「リチウムイオン電池」利用ガイド:充電や熱の原因などについて【スマホ・タブレット・ノートPC 向け】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

スマートフォン・タブレットPC・ノートパソコンなどで使用されている「リチウムイオン電池」についての解説です。

非常に身近なものながら、特に充電に関しては規格が乱立していることもあり、理解を遠ざけている分野だと思います。

そこで、「自分への備忘録」としての意味も込めて、広範的な知識をまとめています。

リチウムイオン電池の仕組み:イオンの往復

まずは仕組みをざっくりと触れておこうと思います。

引用:https://direct-joining.com/column/num-3142/

リチウムイオン電池は一言で言うなら、「リチウムイオンの往復運動」を利用した電池です。充電と放電時の仕組みだけ説明すると、以下のような感じになります。

【充電時】 イオンが無理やりマイナス側へ運ばれ、エネルギーが貯まる。

【放電時】イオンが自然にプラス側へ戻り、その勢いで電気が流れる。

電解液で満たされた箱をセパレータというもので仕切り、プラスとマイナスの間でイオンを行き来させる仕組みを利用したものがざっくりリチウムイオン電池です。

プラス側にリチウムイオン化合物を置き、電位差のある物質をマイナス側に置くことで(リチウムイオン電池では黒鉛が一般的)、マイナス側に押し込められたイオンがプラス側に戻りたがる力を利用しています。

その繰り返し(往復)の力を利用するのがリチウムイオン電池です。

仕組みを理解しないといけない訳ではありませんが、ざっくりでも覚えておくと、これから説明していく特徴のイメージを掴みやすいかと思うので、始めに触れています。

バッテリーにとって良くない状態3つ

まずは、バッテリーにとって良くない状態を見ていきましょう。

「バッテリーにとってのNG行動」そのものをリストアップすると数が多くなってしまいますが、根本的な要因は主に下記の3点に集約されます。

バッテリーにとって良くない状態

高温

」はバッテリーにとって大敵です。高温状態が続くと劣化が進みます。
たとえるなら、焦げ付いてしまって効率が悪くなるという感じです。
化学的に言うと、高温状態では電解液と電極表面のSEI層との間で意図しない酸化・還元反応が進んでしまい、負極の表面に反応の残骸などが積み重なっていき、SEI層が肥大化してしまうことによるものです。
具体的には、大体45℃を超えたあたりから、本来は安定しているSEI層が一部変質・溶解し始めて、そこを修復しようとして新しい分解反応が起き、膜が歪んで分厚くなってしまいます。
この反応が進んでしまうと、当初よりも充電が遅くなったり、スマホがすぐ熱くなる要因となります。
最も身近で大きく発熱する原因は「高速充電(高電流による充電)」なので、そこは留意しておきたいです。
また、「アレニウスの法則」によると、電解コンデンサなどの電子部品は温度が10℃上がるごとに寿命が半分になるという話もあります。温度は寿命を決める要素として非常に重要です。
しかし、発熱の原因は他にもさまざまあります。単に気を付けろと言われても難しい部分だと思います。
本記事では、そのあたりもこの後触れていこうと思います。

満充電(100%に近い)

バッテリー残量が多いほどバッテリーは高電圧状態になりますが、その状態が維持されると劣化が進みやすくなります。
化学的に言うと、満充電状態は「非常にエネルギーが高く、不安定な状態」です。片側にイオンがパンパンに詰め込まれている状態です。
この高電圧状態が続くと、電解液が酸化してゴミ(ガスや膜)が発生してしまい、これがイオンの通行の妨げとなってしまうため、寿命を縮めるという形です。また、材料にストレスが掛かっているため構造が壊れやすくなり、電極が少し歪んでしまう可能性もあります。
満充電までいかずとも、100%に近付くほど良くないという点にも注意が必要です。一般的には高くても80%程度までに留めるのが良いとされています。そのこともあり、現在ではほとんどの端末で「バッテリー保護」などの設定で上限を80%に制限することができるようになっています。

過放電

バッテリー寿命的に実は一番怖いのは、過放電です。電池が空の状態で放置されると、電圧が大きく下がります(過放電)。そうなると、負極に使われている導電版(銅箔)から電子が奪われて、イオンとして溶け出してしまい、二度と充電できなくなります。
ストーブで例えると、燃料が尽きたあとに、ストーブ本体(銅箔)を薪として燃やし始めようとするという感じです。そうなるとストーブとしての機能を保てなくなります。
毎日使うスマートフォンなどでは問題になることは少ないと思いますが、たまにしか使わない機器では要注意です。

バッテリーの理想的な運用方法

前述のバッテリーにとって良くない状態を踏まえ、理想的な運用方法について見ていきます。

バッテリーにとっての理想的な運用方法

リチウムイオン電池にとっての「快適な状態」は、「お腹いっぱい(100%)」でも「空腹(0%)」でもない状態です。人間と同じですね。

それを踏まえた上で、各用途ごとのおすすめの運用方法は下記の表のような感じになります。

ベストな使い方・容量
毎日使う機器
メインスマホ・タブレット等
20%~80%で維持
長期保管
たまにしか使わないノートPCなど
60%~70%にして保管
(50%がベストだけど、
自然放電を考慮)
毎日使うがほぼ据え置き
高消費電力の処理
仕事用のオフィスPC
ゲーミングPC・タブレット
バイパス給電を有効にして
ACアダプター繋ぎっぱなし
上限50%がベスト
理想の運用方法

20%~80% 維持:最も実用的かつ無難な運用

最も一般的で実用的な良い運用方法は「20%~80%程度で維持」です。

実際、現在の多くのモバイルデバイス(スマートフォン・タブレット 等)では、15%~20%程度になると警告が出て、80%程度になると充電速度が極端に遅くなったり、充電を止めたりするモデルが多いと思います。

具体的な数字で比較してみると、0%→100%を繰り返した場合の寿命を500サイクルとした場合、20%~80%運用時には1500サイクル~2500サイクル程度になると言われています。

1サイクルあたりの運用時間が60%に減ることを差し引いても、バッテリーの総使用時間は1.8倍~3倍にも延びます。非常に大きな差です。

そのため、バッテリー寿命まで意識して考えるなら、デバイスのバッテリー持ちは100%→0%の最大値で考えるのではなく、20%→80%(60%使用)が実用使用時間内に収まるかというのを考えるのが重要です。

高価で長く使いたいデバイスほど、是非とも意識したいところです。


60%~70%:長期保管時

もし毎日使う訳ではなく、長期で保管する可能性があるものについては、60%~70%ほどで保管するのが無難かなと思います。

バッテリーの仕組みを考えると、最も安定している50%程度で涼しい場所に置くのがベストなのですが、バッテリーは使わなくてもごく微量の放電を続ける(自然放電)点に注意が必要です。
前述のように、過放電によるリスクで使えなくなるのが最も怖いので、少し余裕を持って60%~70%くらいにしておくのが無難かなという感じです。

ただし、非常にバッテリー容量が少ない機器(ワイヤレスイヤホン・マウス など)の場合は自然放電による損失%も多いです。そのため、そもそも長期で充電しないこと自体が大きなリスクです。そのような機器については、定期的に充電をするのが最も望ましいです。


バイパス給電(+50%上限):据え置き運用や高消費電力運用の場合

据え置きでずっと稼働したり、消費電力が多い処理を行う場合には、バッテリーによる駆動がそもそも適していません。据え置き常時稼働や高消費電量での作業ではバッテリー消費量が非常に多くなるので、運用法を多少気を付けてもバッテリー負荷は大きく、劣化が早いです。

なので、出来ればバッテリー経由せずに電源から直接電力を使用する「バイパス給電」を有効にして、充電器(ACアダプター)を繋ぎっぱなしにするのが望ましいです。

更にベストな設定としては、PC側の設定でバッテリー上限を50%にするのが、バッテリーにとっては最も良いです。

ただし、それぞれの機能が使えるかはOSやメーカーによって少し事情が異なるので注意が必要です。

バイパス給電はWindowsやMacなどのノートPCではACアダプタ接続時に自動で切り替わるので、ノートPCの場合はあまり意識しなくてもOKです。

ただし、スマホやタブレットの方ですが、かなり込み入った話になります。ここで軽く説明出来れば良かったのですが、長くなるので後述の次の項目にて詳しく説明しています。


(!)気にしすぎなくて良い点

「たまに100%まで充電しないと、最大容量を忘れてしまう(メモリ効果)」という現象を気にされる方が居るかもしれませんが、これはリチウムイオン電池にはほぼありませんので、特に気にしなくても大丈夫です。主に制御ソフトの表示ズレを直すために推奨されるもので、電池そのものの健康のためではありません。

充電上限・バイパス給電

バッテリーを長持ちさせるための特に重要な要素として「バッテリー残量の上限設定」と「バイパス給電(パススルー給電・ダイレクト給電)」があります。これらについて少し深く見ていきます。

下記にそれぞれについての簡単な説明をまとめています。

充電上限やバイパス給電

バッテリーの充電を止める上限容量の設定です。満充電(100%)に近い状態から充電したり、その状態が維持される時間が長くなると良くないので、始めから少し空きを作りつつ充電しようという設定です。

現在ではほとんどの機種で80%程度での制限が可能になっています。

ACアダプタ繋ぎっぱなし運用(据え置き)の場合には、最も安定している50%前後での制限でバイパス給電との併用ができると嬉しいです。

バッテリーとシステムの繋がりを完全に遮断し、システム消費電力はACアダプタから直接利用する機能です。

充電が停止しているときはバッテリーが完全に休んでいる状態なので非常にバッテリーに優しい機能です。ただし、デバイスからの熱などの影響は受けるため、重い処理をするときは排熱に注意が必要です。

ノートPC(WindowsやMacBook)では、始めからACアダプタを接続しているときには自動でバイパス給電に切り替わるのが基本なので、特に意識せずとも大丈夫です。

しかし、スマホ・タブレットなどでの対応は限定的です。主にハイエンド機種やゲーム向けの機種などの一部で対応が見られます。

また、対応している場合でも、ノートPCのようにACアダプタを繋いでいるときに常に有効になる訳ではなく、満充電のときやバッテリーの充電制限(80%など)をしていてそれを上回っている場合に有効になったり、特定の重い処理(重いゲームなど)の際に有効になるというケースが多いです。

何と表現すれば良いか迷ったのがこれです。

PMICによってACアダプタ接続時に、出来るだけシステムのみに電力を供給する制御が備わっている場合のことを指しています。

バイパス給電のように完全にシステムとバッテリーを遮断するスイッチはなく、バッテリーとシステムは常に開通しているのがポイントです。

常にバッテリーには電気的な負荷が掛かってしまう上、システム優先時にもわずかにバッテリーから使ってしまうケースが恐らく出てしまうため、本来のバイパス給電とはやはり差があります。

とはいえ、バッテリー保護の観点から見て何もないよりは全然良いですし、コスト・スペース・実用性のバランスが良い妥協点として重宝されています。

デバイスごとの対応はこの後見ていきますが、新しいチップを搭載したスマホやタブレットでは安価な製品でも対応していることが多くなっています

しかし、スマホ・タブレットはあくまでバッテリー前提という考えに基づいて、多くのメーカーでは80%以上や重いゲーム時のときだけ有効になるような、限定的な機能として使われていることが多いです。

しかし、これらはOSや機種によって対応が異なる部分です。

2026年1月時点の現在では、システム設定もAIに管理を任せる動きがあるので、近い内には細かく確認する意味も無くなるかもしれませんが、とりあえず現状の対応状況についてまとめておこうと思います。

対応状況をざっくりまとめた表が下記です。

デバイス別の対応状況(2026年1月時点)

上限設定バイパス給電バイパス給電的な制御
ノートPC
Windows
メーカーの管理アプリ次第
基本はある
50%前後と80%の両対応も多い
BIOS設定に隠れていることも
基本的に対応
ACアダプタ接続時に
自動で切り替わるのが基本
スマホ・タブレット
Android
メーカー次第だが基本ある
80%上限は基本ある
50%はあまりない
一部の機種限定
※2026年時点
主にゲーミング・ハイエンド
特定の処理時に有効などもある
比較的多くの機種で対応
※2026年時点
主にゲーミング・ハイエンド
特定の処理時に有効などもある
MacBookOS(AI)によるお任せ制御
外部アプリなら固定値指定も可
あり
ACアダプタ接続時に
自動で切り替わるのが基本
iPadあり
80%
×対応
ACアダプタ接続時は
基本的にシステム優先
iPhoneあり
80%~
×対応だけど
ややバッテリー優先
電力関連設定の対応状況(2026年1月時点)

少し込み入った話になりますが、それぞれの対応状況についてざっくり触れていきます。

Windows:メーカー次第だけど、基本充実

Windowsはバッテリー面の管理については最も充実していると言って良いと思います。

まず、ACアダプタが接続されているときにはバイパス給電に自動で切り替わることが多いです。

これにより、直接稼働するための電力はACアダプターから直接取ってきて、容量が十分なとき(もしくは上限%設定をしていて達しているとき)は、バッテリーとシステムとの接続は遮断されます。

その時はバッテリーは完全に休んでいる状態なので、非常にバッテリーに優しいです。(ただし、熱には注意が必要)。

充電容量の制限についても、80%制限はほとんどの機種で可能です。ゲーミング・クリエイター・ビジネス用途が意識されたモデルでは50%制限が用意されていることもあり、中容量での制限も他のOSよりも行えるケースが多いです。

2026年2月時点では、細かな電力設定は、基本的には各メーカーの管理ソフト(Dell Power Manager、Lenovo Vantage、MyASUS など)から調整することになります。

Windowsとしての設定が存在する訳ではないものの、今ではほとんどの大手メーカーでバッテリーや充電に関しての設定が行える管理アプリが提供されているので、困ることはあまりないと思います。

また、2026年時点の最新バージョンのプレビュー版ビルドでは、OSの統合設定としてバッテリー保護関連項目が追加されていることなども確認されており、近い内に各メーカー管理ソフトを使わなくても調整できるようになる可能性もあります。

一見設定項目が無いように見えても、BIOS設定などに隠されていることもあるので、一度調べてみると良いです。

x86版とARM版の差

一つ注意しておきたのは、x86とARMという命令セットアーキテクチャの違いです。

x86 WindowsではARMと比べるとスリープ・スタンバイ時の消費電力が多いという特徴がある点に注意が必要です(2026年1月時点)。

AndroidやApple系OSはARMで統一されていますが、Windowsは2026年時点ではx86が圧倒的多数なため、実質Windowsだけスリープ時・スタンバイ時の消費電力が劣るという状況になっています(WindowsにもARM版もあるが、2026年時点ではまだ普及段階)。

2026年時点の新しいプロセッサでは、x86 Windowsの各効率も、チップ設計の刷新によって大きく改善されてはいるものの、ARM系(AndroidやApple系)と比べるとOSやチップの最適化面ではまだやや劣っている印象はあるのは否めないです。

そのため、特定用途だけでなく、生活に密着したモバイルデバイスにWindowsを選ぶ場合には、バッテリー面では少し不満が出る可能性は高めだと思います。

Android:大手メーカーは大体良い

Androidもメーカー次第ですが、基本的には困ることは少ないと思います。

80%制限の搭載は一般的となっていますし、一部モデルではバイパス給電にも対応しています。

また、完全なバイパス給電には対応していなくても、現在では多くの機種でPMICによるバイパス給電的な制御に対応しています。

2026年時点でACアダプタから直接電力を使う制御が存在しないのは、旧世代かつ安価なチップや、中国系メーカーの安さにとにかく特化したチップなどに限られます。そのような機種を除けば対応していることが基本です。

しかし、ACアダプタ接続時に常に有効になる訳ではなく、充電制限時の%に達している場合や満充電時や重いゲーム時などに有効になる形が多いので、著しくバッテリー劣化を進める使い方への保険としての運用という側面が大きい感じです。

また、ちゃんとしたバイパス給電対応が欲しい場合には、主に高額モデルやゲーミングモデルでの対応が比較的多いので、購入前に確認しておく必要があります。バイパス給電が有効になるシーンも事前に確認しておくと安心です。。

Android機全体で見ると一部の対応ではあるものの、探せば結構見つかりますし、コスパの良い機種も含まれているので、事前に考慮できればさほど苦悩はしない部分だと思います。

Apple:全体的に優秀。サイズによって異なる対応

Apple製品の電力管理は、将来的には全てAI任せになる可能性も高そうな気はするものの、2026年時点では iPhone(スマートフォン)、iPad(タブレット)、MacBook(ノートパソコン)の形態別に設定が分かれているという状況です。それぞれ見ていきます。

iPhone(スマートフォン)

2026年2月時点のiPhoneでは、バッテリー上限は80%~100%で変えられるようになっています。

そして、残念ながら完全なバイパス給電には対応していない可能性が高いです。

しかし、特定条件下ではPMICによるバイパス給電的な制御と思われる挙動をすることが確認されています。

具体的には、「バッテリー容量が上限値以上や満充電のとき」「重いゲームアプリ稼働時」などにバイパス給電的な挙動をすることが報告されています。

完全なバイパス給電とは違い、バッテリーとシステムが常に開通しているため、高級機の仕様のバッテリー寿命の最大化という点では少し残念ではありますが、薄型化や熱のことを考えると仕方ないところです。

Androidスマホでも全体ではバイパス給電は非対応機が基本なので、明確なデメリットだとは思いませんが、Androidでは探せばバイパス給電対応機自体は割とあるので、少しだけ不利ではあるかなと思います。

iPad(タブレット)

2026年2月時点では、バッテリー上限は80%に制限する機能が追加されています。

そして、iPadも残念ながら完全なバイパス給電には対応していない可能性が高いです。

しかし、こちらはPMICによるバイパス給電的な制御が非常に優秀で、比較的しっかりと使われている挙動が確認されています。

iPadではACアダプタ接続時で電力供給が十分である場合にはシステム電力をまず優先すると言われています。

13インチモデルがやMagic KeyboardというPC的な使い方を意識した展開をしているだけあって、その辺りもしっかりとした制御が用意されています。

とはいえ、ちゃんとしたバイパス給電はなく、そちらと比べるならバッテリー保護の観点では劣っていることは事実なので、始めから据え置き運用を意識するなら、ノートパソコン(MacBook)や高額なAndroid機を選ぶ方が適している可能性はあります。

MacBook(ノートPC)

MacBookではバッテリーの充電制限とバイパス給電の両方に対応しています。

ACアダプタ接続時には、自動でバイパス給電に切り替わるようになっており、一般的なWindows機と変わらないです。

少し気になるのは充電制限の方で、2026年2月時点では「OS(AI)によるお任せ制御」となっており、ユーザー側で指定することができません。

外部アプリなどを使えば%指定での制限も可能ですが、普通にOSの設定項目として用意してくれた方が親切ではあると思います。

Appleはあまりユーザー側でOSレベルの処理を細かく指定することを好まない傾向があるので、その一環だとは思います。とはいえ、最近ではiPadやiPhoneでも80%~指定に対応したので、MacBookも近い内に対応するかもしれません。

熱が出る原因

個別に特に踏み込んでいきたいのはやはり「」です。

「熱」に関しては、原因がさまざまですし、USBや充電の規格も関係してくるため、総合的な事情がやや複雑です。

そのため、少し深堀りして、詳しい原因を見ていきたいと思います。

まず、基本となる「バッテリーが熱を持つ原因」見ていきます。大きく分けたのが以下になります。

発熱の原因

大きな電流(配線ロス)

高速充電がバッテリーに良くないと言われる大きな要因の一つです。特に支配的な要因と言われています。
これはケーブルや端子や回路などの配線時に失われて熱に変換されるエネルギー(ジュール熱)は、電流の2乗に比例する*ためです。
要するに、発熱量は電流が2倍になれば4倍になり、3倍になれば9倍になります。これが熱となります。
とはいえ、実際には大電流を流すための設計が進んでいるため(基盤を薄くして抵抗を下げたり、回路を並列化したり)、2乗までの劇的な差が出ないように作られてはいます(許容値内なら1.2倍~1.5倍程度と言われているらしい)。
とはいえ、電流を増やすことによる総熱量増加が膨大な事実は変わらないので、要注意事項です。
発生する熱の多くはケーブルやコネクタですが、これがスマホなどのデバイスにも伝わりますし、デバイス内部でも配線ロスは発生するため、大きな熱の要因です。
ただし、ケーブルやコネクタなどはデバイスに達する前に自然冷却効果をある程度得られることもありますし、大電流前提設計の恩恵もあるので、むしろある程度までは上げる方が効率向上に貢献したりもします。しかし、許容値を超えて上げると一気に問題となるので塩梅が難しい要素です。

デバイスでの変換ロス

実はスマホなどのデバイスは、基本的に充電器から取り入れた電力をそのまま使用できる訳ではありません。主に電圧の調整が必要となるためです。
充電器の時点である程度まで減圧されて送られはするものの、多くの場合ではもっと精密な調整が必要なので、デバイス側でも調整を行います。
その際の回路や配線を通る際のロスや電圧を変換する際のロス(スイッチング損失)が熱となって無駄に放出される形になり、デバイスやバッテリーを熱くする要因となります。
この変換場所はバッテリーのすぐ傍にあるので、バッテリーの発熱とほぼ直結する形になっています。そのため、ある程度までは許容できる電流の大きさとは異なり、少しでもロスを減らしたいポイントです。
電圧の降下幅が大きいほど発生する熱が大きくなるため、これを極力減らすための充電器側での電圧調整機能の投入が進んでいます。
※覚える必要はありませんが、充電IC(DCDCコンバータ)というもので電圧を落としています。

充電器での変換ロス

最後は充電器の発熱です。
一般的な家庭用コンセントは100Vですが、これはデジタル機器にとっては高電圧すぎるので、まず充電器(ACアダプター)で電圧を落とす必要があります。
この際にどうしても数%~10%程度のロスが発生し、熱に変わります。
スマホなどのデバイスまでの物理的な距離は遠いものの、熱が蓄積したり長時間発熱すると、ケーブルやコネクタなどを通じてデバイスにも伝わります。
また、充電器自体も発熱すると効率が悪くなりますし、寿命的にも良くないです。
とはいえ、電圧の調整を雑にしてデバイス内部の発熱を増やすよりは許容しやすく誠実だということで、2026現在では出来るだけ充電器側で発熱を引き受ける方針が一般的です。
そこで、充電器の素材として、以前主流だったSi(シリコン)よりも非常に優れた効率を発揮する「GaN(窒素ガリウム)」が今では急速に普及しており、これも今ではチェックしておきたい項目となっています。

【参考】デバイスのシステム処理の熱

デバイスのシステム処理による熱が伝わることにも注意が必要です。
バッテリー自体の問題ではないので深く触れませんが、排熱処理なども間接的には重要な項目です。

ジュール熱の計算

*:配線時のジュール熱の計算式は以下のようになっています(電流はI)。

Q=I2RtQ = I^2Rt

これを踏まえた上で、次からはやや細かな規格などについて見ていきます。

充電の規格と速度について

充電やUSBの規格ごとの特徴をまとめています。

【早見表】充電とUSBの規格と特徴

充電規格やUSBの規格の要点早見表です。実際の数値も含めて見ていきます。

MEMO:細かい数値を見る前に

ファンレス機の高速充電の数値(65W~)は持続時間は短い

気付いている方も多いとは思いますが、実はファンレス機(主にスマホ・タブレット)における65W~のような高出力は、「瞬間最大値」であり、基本的に短時間しか持続しない点を留意しておきましょう。

実際の平均電力は場合によるものの、大体15W~27Wの間くらいが多いのかなと思います。

これは、ファンレス機での大きな発熱を伴う高速充電は、外部への放熱量よりも、内部で生み出される熱の量の方が圧倒的に多いためです。少しの時間で熱が蓄積してしまい、サーマルスロットリング(温度が一定以上になると発動する安全機能)が発動して出力を下げて温度低下を図ってしまいます

とはいえ、始めは高速なので恩恵はあるので意味が無い訳ではないです。特に、非常に忙しくて充電の時間があまり取れない方や、頻繁に充電を忘れるような人にとっては有難いとは思います。

ただし、短時間でも高温になるのはバッテリーには良くはないので、充電の時間をしっかり確保するタイプの人にとっては実質マイナスだけを受けることになる可能性もあります。

USB PDでは「eMarker」が無いケーブルだと、電流は3A以下に制限

USB PDで3Aを超える充電を行う場合には、ケーブルに「eMarker」と呼ばれるICチップが搭載されている必要があります。

「eMarker」とは、自分がどのようなケーブルであるかの証明書のようなものです。これがないとデバイスはケーブルが大きな電流に耐えられるものかわからないので、安全のために最大でも3Aまでに制限してしまいます。

また、一部の規格では、その規格に対応しているeMarkerが必要になることもありますし、独自規格では3Aというルールに縛られないので、独自のケーブル識別方法やチップを用いてeMarker無しで3A超えをしたりしているケースもあります。とはいえ、汎用性と設計の楽さから、多くの場合は独自規格でもeMarkerを流用した判別を行っています。

話を戻しますが、「eMarker」が無い場合のUSB PDは、最大でも「20V / 3A(60W)」までが許容値となっています。

しかし、20Vなどの高電圧はスマホやタブレットでは高すぎてまず受け付けられません。1セルバッテリーの場合には高くても9V程度が上限となっていることが多いと思われます。

要するに、eMarkerが無い場合のスマホやタブレットにおける最大出力は実質27W程度になる可能性が高いです。

更に、PPSやSPR AVSなどの電圧調整のある規格(後述)では、電圧はバッテリー電圧に合わせられるのがポイントです。

2026年時点のスマホの1セルバッテリーの電圧は定格で3.85V~3.88Vが主流となっており、満充電時の上限は4.45V~4.48V程度と言われています。

そして、PPSやSPR AVSでは電圧はこれに合わせられ、eMarkerが無い場合には電流は3A以下に制限されます。そのため、付属の充電器&ケーブルを使用していないAndroidユーザーは、実は11W~13Wほどで推移する充電をしている可能性があります。

数値を見ると遅めに感じますが、実はこれでも、一般的なスマホを20%~80%で充電するなら1時間前後で終えられるくらいなので、意外と気にならない人が多いと思います。

近年は特に充電速度を喧伝するスマホも増えてきた印象ですが、1時間~くらいの充電を受け入れて安全かつバッテリーに優しい充電を心掛けるのもありに見えると思います。


充電規格の速度と発熱面のまとめ

充電速度可変電圧発熱の少なさ
(デバイス側)
備考
通常出力
データ転送用
× 低速
2.5W~15W
× 電圧固定
ただし、電流が低いため
問題は軽微
◎ 超低発熱
電流が小さい
電流が小さいため
超低発熱
USB PD
(固定出力)
◎ 超高速
〇 高速
15W~240W
× 電圧固定
階段式の切り替え
△ 高発熱
電圧固定&高速充電
優れた汎用性の高速充電
高電圧&高電流 対応
PPS
(PD 3.0)
〇 高速
~100W程度
◎ 可変電圧
20mV刻み
〇 やや低発熱
電流次第
主にスマホ・タブレット向け
緻密な電圧制御(20mV刻み)
デバイス側の負担軽減
SPR AVS
(PD 3.2)
〇 高速
27W~100W程度
〇 可変電圧
100mV刻み
〇 やや低発熱
電流次第
細かな電圧制御(100mV刻み)
デバイス側の負担軽減
EPR AVS
(PD 3.1)
◎ 超高速
100W~240W程度
〇 可変電圧
100mV刻み
△ やや高発熱
可変電圧だが高速すぎる
細かな電圧制御(100mV刻み)
100W超向け
PC向けの超高電圧充電
独自規格◎ 超高速
〇 高速
規格次第
★ 可変電圧
超高精度
〇 比較的低発熱
変圧優秀だけど高速
充電器による超精密な電圧制御
デバイスの側の変圧負担ほぼ無し
とはいえ、高速充電なので、
負荷は小さくはない
ワイヤレス充電
(Qi)
× 低速
~15W
〇 動的に調整
しかし、元効率が悪すぎて
焼石に水状態
× 超高負荷
しかも熱がこもる
非常に過酷
効率が悪い(70%~)
熱源が密着
密着により排熱が阻害
バッテリー負担的には最悪

USBの規格と給電能力についてのまとめ

形状主な規格電圧(V)/電流(A)最大電力(W)特徴・主な用途
USB-A
四角いやつ
USB 2.05V / 0.5A2.5WPCのデータ転送用
充電は超低速
USB 3.x5V / 0.9A4.5W2.0よりは実用的
データ転送用
Apple 2.4A5V / 2.4A12WiPhoneの昔の主流
Quick Charge 3.03.6V〜20V / 1.5A~2.0A18W+Androidの昔の主流
USB-C
平らな楕円
USB BC 1.2
USBAでも可)
5V / 1.5A7.5W下位互換の共通規格
C端子の最低ライン
USB Type-C (定格)5V / 3.0A15WPD非対応でも
C-Cならこの速度
USB PD (固定)5V, 9V, 15V, 20V
/ 3A・5A
100W高速充電の汎用規格
高電圧&高電流 対応
PD 3.0 (PPS)3.3V〜21V
/ 3A・5A
100W20mV刻みの可変電圧
端末の変圧負荷を軽減
PD 3.2 (SPR AVS)9V~15V, 9V~20V
/ 3A・5A
100W100mv刻みの可変電圧
遊びがあることで安定
PD 3.1 (EPR AVS)28V, 36V, 48V
/ 3A・5A
240W100W超えの汎用規格
高消費電力ノートPC向け
磁力
ワイヤレス
Qi / Qi2 (無線)5V〜9V (内部制御)
/ 約2A
7.5W〜15W電磁誘導で充電
非常に効率が悪い
熱源がスマホに密着
MagSafe (無線)~9V / 2.22A
~15V / 2A~3A?
15W~25W同上
25Wは短時間

USBの基本出力(データ転送用)

低速 バッテリーには非常にやさしい

USBの基本出力(USB 2.0・3.0 等)は、充電規格というよりはUSB機器を動かすための給電能力として用意されたものです。デバイスや充電器などによる通信を行わず、決められた一定の電圧(5V)を流す方法です。

元々はデータ転送用の規格として誕生したのがUSBであり、そのための電力として用意されたものでした。そのため、最も基本的で古い規格です。

充電速度は低速です。最大速度は2.5W~15Wとなっています。

USBの規格や形状によって差があり、USB-Aだと2.5W~4.5Wが最大で、USB-Cだと4.5W~15Wになります。

一応、USB C-C接続ならUSB PD非対応でも最大15W(5V / 3A)まで出せますが、2026年時点でC-C接続による充電を試みる場合はほとんどの場合でUSB PDが有効になると思われるので、基本規格の15Wが選択されるのは稀だと思います。

PCなどのUSB-Cポート(PD非対応かつ15Wまで許容)などに限られるので、実質的にはやはり2.5W~7.5Wくらいが一般的かと思います。

そして、ここからがポイントです。

データ転送用のUSB基本出力による充電は基本低速ですが、電流が1A未満(0.5A~0.9A)ため、非常に低発熱でバッテリーに優しい充電方法です。

配線ロスにおける発熱の基本式として、電流の2乗が比例するので、1A未満と1A超えでは圧倒的な差があります。

もう過去のものと思っている人も居るかもしれませんが、今でも時間に余裕があるときは低速充電にすることでバッテリーの長寿命化を期待できるので、需要のある充電方法です。

ただし、いくつかの注意点があります。

まず、電圧は固定値(5V)なので、デバイス側での電圧調整負荷が常に介在する点です。

1セルバッテリー(~4.4Vくらい)における充電の場合、5Vなら降下幅は小さいですし、電流による発熱が非常に少ないので問題にはなりにくいものの、次に触れる弱点との組み合わせによって無視できない問題となります。

そして、大きな問題が充電時間が非常に長い点です。

「0.9A / 5V」の例を考えると、一般的なスマートフォンで20%~80%間(60%)を充電するのに、おおよそ3~4時間も掛かります。充電時間が非常に長い(低速)なため、微弱な負荷であっても蓄積して負荷に繋がります。

単純に、時間が掛かると気軽に使えない時間が増えるというのも問題ですし、充電時間が長いと自然放電によるマイナス値もわずかに影響力が大きくなるため、時間浪費コストとの実用性は悪いと言わざるを得ないです。

そして、近年では電圧制御に優れたPPSやSPR AVS(後述)などの普及が急速に進んでおり、eMarkerの無いケーブルであえて充電する(3A以下)ことで、中速低負荷充電を強制することができたりするのも、相対的に魅力を下げたと思います。

更に、2セル以上のバッテリーでは電圧が足りなくて充電ができないことが基本という点にも注意が必要です。電圧は5V固定なので、バッテリー電圧が2倍(5V未満になることがまずない)となる2セルバッテリーのスマホやタブレットでは基本的に充電ができません。

最近では中国系メーカーを中心に2セルバッテリーの大容量急速充電端末が増えているので、汎用性でも少し悪くなってきました。

そのため、未だに発熱総量は非常に少ないので、時間に余裕があるときには低速充電は非常に有効ですが、以前ほど明確な優位性がなくなってはいるので、無理に意識するほ度では無い感じにはなったと思います。

USB PD(定格出力)

非常に優れた汎用性 高速 発熱は大分多い

USB PD(USB Power Delivery)は、USB Type-Cの汎用充電規格です。

現在では非常に一般的な規格となっており、幅広いデバイスで使われています。その汎用性の高さと高速充電対応という点が魅力です。

充電速度は、PD 3.0以前でも最大100W、PD 3.1以降なら最大240Wとなっており、汎用規格ながら高速充電に対応しています。

USB PDの中にもオプション規格がありますが、ここではオプション規格ではない定格出力を見ていきます。

USB PDの定格出力では、固定電圧の中から出力するため、常にデバイス側での電圧調整負荷が付きまとうのがデメリットです。

また、高速充電規格の共通事項ですが、実際の運用では65W~などの高速充電は、ファンレス機(スマホなど)では短時間しか持続できないか、そもそも有効にならないという点にも注意が必要です。

また、eMarkerが無いケーブルでは電流が3A以下に制限されてしまうのも見落としがちなポイントです。1セルバッテリーを前提とすると電圧は大きくても9Vくらいまでしか許容されないので、実際には充電時間の多くは~27Wほどに留まることが多いです。

まとめると、常にデバイスでの電圧調整が必要となる上、短時間ブースト充電による局所的な高発熱も基本発生するので、実はUSB PDの通常出力はバッテリーなどにとっては良くないです。後述のPPSやAVSを併用できない場合には注意が必要です。

PPS(USB PD 3.0~)

優れた汎用性 高速 Apple製品は未対応

PPS(Programmable Power Supply)は、USB PD 3.0~のオプション規格です。主にスマホ・タブレット向けの規格です。

デバイス側の要求に合わせて、電力を細かく調整してからデバイスへ送るため、デバイス側での調整が最低限で済み、発熱を大きく減らすことができます。

特に、PPSでは20mV刻みの非常に細かい電圧調整を行って供給するのが強みです。

仕組みを水道で例えるなら、デバイス側は手元のリモコンで「3.68Vでこのくらいの量を出して」と水道局に直接指示することができ、水道局がその丁度良い水圧で送り出してくれるので、受け取る側でバルブを絞って調整する必要がなく、摩擦(負荷)が最小限で済むという形です。

実は、2015年に登場した結構古い規格です。そのため、2026年現在では「大手メーカーのUSB PD 3.0対応の45W以上くらいの充電器(単体販売)」では対応が当たり前レベルになっています。

仕様が表記される際は「3.3V-11V / 4.5A」などのように、電圧に幅がある形になります(後述のAVSも同じ表記)。

しかし、近年では規格も増えてきた上、充電器の小型が進んで本体に記載できるスペースが減ったこともあり、固定出力の数値以外は省略されているケースも多くなりました。そのため、本体表記がないからといって電圧調整規格に対応していない訳ではないので注意が必要です。

今では、「USB PD 3.1 / 3.2」での新しいオプション規格「AVS(SPR・EPR)」が登場していますが、そちらは100mV刻みとなっており、20mVと比べるなら少し大雑把なので、PPSの方が電圧調整負荷はわずかに少ないです。PPSは充電速度もスマートフォンやタブレットレベルでは十分高速なので、2026年でも十分に現役の規格です。

ただし、2026年1月時点ではiPhoneを含むApple製品ではPPSに対応していないので、Apple製品で可変電圧による充電をしたいなら、SPR AVSを使用する必要がある点に注意が必要です。

PPS補足(1):精密すぎる制御が逆効果になる面も?

実際の充電時には、ケーブルや端子などの物理的なノイズがあり、そこで多少の電圧降下が発生してしまいます。そのため、20mVという精密すぎる制御では、デバイスに想定した通りの電圧で届かないケースがあるのが懸念点です。

電圧が想定値よりを上回ったり下回ったりを繰り返す「ハンチング現象」が起きると、電源管理IC(PMIC)が変動を抑え込もうとして頑張ります。この余計な働きそのものがデバイスとしても微細なストレスになりますし、その働きは熱に変わってしまうので、効率低下やバッテリー負荷に繋がります。

また、電圧があまりにも不安定な場合には、デバイス側の安全回路が「この充電器は品質が悪く危険」と判断する可能性があります。そうなるとPPSによる制御を中断して、「出力の低い固定電圧モード」に移行してしまい、充電速度が低下します。

充電速度制限の方は、バッテリーにとってはむしろ良い可能性があるので大きなデメリットではないと思うものの、ハンチングによる効率低下は少し気になるところです。

そのため、出来るだけそのリスクを減らせるように、ケーブルや充電器(と端子)は低品質なものを使うのはできるだけ避け、端子もキレイに保つことが望ましいです。

PPS補足(2):100Wまで対応だけど、実際にはそこまで高速にはならないのが基本

PPSは規格上では最大100Wまでの高速充電にも対応しています。

しかし、PPSはバッテリー電圧に合わせるという規格なので、スマホなどのバッテリー電圧が低いデバイスの場合では、充電速度もある程度遅くなってしまう点は留意しておくと良いかもしれません。

たとえば、一般的なスマホ(1セルバッテリー)の定格電圧をざっくり3.85Vとして、電流を主流であると思われる3A(eMarker無し)とすると、11.55Wとなります。2セルバッテリーだったとしても、23Wほどです。

そのため、実際のスマホの平均充電速度としては12W~15Wあたりのケースが多いと思われ、2セルバッテリーの超高速充電や超大容量スマホでも24W~30Wほどが多いのかなと思います。

そして、eMarkerを搭載したケーブルを使用する場合には電流を上げることで底上げすることができるのですが、ここで問題となるのがPPSの20mVという精密な制御です。ここまでの精密な制御は出力を上げるほどに不安定になる(ハンチング現象)というリスクがあるので、機器側もあまりやりたがらないのです。

実際、2026年2月時点の大手メーカーの小型の汎用充電器を見ると、最大出力65W~100Wの充電器でもPPSによる出力は最大22W~60W程度に留められていることが多く、定格での最大出力よりもやや余裕を持った出力になっていることが多いです。電流も最大2A~3Aが基本となっています。

単純に温度や安全性の考慮もありますし、そもそもファンレス機の高出力充電が短時間しか持たないという事情もあるので、スペック上の最大充電速度(W)はあまり意味を持たなくなってきています。

また、12Wと聞くと低速にも聞こえると思いますが、実は12Wでも、20%~80%の間の充電を1時間程度で終えられるくらいには高速だったりします。意外と困らないとは思います。

PPS補足(3):ノートPCでは大体有効にならない?:2026年時点

2026年1月時点では、一般的な小型のPPS対応充電器では、多くのノートPCでPPSが有効にならない点にも注意が必要です。

これは、小型のPPS対応充電器は最大電圧が11Vに設定されていることが多いことが要因です。

Windows機ではPPS自体には対応していることは多いのですが、13インチ~くらいのWindowsノートPCは安定時に11.1V(3セル)以上のバッテリーを採用していることが多く、11Vでは電圧が足りずにPPS制御にならないのが基本なためです。

ちなみに、付属のACアダプターも基本的に固定出力なので、PPSは有効にならないことが多いです。

ただし、ノートPCでは使う電力が多いため、電圧調整が細かく必要になるケースが多く、PPSの電圧追従が追いつかずシステムが不安定になるリスクがあり、恩恵は限定的ではないかと言われていますし、

ノートPCでは冷却ファンが搭載されていることが基本で、熱への対処がスマホやタブレットよりも優れているので、凄く神経質になる必要がある訳ではないとされているとは思います。

とはいえ、バッテリーを第一に考えるならPPSは有力なので、比較的省電力なPCで長持ちして欲しい高価な機種の場合には、PPSの電圧にも注目して選んでみると良いかもです。

SPR AVS

安定して高効率 高速 Apple製品対応(2025年~)対応製品が少ない(2025年時点)

SPR AVS(Standard Power Range / Adjustable Voltage Supply)は、USB PD 3.2~のオプション規格です(最大100W)。

デバイス側の要求に合わせて、100mV刻みの細かい電圧調整を行って電力を供給するため、デバイス側での電圧調整幅を減らすことができます。

「20mV刻みのPPSと比べると劣化してない?」と思う方も居るかもしれませんが、20mVという細かすぎる制御は逆にマイナスになってしまうケースもあるため、遊びのある100mVの方が安定した高効率という意味で安心できたりします。

また、100W超えの超速充電に対応できる「SPR EPS」も同じ制御方式なので、汎用充電器での制御コントローラーの追加費用をほぼゼロにでき、OS側の電源管理システムの簡略・共通化ができるのもメリットです。

関連して、非常に大きいポイントがApple製品の対応です。

Apple製品は長らくPPSに対応せずに固定出力にこだわっていましたが、2026年1月時点では、iPhone 17以降などの最新のAppleデバイスは、AVSのみに対応しています(PPSは非対応のまま)。AVSでようやく可変電圧に対応しました。

しかし、AVSは元々普及がかなり限定的でしたし、Appleの対応も急だったので、2026年1月時点ではSPR AVS対応のGaN採用の充電器は大手メーカーからはほぼ出ていない状況があったりします。

そのため、実力を十分に確認することは難しい現状です。しかし、Appleの対応から一気に製品投入や普及が加速していくと思われるので、2026年~2027年に長く使える汎用充電器を求めるなら、「SPR AVS(USB PD 3.2)対応の充電器」というのが一つの大きな目安となるのかなと思います。

100Wまで対応だけど、実際にはそこまで高速にはならないのが基本

PPSとほぼ同じ補足説明です。

SPR AVSも、PPSと同様に規格上では最大100Wまでの高速充電にも対応しています。

しかし、バッテリー電圧に合わせるという規格なので、スマホなどのバッテリー電圧が低いデバイスの場合では、充電速度もある程度遅くなってしまう点は留意しておくと良いかもしれません。

たとえば、一般的なスマホ(1セルバッテリー)の定格電圧をざっくり3.85Vとして、電流を主流であると思われる3A(eMarker無し)とすると、11.55Wとなります。

そのため、実際の平均充電速度としては12W~15Wあたりのケースが多いと思います。2セルバッテリーの超高速充電や超大容量スマホでも24W~30Wほどが多いのかなと思います。

PPSよりは電圧調整に遊びがある(20mV→100mV)ため、高出力でも問題にはなりにくいものの、4V前後の電圧で40Wクラスの充電をするためには10Aなどの超大電流が必要になり現実的ではないので、それを考慮しても充電速度はそこまで速くはならないのが基本(もしくは短時間)のはずです。

12Wと聞くと低速にも聞こえると思いますが、実は12Wでも、20%~80%の間の充電を1時間程度で終えられるくらいには高速だったりします。意外と困らないとは思います。

EPR AVS

超高速(~240W) 太いケーブル

EPR AVS(Extended Power Range / Adjustable Voltage Supply)は、USB PD 3.1~のオプション規格です。前述のSPR AVSはこのEPR AVSを低電力帯に適用したものとなっています。

高消費電力のデバイス(主にノートPC)を対象とした規格であり、USB PDでは初の100W超えを定義した歴史的な規格です。最大240Wという超高速充電に対応します。

その超高速充電に加え、デバイス側の要求に合わせて100mV刻みの電圧調整を行って電力を供給するため、デバイス側での電圧調整幅を減らして発熱を軽減することができます。

最大240Wというのはインパクトがありますが、需要は限定的な規格です。シンプルにモバイルデバイスで100W超えの高速充電を必要とする対象が少ないためです。

また、昨今では半導体のプロセスやアーキテクチャの進化、素材の進化(GaNなど)、AIの進化、などによりむしろ消費電力平均は減少傾向にあります。

最近ではビデオカード搭載でも100W以下で稼働できるPCが増えている印象ですし、そもそも内蔵GPU性能が大きく底上げされているので、ビデオカード搭載機の需要自体が下がっています。

一応、SPR AVSと同じ制御システムを使えるので、制御コントローラーやOSの電源管理システムをノートPCやタブレットなどの複数のデバイス間でも共通化でき、コスト削減に繋がるのは明確な強みです。

しかし、結局のところ超高速充電を実現するにはそれに対応した大型かつ高品質な充電器と太くて高品質なケーブルが必要となるため、共用の充電器としては使い勝手が悪いかと思います。

100Wの壁を破ったことや、100mVという安定した調整幅を採用したことで重要な規格ではあるものの、一般的には使用されるケースはあまり無い規格になるのかなと個人的には思っています。

独自規格

高速 速度の割には低発熱(デバイス側)充電器側の発熱は多い汎用性が低い

独自規格(VOOC, Xiaomi HyperCharge 等)は、文字通りメーカーごとの独自規格です。汎用性を犠牲に効率を極限まで高めたものです。

特定メーカーが独自に開発・採用するもので、基本的に同社対応製品のデバイス・充電器(ケーブル)が揃った場合に機能します。

100W超えすら一般的な高速充電を実現しつつも、デバイス側への負荷を極力減らし、熱源は極限までデバイスの外に追いやるで、充電速度の割にはデバイスがそこまで熱くならないのが強みです。

仕組みやコンセプトはUSB PDのPPSやAVSと似ており、充電器側で電圧調整を行い熱源を充電器で引き受けるという形です。

しかし、自社開発のデバイス・充電器・ケーブルの組み合わせを利用することで綿密な連携と高精度のロス計算を行い、一般的なUSB PDよりも遥かに高頻度で高速な通信を行うことで、狙った電圧を非常に高い精度で送ることができます。

これにより、デバイス側の電圧調整がほぼ必要なく、充電器側に負担を全て背負うことできます。そして、高精度ながらハンチング現象などのリスクも抑えられています。

そして、USB PDではあまりやらないレベルの5A~10Aレベルの大きな電流を流せるようにしたことで、スペック上のW数を稼ぎつつ、他規格よりも実用的という充電を実現しています。

独自規格と聞くと、囲い込みのためという印象を持つ方も多いと思われ、そのような側面も否定はできないです。とはいえ、技術的な側面だけ見ても合理的で優れたものとなっています。

しかし、充電器やデバイスやケーブルの組み合わせがどれか一つでも欠けた途端、コストは安くないのに低速な充電器&ケーブルとなってしまいます。諸刃の剣的なポジションです。

ワイヤレス充電(Qi / MagSafe)

置くだけで充電 低速非常に低効率で発熱が多い 熱がこもる

ワイヤレス充電(Qi / MagSafe)は、電磁誘導を利用したワイヤレスによる充電方法です。充電器のコイルから磁力を出し、スマホ側のコイルで電気を受け取ります。

非常に便利ですが、残念ながらバッテリーにとっては「過酷な充電方法」と言わざるを得ないです。

まず、効率が非常に悪いです。70%~80%程度と言われており、残りの20%~30%が熱に変わります。新しい有線充電規格の効率は95%以上と言われているので、圧倒的な差があります。

そして、その大きなロスによる熱がスマホなどのデバイス背面にピッタリと張り付いた状態になります。熱がダイレクトに伝わってしまうだけでなく、熱の放出に役立つはずの背面パネルを熱源で覆い隠しているので、冷却の大きな妨げ(というか温度上昇の促進)となってしまいます。

しかも、充電速度は低速(7.5W~25W程度)なので、充電完了にはやや時間が掛かります。上記の熱源がピッタリと張り付いた状態が長時間維持されることになり、それはもうバッテリーにとっては過酷な充電となります。

2026年2月時点の最新規格である「Qi2」や「MagSsfe」などでは、マグネットで位置を固定することで効率を従来よりも高め、熱を「少し」減らす手法を取っているものの、それでも「有線 + 充電器での電圧制御」と比べると圧倒的に熱くて非効率です。

QiもMagSafeも少しでも発熱を減らすために電圧制御を採用しているものの、焼石に水レベルです。相殺して圧倒的なマイナスに持っていくほど、上述の効率の悪さと熱源の密着が致命的となっています。

バッテリー容量が非常に小さい機器(スタイラスペンなど)では、過放電の機能停止リスクよりは許容可能ということで採用が進んではいるものの、一つの充電方法としてはバッテリーにとっては最も優しくない充電方法と言えると思います。

iPhoneはポートレス化を狙っており、その布石のためにMagSafe?

上述のように、現状ではワイヤレス充電というのはバッテリーやデバイスにとっては過酷な充電方法です。

普通に考えれば、Appleのような実用体験を重視した大手メーカーが推進する充電方法には思えません。しかし、実際にはMagSafeを推し進めています。

この理由については、Appleがポートレス化を狙っているという噂があります。要するに、USB-Cポートを廃止するということです。

そうなると、現在圧倒的に主流であるUSB-Cポートでの充電ができなくなるので、別の充電方法を検討する必要があります。

しかし、急に切り替えたのではユーザーが困ってしまうため、ポートレス化に先駆けてMagSafe(ワイヤレス充電)を普及させておきたいという思惑があるのではないかと言われています。

以前に主流だった規格

以前に主流だった規格

ほぼ余談的な話です。現在では覚えるほどのものではないですが、かつて主流だったものについても一応紹介しておきます。

Quick Charge(QC)

Quick Charge(QC)は、Qualcomm(クアルコム)が開発した、USB PDが普及する前に主にAndroid端末で普及していた標準規格です。

始めは、古い「Micro USB」や「USB-A」で無理やり高速充電を実現するために、従来のUSBの壁である5Vを突破し、9V / 12Vに引き上げることで、細いケーブルでも大きな電力を送れるようにした技術でした。

しかし、USB-Cが登場し、始めから大電力を流せる「USB PD」が定義されてしまい、Google(Android)とApple(iPhone)がUSB PDを標準規格として採用してしまったため、ほとんど使われなくなりました。

QC 4.0 以降では、「USB PDと同じもの」と言っても過言ではないものとなっていますが、ライセンス料が必要となるため、メーカー側としては積極採用するメリットがほぼなく、厳しい立ち位置だと思います。

Apple 2.4A

Apple 2.4Aは、USB PDが普及する前にAppleが採用していた独自の仕様です。

USBのデータ線に特定の電圧をかけることで、充電器が自分の仕様を紹介するというシンプルな仕組みです。

5V固定のため電圧調整の幅が大きくなりすぎないのはメリットですが、可変電圧の仕組みなく、常に5Vなので、12Wフルだと低速な割にはデバイスが温かくなります。

補足知識

GaN(次世代のパワー半導体):高効率で低発熱

GaN(窒素ガリウム)は充電器の素材の名前です。

従来の充電器の素材は「シリコン(Si)」が主役でしたが、GaNはシリコンよりも変換効率が非常に高くて熱が出にくい上、熱に対する耐性も高いため、シリコンの次世代のパワー半導体の素材となっています。

充電器での変換(変圧)効率を比較すると、従来のシリコンでは約80%~87%と言われているのに対し、GaNは約90%~95%と言われています。

シリコンでは13%~20%が熱に変わるのに対し、GaNは5%~10%しか熱に変わらないということなので、発生する熱は半分以下です。非常に大きな差です。

このおかげで、減った熱分の放熱部材やスペースを節約できるので、同じ出力でもサイズを大きく削減することができます。

2026年時点では既に、大手メーカー品のほとんどはGaN採用のものとなっていますが、そのため、もし今から幅広く使える高出力の充電器を一つ買っておく場合には、GaNの記載があるかを一応確認しておくと良いです。

複数セルのバッテリーについて

スマホやタブレットではあまり見ないと思いますが、ノートPCの仕様ではよく「3セルバッテリー」みたいなことが記載されています。

これは何かというと、複数のバッテリー(セル)を直列につなぎ、バッテリー全体の電圧を高め、容量と充電速度を高めたものです。

たとえば、3.7V(定格)のセルを3つ採用したバッテリーの全体の電圧は11.1V(定格)となります。

それに対し、多くのスマートフォンは単セルのシンプルなバッテリーを採用しており、バッテリー電圧は5V未満であることが基本なので、ノートPCと比べるとバッテリー電圧が格段に低いです。

また、スマートフォンやタブレットの中でも、100W超えのような超高速充電に対応した大容量バッテリー搭載のモデルだと2セル構造になっていることもあるので、そこも注意が必要です。

このように、実はデバイスごとにバッテリー電圧に大きな差があったりします。

意識している人は少ないかとは思いますが、実は充電方法に応じて注意すべき点があるので、いくつか触れていきます。

1つの充電器でスマホだけでなく、大型のタブレットやノートPCも充電したい

一番多いと思うのはこのケースです。PPSやSPR AVSが有効になっていない可能性が結構あります。

最近のUSB PD対応充電器の定格出力では基本的に20Vまで対応していることが基本なので、充電自体ができない特に問題になることは少ないのでそこは問題ないです。

しかし、最大100W以下の充電器で、前述のような電圧調整が含まれているPPSやSPR AVSなどの低電力用の高度なオプション規格では、~11Vくらいまでの対応の場合も結構あることに注意が必要です。

3セル以上のバッテリーの11.1V~だと、最低でも13V以上くらいの出力が必要となるので、11Vが最大の場合にはPPSやSPR AVSは使われず、固定出力となる可能性が高いです。

ノートPCなどに付属している充電器でも電圧調整には対応していないことが基本なので、別に損をしている訳ではないものの、折角を別途お金を出して充電器を購入するなら出来る限り汎用性の高いものを買っておきたいと思うので、そのあたりも見ておくと安心です。

スマートフォンに付属している高速充電器を使い回したい場合(100W超えなど)

一部のスマートフォンやタブレット(中国系が多い)では、100W超えの高速充電を売りにしている製品が結構あります。

そのような製品に付属している充電器を他のデバイスにも流用したいと思う人は多いと思いますが、この際にはちょっと注意が必要です。

まず、独自規格の場合にはデバイスもその規格に対応していないといけないので、他社製の製品では最大出力での高速充電は基本機能しない点に注意が必要です。

しかし、motorolaなど一部のメーカーでは太っ腹にも一般的なUSB PDの高速規格を採用して付属してくれているケースもあります。

ただし、その場合でも注意が必要です。最低電圧の出力値が5Vに設定されているケースが結構あるためです。

考えられる理由としては、100W超えのような超高速充電を実現しているスマートフォンは、バッテリーが2セル構造であることが多いことに起因します。要するに、バッテリー電圧が他の多くのスマホの約2倍です。

となると、バッテリー電圧は最低でも6Vを下回ることはないので、そのスマホ用の充電器では5V未満の低電圧に対応する意味がないのです。コスト削減のために対応しないことが多いです。

最低で5Vだと、一般的な単セルバッテリーのスマホだと電圧が大きすぎます。そのため、スマホ側で減圧調整が必須となり、一般的なスマホ用の充電器よりも発熱が多くなってしまいます。

充電が高速なのでそのせいだろう、と思ってしまって気付かない人が大半かなと思いますが、実は効率が悪いことをやっている可能性が高いので、注意が必要です。

PCのUSBハブのUSBポートを通じて充電したい

PCをよく使う人で、デスク上で全てを完結させたい場合に結構考える人が居ると思います。

低速充電にはなってしまうものの、低速充電がバッテリーに優しいということは結構認知されていると思うので、あえてUSBポートから充電したいと考える人も居ると思います。

しかし、PC用のUSBの基本規格は5Vなので、2セル以上のバッテリー搭載のデバイスでは基本的に充電ができないことが基本という点に注意が必要です。

通知で「充電されていません」などと表示されて充電が始まらないのが一般的です。

一応、一部の優れた仕様のデバイスでは電圧を引き上げることができる回路(昇圧回路)があって充電ができることもありますが、充電は超低速かつ熱が多く発生するので、ほぼ使い物になりません。

なぜバッテリー残量が多いほど電圧が高くなる?

ここまでの内容でも少し触れたように、バッテリー残量が多くなるほど電圧が高くなります。なぜそうなるのかをざっくり触れていこうと思います。

まず、電圧というのは「リチウムイオンが正極側へ戻りたがっている圧力」です。

充電時には、充電器を使ってイオンを無理やり負極側(居心地の悪い場所)に押し込みますが、

負極側に押し込められたイオンは、隙あらば正極(居心地の良い場所)に戻ろうとします。この戻ろうとする勢いが電圧です。

理解を深めるために例え話をしようとするなら、「満員電車」をイメージすると分かり易いです。

片方の電車に人がたくさん乗っていると、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている(満充電に近い)ほど、中の人は「早くこの車両から出たい!」と思うかと思います。この早く出たいという圧力が電圧です。

正極

(居心地の良い場所)


リチウムイオンにとっては居心地が良い(活物質としてリチウム化合物が置かれる)ので、通路が開通すると自然にこちら側へ移る(放電)

負極

(居心地の悪い場所)


充電時にはこちら側へ無理やりイオンを押し込む。こちらにイオンが押し込まれる(満充電に近い)ほど、正極に戻りたがる力が強い(電圧が強くなる)

充電器選びの要点

最後に、実際に充電器を選ぶ際の要点を少しだけまとめています。

ここまでの内容の振り返りに近いです。

「GaN」表記があるものを選ぶ

充電器を選ぶ際は、「GaN」の表記があるかどうかを確認しましょう。

「GaN(窒素ガリウム)」は、充電器の従来のメイン素材である「シリコン」よりも優れた効率で低発熱なのが魅力の、次世代のパワー半導体として台頭してきている素材です。

2026年時点では既にかなり普及してはいるものの、未だに一部の安価な充電器ではシリコンを採用したものがあるので、注意が必要です。

電圧調整への対応:PPS、SPR AVS

充電時の発熱を減らしたいときに重要な要素の一つが、「充電器側で電圧を細かく調整して送ることができるか」です。

2026年時点でUSB PDで電圧調整対応したい場合は、一般的にオプション規格の「PPS(USB PD 3.0~)」もしくは「SPR AVS(USB PD 3.2~)」のどちらか利用することになります。これらについて、デバイスと充電器で対応製品を合わせて選ぶ必要があります。

具体的には、「AndroidならPPS」で「Apple製品(2025年後半~)ならSPR AVS」という形が一般的です。

しかし、SPR AVS対応充電器については、2026年2月時点では該当製品がほとんどない点に注意が必要です。

2025年後半にAppleが採用するまでは主要デバイスでの採用が皆無に近かったので、充電器メーカーも積極的に採用しなかったためです。

しかし、Appleが採用したことで一気に製品投入が加速すると思われるので、Apple製品をお使いでSPR AVSに対応したい場合には、対応充電器が普及するまでは待つか、安価な充電器で繋ぐのが良いかもしれません。

対して、PPSはあまり気にしなくても良いことが多いです。結構古い規格(2015年登場)で、既にAndroid機での対応が進んでからそれなりの期間が経っているためです。45W~くらいの大手メーカーの充電器なら大体対応しています。

ちなみに、100W超えなら「EPR AVS(USB PD 3.1~)」になりますが、自前で対応するケースは結構稀だと思います。

余裕を持ったW数を選ぶ

充電速度の実用値としては、スマホレベルなら65Wや100Wなどの高速充電は数字の大きさほどの価値は無いと言っても過言ではないと思います。

しかし、耐熱性(製品寿命)の観点から言えば、高出力充電器の意味はあります。

これは、たとえば「100W充電器」というのは、言い換えれば「100Wの高出力に耐えられる充電器」とも捉えることができるためです。

仮に45Wをメインの充電速度としたい場合に、45Wの充電器を選択してしまうと、その充電器は常にぎりぎりの状態での運用になります(許容値の100%)。

しかし、100W充電器で45Wの充電を行う場合なら、最大出力の45%しか出していないということなので、かなり余裕があるということになります。

そのため、熱的な余裕と製品寿命を考えるなら高出力充電器をあえて選択しておくというのも全然アリです。

3A超えを狙うなら、eMarker搭載ケーブルを用意

市販の充電器を購入する場合にはケーブルが付属していないことが結構多いです。しかし、USB PDで3A超えの高速充電を実現するには、eMarkerというICチップが搭載されたケーブルが必要となるので注意が必要です。

65Wの充電器を買ったとしても、持っていた安いケーブルなどを使用してしまうと、大幅に速度が制限されてしまいます。

ただし、発熱を出来るだけ抑えたい場合には電流はむしろ低い方が良いです。また、10W~20W台での充電速度でも、恐らく想像するほどは遅く無いと感じる人も多いと思うので、用途や人次第でもあります。

サイズとプラグの折りたたみも注目

充電器のサイズとプラグの折りたたみも要注目ポイントです。

特に問題になりやすいのはサイズです。思ったよりも大きくて、隣の使用中コンセントの邪魔になり挿すことができなかったというのはよくあります。

サイズが小さいほど熱的には良くありませんが、使用できないと元も子もないので、上手い塩梅のものを選択しましょう。

また、持ち運びを想定する場合にはプラグが折りたためるものを選択しておくとコンパクトで収納しやすくて良いです。


内容は以上ですが、時間が経つと状況が変わる部分もあるので、その辺りも確認しつつ更新を続けていこうと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です