AMDの新世代GPUの「Radeon RX 6000」シリーズが正式に発表されたので、発表内容から性能等を見ていきたいと思います。
本記事の内容は記事執筆時点(2020年10月31日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
※追記:記事投稿時にRX 6000シリーズのGPU名を、誤って記載している箇所が多々ありました(RX 5900 XTなど)。お詫びして訂正いたします。
参考ページ等
ざっくり要点まとめ
まずはざっくり要点をまとめて置いておきます。
- RX 6900 XT
- 12月8日発売予定(米時間)。999ドル(国内推定価格12万円~?)
- 16GB GDDR6、80CU
- TDP:300W
- RTX 3090並みの性能でコスパとワットパフォーマンスで大幅有利?
- RX 6800 XT
- 11月18日発売予定(米時間)。649ドル(国内推定価格8万円~?)
- 16GB GDDR6、72CU
- TDP:300W
- RTX 3080を少し上回る性能でコスパとワットパフォーマンスで大幅有利?
- RX 6800
- 11月18日発売予定(米時間)。579ドル(国内推定価格7万円~?)
- 16GB GDDR6、60CU
- TDP:250W
- RTX 2080 Tiを上回る性能?
- Radeon RX 6000 シリーズ共通
- 7nmの新アーキテクチャRDNA2採用
- 前世代比で約2倍の性能とワットパフォーマンス
- PS5とXboxに採用されているGPUと同じアーキテクチャ
- リアルタイムレイトレーシングにAMDで初めて対応
- AMD SMART ACCESS MEMORY 機能同社の次世代CPU「Ryzen 5000シリーズ」との併用で、メモリのアクセス性能を高めて性能を向上する機能(約5%~11%程度?)。
- RAGE MODE同社のソフトウェアからワンクリックで簡単に疑似的?にオーバークロック(OC)が利用できる設定項目の追加。
- FidelityFXNVIDIAのDLSSへの対抗機能っぽいもの。一応機能自体は前世代からあった。
簡易比較
簡易比較表
GPU | 価格(推定) | メモリ | TDP | 備考 |
---|---|---|---|---|
RTX 3090 | 1499ドル | 24GB GDDR6X | 350W | |
RX 6900 XT | 999ドル | 16GB GDDR6 | 300W | RTX 3090に匹敵する性能? |
RTX 3080 | 699ドル | 10GB GDDR6X | 320W | |
RX 6800 XT | 649ドル | 16GB GDDR6 | 300W | RTX 3080を少し上回る性能? |
RTX 3070 | 499ドル | 8GB GDDR6 | 220W | |
RX 6800 | 579ドル | 16GB GDDR6 | 250W | RTX 2080 Tiを少し上回る性能? |
「Radeon RX 6000 シリーズ」のアーキテクチャは「RDNA2」です。プロセスルールは前世代と同じ7nmではあるものの、数多くの改善が行われ性能と処理効率が大幅に向上していると主張しています。発表では実際のゲームのFPS数で性能比較をメインにしていました。今までのように、ベンチマークスコアは良くても実際のパフォーマンスがGeForceに劣っているという事が無いんだという事も強調したかったのかもしれません。
第一陣の発表モデルの「RX 6900 XT」「RX 6800 XT」「RX 6800」のRAMは全て「16GB GDDR6」です。特に「RX 6800 XT」「RX 6800」は700ドル未満でGDDR6を16GBも搭載するのはコスパが良く、4Kやメモリ帯域幅が重要な処理でのコスパはかなり高そうです。
また、RTX 30シリーズよりもTDPが低くワットパフォーマンスに優れている事も強調していました。実際示された性能が事実ならRTX 3090とRTX 3080は不利になると思われます。ただし、「RX 6800(無印)」については「RTX 3070」の方がコスパやワットパフォーマンス的にはやや有利っぽい印象を受けました。
各GPUについて
今回発表となった「RX 6900 XT」「RX 6800 XT」「RX 6800」のそれぞれについて、ざっくりと触れていきたいと思います。
RX 6900 XT
「Radeon RX 6900 XT」は、80CU(演算ユニット)に16GB GDDR6メモリーを搭載する超ハイエンドGPUです。米価格は999ドル。ゲーミングでは、1080pや1440pなら高設定でも十分なパフォーマンスを得ることが可能で、4Kも十分視野に入るとてつもない性能を持ちます。NVIDIAの対抗相手は「RTX 3090」です。
価格は999ドルで、対抗の「RTX 3090」の1499ドルよりも500ドルと大幅に安いです。その上にTDPも「RTX 3090」の350Wよりも50Wも低いながら、パフォーマンスやや上回るとAMDは主張しています。しかし、スライドの性能比較表では「6900 XT」は「Ryzen 5000シリーズ」との併用でメモリアクセス性能がアップする「SMART ACCESS MEMORY」機能の恩恵を受けると共に、「RAGE MODE」というワンクリックで簡単にオーバークロックが出来る設定も使っている事が示されています。これらの機能がパフォーマンスに具体的にどれだけの影響があるかはわかりませんが、その影響下でも「RTX 3090」にいくつかのゲームではパフォーマンスが僅かに劣っているところを見ると、GPU単体でのパフォーマンスは「RTX 3090」と同じか少し下回るくらいなのかな、と思います。
ただし、500ドルという非常に大きな価格差および消費電力でも優位性があります。その大きな優位性の上で、性能が同じかちょっと下くらいで済むのであれば、純粋なコスパでいえば圧勝レベルだと思います。
とはいえ、300Wという消費電力自体は膨大ですし、999ドルという価格も非常に高価という点は変わらないので、需要は限られてくるハイエンドGPUになると思います。
RX 6800 XT
「Radeon RX 6800 XT」は、72CU(演算ユニット)に16GB GDDR6メモリーを搭載する超ハイエンドGPUです。米価格は649ドル。上位の「6900 XT」との価格差は350ドルと非常に大きいですが、ゲーミングでの実用性は大きくは変わらないと思います。1080pや1440pなら高設定でも十分なパフォーマンスを得ることが可能で、4Kも十分視野に入るとてつもない性能を持ちます。NVIDIAの対抗相手は「RTX 3080」です。
性能は1440pで「RTX 3080」と同じか少し上回るくらいと示されています。ビデオメモリ容量がこの「RX 6800 XT」の方が6GBも多いため、4Kではもう少し差が付くかもしれません。
TDPは300Wです。「RTX 3080」よりも20W少ないため、ワットパフォーマンスでは勝っているということになります。また、価格も649ドルで「RTX 3080」の699ドルよりも50ドル安いため、コスパでも有利ということになります。どの方面から見ても「RTX 3080」よりも良く、非常に効率的なGPUという印象です。初回発表の中では恐らくコスパが一番良いと思われるGPUです。
649ドル(国内推定価格8万円~?)という価格自体は高いものの、「RX 6900 XT」や「RTX 3090」よりは大幅に安いです。一般消費者でも何とか検討できるレベルだと思います。「RTX 3080」重要指標で全て優位に立っていることは非常に魅力的なので、人気モデルとなると思われます。
RX 6800
「Radeon RX 6800」は、60CU(演算ユニット)に16GB GDDR6メモリーを搭載するハイエンドGPUです。米価格は579ドル。「6800 XT」との価格差は70ドルとそこまで大きくないです。しかし、その割には演算ユニット数が12も減らされていて、パフォーマンスも結構大きく下がってしまうっぽいです。コスパ的には「6800 XT」の方が良いかなという印象。
ただし、前世代比なら超ハイエンドレベルの非常に高い性能を持つ事は変わらないので、1080pや1440pなら高設定でも十分なパフォーマンスを得ることが可能なはずです。また、価格は下がりましたがビデオメモリ容量は16GBのままなので、高メモリ帯域幅が重要な4Kでは他の同価格帯GPUよりも有利となるかもしれません。
価格設定的に、「RTX 30シリーズ」でのNVIDIAの丁度良い対抗相手は発表時点ではありません。やや価格の安い「RTX 3070」と予算との兼ね合いで勝負になるか、後日登場が予測されている「RTX 3070 Ti?」と競合する事になると思います。
性能は「SMART ACCESS MEMORY」利用で、「RTX 2080 Ti」を上回るとしています。「RTX 3070」が「RTX 2080 Ti」と同じくらいの性能なので、「RTX 3070」も少し上回るということになります。ただし、TDPは250Wです。「RTX 3070」の220Wよりも30W高いです。
出てみないことには断言はできないですが、「Radeon RX 6800 XT」の方が明らかにコスパは上に見えますし、NVIDIA相手でも「RTX 3070」の方が有利に見えます。下位モデルやNVIDIAとの差を意識してのことかもしれないですが、この価格帯で16GBのビデオメモリはコスパを考えるとマイナス要素の方が大きいのではと思います。16GBもある容量を少し減らして価格を下げた方が魅力的なGPUになったのではないかと思いますね。
雑感
「RX 6000シリーズ」でもこれだけのものが出てくるとは、失礼ながら予想していませんでした。物凄くざっくり言うと、「RTX 30シリーズよりも安いのに性能は同等以上で、しかも消費電力少なくてワットパフォーマンスも勝ってる」という感じでしょうか。
ゲーミングパフォーマンスはベンチマークや相対比較の%のみとかではなく詳細なFPS数で示されていたことを見ても、自信があるということだと思います。
実際コスパが素晴らしいのは間違いないでしょうし、「Ryzen 5000シリーズ」との併用による優位機能まで付けて同社CPUの販促まで含めてくるのは物凄く上手いなと感じました。そういうビジネス戦略というのはわかっていても魅力的ですし、試してみたくなります。
ただし、個人的に気になるのは、レイトレーシングやNVIDIAでいうDLSSについてです。ただしここからの意見は、トップを走っていたNVIDIAの信頼性が個人的には強いせいもあるように思うので、軽く参考までに聞いて貰えると嬉しいです。
まずレイトレーシングについてですが、リアルタイムレイトレーシングにやっと対応したということで、それなりに大きく宣伝しても良さそうなものだと思いますが、実際には具体的なパフォーマンスは示されませんでした。普通のゲーミングパフォーマンスについては詳しく出していたので余計に気になりました。NVIDIAよりもレイトレーシング性能については劣っているものかな…なんて邪推してしまいますね。間違っていたらごめんなさいですが。
また、DLSSについても同様です。AMDにもFidelityFXというNVIDIAのDLSSへの対抗機能が実はあって(正直忘れてた)、それが最後の方に紹介されていましたが、ちょっとあっさりすぎる気がしました。単純に、DLSSとFidelityFXの両方に対応したタイトルが無いため比較できない、という可能性もあるとは思います。ただ、レイトレーシングを視野に入れるなら非常に重要な機能だと思うので、もうちょっと詳しく扱っても良かったではないかなという印象です。こちらも、パフォーマンスの向上具合がRTX 30シリーズに優位を取れていないか、NVIDIAに劣るレイトレーシングの話を出したくないからではなかったのかと邪推してしまいます。こちらも間違っていたらごめんなさいです。
レイトレーシングや4Kを視野に入れないなら、そもそも「RTX 3070」でも十分なパフォーマンスだと思うので、追加費用を出してRTX 3080以降やRX 6800以降を買う必要性は薄くなってくると思います。そうなると、差をつけるのはレイトレーシング性能やDLSSだと思うので、そういう意味ではまだNVIDIAの優位性は割と強そうな気がしました。
AMDの競争力は間違いなく強まっているとは思います。ただ、NVIDIAを抜くにはRTX 3070よりも安く省電力で高性能なGPUを出すか、レイトレーシングやDLSSでもNVIDIA以上の性能を見せる必要があるのかな…というのが個人的な印象です。
という感じで、非常にざっくりとした内容でしたが、本記事は以上になります。最後がちょっと批判気味な内容になってしまったのが申し訳ないですが、期待は凄くしています。発売が楽しみです。
レイトレの性能なら実は公表されてます。実動作は3070とbig naviが同等とされていますね。まあそれだけ動くなら私は十分だと思います。レイトレ対応の初号機ですからね。これからまだまだ成長していくと思うので今後に期待ですかね。それにまだ名前だけ出ていた6700シリーズもありますので、AMDの会心劇は続くのかも知れないですね
実はそれは知っていました。1か月以上前にチラ見せみたいな形で出ていたものですよね。
ただ、正式な発表とは言えない感じだったと思いますし、モデルナンバーが無かったので比較には使えず、情報価値としてはほとんど無いかな…と個人的に判断していました。
とはいえ、CPUも含め最近のAMDの躍進の速度は凄まじいというのは同感ですね。ちょっと怖くなってくるレベルですが、競争がより活発になる事は市場にとって良いことだと思うので、AMDの快進撃を見た他社の動きにも期待したいです。
RX6000シリーズとRYZEN5000シリーズがごちゃまぜになっています。取り敢えず一回落ち着いて推敲し直して下さい
本当ですね…。誠に申し訳ございません。
RX 6000をRX 5000番台に脳内置換してしまっていました…。
ご指摘感謝します。修正いたしました。
訂正し忘れがRX6800の項に一つ…
『出てみないことには断言はできないですが、「Radeon RX 5800 XT」の方が明らかにコスパは上に見えますし、NVIDIA相手でも「RTX 3070」の方が有利に見えます。』
>>>Radeon RX 5800 XT<<<
本当ですね…。訂正いたしました。ご指摘感謝です。