AMD「Radeon RX 7900 GRE」のざっくり性能比較・評価です。海外レビューを参考に性能をざっくりと確認していきます。
本記事の情報は記事執筆時点(2024年3月6日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
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仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2024年3月6日時点での米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
GPU | シェーダー ユニット数 | メモリタイプ | VRAM速度 VRAM帯域幅 | レイトレ用 ユニット数 | ダイサイズ (おおよそ) | 消費電力 (TGP等) | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 16384 | GDDR6X 24GB 384bit | 21.0Gbps 1008GB/s | 128 | 608㎟ | 450W | 1,599ドル |
RTX 4080 SUPER | 10240 | GDDR6X 16GB 256bit | 23.0Gbps 736.3GB/s | 80 | 380㎟ | 320W | 999ドル |
RTX 4080 | 9728 | GDDR6X 16GB 256bit | 22.4Gbps 716.8GB/s | 76 | 380㎟ | 320W | 1,199ドル →廃止予定 |
RX 7900 XTX | 6144 | GDDR6 24GB 384bit | 20Gbps 960GB/s | 96 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 355W | 969ドル |
RX 7900 XT | 5376 | GDDR6 20GB 320bit | 20Gbps 800GB/s | 84 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 315W | 799ドル →749ドル? |
RTX 4070 Ti SUPER | 8448 | GDDR6X 16GB 256bit | 21.0Gbps 672GB/s | 66 | 295㎟ | 285W | 799ドル |
RTX 4070 Ti | 7680 | GDDR6X 12GB 192bit | 21.0Gbps 504GB/s | 60 | 295㎟ | 285W | 799ドル →廃止予定 |
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB 384bit | 21.0Gbps 1008GB/s | 84 | 628.4㎟ | 450W | 1,499ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB 384bit | 19.5Gbps 936GB/s | 82 | 628.4㎟ | 350W | 1,299ドル |
RX 7900 GRE | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 18Gbps 576GB/s | 80 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 260W | 549ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 18Gbps 576GB/s | 80 | 519㎟ | 335W | 949ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 80 | 519㎟ | 300W | 699ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB 384bit | 19Gbps 912GB/s | 80 | 628.4㎟ | 350W | 1,099ドル |
RTX 3080 10GB | 8704 | GDDR6X 10GB 320bit | 19Gbps 760GB/s | 68 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RTX 4070 SUPER | 7168 | GDDR6X 12GB 192bit | 21.0Gbps 504GB/s | 56 | 295㎟ | 220W | 599ドル |
RTX 4070 | 5888 | GDDR6X 12GB 192bit | 21.0Gbps 504GB/s | 46 | 295㎟ | 200W | 549ドル 前:599ドル |
RX 7800 XT | 3840 | GDDR6 16GB 256bit | 19.5Gbps 624GB/s | 60 | 37.5㎟*4 + 200㎟ | 263W | 499ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 72 | 519㎟ | 300W | 599ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB 256bit | 19Gbps 608GB/s | 48 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 60 | 519㎟ | 250W | 549ドル |
RX 7700 XT | 3456 | GDDR6 12GB 192bit | 18Gbps 432GB/s | 54 | 37.5㎟*4 + 200㎟ | 245W | 419ドル 前:449ドル |
RTX 4060 Ti 8GB | 4352 | GDDR6 8GB 128bit | 18Gbps 288GB/s | 34 | 190㎟ | 160W | 399ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB 256bit | 14Gbps 448GB/s | 46 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit | 18Gbps 432GB/s | 40 | 336㎟ | 250W | 419ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB 192bit | 14Gbps 448GB/s | 38 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit | 16Gbps 384GB/s | 40 | 336㎟ | 230W | 379ドル |
Arc A770 16GB | 4096 | GDDR6 16GB 256bit | 17.5Gbps 560GB/s | 32 | 406㎟ | 225W | 349ドル |
Arc A770 8GB | 4096 | GDDR6 8GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 32 | 406㎟ | 225W | 329ドル |
RX 7600 XT | 2048 | GDDR6 16GB 128bit | 18Gbps 288GB/s | 32 | 204㎟ | 190W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB 192bit | 15Gbps 360GB/s | 28 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RTX 4060 | 3072 | GDDR6 8GB 128bit | 17Gbps 272GB/s | 24 | 156㎟ | 115W | 299ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 17.5Gbps 288GB/s | 32 | 237㎟ | 180W | 299ドル |
Arc A750 | 3584 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 28 | 406㎟ | 225W | 289ドル |
RX 7600 | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 18Gbps 288GB/s | 32 | 204㎟ | 165W | 269ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 16Gbps 256GB/s | 32 | 237㎟ | 160W | – |
RTX 3050 | 2560 | GDDR6 8GB 128bit | 15Gbps 224GB/s | 20 | 276㎟ | 130W | 249ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB 128bit | 14Gbps 224GB/s | 28 | 237㎟ | 132W | 239ドル |
今回見ていくのはRDNA 3アーキテクチャ採用の「Radenon RX 7900 GRE」です。元々は中国専売モデルでしたが、結局グローバル投入されることになりました。恐らくは「RTX 4070 SUPER」への対抗製品として投入だと思われます。ちなみに、GREは「Golden Rabbit Edition」の略で、発売年である2023年が中国で兎年にあたることに由来しています。また、実際の性能は「RX 7900 XT」と「RX 7800 XT」の中間あたりに位置するので、単に「RX 7900(無印)」として考えた方が分かり易いかと思います。
「RX 7900 GRE」の希望小売価格は549ドルに設定にされており、「RX 7800 XT」より50ドル高く、現在の「RTX 4070」と同じ価格(2024年3月時点)です。「RTX 4070」のラスタライズ性能は「RX 7800 XT」と同等ですが、「RX 7900 GRE」は「RX 7800 XT」よりもストリーミングプロセッサーが33%も多いので、基本性能コスパは大きく上回ることが期待されるのが大きな魅力です。
発売直後の実売価格は95,800円~となっており、適性価格からプラス1万円くらいと高額になってしまってはいますが、適正価格であるはずの8万円台中盤まで値下りすれば、高い基本性能と16GB VRAMを備える高コスパな準ハイエンドGPUとして競争力があると思います。
余談ですが、「RX 7900 GRE」の発売に際して「RX 7700 XT」の希望小売価格が30ドル値下げされ、419ドルへと変更になっています。7900 GREの投入による影響にしては変更する箇所が変なので、単に「RTX 4060 Ti 8GB」への競争力を高めるための対処かと思われます。
次に物理仕様を見てみると、「RX 7900 GRE」は他のデスクトップ向けの「RX 7000シリーズ」とは異なり、モバイル向けGPUダイを基にしているのが面白い点です。
使用されるGPUダイの名称は「Navi 31」なので「RX 7900 XT/XTX」で使われているものと同じかと思いますが、モバイル向けGPUの方に由来するものなので、実際には少し異なります。ノード面は同様でTSMCの「5nm(GCD)」+「6nm(MCD)」で、ダイサイズも同じですが、パッケージサイズがやや小さくなっています。
また、MCDは2つが無効な他、消費電力削減により電気的な部品もXT/XTXから削減されるので、コスト面で利点があります。「RX 7900 XT」から200ドルも安くできるのは恐らくこれが理由です。
ストリーミングプロセッサー数を見てみると、「RX 7900 GRE」は5120で、「RX 7800 XT」の3840よりも約33%も多いです。価格は50ドル(+10%)しか変わらないのにこの差は驚きです。これが本GPUの最大の魅力です。クロックは少し低下していたり、TBPはほぼ据え置きの260Wだったりなどの制限はあるので、実性能ではそこまでの差は出ませんが、それでも大きな向上が見込まれます。先にも触れた通り「RX 7800 XT」でも「RTX 4070」に匹敵するラスタライズ性能があるので、基本性能コスパは大きく上回ることが期待されます。
次にメモリ性能ですが、VRAMは16GB 256bitで、メモリクロックは18.0Gbps、メモリバス帯域幅は576GB/sです。「RX 7800 XT」と容量は同じで、クロックと帯域幅が若干低下していますが、ほぼ同等のVRAM性能です。10万円未満のGPUとしては優れたVRAM性能を備えるのも魅力です。Infinity Cacheは64MBで、こちらも「RX 7800 XT」と同じ容量です。
対抗製品である「RTX 4070 / RTX 4070 SUPER」の12GB VRAMを上回るのは優位性ですが、その他の面で現状ではやはりCUDAの利点が方が大きいのが割と致命的ではあります。特に、最近注目度の高い用途、生成AIなどでもCUDA(NVIDIA製 GPU)に最適化されていることが多く、VRAM容量も重要ではあるものの、その差を覆すほどではない印象です。対応できる用途の範囲と実用面での差を考えると、「Radeonの16GB VRAM」の優位性をどれほどの大きさで考えるかは評価が難しいところがあります。
といった感じで「Radeon RX 7900 GRE」自体の仕様面の紹介はここまでにして、以下からは「Radeon RX 7000シリーズ」に共通する仕様面についても軽く触れていこうと思います(基本的に過去記事のコピペです)。
まず映像コーデックの対応で、前世代では「AV1」はデコードだけの対応でしたが、エンコードにも対応しました。ちなみに「RTX 40シリーズ」も同様です。特にクリエイターの方にとっては嬉しい仕様だと思いますし、AV1は将来性があって採用率が高くなっていく可能性も高いため、これは有難いです。
レイトレーシングでは「Ray Accelerator」が前世代の第1世代から第2世代に更新されており、前世代からパフォーマンスが向上したとされています。
アップスケーリングでは、AMDでは専用コアが必要のない「FSR」を推しているため、アップスケーリング用のコアの搭載はありません。また、「FSR」はAMDが提供する技術ですが、オープンソースとして公開されているため、Radeon以外のGPUでも使うことができます。そのため、FSRがアップグレードして性能が上がっても、それは「RX 7000」だけの向上とはならないため、競合モデルとの差にならない点に注意です。
ただし、「RX 7600 XT」の発売とほぼ同時(2024年1月25日ごろ)に提供が始まったAMDのドライバーにて、「AMD Fluid Motion Frames(AFMF)」というフレーム生成機能が正式に利用可能となったのは注目です。こちらはRadeon独自の機能です。
これはフレームをゲームの処理とは別に生成・挿入することでfpsを向上させる機能です。フレーム生成機能は既にDLSS 3などでも利用可能ですが、AFMFのポイントはドライバー(ソフトウェア)による対応のため、専用コアが必要ないだけでなく、ゲーム側による対応も必要ないという点です。非常に手軽に利用することができます。質についてはこれから調べる必要があるものの、「fpsを上げる」という点では非常に魅力的な機能です。
対抗のNVIDIAでは、同社の「DLSS」というアップスケーリング機能を推しており、RTXシリーズでのみ提供(Tensorコアが必要なため)しています。一般的にこの「DLSS」の方が画質は「FSR」よりも優れていると言われており、実際にそんな感じの印象ですが、専用コアとゲーム側の対応の両方が必要となっているのがデメリットとなっています。
最後にAI用コアですが、「RX 7000シリーズ」からはRadeonでも「AI Accelerator」が搭載されるようになり、FP16における処理性能が高まっています。現状はまだ活用されている印象は正直ありませんが、これからAI分野でもRadeonは迫っていこうという意思は見えるのは一応プラス要素かなと思います。
といった感じで、カタログスペックについてはここまでとして、実際の各性能について下記から見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。
まずは、レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態での性能、いわゆるラスタライズ性能を見ていきます。
使用されたグラフィックボードは「Sapphire Radeon RX 7900 GRE Pluse 」、CPUは「Core i9-14900K」で、OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2024年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。ただし、RTX 4090など最新世代のハイエンドGPUでは低負荷感も大きくなっているものもあります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 223.6 |
RX 7900 XTX | 197.9 |
RTX 4080 SUPER | 195.4 |
RTX 4080 | 193.8 |
RX 7900 XT | 179.1 |
RTX 4070 Ti SUPER | 177.8 |
RTX 4070 Ti | 167.6 |
RTX 3090 Ti | 165.4 |
RX 7900 GRE | 157.7 |
RTX 4070 SUPER | 157.6 |
RTX 3090 | 153.3 |
RX 6900 XT | 149.2 |
RX 7800 XT | 144.0 |
RX 6800 XT | 140.9 |
RTX 3080 10GB | 139.1 |
RTX 4070 | 139.0 |
RX 7700 XT | 124.9 |
RTX 3070 Ti | 116.9 |
RTX 3070 | 111.0 |
RTX 4060 Ti 16GB | 107.9 |
RTX 4060 Ti 8GB | 107.0 |
RX 6700 XT | 101.2 |
RTX 3060 Ti | 97.6 |
RX 7600 XT | 89.6 |
RTX 4060 | 85.0 |
RX 7600 | 82.0 |
RX 6600 XT | 79.3 |
Arc A770 16GB | 77.6 |
RTX 3060 12GB | 74.9 |
RTX 3050 | 54.0 |
1080pでは「RTX 4070 SUPER」と同等の性能
1080pのラスタライズ性能では「RTX 4070 SUPER」と同等の性能です。重量級のゲームでも十分なfpsを得ることが可能です。
「RX 7800 XT」と比べると約9.5%高速でした。10%の価格差を考えれば妥当ですが、SP数が33%増加している割には控えめな向上率だとは言えます。消費電力が変わらずにクロックが下がっていることが思ったよりも大きいのかもしれません。
初動価格は適正価格よりも高価な95,800円~ですが、それでも「RTX 4070 SUPER」と同等レベルなので、優れたコスパです。さすがに現状では他の面を考えると分が悪いですが、値下がりすればコスパで上回ることになるので、競争力が出てくるかなと思います。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 188.1 |
RX 7900 XTX | 159.5 |
RTX 4080 SUPER | 155.8 |
RTX 4080 | 154.1 |
RX 7900 XT | 139.9 |
RTX 4070 Ti SUPER | 137.5 |
RTX 3090 Ti | 131.3 |
RTX 4070 Ti | 128.2 |
RX 7900 GRE | 119.7 |
RTX 3090 | 119.2 |
RTX 4070 SUPER | 118.6 |
RX 6900 XT | 114.0 |
RX 7800 XT | 109.3 |
RX 6800 XT | 106.8 |
RTX 3080 10GB | 106.1 |
RTX 4070 | 103.5 |
RX 7700 XT | 92.1 |
RTX 3070 Ti | 87.7 |
RTX 3070 | 82.6 |
RTX 4060 Ti 16GB | 78.0 |
RTX 4060 Ti 8GB | 77.1 |
RX 6700 XT | 74.3 |
RTX 3060 Ti | 71.6 |
RX 7600 XT | 64.0 |
RTX 4060 | 61.3 |
Arc A770 16GB | 59.9 |
RX 7600 | 57.9 |
RX 6600 XT | 56.1 |
RTX 3060 12GB | 54.7 |
RTX 3050 | 39.2 |
1440pも「RTX 4070 SUPER」とほぼ同等
1440pでも「RTX 4070 SUPER」とほぼ同等の性能です。非常に優れた性能で、重いゲームでも十分プレイが可能です。
1440pでもまだVRAMは12GBあれば基本大きく不足することはないので、差はほとんど出ませんでした。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 118.7 |
RX 7900 XTX | 96.1 |
RTX 4080 SUPER | 93.7 |
RTX 4080 | 92.5 |
RTX 3090 Ti | 81.5 |
RX 7900 XT | 81.0 |
RTX 4070 Ti SUPER | 80.8 |
RTX 4070 Ti | 72.8 |
RTX 3090 | 72.5 |
RX 7900 GRE | 67.9 |
RTX 4070 SUPER | 67.5 |
RX 6900 XT | 65.3 |
RTX 3080 10GB | 63.6 |
RX 7800 XT | 62.3 |
RX 6800 XT | 60.7 |
RTX 4070 | 58.6 |
RX 7700 XT | 50.7 |
RTX 3070 Ti | 50.5 |
RTX 3070 | 47.3 |
RTX 4060 Ti 16GB | 43.2 |
RTX 4060 Ti 8GB | 41.1 |
RTX 3060 Ti | 40.7 |
RX 6700 XT | 40.7 |
Arc A770 16GB | 35.8 |
RX 7600 XT | 34.8 |
RTX 4060 | 33.6 |
RTX 3060 12GB | 31.2 |
RX 7600 | 30.1 |
RX 6600 XT | 29.2 |
RTX 3050 | 21.6 |
4Kでも「RTX 4070 SUPER」と同等の性能
4Kにおいても、平均fpsは「RTX 4070 SUPER」とほぼ同等でした。
一部のVRAM容量が重量なゲームではやや有利に立つこともありますが、ラスタライズにおいては解像度に関係なく「RTX 4070 SUPER」と「RX 7900 GRE」は非常に似た性能を基本的に持つGPUとなっています。
「Cities: Skylines II」など、リアルタイムオブジェクトが増えるごとにVRAM容量が分かり易く増えていくような類のゲームを想定しない限りは、両者の差はわずかです。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。
GPU名称 | 消費電力 |
---|---|
RTX 4060 | 128W |
RTX 3050 | 132W |
RTX 4060 Ti 8GB | 152W |
RX 7600 | 152W |
RX 6600 XT | 159W |
RTX 4060 Ti 16GB | 165W |
RTX 3060 | 183W |
RX 7600 XT | 193W |
RTX 4070 | 201W |
RTX 3060 Ti | 205W |
RTX 4070 SUPER | 218W |
RX 6700 XT | 224W |
RX 7700 XT | 228W |
RTX 3070 | 232W |
Arc A770 16GB | 235W |
RX 7800 XT | 250W |
RX 7900 GRE | 265W |
RTX 4070 Ti | 277W |
RTX 4070 Ti SUPER | 292W |
RX 6800 XT | 294W |
RX 6900 XT | 300W |
RTX 3070 Ti | 302W |
RTX 4080 SUPER | 302W |
RTX 4080 | 304W |
RX 7900 XT | 312W |
RTX 3080 10GB | 336W |
RX 7900 XTX | 353W |
RTX 3090 | 368W |
RTX 4090 | 411W |
RTX 3090 Ti | 537W |
消費電力は「RTX 4070 SUPER」よりも40W以上多い260W台
ゲーム時の平均消費電力は265Wでした。前世代GPUよりは大幅に良いですが、「RTX 4070 SUPER」の218Wと比べると明らかに見劣りします。
40W以上の差は電力容量にも影響しますし、260W以上だとデュアルファンが厳しめなのに対し、220Wの「RTX 4070 SUPER」ではデュアルファンモデルが普通に存在しますから、思ったよりも大きな差になっていると思います。
ワットパフォーマンス
ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077(4K/Ultra/レイトレ無効)」です。
GPU名称 | 1フレームあたりの消費電力 |
---|---|
RTX 4080 SUPER | 4.0W |
RTX 4080 | 4.0W |
RTX 4070 SUPER | 4.1W |
RTX 4090 | 4.2W |
RX 7900 XTX | 4.4W |
RTX 4060 Ti 8GB | 4.5W |
RTX 4070 | 4.5W |
RX 7900 XT | 4.7W |
RTX 4070 Ti SUPER | 4.7W |
RTX 4070 Ti | 4.7W |
RX 7900 GRE | 4.8W |
RX 7800 XT | 4.9W |
RTX 4060 Ti 16GB | 5.1W |
RTX 4060 | 5.3W |
RX 7600 | 5.7W |
RX 7700 XT | 5.7W |
RTX 3070 | 6.0W |
RX 6900 XT | 6.2W |
RTX 3060 Ti | 6.2W |
RTX 3090 | 6.3W |
RX 6600 | 6.3W |
RX 6800 XT | 6.5W |
RTX 3080 10GB | 6.5W |
RX 7600 XT | 6.6W |
RX 6600 XT | 6.9W |
RTX 3070 Ti | 7.3W |
Arc A770 16GB | 7.3W |
RX 6700 XT | 7.4W |
RTX 3060 | 7.5W |
RTX 3050 | 8.0W |
RTX 3090 Ti | 8.0W |
ワットパフォーマンスは悪くはないけど「RTX 4070 SUPER」に約14.6%も劣る
ワットパフォーマンスは「RX 7800 XT」や「RTX 4070 Ti」と同じくらいで、前世代GPUと比べると大幅に良いので、悪くない数値です。
ただし、最新世代GPUの中ではやや悪めの部類となっており、現状トップクラスの効率の「RTX 4070 SUPER」よりは約14.6%も劣ります。正直相手が悪い感はありますが、やはり価格的には競合は「RTX 4070 SUPER」であり、そこに対して大きく劣るのは明確な弱点にはなると思います。
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはメインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 149.1 |
RTX 4080 SUPER | 128.1 |
RTX 4080 | 127.3 |
RTX 4070 Ti SUPER | 116.4 |
RTX 4070 Ti | 110.2 |
RTX 3090 Ti | 107.8 |
RTX 4070 SUPER | 103.4 |
RX 7900 XTX | 103.2 |
RTX 3090 | 99.0 |
RX 7900 XT | 93.2 |
RTX 4070 | 91.9 |
RTX 3080 10GB | 90.1 |
RX 7900 GRE | 82.3 |
RX 7800 XT | 75.4 |
RX 6900 XT | 72.7 |
RTX 3070 Ti | 71.3 |
RTX 4060 Ti 16GB | 71.1 |
RX 6800 XT | 68.5 |
RTX 3070 | 68.4 |
RTX 4060 Ti 8GB | 67.4 |
RX 7700 XT | 66.4 |
RTX 3060 Ti | 60.3 |
RX 6800 | 58.9 |
RTX 4060 | 54.5 |
RX 6700 XT | 48.9 |
RX 7600 XT | 46.6 |
RX 7600 | 39.5 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 120.0 |
RTX 4080 SUPER | 99.1 |
RTX 4080 | 98.6 |
RTX 4070 Ti SUPER | 88.1 |
RTX 3090 Ti | 82.5 |
RTX 4070 Ti | 82.3 |
RX 7900 XTX | 79.7 |
RTX 4070 SUPER | 75.9 |
RTX 3090 | 74.7 |
RX 7900 XT | 70.4 |
RTX 3080 10GB | 67.0 |
RTX 4070 | 66.7 |
RX 7900 GRE | 60.6 |
RX 7800 XT | 54.9 |
RX 6900 XT | 52.1 |
RTX 4060 Ti 16GB | 50.1 |
RX 6800 XT | 49.1 |
RX 7700 XT | 47.0 |
RTX 3070 Ti | 43.9 |
RX 6800 | 42.4 |
RTX 3070 | 42.0 |
RTX 4060 Ti 8GB | 40.9 |
RTX 3060 Ti | 37.2 |
RX 6700 XT | 33.5 |
RTX 4060 | 33.1 |
RX 7600 XT | 33.0 |
RX 7600 | 23.3 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 74.9 |
RTX 4080 SUPER | 57.8 |
RTX 4080 | 57.1 |
RTX 4070 Ti SUPER | 50.4 |
RTX 3090 Ti | 48.8 |
RX 7900 XTX | 46.1 |
RTX 3090 | 43.4 |
RX 7900 XT | 39.2 |
RTX 4070 Ti | 36.6 |
RTX 4070 SUPER | 34.2 |
RX 7900 GRE | 33.0 |
RTX 4070 | 30.2 |
RX 7800 XT | 30.1 |
RTX 3080 10GB | 29.0 |
RX 6900 XT | 28.2 |
RTX 4060 Ti 16GB | 27.3 |
RX 6800 XT | 26.5 |
RX 6800 | 22.8 |
RX 7700 XT | 21.1 |
RTX 3070 Ti | 19.9 |
RTX 3070 | 18.5 |
RTX 4060 Ti 8GB | 17.6 |
RTX 3060 Ti | 16.7 |
RX 7600 XT | 16.6 |
RX 6700 XT | 16.1 |
RTX 4060 | 14.6 |
RX 7600 | 7.1 |
レイトレーシングは1440p以下では「RTX 4070 SUPER」に約20%劣る性能だけど、4K平均はほぼ同等に
ネイティブのレイトレーシング性能は、1440p以下では「RTX 4070 SUPER」に約20%劣る性能で明らかに不利です。
「RTX 40シリーズ」と「RX 7000シリーズ」ではまだRTX側がレイトレーシングでは有利なので、これは想定内の結果です。とはいえ、競合モデル同士の差としてはかなり大きく、レイトレーシングを前提とするなら基本的に「RTX 4070 SUPER」が大幅に有利です。
しかし、4K平均では一気にその差を縮め同等レベルになっているのが興味深い結果です。
ただし、同じくらいの性能かというとそういう感じでもなく、4Kでもfps有利のタイトルの数は「RTX 4070 SUPER」の方が多いというのは注意です。4Kレベルの負荷では、「RTX 4070 SUPER」の12GB VRAMではfpsがガクッと落ちるのが散見されるため、16GB VRAMの「RX 7900 GRE」の方が大きく有利になるゲームがちらほらある、という感じです。そのため、平均するとたまたま同等になっていますが、全体的に有利なのは以前として「RTX 4070 SUPER」の方ではあります。
そのため、どんな重量級ゲームでもレイトレーシングでのプレイをそこそこ出来るようにしたいなら「RX 7900 GRE」の方が適していますが、レイトレーシングでも出来るだけ快適なタイトルを増やしたいということならやはり「RTX 4070 SUPER」の方が有利ではあります。
しかし、Radeonでは「AFMF」という気軽に使えるフレーム生成機能が最近実装されましたから、それを利用する前提なら、fpsが極端に低下することがない「RX 7900 GRE」の方が有利という見方も出来るかもしれません。
個人の考え方次第だとは思いますが、RX 7900 GREが有利なのが「4Kレイトレの一部の重量級ゲーム」というのはピンポイント過ぎますし、結局無難なのは「RTX 4070 SUPER」かなと思います。
コストパフォーマンス
上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。
元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。4Kなどではやや結果が異なる可能性がある点に注意です。
1フレームあたりの価格(ラスタライズ)
まずはラスタライズ性能のコスパです。上述の1440pゲーム時の性能と現在の市場価格を基に、1フレームあたりの価格を算出し、コスパとして比較しています。
「RX 7900 GRE」の初動価格は95,800円~くらいですが、元の549ドルという価格設定と「RTX 4070 SUPER」への競争力を考えるともう少し値下がりする期待も出来るので、マイナス1万円の85,800円の場合の結果も載せています。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RX 7600 | ¥639 | ¥36,980 |
RX 6700 XT | ¥667 | ¥49,580 |
RTX 3070 Ti | ¥670 | ¥58,800 |
RX 6600 XT | ¥677 | ¥37,980 |
RTX 4060 | ¥701 | ¥42,980 |
RX 7900 GRE ※値下がり想定 | ¥717 | ¥85,800 |
RTX 3070 | ¥724 | ¥59,800 |
RX 7700 XT | ¥725 | ¥66,800 |
RTX 3060 12GB | ¥728 | ¥39,800 |
RX 7800 XT | ¥739 | ¥80,800 |
RTX 4060 Ti 8GB | ¥750 | ¥57,400 |
RTX 3060 Ti | ¥765 | ¥54,800 |
Arc A770 16GB | ¥781 | ¥46,800 |
RX 6900 XT | ¥788 | ¥89,800 |
RX 7900 GRE | ¥800 | ¥95,800 |
RTX 4070 | ¥810 | ¥83,800 |
RTX 3050 8GB | ¥811 | ¥31,800 |
RTX 4070 SUPER | ¥825 | ¥97,800 |
RX 6800 XT | ¥831 | ¥88,800 |
RTX 3080 10GB | ¥837 | ¥88,800 |
RX 7900 XT | ¥858 | ¥120,000 |
RTX 4070 Ti | ¥858 | ¥109,980 |
RTX 4060 Ti 16GB | ¥882 | ¥68,800 |
RX 7900 XTX | ¥966 | ¥154,000 |
RTX 4070 Ti SUPER | ¥1,017 | ¥139,800 |
RTX 4080 | ¥1,121 | ¥172,800 |
RTX 4080 SUPER | ¥1,154 | ¥179,800 |
RTX 4090 | ¥1,594 | ¥299,800 |
ラスタライズのコスパは競合モデルよりも良い
「RX 7900 GRE」のラスタライズコスパは比較的良いです。
やや高価な初動価格でも「RTX 4070」と「RTX 4070 SUPER」をわずかに上回るコスパとなっています。85,800円まで値下がりすることを想定してみると一気に地位を上げ、全GPUで見ても優れたコスパの部類になります。
GPUはハイエンドに近付くとコスパが悪い傾向があるため、このレベルのGPUが上位に入ることはあまり無いのですが、適正価格なら上位に食い込むレベルになります。コスパ上位GPUはミドルレンジGPUが立ち並ぶ中でこの位置凄いと思います。
結局は今後の価格動向次第ではありますが、ラスタライズコスパ特化の上位GPUとしてはトップクラスの存在になるポテンシャルがあります。
1フレームあたりの価格(レイトレーシング)
次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RTX 4070 | ¥1,256 | ¥83,800 |
RTX 4070 SUPER | ¥1,289 | ¥97,800 |
RTX 3080 10GB | ¥1,325 | ¥88,800 |
RTX 4070 Ti | ¥1,336 | ¥109,980 |
RTX 3070 Ti | ¥1,339 | ¥58,800 |
RTX 4060 Ti 16GB | ¥1,373 | ¥68,800 |
RTX 4060 Ti 8GB | ¥1,413 | ¥57,800 |
RX 7900 GRE ※値下がり想定 | ¥1,416 | ¥85,800 |
RX 7700 XT | ¥1,421 | ¥66,800 |
RTX 3070 | ¥1,424 | ¥59,800 |
RX 7800 XT | ¥1,472 | ¥80,800 |
RTX 3060 Ti | ¥1,473 | ¥54,800 |
RX 6700 XT | ¥1,480 | ¥49,580 |
RX 7900 GRE | ¥1,581 | ¥95,800 |
RX 7600 | ¥1,587 | ¥36,980 |
RTX 4070 Ti SUPER | ¥1,587 | ¥139,800 |
RX 7900 XT | ¥1,705 | ¥120,000 |
RX 6900 XT | ¥1,724 | ¥89,800 |
RTX 4080 | ¥1,753 | ¥172,800 |
RX 6800 XT | ¥1,809 | ¥88,800 |
RTX 4080 SUPER | ¥1,814 | ¥179,800 |
RX 7900 XTX | ¥1,932 | ¥154,000 |
RTX 4090 | ¥2,498 | ¥299,800 |
レイトレーシングコスパは「RTX 4070 SUPER」には格段に劣る
1440pのレイトレシーングのコスパは「RTX 4070 SUPER」と比べると格段に悪いです。
初動価格でのフレームあたりのコストは約22.7%も高いです。純粋な性能も大きく負けていますから、レイトレーシング目的ならやはり「RTX 4070 SUPER」が無難です。正直相手が強すぎますね…。
しかし、一応85,800円まで値下がりすることを想定すれば、レイトレコスパは「RTX 3060 Ti / RTX 3070」を追い抜き、「RTX 4060 Ti」にわずかに劣る程度まで前進します。Radeonの割には思ったより悪くない位置です。さすがにその辺りのミドルレンジGPUよりはレイトレでも上回りますし、16GB VRAMやAFMFの利点もあるので、ラスタライズコスパ特化でレイトレコスパも悪すぎなければ良いくらいの考え方なら、意外と悪くない選択肢にはなるかなと思います。
クリエイティブ用途
比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。
一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能、「Blender」におけるGPUレンダリング性能、「SPECviewperf 2020 v3」によるOpenGL性能、AIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。
また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Core i9-13900K」と「DDR5-6600 CL34 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。
理論演算性能(FP32)
FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。
一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、まず参考に見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。
GPU名称 | FP32(TFLOPS) |
---|---|
RTX 4090 24GB 1008GB/s | 82.58 |
RX 7900 XTX 24GB 960GB/s | 61.42 |
RTX 4080 SUPER 16GB 736.3GB/s | 52.22 |
RX 7900 XT 20GB 800GB/s | 51.48 |
RTX 4080 16GB 716.8GB/s | 48.74 |
RX 7900 GRE 16GB 576GB/s | 45.98 |
RTX 4070 Ti SUPER 16GB 672GB/s | 44.10 |
RTX 4070 Ti 12GB 504GB/s | 40.09 |
RX 7800 XT 16GB 624GB/s | 37.32 |
RTX 4070 SUPER 12GB 504GB/s | 35.48 |
RX 7700 XT 12GB 432GB/s | 35.17 |
RTX 3080 10GB 760GB/s | 29.77 |
RTX 4070 12GB 504GB/s | 29.15 |
RX 7600 XT 16GB 288GB/s | 22.57 |
RTX 4060 Ti 8GB / 16GB 288GB/s | 22.06 |
RTX 3070 Ti 8GB 608GB/s | 21.75 |
RX 7600 8GB 288GB/s | 21.75 |
RX 6800 XT 16GB 512GB/s | 20.74 |
RTX 3070 8GB 448GB/s | 20.31 |
Arc A770 16GB 16GB 560GB/s | 17.20 |
RTX 3060 Ti 8GB 448GB/s | 16.20 |
RX 6800 16GB 512GB/s | 16.17 |
RTX 4060 8GB 272GB/s | 15.11 |
RX 6700 XT 12GB 384GB/s | 13.21 |
RTX 3060 12GB 12GB 360GB/s | 12.74 |
RX 6600 XT 8GB 256GB/s | 10.61 |
RTX 3050 8GB 224GB/s | 9.10 |
RX 6600 8GB 224GB/s | 8.93 |
理論性能コスパは破格の良さ
「RX 7900 GRE」のFP32の理論性能は破格の良さです。価格の割には非常に多いストリーミングプロセッサーの恩恵ですね。
数値としては、「RTX 4070 Ti SUPER」を上回り「RTX 4080」にも迫るレベルです。10万円未満のGPUながら、10万円台中盤のGPUと比較されるレベルの良さとなっています。
Blender(3DのGPUレンダリング)
「Blender」は人気のある定番のレンダリングソフトです。「Blender 3.6.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。
「Blender 3.6.0」では、AMD、NVIDIA、Intel Arc GPUでレイトレーシングを使用するCycles Xエンジンが含まれているため、レイトレーシング性能も重要となります。しかし、どうやら「Blender 3.6.0」ではレイトレーシング用のコアを直接使用するのではなく、メインのGPUシェーダーを介しての処理となるようです。そのため、RTコアではなくメインのGPUコア(CUDAコア)でレイトレーシングを高速化できるエンジンの「Optix」を持つGeForceに現状では優位性があります。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RTX 4090 | 4213.9 |
RTX 4080 SUPER | 3210.1 |
RTX 4080 | 3119.6 |
RTX 4070 Ti SUPER | 2732.0 |
RTX 4070 Ti | 2368.5 |
RTX 4070 SUPER | 2310.1 |
RTX 4070 | 1943.2 |
RTX 4060 Ti 8GB | 1419.4 |
RTX 4060 Ti 16GB | 1371.2 |
RTX 3070 Ti | 1356.2 |
RX 7900 XTX | 1252.9 |
RTX 4060 | 1160.3 |
RX 7900 XT | 1144.1 |
RX 7900 GRE | 879.4 |
RX 7800 XT | 752.6 |
Arc A770 16GB | 696.5 |
RX 7700 XT | 649.7 |
RX 7600 XT | 434.7 |
RX 7600 | 422.5 |
Blenderのレンダリング性能はRTXには圧倒的に劣る
「RX 7900 GRE」のBlenderにおけるGPUレンダリング性能は「RTX 4070 SUPER」のわずか38%程度しかなく、圧倒的に劣ります。競合モデルとの差としては話にならないレベルです。
ただし、GPUレンダリングは基本的にシェーダーユニット数が重要なので、その点には「RX 7900 GRE」はポテンシャルがあります。実際「RX 7800 XT」よりも約16.8%も高速となっていますし、もしRadeonがGeForceにも匹敵するまでの最適化が行われれば、一気に地位を上げる可能性は一応無くはないです。
現状のこの差は処理の仕組みがGeForce有利に働いているので仕方がありませんが、この劇的な差が今後も維持されるかは、各GPUメーカーのドライバなどによる改善や、ソフト側の最適化によります。とはいえ、少なくとも現状Blenderでのレンダリングを想定するならGeForce一択というのは覚えておくと良いかもしれません。
SPECviewperf 2020 v3(OpenGL)
「SPECviewperf 2020 v3」はOpenGL性能を測るベンチマークです。OpenGLはクロスプラットフォームに対応した汎用型のグラフィックスライブラリとなっており、ゲームだけでなく幅広い分野で利用されています。
今回見るのは「SPECviewperf 2020 v3」の8つのテストの総合スコア(幾何平均)です。ただし、一般的にはテストに使用される処理全てを利用する人はほぼ居ないと思うため、自分が使用するアプリケーションで使用される処理について確認することが重要な点は留意しておきましょう。今回は総合的な性能で相対的な差を求めるために、幾何平均による総合スコアを用いています。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RX 7900 XTX | 202.79 |
RX 7900 XT | 178.16 |
RX 7900 GRE | 151.56 |
RX 7800 XT | 129.15 |
RTX 4090 | 126.26 |
RX 7700 XT | 112.95 |
RTX 4080 SUPER | 101.12 |
RTX 4080 | 98.57 |
RTX 4070 Ti SUPER | 88.95 |
RX 7600 XT | 83.67 |
RTX 4070 Ti | 80.29 |
RX 7600 | 79.14 |
RTX 4070 SUPER | 75.98 |
RTX 4070 | 66.71 |
RTX 3070 Ti | 56.17 |
RTX 4060 Ti 16GB | 51.12 |
RTX 4060 Ti 8GB | 50.92 |
RTX 4060 | 43.51 |
Arc A770 16GB | 30.78 |
非常に優れたOpenGL性能で、平均で「RTX 4070 SUPER」の2倍の性能
GeForceではOpenGL性能に強い制限が掛けられていて、Radeonの方が有利です。同社のプロフェッショナル向けGPUの需要を維持するための調整となっています。
Radeonでも同様にプロフェッショナル向けのGPUがあり、ゲーム向けGPUでは制限が掛けられていますが、その制限がGeForceよりは緩いです。そのため、ゲーム向けGPU同士の比較だとRadeonの方が明らかに良く見えるという状況になっています。
「RX 7900 GRE」のOpenGLは性能は非常に高いです。平均で「RTX 4070 SUPER」の約2倍の性能です。ここもシェーダーユニット数が重要なので、優位性があります。
Stable Diffusion(AIイラスト生成)
現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」を用いて、AIイラストの生成時間を比較しています。よく利用されるAIイラスト生成ソフトは他にもありますが「Stable Diffusion」が恐らくは一番定番と言えるものだと思います。
各GPUで「768×768の20枚の画像を生成するのに掛かる時間」を測定し、1分あたり何枚の画像を生成できるかを各GPUで算出して比較しています。Web UI「Automatic 1111」が使用されていますが、通常ではCUDA(NVIDIA製GPU)のみの対応なので、Intel GPUではOpenVINO、AMD GPUではDirectMLフォークを適用して実行されています。
GPU名称 | 1分あたりの生成枚数 |
---|---|
RTX 4090 | 29.958 |
RTX 4080 SUPER | 20.670 |
RTX 4080 | 20.320 |
RTX 4070 Ti SUPER | 18.060 |
RTX 4070 Ti | 15.888 |
RTX 4070 SUPER | 14.234 |
RTX 4070 | 12.861 |
RX 7900 XTX | 10.915 |
RTX 3070 Ti | 10.617 |
RX 7900 XT | 9.545 |
RTX 4060 Ti 8GB | 8.587 |
RTX 4060 Ti 16GB | 8.457 |
RX 7900 GRE | 7.302 |
RX 7800 XT | 7.031 |
RTX 4060 | 6.990 |
RX 7700 XT | 6.205 |
Arc A770 16GB | 4.697 |
RX 7600 XT | 4.143 |
RX 7600 | 3.489 |
RTX 4070 SUPERの半分程度の性能
Radeon(DirectML)のStable Diffusionにおけるイラスト生成性能は、現状GeForce(CUDA)に遠く及びません。
768×768における「RX 7900 GRE」の生成速度は「RTX 4070 SUPER」の半分程度であり、圧倒的な差があります。BlenderのGPUレンダリングと同様、競合モデルとしては話にならないレベルの差なので、現状はGeForce一択です。
レンダリングも含め、最近ではやはり注目度が高い用途なので、そこで圧倒的に負けているというのは致命的かなと思います。
まとめ
Radeon RX 7900 GRE
- 1440pでも高いfpsを発揮する優れた性能
- 16GB VRAM搭載
- RTX 4070 SUPERよりも少し安価
- RTX 4070 SUPERよりもわずかに有利なラスタライズコスパ
- 非常に優れたOpenGL性能コスパ
- 価格の割に多いシェーダーユニット数
- AFMFによる手軽なフレーム生成機能
- AV1デコードおよびエンコードをサポート
- 非常に高価(初動実売価格:約95,800円~)
- 同世代では良くはないワットパフォーマンス
- RTX 4070 / RTX 4070 SUPERに大幅に劣るレイトレーシング性能
- CUDAに最適化されたソフトでRTXに大幅に不利(Blender、Stable Diffusionなど)
RX 7900 GRE:強力なラスタライズコスパと16GB VRAMが魅力の高コスパGPU
「RX 7900 GRE」は強力なラスタライズコスパと16GB VRAMが魅力のGPUです。
希望小売価格は「RX 7800 XT」より50ドルしか上がっていないにも関わらず、ストリーミングプロセッサー数は33%も増えているため、強力なラスタライズコスパとなっています。「RTX 4070 SUPER」とラスタライズ性能はほぼ互角ですが、希望小売価格は50ドル安いのでコスパでは上回っています。
また、10万円未満ながら16GB VRAMも魅力で、こちらも「RTX 4070 SUPER」の12GBを上回っています。一部のゲームではVRAMを大量に消費するものもあるので、そのようなゲームでは一段有利になります。
しかも、そのストリーミングプロセッサー数の多さの恩恵で、FP32の理論性能やOpenGL性能コスパも非常に高いのもポイントです。このように、ラスタライズによるゲームや動画編集等でのコスパが強力なのが魅力的なGPUとなっています。
しかし、その他の面では競合の「RTX 4070 SUPER」に軒並み大幅に劣る点に注意が必要です。
まず電力面です。消費電力を表す仕様値が「RTX 4070 SUPER」が220Wなのに対し「RX 7900 GRE」は260Wですから、大きな差があります。「RTX 4070 SUPER」ではデュアルファンモデルも多数存在するのに対し、260W~ではデュアルファンはやや厳しめなのでサイズ的にも不利となっており、思ったより大きな差です。
ワットパフォーマンスも「RTX 4070 SUPER」が大きくリードしているため、電力面では完敗です。とはいえ、ここに関しては「RTX 4070 SUPER」が優秀すぎるので、少し可哀想だとは思ってしまいますね。
次にレイトレーシングです。「RTX 4070 SUPER」の方が約20%高い性能となっており、大きく劣ります。RTX有利なのはわかっているので想定内ですが、競合モデルの差としてはかなり大きいです。一応、4Kレイトレーシングでは12GB VRAMではガッツリfpsが低下するゲームがちらほら出てくるので、一部では「RX 7900 GRE」が有利な状況は生まれているものの、ピンポイント過ぎるので、やはり無難なのは「RTX 4070 SUPER」です。
ただし、RadeonではAFMFのフレーム生成機能を気軽に利用できるのはポイントかもしれません。レイトレーシング性能自体は低い訳ではないので、ラスタライズ重視なら一応妥協は出来るレベルの差ではあるかなとも思います。
最後に触れるのは「Blender」と「Stable Diffusion」です。それぞれ主要なレンダリングと画像生成AIソフトですが、これがどちらもCUDAに対して最適化されているため、GeForceが圧倒的に有利な立場となっています。
現状(2024年3月)の競合モデル同士の比較だと、RadeonはGeForceの大体40%~50%くらいの性能しか出せない状況となっており、圧倒的すぎる差が付いています。レイトレーシングの20%不利が霞むレベルです。
数年くらい前までは一般層にはそこまで重視されていなかった項目だとは思いますが、近年では3Dモデルの活用範囲も広がり、画像生成AIの利用者も激増していることもあり、ここを重視する人は増えていると思います。未だに「RTX 3060 12GB」という旧世代GPUが人気で、少し値上がりしている状況もそれを裏付けていそうです。
一般層の使用時間的には、ラスタライズでのゲーム描写が圧倒的だと思うので、そこが強力な「RX 7900 GRE」も非常に魅力的ではあるはずですが、やはり高価な買い物は弱点が少ないものを選びたいという傾向が、特に日本人は強い印象がありますので、「RTX 4070 SUPER」ほどの人気GPUにはなれない予感がします。私もあまり詳しくない人に勧めるなら「RTX 4070 SUPER」を選ぶと思います。
RadeonのモバイルGPUを流用するアプローチや、ストリーミングプロセッサー数を盛るという作戦は面白いですし、効果的だなと感心する部分もあるので応援したいのですが、現状ではCUDAに最適化されている主要ソフトの影響が大きすぎて、GPU側の対応ではどうしようもないのかなと思います。
AMDだけでなく折角参入したIntel GPUも同じ問題を抱えていますし、今後はCPUのNPU利用なども広まると思うので、ソフト側も対応をしていく…と期待したいですが、結局GeForceが普通にゲームコスパも良いですし、消費者としてはそちらを選べば良いだけなので、ソフト側も急ぐ必要もなくて…みたいな問題にはなっていると思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。