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NVIDIA「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」のざっくり性能比較・評価です。海外レビューを参考に性能をざっくりと確認していきます。
本記事の情報は記事執筆時点(2024年1月24日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2024年1月24日時点での北米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
GPU | シェーダー ユニット数 |
メモリタイプ | VRAM速度 VRAM帯域幅 |
レイトレ用 ユニット数 |
ダイサイズ (おおよそ) |
消費電力 (TGP等) |
北米 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 16384 | GDDR6X 24GB 384bit |
21.0Gbps 1008GB/s |
128 | 608㎟ | 450W | 1,599ドル |
RTX 4080 | 9728 | GDDR6X 16GB 256bit |
22.4Gbps 716.8GB/s |
76 | 380㎟ | 320W | 1,199ドル |
RX 7900 XTX | 6144 | GDDR6 24GB 384bit |
20Gbps 960GB/s |
96 | 36.6㎟*6 + 300㎟ |
355W | 999ドル |
RX 7900 XT | 5376 | GDDR6 20GB 320bit |
20Gbps 800GB/s |
84 | 36.6㎟*6 + 300㎟ |
315W | 799ドル →749ドル? |
RTX 4070 Ti SUPER | 8448 | GDDR6X 16GB 256bit |
21.0Gbps 672GB/s |
66 | 295㎟ | 285W | 799ドル |
RTX 4070 Ti | 7680 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
60 | 295㎟ | 285W | 799ドル →廃止予定 |
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB 384bit |
21.0Gbps 1008GB/s |
84 | 628.4㎟ | 450W | 1,499ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB 384bit |
19.5Gbps 936GB/s |
82 | 628.4㎟ | 350W | 1,299ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit |
18Gbps 576GB/s |
80 | 519㎟ | 335W | 949ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
80 | 519㎟ | 300W | 699ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB 384bit |
19Gbps 912GB/s |
80 | 628.4㎟ | 350W | 1,099ドル |
RTX 3080 10GB | 8704 | GDDR6X 10GB 320bit |
19Gbps 760GB/s |
68 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RTX 4070 SUPER | 7168 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
56 | 295㎟ | 220W | 599ドル |
RTX 4070 | 5888 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
46 | 295㎟ | 200W | 549ドル 前:599ドル |
RX 7800 XT | 3840 | GDDR6 16GB 256bit |
19.5Gbps 624GB/s |
60 | 37.5㎟*4 + 200㎟ |
263W | 499ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
72 | 519㎟ | 300W | 599ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB 256bit |
19Gbps 608GB/s |
48 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
60 | 519㎟ | 250W | 549ドル |
RX 7700 XT | 3456 | GDDR6 12GB 192bit |
18Gbps 432GB/s |
54 | 37.5㎟*4 + 200㎟ |
245W | 449ドル |
RTX 4060 Ti 8GB | 4352 | GDDR6 8GB 128bit |
18Gbps 288GB/s |
34 | 190㎟ | 160W | 399ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB 256bit |
14Gbps 448GB/s |
46 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit |
18Gbps 432GB/s |
40 | 336㎟ | 250W | 419ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB 192bit |
14Gbps 448GB/s |
38 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit |
16Gbps 384GB/s |
40 | 336㎟ | 230W | 379ドル |
Arc A770 16GB | 4096 | GDDR6 16GB 256bit |
17.5Gbps 560GB/s |
32 | 406㎟ | 225W | 349ドル |
Arc A770 8GB | 4096 | GDDR6 8GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
32 | 406㎟ | 225W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB 192bit |
15Gbps 360GB/s |
28 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RTX 4060 | 3072 | GDDR6 8GB 128bit |
17Gbps 272GB/s |
24 | 156㎟ | 115W | 299ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
17.5Gbps 288GB/s |
32 | 237㎟ | 180W | 299ドル |
Arc A750 | 3584 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
28 | 406㎟ | 225W | 289ドル |
RX 7600 | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
18Gbps 288GB/s |
32 | 204㎟ | 165W | 269ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
16Gbps 256GB/s |
32 | 237㎟ | 160W | – |
RTX 3050 | 2560 | GDDR6 8GB 128bit |
15Gbps 224GB/s |
20 | 276㎟ | 130W | 249ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB 128bit |
14Gbps 224GB/s |
28 | 237㎟ | 132W | 239ドル |
今回見ていくのは、RTX 40シリーズのリフレッシュ版「RTX 40 SUPER」の「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」です。基本仕様は既存の「RTX 40シリーズ」と同様で、アーキテクチャは「Ada Lovelace」で、製造プロセスも「TSMC 4N(カスタム)」となっています。コア・メモリ・クロック等の調整がされたシリーズとなっています。
「RTX 4070 Ti SUPER」の希望小売価格は、今までの「RTX 4070 Ti」と同じ799ドルに設定されています。公式サイトには日本での想定価格も掲載されており、そちらは115,800円~となっています。RTX 4070 Tiも大体同じくらいの価格が相場でしたので、妥当な値付けとなっていると思います。また、既存の「RTX 4070 Ti」はSUPERと置き換わり、市場から廃止予定です。
しかし、価格では懸念点があり、1週間前に登場した「RTX 4070 SUPER」が初動価格で想定よりも大分高い価格になっていたことです。そのため、RTX 4070 Ti SUPERも登場直後はかなり高価になる可能性があります。こちらは元モデルが廃止予定なので、確実に希望小売価格に近付いていくとは思うのですが、ハイエンドとしての魅力度がRTX 4070 SUPERよりも少し上かなという印象なので、需要が高くて品薄になれば高価な値付けが長引く可能性も考えられるのが不安なところです。
とはいえ、そのあたりの不確定要素は今議論しても仕方ない面もあるのでひとまず置いておき、仕様について見ていこうと思います。
このモデルの魅力は、RTX 4070 Tiから希望小売価格は据え置きにも関わらず、各コアは約10%増加、VRAMが16GBへと増量されている点です。それでいて、消費電力(TGP)も285Wと同じです。変更点の中でも特に、特にメモリが12GB→16GBになるのは非常に魅力的です。バス幅も192bit→256bitとなり帯域幅も向上しています。特に4K、レイトレーシング、画像生成(高解像度)等のVRAM性能が重要なハイエンド用途では、元モデルよりも一段高い性能を期待することができます。
「RTX 4070 Ti SUPER」の大まかな仕様面については以上ですが、最後に、その他の「RTX 40シリーズ」にも共通する仕様にもざっと触れておきます(基本的に以前の記事のコピペです)。
まず映像コーデックの対応で、「AV1」に対して、RTX 30シリーズではデコードだけのサポートでしたが、RTX 40ではエンコードにも対応しています。特にクリエイターの方にとっては嬉しい仕様だと思いますし、AV1は将来性があって採用率が高くなっていく可能性も高いため、導入しておくと安心できます。
次に次世代技術面です。レイトレーシングでは「RTコア」がRTX 30シリーズの第2世代から第3世代に更新されています。第3世代「RTコア」では「Shader Execution Reordering」などの新機能が追加され、性能が向上しています。
NVIDIAのアップスケーリング技術である「DLSS」でも、対応コアである「Tensorコア」が第3世代から第4世代へと更新されています。これにより、アップグレードされた「DLSS 3」を利用することができます。「DLSS 3」では中間フレームを作成することで負荷を大幅に軽減する機能が追加されており、性能が格段向上しているとNVIDIAは主張しており、実際に負荷がかなり軽減されている結果があります。そのため、重量級のゲームを高解像度でプレイしたい場合などには非常に役立つと思います。FSR 3でもフレーム生成機能が含まれており、こちらはGeForceとRadeonのどちらでも使えるので、固有の機能という訳ではありませんが、最終的な品質では最適化やAIで強いGeForceの方が優れているという意見が多いので、アップスケーリングを重視するならやはりRTX 40は魅力的です。
といった感じで、カタログスペックについてはここまでとして、実際の各性能について下記から見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態でのラスタライズ性能になります。
使用されたグラフィックボードは「ASUS GeForce RTX 4070 Ti SUPER TUF」、CPUは「Core i9-14900K」で、OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2024年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。ただし、RTX 4090など最新世代のハイエンドGPUでは低負荷感も大きくなっているものもあります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
223.6
|
RX 7900 XTX |
197.9
|
RTX 4080 |
193.8
|
RX 7900 XT |
179.1
|
RTX 4070 Ti SUPER |
177.8
|
RTX 4070 Ti |
167.6
|
RTX 3090 Ti |
165.4
|
RTX 4070 SUPER |
157.6
|
RTX 3090 |
153.3
|
RX 6900 XT |
149.2
|
RX 7800 XT |
144.0
|
RX 6800 XT |
140.9
|
RTX 3080 10GB |
139.1
|
RTX 4070 |
139.0
|
RX 7700 XT |
124.9
|
RTX 3070 Ti |
116.9
|
RTX 3070 |
111.0
|
RTX 4060 Ti 16GB |
107.9
|
RTX 4060 Ti 8GB |
107.0
|
RX 6700 XT |
101.2
|
RTX 3060 Ti |
97.6
|
RTX 4060 |
85.0
|
RX 7600 |
82.0
|
RX 6600 XT |
79.3
|
Arc A770 16GB |
77.6
|
RTX 3060 12GB |
74.9
|
RTX 3050 |
54.0
|
1080pゲームではRTX 4070 Tiから約6%アップの微増
1080pにおいては非常に優れたパフォーマンスです。RTX 4070 Tiを約6.1%上回る性能で、RX 7900 XTとは同等レベルになりました。
コア増加率(10%)やメモリスペックの向上を考えるとやや物足りない結果ではありますが、1080pは最新のハイエンド帯GPUでは性能が伸びにくい傾向があるので、仕方ないのかなと思います。パフォーマンス自体は非常に高いですし、希望小売価格は据え置きでコスパは向上しているので、特に問題はないかなと思います。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
188.1
|
RX 7900 XTX |
159.5
|
RTX 4080 |
154.1
|
RX 7900 XT |
139.9
|
RTX 4070 Ti SUPER |
137.5
|
RTX 3090 Ti |
131.3
|
RTX 4070 Ti |
128.2
|
RTX 3090 |
119.2
|
RTX 4070 SUPER |
118.6
|
RX 6900 XT |
114.0
|
RX 7800 XT |
109.3
|
RX 6800 XT |
106.8
|
RTX 3080 10GB |
106.1
|
RTX 4070 |
103.5
|
RX 7700 XT |
92.1
|
RTX 3070 Ti |
87.7
|
RTX 3070 |
82.6
|
RTX 4060 Ti 16GB |
78.0
|
RTX 4060 Ti 8GB |
77.1
|
RX 6700 XT |
74.3
|
RTX 3060 Ti |
71.6
|
RTX 4060 |
61.3
|
Arc A770 16GB |
59.9
|
RX 7600 |
57.9
|
RX 6600 XT |
56.1
|
RTX 3060 12GB |
54.7
|
RTX 3050 |
39.2
|
1440pの重量級タイトルでも144fps~を十分想定できる性能
1440pにおいても非常に優れたパフォーマンスを発揮し、重量級タイトルでも144fps~165fps以上を想定できる性能です。RTX 4070 Tiからは約7.3%の小さな向上で、RX 7900 XTと同等レベルというのは1080pと同じです。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
118.7
|
RX 7900 XTX |
96.1
|
RTX 4080 |
92.5
|
RTX 3090 Ti |
81.5
|
RX 7900 XT |
81.0
|
RTX 4070 Ti SUPER |
80.8
|
RTX 4070 Ti |
72.8
|
RTX 3090 |
72.5
|
RTX 4070 SUPER |
67.5
|
RX 6900 XT |
65.3
|
RTX 3080 10GB |
63.6
|
RX 7800 XT |
62.3
|
RX 6800 XT |
60.7
|
RTX 4070 |
58.6
|
RX 7700 XT |
50.7
|
RTX 3070 Ti |
50.5
|
RTX 3070 |
47.3
|
RTX 4060 Ti 16GB |
43.2
|
RTX 4060 Ti 8GB |
41.1
|
RTX 3060 Ti |
40.7
|
RX 6700 XT |
40.7
|
Arc A770 16GB |
35.8
|
RTX 4060 |
33.6
|
RTX 3060 12GB |
31.2
|
RX 7600 |
30.1
|
RX 6600 XT |
29.2
|
RTX 3050 |
21.6
|
4Kでも高めの性能で、16GBメモリもやや活きている印象
4Kにおいても平均80.8fpsを記録する高い性能です。重量級ゲームが中心の最高設定でこれなので、軽めのタイトルや設定次第では100fps超えも珍しくはないくらいの高性能さです。
RTX 4070 Tiと比較すると約11%高く、1080p~1440pの6~7%差よりも4~5%ほど差が広がっています。CUDAコアの増加率の10%以上の向上を見せていますし、ここはやはり12GB→16GBになり帯域幅も向上したメモリ性能の差が少しは出ているのかなという印象です。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。
GPU名称 | 消費電力 |
---|---|
RTX 4060 |
128W
|
RTX 3050 |
132W
|
RTX 4060 Ti 8GB |
152W
|
RX 7600 |
152W
|
RX 6600 XT |
159W
|
RTX 4060 Ti 16GB |
165W
|
RTX 3060 |
183W
|
RTX 4070 |
201W
|
RTX 3060 Ti |
205W
|
RTX 4070 SUPER |
218W
|
RX 6700 XT |
224W
|
RX 7700 XT |
228W
|
RTX 3070 |
232W
|
Arc A770 16GB |
235W
|
RX 7800 XT |
250W
|
RTX 4070 Ti |
277W
|
RTX 4070 Ti SUPER |
292W
|
RX 6800 XT |
294W
|
RX 6900 XT |
300W
|
RTX 3070 Ti |
302W
|
RTX 4080 |
304W
|
RX 7900 XT |
312W
|
RTX 3080 10GB |
336W
|
RX 7900 XTX |
353W
|
RTX 3090 |
368W
|
RTX 4090 |
411W
|
RTX 3090 Ti |
537W
|
ほぼTGPの285W通りの消費電力
ゲーム時の平均消費電力は、TGPである285Wよりわずかに高い292Wでした。少し高くはなっているものの、モデルにより差があるでしょうし、誤差の範囲内だと思います。
消費電力は多いため、Tiと同じくファンは3連が基本になると思われます。排熱面を考えても小さめのケースで運用するのは難しくなるので、ここは200W~220WのRTX 4070 / 4070 SUPERとの大きな差になります。
また、Tiと共通ですが、ダイサイズが約295m㎡と小さい割には消費電力が多いので、冷却や効率面で他の上位GPUよりもわずかに劣る面がありそうな印象も感じます(ワットパフォーマンスについてはすぐ下で触れます)。
ワットパフォーマンス
ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077(4K/Ultra/レイトレ無効)」です。
GPU名称 | 1フレームあたりの消費電力 |
---|---|
RTX 4080 |
4.0W
|
RTX 4070 SUPER |
4.1W
|
RTX 4090 |
4.2W
|
RX 7900 XTX |
4.4W
|
RTX 4060 Ti 8GB |
4.5W
|
RTX 4070 |
4.5W
|
RX 7900 XT |
4.7W
|
RTX 4070 Ti SUPER |
4.7W
|
RTX 4070 Ti |
4.7W
|
RX 7800 XT |
4.9W
|
RTX 4060 Ti 16GB |
5.1W
|
RTX 4060 |
5.3W
|
RX 7600 |
5.7W
|
RX 7700 XT |
5.7W
|
RTX 3070 |
6.0W
|
RX 6900 XT |
6.2W
|
RTX 3060 Ti |
6.2W
|
RTX 3090 |
6.3W
|
RX 6600 |
6.3W
|
RX 6800 XT |
6.5W
|
RTX 3080 10GB |
6.5W
|
RX 6600 XT |
6.9W
|
RTX 3070 Ti |
7.3W
|
Arc A770 16GB |
7.3W
|
RX 6700 XT |
7.4W
|
RTX 3060 |
7.5W
|
RTX 3050 |
8.0W
|
RTX 3090 Ti |
8.0W
|
ワットパフォーマンスは優れているけど、最新世代の中では若干低め
ワットパフォーマンスはTiとほぼ同等で、前世代と比較すると圧倒的に優れており、非常に良い値です。
ただ、最新世代の他の上位GPUと比べると、若干ながら低い数値となっています。
現在の上下モデルの「RTX 4070 SUPER」と「RTX 4080」と比較すると、12.8%~14.9%ほど劣る差がついています。また、4Kという環境は下位のGPUよりは少し有利なはずにも関わらず、RTX 4070にもわずかに劣る結果となっていたのも、少し気になる部分ではありました。
数値自体は良いので、深く気に留めるほどではないものの、個人的には効率も期待していた部分なので、最新世代の中では低めの位置に居ることを勝手ながらほんの少し残念には感じてしまいました。
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはメインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4080 |
127.3
|
RTX 4070 Ti SUPER |
116.4
|
RTX 4070 Ti |
110.2
|
RTX 3090 Ti |
107.8
|
RTX 4070 SUPER |
103.4
|
RTX 3090 |
99.0
|
RX 7900 XT |
93.2
|
RTX 4070 |
91.9
|
RTX 3080 10GB |
90.1
|
RX 7800 XT |
75.4
|
RX 6900 XT |
72.7
|
RTX 3070 Ti |
71.3
|
RTX 4060 Ti 16GB |
71.1
|
RX 6800 XT |
68.5
|
RTX 4060 Ti 8GB |
67.4
|
RX 7700 XT |
66.4
|
RX 6800 |
58.9
|
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4080 |
98.6
|
RTX 4070 Ti SUPER |
88.1
|
RTX 3090 Ti |
82.5
|
RTX 4070 Ti |
82.3
|
RTX 4070 SUPER |
75.9
|
RTX 3090 |
74.7
|
RX 7900 XT |
70.4
|
RTX 3080 10GB |
67.0
|
RTX 4070 |
66.7
|
RX 7800 XT |
54.9
|
RX 6900 XT |
52.1
|
RTX 4060 Ti 16GB |
50.1
|
RX 6800 XT |
49.1
|
RX 7700 XT |
47.0
|
RTX 3070 Ti |
43.9
|
RX 6800 |
42.4
|
RTX 4060 Ti 8GB |
40.9
|
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4080 |
57.1
|
RTX 4070 Ti SUPER |
50.4
|
RTX 3090 Ti |
48.8
|
RTX 3090 |
43.4
|
RX 7900 XT |
39.2
|
RTX 4070 Ti |
36.6
|
RTX 4070 SUPER |
34.2
|
RTX 4070 |
30.2
|
RX 7800 XT |
30.1
|
RTX 3080 10GB |
29.0
|
RX 6900 XT |
28.2
|
RTX 4060 Ti 16GB |
27.3
|
RX 6800 XT |
26.5
|
RX 6800 |
22.8
|
RX 7700 XT |
21.1
|
RTX 3070 Ti |
19.9
|
RTX 4060 Ti 8GB |
17.6
|
レイトレーシングは4Kで大きな向上
ネイティブのレイトレーシング性能は特に4Kで大きな向上が見られました。
RTX 4070 Tiと比較すると4K平均で約37.7%上回っている他、RTX 4070 / 4070 SUPER にも50%前後上回るという大きな差をつけています。4Kレイトレーシングはメモリ使用量が非常に多く、不足すると一気にfpsが低下するタイトルも散見されるため、特にそこで大きな差が生まれた感じです。ここでは16GBメモリの大きな恩恵を感じます。4Kレイトレコスパは非常に高いと言えると思います。
ただ、そもそも4Kレイトレという超高負荷な環境をネイティブで運用する人は現状ほとんど居ないと思うため、実用性的にはそこまで優位とは言えないのかなとは思います。
一方で、1080pと1440pの場合はレイトレでもメモリが活きている印象はあまりありません。RTX 4070 Tiとの差はラスタライズとほぼ同等の約6~7%差となっていました。低fpsだと少しの差でも使用感に大きな差が出たりするので、fpsが一段下がるレイトレでは小さな差でも優位性が高くはなるものの、コスパ的には価格がTiと同じなら若干良いかな程度でした。
4Kを意識するかで大きな差が出るGPUという感じです。
コストパフォーマンス
上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。
元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。4Kなどではやや結果が異なる可能性がある点に注意です。
1フレームあたりの価格(ラスタライズ)
まずはラスタライズ性能のコスパです。上述の1440pゲーム時の性能と現在の市場価格を基に、1フレームあたりの価格を算出し、コスパとして比較しています。
また、記事執筆時点でのNVIDIA公式掲載の希望小売価格は115,800円でしたが、1週間前の「RTX 4070 SUPER」を見ると、初動価格はこれよりも大幅に高くなることが想定されるので、参考に13万円を想定した場合のコスパも載せています。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RX 7600 |
¥639
|
¥36,980 |
RX 6700 XT |
¥667
|
¥49,580 |
RTX 3070 Ti |
¥670
|
¥58,800 |
RX 6600 XT |
¥677
|
¥37,980 |
RTX 4060 |
¥701
|
¥42,980 |
RTX 3060 12GB |
¥709
|
¥38,800 |
RTX 3070 |
¥724
|
¥59,800 |
RX 7700 XT |
¥725
|
¥66,800 |
RX 7800 XT |
¥730
|
¥79,800 |
RTX 4070 SUPER |
¥732
|
¥86,800 |
RTX 4060 Ti 8GB |
¥744
|
¥57,400 |
RTX 4070 ※値下げ想定 |
¥749
|
¥77,500 |
RTX 3050 |
¥760
|
¥29,800 |
RTX 3060 Ti |
¥765
|
¥54,800 |
Arc A770 16GB |
¥781
|
¥46,800 |
RTX 4070 SUPER ※発売直後 |
¥805
|
¥95,480 |
RTX 4070 |
¥819
|
¥84,800 |
RX 6800 XT |
¥831
|
¥88,800 |
RTX 3080 10GB |
¥837
|
¥88,800 |
RTX 4070 Ti SUPER |
¥842
|
¥115,800 |
RX 7900 XT |
¥858
|
¥120,000 |
RTX 4070 Ti |
¥858
|
¥109,980 |
RX 6900 XT |
¥858
|
¥97,800 |
RTX 4060 Ti 16GB |
¥882
|
¥68,800 |
RX 7900 XTX |
¥939
|
¥149,800 |
RTX 4070 Ti SUPER※高価想定 |
¥945
|
¥130,000 |
RTX 4080 |
¥1,167
|
¥179,800 |
RTX 4090 |
¥1,594
|
¥299,800 |
純粋なコスパは良くないが、RTX 4080の代替品として見るなら悪くはない
1440pにおけるラスタライズ性能コスパは上記のようになっています。上位は値下がりが進んだ旧世代GPUが多くを占めている状況です。
表を見ればわかる通り、「RTX 4070 Ti SUPER」のゲームコスパは良くはありません。安価な約11.6万円想定の場合でも、ハイエンド未満のほとんどのGPUに負けています。13万円想定の場合には更に一段悪くなります。
ゲームでは4K以外で印象的な性能を発揮できなかったので、1440p以下をメインとしたコスパを考えるならコスパは悪めのGPUとなっています。価格据え置きで性能が少し上がってもこのレベルなので、元の「RTX 4070 Ti」が軒並み希望小売価格を下回る金額で販売されていた理由がよくわかります。
ただし、4Kではやや地位を上げるはずですし、RTX 4080よりは遥かに良いコスパとなっているのは一応魅力です。13万円想定でもRTX 4080に対してのコスパは20%程度の大きな優位性があります。後に登場する「RTX 4080 SUPER」が200ドル安くなることを考慮しても、コスパは悪くても同等レベルで、基本は上回るはずです。
そのため、16GB以上のVRAMを搭載する高性能GPUの、RTX 4080の代替品として捉えるなら、コスパでも一応現状では有力なGPUにはなると思います。
1フレームあたりの価格(レイトレーシング)
次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RTX 4070 SUPER |
¥1,144
|
¥86,800 |
RTX 4070※値下げ想定 |
¥1,162
|
¥77,500 |
RTX 4070 SUPER ※発売直後 |
¥1,258
|
¥95,480 |
RTX 4070 |
¥1,271
|
¥84,800 |
RTX 4070 Ti SUPER |
¥1,314
|
¥115,800 |
RTX 3080 10GB |
¥1,325
|
¥88,800 |
RTX 4070 Ti |
¥1,336
|
¥109,980 |
RTX 3070 Ti |
¥1,339
|
¥58,800 |
RTX 4060 Ti 16GB |
¥1,373
|
¥68,800 |
RTX 4060 Ti 8GB |
¥1,403
|
¥57,400 |
RX 7700 XT |
¥1,421
|
¥66,800 |
RX 7800 XT |
¥1,454
|
¥79,800 |
RTX 4070 Ti SUPER ※高価想定 |
¥1,476
|
¥130,000 |
RX 7900 XT |
¥1,705
|
¥120,000 |
RX 6800 XT |
¥1,809
|
¥88,800 |
RTX 4080 |
¥1,824
|
¥179,800 |
RX 6900 XT |
¥1,877
|
¥97,800 |
レイトレコスパは実売価格次第
「RTX 4070 Ti SUPER」の1440pレイトレコスパは、主要GPUたちの中間層に位置しており、実売価格次第といった感じです。
評価が難しい位置ですが、レイトレ性能自体は高く、4Kへの対応力も高い点を考えると、レイトレを主軸に捉えるなら優先度は高くなりそうな印象も受けます。
とはいえ、安く見積もったとしてもトップ層に届かない程度のレイトレコスパではあり、4Kを意識しないなら「RTX 4070 / RTX 4070 SUPER」の方が数値的には一段優れています。やはりゲームでは4Kへの意識が肝になるGPUという印象です。
クリエイティブ用途
比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。
一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能、「Blender」におけるGPUレンダリング性能、「SPECviewperf 2020 v3」によるOpenGL性能、AIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。
また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Core i9-13900K」と「DDR5-6600 CL34 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。
理論演算性能(FP32)
FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。
一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、まず参考に見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。
GPU名称 | FP32(TFLOPS) |
---|---|
RX 7900 XTX 24GB 960GB/s |
61.42
|
RX 7900 XT 20GB 800GB/s |
51.48
|
RTX 4080 16GB 716.8GB/s |
48.74
|
RTX 4070 Ti SUPER 16GB 672GB/s |
44.10
|
RTX 4070 Ti 12GB 504GB/s |
40.09
|
RX 7800 XT 16GB 624GB/s |
37.32
|
RTX 4070 SUPER 12GB 504GB/s |
35.48
|
RX 7700 XT 12GB 432GB/s |
35.17
|
RTX 3080 10GB 760GB/s |
29.77
|
RTX 4070 12GB 504GB/s |
29.15
|
RTX 4060 Ti 8GB / 16GB 288GB/s |
22.06
|
RTX 3070 Ti 8GB 608GB/s |
21.75
|
RX 7600 8GB 288GB/s |
21.75
|
RX 6800 XT 16GB 512GB/s |
20.74
|
RTX 3070 8GB 448GB/s |
20.31
|
Arc A770 16GB 16GB 560GB/s |
17.20
|
RTX 3060 Ti 8GB 448GB/s |
16.20
|
RX 6800 16GB 512GB/s |
16.17
|
RTX 4060 8GB 272GB/s |
15.11
|
RX 6700 XT 12GB 384GB/s |
13.21
|
RTX 3060 12GB 12GB 360GB/s |
12.74
|
RX 6600 XT 8GB 256GB/s |
10.61
|
RTX 3050 8GB 224GB/s |
9.10
|
RX 6600 8GB 224GB/s |
8.93
|
FP32性能はRTX 4070 Tiから約1割向上し、メモリ性能もアップ
FP32性能はRTX 4070 Tiから約10%向上しており、メモリの容量増加の点も考えると、実用性能は一段上になっていると思います。
Blender(3DのGPUレンダリング)
「Blender」は人気のある定番のレンダリングソフトです。「Blender 3.6.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。
「Blender 3.6.0」では、AMD、NVIDIA、Intel Arc GPUでレイトレーシングを使用するCycles Xエンジンが含まれているため、レイトレーシング性能も重要となります。しかし、どうやら「Blender 3.6.0」ではレイトレーシング用のコアを直接使用するのではなく、メインのGPUシェーダーを介しての処理となるようです。そのため、RTコアではなくメインのGPUコア(CUDAコア)でレイトレーシングを高速化できるエンジンの「Optix」を持つGeForceに現状では優位性があります。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RTX 4080 |
3119.6
|
RTX 4070 Ti SUPER |
2732.0
|
RTX 4070 Ti |
2368.5
|
RTX 4070 SUPER |
2310.1
|
RTX 4070 |
1943.2
|
RTX 4060 Ti 8GB |
1419.4
|
RTX 4060 Ti 16GB |
1371.2
|
RTX 3070 Ti |
1356.2
|
RX 7900 XTX |
1252.9
|
RTX 4060 |
1160.3
|
RX 7900 XT |
1144.1
|
RX 7800 XT |
752.6
|
Arc A770 16GB |
696.5
|
RX 7700 XT |
649.7
|
RX 7600 |
422.5
|
RTX 4070 Ti と RTX 4080 の中間のGPUレンダリング性能
Blenderにおけるレンダリング性能は「RTX 4070 Ti」と「RTX 4080」の中間に位置します。
RTX 4070 Tiと比較すると約15.3%上回るスコアとなっていますが、これはゲームで見られた6%~11%よりも差が大きく、高いコスパを発揮していることがわかります。
他の気になるモデルとしては「RTX 4070 SUPER」があります。一応適正価格は8万円台後半という価格設定にも関わらず高い性能を持っており、12万円台あたりが実売想定価格となりそうな「RTX 4070 Ti SUPER」よりも性能は15.4%程度しか劣りません。価格の割にCUDAコアが多いこともあってか、レンダリングコスパは非常に良いことが伺えます。
レンダリングは内容によってVRAMが12GBではネックになる可能性もあると思いますし、帯域幅の差もあるので、高負荷なレンダリング処理でガンガン使いたい場合には「RTX 4070 Ti SUPER」の方が個人的には無難には思いますが、「RTX 4070 SUPER」も節約重視なら非常に強力な選択肢としてもちろん有力で、どっちもレンダリングでは魅力的な高コスパGPUだと思います。
クリエイティブ用途では高いVRAMスペックが求められることが多いので、ゲームよりも見栄えが少し良くなっている印象もあります。
ちなみに、Radeonは未だにBlenderのGPUレンダリングではGeForceよりも明らかに劣ります。これは処理の仕組みがGeForce有利に働いているため仕方がなく、現状Blenderでのレンダリングを想定するならGeForce一択です。ただし、この差が維持されるかはソフトやGPUやドライバの最適化次第なので、今後は状況が変わる可能性もあるので動向には注目していきたいです。
SPECviewperf 2020 v3(主にOpenGL)
「SPECviewperf 2020 v3」は主にOpenGL性能を測るベンチマークです。OpenGLはクロスプラットフォームに対応した汎用型のグラフィックスライブラリとなっており、ゲームだけでなく幅広い分野で利用されています。
今回見るのは「SPECviewperf 2020 v3」の8つのテストの総合スコア(幾何平均)です。ただし、一般的にはテストに使用される処理全てを利用する人はほぼ居ないと思うため、自分が使用するアプリケーションで使用される処理について確認することが重要な点は留意しておきましょう。今回は総合的な性能で相対的な差を求めるために、幾何平均による総合スコアを用いています。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RX 7900 XTX |
202.79
|
RX 7900 XT |
178.16
|
RX 7800 XT |
129.15
|
RX 7700 XT |
112.95
|
RTX 4080 |
98.57
|
RTX 4070 Ti SUPER |
88.95
|
RTX 4070 Ti |
80.29
|
RX 7600 |
79.14
|
RTX 4070 SUPER |
75.98
|
RTX 4070 |
66.71
|
RTX 3070 Ti |
56.17
|
RTX 4060 Ti 16GB |
51.12
|
RTX 4060 Ti 8GB |
50.92
|
RTX 4060 |
43.51
|
Arc A770 16GB |
30.78
|
OpenGL性能はRadeonの方が圧倒的に有利
OpenGL性能はRadeonの方が圧倒的に有利な点は一応注意です。
この差はGPU性能差によるものではなく、NVIDIAがゲーム向けのGeForceではOpenGL性能に制限を強く掛けているためです。同社のプロフェッショナル向けGPUの需要を維持するための調整となっています。
Radeonでも同様にプロフェッショナル向けのGPUがあり、ゲーム向けGPUでは制限が掛けられていますが、その制限がGeForceよりは緩いです。そのため、ゲーム向けGPU同士の比較だとRadeonの方が明らかに良く見えるという状況になっています。
とはいえ、強く制限が掛けられた状態でも、以前よりは性能が大きく底上げされているので使えないことはありません。開発者視点だとやはり厳しい面があるかもしれませんが、OpenGLがクロスプラットフォームの汎用型ライブラリということもあり、消費者視点なら高い性能を求められることは少ないです。
「RTX 4070 Ti SUPER」はメモリ性能の高さのおかげもあってか、制限下でも思ったよりも優れた性能を発揮しており、RTX 4080にも約10%しか劣りません。ヘビーな使い方を想定しなければ、困ることはあまりないと思います。
Stable Diffusion(AIイラスト生成)
現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」を用いて、AIイラストの生成時間を比較しています。よく利用されるAIイラスト生成ソフトは他にもありますが「Stable Diffusion」が恐らくは一番定番と言えるものだと思います。
各GPUで「768×768の20枚の画像を生成するのに掛かる時間」を測定し、1分あたり何枚の画像を生成できるかを各GPUで算出して比較しています。
GPU名称 | 1分あたりの生成枚数 |
---|---|
RTX 4080 |
20.320
|
RTX 4070 Ti SUPER |
18.060
|
RTX 4070 Ti |
15.888
|
RTX 4070 SUPER |
14.234
|
RTX 4070 |
12.861
|
RX 7900 XTX |
10.915
|
RTX 3070 Ti |
10.617
|
RX 7900 XT |
9.545
|
RTX 4060 Ti 8GB |
8.587
|
RTX 4060 Ti 16GB |
8.457
|
RX 7800 XT |
7.031
|
RTX 4060 |
6.990
|
RX 7700 XT |
6.205
|
Arc A770 16GB |
4.697
|
RX 7600 |
3.489
|
AIイラスト生成では高い性能を発揮、高解像度での対応力もある
「RTX 4070 Ti SUPER」のStable DiffusionにおけるAIイラスト生成の性能は非常に高いです。最近注目度が非常に高い項目なので、ここが「RTX 4070 Ti SUPER」の最大の魅力と評しても良いかもしれません。
768×768 解像度の場合、1分あたりで約18枚の画像を生成でき、RTX 4070 Tiよりも約13.7%高速です。非常に快適です。RTX 4080にも約11%しか劣っておらず、コスパも非常に優れていると思います。
また、画像生成AIは高解像度になるほどVRAMの要求容量が高くなることで知られており、768×768より上の解像度となると12GB以下と16GB以上とで圧倒的な差ができたりもします。その際に存分に活用するには、12GBの「RTX 4070 / 4070 SUPER / 4070 Ti」では頼りないことがあるので、16GBの「RTX 4070 Ti SUPER」とでは安心感に大きな違いがあります。
画像生成AI用の16GB以上のVRAMを搭載するGPUといえば、最も安価なモデルは「GeForce RTX 4060 Ti 16GB」がありましたが、他の面でのコスパが悪いので中々選び辛く、その次となると一気に価格が上がり「RTX 4080」になってしまうという状況があり、ほど良い高性能モデルが待ち望まれていた思いますが、そこを埋めるモデルとして「RTX 4070 Ti SUPER」はぴったりのGPUに見えるので、非常に高い競争力を持ち、大きく注目されるのではないかと思います。
画像生成AIも含め、AIやクリエイティブ用途ではやはりVRAM容量の多さが活きる場面が多い印象なので、「RTX 4070 Ti SUPER」が真価を発揮するのはそういった場面という気がします。
ちなみに競合のRadeonは、GeForceの競合モデルよりも全体的に大容量のVRAMを搭載するため、理論上はAIイラスト生成でも高い性能を発揮できるはずですが、基本仕様や最適化、AI性能でGeForceが有利なため、現状はGeForce一択レベルの性能差があります。
まとめ
GeForce RTX 4070 Ti SUPER
- 前のRTX 4070 Tiと同じ価格(799ドル)で16GB VRAM搭載
- 4Kでも十分に実用的な性能
- 非常に優れたワットパフォーマンス
- 優れたレイトレーシング性能
- 4Kや生成AIやクリエイティブ用途で優れたコスパと性能
- DLSS 3に対応
- AV1デコードおよびエンコードをサポート
- 非常に高価(国内想定価格:最安11.6万円程度?)
- 純粋なゲームコスパは良くはない
- 16GB VRAMがゲームでは思ったより活きないことが多い
- 消費電力が多い(TGP:285W)
RTX 4070 Ti SUPER:16GB VRAM搭載でハイエンド用途での性能が強化
「RTX 4070 Ti SUPER」は「RTX 4070 Ti」の799ドルという価格設定を引き継ぐにも関わらず、VRAMが16GBに、各コアも10%増量されたGPUです。元の「RTX 4070 Ti」よりは間違いなく優秀なGPUです。
このGPUの最大のポイントはやはり 16GB VRAMです。4Kやレイトレーシングなどの高負荷ゲームはもちろん、最近流行の画像生成AIを含むクリエイティブ用途での優位性も期待できるのが大きな魅力です。
GeForceで16GB以上のVRAMを搭載する現行モデルといえば「RTX 4060 Ti 16GB」が最も安価ですが、GPU自体のパワーが少し頼りないのと、VRAMを考慮しないコスパが悪いので選び辛く、次点が最安17万円~18万円の「RTX 4080」となってしまっており、コスパ重視の一般層には中々手を出しづらい状況がありました。
そこで登場したのが今回の「RTX 4070 Ti SUPER」です。実売価格こそまだわかりませんが、799ドルという価格を考えれば12万円前後が期待されるところです。価格自体は高価ですが、その価格で「RTX 4070 Ti」を1割上回るコア数に16GB VRAMが付属するので、10万円超えのハイエンド帯の中ではコスパもそこまで悪くないモデルとして非常に競争力を感じます。
実際のテストでも、特にGPUレンダリングやStable DiffusionによるAI画像生成の性能は非常に優れている他、4Kゲームでも特にレイトレーシングでは強力なコスパを発揮しており、10万円未満のGPUでは荷が重い超高負荷な処理でもネックにならない性能を証明しています。
このように、あらゆるハイエンド用途で高い性能を備えつつも、出来るだけ予算も無駄にしたくないという場合に適しているのが魅力のGPUが「RTX 4070 Ti SUPER」です。
その一方デメリットとしては、純粋なゲームコスパという点では良くはないのは留意しておく必要があります。115,800円という価格で販売されたと仮定しても、「RTX 4070」や「RTX 4070 SUPER」といった高コスパGPUにやや差があるレベルでコスパでは負けています。何なら1440p以下のゲームでは現行の下位GPUのほぼ全てにコスパで負けているという現状があります。
そのため、1440p以下ゲームを主軸として考えるなら、コスパが上で性能も必要十分な「RTX 4070 / 4070 SUPER」の方が上になるのかなと思います。
仕様を考えれば、RTX 4070 Tiから10%以上の向上が期待されていたと思いますが、実際には4Kでも10%程度の向上で、1080p~1440pだと約6~7%しか変わらなかったことが効いていると思います。そもそも元の「RTX 4070 Ti」のコスパが悪かった上に、思ったよりもゲーム性能の向上率が低かったこともあり、期待を下回る結果になってしまったのかなと思います。
また、ワットパフォーマンスがRTX 4090 / 4080と比べると2割近く劣っていたのも地味に気になる点です。効率自体は普通に良い部類で、前世代と比べると圧倒的に優れているので、本来は深く気に留めるほどではありませんが、この後登場する「RTX 4080 SUPER」が200ドル差(999ドル)であることを考えると、高負荷でガンガン使い倒すなら負けそうだなと正直感じます。
とはいえ、先にも触れた通りワットパフォーマンス自体は良い部類ですし、コスパも10万円超えのハイエンド帯GPUでは悪いのは通例です。RTX 4080やRX 7900 XT/XTXなど、超高額GPU同士の比較に限ればコスパも悪くはないですし、上述したようなハイエンド用途を重視するなら競争力は十分で、選ぶ価値のある魅力的なGPUだと思いますので、そこを用途としてどれほど重要視するかが選択のカギとなると思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。
お世話になっております、初めてゲーミングPCを購入するのですが
RTX 4070 Super とti superは今の時期は高くて分が悪いと詳しい人が口を揃えて仰っており
購入するタイミングを伺えません。次のグラフィックボードの分水嶺となる時期はどのタイミングなのでしょうか?
よろしくお願いします
はじめまして。
自分もRTX 4070 SUPER / 4070 Ti SUPERが適性価格より高いのは間違いないと思うので、少し待つのが賢明だと思います。
相場を正確に予測するのは難しいですが、RTX 4070のときと同様なら発売から1~2か月後には適性よりは若干高いくらいに落ち着くのではないかと思われます。
また、1月31日に登場するRTX 4080 SUPERも適正価格なら既存のRTX 4080より200ドルと大幅に安くなるはずとなっていて、RTX 4070 Ti SUPERがそこに対して競争力を維持するには今の価格だと厳しいはずなので、そちらの価格動向を見てからの判断でも良いかなと思います。