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スマートフォン・タブレットPC・ノートパソコンなどで使用されている「リチウムイオン電池」についての解説です。
非常に身近なものながら、特に充電に関しては規格が乱立していることもあり、理解を遠ざけている分野だと思います。
そこで、「自分への備忘録」としての意味も込めて、広範的な知識をまとめています。
リチウムイオン電池の仕組み:イオンの往復
まずは仕組みをざっくりと触れておこうと思います。

引用:https://direct-joining.com/column/num-3142/
リチウムイオン電池は一言で言うなら、「リチウムイオンの往復運動」を利用した電池です。充電と放電時の仕組みだけ説明すると、以下のような感じになります。
【充電時】 イオンが無理やりマイナス側へ運ばれ、エネルギーが貯まる。
【放電時】イオンが自然にプラス側へ戻り、その勢いで電気が流れる。
電解液で満たされた箱をセパレータというもので仕切り、プラスとマイナスの間でイオンを行き来させる仕組みを利用したものがざっくりリチウムイオン電池です。
プラス側にリチウムイオン化合物を置き、電位差のある物質をマイナス側に置くことで(リチウムイオン電池では黒鉛が一般的)、マイナス側に押し込められたイオンがプラス側に戻りたがる力を利用しています。
その繰り返し(往復)の力を利用するのがリチウムイオン電池です。
仕組みを理解しないといけない訳ではありませんが、ざっくりでも覚えておくと、これから説明していく特徴のイメージを掴みやすいかと思うので、始めに触れています。
バッテリーにとって良くない状態3つ
まずは、バッテリーにとって良くない状態を見ていきましょう。
「バッテリーにとってのNG行動」そのものをリストアップすると数が多くなってしまいますが、根本的な要因は主に下記の3点に集約されます。
高温
「熱」はバッテリーにとって大敵です。高温状態が続くと劣化が進みます。
たとえるなら、焦げ付いてしまって効率が悪くなるという感じです。
化学的に言うと、高温状態では電解液と電極表面のSEI層との間で意図しない酸化・還元反応が進んでしまい、負極の表面に反応の残骸などが積み重なっていき、SEI層が肥大化してしまうことによるものです。
具体的には、大体45℃を超えたあたりから、本来は安定しているSEI層が一部変質・溶解し始めて、そこを修復しようとして新しい分解反応が起き、膜が歪んで分厚くなってしまいます。
この反応が進んでしまうと、当初よりも充電が遅くなったり、スマホがすぐ熱くなる要因となります。
最も身近で大きく発熱する原因は「高速充電(高電流による充電)」なので、そこは留意しておきたいです。
また、「アレニウスの法則」によると、電解コンデンサなどの電子部品は温度が10℃上がるごとに寿命が半分になるという話もあります。温度は寿命を決める要素として非常に重要です。
しかし、発熱の原因は他にもさまざまあります。単に気を付けろと言われても難しい部分だと思います。
本記事では、そのあたりもこの後触れていこうと思います。
満充電(100%に近い)
バッテリー残量が多いほどバッテリーは高電圧状態になりますが、その状態が維持されると劣化が進みやすくなります。
化学的に言うと、満充電状態は「非常にエネルギーが高く、不安定な状態」です。片側にイオンがパンパンに詰め込まれている状態です。
この高電圧状態が続くと、電解液が酸化してゴミ(ガスや膜)が発生してしまい、これがイオンの通行の妨げとなってしまうため、寿命を縮めるという形です。また、材料にストレスが掛かっているため構造が壊れやすくなり、電極が少し歪んでしまう可能性もあります。
満充電までいかずとも、100%に近付くほど良くないという点にも注意が必要です。一般的には高くても80%程度までに留めるのが良いとされています。そのこともあり、現在ではほとんどの端末で「バッテリー保護」などの設定で上限を80%に制限することができるようになっています。
過放電
バッテリー寿命的に実は一番怖いのは、過放電です。電池が空の状態で放置されると、電圧が大きく下がります(過放電)。そうなると、負極に使われている導電版(銅箔)から電子が奪われて、イオンとして溶け出してしまい、二度と充電できなくなります。
ストーブで例えると、燃料が尽きたあとに、ストーブ本体(銅箔)を薪として燃やし始めようとするという感じです。そうなるとストーブとしての機能を保てなくなります。
毎日使うスマートフォンなどでは問題になることは少ないと思いますが、たまにしか使わない機器では要注意です。
バッテリーの理想的な運用方法
前述のバッテリーにとって良くない状態を踏まえ、理想的な運用方法について見ていきます。
充電上限・バイパス給電
バッテリーを長持ちさせるための特に重要な要素として「バッテリー残量の上限設定」と「バイパス給電(パススルー給電・ダイレクト給電)」があります。これらについて少し深く見ていきます。
下記にそれぞれについての簡単な説明をまとめています。
しかし、これらはOSや機種によって対応が異なる部分です。
2026年1月時点の現在では、システム設定もAIに管理を任せる動きがあるので、近い内には細かく確認する意味も無くなるかもしれませんが、とりあえず現状の対応状況についてまとめておこうと思います。
対応状況をざっくりまとめた表が下記です。
デバイス別の対応状況(2026年1月時点)
| 上限設定 | バイパス給電 | バイパス給電的な制御 | |
|---|---|---|---|
| ノートPC Windows | メーカーの管理アプリ次第 基本はある 50%前後と80%の両対応も多い BIOS設定に隠れていることも | 基本的に対応 ACアダプタ接続時に 自動で切り替わるのが基本 | – |
| スマホ・タブレット Android | メーカー次第だが基本ある 80%上限は基本ある 50%はあまりない | 一部の機種限定 ※2026年時点 主にゲーミング・ハイエンド 特定の処理時に有効などもある | 比較的多くの機種で対応 ※2026年時点 主にゲーミング・ハイエンド 特定の処理時に有効などもある |
| MacBook | OS(AI)によるお任せ制御 外部アプリなら固定値指定も可 | あり ACアダプタ接続時に 自動で切り替わるのが基本 | – |
| iPad | あり 80% | × | 対応 ACアダプタ接続時は 基本的にシステム優先 |
| iPhone | あり 80%~ | × | 対応だけど ややバッテリー優先 |
少し込み入った話になりますが、それぞれの対応状況についてざっくり触れていきます。
Windowsはバッテリー面の管理については最も充実していると言って良いと思います。
まず、ACアダプタが接続されているときにはバイパス給電に自動で切り替わることが多いです。
これにより、直接稼働するための電力はACアダプターから直接取ってきて、容量が十分なとき(もしくは上限%設定をしていて達しているとき)は、バッテリーとシステムとの接続は遮断されます。
その時はバッテリーは完全に休んでいる状態なので、非常にバッテリーに優しいです。(ただし、熱には注意が必要)。
充電容量の制限についても、80%制限はほとんどの機種で可能です。ゲーミング・クリエイター・ビジネス用途が意識されたモデルでは50%制限が用意されていることもあり、中容量での制限も他のOSよりも行えるケースが多いです。
2026年2月時点では、細かな電力設定は、基本的には各メーカーの管理ソフト(Dell Power Manager、Lenovo Vantage、MyASUS など)から調整することになります。
Windowsとしての設定が存在する訳ではないものの、今ではほとんどの大手メーカーでバッテリーや充電に関しての設定が行える管理アプリが提供されているので、困ることはあまりないと思います。
また、2026年時点の最新バージョンのプレビュー版ビルドでは、OSの統合設定としてバッテリー保護関連項目が追加されていることなども確認されており、近い内に各メーカー管理ソフトを使わなくても調整できるようになる可能性もあります。
一見設定項目が無いように見えても、BIOS設定などに隠されていることもあるので、一度調べてみると良いです。
x86版とARM版の差
一つ注意しておきたのは、x86とARMという命令セットアーキテクチャの違いです。
x86 WindowsではARMと比べるとスリープ・スタンバイ時の消費電力が多いという特徴がある点に注意が必要です(2026年1月時点)。
AndroidやApple系OSはARMで統一されていますが、Windowsは2026年時点ではx86が圧倒的多数なため、実質Windowsだけスリープ時・スタンバイ時の消費電力が劣るという状況になっています(WindowsにもARM版もあるが、2026年時点ではまだ普及段階)。
2026年時点の新しいプロセッサでは、x86 Windowsの各効率も、チップ設計の刷新によって大きく改善されてはいるものの、ARM系(AndroidやApple系)と比べるとOSやチップの最適化面ではまだやや劣っている印象はあるのは否めないです。
そのため、特定用途だけでなく、生活に密着したモバイルデバイスにWindowsを選ぶ場合には、バッテリー面では少し不満が出る可能性は高めだと思います。
Androidもメーカー次第ですが、基本的には困ることは少ないと思います。
80%制限の搭載は一般的となっていますし、一部モデルではバイパス給電にも対応しています。
また、完全なバイパス給電には対応していなくても、現在では多くの機種でPMICによるバイパス給電的な制御に対応しています。
2026年時点でACアダプタから直接電力を使う制御が存在しないのは、旧世代かつ安価なチップや、中国系メーカーの安さにとにかく特化したチップなどに限られます。そのような機種を除けば対応していることが基本です。
しかし、ACアダプタ接続時に常に有効になる訳ではなく、充電制限時の%に達している場合や満充電時や重いゲーム時などに有効になる形が多いので、著しくバッテリー劣化を進める使い方への保険としての運用という側面が大きい感じです。
また、ちゃんとしたバイパス給電対応が欲しい場合には、主に高額モデルやゲーミングモデルでの対応が比較的多いので、購入前に確認しておく必要があります。バイパス給電が有効になるシーンも事前に確認しておくと安心です。。
Android機全体で見ると一部の対応ではあるものの、探せば結構見つかりますし、コスパの良い機種も含まれているので、事前に考慮できればさほど苦悩はしない部分だと思います。
Apple製品の電力管理は、将来的には全てAI任せになる可能性も高そうな気はするものの、2026年時点では iPhone(スマートフォン)、iPad(タブレット)、MacBook(ノートパソコン)の形態別に設定が分かれているという状況です。それぞれ見ていきます。
iPhone(スマートフォン)
2026年2月時点のiPhoneでは、バッテリー上限は80%~100%で変えられるようになっています。
そして、残念ながら完全なバイパス給電には対応していない可能性が高いです。
しかし、特定条件下ではPMICによるバイパス給電的な制御と思われる挙動をすることが確認されています。
具体的には、「バッテリー容量が上限値以上や満充電のとき」「重いゲームアプリ稼働時」などにバイパス給電的な挙動をすることが報告されています。
完全なバイパス給電とは違い、バッテリーとシステムが常に開通しているため、高級機の仕様のバッテリー寿命の最大化という点では少し残念ではありますが、薄型化や熱のことを考えると仕方ないところです。
Androidスマホでも全体ではバイパス給電は非対応機が基本なので、明確なデメリットだとは思いませんが、Androidでは探せばバイパス給電対応機自体は割とあるので、少しだけ不利ではあるかなと思います。
iPad(タブレット)
2026年2月時点では、バッテリー上限は80%に制限する機能が追加されています。
そして、iPadも残念ながら完全なバイパス給電には対応していない可能性が高いです。
しかし、こちらはPMICによるバイパス給電的な制御が非常に優秀で、比較的しっかりと使われている挙動が確認されています。
iPadではACアダプタ接続時で電力供給が十分である場合にはシステム電力をまず優先すると言われています。
13インチモデルがやMagic KeyboardというPC的な使い方を意識した展開をしているだけあって、その辺りもしっかりとした制御が用意されています。
とはいえ、ちゃんとしたバイパス給電はなく、そちらと比べるならバッテリー保護の観点では劣っていることは事実なので、始めから据え置き運用を意識するなら、ノートパソコン(MacBook)や高額なAndroid機を選ぶ方が適している可能性はあります。
MacBook(ノートPC)
MacBookではバッテリーの充電制限とバイパス給電の両方に対応しています。
ACアダプタ接続時には、自動でバイパス給電に切り替わるようになっており、一般的なWindows機と変わらないです。
少し気になるのは充電制限の方で、2026年2月時点では「OS(AI)によるお任せ制御」となっており、ユーザー側で指定することができません。
外部アプリなどを使えば%指定での制限も可能ですが、普通にOSの設定項目として用意してくれた方が親切ではあると思います。
Appleはあまりユーザー側でOSレベルの処理を細かく指定することを好まない傾向があるので、その一環だとは思います。とはいえ、最近ではiPadやiPhoneでも80%~指定に対応したので、MacBookも近い内に対応するかもしれません。
熱が出る原因
個別に特に踏み込んでいきたいのはやはり「熱」です。
「熱」に関しては、原因がさまざまですし、USBや充電の規格も関係してくるため、総合的な事情がやや複雑です。
そのため、少し深堀りして、詳しい原因を見ていきたいと思います。
まず、基本となる「バッテリーが熱を持つ原因」見ていきます。大きく分けたのが以下になります。
大きな電流(配線ロス)
高速充電がバッテリーに良くないと言われる大きな要因の一つです。特に支配的な要因と言われています。
これはケーブルや端子や回路などの配線時に失われて熱に変換されるエネルギー(ジュール熱)は、電流の2乗に比例する*ためです。
要するに、発熱量は電流が2倍になれば4倍になり、3倍になれば9倍になります。これが熱となります。
とはいえ、実際には大電流を流すための設計が進んでいるため(基盤を薄くして抵抗を下げたり、回路を並列化したり)、2乗までの劇的な差が出ないように作られてはいます(許容値内なら1.2倍~1.5倍程度と言われているらしい)。
とはいえ、電流を増やすことによる総熱量増加が膨大な事実は変わらないので、要注意事項です。
発生する熱の多くはケーブルやコネクタですが、これがスマホなどのデバイスにも伝わりますし、デバイス内部でも配線ロスは発生するため、大きな熱の要因です。
ただし、ケーブルやコネクタなどはデバイスに達する前に自然冷却効果をある程度得られることもありますし、大電流前提設計の恩恵もあるので、むしろある程度までは上げる方が効率向上に貢献したりもします。しかし、許容値を超えて上げると一気に問題となるので塩梅が難しい要素です。
デバイスでの変換ロス
実はスマホなどのデバイスは、基本的に充電器から取り入れた電力をそのまま使用できる訳ではありません。主に電圧の調整が必要となるためです。
充電器の時点である程度まで減圧されて送られはするものの、多くの場合ではもっと精密な調整が必要なので、デバイス側でも調整を行います。
その際の回路や配線を通る際のロスや電圧を変換する際のロス(スイッチング損失)が熱となって無駄に放出される形になり、デバイスやバッテリーを熱くする要因となります。
この変換場所はバッテリーのすぐ傍にあるので、バッテリーの発熱とほぼ直結する形になっています。そのため、ある程度までは許容できる電流の大きさとは異なり、少しでもロスを減らしたいポイントです。
電圧の降下幅が大きいほど発生する熱が大きくなるため、これを極力減らすための充電器側での電圧調整機能の投入が進んでいます。
※覚える必要はありませんが、充電IC(DCDCコンバータ)というもので電圧を落としています。
充電器での変換ロス
最後は充電器の発熱です。
一般的な家庭用コンセントは100Vですが、これはデジタル機器にとっては高電圧すぎるので、まず充電器(ACアダプター)で電圧を落とす必要があります。
この際にどうしても数%~10%程度のロスが発生し、熱に変わります。
スマホなどのデバイスまでの物理的な距離は遠いものの、熱が蓄積したり長時間発熱すると、ケーブルやコネクタなどを通じてデバイスにも伝わります。
また、充電器自体も発熱すると効率が悪くなりますし、寿命的にも良くないです。
とはいえ、電圧の調整を雑にしてデバイス内部の発熱を増やすよりは許容しやすく誠実だということで、2026現在では出来るだけ充電器側で発熱を引き受ける方針が一般的です。
そこで、充電器の素材として、以前主流だったSi(シリコン)よりも非常に優れた効率を発揮する「GaN(窒素ガリウム)」が今では急速に普及しており、これも今ではチェックしておきたい項目となっています。
- 【参考】デバイスのシステム処理の熱
デバイスのシステム処理による熱が伝わることにも注意が必要です。
バッテリー自体の問題ではないので深く触れませんが、排熱処理なども間接的には重要な項目です。
これを踏まえた上で、次からはやや細かな規格などについて見ていきます。
充電の規格と速度について
充電やUSBの規格ごとの特徴をまとめています。
【早見表】充電とUSBの規格と特徴
充電規格やUSBの規格の要点早見表です。実際の数値も含めて見ていきます。
| 充電速度 | 可変電圧 | 発熱の少なさ (デバイス側) | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 通常出力 ※データ転送用 | × 低速 2.5W~15W | × 電圧固定 ただし、電流が低いため 問題は軽微 | ◎ 超低発熱 電流が小さい | 電流が小さいため 超低発熱 |
| USB PD (固定出力) | ◎ 超高速 〇 高速 15W~240W | × 電圧固定 階段式の切り替え | △ 高発熱 電圧固定&高速充電 | 優れた汎用性の高速充電 高電圧&高電流 対応 |
| PPS (PD 3.0) | 〇 高速 ~100W程度 | ◎ 可変電圧 20mV刻み | 〇 やや低発熱 電流次第 | 主にスマホ・タブレット向け 緻密な電圧制御(20mV刻み) デバイス側の負担軽減 |
| SPR AVS (PD 3.2) | 〇 高速 27W~100W程度 | 〇 可変電圧 100mV刻み | 〇 やや低発熱 電流次第 | 細かな電圧制御(100mV刻み) デバイス側の負担軽減 |
| EPR AVS (PD 3.1) | ◎ 超高速 100W~240W程度 | 〇 可変電圧 100mV刻み | △ やや高発熱 可変電圧だが高速すぎる | 細かな電圧制御(100mV刻み) 100W超向け PC向けの超高電圧充電 |
| 独自規格 | ◎ 超高速 〇 高速 規格次第 | ★ 可変電圧 超高精度 | 〇 比較的低発熱 変圧優秀だけど高速 | 充電器による超精密な電圧制御 デバイスの側の変圧負担ほぼ無し とはいえ、高速充電なので、 負荷は小さくはない |
| ワイヤレス充電 (Qi) | × 低速 ~15W | 〇 動的に調整 しかし、元効率が悪すぎて 焼石に水状態 | × 超高負荷 しかも熱がこもる 非常に過酷 | 効率が悪い(70%~) 熱源が密着 密着により排熱が阻害 バッテリー負担的には最悪 |
| 形状 | 主な規格 | 電圧(V)/電流(A) | 最大電力(W) | 特徴・主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| USB-A 四角いやつ | USB 2.0 | 5V / 0.5A | 2.5W | PCのデータ転送用 充電は超低速 |
| USB 3.x | 5V / 0.9A | 4.5W | 2.0よりは実用的 データ転送用 | |
| Apple 2.4A | 5V / 2.4A | 12W | iPhoneの昔の主流 | |
| Quick Charge 3.0 | 3.6V〜20V / 1.5A~2.0A | 18W+ | Androidの昔の主流 | |
| USB-C 平らな楕円 | USB BC 1.2 (USB–Aでも可) | 5V / 1.5A | 7.5W | 下位互換の共通規格 C端子の最低ライン |
| USB Type-C (定格) | 5V / 3.0A | 15W | PD非対応でも C-Cならこの速度 | |
| USB PD (固定) | 5V, 9V, 15V, 20V / 3A・5A | 100W | 高速充電の汎用規格 高電圧&高電流 対応 | |
| PD 3.0 (PPS) | 3.3V〜21V / 3A・5A | 100W | 20mV刻みの可変電圧 端末の変圧負荷を軽減 | |
| PD 3.2 (SPR AVS) | 9V~15V, 9V~20V / 3A・5A | 100W | 100mv刻みの可変電圧 遊びがあることで安定 | |
| PD 3.1 (EPR AVS) | 28V, 36V, 48V / 3A・5A | 240W | 100W超えの汎用規格 高消費電力ノートPC向け | |
| 磁力 ワイヤレス | Qi / Qi2 (無線) | 5V〜9V (内部制御) / 約2A | 7.5W〜15W | 電磁誘導で充電 非常に効率が悪い 熱源がスマホに密着 |
| MagSafe (無線) | ~9V / 2.22A ~15V / 2A~3A? | 15W~25W | 同上 25Wは短時間 |
USBの基本出力(データ転送用)
低速 バッテリーには非常にやさしい
USBの基本出力(USB 2.0・3.0 等)は、充電規格というよりはUSB機器を動かすための給電能力として用意されたものです。デバイスや充電器などによる通信を行わず、決められた一定の電圧(5V)を流す方法です。
元々はデータ転送用の規格として誕生したのがUSBであり、そのための電力として用意されたものでした。そのため、最も基本的で古い規格です。
充電速度は低速です。最大速度は2.5W~15Wとなっています。
USBの規格や形状によって差があり、USB-Aだと2.5W~4.5Wが最大で、USB-Cだと4.5W~15Wになります。
一応、USB C-C接続ならUSB PD非対応でも最大15W(5V / 3A)まで出せますが、2026年時点でC-C接続による充電を試みる場合はほとんどの場合でUSB PDが有効になると思われるので、基本規格の15Wが選択されるのは稀だと思います。
PCなどのUSB-Cポート(PD非対応かつ15Wまで許容)などに限られるので、実質的にはやはり2.5W~7.5Wくらいが一般的かと思います。
そして、ここからがポイントです。
データ転送用のUSB基本出力による充電は基本低速ですが、電流が1A未満(0.5A~0.9A)ため、非常に低発熱でバッテリーに優しい充電方法です。
配線ロスにおける発熱の基本式として、電流の2乗が比例するので、1A未満と1A超えでは圧倒的な差があります。
もう過去のものと思っている人も居るかもしれませんが、今でも時間に余裕があるときは低速充電にすることでバッテリーの長寿命化を期待できるので、需要のある充電方法です。
ただし、いくつかの注意点があります。
まず、電圧は固定値(5V)なので、デバイス側での電圧調整負荷が常に介在する点です。
1セルバッテリー(~4.4Vくらい)における充電の場合、5Vなら降下幅は小さいですし、電流による発熱が非常に少ないので問題にはなりにくいものの、次に触れる弱点との組み合わせによって無視できない問題となります。
そして、大きな問題が充電時間が非常に長い点です。
「0.9A / 5V」の例を考えると、一般的なスマートフォンで20%~80%間(60%)を充電するのに、おおよそ3~4時間も掛かります。充電時間が非常に長い(低速)なため、微弱な負荷であっても蓄積して負荷に繋がります。
単純に、時間が掛かると気軽に使えない時間が増えるというのも問題ですし、充電時間が長いと自然放電によるマイナス値もわずかに影響力が大きくなるため、時間浪費コストとの実用性は悪いと言わざるを得ないです。
そして、近年では電圧制御に優れたPPSやSPR AVS(後述)などの普及が急速に進んでおり、eMarkerの無いケーブルであえて充電する(3A以下)ことで、中速低負荷充電を強制することができたりするのも、相対的に魅力を下げたと思います。
更に、2セル以上のバッテリーでは電圧が足りなくて充電ができないことが基本という点にも注意が必要です。電圧は5V固定なので、バッテリー電圧が2倍(5V未満になることがまずない)となる2セルバッテリーのスマホやタブレットでは基本的に充電ができません。
最近では中国系メーカーを中心に2セルバッテリーの大容量急速充電端末が増えているので、汎用性でも少し悪くなってきました。
そのため、未だに発熱総量は非常に少ないので、時間に余裕があるときには低速充電は非常に有効ですが、以前ほど明確な優位性がなくなってはいるので、無理に意識するほ度では無い感じにはなったと思います。
USB PD(定格出力)
非常に優れた汎用性 高速 発熱は大分多い
USB PD(USB Power Delivery)は、USB Type-Cの汎用充電規格です。
現在では非常に一般的な規格となっており、幅広いデバイスで使われています。その汎用性の高さと高速充電対応という点が魅力です。
充電速度は、PD 3.0以前でも最大100W、PD 3.1以降なら最大240Wとなっており、汎用規格ながら高速充電に対応しています。
USB PDの中にもオプション規格がありますが、ここではオプション規格ではない定格出力を見ていきます。
USB PDの定格出力では、固定電圧の中から出力するため、常にデバイス側での電圧調整負荷が付きまとうのがデメリットです。
また、高速充電規格の共通事項ですが、実際の運用では65W~などの高速充電は、ファンレス機(スマホなど)では短時間しか持続できないか、そもそも有効にならないという点にも注意が必要です。
また、eMarkerが無いケーブルでは電流が3A以下に制限されてしまうのも見落としがちなポイントです。1セルバッテリーを前提とすると電圧は大きくても9Vくらいまでしか許容されないので、実際には充電時間の多くは~27Wほどに留まることが多いです。
まとめると、常にデバイスでの電圧調整が必要となる上、短時間ブースト充電による局所的な高発熱も基本発生するので、実はUSB PDの通常出力はバッテリーなどにとっては良くないです。後述のPPSやAVSを併用できない場合には注意が必要です。
PPS(USB PD 3.0~)
優れた汎用性 高速 Apple製品は未対応
PPS(Programmable Power Supply)は、USB PD 3.0~のオプション規格です。主にスマホ・タブレット向けの規格です。
デバイス側の要求に合わせて、電力を細かく調整してからデバイスへ送るため、デバイス側での調整が最低限で済み、発熱を大きく減らすことができます。
特に、PPSでは20mV刻みの非常に細かい電圧調整を行って供給するのが強みです。
仕組みを水道で例えるなら、デバイス側は手元のリモコンで「3.68Vでこのくらいの量を出して」と水道局に直接指示することができ、水道局がその丁度良い水圧で送り出してくれるので、受け取る側でバルブを絞って調整する必要がなく、摩擦(負荷)が最小限で済むという形です。
実は、2015年に登場した結構古い規格です。そのため、2026年現在では「大手メーカーのUSB PD 3.0対応の45W以上くらいの充電器(単体販売)」では対応が当たり前レベルになっています。
仕様が表記される際は「3.3V-11V / 4.5A」などのように、電圧に幅がある形になります(後述のAVSも同じ表記)。
しかし、近年では規格も増えてきた上、充電器の小型が進んで本体に記載できるスペースが減ったこともあり、固定出力の数値以外は省略されているケースも多くなりました。そのため、本体表記がないからといって電圧調整規格に対応していない訳ではないので注意が必要です。
今では、「USB PD 3.1 / 3.2」での新しいオプション規格「AVS(SPR・EPR)」が登場していますが、そちらは100mV刻みとなっており、20mVと比べるなら少し大雑把なので、PPSの方が電圧調整負荷はわずかに少ないです。PPSは充電速度もスマートフォンやタブレットレベルでは十分高速なので、2026年でも十分に現役の規格です。
ただし、2026年1月時点ではiPhoneを含むApple製品ではPPSに対応していないので、Apple製品で可変電圧による充電をしたいなら、SPR AVSを使用する必要がある点に注意が必要です。
SPR AVS
安定して高効率 高速 Apple製品対応(2025年~)対応製品が少ない(2025年時点)
SPR AVS(Standard Power Range / Adjustable Voltage Supply)は、USB PD 3.2~のオプション規格です(最大100W)。
デバイス側の要求に合わせて、100mV刻みの細かい電圧調整を行って電力を供給するため、デバイス側での電圧調整幅を減らすことができます。
「20mV刻みのPPSと比べると劣化してない?」と思う方も居るかもしれませんが、20mVという細かすぎる制御は逆にマイナスになってしまうケースもあるため、遊びのある100mVの方が安定した高効率という意味で安心できたりします。
また、100W超えの超速充電に対応できる「SPR EPS」も同じ制御方式なので、汎用充電器での制御コントローラーの追加費用をほぼゼロにでき、OS側の電源管理システムの簡略・共通化ができるのもメリットです。
関連して、非常に大きいポイントがApple製品の対応です。
Apple製品は長らくPPSに対応せずに固定出力にこだわっていましたが、2026年1月時点では、iPhone 17以降などの最新のAppleデバイスは、AVSのみに対応しています(PPSは非対応のまま)。AVSでようやく可変電圧に対応しました。
しかし、AVSは元々普及がかなり限定的でしたし、Appleの対応も急だったので、2026年1月時点ではSPR AVS対応のGaN採用の充電器は大手メーカーからはほぼ出ていない状況があったりします。
そのため、実力を十分に確認することは難しい現状です。しかし、Appleの対応から一気に製品投入や普及が加速していくと思われるので、2026年~2027年に長く使える汎用充電器を求めるなら、「SPR AVS(USB PD 3.2)対応の充電器」というのが一つの大きな目安となるのかなと思います。
EPR AVS
超高速(~240W) 太いケーブル
EPR AVS(Extended Power Range / Adjustable Voltage Supply)は、USB PD 3.1~のオプション規格です。前述のSPR AVSはこのEPR AVSを低電力帯に適用したものとなっています。
高消費電力のデバイス(主にノートPC)を対象とした規格であり、USB PDでは初の100W超えを定義した歴史的な規格です。最大240Wという超高速充電に対応します。
その超高速充電に加え、デバイス側の要求に合わせて100mV刻みの電圧調整を行って電力を供給するため、デバイス側での電圧調整幅を減らして発熱を軽減することができます。
最大240Wというのはインパクトがありますが、需要は限定的な規格です。シンプルにモバイルデバイスで100W超えの高速充電を必要とする対象が少ないためです。
また、昨今では半導体のプロセスやアーキテクチャの進化、素材の進化(GaNなど)、AIの進化、などによりむしろ消費電力平均は減少傾向にあります。
最近ではビデオカード搭載でも100W以下で稼働できるPCが増えている印象ですし、そもそも内蔵GPU性能が大きく底上げされているので、ビデオカード搭載機の需要自体が下がっています。
一応、SPR AVSと同じ制御システムを使えるので、制御コントローラーやOSの電源管理システムをノートPCやタブレットなどの複数のデバイス間でも共通化でき、コスト削減に繋がるのは明確な強みです。
しかし、結局のところ超高速充電を実現するにはそれに対応した大型かつ高品質な充電器と太くて高品質なケーブルが必要となるため、共用の充電器としては使い勝手が悪いかと思います。
100Wの壁を破ったことや、100mVという安定した調整幅を採用したことで重要な規格ではあるものの、一般的には使用されるケースはあまり無い規格になるのかなと個人的には思っています。
独自規格
高速 速度の割には低発熱(デバイス側)充電器側の発熱は多い汎用性が低い
独自規格(VOOC, Xiaomi HyperCharge 等)は、文字通りメーカーごとの独自規格です。汎用性を犠牲に効率を極限まで高めたものです。
特定メーカーが独自に開発・採用するもので、基本的に同社対応製品のデバイス・充電器(ケーブル)が揃った場合に機能します。
100W超えすら一般的な高速充電を実現しつつも、デバイス側への負荷を極力減らし、熱源は極限までデバイスの外に追いやるで、充電速度の割にはデバイスがそこまで熱くならないのが強みです。
仕組みやコンセプトはUSB PDのPPSやAVSと似ており、充電器側で電圧調整を行い熱源を充電器で引き受けるという形です。
しかし、自社開発のデバイス・充電器・ケーブルの組み合わせを利用することで綿密な連携と高精度のロス計算を行い、一般的なUSB PDよりも遥かに高頻度で高速な通信を行うことで、狙った電圧を非常に高い精度で送ることができます。
これにより、デバイス側の電圧調整がほぼ必要なく、充電器側に負担を全て背負うことできます。そして、高精度ながらハンチング現象などのリスクも抑えられています。
そして、USB PDではあまりやらないレベルの5A~10Aレベルの大きな電流を流せるようにしたことで、スペック上のW数を稼ぎつつ、他規格よりも実用的という充電を実現しています。
独自規格と聞くと、囲い込みのためという印象を持つ方も多いと思われ、そのような側面も否定はできないです。とはいえ、技術的な側面だけ見ても合理的で優れたものとなっています。
しかし、充電器やデバイスやケーブルの組み合わせがどれか一つでも欠けた途端、コストは安くないのに低速な充電器&ケーブルとなってしまいます。諸刃の剣的なポジションです。
ワイヤレス充電(Qi / MagSafe)
置くだけで充電 低速非常に低効率で発熱が多い 熱がこもる
ワイヤレス充電(Qi / MagSafe)は、電磁誘導を利用したワイヤレスによる充電方法です。充電器のコイルから磁力を出し、スマホ側のコイルで電気を受け取ります。
非常に便利ですが、残念ながらバッテリーにとっては「過酷な充電方法」と言わざるを得ないです。
まず、効率が非常に悪いです。70%~80%程度と言われており、残りの20%~30%が熱に変わります。新しい有線充電規格の効率は95%以上と言われているので、圧倒的な差があります。
そして、その大きなロスによる熱がスマホなどのデバイス背面にピッタリと張り付いた状態になります。熱がダイレクトに伝わってしまうだけでなく、熱の放出に役立つはずの背面パネルを熱源で覆い隠しているので、冷却の大きな妨げ(というか温度上昇の促進)となってしまいます。
しかも、充電速度は低速(7.5W~25W程度)なので、充電完了にはやや時間が掛かります。上記の熱源がピッタリと張り付いた状態が長時間維持されることになり、それはもうバッテリーにとっては過酷な充電となります。
2026年2月時点の最新規格である「Qi2」や「MagSsfe」などでは、マグネットで位置を固定することで効率を従来よりも高め、熱を「少し」減らす手法を取っているものの、それでも「有線 + 充電器での電圧制御」と比べると圧倒的に熱くて非効率です。
QiもMagSafeも少しでも発熱を減らすために電圧制御を採用しているものの、焼石に水レベルです。相殺して圧倒的なマイナスに持っていくほど、上述の効率の悪さと熱源の密着が致命的となっています。
バッテリー容量が非常に小さい機器(スタイラスペンなど)では、過放電の機能停止リスクよりは許容可能ということで採用が進んではいるものの、一つの充電方法としてはバッテリーにとっては最も優しくない充電方法と言えると思います。
以前に主流だった規格
補足知識
GaN(窒素ガリウム)は充電器の素材の名前です。
従来の充電器の素材は「シリコン(Si)」が主役でしたが、GaNはシリコンよりも変換効率が非常に高くて熱が出にくい上、熱に対する耐性も高いため、シリコンの次世代のパワー半導体の素材となっています。
充電器での変換(変圧)効率を比較すると、従来のシリコンでは約80%~87%と言われているのに対し、GaNは約90%~95%と言われています。
シリコンでは13%~20%が熱に変わるのに対し、GaNは5%~10%しか熱に変わらないということなので、発生する熱は半分以下です。非常に大きな差です。
このおかげで、減った熱分の放熱部材やスペースを節約できるので、同じ出力でもサイズを大きく削減することができます。
2026年時点では既に、大手メーカー品のほとんどはGaN採用のものとなっていますが、そのため、もし今から幅広く使える高出力の充電器を一つ買っておく場合には、GaNの記載があるかを一応確認しておくと良いです。
スマホやタブレットではあまり見ないと思いますが、ノートPCの仕様ではよく「3セルバッテリー」みたいなことが記載されています。
これは何かというと、複数のバッテリー(セル)を直列につなぎ、バッテリー全体の電圧を高め、容量と充電速度を高めたものです。
たとえば、3.7V(定格)のセルを3つ採用したバッテリーの全体の電圧は11.1V(定格)となります。
それに対し、多くのスマートフォンは単セルのシンプルなバッテリーを採用しており、バッテリー電圧は5V未満であることが基本なので、ノートPCと比べるとバッテリー電圧が格段に低いです。
また、スマートフォンやタブレットの中でも、100W超えのような超高速充電に対応した大容量バッテリー搭載のモデルだと2セル構造になっていることもあるので、そこも注意が必要です。
このように、実はデバイスごとにバッテリー電圧に大きな差があったりします。
意識している人は少ないかとは思いますが、実は充電方法に応じて注意すべき点があるので、いくつか触れていきます。
1つの充電器でスマホだけでなく、大型のタブレットやノートPCも充電したい
一番多いと思うのはこのケースです。PPSやSPR AVSが有効になっていない可能性が結構あります。
最近のUSB PD対応充電器の定格出力では基本的に20Vまで対応していることが基本なので、充電自体ができない特に問題になることは少ないのでそこは問題ないです。
しかし、最大100W以下の充電器で、前述のような電圧調整が含まれているPPSやSPR AVSなどの低電力用の高度なオプション規格では、~11Vくらいまでの対応の場合も結構あることに注意が必要です。
3セル以上のバッテリーの11.1V~だと、最低でも13V以上くらいの出力が必要となるので、11Vが最大の場合にはPPSやSPR AVSは使われず、固定出力となる可能性が高いです。
ノートPCなどに付属している充電器でも電圧調整には対応していないことが基本なので、別に損をしている訳ではないものの、折角を別途お金を出して充電器を購入するなら出来る限り汎用性の高いものを買っておきたいと思うので、そのあたりも見ておくと安心です。
スマートフォンに付属している高速充電器を使い回したい場合(100W超えなど)
一部のスマートフォンやタブレット(中国系が多い)では、100W超えの高速充電を売りにしている製品が結構あります。
そのような製品に付属している充電器を他のデバイスにも流用したいと思う人は多いと思いますが、この際にはちょっと注意が必要です。
まず、独自規格の場合にはデバイスもその規格に対応していないといけないので、他社製の製品では最大出力での高速充電は基本機能しない点に注意が必要です。
しかし、motorolaなど一部のメーカーでは太っ腹にも一般的なUSB PDの高速規格を採用して付属してくれているケースもあります。
ただし、その場合でも注意が必要です。最低電圧の出力値が5Vに設定されているケースが結構あるためです。
考えられる理由としては、100W超えのような超高速充電を実現しているスマートフォンは、バッテリーが2セル構造であることが多いことに起因します。要するに、バッテリー電圧が他の多くのスマホの約2倍です。
となると、バッテリー電圧は最低でも6Vを下回ることはないので、そのスマホ用の充電器では5V未満の低電圧に対応する意味がないのです。コスト削減のために対応しないことが多いです。
最低で5Vだと、一般的な単セルバッテリーのスマホだと電圧が大きすぎます。そのため、スマホ側で減圧調整が必須となり、一般的なスマホ用の充電器よりも発熱が多くなってしまいます。
充電が高速なのでそのせいだろう、と思ってしまって気付かない人が大半かなと思いますが、実は効率が悪いことをやっている可能性が高いので、注意が必要です。
PCのUSBハブのUSBポートを通じて充電したい
PCをよく使う人で、デスク上で全てを完結させたい場合に結構考える人が居ると思います。
低速充電にはなってしまうものの、低速充電がバッテリーに優しいということは結構認知されていると思うので、あえてUSBポートから充電したいと考える人も居ると思います。
しかし、PC用のUSBの基本規格は5Vなので、2セル以上のバッテリー搭載のデバイスでは基本的に充電ができないことが基本という点に注意が必要です。
通知で「充電されていません」などと表示されて充電が始まらないのが一般的です。
一応、一部の優れた仕様のデバイスでは電圧を引き上げることができる回路(昇圧回路)があって充電ができることもありますが、充電は超低速かつ熱が多く発生するので、ほぼ使い物になりません。
ここまでの内容でも少し触れたように、バッテリー残量が多くなるほど電圧が高くなります。なぜそうなるのかをざっくり触れていこうと思います。
まず、電圧というのは「リチウムイオンが正極側へ戻りたがっている圧力」です。
充電時には、充電器を使ってイオンを無理やり負極側(居心地の悪い場所)に押し込みますが、
負極側に押し込められたイオンは、隙あらば正極(居心地の良い場所)に戻ろうとします。この戻ろうとする勢いが電圧です。
理解を深めるために例え話をしようとするなら、「満員電車」をイメージすると分かり易いです。
片方の電車に人がたくさん乗っていると、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている(満充電に近い)ほど、中の人は「早くこの車両から出たい!」と思うかと思います。この早く出たいという圧力が電圧です。
正極
(居心地の良い場所)
リチウムイオンにとっては居心地が良い(活物質としてリチウム化合物が置かれる)ので、通路が開通すると自然にこちら側へ移る(放電)
負極
(居心地の悪い場所)
充電時にはこちら側へ無理やりイオンを押し込む。こちらにイオンが押し込まれる(満充電に近い)ほど、正極に戻りたがる力が強い(電圧が強くなる)
充電器選びの要点
最後に、実際に充電器を選ぶ際の要点を少しだけまとめています。
ここまでの内容の振り返りに近いです。
充電器を選ぶ際は、「GaN」の表記があるかどうかを確認しましょう。
「GaN(窒素ガリウム)」は、充電器の従来のメイン素材である「シリコン」よりも優れた効率で低発熱なのが魅力の、次世代のパワー半導体として台頭してきている素材です。
2026年時点では既にかなり普及してはいるものの、未だに一部の安価な充電器ではシリコンを採用したものがあるので、注意が必要です。
充電時の発熱を減らしたいときに重要な要素の一つが、「充電器側で電圧を細かく調整して送ることができるか」です。
2026年時点でUSB PDで電圧調整対応したい場合は、一般的にオプション規格の「PPS(USB PD 3.0~)」もしくは「SPR AVS(USB PD 3.2~)」のどちらか利用することになります。これらについて、デバイスと充電器で対応製品を合わせて選ぶ必要があります。
具体的には、「AndroidならPPS」で「Apple製品(2025年後半~)ならSPR AVS」という形が一般的です。
しかし、SPR AVS対応充電器については、2026年2月時点では該当製品がほとんどない点に注意が必要です。
2025年後半にAppleが採用するまでは主要デバイスでの採用が皆無に近かったので、充電器メーカーも積極的に採用しなかったためです。
しかし、Appleが採用したことで一気に製品投入が加速すると思われるので、Apple製品をお使いでSPR AVSに対応したい場合には、対応充電器が普及するまでは待つか、安価な充電器で繋ぐのが良いかもしれません。
対して、PPSはあまり気にしなくても良いことが多いです。結構古い規格(2015年登場)で、既にAndroid機での対応が進んでからそれなりの期間が経っているためです。45W~くらいの大手メーカーの充電器なら大体対応しています。
ちなみに、100W超えなら「EPR AVS(USB PD 3.1~)」になりますが、自前で対応するケースは結構稀だと思います。
充電速度の実用値としては、スマホレベルなら65Wや100Wなどの高速充電は数字の大きさほどの価値は無いと言っても過言ではないと思います。
しかし、耐熱性(製品寿命)の観点から言えば、高出力充電器の意味はあります。
これは、たとえば「100W充電器」というのは、言い換えれば「100Wの高出力に耐えられる充電器」とも捉えることができるためです。
仮に45Wをメインの充電速度としたい場合に、45Wの充電器を選択してしまうと、その充電器は常にぎりぎりの状態での運用になります(許容値の100%)。
しかし、100W充電器で45Wの充電を行う場合なら、最大出力の45%しか出していないということなので、かなり余裕があるということになります。
そのため、熱的な余裕と製品寿命を考えるなら高出力充電器をあえて選択しておくというのも全然アリです。
市販の充電器を購入する場合にはケーブルが付属していないことが結構多いです。しかし、USB PDで3A超えの高速充電を実現するには、eMarkerというICチップが搭載されたケーブルが必要となるので注意が必要です。
65Wの充電器を買ったとしても、持っていた安いケーブルなどを使用してしまうと、大幅に速度が制限されてしまいます。
ただし、発熱を出来るだけ抑えたい場合には電流はむしろ低い方が良いです。また、10W~20W台での充電速度でも、恐らく想像するほどは遅く無いと感じる人も多いと思うので、用途や人次第でもあります。
充電器のサイズとプラグの折りたたみも要注目ポイントです。
特に問題になりやすいのはサイズです。思ったよりも大きくて、隣の使用中コンセントの邪魔になり挿すことができなかったというのはよくあります。
サイズが小さいほど熱的には良くありませんが、使用できないと元も子もないので、上手い塩梅のものを選択しましょう。
また、持ち運びを想定する場合にはプラグが折りたためるものを選択しておくとコンパクトで収納しやすくて良いです。
内容は以上ですが、時間が経つと状況が変わる部分もあるので、その辺りも確認しつつ更新を続けていこうと思います。
