「GeForce RTX 4060」のざっくり性能比較・評価です。米国での希望小売価格は299ドルとなっており、国内での発売時価格は52,800円~が想定されています。
安価なゲーミングPCでの需要が期待されるGPUの性能を見ていきます。
本記事の情報は記事執筆時点(2023年6月29日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2023年5月26日時点での北米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
GPU | シェーダー ユニット数 | メモリタイプ | VRAM速度 VRAM帯域幅 | レイトレ用 ユニット数 | ダイサイズ | 消費電力 (TGP等) | 北米 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 16384 | GDDR6X 24GB 384bit | 21.0Gbps 1008GB/s | 128 | 608㎟ | 450W | 1,599ドル |
RTX 4080 | 9728 | GDDR6X 16GB 256bit | 22.4Gbps 716.8GB/s | 76 | 380㎟ | 320W | 1,199ドル |
RX 7900 XTX | 6144 | GDDR6 24GB 384bit | 20Gbps 960GB/s | 96 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 355W | 999ドル |
RX 7900 XT | 5376 | GDDR6 20GB 320bit | 20Gbps 800GB/s | 84 | 36.6㎟*6 + 300㎟ | 315W | 899ドル →799ドル? |
RTX 4070 Ti | 7680 | GDDR6X 12GB 192bit | 21.0Gbps 504GB/s | 60 | 295㎟ | 285W | 799ドル |
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB 384bit | 21.0Gbps 1008GB/s | 84 | 628.4㎟ | 450W | 1,499ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB 384bit | 19.5Gbps 936GB/s | 82 | 628.4㎟ | 350W | 1,299ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 18Gbps 576GB/s | 80 | 519㎟ | 335W | 949ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 80 | 519㎟ | 300W | 699ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB 384bit | 19Gbps 912GB/s | 80 | 628.4㎟ | 350W | 1,099ドル |
RTX 3080 10GB | 8704 | GDDR6X 10GB 320bit | 19Gbps 760GB/s | 68 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RTX 4070 | 5888 | GDDR6X 12GB 192bit | 21.0Gbps 504GB/s | 46 | 295㎟ | 200W | 599ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 72 | 519㎟ | 300W | 599ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB 256bit | 19Gbps 608GB/s | 48 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 60 | 519㎟ | 250W | 549ドル |
RTX 4060 Ti 8GB | 4352 | GDDR6 8GB 128bit | 18.0Gbps 288GB/s | 34 | 190㎟ | 160W | 399ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB 256bit | 14Gbps 448GB/s | 46 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit | 18Gbps 432GB/s | 40 | 336㎟ | 250W | 419ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB 192bit | 14Gbps 448GB/s | 38 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit | 16Gbps 384GB/s | 40 | 336㎟ | 230W | 379ドル |
Arc A770 16GB | 4096 | GDDR6 16GB 256bit | 17.5Gbps 560GB/s | 32 | 406㎟ | 225W | 349ドル |
Arc A770 8GB | 4096 | GDDR6 8GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 32 | 406㎟ | 225W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB 192bit | 15Gbps 360GB/s | 28 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RTX 4060 | 3072 | GDDR6 8GB 128bit | 17Gbps 272GB/s | 24 | 156㎟ | 115W | 299ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 17.5Gbps 288GB/s | 32 | 237㎟ | 180W | 299ドル |
Arc A750 | 3584 | GDDR6 16GB 256bit | 16Gbps 512GB/s | 28 | 406㎟ | 225W | 289ドル |
RX 7600 | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 18Gbps 288GB/s | 32 | 204㎟ | 165W | 269ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit | 16Gbps 256GB/s | 32 | 237㎟ | 160W | – |
RTX 3050 | 2560 | GDDR6 8GB 128bit | 15Gbps 224GB/s | 20 | 276㎟ | 130W | 249ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB 128bit | 14Gbps 224GB/s | 28 | 237㎟ | 132W | 239ドル |
今回見ていく「GeForce RTX 4060」はAda Lovelaceアーキテクチャ採用の「GeForce RTX 40シリーズ」におけるミドルレンジの下位に位置するGPUです。1080p(FHD)の解像度で利用するのを想定したGPUです。
しかし、「RTX 40シリーズ」ではDLSS 3を利用することができ、フレーム生成とアップスケーリングによって負荷を大幅に軽減してfpsを高めることが可能です。そのため、DLSSを利用できるゲームの場合には、より高い解像度やfpsでも実用的に利用することができる点は注目です。
価格については、「RTX 4060」の米国におけるメーカー希望小売価格(MSRP)は299ドルとなっており、日本での発売時の想定価格は52,800円~となっています(公式の紹介ページより)。詳しい性能はこの後見ていくのでそれ次第ではありますが、結論から言うと「RX 7600」が4万円ちょっと、「RX 6700 XT」や「RTX 3060 Ti」が5万円程度で購入できる現状を考えると、5万円以上の価格では競争力は正直かなり弱く感じます。
ハードウェア仕様に関しては、TSMC 4N 5nmプロセスに基づいて設計され、ダイサイズは156㎟と小型です。ダイサイズが非常に小型で、TGPも115Wと省電力なので、シングルファン仕様製品も出てくると思います。小型ケースなどでも採用しやすいですし、電源容量や発熱に余裕が出るのは強みです。
主要なコア仕様は、CUDAコアが3072、RTコアが32(第3世代)、Tensorコアが96(第4世代)などとなっています。「RTX 4060 Ti」から各コア・ユニットが約3割削減された感じになっています。それに対して価格は399ドルと299ドルで25%程度の低下なので、この時点でコスパ的には若干怪しめです。
VRAMは8GB GDDR6となっており、バス幅が128bit、メモリスピードは17.0Gbps、帯域幅は272GB/sとなっています。価格を考えれば特別悪くはない仕様ですが、先代の「RTX 3060」は12GB GDDR6(360GB/s)でしたから、明らかに悪くなっています。価格的に対抗となる「RX 7600」も近いメモリ仕様を持ちますが、269ドルと30ドル安く、日本円では5000円程度安くなると思われるので、メモリ性能や基本性能でのコスパは少し怪しめです。
現状では「RX 6700 XT(12GB , 384GB/s)」や「RTX 3060 Ti(8GB , 448~608GB/s)」も5万円程度で購入できますから、これらを考慮すると同価格帯の競合製品では一段低いメモリ性能です。
NVIDIAは前世代よりも強化されたキャッシュメモリでヒット率が高まったことにより、実行メモリ帯域幅は「453GB/s」あると主張していますが、既に登場している「RTX 4060 Ti」を見る限りそこまでの格段な実行メモリ帯域の向上があるようにも見えなかったので、やはりメモリは弱いと思います。
次に電力面ですが、TGP(総グラフィック電力)は115Wとなっています。非常に省電力です。先代の「RTX 3060」は170Wでしたから、大幅に低下しています。電源や排熱に余裕が生まれます。先代ではシングルファン仕様はほとんど出ませんでしたが、「RTX 4060」では増えると思いますので、小型ケースでの採用もかなりしやすくなると思います。
大まかな仕様面については以上ですが、最後に、その他の「RTX 40シリーズ」にも共通するシリーズの仕様にもざっと触れておきます。
まず映像コーデックの対応で、「AV1」にデコードだけでなくエンコードに対応しています。特にクリエイターの方にとっては嬉しい仕様だと思いますし、AV1は将来性があって採用率が高くなっていく可能性も高いため、これは有難いです。
次に次世代技術面です。レイトレーシングでは「RTコア」が前世代の第2世代から第3世代に更新されています。第3世代「RTコア」では「Shader Execution Reordering」などの新機能が追加され、性能が向上しています。
NVIDIAのアップスケーリング技術である「DLSS」でも対応コアである「Tensorコア」が第3世代から第4世代へと更新されています。これにより、アップグレードされた「DLSS 3」を利用することができます。「DLSS 3」では中間フレームを作成することで負荷を大幅に軽減する機能が追加されており、性能が格段向上しているとNVIDIAは主張しており、実際に負荷がかなり軽減されている結果があります。そのため、重量級のゲームを高解像度でプレイしたい場合などには非常に役立つと思います。
それでは、カタログスペックについてはここまでとして、実際の各性能についてこれから見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態でのラスタライズ性能になります。
使用されたグラフィックボードは「MSI GeForce RTX 4060 Ventus 2X OC」です。発売時の最安値付近の製品の一つです。一応オーバークロックモデルですが、ごくわずかなので性能への影響は軽微です。使用されたCPUは「Core i9-13900K」となっています。2023年6月時点でのハイエンドCPUです。
OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2023年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思いますが、RTX 4090など最新世代の超高性能GPUでは低負荷感も大きくなってきた解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 243.2 |
RX 7900 XTX | 218.2 |
RTX 4080 | 214.2 |
RX 7900 XT | 210.2 |
RTX 4070 Ti | 187.1 |
RTX 3090 Ti | 181.8 |
RTX 3090 | 166.6 |
RX 6900 XT | 162.3 |
RTX 4070 | 153.5 |
RX 6800 XT | 152.6 |
RTX 3080 10GB | 148.3 |
RTX 3070 Ti | 128.1 |
RTX 3070 | 121.3 |
RTX 4060 Ti 8GB | 114.7 |
RX 6700 XT | 110.1 |
RTX 3060 Ti | 106.4 |
RTX 4060 | 97.3 |
RX 7600 | 94.0 |
Arc A770 16GB | 91.7 |
RX 6600 XT | 88.5 |
RTX 3060 12GB | 81.3 |
RTX 3050 | 59.1 |
1080pではRTX 3060 Tiに約8.5%劣る性能
1080pでは「RTX 3060 Ti」に対して約8.5%劣る性能となっています。1080pでは快適なパフォーマンスと言えると思いますが、前世代の一つ上のモデルにも依然として負けたままのは微妙さを感じます。
「RTX 3060 Ti」は現在5万円程度でも購入できますから、価格もほぼ同額なのに性能で負けているため、コスパでは明らかに負けています。新世代のコスパを期待されるミドルレンジGPUとしては期待外れ感は否めないかなと思います。
また、記事執筆時点では1.2万円ほどの追加で購入できる「RTX 4060 Ti」に対しては約15.2%と大きめに負けているのも微妙に感じます。
115Wという少ない消費電力があるため、総合的な評価は悪くないかもしれませんが、少し値下がりしても現状の「RTX 3060 Ti」や「RX 6700 XT」に純粋なコスパでは良くて同等だと思いますし、メモリ性能の低さは変わらないので、やはり微妙感強めの印象です。
DLSS 3対応の面を考慮しても、1080pなら「RTX 3060 Ti」「RX 6700 XT」は大体のゲームをネイティブで快適なパフォーマンスを提供してくれますし、DLSSはまだ一部のタイトルでは若干の違和感を感じる部分があったりもしますから、魅力を感じにくそうです。1440pや4Kでは強みとなるかもしれませんが、1080pでは個人的にはDLSS 3込みでも評価は「RTX 3060 Ti」の方が上です。
消費電力の少なさと小型さから、小型ケースでの採用では非常に役立つと思いますが、ゲーミングコスパ重視なら現状は上位の選択肢にはならなさそうです。
また、Radeonでは「RX 7600」が対抗製品となると思いますが、そちらとの比較なら同等かわずかに有利な印象です。
価格は30ドル高いものの、性能は1080pで約3.5%上回っています。メモリ性能はほぼ同等ですし、消費電力は115Wと少ないため大きく有利です。DLSS 3対応の点もありますから、総合的には同等かわずかに有利な印象です。ただし、Radeonでも利用できるFSRにもフレーム生成が追加される噂があるので、そうなれば最新GPUの「RX 7600」にも適用されるでしょうから、今後の展開次第では優位性は小さくなる可能性はあります。
1080pの総評としては、「RTX 4060」は丁度良いパフォーマンスと価格で決して悪くはないですが、旧世代の値下がりした強力なミドルレンジGPU「RTX 3060 Ti」などと比較すると負けてしまっているため、全体の市場では現状有力とは言えないかもしれないです。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 208.7 |
RX 7900 XTX | 174.3 |
RTX 4080 | 171.8 |
RX 7900 XT | 165.4 |
RTX 3090 Ti | 144.4 |
RTX 4070 Ti | 141.8 |
RTX 3090 | 129.3 |
RX 6900 XT | 124.4 |
RX 6800 XT | 116.7 |
RTX 4070 | 115.0 |
RTX 3080 10GB | 114.8 |
RTX 3070 Ti | 97.4 |
RTX 3070 | 90.4 |
RTX 4060 Ti 8GB | 83.8 |
RX 6700 XT | 81.9 |
RTX 3060 Ti | 79.5 |
Arc A770 16GB | 70.6 |
RTX 4060 | 70.6 |
RX 7600 | 67.7 |
RX 6600 XT | 62.6 |
RTX 3060 12GB | 60.4 |
RTX 3050 | 43.2 |
1440pではRTX 3060 Ti に約11.2%劣る性能
1440pでは「RTX 3060 Ti」を約11.2%下回る性能でした。1080pの8.5%から少し差が広がっています。現状ではほぼ同額のGPUに対して1割以上の性能差があるのは、やはり微妙感があります。
NVIDIAのいう「実行メモリ帯域幅 453GB/s」を信じるなら、「RTX 3060 Ti」に対してメモリによるパフォーマンスの差はほとんど生まれないはずですが、1080p→1440pでも約2.7%の差が出ているので、やはりメモリ性能差はあると考えるべきかなと感じる結果です。
具体的なパフォーマンスについては、1440pの重めのゲームが中心かつ最高設定で平均70fps出ているので、十分実用的な性能だとは思います。ただし、やはり重量級のゲームでは100fpsに満たないケースが増えると思うので、重いゲームを1440pで運用したいならDLSS等のアップスケーリングは欲しいかなと思います。
そうなると、やはり安価でフレーム生成機能のある「DLSS 3」を使用できるのは「RTX 4060」の強みです。「RTX 3060 Ti」ではアップスケーリング機能は使えるものの、フレーム生成機能は使えないので、総合的には「RTX 4060」に軍配が上がるはずです。
ネイティブ画質なら1440pではパフォーマンス不足が気になる上、現状の競合モデルに対してもやや不利な「RTX 4060」ですが、DLSS 3を考慮すれば一気に有力になります。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 133.0 |
RX 7900 XTX | 107.5 |
RTX 4080 | 103.4 |
RX 7900 XT | 97.8 |
RTX 3090 Ti | 90.7 |
RTX 4070 Ti | 82.3 |
RTX 3090 | 79.8 |
RX 6900 XT | 73.0 |
RTX 3080 10GB | 69.6 |
RX 6800 XT | 68.2 |
RTX 4070 | 66.5 |
RTX 3070 Ti | 57.5 |
RTX 3070 | 53.5 |
RTX 3060 Ti | 46.6 |
RX 6700 XT | 45.9 |
RTX 4060 Ti 8GB | 44.7 |
Arc A770 16GB | 42.2 |
RTX 4060 | 39.2 |
RX 7600 | 35.2 |
RTX 3060 12GB | 35.0 |
RX 6600 XT | 32.0 |
RTX 3050 | 24.5 |
4KではRTX 3060 Tiに約15.9%劣る性能
4Kでは「RTX 3060 Ti」に約15.9%劣る性能となっていました。1440pから更に差が広がり、1080pと比較すると約7.4%性能差が広がりました。
ここで先代の「RTX 3060 (12GB 360GB/s)」と「RTX 3060 Ti」の性能を比較してみると、1080p→1440pで広がった差はわずか1.3%程度(-23.6%→-24.9%)です。これを見ても、やはり「RTX 4060」のメモリ性能差はネックになっていることがわかり、NVIDIAが主張する実行メモリ帯域幅はあまりアテにならないと思います。
最終的なゲーミング性能では勝るものの、単純なメモリ性能は先代よりも明らかにスペックダウンしているのは残念ではあります。
ただし、1440pのときと同じように、高解像度ではDLSS 3対応が強みです。DLSS 3対応ゲームに限れば、フレーム生成機能がある「RTX 4060」の方が「RTX 3060 Ti」よりもfpsは出るはずです。そうなるとコスパは勝りますし、消費電力も大幅に少ない「RTX 4060」の方が明らかに有利です。
ネイティブ画質にこだわる人にはさほど魅力を感じないかもしれないですが、4Kをネイティブで快適に動作させるには格段に高価なハイエンドGPUを用意する必要がありますから、予算も含めて現実的な範囲で考えるなら「RTX 4060」のDLSSをアテにするのは魅力的です。
とはいえ、上の結果ではネイティブで平均39fpsしか出ていないので、DLSSを使用してfpsが仮に2倍になったとしても80fps程度にしかなりませんから、DLSS前提にしても4Kでは快適と言えるかは微妙な点については留意です。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。
GPU名称 | 消費電力 |
---|---|
RTX 4060 | 126W |
RTX 3050 | 132W |
RTX 4060 Ti 8GB | 152W |
RX 7600 | 152W |
RX 6600 XT | 159W |
RTX 3060 | 183W |
RTX 4070 | 201W |
RTX 3060 Ti | 205W |
RX 6700 XT | 224W |
RTX 3070 | 232W |
Arc A770 16GB | 235W |
RTX 4070 Ti | 273W |
RX 6800 XT | 298W |
RTX 3070 Ti | 302W |
RTX 4080 | 304W |
RX 6900 XT | 305W |
RX 7900 XT | 319W |
RTX 3080 10GB | 336W |
RX 7900 XTX | 361W |
RTX 3090 | 368W |
RTX 4090 | 411W |
RTX 3090 Ti | 537W |
126Wと非常に少ない消費電力
ゲーム時の平均消費電力は126Wでした。TGPの115Wよりは少し多かったものの、十分に省電力です。
Radeonで対抗となる「RX 7600」にも26W少ない他、「RTX 3060 Ti」と比較すると79Wも少ないです。既存のミドルレンジGPUの中では明らかに少ない消費電力を発揮しています。
この消費電力ならシングルファンモデルも作りやすいでしょうし、ダイサイズも小型でショート基盤設計も楽なはずなので、小型ケースにも対応できる製品が多く出そうなのは嬉しいと思います。
ワットパフォーマンス
ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077」です。
GPU名称 | 1フレームあたりの消費電力 |
---|---|
RTX 4080 | 4.0W |
RTX 4090 | 4.2W |
RTX 4060 Ti 8GB | 4.5W |
RTX 4070 | 4.5W |
RTX 4070 Ti | 4.6W |
RX 7900 XTX | 4.6W |
RTX 4060 | 4.8W |
RX 7900 XT | 4.8W |
RX 7600 | 5.6W |
RTX 3070 | 6.0W |
RTX 3060 Ti | 6.2W |
RX 6900 XT | 6.3W |
RTX 3090 | 6.3W |
RX 6800 XT | 6.5W |
RTX 3080 10GB | 6.5W |
RX 6600 XT | 7.2W |
RX 6700 XT | 7.2W |
Arc A770 16GB | 7.3W |
RTX 3070 Ti | 7.3W |
RTX 3060 | 7.5W |
RTX 3090 Ti | 8.0W |
RTX 3050 | 8.0W |
非常に優れた電力効率
「RTX 4060」の電力効率は非常に優れています。「RTX 3060 Ti」と比較すると約22.6%も優れており、「RX 7600」に対しても約14.3%優れています。
省電力で非常に効率の良いGPUであることがわかります。既に登場している「RTX 40シリーズ」の中で特別優れている訳ではないものの、115Wという消費電力さも考慮すると非常に印象は良いです。
DLSS無しでの純粋なゲーミングコスパは正直最新世代GPUとしては期待外れ感も大きかった「RTX 4060」ですが、小型製品による安価化や、電源やケース費用の実質的な削減を考慮すれば、悪くない製品に思えます。
コスパ至上主義の人には魅力が薄いかとは思いますが、出来るだけ小型かつ低価格なPCで重いゲームにも対応したいという人にとっては嬉しい追加となる可能性を感じます。
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはメインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 169.3 |
RTX 4080 | 148.9 |
RTX 4070 Ti | 129.2 |
RX 7900 XTX | 122.0 |
RTX 3090 Ti | 120.7 |
RTX 3090 | 110.2 |
RX 7900 XT | 110.2 |
RTX 4070 | 108.3 |
RTX 3080 10GB | 99.7 |
RX 6900 XT | 88.6 |
RTX 3070 Ti | 85.2 |
RTX 4060 Ti 8GB | 83.8 |
RX 6800 XT | 83.3 |
RTX 3070 | 79.7 |
RTX 3060 Ti | 71.8 |
RTX 4060 | 65.6 |
Arc A770 16GB | 60.6 |
RX 6700 XT | 59.6 |
RTX 3060 12GB | 55.6 |
Arc A750 | 55.6 |
RX 7600 | 50.9 |
RX 6600 XT | 45.7 |
RTX 2060 6GB | 42.0 |
RTX 3050 | 40.3 |
RX 6600 | 39.3 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 140.3 |
RTX 4080 | 116.4 |
RTX 4070 Ti | 97.1 |
RX 7900 XTX | 96.1 |
RTX 3090 Ti | 94.8 |
RTX 3090 | 85.6 |
RX 7900 XT | 84.2 |
RTX 4070 | 79.1 |
RTX 3080 10GB | 75.4 |
RX 6900 XT | 65.3 |
RTX 3070 Ti | 61.9 |
RX 6800 XT | 61.6 |
RTX 3070 | 58.2 |
RTX 4060 Ti 8GB | 58.1 |
RTX 3060 Ti | 51.4 |
RTX 4060 | 46.0 |
Arc A770 16GB | 45.2 |
RX 6700 XT | 42.6 |
RTX 3060 12GB | 40.1 |
Arc A750 | 39.2 |
RX 7600 | 32.2 |
RX 6600 XT | 31.0 |
RTX 3050 | 28.7 |
RTX 2060 6GB | 28.6 |
RX 6600 | 26.9 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 | 97.9 |
RTX 4080 | 76.4 |
RX 7900 XTX | 63.5 |
RTX 3090 Ti | 63.3 |
RTX 4070 Ti | 61.3 |
RTX 3090 | 56.5 |
RX 7900 XT | 54.1 |
RTX 3080 10GB | 49.2 |
RTX 4070 | 48.7 |
RX 6900 XT | 41.0 |
RX 6800 XT | 38.3 |
RTX 3070 Ti | 28.8 |
RTX 3070 | 26.9 |
Arc A770 16GB | 26.2 |
RTX 4060 Ti 8GB | 25.2 |
RTX 3060 Ti | 24.2 |
RX 6700 XT | 23.0 |
RTX 3060 12GB | 22.3 |
RTX 4060 | 21.7 |
Arc A750 | 18.1 |
RTX 3050 | 13.5 |
RX 6600 XT | 11.4 |
RTX 2060 6GB | 10.7 |
RX 7600 | 10.2 |
RX 6600 | 8.7 |
レイトレーシング性能は低めだけど、1080pでは実用的だし、アップスケーリングも使える
「RTX 4060」のレイトレーシング性能は低めです。価格的に仕方ありませんが、レイトレーシングで快適なパフォーマンスを求めるならより上位のGPUをおすすめします。
しかし、動作自体は問題なく、1080pでは平均65.6fpsを記録しており普通に実用的です。
1440p以上では平均60fpsを大きく下回ってしまうため、基本アップスケーリングが前提となりますが、その際にはフレーム生成はやはり強みです。
「RTX 3060 Ti」との差は4Kでも10%程度に留まっており、ネイティブ画質よりも良好です。アップグレードされたRTコアの影響があるかもしれません。
ミドルレンジGPUでレイトレーシングでの快適なパフォーマンスを求める場合には元々アップスケーリングが前提となるため、そうなるとDLSS 3に対応した「RTX 4060」は旧世代GPUに対しては一段高い評価になると思います。
コストパフォーマンス
上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。
元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。そのため、特に4Kではやや結果が異なる可能性があるため注意です。
1フレームあたりの価格(ラスタライズ)
まずはラスタライズ性能のコスパです。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RX 6600 XT | ¥540 | ¥33,800 |
RX 6700 XT | ¥598 | ¥49,980 |
RTX 3060 Ti | ¥616 | ¥48,990 |
RX 7600 | ¥647 | ¥43,800 |
RTX 3060 12GB | ¥725 | ¥43,800 |
RX 6800 XT | ¥727 | ¥84,800 |
RTX 3070 Ti | ¥737 | ¥71,800 |
RTX 4060 | ¥748 | ¥52,800 |
Arc A770 16GB | ¥748 | ¥52,800 |
RTX 4060 Ti 8GB | ¥749 | ¥62,800 |
RTX 3070 | ¥750 | ¥67,800 |
RX 7900 XT | ¥761 | ¥125,800 |
RTX 3050 | ¥763 | ¥32,980 |
RTX 4070 | ¥781 | ¥89,800 |
RTX 3080 10GB | ¥782 | ¥89,800 |
RX 6900 XT | ¥802 | ¥99,800 |
RTX 4070 Ti | ¥845 | ¥119,800 |
RX 7900 XTX | ¥859 | ¥149,800 |
RTX 4080 | ¥1,023 | ¥175,800 |
RTX 4090 | ¥1,197 | ¥249,800 |
RTX 3090 | ¥1,400 | ¥181,000 |
悪くはないコスパだけど、旧世代のミドルレンジGPUが強いので相対的には負ける
「RTX 4060」のラスタライズコスパは悪くありません。「RTX 4060 Ti 8GB」や「RTX 3070」と同等です。
しかし、現状の旧世代ミドルレンジGPUがコスパが強いものが多数あるため、相対的に見ると弱いという感じになっています。
1440pでのフレームあたりの価格は、「RX 6600 XT」の方が約27.8%、「RX 6700 XT」の方が約20%、「RTX 3060 Ti」の方が約17.6%安いです。
ただし、上に居るのはいずれも旧世代GPUであるため、DLSS 3の機能をフル活用できるGPUでは「RTX 4060」が最も安いので、その点も考慮すると悪くはない選択肢だと思います。
1フレームあたりの価格(レイトレーシング)
次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RTX 3060 Ti | ¥953 | ¥48,990 |
RTX 4060 Ti 8GB | ¥1,081 | ¥62,800 |
RX 6600 XT | ¥1,090 | ¥33,800 |
RTX 3060 12GB | ¥1,092 | ¥43,800 |
RTX 4070 | ¥1,135 | ¥89,800 |
RTX 4060 | ¥1,148 | ¥52,800 |
RTX 3050 | ¥1,149 | ¥32,980 |
RX 6700 XT | ¥1,150 | ¥49,980 |
RTX 3070 Ti | ¥1,160 | ¥71,800 |
RTX 3070 | ¥1,165 | ¥67,800 |
Arc A770 16GB | ¥1,168 | ¥52,800 |
RTX 3080 10GB | ¥1,191 | ¥89,800 |
RTX 4070 Ti | ¥1,234 | ¥119,800 |
RX 7600 | ¥1,360 | ¥43,800 |
RX 6800 XT | ¥1,377 | ¥84,800 |
RX 7900 XT | ¥1,494 | ¥125,800 |
RTX 4080 | ¥1,510 | ¥175,800 |
RX 6900 XT | ¥1,528 | ¥99,800 |
RX 7900 XTX | ¥1,559 | ¥149,800 |
RTX 4090 | ¥1,780 | ¥249,800 |
RTX 3090 | ¥2,114 | ¥181,000 |
レイトレコスパは良い部類なので、DLSS前提なら非常に強力
レイトレコスパは良い部類です。
アップグレードされたRTコアのおかげか、高設定時にも性能があまり落ちていなかった点もありますし、DLSS 3対応の点も嬉しいので、出来るだけ安くレイトレーシングを実用的なレベルで使いたいなら魅力的な選択だと思います。
ただし、コスパ自体は特別良い訳ではないですし、ネイティブで使うには性能が低くて微妙なので、ネイティブで使いたいなら最低でも「RTX 4060 Ti」以上をおすすめします。
DLSS
DLSS性能
DLSSでどれだけfpsが向上するのかを、4つのゲームで見ていきます。また、「RTX 40シリーズ」で新たに使用可能となった「DLSS 3」の機能について整理しておきます。「DLSS 3」は「DLSS 2」のアップスケーリング機能に加え、「フレーム生成」機能が追加された新しいDLSSです。そして、フレーム生成とアップスケーリングの2つの機能は独立して使用することができます。この仕組みのおかげで、アップスケーリングとフレーム生成の個別の向上率と、相乗効果を正確に調べることが可能となっています。
DLSS 3機能 | 平均FPS |
---|---|
フレーム生成 + アップスケーリング | 120 |
フレーム生成のみ | 104 |
アップスケーリングのみ | 80 |
ネイティブ(DLSSオフ) | 64 |
DLSS 3機能 | 平均FPS |
---|---|
フレーム生成 + アップスケーリング | 104 |
フレーム生成のみ | 83 |
アップスケーリングのみ | 68 |
ネイティブ(DLSSオフ) | 49 |
DLSS 3機能 | 平均FPS |
---|---|
フレーム生成 + アップスケーリング | 107 |
フレーム生成のみ | 89 |
アップスケーリングのみ | 71 |
ネイティブ(DLSSオフ) | 54 |
DLSS 3機能 | 平均FPS |
---|---|
フレーム生成 + アップスケーリング | 169 |
フレーム生成のみ | 154 |
アップスケーリングのみ | 133 |
ネイティブ(DLSSオフ) | 114 |
DLSS 3の利用でfpsは1.5倍~2倍に向上
DLSSによるfps向上を見ると、フレーム生成とアップスケーリングの両方をオンにした場合、1.5倍~2倍の向上が見られました。4つのタイトルの内3つで約2倍のfps向上となっていました。非常に大きな向上です。
機能別の性能を見ると、従来のアップスケーリングよりもフレーム生成の方がfps向上率が高いことがわかります。fps向上を主目的とするなら、やはりDLSS 3でフレーム生成を利用できる「RTX 40シリーズ」の方が魅力的です。その点では「RTX 3060 Ti」を含む前世代GPUよりは優位性があると思います。
ただし、フレーム生成は一部のゲームやシーンではちらつきが気になったり、アップスケーリングも併せて違和感を多少感じるシーンも見受けられるようなので、その点は留意しておいた方が良いかもしれません。
また、Radeonでも利用できるFSRというアップスケーリングでも3からフレーム生成機能が追加される噂があるので、それが実装されれば、少なくとも「RX 7600」との差は少し縮まることになる可能性もあると思います。
クリエイティブ用途
比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。
一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能、「Blender」におけるGPUレンダリング性能、「SPECviewperf 2020 v3」によるOpenGL性能、AIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。
また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Core i9-13900K」と「DDR5-6600 CL34 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。
理論演算性能(FP32)
FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。
一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、まず参考に見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。
GPU名称 | FP32(TFLOPS) |
---|---|
RTX 4060 Ti 8GB 288GB/s | 22.06 |
RTX 3070 Ti 8GB 608GB/s | 21.75 |
RX 7600 8GB 288GB/s | 21.75 |
RTX 3070 8GB 448GB/s | 20.31 |
Arc A770 16GB 16GB 560GB/s | 17.20 |
RTX 3060 Ti 8GB 448GB/s | 16.20 |
RX 6800 16GB 512GB/s | 16.17 |
RTX 4060 8GB 272GB/s | 15.11 |
RX 6700 XT 12GB 384GB/s | 13.21 |
RTX 3060 12GB 12GB 360GB/s | 12.74 |
RX 6600 XT 8GB 256GB/s | 10.61 |
RTX 3050 8GB 224GB/s | 9.10 |
RX 6600 8GB 224GB/s | 8.93 |
先代から少し向上したが、VRAMがスペックダウンしているので微妙そう
「RTX 4060」のFP32は先代から少し向上しています。しかし、大幅というほどの向上では無い上、VRAMのスペックは低下しているため、クリエイティブで強いGPUとは言えないと思います。
Blender(3DのGPUレンダリング)
「Blender」は人気のある定番のレンダリングソフトです。「Blender 3.5.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。
「Blender 3.5.0」では、AMD、NVIDIA、Intel Arc GPUでレイトレーシングを使用するCycles Xエンジンが含まれているため、レイトレーシング性能も重要となります。しかし、どうやら「Blender 3.5.0」ではレイトレーシング用のコアを直接使用するのではなく、メインのGPUシェーダーを介しての処理となるようです。そのため、RTコアではなくメインのGPUコア(CUDAコア)でレイトレーシングを高速できるエンジンの「Optix」を持つGeForceに優位性があります。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RTX 4070 | 1940.1 |
RTX 4060 Ti 8GB | 1415.9 |
RTX 3070 | 1242.1 |
RTX 4060 | 1147.7 |
RTX 3060 Ti | 1108.8 |
RTX 3060 12GB | 839.9 |
RTX 3050 | 552.9 |
Arc A770 16GB | 543.1 |
RX 6700 XT | 496.7 |
RX 6800 | 473.6 |
RX 7600 | 421.6 |
RX 6600 XT | 369.0 |
RX 6600 | 332.0 |
BlenderではRTX 3060 Tiに近いGPUレンダリング性能
「RTX 4060」のBlenderにおけるGPUレンダリング性能は、「RTX 3060 Ti」に近いレベルになっています。先代よりも約36.6%も向上しています。これは意外な結果でした。
単純にコスパも良いですし、消費電力の少なさから効率も非常に良いです。性能自体は前世代のRTX 3060 Ti/RTX 3070にも劣るため、総合的に見てコスパがものすごく良いとまで言えませんが、それなりに快適な1080pと非常に優れた省電力性と効率を持つため、ライトユーザーには非常に強力な選択肢です。
SPECviewperf 2020 v3(主にOpenGL)
「SPECviewperf 2020 v3」は主にOpenGL性能を測るベンチマークです。OpenGLはクロスプラットフォームに対応した汎用型のグラフィックスライブラリとなっており、ゲームだけでなく幅広い分野で利用されています。
今回見るのは「SPECviewperf 2020 v3」の8つのテストの総合スコア(幾何平均)です。ただし、一般的にはテストに使用される処理全てを利用する人はほぼ居ないと思うため、自分が使用するアプリケーションで使用される処理について確認することが重要なことを始めに触れておきます。今回は総合的な性能で相対的な差を求めるために、幾何平均による総合スコアを用いています。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RX 6800 | 110.00 |
RX 6700 XT | 88.77 |
RX 7600 | 70.23 |
RTX 4070 | 66.71 |
RX 6600 | 62.70 |
RX 6600 XT | 55.50 |
RTX 3070 | 54.25 |
RTX 4060 Ti 8GB | 50.92 |
RTX 3060 Ti | 47.05 |
RTX 4060 | 43.51 |
RTX 3060 12GB | 35.87 |
Arc A770 16GB | 30.56 |
RTX 3050 | 26.26 |
GeForceということもあり、OpenGL性能は低め
「RTX 4060」のOpenGL性能は低いです。ゲーミング性能に近い傾向で、「RTX 3060 Ti」よりも低く「RTX 3060」よりも高いという位置です。
また、Radeonに対してはGeForceが明らかに不利となっている点に注目です。
これはGPU性能差によるものではなく、NVIDIAがゲーム向けのGeForceではOpenGL性能に制限を掛けているためです。同社のプロフェッショナル向けGPUの需要を維持するための調整です。
Radeonでも同様にプロフェッショナル向けのGPUがあるため、Radeon RXというゲーム向けGPUでは制限が掛けられていますが、その制限がGeForceよりは緩いため、ゲーム向けGPU同士の比較だとRadeonの方が明らかに良く見えます。
単純に同価格帯の製品では、VRAM性能が基本的にRadeonの方が高いということもありますし、ゲーム向けのGPUでOpenGL性能を高めたいならRadeonが大きく有利です。
Stable Diffusion(AIイラスト生成)
現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」を用いて、AIイラストの生成時間を比較しています。よく利用されるAIイラスト生成ソフトは他にもありますが「Stable Diffusion」が恐らくは一番定番と言えるものだと思います。
各GPUで「512×512の20枚の画像を生成するのに掛かる時間」を測定し、1分あたり何枚の画像を生成できるかを各GPUで算出して比較しています。
GPU名称 | 1分あたりの生成枚数 |
---|---|
RTX 4070 | 22.334 |
RTX 3070 | 15.769 |
RTX 4060 Ti 8GB | 15.404 |
RTX 3060 Ti | 13.624 |
RTX 4060 | 11.267 |
RTX 3060 12GB | 10.619 |
Arc A770 16GB | 9.164 |
RTX 3050 | 7.324 |
RX 6800 | 4.824 |
RX 6700 XT | 4.223 |
RX 7600 | 3.300 |
RX 6600 XT | 2.263 |
RX 6600 XT | 2.172 |
先代と大して変わらないAIイラスト生成性能
※現在では「Stable Diffusion」におけるパフォーマンスが従来のドライバーよりも平均2倍となるとされるRadeonのGPUドライバー「Adrenalin Edition 23.5.2」が公開されていますが、上述の結果には反映されていないので、Radeonは表記よりも高い性能となる可能性がある点に注意してください。ただし、仮に2倍の性能になってもGeForceの方が大きく有利な点は変わりません。
Stable DiffusionにおけるAIイラスト生成では、先代の「RTX 3060」から約6.1%の向上となっていました。わずかな向上です。この理由はVRAMの容量の差が関係していると思います。
例として「RTX 4070」と比較してみると、1080pゲーミングでは約1.58倍の差だったのに、Stable Diffusionでは2倍近い差になっています。Radeonを見てもVRAM容量が多いものほど性能が高い傾向が見受けられます。
このAIイラスト生成も含め、やはりクリエイティブ用途ではVRAM性能も重要なものが多いですし、DLSS 3も貢献しませんから、「RTX 4060」はクリエイティブ用途ではコスパが良いGPUではないと思います。
まとめ
GeForce RTX 4060
- 比較的安価(発売時:52,800円~)
- 非常に少ない消費電力と優れた効率
- 1080pでは優れたコスパ
- 小型で低発熱なので、小型PCにも適している
- DLSS 3に対応(フレーム生成機能に対応)
- AV1デコードおよびエンコードをサポート
- 前世代からの性能向上率が低く、RTX 3060 Tiに及ばない性能
- 低いVRAM性能(8GB 272GB/s)
- 1440p以上の解像度やレイトレーシング性能はDLS同価格帯に強いGPUが多すぎるので、相対的に微妙に感じる価格帯に強いGPUが多すぎるので、相対的に微妙に感じる
1080pで快適なパフォーマンスのミドルレンジGPU
「RTX 4060」は1080pでの重めのゲームでもそこそこの性能を発揮し、価格も安く電力面が非常に優秀なミドルレンジGPUです。
1080pゲームでのコスパは良好で、115Wの少ない消費電力と優れた効率な点や、小型で小さいケースにも対応できるメリットもあるため、既存のミドルレンジGPUよりもかなり扱いやすいのは魅力です。
先日登場した「RX 7600」も同様の1080pゲームがターゲットのGPUですが、消費電力は165Wとやや高く、シングルファン仕様への敷居が少し高いので、差別化は出来ています。ただし、「RX 7600」の方が少し安いです(30ドル)。
ただし、VRAM性能(8GB 272GB/s)が低めなこともあり、1440p以上は厳しめの性能です。先代の「RTX 3060」が12GBメモリを備えていて、安価で大容量のVRAMを搭載したモデルとして人気でしたから、このスペックダウンは残念です。
現在の市場では「RTX 3060 Ti」や「RX 6700 XT」が非常に強力なので、相対的には微妙に見えるコスパ
「RTX 4060」の1080pコスパは良い部類ですが、現状に限って言えばほぼ同額で「RTX 3060 Ti」「RX 6700 XT」があり、そちらの方が一段上の性能かつVRAM性能も高いので、相対的には微妙に見えてしまうのが本音です。
DLSS 3対応や少ない消費電力の魅力はあるため、そこに魅力を感じるなら全然悪くはない選択肢ですが、純粋な処理性能を求めるなら「RTX 3060 Ti」の方が上です。
少なくとも5万円程度の価格を維持するなら、前世代の主力のミドルレンジGPUに対して大きな競争力は持たない印象ですが、「RTX 3060 Ti」および「RX 6700 XT」が現状が恐らくほぼ底値なのに対し、「RTX 4060」は値下がりの余地がまだあると思うので、今後の値下がり次第では安さでの優位性も生まれると思います。
ただ正直、「RTX 3060 Ti」の基本性能の高さとDLSS 3込みの「RTX 4060」に魅力とで迷うなら、安定択としては少し予算を足して「RTX 4060 Ti」を選ぶのが無難には感じます。
DLSS 3をどう見るかが結構大きなポイントかも
上では「RTX 3060 Ti」や「RX 6700 XT」への競争力を疑問視する意見を書きましたが、それらを覆せる可能性があるのが「DLSS 3」です。
「DLSS 3」ではDLSS 2のアップスケーリング機能に加えてフレーム生成機能が含まれています。メインのGPUコアに頼らずにフレームを生成できるため、fpsが格段に上がるだけでなく、負荷軽減にも貢献します。「DLSS 3」のフレーム生成機能は「RTX 3060 Ti」では利用できないので、そこでは明らかに差別化することができます。
テスト結果を見ると、フレーム生成によるfps向上はアップスケーリングを上回っており、効果の高さは確かでした。一部のタイトルやシーンではちらつきが気になることもあったりなど、まだ成熟した機能とは言えないようですが、fps向上を追求するなら非常に強力ですし、その機能を現状最も安く使える「RTX 4060」は魅力的です。
5万円程度のGPUで、1440pだけでなく4Kやレイトレーシングでも実用的なパフォーマンスを実現できるというのは前代未聞で、大きな強みです。
上述のちらつきなどの違和感や、全てのゲームに対応している訳ではない点なども気になるので、その人がプレイするゲームや考え方次第だとは思いますが、そこを活かせる用途の人なら非常にコスパが良いGPUだと思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。
省電力と低価格しか魅力が無いせいか4060Tiのブーストクロックよりも高クロックなOC版が
税込みで4万5千円未満、GTX1070と相当古いカードからの買い替えですが省電力が決め手でした