月下旬時点では、値下がり傾向は日本ではそこまで感じられないというのが正直な印象です。ただ、RTX 3070 Tiなど一部のモデルでは大きめの値下がりがあるのも確かなので、来月に期待です。また、少し前から円安ドル高になってきているらしく、これの時期が丁度値下がり傾向が出たと言われた時期に一致するので、もしかしたらそこが噛み合って価格が維持されているだけなのかもしれません(関係あるのか知らないけど)。
ここからは余談ですが、記事全体として各モデルの評価とか個人的な意見を多く書きすぎた感があります。来月も調査して今月分の結果と照合して見ていきたいと思っているので、その際には問題となっている価格動向に焦点を当てて書きたいと思います。
転売価格も順当に下がってきてるし、後は初夏にロンチされる新型を待てば値崩れがあるからも…という期待と同時に、世界情勢の不安定化でやはり値上がりするかなぁ…という不安感が半々です。