人気のポータブルゲーミングPC比較【2024年5月版】

高性能な内蔵GPUを搭載した「Ryzen(RDNA 2/3)」や「Core Ultra」の登場によって、急激に魅力的な製品の増えた「ポータブルゲーミングPC」の2024年5月版の主要製品のざっくり比較記事です。主にコスパ重視で見ています。

ハンドヘルドPCなどとも呼ばれますが、最新の携帯型のPCについて見ていきます。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2024年5月2日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

比較製品の紹介

まずは今回の記事で見ていく機種の特徴に触れていこうと思います。今回ピックアップして見ていくのは「ROG Ally」「Legion Go」「MSI Claw」「Steam Deck OLED」の4つです。

ROG Ally(RC71L)

ROG Ally(RC71L)

参考価格

109,800円
Ryzen Z1 Extream(税込み)
89,800円 Ryzen Z1 (税込み)

※リンクはRyzen Z1 Extreamモデル

スペック表
CPURyzen Z1 Extream
(8コア16スレッド)
Ryzen Z1
(6コア12スレッド)
GPURadeon 780M
(12CU/RDNA 3)
Radeon 740M
(4CU/RDNA 3)
メモリ16GB LPDDR5-6400
ストレージ512GB SSD
ディスプレイ7型 IPS液晶
タッチ対応 グレア
1920×1080 120Hz
Gollira Glass Victus
インターフェースUSB3.2 (Type-C/Gen2)  ×1
※データ転送、映像出力、給電対応
microSDカードスロット
ROG XG Mobile
無線機能Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.1
OSWindows 11 Home
バッテリー駆動時間約10.2時間(JEITA Ver2.0)
重量約608g
サイズ280.0×111.38×21.22~32.43 mm
※高さはスティック先端からは最大40.58mm
その他指紋認証
AFMF(AMDドライバによるフレーム生成)利用可能

いち早い発売と優れたコスパで大人気となった製品

「ROG Ally(RC71L)」は本記事で比較する製品の中では最も発売が早く、その発売の早さとコスパの良さから非常に人気となった製品です。
上位モデルでは「Ryzen Z1 Extream」を採用しながらも、価格は約11万円と比較的安価でコスパが良いです。2024年5月現在で見てもそのコスパは優れており、コスパ重視なら有力な製品となっています。
GPUには「Radeon 780M」が採用されており、内蔵GPUとしては非常に優れた性能を発揮します。また、最近「AFMF」というフレーム生成機能も利用できるようになり、実用性能コスパが更に上がりました。

MSI Claw(A1M)

Claw(A1M)

参考価格

139,800円
Core Ultra 7 155H(税込み)
99,800円 Core Ultra 135H (税込み)

※リンクはCore Ultra 5 125Hモデル

スペック表
CPUCore Ultra 7 155H
(16コア22スレッド)
Core Ultra 5 135H
(14コア18スレッド)
GPUIntel Arc 8コア
メモリ16GB LPDDR5-6400
ストレージ512GB/1TB SSD
ディスプレイ7型 IPS液晶
タッチ対応 グレア
1920×1080 120Hz
インターフェースThunderbolt 4 USB Type-C×1
microSDカードスロット
無線機能Wi-Fi 7 / Bluetooth 5.4
OSWindows 11 Home
バッテリー駆動時間動画再生:約8時間(JEITA Ver3.0)
アイドル時:約7時間(JEITA Ver3.0)
重量約675g
サイズ294×117×21.2mm
その他指紋認証

Core Ultra 5モデルのゲームコスパが魅力の新製品

「MSI Claw(A1M)」は記事執筆時点では発売から1ヶ月程度しか経っていない、今回比較する中では最も新しい製品です。CPUには「Core Ultra 100H」を搭載し、ROG ALLYなどに搭載の「Ryzen Z1 Extream」を若干上回るゲーム性能を発揮します。
この製品のポイントは、「Core Ultra 7 155H」と「Core Ultra 5 135H」を搭載した2モデルがラインナップされていますが、この二つはGPUのコア数が変わらないので、安価な下位モデルでもゲーム性能はほぼ同等という点です。価格はセールなどにより変動しますが、記事執筆時点では約10万円となっており、ゲームコスパはCore Ultra 5の方が強力ということは留意しておきたいです。
Thunderbolt 4やWi-Fi 7など高速な通信規格にも対応している点もあり、やや遅れての登場ですが、コスパ重視の方には非常に魅力的な製品です。
ただし、今回比較する製品で唯一のIntel製品となっており、「Core Ultra 100H」は他製品で主流な「Zen 4 Ryzen」よりも高負荷時のワットパフォーマンスや消費電力で劣る点が気になるところです。「MSI Claw(A1M)」はサイズの割にはしっかりとした冷却機構を取り入れているのが魅力な反面、ファンノイズが大きい可能性があることや、それほどの冷却性能が必要ということでもあると思うので、電力面が懸念されます。
また、AMD(Zen 2以降)のGPUでは、「AFMF」というフレーム生成機能を手軽に利用できるため、負荷軽減やフレームレート向上に一役買ってくれるのですが、2024年5月時点ではIntel側にはそこまで便利なフレーム生成機能が無いので、ここも特に性能面が十分でないモバイルデバイスとしては大きなマイナス面となる可能性があります。
ベンチマークとカタログスペックから見たコスパは間違いなく魅力的ですが、実用面を考えたときにどうなるかというのが争点となりそうな製品です。

Legion Go(8APU1)

Legion Go(8APU1)

参考価格

134,860円
Ryzen Z1 Extream(税込み)

スペック表
CPURyzen Z1 Extream
(8コア16スレッド)
GPURadeon 780M
(12CU/RDNA 3)
メモリ16GB LPDDR5X-7500
ストレージ512GB SSD
ディスプレイ8.8型 IPS液晶
タッチ対応 グレア
2560×1600 144Hz
Gollira Glass 5
インターフェースUSB4 40Gbps  ×2
※データ転送、映像出力、給電対応
microSDカードスロット
無線機能Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.3
OSWindows 11 Home
バッテリー駆動時間約7.9時間(JEITA Ver2.0)
動画再生:約7.2時間(JEITA Ver3.0)
アイドル時:約7.6時間(JEITA Ver3.0)
重量約639g(タブレットのみ)約854g(タブレット+コントローラー)
サイズ298×131×40.7 mm
その他指紋認証
着脱可能コントローラー
本体キックスタンド
コントローラードック付属
キャリーバッグ付属

着脱可能なコントローラーとキックスタンド付きが魅力

「Legion Go(8APU1)」はNitntendo Switchのように、左右のコントローラー部分が着脱可能で、本体にキックスタンドを搭載しているのが特徴のポータブルPCです。画面も置いての利用も想定して、やや大きめの8.8インチサイズとなっています。

着脱可能なコントローラーとキックスタンド

また、マウスのようなポインタ操作が可能になるコントローラードックとキャリーバッグが付属しており、別のオプション品を用意せずとも幅広い使い方が用意されているのが魅力です。
CPUには「ROG ALLY(RC71L)」と同じ「Ryzen Z1 Extream」が採用されていますが、高速なLPDDR5X-7500採用のため、ゲーム性能は若干上回ります。その他にも、画面解像度が2560×1600と高く、リフレッシュレートも144Hzと少し高めの仕様になっており、さまざまな面で競合製品よりも少しずつ優位性を持たせているのが魅力の製品です。
その代わり、価格は同等性能のCPU搭載の競合機よりはやや高価な13万円台となっている点が悩みどころです。とはいえ、「持って使う」以外の使い方も想定して長期にわたって利用したい場合には嬉しい機能性の製品だと思います。

Steam Deck OLED

Steam Deck OLED

参考価格

99,800円
1TB(税込み)
84,800円  512GB(税込み)

スペック表
CPUAMD APU 6nm
(Zen 2 / 4コア8スレッド)
GPURDNA 2 / 8CU
メモリ16GB LPDDR5-6400
ストレージ512GB/1TB SSD
ディスプレイ7.4型 OLED(有機EL)
タッチ対応
1280×800 90Hz
512GB:グレア
1TB:ノングレア
インターフェースUSB Type-C
microSDカードスロット
無線機能Wi-Fi 6E / Bluetooth 5.3
OSSteamOS 3(Archベース)
バッテリー駆動時間3~12時間のゲームプレイ
重量約640g
サイズ298×117×49 mm
その他キャリングケース付属

価格の安さと実用コスパの高さが魅力のSteam Deck

「SteamDeck OLED」はValve社開発の製品です。OSには「SteamOS 3」という独自OS(ほぼオープンソースだけど)を採用し、プロセッサーもカスタム仕様のものを採用するという、他の競合機としては少し変わった気色のゲーム機となっています。
色々と特別な仕様がありますが、一番のわかりやすい特徴といえば、低解像度ディスプレイで要求スペックを下げて、高いゲームパフォーマンスと低価格を実現していることです。
競合機ではフルHD(1920×1080)が主流な中、Steam Deck OLEDでは1280×800という低解像度を採用し、画素数は約半分になっています。これにより映像品質は低下しますが、要求スペックが大幅に下がるため、プロセッサーの価格を少し抑えることができ、本体価格も比較的低価格となっています。
また、映像品質は低下するものの、7.4インチの小さな画面では使用感に大きな影響は無いレベルとなっており、色の再現性などはOLEDディスプレイでむしろ強化されているので、実用性と価格のバランスを重視した仕様といえます。
GPUにはAMDのRDNA 2アーキテクチャの8CU GPUが搭載されており、主要CPUでは搭載例のない珍しい仕様のものとなっています。ゲーム性能は「Radeon 780M 12CU(Ryzen Z1 Extream)」や「Core Ultra」といった競合モデルの上位には劣るものの、一つ前の世代ならトップクラスの性能を持つレベルで十分に高いです。低解像度ディスプレイ駆動なら高いパフォーマンスを実現することができ、今回比較する製品の中では、携帯モード(本体ディスプレイ使用)に限った実用性能コスパならトップと言えるレベルです。
ただし、CPUの方は4コアしかないため、競合モデルに対して明らかに劣る点は注意が必要です。内蔵GPUレベルのゲーム性能ならほとんど影響はないレベルの性能は備えているものの、一部のCPU性能が重要なゲームではネックとなる可能性もある他、ゲーム以外の重いCPU処理には適していない点は要注意です。

処理性能(ベンチマーク)比較

各製品を並べて比較していきたいと思いますが、その前に処理性能(ベンチマークスコア)については、先にまとめて載せておこうかと思います。ただし、一部は推定値なので、参考程度にご覧ください。


GPU性能(ゲーム性能)

3DMark TimeSpy graphics
CPU名称スコア備考

RTX 3050 6GB Mobile
(参考)

5345
エントリークラス
のビデオカード

GTX 1650 Mobile
(参考)

3453
エントリー下位クラ
のビデオカード
Arc 8コア GPU
Core Ultra 7 155H
3380
MSI Claw(A1M)上位モデル
同じCPU搭載他機の平均
Arc 8コア GPU
Core Ultra 5 135H
3209
MSI Claw(A1M)下位モデル
同じCPU搭載他機の平均
Radeon 780M(12CU)
Ryzen Z1 Extream
2854
ROG Ally(RC71L)上位モデル
Legion Go(8APU1)搭載
Radeon 660M
Ryzen 5 6600U等
※Steam Deck OLED想定
1558
SteamDeck OLEDのGPU
と同程度の性能だったGPU
Radeon 740M(4CU)
Ryzen 5 8540U
※Ryzen Z1想定
1534
ROG Ally(RC71L)下位モデル
搭載のRyzen Z1の類似CPU

DirectX12(2560×1440)のゲーム性能ベンチマークでは、小さめの差で「Arc 8コア GPU」と「Radeon 780M」が上位に並んでいます。そのため、Steam Deck以外の3機種の高コスパモデルは、使用感としては大差ないレベルかなと思います。ただし、「Radeon 780M」にはAFMFによるフレーム生成でフレームレートを大幅に向上させることが可能なので、考慮する必要があります。重量級ゲームでは大きな差となります。

AFMF(AMD Fluid Motion Frames)

AMDのRDNA 2以降のGPUで対応可能なフレーム生成機能。ドライバによる動作のためゲーム側やモニターの設定も必要なく、非常に手軽に利用できる。ROG Allyでも

次にやや離れて「Steam Deck OLED」を想定した「Radeon 660M」が続きます。Steam Deckでは一部のベンチマークソフトへのGPU利用が制限されており、PC向けで主要なベンチマークである3D Markが機能しないため、他のGPUテストで近い性能だった「Radeon 660M」を参考に利用しています。スコア自体はかなり下ですが、低解像度ディスプレイを考慮すると、fpsは競合の上位モデルにも劣らないものが期待できると思います。

そして、「Radeon 660M」とほぼ同性能で、ROG Allyの下位モデル搭載の「Radeon 740M」が最後です。Steam Deck OLEDと違って解像度は普通にフルHDなので、こちらはパフォーマンスが大分落ちる点に注意が必要です。とはいえ、軽いゲームなら対応可能は性能はありますし、今ではAFMFもあります。セールでよく1万円引きの約8万円での販売も見られるので、その際には最も安価になりますし、コスパ的には基本おすすめではないですが、値引きやキャンペーン状況と予算によってはナシではないかなとは思います。


CPU性能:要求スペックは高くないので参考程度に

Cinebench R23 Multi
CPU名称スコア備考
Ryzen Z1 Extream
14960
ROG Ally(RC71L)上位モデル
Legion Go(8APU1)搭載
Core Ultra 7 155H
14654
MSI Claw(A1M)上位モデル
同じCPU搭載他機の平均
Core Ultra 5 135H
13990
MSI Claw(A1M)下位モデル
同じCPU搭載他機の平均
Ryzen 5 8540U
※Ryzen Z1想定
9632
ROG Ally(RC71L)下位モデル
搭載のRyzen Z1の類似CPU
AMD APU 4コア
3984
SteamDeck OLED搭載

次にCPU性能ですが、いくら高性能になったとはいっても内蔵GPUなので、ゲームパフォーマンスはグラボと比べると低いため、ゲームにおけるCPUへの要求パフォーマンスは大分低いです。

端末の性質的に、ゲーム以外に負荷の掛かるCPU処理を行うことを想定する人もあまり居ないと思うので、こちらは正直そこまで気にしなくても良いかなと思います。

一応各数字を見てみると、「Ryzen Z1 Extream」「Core Ultra 7 155H」「Core Ultra 5 135H」は非常に高性能です。排熱性能がノートPCと比べると落ちるので、継続的な負荷には向きませんが、重めの処理でも十分に使える性能があります。

「Ryzen Z1」想定の「Ryzen 5 8540U」は上位3つよりも大分落ちるものの、モバイル端末としては十分高性能と言える性能です。重めの処理でも、メイン用途でなければ十分使える性能です。

最後に「Steam Deck OLED」ですが、CPUは4コアしかないので、性能はかなり落ちます。競合モデルの上位品と比べると3分の1以下と圧倒的に劣る性能です。内蔵GPUとの組み合わせによるゲーム性能では、基本ネックにはならない程度の性能ではあるかと思いますが、中にはCPU性能がやや重要なゲームもありますから、不安はある性能です。

各製品の比較

ここからは各製品の各種スペックを見て比較していきます。ただし、一度に比較するには数が多いのと、前述のベンチマークスコアを見ると分かりますが、2モデルだけ性能がガクッと落ちるので、高性能モデル(基本10万円以上)と、価格重視モデル(9万円以下)の2つに分けて見ていきます。

高性能モデル(基本10万円以上)

まずは高性能モデルからです。対象モデルは「ROG ALLY(Ryzen Z1 Extream)」「Legion Go(Ryzen Z1 Extream)」「MSI Claw(Core Ultra 7 155H、Core Ultra 5 135H)」の4つです。

下記に主要な仕様を表にまとめたので、そちらを見ながら比較していきましょう。

機種
ROG Ally

MSI Claw(135H)

Legion Go

MSI Claw(155H)
参考価格
※2024年5月時点
¥109,800¥99,800¥134,860¥139,800
CPU
(Cinebench R23 Multi)
Ryzen Z1 Extream
8コア
16スレッド
(14,960)
Core Ultra 5 135H
14コア(4P+8E+2LP E)
18スレッド
(13,990)
Ryzen Z1 Extream
8コア
16スレッド
(14,960)
Core Ultra 7 155H
16コア(6P+8E+2LP E)
22スレッド
(14,654)
GPU
(3DMark TimeSpy Graphics)
Radeon 780M
(2,854)
Arc 8コア GPU
(3,209)
Radeon 780M
(2,854)
Arc 8コア GPU
(3,380)
メモリ16GB
LPDDR5-6400
16GB
LPDDR5-6400
16GB
LPDDR5X-7500
16GB
LPDDR5-6400
ストレージ512GB SSD512GB SSD512GB SSD1TB SSD
ディスプレイ7型 IPS液晶
1920×1080
120Hz
タッチ対応
グレア
Gollira Glass Victus
7型 IPS液晶
1920×1080
120Hz
タッチ対応
グレア
8.8型 IPS液晶
2560×1600
144Hz
タッチ対応
グレア
Gollira Glass 5
7型 IPS液晶
1920×1080
120Hz
タッチ対応
グレア
インターフェースUSB3.2 (Type-C/Gen2) ×1
microSDカードリーダー
ROG XG Mobile
Thunderbolt 4対応
USB Type-C×1
microSDカードリーダー
USB4 Type-C 40Gbps ×2
microSDカードリーダー
Thunderbolt 4対応
USB Type-C×1
microSDカードリーダー
無線機能Wi-Fi 6E
Bluetooth 5.1
Wi-Fi 7
Bluetooth 5.4
Wi-Fi 6E
Bluetooth 5.3
Wi-Fi 7
Bluetooth 5.4
バッテリー容量
駆動時間
40Wh53Whr49.2Whr53Whr
重量約608g約675g約854g約675g
サイズ
横幅
奥行
高さ
280 mm
111.38 mm
21.22~32.43mm
※スティック40.58mm
294 mm
117 mm
21.2 mm
298 mm
131 mm
40.7 mm
294 mm
117 mm
21.2 mm
生体認証指紋認証指紋認証指紋認証指紋認証
その他AFMFキャリングケース付属着脱可能コントローラー
本体キックスタンド
コントローラードック付属
キャリーバッグ付属
(AFMFは記事執筆時は未対応。
しかし要件は満たしている)
キャリングケース付属

このモデル数を各項目全部見ていくと長くなるので、全体的に触れていきます。

まず処理性能ですが、ベンチマークスコア的にはどれも使用感は大差ありません。CPUとGPUともに差は小さめです。なので、価格とその他の部分が大事になってきます。

まず、ゲーム性能コスパが最も良いのは「Core Ultra 5 135H」搭載の「MSI Claw」です。約10万円という価格ながら、他モデルと同等クラスのゲーム性能を備えており、これは一目瞭然です。弱点らしい弱点もなく、強いていうならサイズの割にはやや重いのと、画面のガラスに耐衝撃や耐傷性を保証するGollira Glass等の表記が無いくらいですが、そこまでのネックでもない部分だと思いますし、コスパ重視で迷っているなら「Core Ultra 5 135H」搭載の「MSI Claw」を選ぶのがおすすめです。

「Core Ultra 7 155H」モデルの方は、ゲーム性能がほぼ同等なのに関わらず4万円も高価な約14万円というのはさすがに厳しい印象です。SSDが1TBあるのは嬉しいですが、SDカードで後から対応も可能な部分なので優位性を見出しにくいです。一部ショップでは既に約13万円で値下げされて販売されていますが、その価格でもまだコスパ的には正直厳しそうな印象です。

性能コスパの2番目は「ROG Ally」です。昨年(2023年)の携帯型ゲーミングPCの流行の引っ張ったと言っても良い存在だと思いますが、未だにそのコスパの良さは健在です。純粋な性能コスパでは上述の「MSI Claw(Core Ultra 5 135H)」に負けるものの、こちらではRDNA 2以降のRadeonで利用できるフレーム生成機能「AFMF」を利用できるため、それ込みでの最大パフォーマンスでは上回ることも可能となっています。

また、外装の色が今回紹介する機種の中では唯一のホワイトです。最近は白系のガジェットやPCが人気な印象がありますから、流行にも適した見た目もプラス要素かもしれません。実は画面に「Gollira Glass Victus」が採用されていて傷が付きにくい点も、見た目にこだわる人には嬉しい仕様だと思います。バッテリー容量が少なめなので、高負荷時のバッテリー駆動時間は短めな点は注意が必要ですが、今でも普通に魅力的な製品です。

最後に触れるのは「Legion Go」です。プロセッサーはROG Allyと同じ「Ryzen Z1 Extream」なので、13万円台という価格を考えれば性能コスパは正直悪いです。

しかし、本機の魅力はそこではなく汎用性の高さです。他機と違いコントローラーは着脱式な他、本体にキックスタンドを備えており、置いて状態でのゲームプレイやタブレットとしての利用も視野に入れることができます。画面もそのためか、他機よりやや大きめの8.8インチとなっています。

他にも、解像度がフルHDよりも高い2560×1600だったり、リフレッシュレートが120Hzではなく144Hzだったり、Gollira Glass 5を採用していたり、USB Type-Cポートが2個あったり、メモリが非常に高速なLPDDR5X-7500採用だったりなど、あちこちで他機よりも少し良い点が散りばめられています。

解像度やリフレッシュレートの点は電力消費の点でマイナス面にもなり得るので、プラス要素としては微妙ではあるものの、大きめの画面とキックスタンドと着脱式コントローラーはかなり便利だと思うので、そこを魅力的に感じるなら選択肢に入るかもしれません。


価格重視モデル(9万円以下)

次に価格重視モデルを見ていきます。対象モデルは「ROG ALLY(Ryzen Z1)」「Steam Deck OLED」の2つです。

下記に主要な仕様を表にまとめたので、そちらを見ながら比較していきましょう。

機種
ROG ALLY

Steam Deck OLED
参考価格
※2024年5月時点
¥89,800
※よくセールで1万円引き
¥99,800:1TB
¥84,800:512GB
CPU
(Cinebench R23 Multi)
Ryzen Z1
6コア
12スレッド
(9,632)
AMD APU
4コア
8スレッド
(3,984)
GPU
(3DMark TimeSpy Graphics)
Radeon 740M(4CU)
(1,534)
RDNA 2 / 8CU
(推定 1,550 程度)
メモリ16GB
LPDDR5-6400
16GB
LPDDR5-6400
ストレージ512GB SSD512GB/1TB SSD
ディスプレイ7型 IPS液晶
1920×1080
120Hz
タッチ対応
グレア
Gollira Glass Victus
7.4型 OLED
1280×800
90Hz
タッチ対応
グレア/ノングレア
※1TBモデルの場合ノングレア
インターフェースUSB3.2 (Type-C/Gen2) ×1
microSDカードリーダー
ROG XG Mobile
USB Type-C×1
microSDカードリーダー
無線機能Wi-Fi 6E
Bluetooth 5.1
Wi-Fi 6E
Bluetooth 5.3
バッテリー容量
駆動時間
40Wh50Whr
重量約608g約640g
サイズ
横幅
奥行
高さ
280 mm
111.38 mm
21.22~32.43mm
※スティック40.58mm
298 mm
117 mm
49 mm
生体認証指紋認証
その他キャリングケース付属
(AFMFは記事執筆時は未対応。
しかし要件は満たしている)

始めに言っておくと、9万円以下の2モデルは性能コスパという点ではやや劣ります。それを踏まえた上でご覧ください。

まず処理性能ですが、「Steam Deck OLED」のCPU性能が低い点は知っておく必要があります。一応、ほとんどのゲームではGPU負荷の方が圧倒的に大きいですし、内蔵GPUレベルの性能ならCPU性能はそこまで要らないので、ゲームではほとんどネックにはならないという点は考慮すべきですが、CPU性能が重要なゲームも中にはありますし、ドッキングハブ等を用いたPCのような運用を考えた場合にはやはり不安が残るので、留意しておくべきかなと思います。

次にGPU性能ですが、こちらは両者同等レベルで、先に比較した高性能モデルと比べると約半分のグラフィック性能です。大幅に性能は落ちます。「ROG Ally(Z1 Extream)」や「MSI Claw(Core Ultra 5 135H)」と比べると価格差が1~2万円しかないのに、ゲーム性能が半減ということで、ゲームコスパも明らかに劣ります。これが前置きしてコスパが劣ると言った理由です。

ただし、「Steam Deck OLED」の方に関しては解像度が1280×800と低く、画素数はフルHDの約半分です。性能が半分ながら負荷が半分なので、実用性能的には同等とも言えると思います。それでいて価格は安いので、携帯モードでの使用に限るなら、価格を考えれば実用コスパはトップだと思います。また、OLED(有機EL)ディスプレイ採用なので、解像度こそ低いものの、色表現は素晴らしいです。用途や考え方次第ですが、あくまでサブのゲーム機として割り切るなら節約も出来る優秀な選択肢だと思います。

しかし、後に外部ディスプレイで使いたいとなった場合にはフルHD以上が基本以上でしょうから、そのような場合での不安が残る分、個人的には手放しでは褒められないかなという印象です。SteamOSという特殊なOSも汎用性には乏しいとも言えますし、事前に運用方法をよく考えて選択することをおすすめしたい製品です。

次に「ROG Ally(Ryzen Z1)」のGPUについてですが、正直ゲームコスパは厳しいです。フレーム生成機能の「AFMF」が使えるようになったことで多少使い勝手は良くなったものの、それ込みでもやはり厳しめかなと思います。それはスペック表を見れば明らかなので、案の定「Ryzen Z1 Extream」搭載モデルと比べて不人気な感じが出ており、頻繁に1万円引きセールが行われています。

1万円値引き後なら約8万円となり、「Steam Deck OLED(512GB)」よりも安価になるため、重めのゲームでは「AFMF」頼みになるものの、割り切って使う上で節約目的なら一応無くはない…かもしれません。とはいえ、やはりコスパ的には正直微妙かなと思います。

良い点・気になる点

ここまでの内容を踏まえて、各製品の他機に対しての良い点(優位性)と、気になる点をまとめています。

良い点気になる点

ROG Ally

Ryzen Z1 Extream
  • 優れたパフォーマンス
  • 性能の割に比較的安価(約11万円)
  • 優れたコスパ
  • 軽量(約608g)
  • Gollira Glass Viutus
  • AFMF(AMDのフレーム生成)
  • バッテリー容量が少ない(40Wh)
  • 付属品最低限

MSI Claw

Core Ultra 5 135H
  • 優れたパフォーマンス
  • 性能の割に安価(約10万円)
  • 今回の中で最も性能コスパが良い
  • やや多めのバッテリー容量
  • Wi-Fi 7対応
  • Thunderbolt 4対応
  • サイズの割にやや重い(約675g)
  • Pコアが4つのみ
  • ファンノイズが大きめ

Legion Go

Ryzen Z1 Extream
  • 優れたパフォーマンス
  • やや大きめの画面(8.8型)
  • USB Type-C×2
  • 高解像度(2560×1600)
  • Gollira Glass 5
  • 着脱可能コントローラー
  • キックスタンド付属
  • コントローラードック付属
  • 高速なメモリ(LPDDR5X-7500)
  • (AFMF:記事執筆時点では未対応)
  • 価格が高い(約13.5万円)
  • 画面が大きいため他機より重い

MSI Claw

Core Ultra 7 155H
  • 優れたパフォーマンス(ゲーム性能一応最高)
  • 1TB SSD
  • やや多めのバッテリー容量
  • Wi-Fi 7対応
  • Thunderbolt 4対応
  • 価格が高い(約14万円)
  • ファンノイズが大きめ

ROG Ally

Ryzen Z1
  • 比較的安価(8万円~9万円)
  • 軽量(約608g)
  • Gollira Glass Viutus
  • AFMF(AMDのフレーム生成)
  • 高性能モデルの約半分のGPU性能
  • 高性能モデルよりコスパが悪い

Steam Deck OLED

4コアCPU / 8CU GPU
  • 比較的安価(8.5万円~10万円)
  • サイズの割に軽量(約640g)
  • OLED(有機ELディスプレイ)
  • 低解像度ディスプレイで負荷軽減
  • 携帯モードでの実用性能コスパはトップ
  • (AFMF:記事執筆時点では未対応)
  • 低解像度(1280×800)
  • 高性能モデルの約半分のGPU性能
  • CPU性能が低い(4コアのみ)
  • 指紋認証無し

まとめ:性能コスパは「MSI Claw(Core Ultra 5)」が一歩リードだが、AFMFをどう考えるかにもよる

最後にまとめですが、純粋な処理性能コスパに関しては「MSI Claw」の「Core Ultra 5 135H」モデルが一番良いです。

約10万円という価格とは思えないコスパで、バッテリー容量も一番多いですし、特にこだわりがなく迷っているならおすすめできるモデルだと思います。少し気になるのはAFMFの存在で、Intel側ではそこまで手軽なフレーム生成やアップスケーリングがまだありません。今後対抗して追加される可能性もあるものの、特に重量級のゲームを遊ぶ場合には結構大きな差となる可能性もある点は一応留意です。また、画面の耐傷性などについての表記も見当たらないのも若干のコスト削減ポイントであり、タッチ機能を多用するならフィルム等の用意しておきたいのも若干の面倒くささがあります。

そして、純性能では大分劣るものの、「Steam Deck OLED」も本体のディスプレイ利用時の実用コスパという点においては非常に優れており、価格も安価なので魅力的です。CPU性能が圧倒的に低い点やWindowsでは無いのは懸念点ですが、ハードウェア要件は満たしているはずのAFMF対応も期待できますし、あくまでサブの携帯型ゲーム機としての運用を割り切れるなら非常に丁度良い選択肢だと思います。

他機種についてはこれまでに十分触れたので省略しますが、やはりいち早く発売されて大人気だった「ROG Ally」は未だにコスパ面では安定の選択と言える状況でしたし、一部のコスパを悪いモデルを除き、それぞれ長所があって、良い勝負だなと思いました。各機種の上位モデルの基本性能はどれも大差がないこともあって、迷ってしまうのも無理はない内容です。

全体のGPU性能が大きく上昇したこの段階から、またすぐに急激に上昇というのはさすがにない…と思うので、時期的にも悪くは無いのかなと思います。円安の進行も気になるところですが、ゆっくり検討したり、キャンペーンやセールを待つのも良いかなと思います。


それでは記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。

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