GPUの現在の価格について【2022年9月版】

2022年9月時点のデスクトップ向けGPUの現在価格についてのまとめです。遂にRTX 40シリーズのハイエンドモデルが発表され、価格も明らかになった初めての月です。先月から9月(今月)は既存GPUが更に値下がりするという噂が出ていましたが、実際どうだったのか見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年9月26日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

概要

GPU価格の動向を調査した記事です。高騰状態から値下がりの兆候が見えた2022年2月頃から毎月更新しながら投稿しています。

具体的には、現在のGPUの市場価格と予想適正価格との差を調べて確かめていきます。また、先月の同時期にも同様の記事を投稿したので、そちらの結果も利用して先月からの価格の動向も同時に確認していきます。

当面の懸念のやはり円安です。記事執筆時点(2022年9月時点)だと約144円程度となっています。先月の同時期には約137円だったので、一気に円安が加速しています。GPUとCPUの新世代の発売間近にこの変化は日本にとっては痛そうです。

新世代GPUに関しては、遂にRTX 40シリーズのハイエンドモデル「RTX 4090」「RTX 4080 16GB/12GB」の3つが発表され、性能向上は予想されていた通り前世代を圧倒する高さでしたが、先代モデルよりも値上がりしていました。NVIDIAの日本のHPから国内での想定価格も明らかになっており、元値が値上がりした上、日本では円安の影響も相まって、それぞれの国内想定価格はRTX 4090が298,000円~、RTX 4080 16GBが219800円~、RTX 4080 12GBが164,800円~とめちゃくちゃ高価でした。少なくとも発売直後の価格を考えると既存GPUも安さでは優位性がまだ続きそうです。

適正価格の計算と市場価格について

本記事では、現在のGPUの販売価格に加え、本来の予想適正価格を載せています。

その計算方法ですが、それぞれのGPUにはメーカーの希望小売価格(ドル)が大体公開されているため、そこから為替や流通マージンなどを考慮して算出しています。内訳は、今回の記事では1ドル144円(記事執筆時点のおおよその為替レート)で計算し、流通などのマージンは全て合わせて雑に20%としています。しっかりした比較ではないため、その点はご了承ください。

市場価格は筆者が各ショップや価格比較サイトを見回った際に、すぐに購入可能だった(在庫がある)ものの最安値です。また、特別なセール等で大幅に安い価格で販売されていたりすることもありますが、それが明らかな場合には筆者の判断で除外することもあるので、あらかじめご了承くださいませ。

Radeon RX 6000シリーズが値下げ

本題に入る前に触れておきたいのが、AMDがRadeon RX 6000シリーズのほぼ全モデルの希望小売価格を値下げしたことです。価格の改定は9月15日に行われたようです。対象モデルと値下げ内容は以下の通りとなっています。

対象GPU値下げ前値下げ後
RX 6950 XT$1,099$949
RX 6900 XT$999$699
RX 6800 XT$649$599
RX 6800$579$549
RX 6750 XT$549$419
RX 6700 XT$479$379
RX 6650 XT$399$299
RX 6600$329$239
RX 6500 XT$199$169
RX 6400$159$149

ほぼ全モデルが対象となっています。値下げ幅も全体的に大きめとなっており、在庫処分も大詰めといった印象です。

特に「RX 6900 XT」は999ドルから699ドルと300ドルというかなり大きな値下がりになっています。「RX 6950 XT」も150ドルと大きめの値下がりですし、やはり新世代登場でまず需要が低くなるハイエンドモデルを早く捌きたいのかなという印象です。ですが、RTX 4090とRTX 4080の価格を見ると「RX 6900 XT」が10万円程度まで値下がりするなら普通に有力なモデルにも見えますから、まだ未発表のRX 7000がそれほど強いということなのかなという期待も膨らみます。

ただし、値下がりしたら特に嬉しい「RX 6800 XT」は50ドルの値下げ、「RX 6800」は30ドルの値下げとなっていて、値下げ幅が小さかったです。それ以外のモデルは下位モデルでも大きめの値下がりを見せており、特にハイクラス~ミドルレンジの「RX 6750 XT」「RX 6700 XT」「RX 6650 XT」は全モデル100ドル以上の値下げとなっており、魅力的かなと思います。また、「RX 6600 XT」については記載がないため、生産終了となるかもしれないようです。

改定の時期的には、日本でも値下げの影響が出ているかは少し微妙なところです。そもそも9月前半の時点でRX 6000シリーズは日本では全体的な値下がりを見せており、ほとんどのモデルが値下がり後の想定価格よりも既に安い価格が販売されている状況でした。そのため、値下がりの影響があったのかは来月以降の価格を見て判断することになります。

NVIDIA:GeForce

まずはNVIDIAのGeForceです。各希望小売価格は、改定が行われたものは値下げ後のものを記載しています。

GPU希望
小売価格
国内予測
適正価格
市場価格
※2022年
9月26日時点
適正価格
との差
先月の価格
※2022年
8月24日時点
先月比
GeForce RTX 3090 Ti1,499ドル¥259,027¥172,800-33.3%¥195,000-11.4%
GeForce RTX 30901,299ドル¥224,467¥167,865-25.2%¥178,000-5.7%
GeForce RTX 3080 Ti1,099ドル¥189,907¥114,980-39.5%¥118,003-2.6%
GeForce RTX 3080 12GB799ドル¥138,067¥99,800-27.7%¥98,303+1.5%
GeForce RTX 3080 10GB699ドル¥120,787¥92,800-23.2%¥94,800-2.1%
GeForce RTX 3070 Ti599ドル¥103,507¥76,700-25.9%¥79,499-3.5%
GeForce RTX 3070499ドル¥86,227¥67,800-21.4%¥69,800-2.9%
GeForce RTX 3060 Ti399ドル¥68,947¥59,980-13.0%¥64,000-6.3%
GeForce RTX 3060329ドル¥56,851¥45,980-19.1%¥46,800-1.8%
GeForce RTX 3050249ドル¥43,027¥31,800-22.3%¥31,8000%
GeForce RTX 2060 12GB299ドル¥51,667¥37,800-26.1%¥37,8000%
GeForce RTX 2060 6GB299ドル¥51,667¥35,980-30.4%¥35,480+1.4%
GeForce GTX 1660 Ti279ドル¥48,211¥30,800-36.1%¥32,980-6.6%
GeForce GTX 1660 SUPER229ドル¥39,571¥24,980-36.9%¥25,800-3.2%
GeForce GTX 1650 GDDR6149ドル¥25,747¥19,980-22.4%¥22,880-12.7%
GeForce GTX 1630?ドル¥18,800¥18,8000%

まずはGeForceですが、「RTX 3090 Ti」などの次世代の初登場組と競合するハイエンドモデルでは大きな値下げが行われることもありましたが、それ以下のモデルでは値下げが落ち着き、下げ止まりといった感じになっています。一応は値下がりが多いものの、基本的に僅かな値下げです。

RTX 4090とRTX 4080がめちゃくちゃ高価だったことと、RTX 3080~RTX 3060については当面は併売となることが発表されたこともあってか、焦って売り切ろうという動きはあまり無い印象でした。RX 6000シリーズと違い希望小売価格の値下げも無かったので、ハイエンドモデル以外はほぼ横ばいという感じになっています。

「RTX 3060 Ti」については予想適正価格との差がまだ小さめなので、更なる値下げの可能性もあると思いますが、他についてはショップの独自の値下げ以外では大きな値下げはもう無いかもしれない雰囲気が出ています。円安が円高に転じれば話は別かもしれませんが…。

ハイエンドモデル以外で先月から10%以上の値下げを記録したのは「GTX 1650」のみでした。更に旧世代化することに加え、「RX 6600」や「RTX 3050」の低価格化や「Intel Arc A380」の登場の影響が考えられます。実際、安さでの優位性はまだ少しあるものの、総合的には明らかに「RX 6600」などの方がコスパが良く、以前の価格での5,000円程度しかない価格差では買う理由が弱いので、値下げも致し方無しという感じだと思います。

AMD:Radeon RX

次にAMDのRadeonです。各希望小売価格は、改定が行われたものは値下げ後のものを記載しています。

GPU希望
小売価格
国内予測
適正価格
市場価格
※2022年
9月26日時点
適正価格
との差
先月の価格
※2022年
8月24日時点
先月比
Radeon RX 6950 XT949ドル¥163,987¥134,800-17.8%¥149,800-10.0%
Radeon RX 6900 XT699ドル¥120,787¥122,380+1.3%¥130,673-6.3%
Radeon RX 6800 XT599ドル¥103,507¥90,000-13.0%¥95,800-6.1%
Radeon RX 6800549ドル¥94,867¥85,800-9.6%¥85,8000%
Radeon RX 6750 XT419ドル¥72,407¥59,461-17.9%¥69,800-14.8%
Radeon RX 6700 XT379ドル¥65,491¥59,612-9.0%¥62,980-5.3%
Radeon RX 6650 XT299ドル¥51,667¥37,880-26.7%¥49,980-24.2%
Radeon RX 6600 XT379ドル
※生産終了?
¥65,491¥40,637-38.0%¥45,800-11.3%
Radeon RX 6600239ドル¥41,299¥29,800-27.8%¥35,152-15.2%
Radeon RX 6500 XT169ドル¥29,203¥18,700-36.0%¥21,010-11.0%
Radeon RX 6400149ドル¥25,747¥16,800-34.8%¥19,800-15.2%

次はAMDのRadeonです。値動きの小さかったGeFoceに対して、Radeonは更に値下げが進んだ月でした。希望小売価格値下げの影響が出ているかはわかりませんが、ハイエンドモデル以外の主要モデルの大きな値下がりも多く、9月はRadeonが注目の月だったと言えると思います。全体としては6%~15%程度の値下がりが多く、最大では24.2%もの値下げを記録しています。

「RX 6900 XT」は約12万円まで値下がりしており、何度か約11万円での販売も見掛けるほど値下げが活発でした。実際に次世代GPUが登場するまでは断言できませんが、10万円台なら普通に次世代GPU登場後も大容量メモリの安価な選択肢として有力になりそうなレベルの価格だと思います。電力効率もこれから旧世代化するモデルの中では特に良い方ですし。

ハイエンドモデルの低価格化もめざましいRadeonですが、需要的に最も注目を集めたのはやはり主要なハイエンド以下のモデルだと思います。「RX 6750 XT」~「RX 6600」のどのモデルも大きめに値下がりしており、表の価格よりも安い価格で売られることも結構ありました(すぐ売り切れになるけど、登場頻度は多かった)。GeForceの競合モデルよりも明らかに安く買えるようになっており、多少レイトレーシング性能やDLSSが低くなっても良いなら、コスパは有利となっています。

特に「RX 6750 XT」と「RX 6700 XT」は今では5万円台で買えるGPUながら、12GBのVRAMを備えるのが魅力です。GeForceは「RTX 3060 Ti」がようやく6万円を切るかもというレベルなので、明らかにコスパが良いです。今重いゲームやクリエイティブ用途にも対応できる、出来るだけ安くてコスパの良いGPUを選ぶな有力なモデルだと思います。

また、安さ重視の選択肢でも「RX 6650 XT」が先月から約12,000円も値下がりし、3万円台に突入しており魅力的です。レイトレ性能とメモリ性能を除けば「RTX 3060」よりも基本高性能ですが、「RTX 3060」よりも1万円近く安いというコスパの良さです。CPUではRyzen 5000シリーズがかなり値下がりしていますし、今安さ重視ゲーミングPCを組むと、少し前よりはかなり安く組めそうです。

また、毎度になりますが一応「RX 6500 XT」と「RX 6400」にも触れておくと、この二つは安くなってもおすすめしません。いくらコスパが良くても1080pですら高いとは言えないパフォーマンスに、AV1デコードもないし、エンコード機能も一切無いのは論外です。この辺りを検討するくらいなら、やや高くはなりますが「RX 6600」をおすすめしたいです。

GeForceとRadeonの価格比較

競合しているNvidiaのGeForceとAMDのRadeonについて、同価格帯のGPUがどれなのかが分かり易いように表にまとめています。結構雑に置いてるので、そこはご了承ください。

GeForce価格
(2022年9月時点)
Radeon
RTX 3090 Ti170,000円
RTX 3090160,000円
135,000円RX 6950 XT
RTX 3080 Ti120,000円RX 6900 XT
110,000円
RTX 3080 12GB100,000円
RTX 3080 10GB95,000円RX 6800 XT
85,000円RX 6800
RTX 3070 Ti80,000円
75,000円
RTX 307070,000円
65,000円
RTX 3060 Ti60,000円RX 6750 XT
RX 6700 XT
RTX 306045,000円
40,000円RX 6650 XT
RX 6600 XT
RTX 206035,000円
RTX 3050
GTX 1660 Ti
30,000円RX 6600
GTX 1660 SUPER25,000円
GTX 1650
GTX 1630
20,000円RX 6500 XT
RX 6400

現在価格から見たコスパと電力効率

価格比較の次は、コスパと電力効率です。

Windowsのゲーム用の主要APIのDirectX 12(DX12)と、レイトレーシング用のDirectX Raytracing(DXR)の3DMarkのベンチマークスコアを利用し、2022年8月25日時点の価格を基に算出しています。

電力効率に関しては価格との関連性はないですが、購入の参考になる部分という事で載せています。

MEMO

DX12性能:3DMark Time SpyのGraphics Scoreです。DirectX 12(DX12)の1440pゲーミングのベンチマークスコアになります。新しめの3Dゲームで主流の方式(API)です。

レイトレ性能:3DMark Port Royalのスコアです。DirectX Raytracing(DXR)のベンチマークスコアになります。

コスパ:1円あたりの性能スコアです。小数点以下が多すぎて見難いので、各数値100倍して見易い数値にしています。

電力効率:1Wあたりの性能スコアです。

性能スコアの参考https://www.3dmark.com/

基本情報
GPUTDPDX12性能
(3DMark Time Spy)
レイトレ性能
(3DMark Port Royal)
RX 6950 XT335W22,23610,946
RTX 3090 Ti450W21,97714,844
RX 6900 XT300W20,06210,365
RTX 3090350W19,93213,641
RTX 3080 Ti350W19,60813,297
RX 6800 XT300W18,7929,545
RTX 3080 10GB320W17,69211,564
RX 6800250W15,7147,783
RTX 3070 Ti290W14,8258,871
RTX 3070220W13,7898,302
RX 6750 XT250W13,4926,447
RX 6700 XT230W12,5745,941
RTX 3060 Ti200W11,8936,978
RX 6650 XT180W9,7464,786
RX 6600 XT160W9,6984,407
RTX 3060170W8,8675,157
RX 6600132W8,0653,779
RTX 2060 12GB184W7,9964,443
RTX 2060 6GB160W7,6614,152
GTX 1660 Ti120W6,4031,654
RTX 3050130W6,2783,605
GTX 1660 SUPER125W6,1221,566
RX 6500 XT107W4,975483
GTX 1650 GDDR675W3,669
GTX 163075W2,091
RX 640053W3,496


コスパ(DX12)

コスパ(TimeSpy / DX12)
GPUコスパ
RX 6600
27.1
RX 6500 XT
26.6
RX 6650 XT
25.7
GTX 1660 SUPER
24.5
RX 6600 XT
23.9
RX 6750 XT
22.7
RTX 2060 6GB
21.3
RTX 2060 12GB
21.2
RX 6700 XT
21.1
RX 6800 XT
20.9
RX 6400
20.8
GTX 1660 Ti
20.8
RTX 3070
20.3
RTX 3060 Ti
19.8
RTX 3050
19.7
RTX 3060
19.3
RTX 3070 Ti
19.3
RTX 3080 10GB
19.1
RTX 3080 12GB
18.9
GTX 1650 GDDR6
18.4
RX 6800
18.3
RTX 3080 Ti
17.1
RX 6900 XT
16.6
RX 6950 XT
16.5
RTX 3090 Ti
12.7
RTX 3090
11.9
GTX 1630
11.1

恐らく現在最も主流であるDX12のコスパです。

先月まではトップ層は旧世代CPUが多く並んでいる状況でしたが、今月からは大きく値下がりした「RX 6000シリーズ」が台頭してきています。注意点として、「GTX 1660 SUPER」や「RX 6500 XT」がトップ層に存在しますが、これらはAV1デコードに対応していない他、実質レイトレーシングでも使えないので、長期利用を見据えた将来性や汎用性という点では大きなデメリットを抱えている点に留意です。「RX 6500 XT」に関してはハードウェアエンコードにも対応しないです。そのため、あまりおすすめはしないGPUです。

やはり今コスパ重視で魅力的なのは「RX 6600」~「RX 6750 XT」です。大幅な値下がりによって一気にコスパトップ層になりました。GeForceに対してDX12コスパでは明らかに有利です。メモリ性能やレイトレ性能が競合モデルだと大体やや負ける点は注意ですが、今DX12コスパ重視で狙うならRX 6000シリーズの方が有力です。

対するRTX 30シリーズでのトップは「RTX 3070」です。値下がりしたRX 6000シリーズにはDX12コスパではやや負けるものの、程良い高性能さと優れた電力効率とコスパは健在なので、GeForce派には依然として有力な選択肢です。レイトレやメモリの帯域幅も競合の「RX 6750 XT」以下には勝ります。

また、総合的に見れば「RTX 3070」が有利に見えるものの、単純なコスパ的には「RTX 3070 Ti」~「RTX 3050」まで大した差がないので、希望の電力や予算や性能、もしくは各ショップのセール価格によって今ならどれを選んでも良いのかなと思います。ただし、電力効率も気に掛けるなら「RTX 3070」「RTX 3060 Ti」がやや有利な点は注意です(後述)。


電力効率(DX12)

電力効率(TimeSpy / DX12)
GPU電力効率
RX 6900 XT
67.8
RX 6950 XT
66.4
RX 6400
66.0
RX 6800
62.9
RTX 3070
62.7
RX 6800 XT
62.6
RX 6600
61.1
RX 6600 XT
60.6
RTX 3060 Ti
59.5
RTX 3090
56.9
RTX 3080 Ti
56.0
RTX 3080 10GB
55.3
RX 6700 XT
54.7
RX 6650 XT
54.1
RX 6750 XT
54.0
RTX 3080 12GB
53.9
GTX 1660 Ti
53.4
RTX 3060
52.2
RTX 3070 Ti
51.1
GTX 1660 SUPER
49.0
GTX 1650 GDDR6
48.9
RTX 3090 Ti
48.8
RTX 3050
48.3
RTX 2060 6GB
47.9
RX 6500 XT
46.5
RTX 2060 12GB
43.5
GTX 1630 (50Wで計算)
41.8

DX12での電力効率です。価格が影響しないため先月とほぼ同じ内容です。

DX12の電力効率はRadeonが上位を占めています。トップは「RX 6900 XT」で、次点も「RX 6950 XT」です。いくら電力効率が良くても高価なので手が出しにくかった二つですが、かなり値下がりが進行して今では11万円~13万円台くらいで買えるようになりました。

とはいえ、RTX 4090およびRTX 4080の電力効率が格段に良くなっていることが発表で明らかになりましたし、予算次第ではありますが、電力効率重視ならやはり次世代を待った方が無難という印象です。

やはりハイエンドよりも今は「RX 6600」のような、安さ重視で既存GPUの中では効率も良いGPUの方が、次世代GPU登場後も後悔しにくいという意味で選び易い印象です。

GeForceで上位に食い込んでいるのは「RTX 3070」と「RTX 3060 Ti」です。「RTX 4090」および「RTX 4080」が電力効率が非常に優れるとはいえとんでもなく高価だったので、安さ重視のGeForce派はこの二つを出来るだけ安く買いたいという人は多くなってそうな気がします。


コスパ(レイトレーシング)

コスパ(Port Royal / DXR)
GPUコスパ
RX 6600
12.7
RTX 3080 12GB
12.5
RTX 3080 10GB
12.5
RTX 3070
12.2
RX 6650 XT
12.1
RTX 2060 12GB
11.8
RTX 3060 Ti
11.6
RTX 3070 Ti
11.6
RTX 3080 Ti
11.6
RTX 2060 6GB
11.5
RTX 3050
11.3
RTX 3060
11.2
RX 6600 XT
10.8
RX 6750 XT
10.8
RX 6800 XT
10.6
RX 6700 XT
10.0
RX 6800
9.1
RTX 3090 Ti
8.6
RX 6900 XT
8.5
RTX 3090
8.1
RX 6950 XT
8.1
GTX 1660 SUPER
6.3
GTX 1660 Ti
5.4
RX 6500 XT
2.6
RX 6400
GTX 1650 GDDR6
GTX 1630

レイトレーシングコスパです。従来では性能で優位なRTXシリーズが上位を独占していたのですが、RX 6000シリーズの値下げによって「RX 6600」と「RX 6650 XT」が上位に食い込んできました。まさかの結果です。ただし、どちらのモデルもそもそもレイトレーシング性能が低いモデルとなっており、実用的とは言い難いので、結局のところはやはりレイトレならGeForceという感じになると思います。RX 6000でレイトレで考えるなら最低でも「RX 6700 XT」からにしたいですが、そこ以上のモデルはGeForceにレイトレコスパはやや不利です。

ただし、じゃあ既存GPUでGeForceを選ぶのが良いかとなるとそれもまた微妙です。1080pの従来の描写方法(ラスタライズ)なら、正直RTX 3060とかでもそれなりのfpsで大体動きますが、レイトレーシングは非常に高負荷なので話は別です。やはり出来るだけ高性能な方が望ましいです。

となるとやはり次世代GPUを待った方が無難かなと思います。初発モデルがめちゃくちゃ高価なのが悩ましいですが、RTX 40シリーズではRTコアも新しい世代となり、DLSSも新しいバージョンへ対応したことが強調されており、4K+レイトレーシングでは前世代比で最大4倍のパフォーマンス向上を謳っていますので、多少高かったり待つ時間が長くても、待つ価値はあるのかなとと思います。


電力効率(レイトレーシング)

電力効率(Port Royal / DXR)
GPU電力効率
RTX 3090
39.0
RTX 3080 Ti
38.0
RTX 3070
37.7
RTX 3080 10GB
36.1
RTX 3080 12GB
35.6
RTX 3060 Ti
34.9
RX 6900 XT
34.6
RTX 3090 Ti
33.0
RX 6950 XT
32.6
RX 6800 XT
31.8
RX 6800
31.1
RTX 3070 Ti
30.6
RTX 3060
30.3
RX 6600
28.6
RTX 3050
27.7
RX 6600 XT
27.5
RTX 2060 6GB
26.0
RX 6700 XT
25.8
RX 6750 XT
25.8
RX 6650 XT
25.6
RTX 2060 12GB
24.1
GTX 1660 Ti
13.8
GTX 1660 SUPER
12.5
RX 6500 XT
4.5
RX 6400
GTX 1650 GDDR6
GTX 1630

レイトレーシングでの電力効率です。価格に影響されない指標なので、先月とほぼ同じ内容です。

価格の影響がない部分なので、レイトレは性能で有利なRTXシリーズの方が電力効率でもRadeonよりも有利です。また、レイトレの電力効率はレイトレ用のコアが多く搭載されるハイエンドGPUほど良くなる傾向があります。レイトレは非常に高負荷な処理なので、メモリも高性能なハイエンドGPUの方が有利ということもあると思います。

ただし、GeForceであっても旧世代の「RTX 2060」や、「RTX 3070 Ti」「RTX 3060」「RTX 3050」についてはレイトレの電力効率は良くない点は注意が必要です。この辺りは「RX 6600」や「RX 6800」などのRadeonの高効率モデルと大して変わらない電力効率なので、レイトレ面でもRadeonより優位とは言えなかったりする点は誤解されそうなことも多そうなので気を付ける必要があります。

また、コスパの項と同様に、レイトレは既存GPUではまだ力不足と言える部分な上、次世代GPUで大きく性能も効率も向上するので、出来れば次世代GPUを待った方が良いと思います。

雑感

恒例のGPUの価格動向の9月分でした。特にRadeon RX 6000シリーズの値下げが注目の月でした。

ハイエンド帯ではまさかの300ドル値下げの「RX 6900 XT」の今後の価格動向が気になるところです。値下げ後の699ドルというのは「RTX 3080 10GB」と同じ価格設定です。さすがに「RTX 3080 10GB」よりは基本性能や電力効率が明らかに上なので、価格はやや高くなるとは思いますが、それでも10万円前後くらいまで下がるならかなり魅力的です。

発表されたRTX 40シリーズのハイエンドモデルの中で最も安価なのが「RTX 4080 12GB」ですが、これは元々「RTX 4070 か RTX 4070 Ti」になると噂されていたモデルで、性能は「RTX 3090 Ti」並みという触れ込み(リーク)のモデルでした。これの国内想定価格が164,800円~ということで、TGPが285Wという効率の良さを考慮しても、めちゃくちゃ魅力的かというと微妙だと思います。

それに、「RTX 4080 12GB」の性能が「RTX 3090 Ti」並みなら、「RX 6900 XT」との性能差は思ったほど大きくありません。TimeSpy Graphics基準ならおおよそ1割くらいです。それで、VRAM性能では負けていないですし、5万円以上安いのは大きいので、「RX 6900 XT」は次世代登場後も全然戦えるモデルになる可能性は全然ありそうです。

もちろん、電力効率やレイトレーシング性能は負ける他、DLSSは利用できなかったり、AV1エンコードに対応しないなどの点は留意ですが、どれも一般利用ならそこまで影響が大きくはないと思う差ですし、5万円以上の価格差を考えれば許容できるレベルかなと感じます。それに、電力効率に関しては「RX 6900 XT」は既存GPUの中ではかなり良い部類なので、他GPUと比べるとその差はかなり抑えられています。

また、ハイエンド以外でもRX 6000シリーズの価格は気になるところです。アッパーミドルクラスの「RX 6750 XT」および「RX 6700 XT」は遂に5万円台に到達し、「RTX 3070」どころか「RTX 3060 Ti」の同等以下という価格になっています。VRAMを12GB備えた重いゲームやクリエイティブ用途にも対応できるGPUとしては過去最高に安く手に入れることが出来るモデルになっています。「RTX 4090」と「RTX 4080」の価格を見るに、一気に円高に転じでもしない限りは5万円台で次世代GPUが手に入るのはかなり先になりそうなので、思ったよりもこのクラスのGPUでも需要はまだ長く続きそうという印象です。

4万円以下クラスでも、「RX 6650 XT」および「RX 6600」は低価格帯ながら驚異の値下がりを見せており、非常に魅力的になっています。「RX 6650 XT」がこんなに早く3万円台で買えるようになるのはさすがに予想外でした。次世代GPUにコスパや電力効率で敵わないのは仕方ないとしても、このところの円安や米の物価高の状況を見ると、次世代で60番台のGPUが出ても同じ状況なら確実に3万円台では買えないと思うので、安さの優位性はまだ暫く続きそうな感じです。

いつまで生産が続けられるかはわかりませんが、低価格帯を埋める要因として生産が続くようであれば、2020年~2022年のRTX 2060のような立ち位置で、低価格でそれなりに動くGPUとして市場では重宝しそうな気がします。

といった感じで、本記事の内容は以上になります。

元々GPUの高騰が収束する動きを確認していきたいというのが本記事の趣旨だったので、高騰も収まり、次世代GPUも登場する来月からはこの記事を続けるかも検討しているところですが、旧世代の価格もまだ暫くは気になるGPU市場となりそうです。

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