「Ryzen 9 7950X」「Ryzen 9 7900X」ざっくり評価【性能比較】

遂に登場したZen 4アーキテクチャのRyzen 7000シリーズの初評価です。本記事では「Ryzen 9 7950X」と「Ryzen 9 7900X」を扱いますが、「Ryzen 7 7700X」と「Ryzen 5 7600X」も同時に投入されます。一つの記事で全てを網羅すると長くなってしまうので、分けて投稿することにしました。

また、海外発表での発売日は9月27日でしたが、日本においては9月30日の19時から発売予定となっており、少し差がある点に注意です。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年9月27日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

簡易比較表

簡易比較表です。

Zen 4の仕様(Zen 3との比較)

まずはZen 4の各仕様をZen 3と比較しながら見ていきたいと思います。下記の表にまとめています。Zen 4については初発の4モデルの仕様に基づいており、今後追加されるモデルによって変化がある可能性がある点に注意です。

Zen 3
Ryzen 5000
Zen 4
Ryzen 7000
プロセス 7nm 5nm
ソケット AM4 AM5
コア
6~16コア
6~16コア
スレッド
12~32スレッド
12~32スレッド
I/Oダイ
12nm
6nm
TDP
65W~105W
105W~170W
PPT 76W~142W 142W~230W
クロック(最大)
4.9GHz
5.7GHz
キャッシュ
35MB~72MB
L2:コアあたり0.5MB
L3:CCDあたり32MB
38MB~80MB
L2:コアあたり1MB
L3:CCDあたり32MB
内蔵GPU 基本無し
末尾Gのみ:Vega
全モデルRDNA 2搭載
PCIe PCIe 4.0 PCIe 5.0
メモリ DDR4-3200 DDR5-5200

Ryzen 7000シリーズのZen 4では、まず製造プロセスが前世代の7nmから5nmへと微細化されています。また、CPUだけでなくI/Oダイも前世代の12nmから6nmへと微細化を果たしており、プロセス面ではチップ全体で刷新された形となっています。

また、ソケットもAM5へと久しぶりの変更になった他、PCIeは5.0、メモリもDDR5対応になりました。各方面で大きな変更となる世代更新となっていることがわかります。メモリはDDR5のみの対応となっており、Intelよりも汎用性はやや劣る点となっています。しかし、DDR5メモリ価格も大分下がってきており、これからも価格低下が見込まれているので、発売後すぐに購入したい訳でなければそこまで問題にはならないかなと思います。ただし、GPU側のPCIe 5.0についてはチップセット末尾E(発表ではX670EとB650Eの2つ)となっており、従来モデルよりも高価になる点には注意が必要です。

コア数は据え置きとなっており、前世代の6~16コアと全く同じです。CCD構成なども含めて同じです。一応コアあたりのL2キャッシュが前世代の0.5MBから1MBへと増えた点では僅かな向上があり、レイテンシなどが改善していることは考えられるものの、正直コア部分については印象的とは言えない仕様になっていると思います。ただし、Intelでいうと全てがPコア(高性能コア)となっているため、純性能では劣るEコア(高効率コア)を含むIntel CPUとはコア数の差だけでは比較できない点は留意です。

また、内蔵GPUについても、Zen 4ではRDNA 2アーキテクチャのものがAPU以外でも搭載されることとなりました。主要モデルでのコンピュートユニット数は2で統一されるようで、ゲーム性能は低いためゲーマーにとっては価値を感じないかもしれませんが、オフィスPCやライトユーザー向けのPC向けとしては非常に意味のある変更となっています。

最後ですが、特に気になるのはTDPです。デフォルトのTDPが前世代の65W~105Wから105W~170Wと大きく上昇しています。PPTについても、前世代では76W~142Wだったのが、142W~230Wと大きく上昇してしまい、Intelに対して強みを感じれなくなっている点が気になります。

実際の消費電力や効率については後で触れていきますが、このTDP上昇の原因はクロックの上昇に他、Zen 4ではダイサイズがZen 3よりも少し縮小したにも関わらず、トランジスタ数が約1.5倍と格段に増えており、トランジスタ密度が上がったことで、熱密度が高まりチップが熱くなり易くなっていることが原因と言われています。

PPTが230WのRyzen 9では、240mm以上の水冷クーラーの仕様が推奨されており、Ryzen 9でも空冷で対応できた前世代とは冷却要件に大きな変化がある点には要注意です。Core i9を爆熱と馬鹿にできない仕様になっています。

既存モデルとの比較

※価格は、Ryzen 7000シリーズは国内想定価格で、その他は2022年9月27日時点でのおおよその市場価格です。

簡易比較
CPU名 製造
プロセス
コア
/スレッド
クロック
定格 / 最大
TDP iGPU L3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 7950X 5nm 16/32 4.5 / 5.7GHz 170W RDNA 2 (2CU) 64MB 約 117,800円
Ryzen 9 7900X 5nm 12/24 4.7 / 5.6GHz 170W RDNA 2 (2CU) 64MB 約 92,500円
Core i9-12900KS 10nm 16(8+8)
/24
3.4 / 5.5GHz
2.5 / 4.0GHz
150W UHD 770 30MB 約 98,800円
Core i9-12900K 10nm 16(8+8)
/24
3.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W UHD 770 30MB 約 86,000円
Ryzen 9 5950X 7nm 16/32 3.4 / 4.9GHz 105W 無し 64MB 約 73,500円
Ryzen 7 7700X 5nm 8/16 4.5 / 5.4GHz 105W RDNA 2 (2CU) 32MB 約 66,800円
Core i7-12700K 10nm 12(8+4)
/20
3.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W UHD 770 25MB 約 60,000円
Core i7-12700 10nm 12(8+4)
/20
2.1 / 4.9GHz
1.6 / 3.6GHz
65W UHD 770 25MB 約 51,300円
Ryzen 9 5900X 7nm 12/24 3.7 / 4.8GHz 105W 無し 64MB 約 47,700円
Ryzen 5 7600X 5nm 6/12 4.7 / 5.3GHz 105W RDNA 2 (2CU) 32MB 約 49,900円
Core i5-12600K 10nm 10(6+4)
/16
3.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W UHD 770 20MB 約 42,800円
Ryzen 7 5800X3D 7nm 8/16 3.4 / 4.5GHz 105W 無し 96MB 約 56,000円
Ryzen 7 5800X 7nm 8/16 3.8 / 4.7GHz 105W 無し 32MB 約 36,500円
Ryzen 7 5700X 7nm 8/16 3.4 / 4.6GHz 65W 無し 32MB 約 34,500円
Core i5-12400 10nm 6/12 2.5 / 4.4GHz 65W UHD 730 18MB 約 28,800円
Ryzen 5 5600X 7nm 6/12 3.7 / 4.6GHz 65W 無し 32MB 約 23,500円

価格はやはり高い

やはり日本においては円安の影響があるため、価格は高いです。記事執筆時点ではまだ発売されていませんが、予定価格が既に登場しており、Ryzen 9 7950Xは117,800円、Ryzen 9 7900Xは92,500円、Ryzen 7 7700Xは66,800円、Ryzen 5 7600Xは49,900円となっています。

既存の同コア数CPUの価格と照らし合わせても明らかに高価になっています。大体2~3万円のプラスです。ですが、Ryzen 9 7950Xについては思ったよりは安かった印象です。米での希望小売価格は699ドルとなっており、前世代最上位のRyzen 9 5950Xの登場時の799ドルよりも100ドル安くなったのが効いているようです。

本体価格自体は12万円近くと非常に高価なので真っ先におすすめできるモデルとは言えないですが、1コアあたりの価格は最も安いので、予算度外視でマルチスレッド性能コスパを求める人はRyzen 9 7950Xが最適だと思います。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。使用された使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」となっています。使用されたメモリは、DDR5に対応している第12世代CoreおよびRyzen 7000シリーズでは「DDR5-6000」で、その他は「DDR4-3600」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Ryzen 9 7950X
37523
Ryzen 9 7900X
28655
Core i9-12900K
27780
Ryzen 9 5950X
25813
Core i7-12700K
22232
Ryzen 9 5900X
21789
Ryzen 7 7700X
19810
Core i5-12600K
17699
Ryzen 7 5800X
15758
Ryzen 5 7600X
15242
Ryzen 7 5800X3D
14688
Core i9-10900K
14285
Core i9-11900K
13338
Core i7-11700KF
12911
Core i7-10700K
12138
Core i5-12400F
11715
Ryzen 5 5600X
11225
Core i5-11600K
10468
Core i5-10600K
9384
Core i5-10400F
8100
Core i5-11400F
7552
参考:TechPowerUp

マルチスレッド性能はRyzen 9 7950XがCore i9-12900Kを約35%上回り、7900Xでもわずかに上回る

コア数は前世代と同じにも関わらず、マルチスレッド性能は驚異的な向上を果たしています。Ryzen 9 7950XはCore i9-12900Kを約35%も上回り圧倒しています。Ryzen 9 7900Xでもわずかに上回っています。 

前世代と比較すると、7950Xは5950Xから約45.4%、7900Xは5900Xから約31.5%向上しています。

主にクリエイター向けのソフトにおけるアプリケーションパフォーマンスでは大きく突き放してのトップの座を勝ち取りました。ただし、Core側も第13世代ではEコアを更に追加してマルチスレッド性能を大幅に強化することが予測されているので、それが出た後の優位性がどうなるかはわかりません。

とはいえ、Ryzen 9 7950Xに関しては現状これだけの差をつけてリードしているので、すぐに不利になることは考えにくいとも思います。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Ryzen 9 7950X
2051
Core i9-12900K
2030
Ryzen 9 7900X
2026
Ryzen 7 7700X
2001
Ryzen 5 7600X
1963
Core i7-12700K
1939
Core i5-12600K
1921
Core i5-12400F
1734
Core i9-11900K
1675
Ryzen 9 5950X
1638
Ryzen 9 5900X
1623
Ryzen 7 5800X
1606
Core i7-11700KF
1600
Core i5-11600K
1562
Ryzen 5 5600X
1540
Ryzen 7 5800X3D
1496
Core i5-11400F
1414
Core i9-10900K
1378
Core i7-10700K
1358
Core i5-10600K
1316
Core i5-10400F
1173
参考:TechPowerUp

シングルスレッド性能は前世代から約25%向上し、第12世代Coreを若干上回る

シングルスレッド性能では、7950Xと7900Xどちらとも前世代から約25%ほどと大幅に向上しています。この向上によって第12世代Coreを少し上回ることとなりました。

現状は最高のシングルスレッドCPUとなることができましたが、第12世代Coreとの差は小さいので、上回ったというよりは同等になったという印象です。とはいえ、前世代のCoreより大幅に下回っていた時よりは印象はかなり改善したと思います。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。

今回は12種類のゲームで測定したFPSの幾何平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

12種類のゲームでの幾何平均fps(1080p)
CPU名称 スコア
Core i9-12900K
171.6
Core i7-12700K
168.3
Ryzen 7 7700X
164.7
Ryzen 9 7950X
164.7
Ryzen 9 7900X
163.6
Core i5-12600K
163.3
Ryzen 5 7600X
160.7
Ryzen 7 5800X3D
158.3
Ryzen 9 5950X
152.2
Ryzen 9 5900X
150.9
Core i5-12400F
150.4
Ryzen 7 5800X
148.4
Core i9-11900K
147.3
Ryzen 7 5700X
145.4
Core i7-10700K
145.1
Ryzen 5 5600X
141.7
Ryzen 7 5700G
133.8
Core i5-11400F
128.1
Core i9-10900K
125.8
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの幾何平均fps(1440p)
CPU名称 スコア
Core i9-12900K
146.2
Core i7-12700K
144.5
Ryzen 7 7700X
141.9
Ryzen 9 7950X
141.2
Core i5-12600K
141.1
Ryzen 9 7900X
140.8
Ryzen 7 5800X3D
140.4
Ryzen 5 7600X
140.2
Ryzen 9 5950X
135.6
Ryzen 9 5900X
134.9
Core i5-12400F
134.2
Ryzen 7 5800X
133.5
Core i9-10900K
133.2
Ryzen 7 5700X
131.6
Core i9-11900K
131.0
Core i7-10700K
130.3
Ryzen 5 5600X
128.3
Ryzen 7 5700G
122.3
Core i5-11400F
120.4
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの幾何平均fps(4K)
CPU名称 スコア
Core i9-12900K
96.7
Core i7-12700K
96.5
Core i5-12600K
96.1
Ryzen 7 5800X3D
95.8
Ryzen 9 7950X
95.7
Ryzen 7 7700X
95.5
Core i5-12400F
95.5
Ryzen 5 7600X
95.4
Ryzen 9 7900X
95.3
Ryzen 9 5950X
95.1
Ryzen 9 5900X
94.8
Ryzen 7 5800X
94.6
Core i9-10900K
94.5
Ryzen 7 5700X
94.3
Ryzen 5 5600X
93.8
Core i7-10700K
93.7
Core i9-11900K
93.3
Ryzen 7 5700G
90.8
Core i5-11400F
90.5
参考:TechPowerUp

前世代から改善し、第12世代Coreと同等クラスのゲーミング性能に

ゲーミング性能ですが、前世代からは特に1080pで大きく改善しました。テストでは平均ではCore i9-12900Kにはわずかに届かず、7950Xが1080pおよび1440pで約3%~4%ほど下回っているという結果になっていたものの、差としては誤差レベルですし、ゲームによってはリードしているものもあるので、たまたまテスト対象のゲームがCore側に有利だったとか、もっと高性能なGPUなら結果が変わるという可能性もあるとは思います。

追記:実際、この記事投稿後に拝見した別の記事ではCore i9-12900Kを若干上回っているレビュー記事も見掛けました。そのため、見出しと文を修正しました。

このゲーミング性能改善によって、第12世代Coreに対して差はない(若干上の可能性もある)と言えるレベルまで向上した上、前述のマルチスレッド性能では大きく上回っているので、今まではゲームではやや不利と言われていたRyzenですが、ゲーミング用途でも十分選ぶ価値のあるCPUにはなっていると思います。

ただ、ゲーム性能は注目を集める部分ですが、条件面の差があったにせよその差は大きくと思われるため、購入の決め手とするには難しい要素になりました。そのため、左右するのはそこよりも前述のマルチスレッド性能の高さに加え、価格の高さと後述の消費電力(発熱)面の方が大きいこととなりました。

内蔵GPU性能

Zen 4(Ryzen 7000)ではRDNA 2の内蔵GPUがAPUモデル以外でも統合されることとなりましたので、その性能もざっくりと見ていきたいと思います。

初発モデル(末尾X)ではGPUのコンピュートユニット(CU)数は全て2で、GPUクロックも共通で2200MHzです。よって、ゲームは特に軽いものでのみ利用可能で、基本的には軽作業やグラボ無しPCでの利用のためという感じです。モデル間の性能差もありません。

比較は13種類のゲームを1080pの最低設定で動作させた際の幾何平均fpsで行っています。参考用にエントリーレベルの単体GPUの性能も含めています。

13種類のゲームでの幾何平均fps(1080p 最低設定)
CPU名称 スコア
GTX 1060
109.4
RX 6400
107.7
GTX 1630
63.0
Ryzen 7 5700G
48.5
Ryzen 5 5600G
45.2
GT 1030
33.0
Core i9-12900K
26.4
Ryzen 5 7600X
25.1
Ryzen 9 7950X
25.0
Ryzen 9 7900X
25.0
Ryzen 7 7700X
25.0
Core i9-11900K
22.1
参考:TechPowerUp

第12世代CoreのUHD 770よりもやや低い性能

CU数が2のRDNA 2の内蔵GPUのゲームでのパフォーマンスは、第12世代CoreのUHD Graphics 770より少し低いものとなっています。今回参考にしたテストでは近い数値となっていますが、他レビューだともう少し差があることが多かったです。よって、やはり重いゲームなどに使うには厳しい性能で、基本的には画面出力用という感じになると思います。とはいえ、内蔵GPUを搭載するということが大きいので、Intelとの差を埋める仕様変更となりました。


その他

消費電力・電力効率

ざっくりとした消費電力と電力効率を見ていきます。電力はCPUのみのものとなっています。

電力効率はCinebenchのスコアを消費電力で割った、1Wあたりのスコアで比較しています。スコアが高い方が有利ですが、性能が高い方がワークロードを早く終えることができるという利点があるので、この電力効率が良いだけではなく性能の高さも重要だという点には注意が必要です。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称 消費電力
Core i5-11400F
60W
Ryzen 7 5700X
63W
Ryzen 5 5600X
63W
Core i5-12400F
67W
Ryzen 7 5700G
79W
Ryzen 7 5800X3D
89W
Ryzen 5 7600X
99W
Ryzen 9 5950X
118W
Ryzen 7 5800X
121W
Core i5-12600K
128W
Ryzen 9 5900X
131W
Ryzen 7 7700X
135W
Core i9-11900K
152W
Core i7-10700K
156W
Core i9-10900K
164W
Core i7-12700K
174W
Ryzen 9 7900X
185W
Ryzen 9 7950X
235W
Core i9-12900K
257W
参考:TechPowerUp

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称 1Wあたりのスコア
Ryzen 9 5950X
220.9
Ryzen 7 5700X
218.2
Ryzen 7 5700G
192.5
Ryzen 5 5600X
181.1
Core i5-12400F
179.8
Ryzen 9 7950X
173.4
Ryzen 9 5900X
169.2
Ryzen 9 7900X
157.0
Ryzen 5 7600X
156.2
Ryzen 7 5800X3D
151.7
Ryzen 7 7700X
151.0
Core i5-12600K
136.1
Core i7-12700K
131.4
Core i5-11400F
131.4
Ryzen 7 5800X
126.3
Core i9-12900K
107.3
Core i9-11900K
99.0
Core i9-10900K
94.8
Core i7-10700K
82.7
参考:TechPowerUp

消費電力は前世代から格段に増加

Ryzen 7000のRyzen 9はデフォルトTDPが170W、PPTが230Wに設定されており、前世代から消費電力および発熱が格段に増加しています。

Blender動作時の消費電力は、Ryzen 9 7950Wは235W、Ryzen 9 7900Xは185Wという結果でした。Core i9-12900Kの257Wよりはまだ低い数値を保っているものの、7950Xに関しては水冷推奨となり冷却要件では差がなくなったことになります。

前世代ではRyzen 9でもPPTは142Wとなっており、グラフを見ても分かる通りCoreの上位モデルに対して明らかに有利で、高性能な空冷でも運用可能だったので少し残念です。マルチスレッド性能がかなり向上しているので一概に悪いとは言えないですが、性能面での強みと引き換えに、汎用性での強みは一つ失ってしまったかなという印象です。

ただし、Ryzen 9 7900Xに関しては消費電力は185Wとなっており、7950Xよりも大幅に少ないです。PPTの230Wも約20%も下回っており、やや余裕があるようにも見えます。実際の温度がどうなるかはわかりませんが、これなら空冷でも大型で高性能なものなら使えないことは無さそうな気もする結果となっています。

電力効率は優れているけど、前世代からはまさかの悪化

「Ryzen 9 7950X」および「Ryzen 9 7900X」の電力効率は、第12世代Core(省電力モデル除く)を上回っており優れています。

第12世代Coreの高性能モデルで最も電力効率が良かったのは「Core i5-12600K」ですが、Cinebenchの1Wあたりのスコアでは「Ryzen 9 7950X」が約27.4%、「Ryzen 9 7900X」が約15.3%上回っており、大きくリードしています。「Core i9-12900K」と比較すると46%以上も上回っており、電力効率ではやはり優位性はRyzen 9の方にあります

ただし、気になるのは前世代よりは悪化している点です。先代と比較すると、7950Xは5950Xより約21.5%低く、7900Xは5900Xよりも約7.2%低いスコアとなっています。Coreに対して有利で居られるのは前世代でもRyzen 9の電力効率は非常に優れていて差を大きくつけていたためであり、実はRyzen 5000シリーズよりもやや悪化しています。

とはいえ、先にも書いた通り、マルチスレッド性能は前世代から大きく向上しており、高性能な方がワークロードを早く終えることが出来るという優位性があるため、電力効率のスコアだけで判断するのは早計です。それに、対抗の第12世代Coreに対しては前世代より多少悪化しても大幅に有利です。

そのため、購入を決める際にはマイナス要素とはならない部分だと思いますが、プロセス微細化を伴う新世代で電力効率が悪化するというのはあまり聞かないので、少し気にはなるところです。やはりTDPの大幅な増加が影響しているのではと疑ってしまいますね。

まとめ

ざっくりと見てきましたが、評価をまとめています。

Ryzen 9 7950X

良い点
  • Core i9-12900Kを遥かに上回る驚異的なマルチスレッド性能(16コア)
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 優れたゲーミング性能
  • 優れた電力効率
  • クーラーはAM4のものと互換性あり
  • PCIe 5.0のストレージとGPUに対応(GPUは末尾Eチップセットで対応)
  • RDNA 2内蔵GPUの追加(性能は高くない)
  • AVX512命令セットに対応

気になる点
  • 高すぎる価格(国内想定価格:117,800円)
  • 消費電力および発熱が非常に多い(TDP:170W、PPT:230W)
  • 前世代から電力効率はやや悪化
  • DDR4には未対応

Ryzen 9 7900X

良い点
  • Core i9-12900Kに匹敵する優れたマルチスレッド性能
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 優れたゲーミング性能
  • 優れた電力効率
  • TDPは同じだけどRyzen 9 7950Xよりもやや消費電力が少ない
  • クーラーはAM4のものと互換性あり
  • PCIe 5.0のストレージとGPUに対応(GPUは末尾Eチップセットで対応)
  • RDNA 2内蔵GPUの追加(性能は高くない)
  • AVX512命令セットに対応

悪い点
  • 非常に高価(想定価格:92,500円)
  • 消費電力および発熱が多い(TDP:170W、PPT:230Wだけど実際には高負荷時180W~190W程度)
  • 前世代から電力効率は少し悪化
  • DDR4には未対応

Ryzen 9 7950X:16コアの驚異的なマルチスレッド性能が凄い

Ryzen 9 7950Xは、やはり何といってもマルチスレッド性能の高さが印象的です。Core i9-12900Kに対しても約35%という大きなリードを獲得するほどの性能は凄いです。Core i9-12900Kと近いマルチスレッド性能だった先代のRyzen 9 5950Xに対しても同じくらいの向上を果たしており、コア・スレッド数が同じままで4割前後の性能向上は信じがたいほどの向上率です。現状ではマルチスレッド性能面では圧倒的な王者として君臨することになりました。

また、シングルスレッド性能およびゲーミング性能も前世代から大きく改善しており、第12世代Coreに対して明らかに有利とまではいかなかったものの、その差をほぼ無いものとし、Ryzen 5000シリーズから弱点を減らすこととなりました。ただし、本音をいうとゲーミング性能はもうちょっと高いものを期待していたので、少し残念でした。

「現状」では悪くない性能ではあるものの、第12世代CoreがRyzen 5000シリーズに対して見せたほどのゲーム性能差はなかったのも事実だと思うので、実際ゲームに関しては印象的とは言えない仕上がりだと思います。ただし、高速なキャッシュを大容量追加する3D V-Cacheモデルの追加も予測されているので、ゲームに特化したいならそちらをという感じなのかもしれません。

何にせよ、マルチスレッド性能では第12世代Coreを圧倒的に上回り、シングルスレッドやゲーミング性能も改善したのがRyzen 9 7950Xで、その性能は素晴らしいです。ただし、問題は消費電力と発熱です。TDPは先代の105Wから170Wへと増加し、PPTも230Wとなりました。先代は最上位のハイエンドながらも消費電力がさほど多くなく、空冷でも運用が可能というのも強みでしたが、そこは失われてしまいました。Core i9-12900Kよりはやや少ない電力で動作はするものの、冷却要件が240mm以上の水冷というのは同じになってしまいました。

また、電力効率も先代の5950Xからやや悪化しています。ただし、5950Xの電力効率が非常に良かったこともあり、多少悪化しても第12世代Coreよりは大きく優位性を保っているので、性能の向上率を考えればここは大きなマイナスポイントではないかもしれません。

電力面については、性能が格段に向上しているため、一概に悪いとも言えない部分ではありますが、性能の高さで電力面を許せるのは、現在少しでも高い性能を欲している人に限ります。このような最上位モデルの購入を検討する人の中には、今高い性能が必要という訳ではなく、長く使えるようにとか予算が潤沢だからなどの理由の人も多いと思います。そのような人にとってはマイナス方向に働きそうなことが多い要素だと思うので、個人的にはもう少し性能が低くても良いので省電力性や電力効率を伸ばす方向にして欲しかったというのが本音でした。前世代みたいに。

ただ、これについては諸説ある部分だと思いますし、表向きの性能を伸ばすことがメーカーにとってはアピールポイントとして分かり易く強力だということも理解できるので、評価は人によって分かれる部分かなと思います。

最後にもう一つの大きな懸念点は、価格です。国内想定価格は117,800円となっています。必要とする人が買えば良いという感じの仕様ですし、個人的には思ったよりは高くならなかったと感じるのでマイナスの印象はないですが、やはり12万円近くというのは高いです。

少なくとも、非常に高いマルチスレッド性能が必要という訳ではないなら、コスパは間違いなく悪いCPUです。前世代では冷却要件も厳しくなく、消費電力も思ったほど多くなかったですが、7950Xではそこも対応が必須なので費用は更に増える点も留意です。また、ゲーム性能だけでいえばRyzen 7 7700XやRyzen 5 7600Xともほとんど変わらなかったりするので尚更です(ただし、次世代の超高性能GPUで使う場合にはボトルネック軽減に役立つ可能性はあるかもしれない)。

とはいえ、やはりそのマルチスレッド性能の高さは魅力的ですし、1コアあたりの価格は実は一番安いのが7950Xです。人を選びますが、その性能の高さは間違いなく、今最強のCPUを求めるなら間違いなく筆頭となる超高性能CPUだと思います。

Ryzen 9 7900X:7950Xより手を出し易い12コアCPU

Ryzen 9 7900Xは、12コアながらCore i9-12900Kに匹敵する高い性能が魅力です。

16コアの7950Xにマルチスレッド性能では大きく負けるものの、前世代から大きく改善したシングルスレッド性能やゲーム性能ではほとんど差がないため、とにかく高いマルチスレッド性能を求める訳ではないなら十分と言えると思います。

電力面についても、設定自体は7950Xと同じ「TDP:170W / PPT:230W」となっていますが、ベンチマーク時に測定すると実際には高負荷時でも180W台に留まるため、7950Xよりはやや冷却要件が低い可能性があります。本当にそうかどうかは追加の情報や検証を待った方が良いかもしれませんが、180W台なら「Core i7-12700」や「Core i7-12700K」と同じ水準なので、空冷でも高性能なものなら運用が可能となるかもしれないのは朗報です。

また、電力効率も5900Xより少し悪化はしたものの、5950Xよりは低下率は小さめで、依然として第12世代Coreよりは良いです。実消費電力の少なさもあり、価格もやや下がりますし、7950Xよりは手を出し易く扱い易い印象のCPUです。

とはいえ、想定価格が9万円台で非常に高価なので、やはりそこで評価が難しいところです。ですが、現状でいえば、価格差がそこまで大きくないCore i9-12900Kと比べると総合的に若干有利かなという印象ですし、第12世代のCore i7には普通に有利なので十分魅力的ですし、AM5が少なくとも2025年までの長期サポートが約束されている点を考慮すると、Ryzen 7000シリーズの初発モデルの中では無難さを最も感じるモデルだと感じます。


といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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