【モバイル版】Ryzen 6000シリーズの性能を発表内容から雑に予測【性能比較】

大分遅くなりましたが、2022年1月初めのCES2022にて、モバイル版のRyzen 6000シリーズが発表されたので、ざっと見ていきたい思います。

今月(2022年2月)から早いものは搭載製品が発売されるかもしれないとのことなので、発売直線の確認として見ていきましょう。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年2月12日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

ざっくり要点まとめ

Ryzen 6000シリーズでは、5000シリーズから製造プロセスが7nmから6nmへとわずかに微細化し、アーキテクチャもZen3からZen3+になり、改良されています。ただし、コア数は前世代と同じ最大8コアとなっています。プロセスの微細化もわずかですし、アーキテクチャもZen3+というこで、どちらかというと新世代というより改良版という位置付けなのかなという印象です。とはいえ、AMDによると、性能は1.3倍になっているそうです。

CPU性能も注目ですが、やはり目玉はGPUです。Ryzen 6000シリーズでは遂に内蔵GPUのアーキテクチャがVegaからRDNA 2へと刷新されます。Vegaは改良はされているとはいえ古いアーキテクチャなのに対し、RNDA 2は現行のdGPUモデルであるRadeon RX 6000シリーズと同じアーキテクチャベースのものとなるので、性能や効率は大幅な向上が期待されます。更に、Ryzen 6000シリーズではメモリもDDR5に対応し、メモリ帯域幅も大幅に拡張されることになります。これも内蔵GPUにとっては非常に大きな恩恵です。AMDはGPU性能は前世代比で2倍になっていると主張しています。

その他にも、USB4、Wi-Fi 6E、AV1デコードなどへの対応があり、プラットフォーム面での強化が図られています。Intelとの差を縮めようという狙いが見えます。

また、性能や規格対応面だけでなく、電力効率も大幅に向上していると主張しています。前世代と比較し、それぞれ最大ビデオエンコードで-30%、ウェブブラウジングで-15%、動画のストリーミング視聴で-40%の電力削減が可能らしいです。電力効率面では、前世代の時点でCoreシリーズを大幅に上回っていたので、更に大幅に良くなるとなると、モバイルPCではIntelの立つ瀬が無くなってしまうのではと思います。ここはやはりプロセス微細化での優位性が活きている印象です。デスクトップでは多少の電気料金増加が気にならなければ、良い電源とクーラーを投入するだけで差は軽微に見える部分ですが、バッテリー駆動時間も重要なノートPCでは非常に大きな要素の一つなので、Intel側はかなり厳しい立場になってしまう気がします。

発表では、現行の各CPUやGPUとの相対的な性能差がざっくりとですが示されたので、この後見ていきます。

Ryzen 6000(モバイル)要点まとめ
  • プロセスルールは7nm→6nm(TSMC)
  • 前世代からCPU性能は2倍、GPU性能は2倍に
  • CPUはZen3→Zen3+に コア数は前世代から変わらず(最大8コア)
  • GPUはVegaからRDNA 2に刷新 最大CU数は12 内蔵GPUで初のハードウェアレイトレーシング対応
  • Thunderboltのネイティブ対応は無しっぽいけど、USB4(最大40Gbps)に対応
  • LPDDR5、DDR5 対応
  • Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 対応
  • PCIe 4.0 対応
  • AV1ハードウェアデコード 対応
  • 電力効率の向上(前世代と比較し、それぞれ最大ビデオエンコードで-30%、ウェブブラウジングで-15%、動画のストリーミング視聴で-40%の電力削減)

簡易比較表

スペックの簡易比較表です。同時に発表された5000シリーズ(前世代)のリフレッシュ版も一緒に載せています。AMDの発表資料をほぼそのままです。

簡易比較表

U-Series
GPU プロセス
ルール
アーキ
テクチャ
GPU
アーキテクチャ
コア/
スレッド
クロック
定格
クロック
最大
L2+L3
キャッシュ
GPU
CU数
GPUー最大
クロック
TDP
Ryzen 7 6800U 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 2.7GHz 4.7GHz 20MB 12 2.2GHz 15W-28W
Ryzen 7 6600U 6nm Zen3+ RDNA 2 6/12 2.9GHz 4.5GHz 19MB 6 1.9GHz 15W-28W
Ryzen 7 5825U 7nm Zen3 Vega 8/16 2.0GHz 4.5GHz 20MB 8 1.8GHz 15W
Ryzen 5 5625U 7nm Zen3 Vega 6/12 2.3GHz 4.3GHz 19MB 7 1.6GHz 15W
Ryzen 3 5425U 7nm Zen3 Vega 4/8 2.7GHz 4.1GHz 10MB 6 1.5GHz 15W

H-Series
GPU プロセス
ルール
アーキ
テクチャ
GPU
アーキテクチャ
コア/
スレッド
クロック
定格
クロック
最大
L2+L3
キャッシュ
GPU
CU数
GPUー最大
クロック
TDP
Ryzen 9 6980HX 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 3.3GHz 5.0GHz 20MB 12 2.4GHz 45W+
Ryzen 9 6980HS 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 3.3GHz 5.0GHz 20MB 12 2.4GHz 35W
Ryzen 9 6900HX 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 3.3GHz 4.9GHz 20MB 12 2.4GHz 45W+
Ryzen 9 6900HS 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 3.3GHz 4.9GHz 20MB 12 2.4GHz 35W
Ryzen 7 6800H 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 3.2GHz 4.7GHz 20MB 12 2.2GHz 45W
Ryzen 7 6800HS 6nm Zen3+ RDNA 2 8/16 3.2GHz 4.7GHz 20MB 12 2.2GHz 35W
Ryzen 5 6600H 6nm Zen3+ RDNA 2 6/12 3.3GHz 4.5GHz 19MB 6 1.9GHz 45W
Ryzen 5 6600HS 6nm Zen3+ RDNA 2 6/12 3.3GHz 4.5GHz 19MB 6 1.9GHz 35W

GPUのCU数に注意(Ryzen 7は12、Ryzen 5だと6)

まず注意しなければならないと思ったのは、内蔵GPUのCU数です。Ryzen 7以降は12CUなのに対し、Ryzen 5だと6CUと半減しています。最大クロックも少し下がっていますし、普通に考えればグラフィック性能は半分未満になるはずです。かなり大きな差です。重い処理も想定した内蔵GPU運用を考えている場合には、必ずRyzen 7 以上のモデルを選ぶ必要がある点は要注意だと思いました。

末尾UモデルのTDPが15W-28W表記に

末尾Uの省電力モデルで、TDP(大体の消費電力の目安)の値が、前世代では15Wで統一されていたのが6000シリーズでは15W-28Wの拡張表示へと変わっています。

とはいえ、元々前世代までも、OEM側は25Wまで設定することが可能でしたし、これはいわゆるTDP(PL1)の値であり、実質の最大であるTDP(PL2)の値は恐らく別なので、消費電力が増えたというよりは分かりやすい表記にしたという感じなのかなと思います。

ただし、前世代までは最大25Wだったのが28Wになっているので、わずかながら定格時の最大消費電力は増加していることが予想されます(ただし、電力効率は別の話なので、バッテリー持ちが悪くなるという訳ではないです)。モバイル端末向けのCPU(SoC)全体に言えることですが、いくらプロセス微細化などによって省電力性や電力効率が向上しても、8コア以上のCPUに最大限性能を発揮させるためには10W~20W台の電力では限界があるのだろうなというのが予測できます。

次からは性能予測的な話をしていきたいと思います。

CPU性能(予測)

発表では「Ryzen 7 6800U」の性能を「Ryzen 7 5800U」と比較したものが示されました。中からCinebench R23のベンチマークを利用し、その予測値を算出し、他の主要CPUと比較してみたいと思います。かっちりとしたものではなく雑な予測なので、その点はご了承ください(後のGPU比較も含め)。

ただし、少し気になる点があります。注意書きで「Ryzen 7 5800U」は15Wと表示されているのに対し、「Ryzen 7 6800U」では28Wと表示されている点です。これが単に各CPUのスペックを載せただけなのか、それとも実テスト環境の設定を載せたものなのかはわからないですが、「Ryzen 7 6800U」に少し有利な環境での測定の可能性がある点は留意しておきましょう。現行のZen3のRyzenを見る限りでは高負荷時には効率的なCPUだと思うので、その差は電力差ほどは出ない気はしますが、一応注意です。

他スコアについては別のベンチマークサイトを参照しています(記事上部にリンクを置いています)。

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

発表では、シングルスレッド性能は「Ryzen 7 6800U」が「Ryzen 7 5800U」より11%高速と示されていました。

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Ryzen 7 6800U
1568 (予測)
Core i7-1165G7
1438
Ryzen 7 5800U
1425
Ryzen 5 5600U
1358
Core i5-1135G7
1343
Core i3-1115G4
1312
Ryzen 7 5700U
1259
Ryzen 5 5500U
1173
Core i7-10510U
1136
Core i7-1065G7
1131
Ryzen 3 5300U
1129
Core i5-1035G4
1119
Core i5-10210U
1062
Core i3-1005G1
1055
Core i3-10110U
1032

現行の同TDPモデルとの比較ではトップだけど

11%向上を反映すると上記のような感じになりました。現行のTDP15W~28Wモデルと比較するとダントツの高性能です。ただし、ほぼ同時に発表されたIntelの第12世代Coreシリーズではもっと大きい向上率が予想されています。単純に「Ryzen 7 5800U」と比較して最大クロックが300MHz高くなっている点もありますし、わずかとはいえ、プロセス微細化を伴う新世代CPUとしては向上率は控えめかなと思います。

また、現行モデルとの比較でも、第11世代CoreのTDP35W~45Wモデルと同じくらいの性能となります。旧世代CPUでもクロックを少し上げれば追い付くレベルです。デスクトップ版CPUを見てもそうですが、RyzenはやはりシングルスレッドはCoreよりやや苦手な印象を受けますね。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

発表では、シングルスレッド性能は「Ryzen 7 6800U」が「Ryzen 7 5800U」より28%高速と示されていました。

Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Ryzen 7 6800U
10762 (予測)
Ryzen 7 5700U
8660
Ryzen 5 5600U
8463
Ryzen 7 5800U
8408
Ryzen 5 5500U
7057
Ryzen 3 5300U
5522
Core i7-1165G7
5076
Core i5-1135G7
4938
Core i7-10510U
3932
Core i7-1065G7
3859
Core i5-1035G4
3800
Core i5-10210U
3794
Core i3-1115G4
3236
Core i3-1005G1
2221
Core i3-10110U
2142

シングルスレッド性能から想像できない向上率

シングルスレッド性能は約1割の向上なのに、マルチスレッド性能では約3割という大きな向上率です。

性能の近いCPUを挙げると「Ryzen 7 4800H」が近いです。コア・スレッド数が同じ45WCPUと同じ性能を28Wという省電力で実現しているので、非常に電力効率が良くなっていることがわかります。もう少しスコアを高く見積もると、「Core i7-11800H」などにも近く、大体一つ前の8コア45WクラスのCPUの性能を28Wで実現していることになります。単純計算で1.3倍以上の電力効率の向上を実現していることになります。

現状、TDP28Wの8コアCPUでこのスコアは驚異的で、非常に効率的なCPUという印象を受けます。仮に15Wに制限したとしても十分に高い性能が得られると思うので、モバイルPCでは非常に強力なCPUになると思います。

ちなみに、元の「Ryzen 7 5800U」のスコアが正直少し低く出ている印象もあるので、実際にはもう少し高いスコアとなる可能性もあるかもしれませんが、逆にテストでは電力面で「Ryzen 7 6800U」が有利な測定になっている可能性もあるので(前述)、プラスマイナスで良い塩梅になっているかもしれません。

GPU性能

次に内蔵GPUの性能を予測して見ていきたいと思います。正直こちらが本命です。

発表時に公開されたスライドでは、各ゲームでの「Ryzen 7 5800U」と「Ryzen 7 6800U」の性能差が示され、概ね2倍という驚異的な向上率を主張していました。これが本当であれば、エントリーレベルのdGPUは本当に必要なくなったと言っても過言ではないと思います。ここでは本当であると仮定して、「Ryzen 7 5800U」の2倍の性能ということでスコアを算出して見ていきます。スコアについては別のベンチマークサイトを参照しています(記事上部にリンクを置いています、GPUについては主にnotebookcheckのデータを参考にしています)。

ただ、CPUの方でも前述したように、「Ryzen 7 5800U」が15Wなのに対し「Ryzen 7 6800U」が28Wで動作している可能性がある点は留意です。現行のZen3のRyzenを見る限りでは高負荷時には効率的なCPUだと思うので、その差は電力差ほどは出ない気はしますが、一応注意です。

ベンチマークスコア

まずはやはりベンチマークスコアで変換してみたいと思います。3DMarkのTime SpyのGraphics Scoreです。Windowsの現在最も主流のAPIの一つであるDX12のゲーミング性能です。

3DMark Time Spy Graphics
GPU名称 スコア
GeForce GTX 1650 Ti Max-Q
3140
GeForce GTX 1050 Ti Mobile
2347
Radeon 680M
Ryzen 7 6800U
2346 (予測)
Iris Xe Graphcs G7 96EU
Core i7-1165G7 等
1589
Radeon RX Vega 8
Ryzen 7 5800U 等
1173
Iris Xe Graphics G7 80EU
Core i5-1135G7 等
1131
Radeon RX Vega 7
Ryzen 5 5600U 等
1045
Radeon RX Vega 6
Ryzen 3 5300U 等
854
Iris Plus Graphics G7
Core i7-1065G7 等
789
UHD Graphics Xe G4
Core i3-1115G4 等
723
Iris Plus Graphics G4
Core i5-1035G4 等
646
UHD Graphics G1
Core i3-1005G1 等
446
UHD Graphics 630
Core i7-10510U 等
356

モバイル版の「GTX 1050 Ti」と同等の性能

Ryzen 7 5800Uに搭載されている「Radeon RX Vega 8」のスコアを2倍にすると、モバイル版の「GTX 1050 Ti」と同等のスコアになりました。5年前の2017年発表の古いGPUかつエントリーミドル下位くらいのグレードのものではありますが、GDDR5を4GB搭載した外部GPU(要するにグラボ)です。

5年前のエントリー~ミドル下位くらいのGPUという表現をすると非力な印象もあるかもしれませんが、表を見ても分かる通り、これでも現行の内蔵GPUよりは大幅に高性能です。重いゲームでも1080p以下なら普通に使える性能があります。もし本当に「Ryzen 7 6800U」がこのクラスの性能ならこれは常識が覆るレベルの凄さです。重いゲームで内蔵GPUが普通に使える性能を持つことになります。

ただ、スコアだけだと少し分かりにくいと思うので、具体的なゲームでのfps比較も見ていきたいと思います。

ゲームでのフレームレート

スコアだとちょっと分かり難いので、次はゲームでのフレームレート(FPS)を見ていきます。

FPSの「APEX LEGENDS」と、MMO RPGの「FF XV ベンチマーク」のフレームレートを見ていきます。

例により、「Ryzen 7 6800U」のGPUは「Ryzen 7 5800U」の2倍のfpsとして算出しています。何度も言いますが、凄く雑な予測なので、あくまで参考程度にしてください。

APEX LEGENDS

多分最近日本では特に人気のFPSゲームのAPEXです。3DのFPSゲームなので重めのゲームと言えますが、重めのゲームの中では軽い方のゲームだと思います。

1920×1080 中設定
GPU名称 フレームレート
GTX 1650 Mobile
84.2
Radeon 680M
Ryzen 7 6800U
69.4 (予測)
GTX 1050 Ti Mobile
52.3
Iris Xe Graphcs G7 96EU
Core i7-1165G7 等
39
Iris Xe Graphics G7 80EU
Core i5-1135G7 等
37.7
Radeon RX Vega 8
Ryzen 7 5800U 等
34.7
Radeon RX Vega 7
Ryzen 5 5600U 等
27.3
Radeon RX Vega 6
Ryzen 3 5300U 等
22.7
Iris Plus Graphics G7
Core i7-1065G7 等
19.2
Iris Plus Graphics G4
Core i5-1035G4 等
18.6
1920×1080 高設定
GPU名称 フレームレート
GTX 1650 Mobile
68.4
Radeon 680M
Ryzen 7 6800U
53.2 (予測)
GTX 1050 Ti Mobile
43.3
Iris Xe Graphcs G7 96EU
Core i7-1165G7 等
30.0
Iris Xe Graphics G7 80EU
Core i5-1135G7 等
28.2
Radeon RX Vega 8
Ryzen 7 5800U 等
26.6
Radeon RX Vega 7
Ryzen 5 5600U 等
20.8
Radeon RX Vega 6
Ryzen 3 5300U 等
17.5
Iris Plus Graphics G7
Core i7-1065G7 等
14.5
Iris Plus Graphics G4
Core i5-1035G4 等
14.0

1080pなら60fps以上出そう

1080p中設定で69.4fpsという予測値になりました。驚くべき数値です。単純に倍にしているから当たり前ですが、これまでは内蔵GPUではせいぜい30fps程度が限界だったのが、一気に60fps以上という普通に”使える”レベルまで押し上げられることになります。

ただし、60fpsという数値自体は高くはなく、滑らかで没入感の高いゲームプレイとまではいきません。そのため、依然としてレベルの高いゲーム体験を求めるなら外部グラフィックス(グラボ)が必要という点では変わらないですが、ライトユーザーや若年層の参入の敷居が大きく下がる可能性があると思います。

FF XV ベンチマーク

FF XV(ファイナルファンタジー15)のベンチマークテストでのスコアです。FF XVは重いゲームの中でも重量級のゲームにあたります。フレームレート(fps)で結果が表示されるため分かりやすい他、前述のように重量級のゲームでハイエンドGPUの性能を試すのにも最適なため、GPUのベンチマークとしてよく用いられます。

1920×1080 中設定
GPU名称 フレームレート
GTX 1650 Mobile
50.1
GTX 1050 Ti Mobile
37.1
Radeon 680M
Ryzen 7 6800U
35.8 (予測)
Iris Xe Graphcs G7 96EU
Core i7-1165G7 等
21
Iris Xe Graphics G7 80EU
Core i5-1135G7 等
15.8
Radeon RX Vega 8
Ryzen 7 5800U 等
17.9
Radeon RX Vega 7
Ryzen 5 5600U 等
15.7
Radeon RX Vega 6
Ryzen 3 5300U 等
12.9
Iris Plus Graphics G7
Core i7-1065G7 等
10.0
Iris Plus Graphics G4
Core i5-1035G4 等
1920×1080 高設定
GPU名称 フレームレート
GTX 1650 Mobile
35.9
Radeon 680M
Ryzen 7 6800U
24.6 (予測)
GTX 1050 Ti Mobile
23.4
Iris Xe Graphcs G7 96EU
Core i7-1165G7 等
16.5
Iris Xe Graphics G7 80EU
Core i5-1135G7 等
12.9
Radeon RX Vega 8
Ryzen 7 5800U 等
12.3
Radeon RX Vega 7
Ryzen 5 5600U 等
10.4
Iris Plus Graphics G7
Core i7-1065G7 等
7.8
Radeon RX Vega 6
Ryzen 3 5300U 等
7.5
Iris Plus Graphics G4
Core i5-1035G4 等

重量級のゲームではまだやや厳しい性能

FF XVでは1080p中設定で30fps中盤という結果になりました。今までは内蔵GPUでは高性能なものでも10fps台なので使えると言えないレベルだったのか、一応”動く”というレベルまで上がったのは凄いことですが、30fps台ではまだ普通に使えるとは言えないレベルだと思います。

また、GPUへの要求スペックの高いゲームではメモリ性能の重要度が増すためか、GTX 1650との差が広がっています。それぞれ1080p中設定で、APEXでは約17.6%のマイナスだったのが、FF XVでは約25.9%のマイナスになっています。これは単純にVega 8の数値を2倍にした予測値なので実際にはどうかわかりませんが、やはりグラフィック設定が上がるほどメモリ容量や帯域幅がVRAM(GDDR)よりも劣るという内蔵GPUの弱みが強く出てしまう可能性が十分にあるのかなと思います。

どちらにせよ、雑で実際よりは高いスコアが出そうな今回の予測値でも厳しい結果になったという事を考えると、やはり特に重量級と言えるゲームでは安定運用は厳しく、低~中設定なら一応動くくらいのものになるのかなと思います。

雑感

ついに内蔵GPUでも重いゲームがプレイできる時代がきたかも

遂に内蔵GPUでも重いゲームが普通にプレイできる時代がきたかもしれません。これまでは、重い3Dゲームでは外部グラフィックスが必須というのが一般認識であったと思いますし、実際そうでしたが、その常識がついに変わる時がきたかもしれません。

「Ryzen 7 6800U」と「Radeon 680M」の組み合わせなら、発表内容からの雑な予測値ながら、APEXの1080p中設定では約70fpsというスコアです。滑らかな映像や競技性を重視する場合の高いパフォーマンスにはまだまだ届きませんが、普通に”使える”性能です。実際にはもう少し低い結果になるとしても、平均50fps~60fpsくらいは出ると思うので、普通に使えるレベルまで性能が押し上げられるのは間違いないと言っても良いと思います。

高いレベルや安定を求めるなら外部GPUが必要という点は変わらないですが、ライトユーザーや若年層の参入の敷居を大きく下げることに貢献することになる可能性はあると思います。

また、そうなると、GeForce MX450などのエントリーレベルの外部GPUは存在意義が大きく失われてしまうことになると思います。MX 450などのエントリーレベルのモバイルdGPUではエンコーダが搭載されていないものもあるのに対し、内蔵GPUならエンコードやデコードの対応も幅広く、汎用性が高い点も大きいです。より省電力で高い性能を一つのCPU(SoC)で対応することが可能になると、あえて性能の低い外部GPUを搭載する必要性を感じません。内蔵GPUだけだと、一台のPCでの同時の多画面出力は性能的には厳しいので、そういう点では活きる場面が無いとは言い切れないですが、かなり需要は限られてしまうので、やはり存在意義は限りなく小さくなってしまうのかなと思います。

モバイル版のRyzen 6000シリーズは、GPU事情を大きく変える、革新的なものになる可能性は十分にあるモデルだと思います。

ただし、劇的に高性能になるのは Ryzen 7 以上限定な点に注意

前述のように、GPUや重いゲームでの常識を変える革新的なモデルになる可能性を秘めている「Ryzen 6000シリーズ」ですが、そのレベルの性能を出せるのは「Ryzen 7 以上限定」という点には十分に注意する必要があります。

これはなぜかというと、GPUの実行ユニット数が Ryzen 7以上のモデルでは12なのに対し、Ryzen 5では実行ユニット数が半分の6になっているためです。最大クロックがRyzen 5では下がっていることも考慮すると、単純計算でグラフィック性能は半分以下になります。そうなると現行の上位モデルGPUと同じか少し低いくらい性能になってしまうので、ここまで褒めちぎったような高い性能は出ません。

Ryzen 5000 シリーズでは、Ryzen 7 と Ryzen 5 の内蔵GPUの実行ユニット数の差は1しか無かった(8と7)ので、前世代を知っている人は特に注意する必要がある点も少しいやらしい感じがします。

そして、「Ryzen 7 以上を選ぶ必要がある」となると、当然ながら費用は高くなる点もあります。しかも、従来のようなCPUの価格差だけでなく、今回はDDR5のメモリ価格も意識する必要があります。デスクトップ市場のDDR5メモリ価格は現在非常に高価であり、これが当面上乗せされるとなると、PC本体価格を大きく押し上げてくる可能性があるのも悩ましい点です。

実際に発売されるまではわからないですが、結局前世代の安価なゲーミングPCの方がゲーミングコスパは良いなんて可能性もあるかもしれません。とはいえ、省電力性やモバイル性では間違いなく負けないと思うので、結局総合的に見て不利にはならなそうな気はしますが…早いものは今月(2月)から発売される可能性があるらしいので、待ちましょう。


という感じで本記事の内容は以上です。かなり期待が持てるモデルになっていると思います。

ただし、個人的に一番惜しいのは、残念ながら初発表モデルではRyzen 7以上じゃないと劇的なグラフィック性能の向上は得られない感じな点です。現行モデルでRyzen 7は安いモデルでも9万円~10万円しますから、DDR5メモリ採用で登場直後はやや高価になる可能性もあるRyzen 6000シリーズでは10万円以上は必至な気がします。12万円~とか極端なことにならなければ、それでも競争力があるレベルだとは思いますが、「内蔵GPUで重いゲームができるようになれば、重いPCゲームが遥かに身近になる」という構想の実現には至らなかった気もするのも事実です。

何にせよ、割とすぐらしい発売を楽しみに待ちたいと思います。

余談:デスクトップ版は出ない可能性が高い?

実はリークなんかでは言われていたことですが、今回のRDNA 2のGPU搭載のRyzen 6000シリーズをベースにしたデスクトップ版のAPUは出ない可能性が高いかもしれません。

これは製造プロセスが6nmであり、デスクトップ版の現行(Ryzen 5000シリーズ)の7nmとも、次期(Ryzen 7000シリーズ)の5nmとも異なるためです。

プロセス微細化を伴うアーキテクチャの変更では基本的にソケット形状が変わるので、互換性を持たせることができません。そうなると、浮いている6nmプロセスの新しいCPUを投入するためには、それ専用の対応ソケットとチップセットを持ったマザーボードを新たに市場に用意する必要がありますが、恐らく数モデルしかないCPU、しかもRyzen 7000シリーズのせいですぐに旧世代化することが確定しているものを投入する可能性は極めて低そうという感じです。

デスクトップでも今回予測されているレベルのグラフィック性能のAPU自体には物凄く需要はあると思うのですが、デスクトップ側ではIntelが内蔵GPUには大して力を入れていないため、無理して投入する必要も正直ないという面もあるかもしれません。期待していた人が居たら、残念ですが諦めた方が良いかもしれません(断言はできませんが)。

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