「Arc B570」ざっくり評価【性能比較】

Intel「Arc B570」のざっくり性能比較・評価です。海外レビューを参考に性能をざっくりと確認していきます。

注意

本記事の情報は記事執筆時点(2025年1月21日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

仕様

まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。

簡易比較表

※価格は2025年1月21日時点での米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
※GPU名のリンクはAmazonのものです。

GPUシェーダー
ユニット数
メモリタイプVRAM速度
VRAM帯域幅
レイトレ用
ユニット数
ダイサイズ
(おおよそ)
消費電力
(TGP等)
参考価格
RTX 409016384GDDR6X
24GB 384bit
21.0Gbps
1008GB/s
128608㎟450W1,599ドル
RTX 4080 SUPER10240GDDR6X
16GB 256bit
23.0Gbps
736.3GB/s
80380㎟320W999ドル
RTX 40809728GDDR6X
16GB 256bit
22.4Gbps
716.8GB/s
76380㎟320W1,199ドル
→市場廃止
RX 7900 XTX6144GDDR6
24GB 384bit
20Gbps
960GB/s
9636.6㎟*6 +
300㎟
355W969ドル
RX 7900 XT5376GDDR6
20GB 320bit
20Gbps
800GB/s
8436.6㎟*6 +
300㎟
315W799ドル
→749ドル?
RTX 4070 Ti SUPER8448GDDR6X
16GB 256bit
21.0Gbps
672GB/s
66295㎟285W799ドル
RTX 4070 Ti7680GDDR6X
12GB 192bit
21.0Gbps
504GB/s
60295㎟285W799ドル
→市場廃止
RTX 3090 Ti10752GDDR6X
24GB 384bit
21.0Gbps
1008GB/s
84628.4㎟450W1,499ドル
RTX 309010496GDDR6X
24GB 384bit
19.5Gbps
936GB/s
82628.4㎟350W1,299ドル
RX 7900 GRE5120GDDR6
16GB 256bit
18Gbps
576GB/s
8036.6㎟*6 +
300㎟
260W549ドル
RX 6950 XT5120GDDR6
16GB 256bit
18Gbps
576GB/s
80519㎟335W949ドル
RX 6900 XT5120GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
80519㎟300W699ドル
RTX 3080 Ti10240GDDR6X
12GB 384bit
19Gbps
912GB/s
80628.4㎟350W1,099ドル
RTX 3080 10GB8704GDDR6X
10GB 320bit
19Gbps
760GB/s
68628.4㎟320W699ドル
RTX 4070 SUPER7168GDDR6X
12GB 192bit
21.0Gbps
504GB/s
56295㎟220W599ドル
RTX 40705888GDDR6X
12GB 192bit
21.0Gbps
504GB/s
46295㎟200W549ドル
前:599ドル
RX 7800 XT3840GDDR6
16GB 256bit
19.5Gbps
624GB/s
6037.5㎟*4 +
200㎟
263W499ドル
RX 6800 XT4608GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
72519㎟300W599ドル
RTX 3070 Ti6144GDDR6X
8GB 256bit
19Gbps
608GB/s
48392㎟290W599ドル
RX 68003840GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
60519㎟250W549ドル
RX 7700 XT3456GDDR6
12GB 192bit
18Gbps
432GB/s
5437.5㎟*4 +
200㎟
245W419ドル
前:449ドル
RTX 4060 Ti 8GB4352GDDR6
8GB 128bit
18Gbps
288GB/s
34190㎟160W399ドル
RTX 30705888GDDR6
8GB 256bit
14Gbps
448GB/s
46392㎟220W499ドル
RX 6750 XT2560GDDR6
12GB 192bit
18Gbps
432GB/s
40336㎟250W419ドル
RTX 3060 Ti4864GDDR6
8GB 192bit
14Gbps
448GB/s
38392㎟200W399ドル
RX 6700 XT2560GDDR6
12GB 192bit
16Gbps
384GB/s
40336㎟230W379ドル
Arc A770 16GB4096GDDR6
16GB 256bit
17.5Gbps
560GB/s
32406㎟225W349ドル
Arc A770 8GB4096GDDR6
8GB 256bit
16Gbps
512GB/s
32406㎟225W329ドル
Arc B5802560GDDR6
12GB 192bit
19Gbps
456GB/s
20272㎟190W249ドル
RX 7600 XT2048GDDR6
16GB 128bit
18Gbps
288GB/s
32204㎟190W329ドル
RTX 40603072GDDR6
8GB 128bit
17Gbps
272GB/s
24156㎟115W299ドル
Arc B5702304GDDR6
10GB 160bit
19Gbps
380GB/s
18272㎟150W219ドル
RX 6650 XT2048GDDR6
8GB 128bit
17.5Gbps
288GB/s
32237㎟180W299ドル
RX 76002048GDDR6
8GB 128bit
18Gbps
288GB/s
32204㎟165W269ドル
RX 6600 XT2048GDDR6
8GB 128bit
16Gbps
256GB/s
32237㎟160W
Arc A7503584GDDR6
16GB 256bit
16Gbps
512GB/s
28406㎟225W289ドル
RX 66001792GDDR6
8GB 128bit
14Gbps
224GB/s
28237㎟132W239ドル
RTX 30603584GDDR6
12GB 192bit
15Gbps
360GB/s
28276㎟170W329ドル
RTX 30502560GDDR6
8GB 128bit
15Gbps
224GB/s
20276㎟130W249ドル

今回見ていくのはIntelArc B570」です。希望小売価格は219ドルと安価ながら、VRAMは10GB搭載しているのが魅力のエントリーGPUです。

更新されたXe2アーキテクチャが採用された新世代GPUとなっており、開発コードネームは「Battlemage」です。名前は先代の「Arc A」シリーズから「Arc B」シリーズになります。プロセスには「TSMC N5(5nm EUV)」が採用されています。

アーキテクチャの詳しい詳細は割愛しますが、先代と比べるとコアあたりのパフォーマンス(SIMD)は70%向上、ワットあたりのパフォーマンスは50%向上しているとIntelは主張しています。本当なら先代とは打って変わってGeForceやRadeonにも対抗できる非常に強力なGPUとなるはずです(ドライバの安定性さえ大丈夫ならですが)。

先にも触れた通り、「Arc B570」の魅力の一つはまず、米国における希望小売価格が219ドルという安価に設定にされている点です。「RTX 4060」の発売時の299ドルよりも80ドルも安く、「RX 7600」の269ドルよりも40ドル安く、競合となりそうなグレードの製品の従来価格よりも安価となっています。

また、それだけ安価ながらVRAMは10GB搭載しており、「RTX 4060」や「RX 7600」の8GBよりも少し多めなのも魅力です。帯域幅も380GB/sで、約32%上回っています。

主流解像度も徐々に高くなっていると思われますし、レイトレーシングや生成AIやメタバースなど、これから更に活用が広まっていきそうな次世代的用途でもVRAM容量が重要な処理が多いので、安さ重視でもVRAMは多めに確保しておきたい人が増えている中では大きな強みだと思います。

しかし、問題は国内での実売価格です。初動販売価格は約4.5万円~となっており、為替や消費税や中間マージンを考えても219ドルの製品としてはやや高価な印象です。

B570よりも一つ上位の「Arc B580」が現在約5万円ほどから購入でき、VRAMを12GB搭載していることを考えると、コスパ的には正直やや微妙にも感じる価格です。

また、GeForce RTX 50シリーズやRadeon RX 9000のエントリーモデルが従来より早く登場するかもという話もあるので、そこが登場する前にはもう少し価格が下がっていないと競争力を保て無さそうな気がするので、それまでには少しは値下がりする可能性が高そうな気もします。

市場での話は以上までにして、次に物理仕様を見ていきます。

まずプロセスは先に触れた通り「5nm(TSMC N5)」となっています。ダイサイズは約272㎟となっており、先代の406㎟よりも大幅に小さくなっています。

Xeコアの数は18基で、シェーダーユニット数は2304です。B580と比べると10%削減された形です。希望小売価格差も約12%とほぼ同じ差です。日本での初動価格も丁度10%差(約4.5万円と5万円)くらいなので、コア単価はほぼ同じです。

消費電力の仕様はTBPが150Wとなっています。先代の「Arc A」は電力面では微妙な印象が強かったですが、そこと比べると大きく改善していると思います。

VRAMは10GB 160bitで、メモリクロックは19.0Gbps、メモリバス帯域幅は380GB/sです。219ドルのGPUとしては優れた仕様で、B570の大きな魅力です。

競合になるであろう「GeForce RTX 50」や「Radeon RX 9000」のエントリーモデルの仕様や価格の詳細はまだわからないものの、219ドルレベルの安さで10GB VRAM搭載を搭載する可能性は低いように思うので、VRAM性能コスパでは上回ることになるかなと思います。

ただし、12GBのB580との価格差を考えるとやや微妙感もあります。コア単価はほぼ同じなのに、更にVRAMまで削られてしまっているので、総合コスパが微妙に感じるところです。

価格も凄く変わる訳ではないですし、10GBと12GBの差は大きく感じるところなので、実用コスパも劣っているように見えるのが、詳しく見る前の正直な感想です。

といった感じで、カタログスペックについてはここまでとして、下記から実際の各性能について見ていきたいと思います。

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。

まずは、レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態での性能、いわゆるラスタライズ性能を見ていきます。

使用されたグラフィックボードは「ASRock Arc B570 Challender OC」、CPUは「Ryzen 7 9800X3D」で、OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。


フルHD(1920×1080)

フルHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2025年現在では恐らく最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。ただし、最新世代のハイエンドGPUでは低負荷感も大きくなっているものもあるため、より高い解像度への移行も近そうな印象です。

平均FPS(1080p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
225.0
RTX 4080 SUPER
190.3
RTX 4080
187.8
RX 7900 XTX
184.1
RTX 4070 Ti SUPER
166.8
RX 7900 XT
164.3
RTX 4070 Ti
160.0
RTX 4070 SUPER
148.0
RTX 3090
141.9
RX 7900 GRE
141.3
RTX 4070
129.8
RX 7800 XT
128.3
RTX 3080 10GB
127.2
RX 6800 XT
125.8
RX 7700 XT
110.6
RTX 3070
100.8
RTX 4060 Ti 16GB
99.9
RTX 4060 Ti 8GB
98.7
RX 6700 XT
88.7
RTX 3060 Ti
88.2
Arc B580
82.6
RX 7600 XT
78.9
RTX 4060
78.6
Arc B570
72.9
RX 7600
72.1
Arc A770 16GB
71.8
RX 6600 XT
68.8
RTX 3060 12GB
67.4
RX 6600
59.0
Arc A580
58.5
RTX 3050 8GB
48.3
参考:TechPowerUp

フルHDでは「RTX 4060」を約7.3%下回る性能

フルHD(1080p)のラスタライズ性能では「RTX 4060」を約7.3%下回る性能で、「RX 7600」とほぼ同等でした。「RTX 4060」には若干負けていますが、使用感での差は大して感じない程度の差だと思います。

高い性能ではありませんが、フルHDなら超重量級ゲームを除けばほとんどのゲームを快適にプレイできるくらいには高性能です。

VRAMを10GB搭載していることで、VRAM使用量が大きめのタイトルでも比較的安心して運用できそうなのも良いです。

とはいえ、平均性能ではRTX 4060を少し下回るのに、初動の実売価格では3,000円ほど高価なので、現状のフルHDゲームコスパは微妙ではあります。フルHDゲームをメイン用途とするなら強力とは言えないかもしれません。

また、「Arc B580」と比較すると約10.7%下回っています。価格差とほぼ同等ですが、VRAM容量はB580の方が2GB多く、帯域幅も上です。そこを考慮すると総合的なところでは劣るかなという感じ。

安さが魅力のモデルのはずですが、初動では価格が高めで魅力を感じにくいです。初動価格でも明確な需要を感じられたB580と異なり、安くならないと有力な選択肢と断定はしにくいGPUだと思います。


1440p(2560×1440)

WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。

平均FPS(1440p 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
179.1
RTX 4080 SUPER
145.8
RTX 4080
143.4
RX 7900 XTX
142.9
RTX 4070 Ti SUPER
125.3
RX 7900 XT
123.8
RTX 4070 Ti
117.7
RTX 4070 SUPER
108.4
RTX 3090
107.6
RX 7900 GRE
104.5
RX 7800 XT
95.2
RTX 3080 10GB
95.3
RX 6800 XT
93.3
RTX 4070
94.0
RX 7700 XT
80.7
RTX 3070
73.8
RTX 4060 Ti 16GB
71.0
RTX 4060 Ti 8GB
70.4
RX 6700 XT
64.3
RTX 3060 Ti
64.3
Arc B580
61.4
RX 7600 XT
55.7
RTX 4060
55.5
Arc A770 16GB
54.6
Arc B570
53.4
RX 7600
49.7
RTX 3060 12GB
48.6
RX 6600 XT
47.7
Arc A580
43.4
RX 6600
40.8
RTX 3050 8GB
34.6
参考:TechPowerUp

1440pでは「RTX 4060」を約3.8%下回る性能で、フルHDよりもVRAMがやや活きている感じあり

1440pでは平均fpsは50台となっており、重量級ゲームでなければ実用的な性能だと思いますし、重量級ゲームでも大体プレイ自体は可能なレベルです。

他GPUとの比較では、まず「RTX 4060」を約3.8%下回る性能でした。フルHDの約7.3%から差が縮まっており、VRAMの差が少し出ていそうです。

「RX 7600」との比較では若干上回る性能となっており、219ドルのGPUの1440pパフォーマンスとしては優秀です。

B570のポイントとして、VRAM 8GBと比較して10GBはどれだけ恩恵があるのかという部分がありましたが、1440pではその差が出ている感じがしました。容量だけでなく、帯域幅の差もあるかもしれません。

1440pにおいても平均性能はRTX 4060より下ではあるものの、その差はわずかで使用感に差はほぼないレベルです。重量級のタイトルも含めて安定したパフォーマンスを求めるなら、B570の方が優位性を感じるケースもありそうなので、少し高価ですが1440pを重視するなら「RTX 4060」より優先して選ぶ価値はあるかなと思います。

ただし、気になるのはやはりB580との性能差です。8GBと10GBでも恩恵を感じることはできましたが、12GBのB580の方がその優位性が強いです。

B580は1440pではB570を約15%上回る性能となっており、フルHDよりも差を広げています。約5,000円差でこの差は大きいです。「RTX 4060」や「RX 7600」よりも高い予算を掛けることが前提なら、B580の方がお得感は強く感じます。


4K(3840×2160)

「超高解像度の代名詞」という感じの解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、負荷が非常に大きいです。その負荷の大きさから高いフレームレートを出す事が難しいため、TPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはほとんどないです。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。また、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価という問題もあるため、一般層への普及にはややハードルが高いです。

平均FPS(4K 最高設定)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
109.2
RTX 4080 SUPER
85.5
RX 7900 XTX
84.7
RTX 4080
84.1
RTX 4070 Ti SUPER
72.3
RX 7900 XT
71.5
RTX 4070 Ti
66.3
RTX 3090
64.5
RTX 4070 SUPER
60.9
RX 7900 GRE
59.3
RTX 3080 10GB
55.9
RX 7800 XT
54.5
RTX 4070
52.7
RX 6800 XT
53.1
RX 7700 XT
44.6
RTX 3070
42.0
RTX 4060 Ti 16GB
38.6
RTX 4060 Ti 8GB
38.5
Arc B580
36.2
RTX 3060 Ti
36.0
RX 6700 XT
35.6
Arc A770 16GB
31.8
Arc B570
30.9
RX 7600 XT
30.3
RTX 4060
29.7
RTX 3060 12GB
27.4
RX 7600
24.7
RX 6600 XT
24.7
Arc A580
24.6
RX 6600
20.7
RTX 3050 8GB
18.7
参考:TechPowerUp

4Kは全体的には厳しいけど、重いゲームじゃなければ一応実用的ではあるかも

価格を考えれば仕方ないですが、やはり4Kはフレームレート的に厳しめです。重いゲームが中心の最高設定とはいえ、平均で約30fpsです。

そこまで重いゲームではなく、fpsもそこまで高くなくても良いゲームなら実用的な範囲にはなっていると思いますが、4Kゲームでの常用にはおすすめはできないくらいの性能です。

性能的には微妙ですが、「RTX 4060」との性能は逆転してわずかに上回ってはいて、10GB VRAMが4Kでもやや活きていそうです。

しかし、B580と比較すると、4Kでは約17.2%まで差が広がっており、12GB VRAMも心強いので、4K運用もある程度視野に入れるなら尚更B580を選びたいです。

電力関連

消費電力

ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。

GPU平均消費電力(ゲーミング)
GPU名称消費電力
RTX 4060
128
RTX 3050 8GB
132
RTX 4060 Ti 8GB
152
RX 6600 XT
152
Arc B570
154
RX 7600
154
RTX 4060 Ti 16GB
165
RTX 3060 12GB
183
Arc B580
185
RX 7600 XT
198
RTX 4070
201
RTX 3060 Ti
205
Arc A580
209
RX 6700 XT
217
RTX 4070 SUPER
218
RTX 3070
232
Arc A770 16GB
235
RX 7700 XT
236
RX 7800 XT
250
RX 7900 GRE
265
RTX 4070 Ti
277
RX 6800 XT
294
RTX 4080 SUPER
302
RTX 4070 Ti SUPER
304
RTX 4080
304
RX 7900 XT
312
RTX 3080 10GB
336
RX 7900 XTX
360
RTX 3090
368
RTX 4090
411
参考:TechPowerUp

ゲーム消費電力は150W台でRX 7600とほぼ同等

ゲーム時の平均消費電力は154Wとなっていて、「RX 7600」とほぼ同様で省電力です。

テストモデルがわずかにオーバークロックされたモデルであることを考えると、TBP:150Wのほぼ仕様通りの消費電力と言えると思います。特別優れた省電力さはありませんが、先代のArc Aシリーズよりは格段に改善しています。

とはいえ、「RTX 4060」にはやや負けていますし、これからGeForceやRadeonの新世代モデルが出ることを考えると、この時期に出たGPUの消費電力としてはやや微妙には感じるところです。

まだ登場はしていないものの、前世代から引き続き電力面は競合モデルよりは悪めという立ち位置に変わらずになりそうな予感がします。しかし、前世代よりは妥協できるレベルになっていると思いますので、地位は確実に上げたと思います。

※表には載せていませんが、前世代からあった「アイドル時の消費電力がかなり多い(競合モデルが10W前後なのに対し、30W~40Wほど消費する)」という問題は引き続き残っているようなので、気になる場合にはASPMを有効にするのを忘れないようにしないといけない点は注意が必要です。

ワットパフォーマンス

ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています

環境は消費電力はおよび4Kは「Cyberpunk 2077(Ultra/レイトレ無効)」時のもので、1080pは上記で示した25ゲーム平均fpsを使用したものです。一応、1080p時のものは各ゲームでの効率を求めたものではなく消費電力は同じもので算出しており、正確な値ではなく参考値となっているため注意してください。

ワットパフォーマンス(1080p/25ゲーム平均)
GPU名称1フレームあたりの消費電力
RTX 4070 SUPER
1.47
RTX 4060 Ti 8GB
1.54
RTX 4070
1.55
RTX 4080 SUPER
1.59
RTX 4080
1.62
RTX 4060
1.63
RTX 4060 Ti 16GB
1.65
RTX 4070 Ti
1.73
RTX 4070 Ti SUPER
1.82
RTX 4090
1.83
RX 7900 GRE
1.88
RX 7900 XT
1.90
RX 7800 XT
1.94
RX 7900 XTX
1.96
Arc B570
2.13
RX 7700 XT
2.14
RX 7600
2.14
RX 6600 XT
2.21
Arc B580
2.24
RTX 3070
2.29
RX 6800 XT
2.33
RTX 3060 Ti
2.34
RX 6700 XT
2.44
RX 7600 XT
2.51
RTX 3090
2.60
RTX 3080 10GB
2.64
RTX 3060 12GB
2.67
RTX 3050 8GB
2.73
Arc A770 16GB
3.27
Arc A580
3.57
参考:TechPowerUp
ワットパフォーマンス(4K/Cyberpunk 2077)
GPU名称1フレームあたりの消費電力
RTX 4080 SUPER
4.0
RTX 4080
4.0
RTX 4070 SUPER
4.1
RTX 4090
4.2
RX 7900 XTX
4.4
RTX 4060 Ti 8GB
4.5
RTX 4070
4.5
RX 7900 XT
4.7
Arc B570
4.7
RTX 4070 Ti
4.7
RX 7900 GRE
4.8
RX 7800 XT
4.9
RTX 4070 Ti SUPER
4.9
Arc B580
4.9
RTX 4060 Ti 16GB
5.1
RTX 4060
5.3
RX 7600
5.7
RX 7700 XT
5.7
RTX 3070
6.0
RX 6800
6.1
RTX 3060 Ti
6.2
RTX 3090
6.3
RX 6600
6.3
RX 6800 XT
6.5
RTX 3080 10GB
6.5
RX 7600 XT
6.9
RX 6600 XT
6.9
RTX 3070 Ti
7.3
Arc A770 16GB
7.3
RX 6700 XT
7.4
RTX 3060 12GB
7.5
RTX 3050 8GB
8.0
Arc A580
8.2
参考:TechPowerUp

フルHD効率は前世代からは劇的に改善し、RX 7600とほぼ同等に

ワットパフォーマンスは前世代の「Arc A」シリーズからは劇的に改善しています。フルHD時の効率を先代のA580と比べると4割程度改善しており、「RX 7600」とほぼ同等になりました。正直、前世代が酷過ぎたからこその向上率ではあるものの、大きな改善です。

前世代は電力面が悪すぎて選択肢に入らないレベルとなっていたりもしましたが、十分選択肢に入れれるレベルになったと思います。

しかし、フルHDの最終的な効率は「RTX 4060」には依然として負けているのが気になるところです。2025年に登場した新世代GPUとしては悪めの数値と言わざるを得ないかなと思います。

10GB VRAMの優位性を考えると選択肢には入ると思いますし、「RX 7600」よりは強めに見る人も多そうですが、これから出てくるGeForceやRadeonの新世代のことを考えると、不安が強めの位置だと思います。

良い点としては、一応4Kのときの効率は良いです。4Kでは8GBのGPUだと平均性能が大きく低下するため、「RTX 4060」や「RX 7600」よりもやや良いワットパフォーマンスとなっています。また、4K効率に関してはB580も若干上回っています。

4Kゲームを前提として考えるGPUではないものの、出来るだけ安価に効率良く4Kでの運用を考えるのであれば、一応有力な選択肢の一つにはなると思います。

レイトレーシング性能

レイトレーシング性能

レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはメインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。

また、レイトレーシングはVRAMを大量に使う処理な上、VRAMが不足するとパフォーマンスが一気に低下するので、特に1440p以降はVRAM 8GB以下のようなGPUは大きく不利になっています。

※従来は各ゲームの幾何平均fpsの値を再計算して載せていたのですが、参考ページで全GPUの詳細fps値が示されなかったため、今回は相対性能を見ていきます。

レイトレーシングFPS(1080p 平均)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
379
RTX 4080 SUPER
313
RTX 4080
310
RTX 4070 Ti SUPER
274
RTX 4070 Ti
262
RTX 3090 Ti
244
RTX 4070 SUPER
240
RTX 3090
225
RX 7900 XTX
224
RTX 3080 10GB
202
RTX 4070
196
RX 7900 GRE
170
RTX 4060 Ti 16GB
162
RX 7800 XT
157
RTX 4060 Ti 8GB
157
RTX 3070
151
RX 6800 XT
144
RX 7700 XT
134
RTX 3060 Ti
130
Arc B580
127
RTX 4060
123
RX 6800
123
Arc A770 16GB
109
RTX 3060 12GB
103
Arc B570
100
RX 6700 XT
100
RX 7600 XT
90
Arc A580
85
RTX 3050 8GB
72
RX 6600 XT
68
RX 6600
59
RX 7600
57
参考:TechPowerUp
レイトレーシングFPS(1440p 平均)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
412
RTX 4080 SUPER
327
RTX 4080
325
RTX 4070 Ti SUPER
281
RTX 4070 Ti
265
RTX 3090 Ti
255
RTX 4070 SUPER
242
RX 7900 XTX
233
RTX 3090
231
RTX 3080 10GB
206
RTX 4070
196
RX 7900 GRE
169
RTX 4060 Ti 16GB
159
RX 7800 XT
152
RX 6800 XT
141
RX 7700 XT
132
Arc B580
130
RTX 3070
127
RX 6800
122
RTX 4060 Ti 8GB
121
RTX 3060 Ti
112
Arc A770 16GB
111
RTX 4060
101
RTX 3060 12GB
101
Arc B570
100
RX 6700 XT
95
RX 7600 XT
85
Arc A580
82
RTX 3050 8GB
63
RX 7600
49
RX 6600 XT
47
RX 6600
47
参考:TechPowerUp
レイトレーシングFPS(4K 平均)
GPU名称平均FPS
RTX 4090
704
RTX 4080 SUPER
538
RTX 4080
529
RTX 4070 Ti SUPER
454
RTX 3090 Ti
442
RX 7900 XTX
409
RTX 3090
397
RTX 4070 Ti
346
RTX 4070 SUPER
318
RX 7900 GRE
292
RTX 4070
283
RTX 3080 10GB
277
RX 7800 XT
263
RTX 4060 Ti 16GB
243
RX 6800 XT
241
RX 7700 XT
213
RX 6800
206
RTX 3070
196
Arc A770 16GB
191
RTX 4060 Ti 8GB
176
RTX 3060 Ti
173
RX 6700 XT
157
RTX 4060
147
Arc B580
143
RTX 3060 12GB
143
RX 7600 XT
142
Arc A580
124
Arc B570
100
RTX 3050 8GB
93
RX 6600 XT
70
RX 7600
63
RX 6600
62
参考:TechPowerUp

レイトレーシング性能は「RTX 3060 12GB」に近く、実用的と言えるかは怪しい

フルHDおよび1440pのネイティブのレイトレーシング性能は、「RTX 3060 12GB」とほぼ同等でした。性能は低く、フルHDで軽いゲームならなんとか実用的かもといったレベルだと思います。

また、レイトレーシングはVRAM使用量が非常に多くて10GBでも不足するケースが多いので、8GB GPUとの差も思ったよりありません。フルHDでは「RTX 4060」に対しても平均ではやや劣る性能となっています。

219ドルという価格を考えれば頑張っている方ではありますが、性能的に実用性が怪しいので、やはりレイトレーシングを視野に入れる時点で有力とは言えなくなるGPUだと思います。

B580との差も約27%と大きくなっており、レイトレーシングまで考慮するならB580の方が明らかに良いと思います。

コストパフォーマンス

上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。

元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。4Kなどではやや結果が異なる可能性がある点に注意です。


1フレームあたりの価格(ラスタライズ)

まずはラスタライズ性能のコスパです。上述の1440pゲーム時の性能と現在の市場価格を基に、1フレームあたりの価格を算出し、コスパとして比較しています。

1fあたりの価格(1440p@RT無し)
GPU名称1フレームあたりの価格価格
Arc A580
571
¥24,800
RX 6600
706
¥28,800
Arc A770 16GB
729
¥39,800
RX 7600
744
¥36,980
RTX 4060
756
¥41,980
RX 7700 XT
780
¥62,980
Arc B570 ※値下がり想定
788
¥41,980
RX 7800 XT
793
¥75,800
RTX 3060 12GB
800
¥39,980
Arc B580
811
¥49,800
RTX 4060 Ti 8GB
821
¥57,800
RTX 3050 8GB
832
¥28,800
RTX 3080 10GB
837
¥79,800
Arc B570
842
¥44,980
RX 7900 XT
887
¥109,800
RTX 4070
902
¥84,800
RTX 4070 SUPER
921
¥99,800
RX 7900 GRE
945
¥99,800
RX 6800 XT
962
¥89,800
RTX 4060 Ti 16GB
976
¥69,280
RX 7900 XTX
1050
¥149,800
RTX 4070 Ti SUPER
1060
¥132,800
RTX 4080 SUPER
1185
¥172,800
RTX 4090
1808
¥323,800
参考:TechPowerUp

初動価格のラスタライズのコスパは「RTX 4060」や「RX 7600」にやや劣る

1440pにおけるラスタライズのコスパは、初動価格だと「RTX 4060」や「RX 7600」にやや劣ります。また、B580にも少し負けています。

3000円ほど値下がりする想定の41,980円で算出してみても「RTX 4060」や「RX 7600」には少し届いておらず、フルHDのラスター性能コスパで競合を上回るには4万円前後まで値下がりしないといけないです。

とはいえ、フルHDでの使用感は大差なくて、10GB VRAMの優位性があることを考えると、多少の追加予算を掛けても選ぶ価値を感じる人は多いと思います。

なのですが、どうせ少しの追加予算を許すなら、B580の方が魅力的に感じるのが評価しにくいところです。2GB多いVRAMに加え、純粋なコスパでも若干ながら上回っています。

しかし、悪くない位置には居るので、今後のB570の価格動向と、RTX 50やRX 9000のエントリーモデルの性能と価格次第で地位が変わりそうです。


1フレームあたりの価格(レイトレーシング)

次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。

1fあたりの価格(1440p@RT)
GPU名称1フレームあたりの価格価格
Arc A580
925
¥24,800
Arc A770 16GB
1188
¥39,800
Arc B580
1258
¥49,800
Arc B570 ※値下がり想定
1280
¥41,980
RTX 3060 12GB
1351
¥39,980
Arc B570
1371
¥44,980
RTX 4060
1510
¥41,980
RTX 4060 Ti 16GB
1546
¥69,280
RX 7700 XT
1559
¥62,980
RTX 3050 8GB
1591
¥28,800
RTX 4060 Ti 8GB
1661
¥57,800
RX 7600
2465
¥36,980
参考:TechPowerUp

レイトレーシングコスパはやはりB580の方が強力

レイトレーシングコスパは既存の8GBモデルは大きく上回っており、低価格帯では強力と言えます。しかし、B570の性能ではそもそもレイトレーシング自体が実用的ではないことが多いので評価しにくいです。

また、3000円ほど値下がりすることを考慮しても、初動価格の「Arc B580」のコスパにようやく迫るといった感じになっており、レイトレーシングにおいてはやはり「Arc B580」の方が性能とコスパの両方の面を含めて強力に見えます。

クリエイティブ用途

比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。

一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能、「Blender」におけるGPUレンダリング性能、「SPECworkstation 4.0 Handbrake」によるビデオエンジン性能、「Procyon」ベンチマークを用いたAIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。

また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Ryzen 7 9800X3D」と「DDR5-6000 CL28 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。

理論演算性能(FP32)

FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。

一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、まず参考に見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。

FP32(単精度浮動小数点演算)
GPU名称FP32(TFLOPS)
RTX 4090
24GB 1008GB/s
82.58
RX 7900 XTX
24GB 960GB/s
61.42
RTX 4080 SUPER
16GB 736.3GB/s
52.22
RX 7900 XT
20GB 800GB/s
51.48
RTX 4080
16GB 716.8GB/s
48.74
RX 7900 GRE
16GB 576GB/s
45.98
RTX 4070 Ti SUPER
16GB 672GB/s
44.10
RTX 4070 Ti
12GB 504GB/s
40.09
RX 7800 XT
16GB 624GB/s
37.32
RTX 4070 SUPER
12GB 504GB/s
35.48
RX 7700 XT
12GB 432GB/s
35.17
RTX 3080
10GB 760GB/s
29.77
RTX 4070
12GB 504GB/s
29.15
RX 7600 XT
16GB 288GB/s
22.57
RTX 4060 Ti
8GB / 16GB  288GB/s
22.06
RTX 3070 Ti
8GB 608GB/s
21.75
RX 7600
8GB 288GB/s
21.75
RX 6800 XT
16GB 512GB/s
20.74
RTX 3070
8GB 448GB/s
20.31
Arc A770 16GB
16GB 560GB/s
17.20
RTX 3060 Ti
8GB 448GB/s
16.20
RX 6800
16GB 512GB/s
16.17
RTX 4060
8GB 272GB/s
15.11
Arc B580
12GB 456GB/s
13.67
RX 6700 XT
12GB 384GB/s
13.21
RTX 3060 12GB
12GB 360GB/s
12.74
Arc B570
10GB 380GB/s
11.52
RX 6600 XT
8GB 256GB/s
10.61
RTX 3050
8GB 224GB/s
9.10
RX 6600
8GB 224GB/s
8.93

理論性能コスパはあまり良くない

B570の理論性能は高くないです。「RX 6600 XT」を若干上回るレベルです。初動国内価格を考えるとコスパも悪めです。VRAM容量が関与しない指標なので、仕方ない部分です。

しかし、実際にはクリエイティブ用途においてもVRAM性能は重要なことも多く、8GBモデルより快適なケースも発生すると思うので、理論性能はあまり気にしないで良いと思います。


Blender(GPUレンダリング)

「Blender」は定番の人気レンダリングソフトです。「Blender 4.3.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。

「Blender 4.3.0」では、Nvidia Optix、Intel OpenAPI、AMD HIPをサポートしており、それぞれが最善の性能が出せる方法で計測されています。しかし、それぞれの最適化には差があり、メインのGPUコアでも幅広い用途に対応できる「Nvidia Optix」が特に高い性能を出すため、現状Blenderのレンダリングは基本的にGeForce一強です。

Blender Benchmarks(4.3.0)
GPU名称総合スコア(幾何平均)
RTX 4060
1007.1
Arc A770 16GB
716.4
Arc A750
709.0
Arc B580
583.4
Arc B570
450.5
RX 7600 XT
424.3
RX 7600
426.6
参考:Tom’s Hardware

Blenderのレンダリング性能はGeForce一強

BlenderのGPUレンダリング性能は現状ではGeForce一強レベルです。

また、GPUレンダリングは基本的にシェーダーユニット数が重要なので、「Arc B570」はその点でも不利であり、前世代の「Arc 750/770」にも大きく劣っています。

レンダリングをしたいなら、素直にGeForceを選択するのが無難です。


SPECworkstation 4.0 Handbrake(ビデオトランスコーディング)

「SPECworkstation 4.0 Handbrake」はビデオトランスコーディングのテストで、ビデオエンジンの処理性能を測定します。

動画の編集をよく行う方や、ライブ配信等を行う人が注目したい性能です。

SPECworkstation 4.0 Handbrake
GPU名称スコア
Arc B570
333.47
Arc B580
332.08
RX 7600
262.20
RX 7600 XT
260.55
RTX 4060
227.95
Arc A770 16GB
216.74
Arc A750
214.05
参考:Tom’s Hardware

価格の割に優れたビデオエンジン性能で高コスパ

動画のコーディングテストでは競合モデルを大きく上回る性能です。また、「Arc B580」ともほぼ同等の性能となっており、数少ない実用コスパで明確にB580に勝る点です。

競合モデルと比較すると、「RTX 4060」を約46.3%、「RX 7600 XT」を約28%も上回っています。

実はビデオエンジン関連の機能性の高さとコスパは前世代から悪くない評価を受けていましたが、そこから更に性能が向上しています。

ここまでの差があれば、競合モデルの新世代が出ても大きく劣るほどのことにはならなさそうな気がします。そのため、ビデオコーディング性能目的での導入なら、新世代や価格低下を待たずとも大きく後悔することにはならなさそうです。


Procyon Stable Diffusion(AIイラスト生成)

現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」での画像生成性能をUL Procyonの「AI Image Generation Benchmark」を用いて比較しています。

「Stable Diffusion 1.5」は512×512の比較的低負荷な環境でのテストで、「Stable Diffusion XL」は1024×1024の高負荷なテストとなっています。XLではVRAM容量の要求度が高くなるため、特にVRAMが8GB以下のようなGPUではパフォーマンスが極端に低下したり、テストそのものが不可能なケースが基本となります。

ベンチマークではFP32、FP16、INT8といったデータ型のオプションがありますが、各GPUで最適な環境を採用しています。

また、各社のGPUにはAIの推論性能を高めるために特化したAPIとして、Tensor RT(NVIDIA)、Open VINO(Intel)、ROCm(AMD)といったものがありますが、2024年12月時点ではROCm(AMD)は現状Windowsでのネイティブ動作に対応していません(Linux前提で、WSLを用いてWindows上でLinuxを動作させて使用することは一応可能だけど)。

そして、ProcyonがWindowsを前提としたベンチマークであるため、サポートしているのはTensor RT、Open VINO、汎用のDirect ML(ONNX)の3つとなっており、AMD製のGPU(Radeon等)のみ汎用のDirect ML(ONNX)を使わざるを得ず、低めの性能となっている点に注意が必要です。

Procyon Stable Diffusion 1.5(512×512)
GPU名称スコア
Arc B580
1517
RTX 4060
1203
Arc B570
1178
Arc A770 16GB
1102
Arc A750
1031
RX 7600 XT
737
RX 7600
705
参考:Tom’s Hardware
Procyon Stable Diffusion XL(1024×1024)
GPU名称スコア
Arc B580
1606
Arc B570
1281
Arc A770 16GB
1101
Arc A750
1020
RTX 4060
891
RX 7600 XT
547
RX 7600
381
参考:Tom’s Hardware

AI画像生成では「RTX 4060」を10GB VRAMの分で上回るが、やはりB580の方が強力

Stable DiffusionにおけるAI画像生成テストでは、低解像度テストでは「RTX 4060」と同等の性能となっていますが、高解像度テストでは大きく上回っています。

画像生成AIではVRAM使用量が多いので、少し増えるだけでも結構大きな差になります。また、実際の処理時にはVRAMが不足しているとエラーが出てしまって正常に終了しなかったりするので、低性能GPUでのVRAM差はスコア以上の差になったりします。

しかし、やはり気になるのはB580の存在です。高解像度時の性能差は大きく、12GB VRAMによる安心感も大きいので、画像生成AIを考慮するならB580の方がやはりおすすめです。

まとめ

Arc B570 10GB

良い点
  • 比較的安価(219ドル)※ただし、日本の初動価格は少し高めの4.5万円~程度
  • フルHDで優れたパフォーマンス
  • 安価で10GB VRAM搭載
  • 比較的省電力(TBP:150W)
  • 優れたレイトレーシング性能コスパ ※ただし性能が低くて実用的かは怪しい
  • 比較的優れたAI性能コスパ
  • 優れたビデオエンジン性能コスパ
  • AV1デコードおよびエンコードをサポート

気になる点
  • Arc B580(12GB)との価格差が小さい割に性能差が大きめ
  • RTX 4060に劣るワットパフォーマンス(フルHD)
  • 初動国内想定価格はやや高め(4.5万円~)
  • GPUレンダリング性能が低い(シェーダーユニット数が少ない)
  • アイドル時の消費電力が多い(ASPM有効で改善はする)
  • Resizable BARが有効じゃないとパフォーマンスが低下

Arc B570:安価で10GB VRAM。悪くはないけど、B580の方が魅力的

「Arc B570」は219ドルという安価さながら10GB VRAM搭載が魅力のエントリークラスGPUです。

ただし、正直先に登場した「Arc B580 12GB」の方が魅力的なのは否めないかなという印象ではあります。

まず実際の性能から見ていくと、フルHDにおけるゲーム性能(ラスタライズ)は「RX 7600」とほぼ同等で、ほとんどのゲームで快適なパフォーマンスを実現できます。重量級のゲームを高設定でプレイするなどしなければ、困ることはあまりないはずです。

更に、10GB VRAMとやや高めの帯域幅のおかげで高設定や1440p以上の解像度では「RX 7600」をやや上回るパフォーマンスを発揮します。

「RTX 4060」と比較すると少し劣ることが多いですが、VRAMが重要な場面では若干上回るケースもあり、実用性での差はそこまで大きくないです。

ゲームでは特に1440p性能が魅力的です。高い性能とは言えないものの、高設定じゃなければ意外と実用的な性能を保つことができることが多く、「RTX 4060」や「RX 7600」よりもVRAMによるボトルネックを回避できるため対応できるタイトルが多いです。出来るだけ安価に1440pでの安定したパフォーマンスを求めるなら有力だと思います。

また、最近はゲーム以外でも注目度の高い用途でVRAM容量が重要なことが多いため、微妙にも思える10GB VRAMが意外と活きるケースが多いのもポイントです。

Stable Diffusionによる画像生成AIテストの性能を見ると、高めの解像度(1024×1024)では「RTX 4060」を約43.8%も上回るなど、明確な優位性が見て取れました。メタバースなどの他のVRAM容量が重要な処理でも優位性が出ると思われ、広い分野でボトルネックになりにくいのは魅力的です。

このように、219ドルの安価なGPUとしては使える用途は広くて実用コスパは高いと思います。

しかし、先に登場した「Arc B580」と約5,000円の差の割には性能差が大きく、正直B580の方が魅力は大きく感じます。同じメーカーの製品が最大の障壁となってしまっています。

やはり、B570の日本での初動の実売価格は約4.5万円~となっており、219ドルの割にはやや高めなのがやはり懸念点です。「RTX 4060」や「RX 7600」と比べるなら10GB VRAMの優位性があり、使用感も大差はないので、やや高めの費用を掛けても選ぶ価値はあるとは思うものの、10GB VRAMが活きる用途以外では現状のコスパではやや劣ることになりますし、B580の方が少し高価ではあるものの、VRAM 12GBへのアップグレードもあって全体的にコスパで劣る印象が強いです。

B570→B580では、5000円の追加費用で2GB多い12GB VRAMにすることができ、ラスター性能では約11%~15%(1080p~1440p)、レイトレーシングでは約27%~ほどの優位性が得られます。また、ゲーム以外でもVRAM 12GBは活きることが多いです。5000円でこれだけの優位性が得られるなら、恐らくB580を選びたいという人の方が多いと思います。

安さが本来は強みとなるはずですが、初動価格ではそこも微妙な感じなので、B580に対して明確な魅力を感じることが難しいです。今後の値下がりに期待したいところです。

最後に電力面にも少し触れておくと、前世代の「Arc Aシリーズ」ではネックだった電力面が大幅に改善しています。ゲーミング時の平均消費電力は150W台で、「RX 7600」と近いです。

前世代では酷い電力面と最適化不足のドライバのせいで、有力な選択肢として数えることが難しかったですが、Arc Bシリーズでは電力面は格段に改善し、ドライバも前世代の登場当初よりは良くなっています。

ただ、フルHDゲームでの電力面は「RTX 4060」が強力なので、そこにはまだ大きめに劣っているレベルではありますし、これから「RTX 50」や「RX 9000」の競合製品が登場してくることを考えると、2025年に登場した新世代GPUとしてはちょっと物足りない感は否めないかなと思います。

とはいえ、前世代と違って妥協はできるレベルで、選択肢には十分入れれる思うので、地位は確実に上がったかなと思います。

といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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