AMD「Radeon RX 7900 XTX / 7900 XT」のざっくり性能比較・評価です。レビューが解禁されたので、海外レビューを参考に見ていきます。ちなみに日本での発売は12月16日となっており少し間があります。
世界初のチップレット設計のGPUである「Radeon RX 7000シリーズ」の第1弾が遂に登場です。先に登場している「RTX 4090」および「RTX 4080」に続く次世代のハイエンドGPUです。「RTX 40シリーズ」よりも明らかにリーズナブルな価格設定でコスパが非常に期待されているモデルの実力を見ていきます。
本記事の情報は記事執筆時点(2022年12月13日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
※記事掲載当初「RX 7900 XT」のTBPを300Wと表記していましたが、正しくは315Wでした。お詫びして訂正いたします。
仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2022年12月13日時点での北米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
GPU | シェーダー ユニット数 | メモリタイプ | メモリ速度 メモリ帯域幅 | レイトレ用 ユニット数 | ダイサイズ | 消費電力 (TGP等) | 北米 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 16384 | GDDR6X 24GB 384bit | 21.0Gbps 1008GB/s | 128基 | 608㎟ | 450W | 1,599ドル |
RTX 4080 | 9728 | GDDR6X 16GB 256bit | 22.4Gbps 716.8GB/s | 76基 | 380㎟ | 320W | 1,199ドル |
RX 7900 XTX | 6144 | GDDR6 24GB 384bit | 20Gbps 960GB/s | 96基 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 355W | 999ドル |
RX 7900 XT | 5376 | GDDR6 20GB 320bit | 20Gbps 800GB/s | 84基 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 315W | 899ドル |
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB 384bit | 21.0Gbps 1008GB/s | 84基 | 628.4㎟ | 450W | 1,499ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB 384bit | 19.5Gbps 936GB/s | 82基 | 628.4㎟ | 350W | 1,299ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 18Gbps 576GB/s | 80基 | 519㎟ | 335W | 949ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 80基 | 519㎟ | 300W | 699ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB 384bit | 19Gbps 912GB/s | 80基 | 628.4㎟ | 350W | 1,099ドル |
RTX 3080 10GB | 8704 | GDDR6X 10GB 320bit | 19Gbps 760GB/s | 68基 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 72基 | 519㎟ | 300W | 599ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB 256bit | 19Gbps 608GB/s | 48基 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 60基 | 519㎟ | 250W | 549ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB 256bit | 14Gbps 448GB/s | 46 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit | 18Gbps 432GB/s | 40 | 336㎟ | 250W | 419ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB 192bit | 14Gbps 448GB/s | 38 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit | 16Gbps 384GB/s | 40 | 336㎟ | 230W | 379ドル |
Arc A770 16GB | 4096 | GDDR6 16GB 256bit | 17.5Gbps 560GB/s | 32 | 406㎟ | 225W | 349ドル |
Arc A770 8GB | 4096 | GDDR6 8GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 32 | 406㎟ | 225W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB 192bit | 15Gbps 360GB/s | 28 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 17.5Gbps 280.3GB/s | 32 | 237㎟ | 180W | 299ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 16Gbps 256GB/s | 32 | 237㎟ | 160W | – |
Arc A750 | 3584 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 28 | 406㎟ | 225W | 289ドル |
RTX 3050 | 2560 | GDDR6 8GB 128bit | 15Gbps 224GB/s | 20 | 276㎟ | 130W | 249ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB 128bit | 14Gbps 224GB/s | 28 | 237㎟ | 132W | 239ドル |
GTX 1660 SUPER | 1408 | GDDR6 6GB 192bit | 14Gbps 336GB/s | – | 284㎟ | 125W | 229ドル |
RX 6500 XT | 1024 | GDDR6 4GB 64bit | 18Gbps 144GB/s | 16 | 107㎟ | 107W | 169ドル |
GTX 1650 GDDR6 | 896 | GDDR6 4GB 128bit | 12Gbps 192GB/s | – | 200㎟ | 75W | 149ドル |
RX 6400 | 768 | GDDR6 4GB 64bit | 16Gbps 128GB/s | 12 | 107㎟ | 53W | 149ドル |
Arc A380 | 1024 | GDDR6 6GB 96bit | 15.5Gbps 186GB/s | 8 | 157㎟ | 75W | 129ドル? |
今回見ていく「Radeon RX 7900 XTX」および「Radeon RX 7900 XT」は「Radeon RX 7000シリーズ」におけるハイエンドモデルです。また、同シリーズの初投入モデルです。GeForceではすでに「RTX 4090」および「RTX 4080」のハイエンドGPUが市場に投入されていますが、希望小売価格はそれぞれ1,599ドルと1,199ドルとなっているのに対し、「RX 7900 XTX」と「RX 7900 XT」はそれぞれ999ドルと899ドルとなっており、明らかに安価なのが魅力です。
「RX 7000シリーズ」ではダイ構造が従来とは異なるチップレット設計となっている点も注目です。従来のような単一ダイでの実装ではなく、複数のダイからなる構成となっています。「RX 7900 XTX」および「RX 7900 XT」で使用される「Navi 31」では、大型のコンピューティングダイ(GCD)一つに加え、メモリ制御キャッシュダイ(MCD)を6つという構成です。各MCDあたり16MBのInfinity Cacheと4GB VRAM(64bit)を担う形になっています。「RX 7900 XTX」ではMCDが6つ全て有効となっているため、最終的に96MBのInfinity Cacheと24GBの384bit VRAMとなりますが、「RX 7900 XT」ではMCDの一つが無効になるため、80MBのInfinity Cacheと20GBの320bit VRAMとなります。
プロセスについては、メインのコンピューティングダイ(GCD)は5nmプロセスで、メモリ制御キャッシュダイ(MCD)では6nmプロセスに基づいています。対抗の「RTX 40シリーズ」のTSMC 4Nは5nmと言われているので、ほぼ同等という形になりました。
とはいえ、差はわずかですし、チップレット設計の強みもあります。5nmに加えて、わずかに古くて恐らく安価な6nmプロセスも併用することにより、コスト削減かつ歩留まりの改善により供給量の確保へ貢献する可能性があります。その影響かどうかはわかりませんが、実際に初発モデルでは明らかに「RX 7000シリーズ」の方が安価です。性能差次第ではありますが、戦略としても、消費者側としてもかなり利のある設計なのかなと感じます。
主要なコア仕様は、「RX 7900 XTX」はストリーミングプロセッサーが6144(96EU)、レイトレーシングアクセラレータが96、「RX 7900 XT」ではストリーミングプロセッサーが5376(84EU)、レイトレーシングアクセラレータが84などとなっています。「RX 7900 XT」ではXTXよりも各コアなどが約12.5%削減されている形です。
また、先にも触れたようにメモリ性能も「RX 7900 XT」の方がやや低いです。MCD一つが無効化されている影響で各スペックが約16.7%低くなっています。具体的には、XTXでは384bitの24GB GDDR6でメモリバス帯域幅は960GB/sとなっているのに対し、XTでは320bitのGDDR6でメモリバス帯域幅も800GB/sとなっています。
価格はXTXは999ドルでXTは899ドルとなっており、低下率は約10%となっています。各コア削減率(12.5%)やメモリ性能低下率(16.7%)よりも値下げ幅が小さいため、カタログスペック上はXTの方がコスパは若干悪く見えるというのが第一印象です。
ただし、大まかな消費電力の目安の数値であるTBPもXTXが355WでXTは315Wとなっており、約11.3%減でコア削減率とほぼ同等です。実際の消費電力や電力効率についてはこの後見ていきます。
その他の面については、まずレイトレーシングアクセラレータが前世代から更新された第2世代になっている点で変更があります。「RTX 40シリーズ」でもRTコアが更新されたので、お互いの向上によって差がどうなったのかは注目です。
コーデック面でも「RTX 40シリーズ」と同じく、AV1のデコードだけでなくエンコードに対応しました。これで、NVIDIA、AMD、そしてIntelと、主要GPUメーカー全ての最新モデルがAV1エンコードに対応しました。今はまだNVIDIAとAMDがハイエンドモデルしか投入していないため普及にさほど影響はないと思いますが、廉価モデルまで発売が進むと、AV1が主要コーデックとの柱になる動きが急速に進むかもしれません。
また、アップスケーリング技術について、「RTXシリーズ」では「DLSS」用の「Tensorコア」が搭載されていますが、AMDは「FSR」という専用コアが必要ないアップスケーリング技術を推していることもあって専用コアによるアップスケーリングがない点ではやや不利という点にも一応触れておきます。DLSSを利用したい場合にはRTXを選ぶ必要があります。
さすがに新世代ということで新要素が多く前置きが長くなりましたが、次から実際の性能を見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。使用されたCPUは「Core i9-13900K」となっています。2022年12月時点でのハイエンドCPUです。
OSはWindows 10が使用されているため、Windows 11で報告例のあるゲーミングパフォーマンスが低下する問題は発生していません。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2022年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 279.1 |
RX 7900 XTX | 251.7 |
RTX 4080 | 250.9 |
RX 7900 XT | 228.6 |
RTX 3090 Ti | 211.0 |
RTX 3090 | 195.9 |
RX 6900 XT | 193.8 |
RX 6800 XT | 184.6 |
RTX 3080 10GB | 178.7 |
RTX 3070 Ti | 153.8 |
RX 6800 | 150.4 |
1080pでは RX 7900 XTX は RTX 4080 と同等の驚異的な性能。XTは約9%下回る性能で、RTX 3090 Tiを上回る
1080pゲーミングです。まず「RX 7900 XTX」ですが、「RTX 4080」とほぼ同等の性能となっています。非常に高性能で1080pでは正直オーバースペック気味です。十分すぎる性能ですが、正直XTXは若干上回ることを予想していたため、想定よりは伸びなかった印象です。
とはいえ、「RX 7900 XTX」は999ドルに対し「RTX 4080」は1199ドルとなっており、200ドルも安いです。1080pゲーミングでのコスパは「RX 7900 XTX」が大きく上回ります。
ちなみに、「RTX 4090」には約9.8%劣る結果でした。価格差とコスパでは優位に立つため需要は十分あると思いますが、最上位モデルの純粋な性能勝負では負けています。「RTX 4090」はやはり規格外でした。
次に「RX 7900 XT」ですが、XTXや「RTX 4080」よりは約9%ほど劣る結果になっています。性能では若干劣るものの、非常に高性能で1080pで困ることは恐らくほぼないレベルなので、使用感的には現状大差はないと思います。その上で、XTXより10%(100ドル)安いためコスパはほぼ同等で、「RTX 4080」とは300ドルも差があるので、コスパは大幅に上回ります。
ただ、1080pでは「Core i9-13900K」といえどボトルネックが発生していてもおかしくない性能のため、これがGPUの性能差と断言はできない点は注意です。しかし、少なくとも現状では1割未満の性能差で「RTX 4080」よりは大きく安くので節約したいなら魅力的です。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 242.4 |
RX 7900 XTX | 205.5 |
RTX 4080 | 202.9 |
RX 7900 XT | 183.7 |
RTX 3090 Ti | 171.8 |
RTX 3090 | 156.0 |
RX 6900 XT | 151.4 |
RX 6800 XT | 142.2 |
RTX 3080 10GB | 139.7 |
RX 6800 | 120.6 |
RTX 3070 Ti | 117.8 |
1440pでもRX 7900 XTX は RTX 4080 とほぼ同等。RX 7900 XTは約10%前後下回る性能
1440pゲーミングです。まず「RX 7900 XTX」は「RTX 4080」に大して1080pよりはごくわずかに差を広げて約1.3%ほど上回っていますが、ほぼ同等と言える範囲です。「RTX 3090 Ti」と比べても約19.6%も上回る性能で、非常に高性能です。重いゲームが中心の最高設定の平均でも200fps超えですから、1440pでも現状不満を感じることはまずない性能です。コスパは「RTX 4080」を大きく上回っています。1440pで240fpsを焦点とするなら現状最も適していそうな印象を受けます。
次に「RX 7900 XT」ですが、XTXと「RTX 4080」には約10%前後劣る結果になっています。性能自体は十分高性能ですし、価格差的にもコスパは良いです。
メモリ面での性能差が気になるXTでしたが、1080pおよび1440pではさほどその影響は出ていない印象で、思ったよりもゲーミングコスパは良さそうです。1440pで165fpsあたりを目指すなら十分な性能ですし、タイトルや設定によっては240fpsも厳しくはない性能なので、「RTX 4080」よりは安価かつ丁度良い性能のハイエンドGPUに見えます。とはいえ、折角のハイエンドGPUで100~300ドルの予算追加で1割の性能向上が得られるのであれば、ヘビーユーザーはそちらの方が魅力的に感じる人は多そうなので、実際に選ばれる可能性は低そうな気もします。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2022年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 158.7 |
RX 7900 XTX | 128.7 |
RTX 4080 | 124.4 |
RTX 3090 Ti | 108.9 |
RX 7900 XT | 108.4 |
RTX 3090 | 96.1 |
RX 6900 XT | 88.5 |
RTX 3080 10GB | 85.2 |
RX 6800 XT | 82.6 |
RX 6800 | 71.3 |
RTX 3070 Ti | 70.0 |
4Kでは RX 7900 XTX が RTX 4080 を約3.5%とわずかに上回る。XTは1440pまでよりも差が少し広がる
ボトルネックの影響が小さいことが期待できる4K性能です。
まず「RX 7900 XTX」は、「RTX 4080」を約3.5%上回る性能となっており、ほぼ同等だった1440p以下から差をわずかに差を付けています。非常に優れたメモリの恩恵が出ているかもしれません。前世代のハイエンドGPUである「RTX 3090 Ti」と比較すると約18.7%上回る驚異的な性能となっており、4Kでも144fps~165fpsが十分視野に入るレベルです。このGPUが999ドルというのが前世代までからすると考えられないレベルです。
ただ、「RX 7900 XTX」の性能が凄いのは間違いないですが、それすらも大きく超える「RTX 4090」の凄さも際立ちます。「RX 7900 XTX」に約23.3%もの差を付けているという規格外の性能です。価格が1.6倍なのでコスパではさすがに「RX 7900 XTX」に軍配が上がるものの、性能では頭一つ抜けたものを見せています。また恐ろしいことに、1080pでの差は約9.8%、1440pでの差は約18%となっていたため、4Kでまた差を広げています。1440pですら「RTX 4090」にとってはボトルネックが発生していたと言え、4Kでも発生している可能性があるため、CPUなどが更に高性能になれば4Kでも更に差が開く可能性すらあるという…。同じ最上位とはいえ価格差が大きいため競合と言えるかは怪しいものの、「RTX 4090」の異常さも際立つテスト結果でした。
次に「RX 7900 XT」ですが、XTXには約15.8%、「RTX 4080」には約12.9%ほど劣る結果になっています。1440pまでは10%程度の差だったため、4Kで差が広がっています。XTXにはメモリで劣るため4Kではやや差が開くことは予想していましたが、メモリでは有利なはずの「RTX 4080」にも差をわずかとはいえ広げられたのは意外でした。また、1440pまでは「RTX 3090 Ti」よりもやや高いスコアを記録していましたが、4Kではほぼ同等という結果になっています。
XTXと比較すると、価格差は10%なのに対して性能差は約15.8%ですから、4Kでのゲーミングコスパはやや負けていることになります。性能自体は十分に高性能と言え、144fps~165fpsもタイトルや設定次第で狙える高性能さですし、安さの優位性はあるので選ぶ価値は十分あるとは思いますが、このクラスのハイエンドGPUを選ぶ人が100ドル差で性能が15%も上がるなら躊躇する理由が無さそうな気がします。それに、「RTX 4080」に対しての差も少し気になりますから、需要としてはやや微妙になるかもしれない気がします。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。
GPU名称 | 消費電力 |
---|---|
RX 6800 | 235W |
RX 6800 XT | 298W |
RTX 3070 Ti | 302W |
RTX 4080 | 304W |
RX 6900 XT | 305W |
RX 7900 XT | 320W |
RTX 3080 10GB | 336W |
RX 7900 XTX | 356W |
RTX 3090 | 368W |
RTX 4090 | 411W |
RTX 3090 Ti | 537W |
「RX 7900 XT」のゲーミング時の消費電力は356W、XTは320Wで、従来のハイエンドGPU並み
ゲーミング時の消費電力は「RX 7900 XTX」は356W、「RX 7900 XT」は320Wとなっています。どちらもTBPに近い値でした。
性能を考えれば前世代のGPUよりはもちろん良いですが、「RTX 4080」や「RTX 4090」と比べるとやや悪いように見えるのが懸念点です。
ワットパフォーマンス
ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077」です。
GPU名称 | 1フレームあたりの消費電力 |
---|---|
RTX 4080 | 4.0W |
RTX 4090 | 4.2W |
RX 7900 XTX | 4.7W |
RX 7900 XT | 5.0W |
RX 6800 | 5.9W |
RX 6900 XT | 6.3W |
RTX 3090 | 6.3W |
RX 6800 XT | 6.5W |
RTX 3080 10GB | 6.5W |
RTX 3070 Ti | 7.3W |
RTX 3090 Ti | 8.0W |
前世代のGPUを大きく上回る効率で素晴らしいが、RTX 4080 / 4090 にはやや負ける
「RX 7900 XTX / XT」のどちらとも前世代の高効率GPUを大きく上回る効率を記録しており、素晴らしい効率のGPUであることがわかります。「RX 7900 XTX」を前世代で最高効率の「RX 6800」と比較すると、約20.3%少ない電力でのフレーム生成能力があります。大きな向上です。
GeForceは8nmから5nmと大きな微細化だったのに対し、Radeonは7nmから5nm + 6nmと実は小さな微細化だったために、特に効率面での成長が微妙なのではないかと気になるところでしたが、ちゃんと大きく向上していました。
ただし、残念ながら「RTX 4080 / 4090」には負けてしまう結果になりました。「RTX 4080」と「RX 7900 XTX」を比較すると、1フレームあたりの消費電力は「RTX 4080」の方が約14.9%も少なく、効率は大きく上です。どちらも非常に優れているのは前提としての話ですが、思ったよりも差がありました。
本体価格の差はあるものの、総合のゲーミング性能はほぼ同等(4Kでは7900 XTXが若干有利)で、電力効率は大きめに「RTX 4080」が勝るという結果です。効率をどれだけ重視するかは人によるものの、膨大な処理を日常的に行う場合には、意外にも費用面でも差はそこまでなく、拮抗しているかもしれません。
また、シリーズの全体的な話として、前世代(RX 6000 vs RTX 30)ではRadeonの方が効率ではやや有利という感じでしたが、次世代ではGeForceがやや上をいくということになるかもしれません。
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはまだ出てさほど時間が経っていない手法な上、メインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性もあります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 191.5 |
RTX 4080 | 162.2 |
RX 7900 XTX | 138.7 |
RTX 3090 Ti | 136.0 |
RTX 3090 | 123.6 |
RX 7900 XT | 123.5 |
RTX 3080 10GB | 109.6 |
RX 6900 XT | 96.8 |
RTX 3070 Ti | 90.5 |
RX 6800 XT | 90.2 |
RX 6800 | 77.9 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 151.0 |
RTX 4080 | 120.8 |
RX 7900 XTX | 103.1 |
RTX 3090 Ti | 100.0 |
RTX 3090 | 90.3 |
RX 7900 XT | 89.8 |
RTX 3080 10GB | 79.9 |
RX 6900 XT | 68.5 |
RX 6800 XT | 64.1 |
RTX 3070 Ti | 63.8 |
RX 6800 | 55.0 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 88.0 |
RTX 4080 | 66.1 |
RX 7900 XTX | 56.8 |
RTX 3090 Ti | 56.6 |
RTX 3090 | 49.8 |
RX 7900 XT | 48.7 |
RTX 3080 10GB | 43.0 |
RX 6900 XT | 36.2 |
RX 6800 XT | 33.8 |
RTX 3070 Ti | 29.1 |
RX 6800 | 29.1 |
レイトレーシングではRTX 4080に大きく負ける(XTXで13%~15%程度)
残念ながら、レイトレーシング性能は前世代と変わらずRTXに後れを取る形になっています。というか、ようやく前世代の「RTX 30シリーズ」に追いついたレベルなので、正直勝ち目は無かった感じです。
fpsはタイトルによって結構ばらつきはあるものの、平均ではおおよそ「RX 7900 XTX」が「RTX 3090 Ti」に近く、「RX 7900 XT」は「RTX 3090」に近いという結果となっています。
「RTX 4080」と比較してみると、1440pでは「RX 7900 XTX」は約14.7%劣り、「RX 7900 XT」は約25.7%劣る結果になっています。「RTX 4080」の方が高価なため単純なコスパでは別に不利という訳ではないものの、やはりハイエンドGPUでこの性能差は気になりますし、レイトレーシングはさすがにこのレベルのGPUでも低負荷ではないため、144fps~165fps安定かも怪しいレベルなのでレイトレーシングを重視するなら「RTX 4080」に分があると思います。
また、単純なレイトレーシング性能だけでなく、「RTX 40シリーズ」では負荷軽減に大きく貢献するDLSS 3.0にも対応しますから、その点でも優位性があります。両方対応のタイトルはまだ少ないものの、DLSS 3.0の負荷軽減効果はかなりのものなので、レイトレーシングで使えると非常に強力です。
まとめ
Radeon RX 7900 XTX
- RTX 4080とほぼ同等の非常に高いパフォーマンス
- RTX 4080よりも安価
- 1440pや4Kでも非常に高いパフォーマンス
- 非常に優れた超大容量メモリ(24GB GDDR6 960GB/s)
- 非常に優れた電力効率
- 優れたレイトレーシング性能
- AV1のデコードおよびエンコードをサポート
- 高価(希望小売価格:999ドル)
- 非常に多い消費電力(TBP:355W)
- レイトレーシング性能がRTX 4080よりも大幅に低い
Radeon RX 7900 XT
- RTX 3090 Tiを上回る非常に高いパフォーマンス
- RTX 4080よりも安価
- 1440pや4Kでも非常に高いパフォーマンス
- 優れた超大容量メモリ(20GB GDDR6 800GB/s)
- 非常に優れた電力効率
- 実用的なレイトレーシング性能
- AV1のデコードおよびエンコードをサポート
- 高価(希望小売価格:899ドル)
- RX 7900 XTX の方がコスパが良い
- 非常に多い消費電力(TBP:315W)
- レイトレーシング性能がRTX 4080よりも大幅に低い
- 4Kではパフォーマンスが少し低下
Radeon RX 7900 XTX:超高性能メモリ搭載で非常に優れたコスパのハイエンドGPU(レイトレ除く)
「RX 7900 XTX」は「RTX 4080」に近い性能を持ちつつ、24GBの超高性能メモリを搭載したハイエンドGPUです。特にメモリはバス幅も384bitで帯域幅も960GB/sもあり、その性能は「RTX 4090」や「RTX 3090 Ti」にも匹敵するレベルです。それでいて価格は「RTX 4080」の1199ドルよりも大幅に安い999ドルという価格で、コスパが良いのが魅力です。1,000ドル以下で24GBの960GB/sメモリ搭載という破格のメモリ性能もクリエイティブ用途や4K運用を考えると非常に魅力的です。
「RTX 4080」に近い性能ということで、1080p/360fpsや1440p/240fpsを狙えるレベルの超高性能となっており、「RTX 4080 / 4090」よりは少し現実的な価格でワンランク上のゲーム体験を実現できる仕上がりになっています。
「RTX 4090」にはさすがに大きく負ける性能ではあるものの、大幅に安い価格でコスパは明らかに良いです。「RTX 4080」に対してもほぼ同等の性能で200ドル安いため、現状の最新のハイエンドGPUの中では特に優れたコスパを持つハイエンドGPUです。現状では最強コスパと称しても良いと思います。電力効率も前世代から向上していますし、コスパも重視しつつ出来るだけ高い性能のGPUを求めるのであれば、現状筆頭になるGPUだと思います。
このように、「RX 7900 XTX」のコスパは非常に素晴らしいです。ただし、レイトレーシング性能は正直残念でした。前世代からの向上はもちろん見られるものの、平均でようやく「RTX 3090 Ti」に追いついたレベルです。印象的とは言えない性能です。「RTX 4080 / 4090」も前世代から大きくレイトレーシング性能が向上したため、結局対抗世代での差としては縮まった印象はなく、またしばらくは「レイトレならRTX」という時代が続くことを予感させる性能でした。
とはいえ、そもそもレイトレーシングがまだ一般的に利用されるものでもないと思いますし、性能自体は「RTX 3090 Ti」クラスで十分高性能とは言えるレベルなので、レイトレーシングを特に重視しているという訳でなければそこまで気にならないかもしれません。ただし、やはりレイトレーシング性能を重視する場合や、折角のハイエンドGPUに弱点があるのは嫌だという人は「RTX 4080 / 4090」の方が無難ではあると思います。
また、電力効率は優れているとは言ったものの、「RTX 4080 / 4090」には負けている点も一応注意です。長期的に高負荷で使い倒すという場合には、本体価格による優位性よりも効率重視の方が節約できるケースもあるかと思うので、用途を考えて選択する必要はあるかもしれません。
Radeon RX 7900 XT:RTX 3090 Tiより良いけど、XTXの方がコスパが良い印象
「Radeon RX 7900 XT」は20GBメモリを搭載し、「RTX 3090 Ti」を上回る性能(レイトレ除く)を持つハイエンドGPUです。一見最上位モデルにも思えるモデル名ですがXTXがあるために2番目のモデルとなっている点に注意です。各コア数なども1割ちょっと削減されています。
希望小売価格は899ドルとなっており、「RTX 3090 Ti」よりは明らかに安いためコスパは良く、メモリも価格の割には高性能な20GBの320bitメモリを搭載しています。高すぎない価格でハイエンドな仕様を持つ、コスパも少し重視したハイエンドGPUとなっています。
性能もコスパも前世代からすると十分に優れており魅力的に見えますが、同時投入の「RX 7900 XTX」との価格差が100ドルだけなので、相対的に魅力が薄れてしまっている印象です。価格差の割合は1割ですが、性能差も小さくて1割程度で、4Kでは15%程度の差が付くためコスパも基本負けています。
せめて電力効率くらいは上回っていれば良かったのですが、こちらも若干XTXの方が上となっており、正直100ドルの安さの引き換えに失うものがやや大きめに感じてしまいます。
単体で見れば決して悪くなく、前世代のハイエンドGPUよりは明らかに良いGPUですが、同時投入の相方の方が魅力的なので、あえてこちらを選ぶかと言われると微妙かもしれません。
ただし、前世代の「RX 6800」のように、「RX 7900 XTX」が需要のせいで希望小売価格よりも一段高くなる可能性もありますし、GPU自体は悪くないので、実際に市場での価格次第では十分選択肢に入ると思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。