「Ryzen 9 6900HS」に搭載されているGPU「Radeon 680M」のゲーミング性能を比較・評価しています。「RDNA 2」アーキテクチャ採用で大幅な性能向上が期待されていますが、その実力をさくっと見ていきます。
ただし、本記事で見る「Radeon 680M」のゲーミング性能は「Ryzen 9 6900HS」なので、実際に需要が大きそうな「Ryzen 7 6800U」とは少し性能が異なる可能性がある点に注意です。また、前置きが少し長いので、性能だけが気になる方は目次から「ゲーミング性能」を選ぶと飛ばすことができます。
本記事の情報は記事執筆時点(2022年3月14日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
Ryzen 6000シリーズについて
モバイル版のRyzen 6000シリーズは、Ryzen 5000シリーズの後継モデルです。プロセスルールが前世代の7nmから6nmにわずかに微細化された他、GPUが「RDNA 2」採用のものへと刷新されることが大きなポイントです。また、メモリがDDR5に対応して帯域幅が大幅に拡張されることも、特に内蔵GPUにとっては大きなプラス要素となっています。
GPUで今まで採用されていたVegaは今ではかなり古いアーキテクチャだったので(多少の改良はされているとは思うけど)、これが一気に最新のものへと更新されるということは飛躍的な性能向上が見込めるということで期待されていました。それこそ、重い3Dゲームもそれなりに動かせるのではということと、DDR5メモリよる帯域幅拡張の恩恵もあって、動画編集でもかなり対応力を上げる期待もあります。本記事ではそのGPUのゲーミング性能を見ていきます。
ちなみに、本記事ではCPU面は割愛しますが、Ryzen 6000シリーズのCPUのアーキテクチャは前世代の「Zen3」の改良版の「Zen3+」となっています。大幅な更新とはなっていない上、コア数も据え置きです。使える電力が非常に少ないモバイル向けCPUでは、コア数の増加やアーキテクチャの刷新を伴わない場合には性能は大きくは変わらない傾向があるので、CPU面では大幅な性能向上は無さそうな印象です。
また、対抗のIntelの第12世代のCoreプロセッサーでは、高効率コアの追加でコア数を増やしたことによりCPU性能(マルチスレッド性能)も大きく伸ばしたため、処理性能ではIntelの方が上回っています。ただし、第12世代Coreプロセッサーでは内蔵GPUは前世代からの更新がありませんでした。
そのため、AMDにとっては、今回扱うGPUでどれだけの差を付けるかという点が、競争力を持つためには非常に重要になっています。
RDNA 2 アーキテクチャの内蔵GPU
軽く上述しましたが、Ryzen 6000シリーズでの大きなポイントの一つが内蔵GPUです。RDNA 2 アーキテクチャへと刷新され、
本記事でゲーミング性能を見るのは「Ryzen 9 6900HS」に搭載の「Radeon 680M」ですが、これはRyzen 6000シリーズの内蔵GPUでは最上位のモデルになります(初発モデルでは)。「Radeon 680M」はRyzen 9 だけでなく Ryzen 7 にも搭載されますが、クロックが若干低い点に注意です(Ryzen 9:最大2.4GHz、Ryzen 7:最大2.2GHz)。
また、Ryzen 5 でも同じアーキテクチャの「Radeon 670M」GPUが搭載されるものの、GPUコア数が6となっており「Radeon 680M」の12の半分しかないので、性能は圧倒的に低い点にも注意です。今まで以上に、内蔵GPUを重視したいならRyzen 7以上を選ぶことが重要になっています。
本記事では「Ryzen 9 6900HS」に搭載される「Radeon 680M」の性能を見ていきますが、「Ryzen 9 6900HS」を含むHシリーズは主にゲーミングPCやクリエイターPC向けで、内蔵GPUよりも遥かに高性能な外部グラフィックスが搭載されることが基本です。そのため、内蔵GPUは実質的に意味を持ちません。
実際に内蔵GPU運用されることがメインなのはUシリーズ(省電力モデル)で、初発モデルで「Radeon 680M」を搭載するのは「Ryzen 7 6800U」の一つだけです。
そのため、本記事は「Ryzen 7 6800U」のGPU性能を推し測るためのプレビュー記事だということに留意してください。また、その辺りの違いや、前世代のZen3との違いを下記の表にまとめています。
簡易比較表
GPU | GPU | GPUコア数 (最大クロック) | TDP | CPU コア/スレッド | 対応メモリ |
---|---|---|---|---|---|
Ryzen 9 6900HS | RDNA 2 | 12 (2.4GHz) | 35W | 8/16 | DDR5 |
Ryzen 7 6800U | RDNA 2 | 12 (2.2GHz) | 15-28W | 8/16 | DDR5 |
Ryzen 5 6600U | RDNA 2 | 6 (1.9GHz) | 15-28W | 6/12 | DDR5 |
Ryzen 7 5825U | Vega | 8 (1.8GHz) | 15W | 8/16 | DDR4 |
Ryzen 5 5625U | Vega | 7 (1.6GHz) | 15W | 6/12 | DDR4 |
「Ryzen 9 6900HS」ではGPUの最大クロックが2.4GHzでTDPが35Wとなっているのに対し、「Ryzen 7 6800U」はクロックが2.2GHzでTDPが最大28Wという点が、GPU面での主な違いです。また、テスト機体はゲーミングPCとなっており、一般的なスタンダードPCやモバイルPCよりも冷却性に優れているので、その面でも少し差があります。
これらの差で性能にどれだけの影響があるかは不明ですが、大きくても2割程度、現実的なところだとおおよそ15%前後くらいのマイナスが妥当なのかなと思っています。それらを念頭におき、性能を見ていきましょう。
ゲーミング性能
前置きが少し長くなりましたが本題です。いくつかのゲームでの実際のフレームレート(以下:fps)の平均を見ていきます。全て1080p時のもので、低~中設定です。
テスト機体はASUSの「ROG Zephyrus G14」です。CPUは「Ryzen 9 6900HS」で、GPUはCPUに内蔵されている「Radeon 680M」を利用します。PC自体には「Radeon RX 6800S」という遥かに強力な外部グラフィックスが搭載されていますが、本記事は内蔵GPUを見たいので、あえて無効にして内蔵GPUを利用した場合のゲーミング性能を見ていきます。
メモリには32GBのDDR5-4800メモリが使用されており、前世代よりも帯域幅が大幅に拡張されています。また、比較では「Core i7-12700H」の内蔵GPUでのパフォーマンスも載せていますが、こちらも同じ32GB DDR5-4800メモリを使用しています。メモリ性能の向上抜きで、GPU自体の差が分かりやすいと思います。
その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
レインボーシックスシージ
GPU名称 | 平均fps |
---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 205 |
Core i7-1165G7 (28W,DDR4) GTX 1650 (50W) | 119 |
Ryzen 9 5980HS (35W) GTX 1650 Max-Q (35W) | 114 |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 89 |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 66 |
Core i7-1165G7 (28W,LPDDR4X) Iris Xe G7 96EU | 63 |
Ryzen 7 5980HS (45W) Radeon RX Vega 8 | 55 |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 50 |
Ryzen 7 5800U (25W) Radeon RX Vega 8 | 47 |
比較的軽いレインボーシックスシージでは平均89fpsでした。1080p中設定です。
Core i7-12700Hと比べると約35%高速でした。Vega 8 搭載のRyzen 5000シリーズと比べると、約1.8倍~1.9倍程度高速となっており、前世代から飛躍的に性能が向上していることがわかります。
リフレッシュレートが60HzのPCなら平均89fps出れば十分すぎる性能ですし、快適なプレイになると思います。
ただし、やはり外部グラフィックスには劣っています。とはいえ、GTX 1650 Max-Qというかなり低性能な部類のものに対しては約28%程度の差に留まっており、かなり迫っています。とはいえ、RTX 3050となると倍以上の差になっており、ミドルレンジ最下位クラスのGPUでも最新のものとは性能には大きな隔たりがあることがわかります。
Resident Evil 2(バイオハザード RE:2)
GPU名称 | 平均fps |
---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 120 |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 49 |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 37 |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 23 |
バイオハザード RE:2では平均49fpsでした。1080pの中設定です。
Core i7-12700Hよりも約32.4%高速で、使用電力も少ない上でこのリードは素晴らしいです。前世代のRyzen 7 5800Hには2倍以上の差を付けており、飛躍的に向上しています。
Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)
GPU名称 | 平均fps |
---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 240 |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 120 |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 102 |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 84 |
軽いゲームのCS:GOは、今回のテストの中で唯一第12世代Coreよりも低い結果になっていました。平均102fpsとなっており、Core i7-12700Hの120fpsよりも15%劣る結果になっています。
RTX 3050との差が2倍に留まっていることを考えても、CS:GOはややCPU性能が重要なゲームなのかもしれません。
そのため、CPUの処理性能で勝るCore i7-12700Hが有利となった可能性や、使用電力がCore i7-12700Hの45Wより少ない35Wだったことなどが原因として考えられると思います。
ただし、102fpsという数値自体は良好で、プレイは快適といえると思います。
Age of Empires IV
GPU名称 | 平均fps |
---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 88 |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 39 |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 27 |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 20 |
重量級のゲームであるAoEでは、平均49fpsを記録しました。1080p中設定です。
Core i7-12700Hと比べると約44.4%高速でした。大きな差となっています。Ryzen 7 5800Hに対しては約2倍弱の差となっており、やはり飛躍的に向上しています。しかも、使用電力は10W少ない状態です。
fps自体は快適と言える部類のものではないと思いますが、重量級ゲームを普通にプレイできるようになったのは大きな躍進で、革命的だと思います。
RTX 3050にはやはり倍以上の差を付けられているため、外部グラフィックスの大きな優位性は変わりませんが、ライトゲーマーや一般の人の重量級ゲームへの参入という点では大きな意味を持つと思います。それに、外部グラフィックス搭載GPUよりは電力効率が圧倒的に優れているので、バッテリー寿命やランニングコストを考えれば大きく優位です。
Watch Dogs Legion
GPU名称 | 平均fps |
---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 83 |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 39 |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 29 |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 22 |
重量級ゲームのウォッチドッグスレギオンでは、平均39fpsでした。1080p低設定です。
一つ上のAoEと似たような結果になっていますが、Core i7-12700HやRTX 3050への優位性をわずかに上げており、重くてfpsが低いゲームほど優位性が出ている印象です。
こちらもやはり快適なプレイとは言えないと思いますが、普通にプレイはできるレベルです。
Gears 5
GPU名称 | 平均fps |
---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 99 |
Core i7-1165G7 (28W,DDR4) GTX 1650 (50W) | 65 |
Ryzen 9 5980HS (35W) GTX 1650 Max-Q (35W) | 54 |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 46 |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 34 |
Core i7-1165G7 (28W,LPDDR4X) Iris Xe G7 96EU | 30 |
Ryzen 7 5980HS (45W) Radeon RX Vega 8 | 26 |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 24 |
Ryzen 7 5800U (25W) Radeon RX Vega 8 | 20 |
こちらも重いゲームであるGears 5では、平均46fpsでした。1080p中設定です。
Core i7-12700Hと比べると約35.3%高速でした。全体的に35%前後の差となっている印象です(一部例外はあるけど)。Vega 8 搭載のRyzen 5000シリーズと比べると、約2倍前後高速となっています。飛躍的な向上です。
ゲーミング性能差まとめ
上記の各ゲームのfps比較をまとめています。
数値:平均fps | シージ | バイオ2 | CS:GO | AoE IV | WD:L | Gears 5 |
---|---|---|---|---|---|---|
Core i7-11800H (45W) RTX 3050 (80-95W) | 205fps (+130.3%) | 120fps (+144.9%) | 240fps (+135.3%) | 88fps (+125.6%) | 83fps (+112.8%) | 99fps (+115.8%) |
Ryzen 9 6900HS (35W) Radeon 680M | 89fps | 49fps | 102fps | 39fps | 39fps | 46fps |
Core i7-12700H (45W) Iris Xe G7 96EU | 63fps (-29.2%) | 37fps (-24.5%) | 120fps (+17.6%) | 27fps (-30.8%) | 29fps (-25.6%) | 34fps (-26.1%) |
Ryzen 7 5800H (45W) Radeon RX Vega 8 | 50fps (-43.8%) | 23fps (-53.1%) | 84fps (-17.6%) | 20fps (-48.7%) | 22fps (-43.6%) | 24fps (-47.8%) |
全体的に見ると、Core i7-12700H(Iris Xe G7 96EU)はRyzen 9 6900HS(Radeon 680M)の-25%程度のゲーミング性能となっています。
25%と聞くと大きな差には見えない人も居るかもしれませんが、Ryzenが60fps出せる場合にCoreは45fpsしか出せないことになりますから、かなり大きいです。それに、使用電力がRyzen 9 6900HSの方がやや少ないこともあります。その差自体は圧倒的というほどではないですが、実用性的には劇的に変わったといっても良いのではないかと思います。
Ryzen 7 6800Uでは若干のクロックや使用電力の低下があるので、パフォーマンスは少し落ちてしまうとは思いますが、Ryzen 9 6900HSが重量級ゲームでも39fpsを記録していることを考えると、低下を考慮しても30fpsは達成できそうに思います。
ただし、一部の恐らくCPU性能やIPCが高いほど有利なゲームでは、第12世代Coreの方がパフォーマンスが高い可能性がある点は注意です。重めのほとんどのゲームはGPUが重要なので、大きな弱点にはならないとは思いますが、自分がプレイしたいゲームはどうなのかを把握しておくと良いと思います。
まとめ
Radeon 680M 内蔵GPU(Ryzen 9 6900HS)
- 1080p低~中設定なら、重量級ゲームも平均30fps以上出る
- DDR5メモリ対応で、メモリの帯域幅が大幅に拡張(動画編集などでも強化)
- 非常に優れた電力効率
- Ryzen 5 搭載の「Radeon 670M」はコア数が680Mの半分で性能が大幅に低下するので要注意
- 重いゲームでは快適なパフォーマンスとは言えない(平均60fpsを大きく下回る)
- 未だにThunderbolt 4に未対応
- CPU性能は第12世代Coreの方が高い
重量級ゲームでも30fpsを突破
Ryzen 9 6900HS(Radeon 680M)は、AoEやウォッチドッグスレギオンなどの特に重量級ゲームでも平均40近いfpsを出しており、普通にプレイが可能なレベルまで性能を押し上げています。Ryzen 7 6800Uでは多少の性能低下が予想されるものの、30fpsは届きそうに思います。
重めのゲームの中でも、先に挙げたほどのものでなければ40~60fpsが期待できる性能です。ディスプレイのリフレッシュレートが60Hzが基本のスタンダードPCやモバイルPCでは要求を丁度満たせるレベルのパフォーマンスです。そのfps自体は低いですし、局所的な高負荷を考えると安定とは言えないのも事実ですが、「重いゲームをするならグラボが必須」という今までの常識を変えたモデルになったという気がしています。
下位レベルの単体GPUの存在意義が大きく薄れた?
Radeon 680Mのグラフィック性能の飛躍的な向上は、下位レベルの単体GPUの存在意義を大きく下げる可能性があると思います。たとえば、GeForceのMXシリーズやGTX 1650などの下位モデルです。
これらの下位GPUは、Radeon 680Mよりパフォーマンスが多少上でも、重いゲームではぬるぬるというほど快適な性能は得られないです。今回のテストではGears 5で、Radeon 680Mは46fpsだったのに対し、GTX 1650は65fpsでした。この差小さくはないため、性能面での優位性は十分感じられるものだとは思いますが、その差が、1万円以上の追加費用に加え、消費電力や発熱の増加というデメリットの上に成り立つものだとすると、微妙な差だと思います。また、単体GPU搭載機ではよりファン数の増加や、本体が分厚く重くなる可能性もあります。
これから単体のGPUの性能もより向上していくでしょうから、もしかしたら一時的なものかもしれませんが、少なくとも現状では個人的にはMXシリーズ搭載機やGeForce GTX 1650搭載機を選ぶくらいなら、Ryzen 6000シリーズの上位機種で内蔵GPU運用の方が汎用性は高く、コスパが良いと思います。
最新の単体のGPUには大きな性能差がある
Radeon 680M の内蔵GPUとしての評価は、従来品と比べると別格であり革新的だと思います。ただし、最新の単体GPUに対しては大きな性能差があるという点は変わらない点は注意です。
上述のように、旧世代のGTX 1650などの下位GPUに対しては、性能では多少負けていても、コストや使用電力などのデメリットを考えれば微妙な差です。
ですが、最新世代のRTX 30シリーズと比べると、最下位モデルのRTX 3050にすら2倍以上の差があります。その上、CPU用のDDR5より遥かに帯域幅が広く高速なGDDR6を搭載しているため、より高解像度なゲームや動画編集などでは更に大きな優位性があります。
Radeon 680M にはコストの少なさと使用電力の少なさという大きなメリットがあるため、用途や状況によっては一概にはグラボより悪いとは言えませんが、あくまで高いレベルを求めないなら重い用途でも一応使えるGPUという点は留意しておく必要があります。
Ryzen 6000シリーズのCPU性能は第12世代Coreに劣る
今回はGPUに焦点を当てた記事なので、CPUには深く触れていませんが、Ryzen 6000シリーズのCPUの処理性能は第12世代Coreよりも劣っている点は忘れてはいけない点です。「Ryzen 9 6900HS」と「Core i7-12700H」との比較では、マルチスレッド性能が約15%~20%、シングルスレッド性能では約13%、Core i7の方が高速でした。
ただし、この比較は「Ryzen 9 6900HS」のTDPが35Wなのに対し、「Core i7-12700H」は45Wと使える電力が有利な点もありますし、使用電力はTDPだけ見ると「Ryzen 9 6900HS」の方が約22%少ないですが、上述の性能比較では13%~20%程度の優位性となっているため、電力効率ではRyzen有利の可能性もある点は留意しておいても良いかもしれません(とはいえ、それ込みでもほぼ同等なので、最大性能が高いCoreの方が有利かも)。
最大性能については上述の電力面も含め、Ryzen 6000はアーキテクチャが前世代ベースの最高8コアに対し、第12世代Coreは新アーキテクチャで最高14コア(省電力モデルでは12コア)ですから仕方ないともいえますが、その差はやはり大きいです。やはり高効率コアが追加されてコア数が増えた第12世代Coreの性能は非常に強力で、ゲームでも一部のものでは有利になる面もありましたし、内蔵GPUを除けば第12世代Coreの方が上という印象です。
そのため、CPU性能を求める場合にはCore、内蔵GPU性能を求めるならRyzenという棲み分けになると思います。
また、これは同時に単体のGPUを搭載することが前提のゲーミングノートPCやクリエイターPCでは、第12世代Core一択になるということも示しています。元々RyzenはThunderboltなどのインターフェース面でCoreに劣るため避けられていたこともありますし、より競争力を失ってしまったというのが正直な印象です。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。