「Core i9-12900K」最大消費電力ごとの性能【電力関連】

Intelの第12世代プロセッサ「Alder Lake」のハイエンドモデルである「Core i9-12900K」の電力設定毎の性能考察記事です。

いわゆる爆熱CPUともよく呼ばれるIntelのCore i9ですが、低電力動作時のパフォーマンスはどうなのかというのを見ていきます。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年3月22日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

スペック表・簡易比較表

まずは、Core i9-12900Kのスペック表および、主要スペックの簡易比較表を下記から見ていきます。

Core i9-12900K
コア数16(8P + 8E)
スレッド数24(16P + 8E)
動作
クロック
Pコア2.4GHz
Eコア1.8GHz
TB時最大Pコア5.0GHz
Eコア3.8GHz
TB Max3.0時5.1GHz
キャッシュ
メモリ
L214MB
L330MB
対応メモリ(最大)DDR5-4800 / DDR4-3200
GPUIntel UHD Graphics 770
TDPPL1125W
PL2241W
対応ソケットLGA1700
対応チップセットIntel 600シリーズチップセット(Z690 等)

※価格は2022年3月18日時点での参考価格です。

簡易比較
CPU名コアスレッドクロック
定格 / 最大
TDP
PL1
TDP
PL2
iGPUL3
キャッシュ
参考価格
Core i9-12900K16(8P+8E)24P:3.2 / 5.2GHz
E:2.4 / 3.9GHz
125W241WUHD 77030MB約73,980円
Core i9-12900KF16(8P+8E)24P:3.2 / 5.2GHz
E:2.4 / 3.9GHz
125W241W×30MB約69,980円
Ryzen 9 5950X16323.4 / 4.9GHz105W142W×64MB約 83,800円
Core i7-12700K12(8P+4E)20P:3.6 / 4.9GHz
E:2.7 / 3.8GHz
125W190WUHD 77025MB約 51,480円
Core i7-12700KF12(8P+4E)20P:3.6 / 4.9GHz
E:2.7 / 3.8GHz
125W190W×25MB約 49,500円
Core i7-1270012(8P+4E)20P:2.1 / 4.8GHz
E:1.6 / 3.6GHz
65W180WUHD 77025MB約 43,980円
Core i7-12700F12(8P+4E)20P:2.1 / 4.8GHz
E:1.6 / 3.6GHz
65W180W×25MB約 41,980円
Ryzen 9 5900X12243.7 / 4.8GHz105W142W×64MB約 63,300円
Core i5-12600K10(6P+4E)16P:3.7 / 4.9GHz
E:2.8 / 3.6GHz
125W150WUHD 77020MB約 38,500円
Core i5-12600KF10(6P+4E)16P:3.7 / 4.9GHz
E:2.8 / 3.6GHz
125W150W×20MB約 35,500円
Ryzen 7 5800X8163.8 / 4.7GHz105W142W×32MB約 47,800円
Core i5-124006122.5 / 4.4GHz65W117WUHD 73018MB約 25,500円
Core i5-12400F6122.5 / 4.4GHz65W117W×18MB約 22,500円
Ryzen 5 5600X6123.7 / 4.6GHz65W76W?×32MB約 32,500円

第12世代Coreの最上位モデルの16コア24スレッドCPU

今回本記事で扱う「Core i9-12900K」は、第12世代Coreシリーズ「Alder Lake」の記事執筆時点の最上位モデルです。

「Core i9-12900K」は、従来の高性能コア(Performance Core:Pコア)8コアに加え、高効率コア(Efficient Core:Eコア)を8コア搭載しており、合計で16コア24スレッドのハイエンドCPUです。

そのマルチスレッド性能は、16コア32スレッドのRyzen 9 5950Xに匹敵するレベルで非常に優れています。ゲーミング性能などの、他の各種処理性能もRyzen 5000シリーズを軒並み上回っており、Ryzenに並ぶどころか一気に抜き去りました。

そんな高性能CPUですが、気になるのは消費電力です。

「Core i9-12900K」の最大消費電力設定は241Wとなっており、消費電力の多いCPUはよく爆熱CPUと表現されますが、そう表現されても仕方ないレベルだと思います。

しかし、そもそも本当にそこまでの電力が必要なのか、241W未満の消費電力ではどうなるかというのが気になったので、そこについて本記事ではざっくりと見ていきたいと思います。

Core i9-12900K の電力設定

本題の性能比較に入る前に、Core i9-12900Kの電力設定について軽く触れておきます。

従来、CPUではTDP(熱設計電力)という仕様が使われていましたが、Alder Lakeではこの表記が廃止されています。

まず従来のTDPについて触れると、これは実は本質的には意味を失っていた状況があり、たとえば表向きには「TDP:65W」と表記されている場合でも、常にこれ以下の電力で稼働する訳ではなく、ターボブースト時にはその数値よりも遥かに多い電力を消費するのが普通でした。

これはなぜかというと、表向きに表記されているTDPは一段階目のデフォルト制限のPL1(PLはPower Limit 1の略)ですが、最近のCPUではこのTDP(PL1)とは別にTDP(PL2)という二段階目のTDPが用意されていたためです。このPL2がPL1の標準電力よりも遥かに高いため、実際には表向きのTDPよりも多くの電力が使われていたという訳です。

Alder Lakeではその廃止されたTDP表記の代わりに用意された2つの電力制限表記があり、一つは「Processor Base Power(PBP)」というもので、二つ目が「Maximum Turbo Power(MTP)」というものです。

従来表記に従うと、PBPがTDP(PL1)で、MTPがTDP(PL2)という感じになります。正直、PBPとかMTPとかの表記は馴染みにくいと思うので(特に日本人は)、認識はTDPのPL1とPL2という感じで良いと思います。

ただし、仕様面では従来のTDPと若干変わった点があります。

従来のTDPでは、負荷の大きい処理が要求されるとPL2に移行し、またPL2には「Tau」というPL2を持続できる時間が設定されており、この時間が使い果たされるとPL1での稼働に戻るという仕様になっていました。しかし、Alder LakeではTauが廃止され、負荷の大きい処理が必要になると、最大温度に達しない限り無期限にPL2(MTP)で実行するようになりました。

要するに、適したクーラーが搭載され冷却されている限り、Alder LakeではPL1(PBP)スペック表でのみ存在し、実質的には意味のない数値となっています(少なくともK付きでは)。仕様上は負荷の小さい処理ではPL1(PBP)で稼働することもありますが、そもそも負荷の小さい処理では大きい電力を必要としないため、そもそも制限になっていないことが基本なので、実際に意味を成すことはあまりない数値となっています。

そのため、Alder Lakeでは実質的にはPL1(PBP)=PL2(MTP)という感じになっています。たとえば、「Core i9-12900K」ではPL1(PBP)が125W、PL2(MTP)が241Wに設定されていますが、負荷の大きい処理では125Wで稼働することは基本的にはありません。

電力制限に関しての説明は以上です。今回扱う「Core i9-12900K」の電力制限値について改めて下記に載せておきます。また、他のモデルについても参考までに載せています。

CPUPBP (PL1)MTP (PL2)
Core i9-12900K(F)125W241W
Core i9-12900(F)65W202W
Core i7-12700K(F)125W190W
Core i7-12700(F)65W180W
Core i5-12600K(F)125W150W
Core i5-12600
Core i5-12500
Core i5-12400(F)
65W117W
Core i3-12300
Core i3-12100
60W89W
Core i3-12100F58W89W

処理性能

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。今回使用されたGPUは「GeForce RTX 3080」です。メモリは「DDR5-6000 CL36」が使用されています。DDR5メモリの中でも現在では高速な部類のもので、レイテンシも優秀なかなり高性能なメモリです。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称スコア
PL1=125W / PL2=241W
2031
PL1=241W / PL2=241W
2030
PL1=125W / PL2=125W
2029
PL1=190W / PL2=190W
2028
PL1=100W / PL2=100W
2019
PL1=75W / PL2=75W
2017
PL1=50W / PL2=50W
2006
Core i7-12700K
1939
Core i5-12600K
1921
Core i7-12700
1862
Ryzen 9 5950X
1638
Ryzen 9 5900X
1623
Core i5-12400
1623
Core i7-11700KF
1600
Ryzen 7 5800X
1606
Ryzen 5 5600X
1540
Core i5-11400F
1414

1コアだと電力制限はほぼ関係なし

シングスレッド性能は1コアのみを使用した場合の性能ですが、1コアのみ稼働では使用電力が少なく電力制限がほぼ関係ないため、どの電力でも差はほとんどありませんでした。

一応電力が多いほどわずかに性能は高いものの、50W時と241W時の比較でも約1.2%しか差はなく、実用性に影響を与えるほどではないと思います。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R23 Multi
CPU名称スコア
PL1=241W / PL2=241W
27780
PL1=125W / PL2=241W
26733
Ryzen 9 5950X
25813
Core i7-12700K
22232
Ryzen 9 5900X
21789
Core i7-12700
21568
PL1=190W / PL2=190W
18938
PL1=125W / PL2=125W
18138
Core i5-12600K
17699
Ryzen 7 5800X
15758
PL1=100W / PL2=100W
14819
Core i7-11700KF
12911
Core i5-12400
12454
PL1=75W / PL2=75W
11325
Ryzen 5 5600X
11225
PL1=50W / PL2=50W
8872
Core i5-11400F
7552

使用できる電力が多いほど高性能

全コアを使用するマルチスレッド性能では、やはり使用できる電力が多いほど性能が多い傾向がありました。PL2が241Wの2つの設定が僅差でトップ2となっています。

電力量が減るほど性能も落ちるという分かりやすい結果となっていますが、特に興味深いのは190Wの性能です。190Wというのは「Core i7-12700K(F)」のPL2と同じ値ですが、上位のはずの「Core i9-12900K」を190Wで動作させると、下位の「Core i7-12700K」に性能が負けてしまいます。

二つの主な違いは、最大クロックがCore i9の方が若干高い点と、Eコア(高効率コア)がCore i9の方が4つ多い点です。コアあたりの性能は間違いなくPコアの方が大幅に高いので、推測にはなりますが、Core i9では4つ多いEコアにも電力を回すせいで、Eコアの少ないCore i7よりもPコアへ十分な電力が行き届かなかったため性能が低下している可能性があると思います。

また、125W→190Wは電力が約1.52倍となるにも関わらず、性能が4.2%しか向上しないという効率が非常に悪い結果となっているのも興味深い点です。先の考察を踏まえると、高負荷な処理が要求されているのに電力が十分でない場合には、Eコアへと回す電力から減らされるため、Pコアへの電力供給量はあまり変わらないから性能低下も小さいといった可能性が考えられます。また、一応TDP PL1(PBP)が125Wなので、そこで最適化されている可能性もあります。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のフレームレート数(fps)を見ていきます。

今回は10種類のゲームで測定したfpsの幾何平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeFoce RTX 3080」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

1080pゲーミング 10種類幾何平均
CPU名称fps
PL1=241W / PL2=241W
218.0
PL1=190W / PL2=190W
217.1
PL1=125W / PL2=241W
216.9
PL1=125W / PL2=125W
216.2
Core i7-12700K
214.0
PL1=100W / PL2=100W
209.8
Core i5-12600K
209.3
Ryzen 9 5900X
202.6
Ryzen 9 5950X
202.2
Ryzen 7 5800X
202.0
PL1=75W / PL2=75W
199.4
Ryzen 5 5600X
195.5
Core i7-11700KF
193.4
Core i5-11400F
169.7
PL1=50W / PL2=50W
145.0

1440pゲーミング 10種類幾何平均
CPU名称fps
PL1=125W / PL2=241W
180.8
PL1=241W / PL2=241W
180.7
PL1=190W / PL2=190W
180.1
PL1=125W / PL2=125W
179.9
Core i7-12700K
178.1
PL1=100W / PL2=100W
174.4
Core i5-12600K
173.0
PL1=75W / PL2=75W
172.0
Ryzen 7 5800X
170.4
Ryzen 9 5900X
170.3
Ryzen 9 5950X
170.1
Ryzen 5 5600X
167.3
Core i7-11700KF
166.9
Core i5-11400F
151.0
PL1=50W / PL2=50W
140.0

125W以上は差は小さく、100W以下でfpsが低下

125W以上ではfps差が2%以内に収まり、差はほとんどありませんでした。ゲームによってはCPU性能が重要なものもあるので、そういうゲームでは多少差はつくものの、総合的には125Wと241Wでも微差です。CPUクーラーがあまり高性能でない場合には、始めから電力制限を下げておいた方が動作は安定するし、fpsも向上する可能性もあるレベルの小さな差だと思います。

しかし、100W以下からは電力が減る毎にfps低下が見られ、特に50Wでは顕著な性能が低下が見られました。恐らくこのあたりが、Pコアがある程度性能を発揮できるラインなのかもしれません。

思ったよりも電力差による性能差はない(75Wと241Wでも1割未満)

意外だったのが、思ったよりも電力差で性能が変わらなかった点です。

75W時と241W時のfpsを比べても、1080pで約8.5%、1440pで約4.9%しか向上していませんでした。50Wという極端な電力制限を行わない限り、特にCPUパワーと要求するゲームでなければ性能差は小さいことがわかります。

要因として考えられるのは、やはりEコアがゲーミング向きではない点です。低消費電力動作とサイズの小ささに特化したコアなので仕方ないですが、特に単コア性能と遅延が重要なゲーミングでは、電力を増やしてコアあたりの性能が低いEコアにも十分な電力を供給するメリットがあまりないことが考えられます。

ただし、実際にはEコアが有効に働く場面もあるかもしれない点は留意

こういうゲーミング性能テストでは、当然ゲーム単体でテストが行われます。ただし、実際にゲームをプレイする際には、他にもソフトを立ち上げたりして処理が発生しているケースが多くあると思います。

その場合に、ゲームの処理をEコアに任せてPコアの負荷を軽減するといったことが考えられます。前述したようにゲームでEコアを使うことは良くない可能性がありますが、CPUがEコアを持っていることはゲーミング性能を良くしている可能性がある点は一応留意です。

その他

消費電力

ざっくりとした消費電力を見ていきます。「Cinebench」を実行した際のもので、CPUの全コア稼働時のものです。ただし、数値はCPUだけでなくシステム全体のものとなっている点に注意してください。ただし、使用ベンチマーク自体は基本CPUのみで行う処理となっているはずなので、大部分がCPUの使用電力となっているはずです。

数値が低いほど良い点に注意してご覧ください。

消費電力(cinebench Multi)
CPU名称スコア
PL1=50W / PL2=50W
120W
Ryzen 5 5600X
126W
Core i5-11400F
136W
PL1=75W / PL2=75W
146W
PL1=100W / PL2=100W
172W
Ryzen 7 5800X
175W
Ryzen 9 5950X
179W
Ryzen 9 5900X
183W
Core i5-12600K
189W
PL1=125W / PL2=125W
194W
Core i7-12700K
221W
PL1=190W / PL2=190W
241W
Core i7-11700KF
260W
PL1=125W / PL2=241W
282W
PL1=241W / PL2=241W
291W

電力設定に応じた消費電力

特に変な点は見当たらず、電力設定に準じた電力量になっています。

一応いくつか触れるとするなら、目新しいことではないですが、やはり241W時にはシステム全体ながら280W以上と非常に多い消費電力となっている点は何度見ても気になります。CPUクーラーや電源には十分に気を使う必要があります。

その他、PL1=PL2=190W時の性能で、実質的に同じ電力設定であるはずの「Core i7-12700K」よりも若干消費電力が多い点も少し気になります。二つの差は主にEコアの数の差なので、全コアに十分な電力量が確保できない状況では、Eコアへ電力を供給することが効率面では妨げになっている可能性をここからも感じます。

電力効率(総消費電力)

次にざっくりとした電力効率を見ていきます。

電力効率は上述のベンチマークで掛かった時間と使用電力から算出した総消費電力になります。ただし、元の電力がCPUだけのものでないので、効率も完全なCPUのものとはなっていない点には注意です。

こちらの電力効率も数値が低いほど良い(使用した電力が少ないほど良い)点に注意してご覧ください。

総消費電力・電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称スコア
Ryzen 9 5950X
6.4kJ
PL1=75W / PL2=75W
7.6kJ
Ryzen 9 5900X
7.8kJ
PL1=100W / PL2=100W
7.9kJ
PL1=125W / PL2=125W
8.7kJ
PL1=190W / PL2=190W
9.2kJ
Ryzen 5 5600X
9.6kJ
Core i7-12700K
9.7kJ
PL1=50W / PL2=50W
10.0kJ
Core i5-12600K
10.0kJ
Ryzen 7 5800X
10.0kJ
PL1=125W / PL2=241W
10.1kJ
PL1=241W / PL2=241W
10.1kJ
Core i5-11400F
15.3kJ
Core i7-11700KF
16.5kJ

最大消費電力が増えるほど電力効率が悪くなる

電力効率は、最大の消費電力(PL2)が増えるほど悪くなるという結果になりました。

テストの仕組み上、最大消費電力が多くて性能が高い方が処理時間が短いため電力効率は良くなるはず(システム全体の電力を参照しているため、処理時間が長いとCPU以外に使われる電力が多くなるため)と思っていましたが、まさかの逆の結果となりました。それほど、「Core i9-12900K」は最大消費電力を増やすほどは電力効率が悪くなるCPUだとということになります。ただ、こういう言い方をすると「Core i9-12900K」を普通に使うと電力効率が悪いと思われてしまいそうですが、241W時でも前世代のCPUよりは電力効率は遥かに改善しており、悪くない数値という点は留意してほしいと思います。

言い方を変えると最大消費電力を下げるほど効率が良くなるとも言えますが、他の項と同じく50Wまで下げてしまうと悪化してしまう点には注意です。しかし、75Wまでは下げる度に電力効率が向上しており、241Wよりも190W~75Wの方が電力効率は明らかに良くなっています。

75Wに最も良い効率となっており、「Ryzen 9 5900X」に匹敵する数値となっています。ただし、前述のマルチスレッド性能の項を見るとわかりますが、そこまで電力を下げると241W時よりマルチスレッド性能が大幅に低下しており、処理に掛かる時間も長くなるため、一概に良いとも言えない点は留意です。

それに、元々Eコアがレンダリングのような高負荷処理に使うものでなく、軽負荷な処理用のものだと思うので、致し方ない結果なのかなとも思います。

まとめ

「Core i9-12900K」の消費電力設定毎の性能について、雑感や評価をまとめています。

Core i9-12900K のTDP毎の性能の要点
  • シングルスレッド性能は電力の影響をほぼ受けない
  • マルチスレッド性能は電力が減るほど性能が低下するが、125W~190Wでは差が約4.2%しか無かった
  • ゲーミング性能は、100W以上は差があまり無かった(CPUが重要なゲーム除く)
  • 電力効率は使用電力が減るほど良い
  • 総合的な印象:Eコアはマルチスレッド性能向上には貢献するけど、高負荷時の電力効率ではマイナス要素となる可能性がある

マルチスレッド性能以外は、125Wあれば性能は大差無し?

マルチスレッド性能では241Wから190Wになると性能がガクッと落ちるものの、マルチスレッド性能以外では電力差ほど差が見られませんでした。

たとえば、マルチスレッド性能でも241W→190Wでは約32%も低下しましたが、190W→125Wでは約4.2%しか性能が低下しませんでした。

ゲーミング性能では100W以上は241Wまで含めても差が小さく、241Wと125Wを比較すると1080pで約0.8%、1440pで約0.5%しかfps低下が見られませんでした。CPU性能が重要な場合は結果が違ってくる可能性もありますが、平均で見ると125Wあれば十分という結果になっていました。

マルチスレッド性能はやはり使用電力が大きいほど高い傾向があるため、125W運用が良いとまでは言えませんが、面白い結果となっています。

電力効率は最大消費電力が多くなるほど悪くなる

電力面での気になる点は、電力効率(マルチスレッド処理時)が最大消費電力(TDP PL2)が高くなるほど悪かった点です。

今回のテストでは、消費電力がCPUのみではなくシステム全体の消費電力を参照しているため、普通に考えればワークロードを早く完了できた方が、CPU以外の消費電力を抑えることができるため有利です。そのため、最大消費電力が高くてマルチスレッド性能が高い方が効率的には有利だと思っていたのですが、実際にはCore i9-12900Kでは逆の結果となりました。

50Wまで下げると性能が格段に下がる影響もあってか電力効率も良くありませんでしたが、最も良かったのは75W時で、241W時と比べると約26.8%少ない電力で同じテストを完了しています。これはRyzen 9 5900Xに匹敵するレベルです。

Ryzen 9(5000シリーズ)には電力効率では未だに大幅に劣るというのが Alder Lakeでしたが、電力制限を大幅に制限するという条件下では匹敵するレベルまで追い付くことができます。

ただし、電力を制限してマルチスレッド性能が下がると、処理に掛かる時間も長くなるため、一概には良いとは言えない点は留意です。

Eコアの特性と最適化がポイント?

Alder Lakeを語る上で欠かせないのはEコアです。サイズが非常に小さいEコアはPコアよりも手軽にコア数を増やすことができるため、CPU全体のマルチスレッド性能向上へは大きく貢献しています。これは、前世代からの性能向上率を見ても間違いありません。

ただし、クロックおよびサイズの小さいEコアは、当然ながらPコアよりもコアあたりの性能は大幅に落ちます。そのため、今回のようなCPU全体を十分に稼働できないような電力制限をすると、性能の低いEコアに電力を割いてしまうことはパフォーマンスや効率面でマイナスとなる可能性があります。

今回のテストでも、同じ電力設定でEコアの数が少ない「Core i7-12700K」に性能でもやや負けている他、電力効率でも顕著にその影響が出ていたように感じます。

これだけ言うと、Eコアが悪く見えると思いますが、マルチスレッド性能向上以外でも貢献するケースがある点は留意です。

たとえば、今回のようなテストでは各テストが一つずつ単体で実行されますが、実際にPCを扱う際には、複数の処理を同時に実行することも多いです。その際に特に高負荷な処理にはPコアを使用し、低負荷なものにはEコアを使用すると言った最適化が行われているなら、パフォーマンス面でも効率面でもEコアのおかげで向上する可能性はあります。

なので、今回のテストを見た結果「125Wで十分なんだ!」と勘違いだけはされないように留意して欲しいなと思います。


といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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