高性能な内蔵GPUを搭載した「Ryzen(RDNA 2/3)」や「Core Ultra」の登場によって、急激に魅力的な製品の増えた「ポータブルゲーミングPC」の2024年5月版の主要製品のざっくり比較記事です。主にコスパ重視で見ています。
ハンドヘルドPCなどとも呼ばれますが、最新の携帯型のPCについて見ていきます。
比較製品の紹介
まずは今回の記事で見ていく機種の特徴に触れていこうと思います。今回ピックアップして見ていくのは「ROG Ally」「Legion Go」「MSI Claw」「Steam Deck OLED」の4つです。
ROG Ally(RC71L)
ROG Ally(RC71L)
スペック表 | |||
CPU | Ryzen Z1 Extream (8コア16スレッド) Ryzen Z1 (6コア12スレッド) | ||
GPU | Radeon 780M (12CU/RDNA 3) Radeon 740M (4CU/RDNA 3) | ||
メモリ | 16GB LPDDR5-6400 | ||
ストレージ | 512GB SSD | ||
ディスプレイ | 7型 IPS液晶 タッチ対応 グレア 1920×1080 120Hz Gollira Glass Victus | ||
インターフェース | USB3.2 (Type-C/Gen2) ×1 ※データ転送、映像出力、給電対応 microSDカードスロット ROG XG Mobile | ||
無線機能 | Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.1 | ||
OS | Windows 11 Home | ||
バッテリー駆動時間 | 約10.2時間(JEITA Ver2.0) | ||
重量 | 約608g | ||
サイズ | 280.0×111.38×21.22~32.43 mm ※高さはスティック先端からは最大40.58mm | ||
その他 | 指紋認証 AFMF(AMDドライバによるフレーム生成)利用可能 |
いち早い発売と優れたコスパで大人気となった製品
MSI Claw(A1M)
Claw(A1M)
スペック表 | |||
CPU | Core Ultra 7 155H (16コア22スレッド) Core Ultra 5 135H (14コア18スレッド) | ||
GPU | Intel Arc 8コア | ||
メモリ | 16GB LPDDR5-6400 | ||
ストレージ | 512GB/1TB SSD | ||
ディスプレイ | 7型 IPS液晶 タッチ対応 グレア 1920×1080 120Hz | ||
インターフェース | Thunderbolt 4 USB Type-C×1 microSDカードスロット | ||
無線機能 | Wi-Fi 7 / Bluetooth 5.4 | ||
OS | Windows 11 Home | ||
バッテリー駆動時間 | 動画再生:約8時間(JEITA Ver3.0) アイドル時:約7時間(JEITA Ver3.0) | ||
重量 | 約675g | ||
サイズ | 294×117×21.2mm | ||
その他 | 指紋認証 |
Core Ultra 5モデルのゲームコスパが魅力の新製品
Legion Go(8APU1)
Legion Go(8APU1)
スペック表 | |||
CPU | Ryzen Z1 Extream (8コア16スレッド) | ||
GPU | Radeon 780M (12CU/RDNA 3) | ||
メモリ | 16GB LPDDR5X-7500 | ||
ストレージ | 512GB SSD | ||
ディスプレイ | 8.8型 IPS液晶 タッチ対応 グレア 2560×1600 144Hz Gollira Glass 5 | ||
インターフェース | USB4 40Gbps ×2 ※データ転送、映像出力、給電対応 microSDカードスロット | ||
無線機能 | Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.3 | ||
OS | Windows 11 Home | ||
バッテリー駆動時間 | 約7.9時間(JEITA Ver2.0) 動画再生:約7.2時間(JEITA Ver3.0) アイドル時:約7.6時間(JEITA Ver3.0) | ||
重量 | 約639g(タブレットのみ)約854g(タブレット+コントローラー) | ||
サイズ | 298×131×40.7 mm | ||
その他 | 指紋認証 着脱可能コントローラー 本体キックスタンド コントローラードック付属 キャリーバッグ付属 |
着脱可能なコントローラーとキックスタンド付きが魅力
Steam Deck OLED
Steam Deck OLED
参考価格
99,800円 1TB(税込み)
84,800円 512GB(税込み)
スペック表 | |||
CPU | AMD APU 6nm (Zen 2 / 4コア8スレッド) | ||
GPU | RDNA 2 / 8CU | ||
メモリ | 16GB LPDDR5-6400 | ||
ストレージ | 512GB/1TB SSD | ||
ディスプレイ | 7.4型 OLED(有機EL) タッチ対応 1280×800 90Hz 512GB:グレア 1TB:ノングレア | ||
インターフェース | USB Type-C microSDカードスロット | ||
無線機能 | Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.3 | ||
OS | SteamOS 3(Archベース) | ||
バッテリー駆動時間 | 3~12時間のゲームプレイ | ||
重量 | 約640g | ||
サイズ | 298×117×49 mm | ||
その他 | キャリングケース付属 |
価格の安さと実用コスパの高さが魅力のSteam Deck
処理性能(ベンチマーク)比較
各製品を並べて比較していきたいと思いますが、その前に処理性能(ベンチマークスコア)については、先にまとめて載せておこうかと思います。ただし、一部は推定値なので、参考程度にご覧ください。
GPU性能(ゲーム性能)
CPU名称 | スコア | 備考 |
---|---|---|
RTX 3050 6GB Mobile | エントリークラス のビデオカード | |
GTX 1650 Mobile | エントリー下位クラス のビデオカード | |
Arc 8コア GPU Core Ultra 7 155H | MSI Claw(A1M)上位モデルと 同じCPU搭載他機の平均 | |
Arc 8コア GPU Core Ultra 5 135H | MSI Claw(A1M)下位モデルと 同じCPU搭載他機の平均 | |
Radeon 780M(12CU) Ryzen Z1 Extream | ROG Ally(RC71L)上位モデル Legion Go(8APU1)搭載 | |
Radeon 660M Ryzen 5 6600U等 ※Steam Deck OLED想定 | SteamDeck OLEDのGPU と同程度の性能だったGPU | |
Radeon 740M(4CU) Ryzen 5 8540U ※Ryzen Z1想定 | ROG Ally(RC71L)下位モデル 搭載のRyzen Z1の類似CPU |
DirectX12(2560×1440)のゲーム性能ベンチマークでは、小さめの差で「Arc 8コア GPU」と「Radeon 780M」が上位に並んでいます。そのため、Steam Deck以外の3機種の高コスパモデルは、使用感としては大差ないレベルかなと思います。ただし、「Radeon 780M」にはAFMFによるフレーム生成でフレームレートを大幅に向上させることが可能なので、考慮する必要があります。重量級ゲームでは大きな差となります。
AMDのRDNA 2以降のGPUで対応可能なフレーム生成機能。ドライバによる動作のためゲーム側やモニターの設定も必要なく、非常に手軽に利用できる。ROG Allyでも
次にやや離れて「Steam Deck OLED」を想定した「Radeon 660M」が続きます。Steam Deckでは一部のベンチマークソフトへのGPU利用が制限されており、PC向けで主要なベンチマークである3D Markが機能しないため、他のGPUテストで近い性能だった「Radeon 660M」を参考に利用しています。スコア自体はかなり下ですが、低解像度ディスプレイを考慮すると、fpsは競合の上位モデルにも劣らないものが期待できると思います。
そして、「Radeon 660M」とほぼ同性能で、ROG Allyの下位モデル搭載の「Radeon 740M」が最後です。Steam Deck OLEDと違って解像度は普通にフルHDなので、こちらはパフォーマンスが大分落ちる点に注意が必要です。とはいえ、軽いゲームなら対応可能は性能はありますし、今ではAFMFもあります。セールでよく1万円引きの約8万円での販売も見られるので、その際には最も安価になりますし、コスパ的には基本おすすめではないですが、値引きやキャンペーン状況と予算によってはナシではないかなとは思います。
CPU性能:要求スペックは高くないので参考程度に
CPU名称 | スコア | 備考 |
---|---|---|
Ryzen Z1 Extream | ROG Ally(RC71L)上位モデル Legion Go(8APU1)搭載 | |
Core Ultra 7 155H | MSI Claw(A1M)上位モデルと 同じCPU搭載他機の平均 | |
Core Ultra 5 135H | MSI Claw(A1M)下位モデルと 同じCPU搭載他機の平均 | |
Ryzen 5 8540U ※Ryzen Z1想定 | ROG Ally(RC71L)下位モデル 搭載のRyzen Z1の類似CPU | |
AMD APU 4コア | SteamDeck OLED搭載 |
次にCPU性能ですが、いくら高性能になったとはいっても内蔵GPUなので、ゲームパフォーマンスはグラボと比べると低いため、ゲームにおけるCPUへの要求パフォーマンスは大分低いです。
端末の性質的に、ゲーム以外に負荷の掛かるCPU処理を行うことを想定する人もあまり居ないと思うので、こちらは正直そこまで気にしなくても良いかなと思います。
一応各数字を見てみると、「Ryzen Z1 Extream」「Core Ultra 7 155H」「Core Ultra 5 135H」は非常に高性能です。排熱性能がノートPCと比べると落ちるので、継続的な負荷には向きませんが、重めの処理でも十分に使える性能があります。
「Ryzen Z1」想定の「Ryzen 5 8540U」は上位3つよりも大分落ちるものの、モバイル端末としては十分高性能と言える性能です。重めの処理でも、メイン用途でなければ十分使える性能です。
最後に「Steam Deck OLED」ですが、CPUは4コアしかないので、性能はかなり落ちます。競合モデルの上位品と比べると3分の1以下と圧倒的に劣る性能です。内蔵GPUとの組み合わせによるゲーム性能では、基本ネックにはならない程度の性能ではあるかと思いますが、中にはCPU性能がやや重要なゲームもありますから、不安はある性能です。
各製品の比較
ここからは各製品の各種スペックを見て比較していきます。ただし、一度に比較するには数が多いのと、前述のベンチマークスコアを見ると分かりますが、2モデルだけ性能がガクッと落ちるので、高性能モデル(基本10万円以上)と、価格重視モデル(9万円以下)の2つに分けて見ていきます。
高性能モデル(基本10万円以上)
まずは高性能モデルからです。対象モデルは「ROG ALLY(Ryzen Z1 Extream)」「Legion Go(Ryzen Z1 Extream)」「MSI Claw(Core Ultra 7 155H、Core Ultra 5 135H)」の4つです。
下記に主要な仕様を表にまとめたので、そちらを見ながら比較していきましょう。
機種 | ROG Ally | MSI Claw(135H) | Legion Go | MSI Claw(155H) |
---|---|---|---|---|
参考価格 ※2024年5月時点 | ¥109,800 | ¥99,800 | ¥134,860 | ¥139,800 |
CPU (Cinebench R23 Multi) | Ryzen Z1 Extream 8コア 16スレッド (約14,960) | Core Ultra 5 135H 14コア(4P+8E+2LP E) 18スレッド (約13,990) | Ryzen Z1 Extream 8コア 16スレッド (約14,960) | Core Ultra 7 155H 16コア(6P+8E+2LP E) 22スレッド (約14,654) |
GPU (3DMark TimeSpy Graphics) | Radeon 780M (約2,854) | Arc 8コア GPU (約3,209) | Radeon 780M (約2,854) | Arc 8コア GPU (約3,380) |
メモリ | 16GB LPDDR5-6400 | 16GB LPDDR5-6400 | 16GB LPDDR5X-7500 | 16GB LPDDR5-6400 |
ストレージ | 512GB SSD | 512GB SSD | 512GB SSD | 1TB SSD |
ディスプレイ | 7型 IPS液晶 1920×1080 120Hz タッチ対応 グレア Gollira Glass Victus | 7型 IPS液晶 1920×1080 120Hz タッチ対応 グレア | 8.8型 IPS液晶 2560×1600 144Hz タッチ対応 グレア Gollira Glass 5 | 7型 IPS液晶 1920×1080 120Hz タッチ対応 グレア |
インターフェース | USB3.2 (Type-C/Gen2) ×1 microSDカードリーダー ROG XG Mobile | Thunderbolt 4対応 USB Type-C×1 microSDカードリーダー | USB4 Type-C 40Gbps ×2 microSDカードリーダー | Thunderbolt 4対応 USB Type-C×1 microSDカードリーダー |
無線機能 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.1 | Wi-Fi 7 Bluetooth 5.4 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.3 | Wi-Fi 7 Bluetooth 5.4 |
バッテリー容量 駆動時間 | 40Wh | 53Whr | 49.2Whr | 53Whr |
重量 | 約608g | 約675g | 約854g | 約675g |
サイズ 横幅 奥行 高さ | 280 mm 111.38 mm 21.22~32.43mm ※スティック40.58mm | 294 mm 117 mm 21.2 mm | 298 mm 131 mm 40.7 mm | 294 mm 117 mm 21.2 mm |
生体認証 | 指紋認証 | 指紋認証 | 指紋認証 | 指紋認証 |
その他 | AFMF | キャリングケース付属 | 着脱可能コントローラー 本体キックスタンド コントローラードック付属 キャリーバッグ付属 (AFMFは記事執筆時は未対応。 しかし要件は満たしている) | キャリングケース付属 |
このモデル数を各項目全部見ていくと長くなるので、全体的に触れていきます。
まず処理性能ですが、ベンチマークスコア的にはどれも使用感は大差ありません。CPUとGPUともに差は小さめです。なので、価格とその他の部分が大事になってきます。
まず、ゲーム性能コスパが最も良いのは「Core Ultra 5 135H」搭載の「MSI Claw」です。約10万円という価格ながら、他モデルと同等クラスのゲーム性能を備えており、これは一目瞭然です。弱点らしい弱点もなく、強いていうならサイズの割にはやや重いのと、画面のガラスに耐衝撃や耐傷性を保証するGollira Glass等の表記が無いくらいですが、そこまでのネックでもない部分だと思いますし、コスパ重視で迷っているなら「Core Ultra 5 135H」搭載の「MSI Claw」を選ぶのがおすすめです。
「Core Ultra 7 155H」モデルの方は、ゲーム性能がほぼ同等なのに関わらず4万円も高価な約14万円というのはさすがに厳しい印象です。SSDが1TBあるのは嬉しいですが、SDカードで後から対応も可能な部分なので優位性を見出しにくいです。一部ショップでは既に約13万円で値下げされて販売されていますが、その価格でもまだコスパ的には正直厳しそうな印象です。
性能コスパの2番目は「ROG Ally」です。昨年(2023年)の携帯型ゲーミングPCの流行の引っ張ったと言っても良い存在だと思いますが、未だにそのコスパの良さは健在です。純粋な性能コスパでは上述の「MSI Claw(Core Ultra 5 135H)」に負けるものの、こちらではRDNA 2以降のRadeonで利用できるフレーム生成機能「AFMF」を利用できるため、それ込みでの最大パフォーマンスでは上回ることも可能となっています。
また、外装の色が今回紹介する機種の中では唯一のホワイトです。最近は白系のガジェットやPCが人気な印象がありますから、流行にも適した見た目もプラス要素かもしれません。実は画面に「Gollira Glass Victus」が採用されていて傷が付きにくい点も、見た目にこだわる人には嬉しい仕様だと思います。バッテリー容量が少なめなので、高負荷時のバッテリー駆動時間は短めな点は注意が必要ですが、今でも普通に魅力的な製品です。
最後に触れるのは「Legion Go」です。プロセッサーはROG Allyと同じ「Ryzen Z1 Extream」なので、13万円台という価格を考えれば性能コスパは正直悪いです。
しかし、本機の魅力はそこではなく汎用性の高さです。他機と違いコントローラーは着脱式な他、本体にキックスタンドを備えており、置いて状態でのゲームプレイやタブレットとしての利用も視野に入れることができます。画面もそのためか、他機よりやや大きめの8.8インチとなっています。
他にも、解像度がフルHDよりも高い2560×1600だったり、リフレッシュレートが120Hzではなく144Hzだったり、Gollira Glass 5を採用していたり、USB Type-Cポートが2個あったり、メモリが非常に高速なLPDDR5X-7500採用だったりなど、あちこちで他機よりも少し良い点が散りばめられています。
解像度やリフレッシュレートの点は電力消費の点でマイナス面にもなり得るので、プラス要素としては微妙ではあるものの、大きめの画面とキックスタンドと着脱式コントローラーはかなり便利だと思うので、そこを魅力的に感じるなら選択肢に入るかもしれません。
価格重視モデル(9万円以下)
次に価格重視モデルを見ていきます。対象モデルは「ROG ALLY(Ryzen Z1)」「Steam Deck OLED」の2つです。
下記に主要な仕様を表にまとめたので、そちらを見ながら比較していきましょう。
機種 | ROG ALLY | Steam Deck OLED |
---|---|---|
参考価格 ※2024年5月時点 | ¥89,800 ※よくセールで1万円引き | ¥99,800:1TB ¥84,800:512GB |
CPU (Cinebench R23 Multi) | Ryzen Z1 6コア 12スレッド (約9,632) | AMD APU 4コア 8スレッド (約3,984) |
GPU (3DMark TimeSpy Graphics) | Radeon 740M(4CU) (約1,534) | RDNA 2 / 8CU (推定 1,550 程度) |
メモリ | 16GB LPDDR5-6400 | 16GB LPDDR5-6400 |
ストレージ | 512GB SSD | 512GB/1TB SSD |
ディスプレイ | 7型 IPS液晶 1920×1080 120Hz タッチ対応 グレア Gollira Glass Victus | 7.4型 OLED 1280×800 90Hz タッチ対応 グレア/ノングレア ※1TBモデルの場合ノングレア |
インターフェース | USB3.2 (Type-C/Gen2) ×1 microSDカードリーダー ROG XG Mobile | USB Type-C×1 microSDカードリーダー |
無線機能 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.1 | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.3 |
バッテリー容量 駆動時間 | 40Wh | 50Whr |
重量 | 約608g | 約640g |
サイズ 横幅 奥行 高さ | 280 mm 111.38 mm 21.22~32.43mm ※スティック40.58mm | 298 mm 117 mm 49 mm |
生体認証 | 指紋認証 | |
その他 | キャリングケース付属 (AFMFは記事執筆時は未対応。 しかし要件は満たしている) |
始めに言っておくと、9万円以下の2モデルは性能コスパという点ではやや劣ります。それを踏まえた上でご覧ください。
まず処理性能ですが、「Steam Deck OLED」のCPU性能が低い点は知っておく必要があります。一応、ほとんどのゲームではGPU負荷の方が圧倒的に大きいですし、内蔵GPUレベルの性能ならCPU性能はそこまで要らないので、ゲームではほとんどネックにはならないという点は考慮すべきですが、CPU性能が重要なゲームも中にはありますし、ドッキングハブ等を用いたPCのような運用を考えた場合にはやはり不安が残るので、留意しておくべきかなと思います。
次にGPU性能ですが、こちらは両者同等レベルで、先に比較した高性能モデルと比べると約半分のグラフィック性能です。大幅に性能は落ちます。「ROG Ally(Z1 Extream)」や「MSI Claw(Core Ultra 5 135H)」と比べると価格差が1~2万円しかないのに、ゲーム性能が半減ということで、ゲームコスパも明らかに劣ります。これが前置きしてコスパが劣ると言った理由です。
ただし、「Steam Deck OLED」の方に関しては解像度が1280×800と低く、画素数はフルHDの約半分です。性能が半分ながら負荷が半分なので、実用性能的には同等とも言えると思います。それでいて価格は安いので、携帯モードでの使用に限るなら、価格を考えれば実用コスパはトップだと思います。また、OLED(有機EL)ディスプレイ採用なので、解像度こそ低いものの、色表現は素晴らしいです。用途や考え方次第ですが、あくまでサブのゲーム機として割り切るなら節約も出来る優秀な選択肢だと思います。
しかし、後に外部ディスプレイで使いたいとなった場合にはフルHD以上が基本以上でしょうから、そのような場合での不安が残る分、個人的には手放しでは褒められないかなという印象です。SteamOSという特殊なOSも汎用性には乏しいとも言えますし、事前に運用方法をよく考えて選択することをおすすめしたい製品です。
次に「ROG Ally(Ryzen Z1)」のGPUについてですが、正直ゲームコスパは厳しいです。フレーム生成機能の「AFMF」が使えるようになったことで多少使い勝手は良くなったものの、それ込みでもやはり厳しめかなと思います。それはスペック表を見れば明らかなので、案の定「Ryzen Z1 Extream」搭載モデルと比べて不人気な感じが出ており、頻繁に1万円引きセールが行われています。
1万円値引き後なら約8万円となり、「Steam Deck OLED(512GB)」よりも安価になるため、重めのゲームでは「AFMF」頼みになるものの、割り切って使う上で節約目的なら一応無くはない…かもしれません。とはいえ、やはりコスパ的には正直微妙かなと思います。
良い点・気になる点
ここまでの内容を踏まえて、各製品の他機に対しての良い点(優位性)と、気になる点をまとめています。
良い点 | 気になる点 | |
---|---|---|
ROG Ally Ryzen Z1 Extream |
|
|
MSI Claw Core Ultra 5 135H |
|
|
Legion Go Ryzen Z1 Extream |
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|
MSI Claw Core Ultra 7 155H |
|
|
ROG Ally Ryzen Z1 |
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|
Steam Deck OLED 4コアCPU / 8CU GPU |
|
|
まとめ:性能コスパは「MSI Claw(Core Ultra 5)」が一歩リードだが、AFMFをどう考えるかにもよる
最後にまとめですが、純粋な処理性能コスパに関しては「MSI Claw」の「Core Ultra 5 135H」モデルが一番良いです。
約10万円という価格とは思えないコスパで、バッテリー容量も一番多いですし、特にこだわりがなく迷っているならおすすめできるモデルだと思います。少し気になるのはAFMFの存在で、Intel側ではそこまで手軽なフレーム生成やアップスケーリングがまだありません。今後対抗して追加される可能性もあるものの、特に重量級のゲームを遊ぶ場合には結構大きな差となる可能性もある点は一応留意です。また、画面の耐傷性などについての表記も見当たらないのも若干のコスト削減ポイントであり、タッチ機能を多用するならフィルム等の用意しておきたいのも若干の面倒くささがあります。
そして、純性能では大分劣るものの、「Steam Deck OLED」も本体のディスプレイ利用時の実用コスパという点においては非常に優れており、価格も安価なので魅力的です。CPU性能が圧倒的に低い点やWindowsでは無いのは懸念点ですが、ハードウェア要件は満たしているはずのAFMF対応も期待できますし、あくまでサブの携帯型ゲーム機としての運用を割り切れるなら非常に丁度良い選択肢だと思います。
他機種についてはこれまでに十分触れたので省略しますが、やはりいち早く発売されて大人気だった「ROG Ally」は未だにコスパ面では安定の選択と言える状況でしたし、一部のコスパを悪いモデルを除き、それぞれ長所があって、良い勝負だなと思いました。各機種の上位モデルの基本性能はどれも大差がないこともあって、迷ってしまうのも無理はない内容です。
全体のGPU性能が大きく上昇したこの段階から、またすぐに急激に上昇というのはさすがにない…と思うので、時期的にも悪くは無いのかなと思います。円安の進行も気になるところですが、ゆっくり検討したり、キャンペーンやセールを待つのも良いかなと思います。
それでは記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。