「RTX 4070 Ti」と「RX 7900 XT」どっちが良い?【性能比較】

「GeForce RTX 4070 Ti」と「Radeon RX 7900 XT」の二つを海外レビューを参考に比較しています。ゲーミング性能に関する比較となっており、クリエイティブ用途などは考慮されていないためその点は注意してください。

ハイエンドだけど出来るだけ安価でコスパも悪くしたくない場合に魅力的な2製品を見ていきます。

注意

本記事の情報は記事執筆時点(2023年3月22日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

※記事掲載当初「RX 7900 XT」のTBPを300Wと表記していましたが、正しくは315Wでした。お詫びして訂正いたします。

仕様

まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。ただし、メーカーが異なるGPU同士ではコア数の差などはあまり参考にならない点に注意です。

簡易比較表

RTX 4070 TiRX 7900 XT
プロセスルールTSMC 4N(5nm?)5nm + 6nm
(GCD+MCD)
ダイサイズ295㎟約519.6㎟
(300㎟ + 36.6?㎟ × 6)
SP数76805376
RT用コア6084
Tensorコア240
定格クロック2.31 GHz2.0 GHz
ブーストクロック2.61 GHz2.4 GHz
メモリタイプGDDR6XGDDR6X
メモリ容量12GB20GB
メモリバス幅192bit320bit
メモリ速度21Gbps20Gbps
メモリ帯域幅504 GB/s800 GB/s
TGP285W315W
参考価格127,800円132,800円

※価格は2023年3月22日時点での市場最安値価格です(価格.comやAmazon参考)。

主な仕様は上記のような感じになっています。

まず価格の話からすると、両者の米国での希望小売価格(MSRP)は「RTX 4070 Ti」が799ドル、「RX 7900 XT」が899ドルとなっています。「RX 7900 XT」の方が100ドル高価です。ただし、恐らく発売後に売れ行きが芳しくなかった影響で「RX 7900 XT」は大きく値下げが進んでおり、現在では両方とも13万円前後程度の同等の価格で購入することが可能となっています。元々競合モデルでしたが、今ではより近しいライバルモデルになっていると思います。

次に仕様面ですが、一番気になる差はメモリ性能差です。「RTX 4070 Ti」は容量は12GBで、帯域幅は504GB/sとなっています。それに対し「RX 7900 XT」は20GBで 800GB/sとなっており、圧倒的に優れています。2023年3月時点では両者の価格はほぼ同等レベルですが、同価格帯でここまでメモリ性能差があるのも珍しいです。

ただし、現状のゲームでは12GBあればほとんどネックにならないと思いますし、504GB/sというのも数値自体は優れている方です。価格を考えれば低いメモリ仕様ではあるものの、4Kやクリエイティブ用途などを視野に入れなければあまり問題にはならないかなという印象です。

とはいえ、やはり4Kレベルの高解像度や高設定、高負荷なクリエイティブ用途では多少差が出るはずなので、その辺りの用途もメインにする人の場合には「RX 7900 XT」の方が優先度は上がると思います。

メモリ性能は低めな「RTX 4070 Ti」ですが、レイトレーシング性能とDLSSについてはRadeonに対し優勢なのが強みです。詳しい性能については後で見ていきますが、「RTX 40シリーズ」と「RX 7000シリーズ」においても前世代と同様に、RTX側の方がやや優勢な傾向があります。

レイトレーシングの性能差はもちろんですが、「RTX 40シリーズ」では新たにDLSS 3に対応したのが注目です。DLSSはTensorコアが必要なRTX特有のアップスケーリング技術のため、Radeonでは利用できません。そのため、DLSSが非常に魅力的な機能であるほど大きな差となります。

「RTX 40シリーズ」から新たに対応する「DLSS 3」では2と比較して中間フレームを作成することで負荷を大幅に軽減する機能が追加されており、性能が格段に向上しているとNVIDIAは主張しています。仮にこの向上が無かったとしても、AMDがメインに据えている「FSR」と比べると、質も負荷軽減もDLSSの方がやや高い傾向が従来でもありましたので、アップスケリーング面では「RTX 4070 Ti」の方が一枚上という印象です。

とはいえ、現状はやはりネイティブ画質を維持したい人が多いと思いますし、4Kレイトレなどを除けば、低性能なGPUの方があって嬉しい機能だと思うので、「RTX 4070 Ti」と「RX 7900 XT」の二択で決め手にする人はあまり居ない要素ではあるかもしれません。

次に消費電力についてですが、TGPはそれぞれ、「RTX 4070 Ti」が285W、「RX 7900 XT」が315Wとなっており、「RX 7900 XT」の方がやや多いです。ただし、劇的な差というほどではなく、性能によっても評価が変わる部分なので、後で詳しく見ていきます。

また、現状は実質的な差とはなりませんが、両者はダイサイズに大きな差があるのも一応違いです。「RTX 4070 Ti」は約295㎟なのに対し、「RX 7900 XT」はチップレット設計で細かなダイを含むため正確な数値を出すのは難しいものの、メインコアを含むのGCDだけで300㎟なのに加え、メモリを担当するMCDが約37㎟が6つもプラスされるため、合計ダイサイズは500㎟を超えることになり、「RTX 4070 Ti」よりも大幅に大きいです。

ダイサイズが小さいと、ショート基盤にすることで小さめのケースでも採用しやすく出来ることが期待できます。とはいえ、いくら「RTX 4070 Ti」のダイサイズが小さいとはいえ、285W TGPの発熱を2個以下のファンで冷却するのは難しいと思われ、3連ファンが基本になるでしょうから、実質的にこの差が有効活きることはあまりないかもしれません。とはいえ、前世代の392㎟のダイが使用されている「RTX 3070 Ti」は290Wながら、わずかにショート基盤仕様のグラボもあったので、その望みが少しだけ期待できるかもしれません。ただ、どちらにせよ性能重視の場合にはあまり関係がない話ではあります。

両者の大まかな差は以上のような感じになります。次からは実際の性能差を比較していきたいと思います。

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。本項で扱うのはラスタライズ性能で、レイトレーシング性能については後述です。

使用されたグラフィックボードは「RTX 4070 Ti」の方は「Gigabyte RTX 4070 Ti Gaming OC」で、「RX 7900 XT」はリファレンスデザインのものです。「RTX 4070 Ti」の方はOCクロックモデルですが、ブーストクロックはリファレンスデザインよりも30MHz高いだけなので、性能面でそれほど差は出ないと思います。使用されたCPUは「Core i9-13900K」となっています。2023年3月時点でのハイエンドCPUです。

また、OSはWindows 10が使用されているため、Windows 11で報告例のあるゲーミングパフォーマンスが低下する問題は発生していません。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。


1080p(1920×1080)

FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2023年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思いますが、RTX 4090など最新世代の超高性能GPUでは低負荷感も大きくなってきた解像度です。

平均FPS(1080p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RX 7900 XT
228.6
RTX 4070 Ti
219.2
参考:TechPowerUp

1080pでは「RX 7900 XT」の方が約4.3%高い性能でした。「RX 7900 XT」の方が上回ってはいるものの差は小さく、価格も一応「RTX 4070 Ti」の方がわずかに安いことを考慮するとほぼ同等という評価になるかなと思います。

重いゲームが中心の最高設定219~228fps出ているので、どちらでも十分すぎるパフォーマンスが得られていると言えると思います。


1440p(2560×1440)

WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。

平均FPS(1440p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RX 7900 XT
183.7
RTX 4070 Ti
170.4
参考:TechPowerUp

1440pでは「RX 7900 XT」が約7.8%上回る性能でした。1080pの4.3%から差が広がり、メモリ性能の差が表れてきている印象を受けます。この差だと「RTX 4070 Ti」の方がわずかに安いとしてもコスパは「RX 7900 XT」の方が上回りそうな気がしますし、一部のメモリの重要なゲームではより差が出る可能性も大きくなると思うので、「RX 7900 XT」の方が若干優位かなという印象です。

ただし、「RTX 4070 Ti」も性能自体は十分に高性能で、「RTX 3090 Ti」に匹敵するレベルです。前世代の最上位クラスのハイエンドGPUと比較するとコスパは大きく優れていますし、後述のレイトレーシング性能では優位なので、「RX 7900 XT」一択というほどの差ではないです。


4K(3840×2160)

「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。

平均FPS(4K 最高設定)
GPU名称平均FPS
RX 7900 XT
108.4
RTX 4070 Ti
98.9
参考:TechPowerUp

メモリ性能差があるということで、筆者が一番気になった4K性能です。

4Kでは「RX 7900 XT」が約9.6%上回る性能でした。1440pの約7.8%からやはり差は広がったものの、思ったよりは小さい差でした。「RTX 40シリーズ」では前世代からキャッシュメモリが大きく増量しているので、そのおかげなのかもしれません。とはいえ、同価格のGPUとしてはやや大きめの差です。1080pと比較すると5%以上差が広がっており、VRAMの性能差はやはり出ているのかなと思います。

同価格帯で10%の性能差ではさすがにコスパは「RX 7900 XT」の方がやや上になると思います。更に、大幅なメモリ性能差はゲームだけでなくクリエイティブ用途や、複数の処理を平行する場合などにも有利になります。やはり4Kでは「RX 7900 XT」が優位です。

後述のレイトレーシングの際も含めれば話が多少変わってはきますが、上述の性能差はレイトレーシングでも影響します。詳しくは後で見ていきますが、4Kにおいてはレイトレーシング時でも「RTX 4070 Ti」には印象的な差を付けることが出来ていません。やはり、「RTX 4070 Ti」は4Kだと他のハイエンドGPUよりもネックになり易いGPUであり、4Kにおいて「RX 7900 XT」に優位に立てるのは「DLSS 3&レイトレーシング」を有効活用できる場合に限られると思います。

とはいえ、性能自体は高水準であるというのは変わらないですし、98fpsが108fpsになるのは大きいですが、実際の使用感に大きな影響を与えるかは怪しいところですから、NVIDIAの機能性の高さやメーカーに対する信頼性があれば気にならない差にも思えます。

電力関連

消費電力

消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。ゲームと動画再生時の二つを見ていきます。

ゲームの測定に使用されたのは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。動画再生は4Kの30fpsの動画をローカル環境で再生した場合のものになります。GPUの再生支援を受けるため、メインのGPUコアだけでなく、デコード機能の効率を確かめることも出来ます。

ゲーミング時の消費電力

GPU平均消費電力(4Kゲーミング/Cyberpunk 2077)
GPU名称消費電力
RTX 4070 Ti
273W
RX 7900 XT
320W
参考:TechPowerUp

ゲーミング時の消費電力は「RTX 4070 Ti」の方が47Wも少ないです。約14.7%も有利です。長期で使うことを考えれば電力料金差もわずかに出るとは思いますが、273Wでも少ないとは言えない消費電力で、電源の要求レベルは大して変わらないので実質的には大きな差ではないと思います。

とはいえ、47Wは小さい差ではありませんし、冷却やファン動作音について不安がある場合には「RTX 4070 Ti」の方が安心かなと思います。

動画再生時の消費電力

GPU平均消費電力(動画再生時 4K/30p)
GPU名称消費電力
RTX 4070 Ti
21W
RX 7900 XT
76W
参考:TechPowerUp

少し気になったのが動画再生時の消費電力です。動画再生時の消費電力は、GPUの再生支援を受ける場合はハードウェアデコードの効率が重要になるため、ゲーム時の性能やGPUの基本性能とは異なる結果となる場合があります。

結果としては、「RTX 4070 Ti」が21Wなのに対し、「RX 7900 XT」は76Wと圧倒的に多く、4倍近い差が付いています。非常に大きな差です。

動画再生時には元々RTXの方がやや有利な点に加え、メモリ容量が多くてクロックが高いほどやや消費電力が多い傾向があります。どちらも「RX 7900 XT」が不利なため、非常に大きな差が付いてしまっていると思われます。

「RX 7900 XT」の76Wも消費電力自体は少なく、実用的には問題になるレベルではないとは思いますが、高画質動画を視聴しながらゲームをする場合には「RX 7900 XT」の方がパフォーマンスが大きく失われる可能性が高い他、日常的に非常にたくさん視聴する人の場合には、年間で見れば電力料金にも少し差が出るかなとは思うので、「何をするにも動画を再生してる」みたいな人は注意が必要です。

ワットパフォーマンス

次にワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077」です。

ワットパフォーマンス(Cyberpunk 2077)
GPU名称1フレームあたりの消費電力
RTX 4070 Ti
4.6W
RX 7900 XT
5.0W
RTX 3080
6.5W
参考:TechPowerUp

ワットパフォーマンスは「RTX 4070 Ti」の方がやや優れています。約8%ほど少ない電力で稼働しています。劇的な差ではないものの、双方消費電力自体は非常に多いGPUですから、高負荷な処理を長時間することが前提の場合には馬鹿にできない差が生まれます。そのため、そのような用途に使う場合には「RTX 4070 Ti」の方がやや優位です。とはいえ、ほとんどのゲーマーにとってはあまり印象的ではない差だと思います。

また、参考に載せている「RTX 3080」と比較すると、どちらとも前世代GPUよりは大きく優れていることがわかります。プロセス微細化が進んだことが大きいと思われますが、さすがの最新世代のGPUという感じです。

レイトレーシング性能

レイトレーシング性能

レイトレーシング性能を見ていきます。メインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。

レイトレーシングFPS(幾何平均)
GPU名称平均FPS
1080p / RT
RTX 4070 Ti
138.4
RX 7900 XT
123.5
1440p / RT
RTX 4070 Ti
98.7
RX 7900 XT
89.8
4K / RT
RTX 4070 Ti
52.3
RX 7900 XT
48.7
参考:TechPowerUp

レイトレーシングでは「RTX 4070 Ti」の方が優位です。「RX 7900 XT」に対し、1080pでは約12.1%、1440pでは約9.9%、4Kでは約7.4%優れたパフォーマンスを発揮しています。同価格帯のGPUとしてはやや大きめの差です。前世代に引き続き、りレイトレーシングはGeForceが未だに優位に立っていることが明確にわかります。

消費電力でもやや優位なことが点がありましたし、レイトレーシングではやはり「RTX 4070 Ti」の方が一段有利という印象です。とはいえ、差は平均で1割前後ほどなので、凄く大きい訳ではないです。

レイトレーシングでも解像度が上がるほどやや差が小さくなっている傾向が見られ、メモリ性能差が表れている印象もありますし、従来のラスタライズでは「RX 7900 XT」の方が少し有利でしたから、総合的に見て一長一短で難しい選択になる気がします。

コストパフォーマンス

コストパフォーマンスの比較です。上述の平均fpsと、記事執筆時点の市場のおおよその最安値価格を基に、1フレームあたりのコスト(円)を算出して比較しています。

ゲーミング性能コスパ(ラスタライズ)

平均FPS@ラスタライズ(幾何平均)
GPU名称平均FPS
1080p
RX 7900 XT / ¥132,800
580.9円
RTX 4070 Ti / ¥127,800
583.0円
1440p
RX 7900 XT / ¥132,800
722.9円
RTX 4070 Ti / ¥127,800
750.0円
4K
RX 7900 XT / ¥132,800
1225.1円
RTX 4070 Ti / ¥127,800
1292.2円
参考:TechPowerUp

今でも主流なラスタライズでのコスパは、「RX 7900 XT」がわずかに有利です。ただし、その差はわずかで、1080pではほぼ同等ですし、最も差が大きい4Kでも5%程度です。

一応「RX 7900 XT」の方が上ですし、メモリ性能の高さが魅力で高解像度や重いゲームにも強い「RX 7900 XT」の方がやや有利な印象は受けるものの、決定付けるほどの差ではないという感じがします。

ゲーミング性能コスパ(レイトレーシング)

レイトレーシングFPS(幾何平均)
GPU名称平均FPS
1080p @ RT
RTX 4070 Ti / ¥127,800
923.4円
RX 7900 XT / ¥132,800
1075.3円
1440p @ RT
RTX 4070 Ti / ¥127,800
1294.8円
RX 7900 XT / ¥132,800
1478.9円
4K @ RT
RTX 4070 Ti / ¥127,800
2443.6円
RX 7900 XT / ¥132,800
2726.9円
参考:TechPowerUp

レイトレーシングコスパは「RTX 4070 Ti」の方がやや有利です。

1フレームあたりのコストは「RTX 4070 Ti」の方が1080pで約14.9%、1440pで約12.4%、4Kで約10.4%ほど低いです。ラスタライズと比べて差が大きくなっており、レイトレーシングを重視するなら無視できない差です。

単純な性能でも「RTX 4070 Ti」の方が基本上ですし、レイトレーシング重視なら「RTX 4070 Ti」がやはり一段上です。更に、DLSSも併用できれば非常に大きな恩恵がある点も加点要素です。

まとめ

最後に、ここまでの比較のまとめと、総評を載せています。

簡易比較表

RTX 4070 TiRX 7900 XT
参考価格
※2023年3月22日時点
127,800円132,800円
VRAM12GB (504GB/s)20GB(800GB/s)
ゲーミング性能
【ラスタライズ】
+4.3%~9.6%
ゲーミング性能
【レイトレーシング】
+7.4%~12.1%
消費電力
(ゲーム)
273W320W
1フレームあたりの消費電力
(ゲーム)
4.6W5.0W
1フレームあたりのコスト
【ラスタライズ】
-0.4%~-5.2%
1フレームあたりのコスト
【レイトレーシング】
-10.4%~14.9%

※価格は2023年3月22日時点での市場最安値価格です(価格.comやAmazon参考)。

特徴に差はあるけど、プラマイ評価ではほぼ同等に思える難しい選択

「RTX 4070 Ti」と「RX 7900 XT」の総評ですが、正直非常に難しいです。

それぞれの競合相手に対する強みを挙げてみます。価格はほぼ同等を前提として触れていきたいと思います。

まず「RTX 4070 Ti」ですが、一番の強みはレイトレーシング性能が高い点です。両者の性能は非常に近く、基本10%以内に収まっていますが、レイトレーシングに関しては大きな差が見られ、「RTX 4070 Ti」の方が明らかに有利です。また、Radeonでは不可能なDLSSに対応できる点も魅力的です。次世代の技術を積極的に取り入れたいならやはりNVIDIAの方が一枚上手な印象です。

また、消費電力がやや少ない点でも若干優れています。ただし、レイトレーシングを除けば基本的に「RX 7900 XT」の方が少し高性能なため、効率での差は小さいため、差と言えるかはやや微妙なところです。

なのですが、やや限定的ではあるものの、動画再生支援利用時の消費電力が「RX 7900 XT」よりも大きく少ない点は少し気になる点です。ハードウェアデコードの効率が「RTX 40シリーズ」の方が大きく優れています。消費電力自体は多くはないので、基本さほど重要ではない要素ですが、「動画を再生しながらゲームをする」など、動画をしながら高負荷な処理をGPUに要求する場合には「RX 7900 XT」の方が失われるパフォーマンスがやや大きいことが予想される点は一応留意しておいて損はないかもしれません。

対する「RX 7900 XT」ですが、現在でも主流なラスタライズ性能で「RTX 4070 Ti」を少し上回るのがまず大きな強みです。差は平均で4%~9%程度となっており、大きくはないものの、2023年3月現在ではまだラスタライズが圧倒的主流ですから、依然として最重要事項だと思います。そこで勝っているのは非常に魅力的です。

更に「RX 7900 XT」のもう一つの大きな強みは、価格の割に強力なメモリです。20GBの大容量メモリが800GB/sの帯域幅で実装されています。対抗の「RTX 4070 Ti」のメモリは12GB(504GB/s)となっており、価格の割には弱いメモリ仕様となっているため、圧倒的な差があります。

恐らく「RTX 40シリーズ」で大幅に増量されたキャッシュメモリのおかげで高解像度でも思ったほどは差が出なかったものの、このメモリ性能差はその他のクリエイティブ用途や、並行して別の処理をさせる場合などには有利に働くはずなので、ゲーム以外でのハイエンド用途での汎用性を引き上げる要素としては強力だと思います。4Kクラスや高設定をメインとして利用していきたい場合には優位性があると思います。

両者のGPUに対しての評価は以上ですが、GPUそのもの以外の差として、ドライバー問題がある点にも一応触れておきたいと思います。

特に、Radeonのドライバーは以前から不具合が多く、批判や注意喚起されることが多いのは留意です。実際、NVIDIAと比べるとやや多い印象がありますし、対応も遅めな気がします。必ずしも自分の環境でトラブルが発生するかどうかはわかりませんし、安定したドライバーを維持すれば避けれる事案ですが、その際には不具合が取り残されたり、最適化不足のまま使うことになる可能性もありますから、出来れば安定した最新ドライバーに常に更新しておきたいです。

その点ではRadeonがやや不利に見えるものの、NVIDIAもGeForce Experienceの評価は微妙であり、ログインが必要な点もやや面倒な上に、NVIDIAコントロールパネルも含めてインターフェースが古くて使いにくい印象があります。Radeonはドライバの不具合自体は多めですが、インターフェースは見易くて直観的で分かり易く、設定調整はしやすいです。

恒常時の安定性を見るならやはりGeForceの方がやや有利だとは思いますが、ドライバや調整ソフトで問題があるのは双方ともという点は知っておいて損はないかと思います。


全体的な評価は以上のような感じになります。それぞれ異なる特徴がありますが、ゲームに関しては総合的に見るとどちらが有利とも言い切れない感じになっていて、難しいです。

「RTX 4070 Ti」と「RX 7900 XT」のどちらも現在は同等の価格で、総合的に見て同レベルの性能を持っており、前世代で近い価格だった「RX 6900 XT」や「RTX 3080 12GB」と比較すると、非常に効率的で優れたGPUです。特徴に違いはあるものの、総合的には差がほぼ無いため、どちらを選んでも良いかなと思ってしまいます。現状ではこの価格帯でこの2つレベルのGPU相手に競合できる代替品は無いため、どちらも非常に優秀で優れたGPUです。

煮え切らない結論で申し訳ありませんが、色々なことを考慮した結果、やはり甲乙付けるのが難しいです。上述のデータや特徴を確認し、それぞれの好みや用途に合ったものを選んで欲しいと思います。

一応個人的な所感を言うのであれば、現状個人的にはレイトレーシングを活かす機会がほとんどないですし、仮に利用できるシーンでもfps低下の方が気になるため、ネイティブ画質で利用するのが基本です。アップスケーリング技術を使えればそのリスクもある程度回避できると思いますが、その場合には逆にネイティブ画質と違いが出るのが気になる…みたいな感じの思考なので、単純にメモリと基本性能が高い「RX 7900 XT」を選択する気がします。値下がりの幅が大きく、5,000円以内の価格差で購入できるようになったのも大きいです。

ただし、逆に言えばレイトレーシングを利用する気があるならやはり「RTX 4070 Ti」の方が良いですし、DLSSの恩恵が非常に大きくなる可能性もあります。基本性能が「RX 7900 XT」に負けているとは言っても差は大きくはないこともあります。

更に、本記事では扱いませんでしたが、AI関連処理やGPUレンダリングに関してはCUDAに分があるためGeForceに優位性があります。基本性能がやや低いことと、価格の割にはメモリ性能の低い点は気になるものの、ハイエンド用途でも十分使える性能があることは変わりませんし、高い買い物は弱点が少ないことの方が魅力的だと思うので、やはり安定は「RTX 4070 Ti」だとは思います。


といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

3 COMMENTS

カルヴァドス

>高い買い物は弱点が少ないことの方が魅力的

自分がなんとなく思っていた事を言葉にしていただいたようでスッキリしました。
比較記事を見るくらい迷いがあるなら、この視点は重要ですね。
参考になりました。

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ツナギ

いつも拝見させていただいています。ありがとうございます!
お値段も近いし現在まさにこの両者で迷っていたのでとても参考になりました。
甲乙付け難いということが分かっただけでもどちらを購入しても後悔しなさそうで安心できます。前回もこちらを参考にさせてもらいsapphireのpulse5600xtを購入しとても満足だったので7900xtの同機種がもっと安かったら迷わなかったのですが(;´∀`)

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とねりん:管理人

コメントありがとうございます!励みになります。

総合的には本当にどちらでも後悔しなさそうな差だと思います。
元の希望小売価格的にはこれ以上の大きな値下がりは難しいようにも見えますが、「RTX 40シリーズ」も含め最新世代GPUは売れ行きが芳しくないらしいので、更に下がる可能性も否定はできないですね…。
先日登場した「RTX 4070」の価格が落ち着けば良さそうな感じもありますし、Radeonもまだ下位のモデルの登場を控えているので、4Kやレイトレをメインとする訳でなくて急ぎじゃないなら、もう少し待ってみるのも手かもしれませんね。

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