2019年8月時点のIntelとAMD製CPUの付属クーラーの比較記事です。参考記事でカッチリとした科学的な検証ではないと述べていますので、参考程度にご覧ください。
本記事の内容は2019年8月時点のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
概要
2019年8月時点のIntelとAMDの最新のCPUの付属クーラーの性能を比較しています。最新はIntelは第9世代、AMDは第3世代Ryzenです。
CPU温度と騒音について、クーラー以外の条件を出来るだけ同じにして計測したテストを基に見ていきます。
事前情報として、下記に現時点(2019年8月時点)での付属CPUクーラーについて、下記の表にまとめています。
IntelのCore iシリーズの末尾Kの倍率ロックフリー(オーバークロック可能)モデルは、基本的にCPUクーラーが付属しないため、ご注意ください。
Intelは第9世代、AMDはRyzen 第3世代が対象です。
クーラー | CPU |
---|---|
AMD Wraith Prism | Ryzen 9 3900X Ryzen 7 3800X Ryzen 7 3700X |
AMD Wraith Spire Cooler | Ryzen 5 3600X Ryzen 5 3400G |
AMD Wraith Stealth Cooler | Ryzen 5 3600 Ryzen 3 3200G |
Intel Cooler (名称無し) | Intel CPU全般(末尾K除く) |
クーラー付属無し | Intelの末尾KのCPU |
CPUクーラーは別売りの空冷だと、2000円~8000円程度なので、この費用を付属クーラーで払拭できるのであれば、中々大きい要素になります。
もう少し具体的には、「虎徹 Mark II」という、価格.comのランキングで1位を保持し続けている超人気CPUクーラーが大体3000円~4500円程度なので、付属クーラーで補えるのであれば、その程度の価格が節約考えると見ると分かり易いです。
CPU温度・騒音比較
条件・環境
回転数に関しては、Intel側のクーラーのファン回転数が2100RPMより上がらないという問題が起きたため、全クーラー2100RPMを基準に設定して測定されています。Intelのクーラーは非常に回転数が多くうるさいクーラーで、第8世代の「Core i7 8700」だと高負荷時大体3000~3500RPM程度だったらしいので、想定の冷却性能を発揮できていない可能性がある事を一応留意しておきましょう。
その他、詳しい環境等については下記の参考記事に記載されていますので、気になる方はご覧ください。
結果
クーラー | CPU温度(最大) |
---|---|
AMD Wraith Prism RGB | (4100MHz,2100RPM,46dBa) 71アイドル時 31 |
AMD Wraith Spire[Cu] (初代,2世代のRyzen 7) | (4050MHz,2000RPM,45dBa) 74アイドル時 31 |
AMD Wraith Spire[Alu] | (4050MHz,2000RPM,46dBa) 77アイドル時 33 |
AMD Wraith Stealth | (4050MHz,2100RPM,44dBa) 90アイドル時 36 |
Intel Cooler[Copper] (第5世代以前) | (4000MHz,2100RPM,46dBa) 91アイドル時 38 |
Intel Cooler[Black] (第6世代~現行) | (3975MHz,2100RPM,46dBa) 95アイドル時 40 |
やはりIntel側クーラーの性能は悪い
やはりIntel側のクーラーの性能は悪いです。ここは正直想定通りですね。90度を普通に超えている上、あまりの熱さにクロックが少し下げられてしまっています。CPUパフォーマンス自体にも悪影響が出ています。
特に現行のアルミモデル、表の[Black]は非常に冷却能力が低く95度にまで達してしまっています。現行のアルミモデルはコストダウンを目的に第6世代あたりから採用されたものですが、前モデルですら十分でなかった冷却能力が更に低下してしまっています。
ファン回転数に制限は設けられているもののRyzen 5 3600という特別発熱の多くないTDP65WのCPUですらこの有様です(しかも最大出力まで到達できてない)。Intel側の付属クーラーは、TDP65WクラスのCPUに利用すべきものではないように思えます。
Intel側の付属クーラーを利用している人の中には、CPUの力を十分に発揮出来ていないにも関わらずCPUの性能不足に悩んでしまっている人は意外と多いかもしれません。
Ryzen 5 3600付属のWraith Stealthもあまり良くない
意外だったのは、Ryzen 5 3600に付属されているWraith Stealthも思ったほど良くなかったことです。冷却性能はIntel側の付属クーラーより少し良い程度。
ファン回転数に制限が掛かっているとはいえ、Intelの付属クーラーと同じく90度まで達してしまっています。
ただし、静音性能はそれなりのようなので、高回転時にもIntel側の付属クーラーほどはうるさく無さそうです。
Intelの付属クーラよりは、静音性と冷却性能共に上なので勝利とはなりますが、差はそこまで大きくないようです。「Intelよりは良い」を念頭に置いてきた自分的には少しショックでした。
Wraith Spire,Wraith Prismは高い冷却性能
RyzenのTDP95WクラスCPUの付属クーラーである「Wraith Spire」「Wraith Prism」は、付属品とは思えない冷却性能を発揮しています。
今回の検証に利用したのが、該当クーラーで本来使用を想定されているCPUよりも発熱の少ないRyzen 5 3600なので当然といえば当然ですが、Wraith StealthとIntelの付属クーラーを大きく引き離しています。いずれも80度未満に抑えており、Wraith Prismに至っては70度程度に抑えています。
CPUの性能と価格のみを見ると、現状のコスパトップCPUは「Ryzen 5 3600」という意見が主流かと思いますが、「Ryzen 5 3600X」の「Wraith Stealth」だと冷却性能が跳ね上がりますから、クーラー込みのコスパという点では一考の余地が生まれそうです。
総評
Intelの付属クーラーは酷い
Intel CPUの付属クーラーの粗悪さは、PCに多少詳しい人にとっては周知の事かと思います。そのため、ある程度は想像通りでした。
対応しているはずのTDP65WクラスのCPUで、しかもCore i7の無印よりは熱くないはずのRyzen 5 3600ですら満足に冷やせていません。クロックに制限が掛けられてしまっており限界感が滲み出ています。
Core i3 / i5ならまだしも、Core i7 / i9 クラスには付属していけないレベルの出来だと言われても仕方ないです。参考記事でも中々痛烈に批判されていました。
大手メーカーの作ったものに対して、大手のレビューサイトがここまで一切の擁護無しに痛烈に批判するのは割と珍しい気がしました。普段からベンチマークテスト等を行っている立場として思うところがあったのでしょうか。
Ryzen 5 3600の付属クーラーは思ったより微妙
Intelクーラーの粗悪さが目立ちますが、Ryzen 5 3600のWraith Stealthも割と微妙な結果となっていました。静音性は高いですし、冷却性能もIntelの付属クーラーよりは多少マシなようですが、正直悪いです。これくらいが付属クーラーとしての最低限なのではないかと思います。
対して、Ryzen 5 3600Xに付属しているWraith Spireになると一気に冷却性能が跳ね上がり、Wraith Stealthより13度もよく冷える結果となっていました(高負荷時)。
Ryzen 5 3600XはRyzen 5 3600と約6000円もの価格差の割には性能の伸びがイマイチ、という事で大きく評価されませんでしたし、自分もそうでした。しかし、この結果を受けて少し印象が変わりました。価格上昇は性能向上によるものというよりは、「性能の微増+クーラー性能アップ」という形が適切っぽいですね。
とはいえ、今なら約3,000円~4,000円で虎徹 Mark IIを買う事ができるので、付属クーラーの差を考慮しても「Ryzen 5 3600」の方がやや有利かもしれません。さすがにWraith Spireよりは虎徹の方が遥かに高性能ですからね。
Ryzen 7以上の付属クーラーは素晴らしい出来
Ryzen 7以上に付属する「Wraith Prism」は、素晴らしい冷却性能を発揮しています。ほぼ最大負荷の「Ryzen 5 3600」を、ファン回転数に制限を掛けた上でも約70度までに抑え込んでいます。現行のIntelの付属クーラーと比較すると24度もよく冷やしています。TDP105Wクラスにも付属しているクーラーなので、ある程度の良さは想定していましたが、さすがでした。回転数の制限を外せばもっとよく冷やせるでしょうし、他のクーラーを買ってタンスの肥やしにするのはちょっともったいなくすら感じるレベルです。
Intel側の最上位CPUはCore i9ですが、Core i9 9900Kは発熱が凄く、虎徹では冷却能力が足りないとされています。空冷だと7,000円以上くらいのものが必要なようです。付属クーラーでもとりあえずは使えるRyzen 9とはかなり大きな差となってしまっています。
それでは、記事は以上になります。