Intel「Arc A380」のざっくり評価【性能比較】

Intel「Arc A380」のざっくり性能比較・評価です。遂に登場するIntelのPC向けのディスクリートGPUのエントリーモデルです。デスクトップ向けでNVIDIAとAMD以外のPC向けのディスクリートGPUの投入は14年ぶりとされており、かなり久しぶりとなります。

Intel Arc A380は日本やアメリカなどではまだ発売されておらず、現状は中国のみでの販売が開始されている状況となっており、今回はその中国製品のベンチマークが解禁されていたので、ざっくりと見て評価していきたいと思います。

注意

本記事の情報は記事執筆時点(2022年7月29日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

仕様

まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。

簡易比較表

※価格は2022年7月29日時点での北米での希望小売価格です。

GPUシェーダー
ユニット数
メモリタイプ
メモリ容量
メモリ転送速度
メモリ帯域幅
レイトレ用
ユニット数
ダイサイズ消費電力
(TDP等)
北米
参考価格
RTX 30705888GDDR6
8GB
14Gbps
448GB/s
46392㎟220W399ドル
RX 6700 XT2560GDDR6
12GB
16Gbps
384GB/s
40336㎟230W479ドル
RTX 3060 Ti4864GDDR6
8GB
14Gbps
448GB/s
38392㎟200W399ドル
RX 6600 XT2048GDDR6
8GB
16Gbps
256GB/s
32237㎟160W379ドル
RX 66001792GDDR6
8GB
14Gbps
224GB/s
28237㎟132W329ドル
RTX 30603584GDDR6
12GB
15Gbps
360GB/s
28276㎟170W329ドル
RTX 30502560GDDR6
8GB
15Gbps
224GB/s
20276㎟130W249ドル
GTX 1660 SUPER1408GDDR6
6GB
14Gbps
336GB/s
284㎟125W229ドル
RX 6500 XT1024GDDR6
4GB
18Gbps
144GB/s
16107㎟107W199ドル
GTX 1650 GDDR6896GDDR6
4GB
12Gbps
192GB/s
200㎟75W149ドル
RX 6400768GDDR6
4GB
16Gbps
128GB/s
12107㎟53W149ドル
Arc A3801024GDDR6
6GB
15.5Gbps
186GB/s
8?㎟75W149ドル?
GTX 1630512GDDR6
4GB
12Gbps
96GB/s
200㎟75W?ドル
GT 1030384GDDR5
2GB
6Gbps
48GB/s
74㎟30W79ドル

「Arc A380」はエントリークラスのGPUになります。アーキテクチャは「Xe HPG」となっており、TSMCの6nmプロセスに基づいています。具体的な希望小売価格は明らかにされていませんが、150ドル程度と推測されています。ただし、中国でもその価格では現在は購入することはできず、おおよそ190ドル程度で販売されているようです。

価格的には「GTX 1650」や「RX 6400」と競合するモデルになりますが、この二つとは異なりAV1のデコードおよびエンコード機能をも備えた優れたメディアエンジンを備えているため、競合製品よりもクリエイター用途で優位なゲーム用GPUとして投入されている点が競争力を左右する大きな点です。

また、NVIDIAの「DLSS」やAMDの「FSR」のように、「XeSS」というアップスケリーング機能も用意しており、そちらでも差が出ないようにされています。

そして、レイトレーシングのハードウェアアクセラレーションについても、対応するユニットを8基備えており利用が可能となっています。ただし、レイトレーシングに関してはこのクラスのGPUでは正直使い物にならないと思うので、無くても良い部分だとは思います。

主要な機能を述べたところで競合相手と比較すると、まず「GTX 1650」ではAV1はサポートされていませんし、レイトレ用ユニットも持ちません。「RX 6400」もAV1はサポートしない他、ハードウェアエンコード機能を一切持ちません。このように、Arc A380は競合製品に対して機能面では明らかに優位となっています。エントリーモデルながら最新機能を一通り揃えているのが大きな魅力です。

ハード仕様の面でも、Arc A380はVRAMにGDDR6 6GBを搭載しており、競合製品で主要な4GBよりも多い容量となっています。メモリ仕様は15.5Gbps、バス幅が96bitとなっており、帯域幅は186GB/sとなっています。帯域幅に関してはGTX 1650とほぼ同等ではありますが、容量が4GBと6GBでは差が出る用途も多そうなので、メモリ面でもやや優位と言って良いと思います。

TDPはIntelの公式HPでは75Wとなっていますが、それ以上のTDPでの動作も許可されており、実際今回ベンチマークテストが行われている「GUNNIR Intel Arc A380 Photon 6G OC」は92Wとなっており、8ピンの補助電源が付属しています。ただし、75Wという補助電源不要の範囲は非常に魅力的ですし、詳しくは後述しますが、92W設定でも実際のゲーミング時には平均で78W程度の消費電力となっているので、恐らくは75Wの補助電源不要モデルが主流になるのではないかと思います。

最後に注意点として、「Arc A380」はResizable BARに対応しており、OFFだと性能が低下する点が挙げられます。ここからのテストもResizable BARがONの状態での性能となります。ちなみに記事執筆時点では、Arc以外だとResizable BARは基本的に最新世代(RTX 30とRX 6000)しか対応しておらず、当然「GTX 1650」でも対応していません。ミドルレンジ下位くらいからは旧世代GPUが多いため、同価格・性能帯では基本的には対応していない機能です。「Arc A380」はまだドライバーの最適化不足などのせいかもしれませんが、他GPUよりもResizable BARによる性能向上率が高いので、現時点ではResizable BAR前提のGPUという感じになっています。

Arc A380の要点
  • エントリーモデルでGTX 1650やRX 6400と競合
  • AV1のデコードおよびエンコードのハードウェアクセラレーション対応
  • TDPは75W
  • GDDR6 6GB (96bit / 15.5Gbps)
  • レイトレーシングアクセラレーション対応(ユニット数は8)
  • XeSSに対応(Intelのアップスケーリング技術)
  • Resizable BARを使わないと性能が大きめに低下(最適化不足?今後改善される可能性あるかも)

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。使用されたCPUは「Ryzen 7 5800X」、ビデオカードは「GUNNIR Intel Arc A380 Photon 6G OC」が使用されています。

また、OSはWindows 10が使用されているため、Windows 11で報告例のあるゲーミングパフォーマンスが低下する問題は発生していません。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。


1080p(1920×1080)

FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2022年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPS数を維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。

平均FPS(1080p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RX 6950 XT
181.5
RTX 3090 Ti
177.9
RX 6900 XT
173.2
RTX 3090
171.9
RTX 3080 Ti
170.3
RX 6800 XT
165.4
RTX 3080 10GB
159.3
RX 6800
148.4
RTX 3070 Ti
140.8
RTX 3070
135.2
RX 6700 XT
128.0
RTX 3060 Ti
123.0
RX 6600 XT
107.4
RX 5700 XT
102.7
RTX 3060
96.5
RX 6600
93.2
RTX 2070
94.5
RTX 2060 6GB
81.4
RTX 3050
70.5
GTX 1660 Super
67.5
RX 6500 XT
49.7
RX 6400
38.3
Arc A380
38.3
GTX 1650
38.2
GTX 1630
23.7
GT 1030
8.8

GTX 1650 や RX 6400 とほぼ同等

1080pゲーミング性能は「GTX 1650」や「RX 6400」とほぼ同等です。やはりエントリーモデルということもあり性能は低いです。重めのゲームでは100fps超えなどを期待するのは厳しいです。ただし、重めのゲームが中心の最高設定でも平均38.3fps出ているので、重いゲームでも一応動作はできるくらいの性能はあります。GTX 1650と同等なので当たり前ですが、正にエントリーモデルという感じ。

具体的な価格はまだ日本に到着していないためわからないものの、Intel発表のスライドの設定額を信じるならほぼ同等です。性能もほぼ同等ですから、ゲーミングコスパもほぼ同等ということになります。ただし、「Arc A380」にはAV1デコード&エンコードの利点がありますから、価格が同じなら総合的にはやや優位となると思います。


1440p(2560×1440)

WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。

平均FPS(1440p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 3090 Ti
151.3
RX 6950 XT
149.6
RTX 3090
143.0
RTX 3080 Ti
141.6
RX 6900 XT
141.3
RX 6800 XT
133.7
RTX 3080 10GB
129.4
RX 6800
119.1
RTX 3070 Ti
112.2
RTX 3070
106.5
RX 6700 XT
98.8
RTX 3060 Ti
93.9
RX 6600 XT
77.7
RX 5700 XT
75.6
RTX 3060
71.6
RTX 2070
70.6
RX 6600
65.8
RTX 2060 6GB
59.5
RTX 3050
51.8
GTX 1660 Super
49.0
RX 6500 XT
33.0
Arc A380
28.1
GTX 1650
26.2
RX 6400
26.0
GTX 1630
16.1
GT 1030
5.9

性能的に1440pは厳しいけど、GTX 1650よりはわずかに有利

1440pでは1080pよりfpsが約26.4%低下しています。1080pで60fpsだと仮定すると44fps程度になりますから、さすがにそれなら1080pの方が快適だと思います。1440pで使うことは基本想定しないGPUです。エントリーモデルなので仕方ありませんが、1440pは軽いゲームで画質重視の場合のみという感じの運用になると思います。

参考に「RTX 3080 10GB」の例を挙げてみると、1080pから1440pでのfps低下率は約18%となっており、「Arc A380」の26%とは大きな差があることがわかります。エントリーモデルは元のfpsも低いですから、尚更厳しいです。このように、1440p以上を検討するなら上位GPUの方が良いことがわかると思います。ちなみにRTX 3070でもfps低下率は約21%に留まります。

性能自体は1440p運用はおすすめできないですが、一応競合の「GTX 1650」および「RX 6400」よりはわずかに有利となっています。VRAM容量の差が出ているのかもしれません。


4K(3840×2160)

「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2022年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。

平均FPS(4K 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 3090 Ti
101.7
RTX 3090
93.4
RX 6950 XT
93.3
RTX 3080 Ti
91.9
RX 6900 XT
87.6
RTX 3080 10GB
82.8
RX 6800 XT
81.9
RX 6800
71.2
RTX 3070 Ti
68.5
RTX 3070
63.6
RX 6700 XT
55.9
RTX 3060 Ti
55.6
RX 5700 XT
43.1
RTX 3060
41.7
RX 6600 XT
41.2
RTX 2070
41.1
RX 6600
34.3
RTX 2060 6GB
32.3
RTX 3050
29.5
GTX 1660 Super
26.3
RX 6500 XT
15.7
RX 6500 XT
15.7
Arc A380
15.2
GTX 1650
14.0
RX 6400
13.1
GTX 1630
8.9
GT 1030
1.9

4Kゲーミングは厳しい

エントリーモデルなので当たり前ですが、4Kはかなり厳しいです。重いゲームの最高設定が中心とはいえ、平均で15.2fpsしか出ていません。ただ、この価格帯に4Kゲーミングは求めていないところなので、特に考慮する意味もないかなと思います。画面の出力さえ出来れば十分という感じですね。

電力関連

消費電力

ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「2560×1440」です。

GPU平均消費電力(ゲーミング)
GPU名称消費電力(W)
RTX 3090 Ti
445W
RTX 3090
355W
RTX 3080 Ti
354W
RX 6950 XT
341W
RTX 3080 10GB
318W
RX 6900 XT
302W
RTX 3070 Ti
298W
RX 6800 XT
292W
RTX 2080 Ti
265W
RX 6800
223W
RX 6700 XT
221W
RTX 3070
220W
RX 5700 XT
210W
RTX 3060 Ti
199W
RTX 2070
192W
RTX 3060
183W
RTX 2060 6GB
164W
RX 6600 XT
160W
RTX 3050
139W
GTX 1660 Super
125W
RX 6600
120W
RX 6500 XT
101W
Arc A380
78W
GTX 1650
74W
RX 6400
51W
GTX 1630
49W

GPU平均消費電力(アイドル時)
GPU名称消費電力(W)
RX 6800 XT
29W
RX 6900 XT
28W
RX 6800
28W
RTX 3090
18W
Arc A380
17W
RTX 3080 Ti
16W
RTX 3090 Ti
15W
RTX 2080 Ti
14W
RTX 3070 Ti
11W
RTX 3080 10GB
10W
RTX 2070
10W
RTX 3070
9W
RTX 3060 Ti
9W
RTX 3060
9W
GTX 1660 Super
9W
RX 5700 XT
8W
RTX 2060 6GB
8W
RX 6950 XT
7W
RX 6700 XT
7W
RTX 3050
7W
RX 6600 XT
4W
GTX 1650
4W
GTX 1630
4W
RX 6600
3W
RX 6400
3W
RX 6500 XT
2W

GTX 1650とほぼ同等の78W

ゲーミング時の平均消費電力は約78Wとなっています。「GTX 1650」よりわずかに高いですが、今回のテストモデルは92W設定のオーバークロックモデルということもありますし、ほぼ同等と言えると思います。

「RX 6400」の51Wには大きく負けるので、ゲーミング専用なら不利という感じになります。ですが、「RX 6400」のAV1どころかエンコードが一切ないというのはやはり厳しいので、27Wくらいなら消費電力が増える方がマシかなと思います。

92W設定でも78W程度の消費なので、競合モデルと同じく75Wで補助電源無しでの運用は可能で、性能が大きく低下することも無さそうな感じです。初発モデルが92Wということで心配された部分ですが、大丈夫そうで良かったです。

アイドル時の消費電力が多い

ゲーミング時の平均消費電力では問題は見られませんでしたが、アイドル消費電力が多い点が少し気になります。「GTX 1650」が4Wで「RX 6400」が2Wなのに対し、「Arc A380」はな17Wとアイドル消費電力が圧倒的に多いです。

元値が小さいために正確には測定し辛い項目ではあるのですが、75Wクラスのエントリーモデルとしては明らかに多いです。TDPが200W超えのハイエンドモデルと肩を並べてしまっています。

デスクトップではさほど問題にはならない部分ではありますが、今後数が増えてくるであろうモバイル版の方でも同じ傾向があるなら、そちらでは大きなマイナス面となりそうな気がします。

ワットパフォーマンス

ゲームプレイ時のワットあたりのパフォーマンス(fps数)を見ていきます。上のゲーミング時の消費電力と前述の1440pゲーミング時の平均fpsを用いて、1Wあたりのfpsを算出して電力効率としています。消費電力は単一のゲームで測定したものに対し、fpsは複数ゲーム平均なので、厳密には正確な電力効率とは言えない点には注意ですが、各GPUの相対的な差を調べる分には概ね適切な値の範囲になっていると思います。

ワットパフォーマンス(1440pゲーミング)
GPU名称1Wあたりのfps
RX 6600
0.548
RX 6800
0.534
RX 6400
0.510
RX 6600 XT
0.486
RTX 3070
0.484
RTX 3060 Ti
0.472
RX 6900 XT
0.468
RX 6800 XT
0.458
RX 6700 XT
0.447
RX 6950 XT
0.439
RTX 3080 10GB
0.407
RTX 3090
0.403
RTX 3080 Ti
0.400
GTX 1660 Super
0.392
RTX 3060
0.391
RTX 3070 Ti
0.377
RTX 3050
0.373
RTX 2070
0.368
RTX 2060 6GB
0.363
Arc A380
0.360
RX 5700 XT
0.360
GTX 1650
0.354
RTX 3090 Ti
0.340
GTX 1630
0.329
RX 6500 XT
0.327

電力効率は悪い(GTX 1650とほぼ同等)

性能も消費電力も「GTX 1650」とほぼ同等だったので当然ですが、電力効率は「GTX 1650」とほぼ同等です。最新世代GPUと比べると悪いです。優れた電力効率を持つ「RX 6400」に対しては30%近く劣る結果となっています。

とはいえ、75Wクラスの省電力GPUですから、そこまで気にしなくても良い部分かなと感じます。

なのですが、一応は6nmプロセスという最新鋭クラスのプロセスを採用している最新GPUなのに、もう大分古い12nmプロセス採用の「GTX 1650」とほぼ同等の電力効率というのは気になります。6nmプロセスの実力を活かしきれていないのは否めないと思います。

エントリーモデルなので大して気にならない範疇ですが、ミドルレンジ以上ではネックになりそうな予感がします。

レイトレーシング性能

レイトレーシング利用時のパフォーマンスを見ていきます。今回は7種類のゲームでの幾何性能fpsを見ていきます。

レイトレーシングFPS(1080p 幾何平均)
GPU名称平均FPS
RTX 2060 6GB
46.6
RTX 3050
45.1
Arc A380
24.4
RX 6500 XT
15.1
RX 6400
12.5

レイトレーシングFPS(1440p 幾何平均)
GPU名称平均FPS
RTX 3050
32.3
RTX 2060 6GB
30.5
Arc A380
16.2
RX 6500 XT
9.3
RX 6400
7.0

レイトレーシングFPS(4K 幾何平均)
GPU名称平均FPS
RTX 3050
12.5
RTX 2060 6GB
9.7
Arc A380
7.5
RX 6500 XT
3.3
RX 6400
2.8

性能は凄く低いけど、RX 6400よりは優秀

レイトレーシング性能は非常に低いです。実用性があるとは言い難いレベルではありますが、軽いゲームでfpsを重視しないなら一応動くくらいの性能はあります。

1080pおよび1440pでは「RTX 3050」や「RTX 2060」の半分程度のfpsを出すことができます。比較相手すら高いパフォーマンスとはいえないので実用性は怪しいですが、「RX 6400」と「RX 6500 XT」よりは明らかに良い数値を示しており、現時点ではレイトレーシングではAMDを上回っている印象を受けます。たった8つのレイトレ用ユニットで出している性能としては優秀だと思います。

AMDやNVIDIAでは次世代GPUが控えているとはいえ、このクラスのGPUが最新世代で置き換えられるのはまだ大分先になると思います。今後アップスケリーング技術とレイトレーシングが併用できるゲームが増えれば、このクラスのGPUでも低fpsなら動作ができるようになるとは思いますから、一応でも動かせる程度に対応しているのは将来的に地味に嬉しい要素になる可能性はあるかもしれません。

まとめ

Intel Arc A380

良い点
  • 価格が安い(設定はGTX 1650と同等程度と思われる?)
  • 省電力(TDP:75W)で補助電源不要モデルも期待できる
  • VRAM容量が6GBで、エントリークラスにしては多い
  • AV1のハードウェアデコードおよびエンコードに対応
  • レイトレーシングに対応している(性能は非常に低いけど、RX 6400よりは上)

悪い点
  • 性能は低い(GTX 1650とほぼ同等)
  • Resizable BARが有効でないと性能が大きめに低下(最適化不足?)
  • アイドル消費電力が多い
  • 今のところ中国のみでの販売
  • 6nmプロセスなのに電力効率が悪い(GTX 1650とほぼ同等)

6GBメモリとAV1対応でクリエイティブ性能が高く、GTX 1650やRX 6400よりは良い

「Arc A380」の魅力は、このクラスのGPUにしては容量が多いGDDR6 6GBと、AV1のデコードおよびエンコードをサポートしている点です。競合の「GTX 1650」や「RX 6400」はどちらもAV1はサポートしていませんし、メモリも現状では4GBです。

特にAV1は将来性がかなり期待されているコーデックなので、エンコードにも対応しているのはかなり好印象です。出来るだけ安い方が良いけど、一応色々出来るようにしておきたいという人には非常に嬉しいのではないかと思います。

また、ゲーミング性能もエントリーGPUとしては及第点レベルのものを持っており(GTX 1650と同等)、レイトレーシングも性能は非常に低いながら対応しています。レイトレーシングに関しては「RX 6400」のおおよそ2倍という明らかに良いパフォーマンスを示していますから、今後最適化が進んで軽くなったり、アップスケーリング技術と併用できるようになれば一応実用性も見込めるレベルだと思うので、悲惨だった「RX 6400」よりは評価は大分マシな印象です。

実売価格はわからないし、GTX 1650と同等でもゲーミングコスパは良くない

「現状のエントリークラスGPU」としては素晴らしい汎用性で魅力的なのは間違いない「Arc A380」ですが、実売価格が不明な点は注意です。

記事執筆時点では「Arc A380」販売は中国のみとなっており、中国では約190ドルという価格で売られています。Intel発表のスライドやメディアの推測では135~150ドル程度だったので、大幅に高いです。「GTX 1650」と同じ約150ドルと同じか若干上くらいまでなら競争力は十分に保たれると思いますが、190ドルだと安さの魅力は薄れてしまいますし、「RTX 3050」や「RX 6600」といった圧倒的に高性能なミドルレンジモデルとの価格差が小さくなることもマイナス要素です。また、そもそも「GTX 1650」がゲーミングコスパが良いGPUではないですから、それと同等なら「Arc A380」もゲーミングコスパは良くないことになります。135ドルクラスで発売されることがあればやや優位にはなりますが…。

価格は実際に発売されてみないとわからない部分ですが、円安やアメリカの物価高の影響で半導体関連は値上がりしている製品も多いですから不安です。「GTX 1650」は古い12nmプロセスを採用しているためコストが安いことが推測されますが、「Arc A380」は最新鋭クラスの6nmプロセス採用ですから、値下げや価格維持競争になれば恐らくは不利です。優れた土台で最新機能を盛り込んだのは競争力を考えたら正解だとは思いますが、市場的にはやや向かい風という感じがします。

総合コスパは現状のミドルレンジGPUに劣る

仮に価格が「GTX 1650」と同等だったとしても、総合コスパは「RTX 3050」や「RX 6600」などの現状のミドルレンジGPUに劣る点も留意です。上述の1080pゲーミング性能を参照すると「Arc A380」はそれぞれ、「RTX 3050」よりも約46%、「RX 6600」よりも約59%も低速です。要するに、コスパで同等クラスになるには価格が半額程度である必要があります。

ですが、「RTX 3050」と「RX 6600」はどちらも現在最安値が大体38,000円程度なのに対し、「GTX 1650」は23,000円前後です。半額の19,000円には届いておらず、そもそもここまで安くなる可能性も低そうな気がします。

また、「Arc A380」は電力効率が「GTX 1650」とほぼ同等で悪いです。この電力効率の点や、単純に性能が高い方が重いゲームで快適という点も含めても、やはり総合的なゲーミングコスパは劣っていることが濃厚と言って良いと思います。

AV1エンコード機能が「RTX 3050」や「RX 6600」では搭載されていないためにそこでは優位性は保てるものの、それ以外では正直勝っている点は価格の安さくらいで、効率面では全体的に劣っていることは否めないかなと思います。

Ryzen 7000 APUも一応気になる

余談的な話かもしれませんが、CPU市場ではRyzen 7000シリーズの登場が控えています。RDNA 2アーキテクチャの内蔵GPUが搭載することが確定しており、APUモデルでは従来よりも大幅に性能が上がることが予測されています。

参考情報として、モバイル版では既にRDNA 2アーキテクチャの内蔵GPUが登場しており、前世代の2倍近い性能を持っていました。デスクトップ版でも2倍の性能向上が見込めるとするなら「GTX 1650」や「Arc A380」に近い性能となることもあり、エントリークラスのdGPU(グラボ)の存在意義が一気に小さくなる可能性も囁かれています。

Ryzen 7000 APUの発売は暫く先になるとは思われるものの、発売されたら一気に競争力を失ってしまう可能性がある点は、お急ぎでない方は留意しておいても良いかもしれません。


といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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