AMD「Radeon RX 7600」のざっくり性能比較・評価です。リファレンスデザイン仕様品を、海外レビューを参考に見ていきます。日本での発売日は2023年5月26日の予定となっています。
最新世代で安価と言えるGPUが遂に登場します。希望小売価格は269ドルに設定されており、国内では4万円台半ばでの販売を想定しているようです。「GeForce RTX 4060(7月発売予定)」の価格が299ドル予定なので、そちらと競合することになると思われます。1080pゲーミングを想定したものになりますが、前世代からどれほどの向上となったのか見ていきたいと思います。
本記事の情報は記事執筆時点(2023年5月26日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2023年5月26日時点での北米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
GPU | シェーダー ユニット数 |
メモリタイプ | VRAM速度 VRAM帯域幅 |
レイトレ用 ユニット数 |
ダイサイズ | 消費電力 (TGP等) |
北米 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 16384 | GDDR6X 24GB 384bit |
21.0Gbps 1008GB/s |
128基 | 608㎟ | 450W | 1,599ドル |
RTX 4080 | 9728 | GDDR6X 16GB 256bit |
22.4Gbps 716.8GB/s |
76基 | 380㎟ | 320W | 1,199ドル |
RX 7900 XTX | 6144 | GDDR6 24GB 384bit |
20Gbps 960GB/s |
96基 | 36.6㎟*6 + 300㎟ |
355W | 999ドル |
RX 7900 XT | 5376 | GDDR6 20GB 320bit |
20Gbps 800GB/s |
84基 | 36.6㎟*6 + 300㎟ |
300W | 899ドル →799ドル? |
RTX 4070 Ti | 7680 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
60基 | 295㎟ | 285W | 799ドル |
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB 384bit |
21.0Gbps 1008GB/s |
84基 | 628.4㎟ | 450W | 1,499ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB 384bit |
19.5Gbps 936GB/s |
82基 | 628.4㎟ | 350W | 1,299ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit |
18Gbps 576GB/s |
80基 | 519㎟ | 335W | 949ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
80基 | 519㎟ | 300W | 699ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB 384bit |
19Gbps 912GB/s |
80基 | 628.4㎟ | 350W | 1,099ドル |
RTX 3080 10GB | 8704 | GDDR6X 10GB 320bit |
19Gbps 760GB/s |
68基 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RTX 4070 | 5888 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
46基 | 295㎟ | 200W | 599ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
72基 | 519㎟ | 300W | 599ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB 256bit |
19Gbps 608GB/s |
48基 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
60基 | 519㎟ | 250W | 549ドル |
RTX 4060 Ti 8GB | 4352 | GDDR6 8GB 128bit |
18.0Gbps 288GB/s |
34基 | 190㎟ | 160W | 399ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB 256bit |
14Gbps 448GB/s |
46 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit |
18Gbps 432GB/s |
40 | 336㎟ | 250W | 419ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB 192bit |
14Gbps 448GB/s |
38 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit |
16Gbps 384GB/s |
40 | 336㎟ | 230W | 379ドル |
Arc A770 16GB | 4096 | GDDR6 16GB 256bit |
17.5Gbps 560GB/s |
32 | 406㎟ | 225W | 349ドル |
Arc A770 8GB | 4096 | GDDR6 8GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
32 | 406㎟ | 225W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB 192bit |
15Gbps 360GB/s |
28 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
17.5Gbps 288GB/s |
32 | 237㎟ | 180W | 299ドル |
Arc A750 | 3584 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
28 | 406㎟ | 225W | 289ドル |
RX 7600 | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
18Gbps 288GB/s |
32 | 204㎟ | 165W | 269ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
16Gbps 256GB/s |
32 | 237㎟ | 160W | – |
RTX 3050 | 2560 | GDDR6 8GB 128bit |
15Gbps 224GB/s |
20 | 276㎟ | 130W | 249ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB 128bit |
14Gbps 224GB/s |
28 | 237㎟ | 132W | 239ドル |
今回見ていく「Radeon RX 7600」はRDNA 3アーキテクチャ採用の「Radeon RX 7000シリーズ」におけるミドルレンジの下位に位置するGPUです。1080p(FHD)の解像度で利用するのに最適なGPUとして設計されています。
米国におけるメーカー希望小売価格(MSRP)は269ドルです。日本では4万円台半ばでの販売が見込まれているようです。既に登場している新世代のGPUでは、日本での初動価格が海外での希望小売価格よりも高価な印象が基本でしたが、このRX 7600に関しては始めからほぼ適正価格で登場しそうなのは好印象です。また、競合モデルは7月に発売予定の「GeForce RTX 4060(299ドル:52,800円~予定)」になると思われます。
ハードウェア仕様に関しては、6nmプロセスに基づいて設計され、ダイサイズは204㎟と小型です。RX 7900シリーズではチップレット(5nm + 6nm)設計でしたが、「RX 7600」では1チップのモノシリックダイとなっています。
プロセスだけを見ると、前世代の7nmから6nmということで、微細化はそこまで進んでいませんので、5nmを基本採用するRTX 40シリーズに対して土台で若干の不利が生じている可能性はありますが、1nm差なら誤差レベルなので、最適化や設計次第で差は十分埋めれる範囲かなと思います。
主要なコア仕様は、ストリーミングプロセッサが2048、レイアクセラレーターが32、AIアクセラレーターが64などとなっています。AIアクセラレーターが追加されたことを除いたコア類の数は、前世代の「RX 6600 XT / RX 6650 XT」と同様になっています。そのため、前世代から新しいアーキテクチャになったことでどれだけの向上があったのか分かり易くなると思います。
VRAMは8GB GDDR6となっており、バス幅が128bit、メモリスピードは18.0Gbps、帯域幅は288GB/sとなっています。また、キャッシュメモリにInfinity Cacheが32MBあります。ほぼ同時発売となった「RTX 4060 Ti」とほぼ同じメモリ仕様となっています。正直良くはないメモリ性能です。1080pなら十分かと思いますが、それ以上の解像度では不安がある仕様です。
ただ、269ドル(4万円台)という安価さなので仕方ないかなという部分です。「RTX 4060 Ti」は399ドル(恐らく6万円台)でこの仕様だったために不満が生まれましたが、「RX 7600」の価格でこのメモリ仕様を叩くのは酷な気がします。
次に電力面ですが、TBP(総ボード電力)は165Wとなっています。比較的省電力で扱いやすいGPUではありますが、上のグレードである「GeForce RTX 4060 Ti 8GB(160W)」とほぼ同じなのはやや気になるところです。「RTX 4060」の115Wと比べても劣っている印象なので、電力面ではやや不利な印象を受けます。
大まかな仕様面については以上ですが、最後に、その他の「RX 7000シリーズ」にも共通する仕様にもざっと触れておきます
まず映像コーデックの対応で、「AV1」にデコードだけでなくエンコードに対応しました。「RTX 40シリーズ」と同様ですね。特にクリエイターの方にとっては嬉しい仕様だと思いますし、AV1は将来性があって採用率が高くなっていく可能性も高いため、これは有難いです。269ドルという安価なモデルでも最新のコーデック対応が得られるのは朗報です。
次に次世代技術面です。レイトレーシングでは「Ray Accelerator」が前世代の第1世代から第2世代に更新されています。前世代からパフォーマンスが50%向上したとされています。
アップスケーリングでは、AMDでは専用コアが必要のない「FSR」を推しているため、アップスケーリング用のコアの搭載はありません。そのため、「FSR」がアップグレードして性能が上がっても、それは「RX 7000」だけの向上とはならないため、競合モデルとの差にならない点に注意です。
NVIDIAでは同社の「DLSS」を、RTXシリーズが持つ「Tensorコア」によって利用可能にしていますが、一般的にこの「DLSS」の方が「FSR」よりも優れていると言われています。特に「RTX 40シリーズ」で対応した「DLSS 3」では、メインのGPUコアに負荷を掛けずに中間フレームを作成することで負荷を大幅に軽減する機能が追加されているため、該当機能を利用できる場合には「DLSS」の方が大幅に有利となる可能性があります。まだアップスケリーングは必須事項と言えるほどのものではないと思われ、決め手にする人は少ないかとは思いますが、DLSSに興味がある方は「RTX」を選ぶ必要がある点に注意です。
ただし、「RX 7000シリーズ」からはRadeonでも、AI用のコア「AI Accelerator」が搭載されるようになり、FP16における処理性能が高まっています。クリエイティブソフトや計算ソフトなどでのAI処理での差は少し縮まっているかもしれません。また、今後にAI処理を含むアップスケーリングを投入する布石とも考えられるかもしれませんので、AI分野でもRadeonは迫っていこうという意思は見えます。
それでは、カタログスペックについてはここまでとして、実際の各性能についてこれから見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態でのラスタライズ性能になります。
使用されたグラフィックボードは「GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition」です。使用されたCPUは「Core i9-13900K」となっています。2023年4月時点でのハイエンドCPUです。
OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2023年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思いますが、RTX 4090など最新世代の超高性能GPUでは低負荷感も大きくなってきた解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
251.4
|
RX 7900 XTX |
230.3
|
RTX 4080 |
225.0
|
RX 7900 XT |
210.7
|
RTX 4070 Ti |
199.9
|
RTX 3090 Ti |
196.0
|
RTX 3090 |
181.1
|
RX 6900 XT |
176.7
|
RTX 4070 |
168.6
|
RX 6800 XT |
168.1
|
RTX 3080 10GB |
164.4
|
RX 6800 |
145.4
|
RTX 3070 Ti |
140.2
|
RTX 3070 |
132.1
|
RTX 4060 Ti 8GB |
131.4
|
RX 6700 XT |
122.3
|
RTX 3060 Ti |
116.6
|
RX 7600 |
105.3
|
RX 6600 XT |
97.9
|
Arc A770 16GB |
94.9
|
RTX 3060 |
90.0
|
RTX 3050 |
65.4
|
1080pではRTX 3060 Tiに約9.7%劣る性能
1080pでは「RTX 3060 Ti」に対して約9.7%劣る性能となっています。1080pでは快適なパフォーマンスと言えると思いますし、4万円台半ばという価格を考えれば、コスパは非常に優れていると思います。
前世代の「RX 6600 XT」と比較してみると、約7.6%上回る性能を発揮しています。「RX 6600 XT」も最安4万円台半ばあたりで販売されていたため、コスパでは上回るという結果となりました。「RX 6600 XT」は前世代の中では特に優れた1080pコスパを発揮していたGPUですが、それも上回るということで、1080pの高コスパGPUの選択肢としては非常に強力になるのではないかと思います。コスパだけでなく、電力効率も向上している点や、安価ながらAV1エンコードに対応した点も嬉しいです。
しかし、未だに「RTX 3060 Ti」や「RX 6700 XT」といった、今では5万円台前半で買える前世代GPUに対して性能に溝がある点は埋められていないのはやや残念です。メモリ性能の点でも差がありますし、電力面の良さはあるものの、単純なコスパや1440pも視野に入れたい場合には前世代の値下がりしたミドルハイモデルの方が有力にも感じるくらいの向上しか得られていないとも言えるのかなとも思います。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
218.0
|
RX 7900 XTX |
189.6
|
RTX 4080 |
185.3
|
RX 7900 XT |
167.5
|
RTX 3090 Ti |
156.1
|
RTX 4070 Ti |
154.2
|
RTX 3090 |
141.4
|
RX 6900 XT |
136.3
|
RX 6800 XT |
128.1
|
RTX 4070 |
127.3
|
RTX 3080 10GB |
126.8
|
RX 6800 |
110.8
|
RTX 3070 Ti |
106.7
|
RTX 3070 |
99.9
|
RTX 4060 Ti 8GB |
96.5
|
RX 6700 XT |
90.9
|
RTX 3060 Ti |
87.3
|
RX 7600 |
74.6
|
Arc A770 16GB |
73.6
|
RX 6600 XT |
70.0
|
RTX 3060 |
66.7
|
RTX 3050 |
47.9
|
1440pではRTX 3060 Ti に約14.5%劣る性能
1440pでは「RTX 3060 Ti」を約14.5%下回る性能でした。1080pの9.7%から結構大きめに差が広がりました。
重めのゲームが中心かつ最高設定で平均74.6fps出ているので十分実用的な性能だとは思いますが、重量級のゲームでは100fpsに満たないケースが増えると思うので、1440pでメイン運用するにはやはりアップスケーリング併用(FSR)が望ましいかなと思います。
4万円台という価格なので仕方ないですが、基本性能の低さや288GB/sというVRAM帯域幅の狭さの影響が強く出ていると思います。そのため、より高性能なVRAMが搭載されることが多い一つ上のグレードの製品よりも高解像度での性能低下率は大きくなってしまいます。実用的な性能とはいえ、1440p以上を視野に入れるなら上位GPUの方がおすすめです。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能でも敷居が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
143.7
|
RX 7900 XTX |
116.8
|
RTX 4080 |
113.8
|
RTX 3090 Ti |
98.8
|
RX 7900 XT |
98.6
|
RTX 4070 Ti |
90.2
|
RTX 3090 |
87.4
|
RX 6900 XT |
79.2
|
RTX 3080 10GB |
77.0
|
RX 6800 XT |
74.1
|
RTX 4070 |
73.4
|
RX 6800 |
64.5
|
RTX 3070 Ti |
63.0
|
RTX 3070 |
58.5
|
RTX 4060 Ti 8GB |
54.0
|
RX 6700 XT |
50.6
|
RTX 3060 Ti |
50.6
|
Arc A770 16GB |
43.4
|
RX 7600 |
39.0
|
RTX 3060 |
38.4
|
RX 6600 XT |
36.3
|
RTX 3050 |
27.1
|
4KではRTX 3060と同等の性能
1080pがターゲットの安価なGPUなので仕方ないですが、4Kではやはり厳しめの結果です。
「RTX 3060 12GB」と同等の性能となっています。「RTX 3060 12GB」も現在では4万円台半ばから買えるので、4Kコスパはほぼ同じになります。やはり4KではVRAM性能が重要だと感じさせられる結果です。
「RTX 3060 Ti」には約23%劣る結果になっており、1440pの約14.5%差から更に幅が広がっています。価格的に4Kを意識するGPUではないですが、一応視野に入れておきたいという人は注意です。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。
GPU名称 | 消費電力 |
---|---|
RTX 3050 |
132W
|
RTX 4060 Ti 8GB |
152W
|
RX 7600 |
152W
|
RX 6600 XT |
159W
|
RTX 3060 |
183W
|
RTX 4070 |
201W
|
RTX 3060 Ti |
205W
|
RX 6700 XT |
224W
|
RTX 3070 |
232W
|
RX 6800 |
235W
|
RTX 4070 Ti |
273W
|
RX 6800 XT |
298W
|
RTX 3070 Ti |
302W
|
RTX 4080 |
304W
|
RX 6900 XT |
305W
|
RX 7900 XT |
320W
|
RTX 3080 10GB |
336W
|
RX 7900 XTX |
356W
|
RTX 3090 |
368W
|
RTX 4090 |
411W
|
RTX 3090 Ti |
537W
|
152Wで、RTX 4060 Tiと同等
ゲーム時の平均消費電力は、TBPの165Wよりもやや少ない152Wでした。比較的省電力で大がかりなヒートシンクが必要ないので、小型化が期待できます。小型ケースでの採用も視野に入れれそうです。
前世代の「RX 6600 XT」よりもわずかに省電力化しつつ、性能が1割程度向上していますから、電力面は前世代よりも確実に向上していることがわかります。
ただし、最新世代GPUだと「RTX 4060 Ti 8GB」と同等の消費電力となっています。効率についてはこの後見ていきますが、「RTX 4060 Ti」の方が性能は一段上なのに消費電力は同等ということで、最新世代基準では電力面は良くはない印象を受けます。
ワットパフォーマンス
ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077」です。
GPU名称 | 1フレームあたりの消費電力 |
---|---|
RTX 4080 |
4.0W
|
RTX 4090 |
4.2W
|
RTX 4060 Ti 8GB |
4.5W
|
RTX 4070 |
4.5W
|
RTX 4070 Ti |
4.6W
|
RX 7900 XTX |
4.7W
|
RX 7900 XT |
5.0W
|
RX 7600 |
5.6W
|
RX 6800 |
5.9W
|
RTX 3070 |
6.0W
|
RTX 3060 Ti |
6.2W
|
RX 6900 XT |
6.3W
|
RTX 3090 |
6.3W
|
RX 6800 XT |
6.5W
|
RTX 3080 10GB |
6.5W
|
RX 6600 XT |
7.2W
|
RX 6700 XT |
7.2W
|
RTX 3070 Ti |
7.3W
|
RTX 3060 |
7.5W
|
RTX 3090 Ti |
8.0W
|
RTX 3050 |
8.0W
|
前世代は上回るが、他の最新世代GPUと比べると低い
「RX 7600」の電力効率は、前世代と比較すると確実に向上しています。「RX 6600 XT」と比較すると約22.2%も優れた効率を発揮しています。
しかし、既に登場している他の最新世代GPUと比較すると、一段低い効率となっていることがわかります。「RTX 4060 Ti 8GB」と比べると、フレームあたりの電力は約24.4%も多いです。
また、前世代でも、特に効率が優れていた「RX 6800」「RTX 3070」「RTX 3060 Ti」と比べてみると、優位性は10%前後程度に留まっています。劇的な向上には感じられない差です。
前世代に対してなら向上しているのは間違いないですし、150Wクラスの省電力なGPUという点は揺るぎませんから、そこまで気にするほどではないかもしれませんが、ここまでの最新世代GPUを見て期待していた人には残念な結果かもしれません。
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはまだ出てさほど時間が経っていない手法な上、メインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性もあります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
188.9
|
RTX 4080 |
165.9
|
RTX 4070 Ti |
146.5
|
RTX 3090 Ti |
144.9
|
RX 7900 XTX |
143.2
|
RTX 3090 |
134.1
|
RX 7900 XT |
129.3
|
RTX 4070 |
126.2
|
RTX 3080 10GB |
121.6
|
RX 6900 XT |
103.8
|
RTX 3070 Ti |
102.1
|
RTX 4060 Ti 8GB |
97.8
|
RX 6800 XT |
97.4
|
RTX 3070 |
96.8
|
RX 6800 |
85.4
|
RX 6700 XT |
69.6
|
RTX 3060 12GB |
66.7
|
RX 7600 |
58.1
|
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
157.3
|
RTX 4080 |
132.9
|
RTX 3090 Ti |
114.0
|
RX 7900 XTX |
111.7
|
RTX 4070 Ti |
111.7
|
RTX 3090 |
101.7
|
RX 7900 XT |
98.9
|
RTX 4070 |
91.8
|
RTX 3080 10GB |
90.2
|
RX 6900 XT |
76.3
|
RTX 3070 Ti |
73.9
|
RX 6800 XT |
71.5
|
RTX 3070 |
69.3
|
RTX 4060 Ti 8GB |
68.4
|
RX 6800 |
62.2
|
RX 6700 XT |
48.6
|
RTX 3060 |
48.0
|
RX 7600 |
38.6
|
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
107.9
|
RTX 4080 |
83.3
|
RX 7900 XTX |
71.8
|
RTX 3090 Ti |
65.7
|
RTX 4070 Ti |
61.4
|
RTX 3090 |
58.6
|
RX 7900 XT |
55.8
|
RTX 3080 10GB |
50.6
|
RTX 4070 |
49.5
|
RX 6900 XT |
41.7
|
RX 6800 XT |
39.0
|
RX 6800 |
34.2
|
RTX 3070 Ti |
31.1
|
RTX 4060 Ti 8GB |
28.8
|
RTX 3070 |
28.3
|
RX 6700 XT |
25.9
|
RTX 3060 |
24.4
|
RX 7600 |
12.8
|
レイトレーシング性能は低く、アップスケーリング前提の性能
「RX 7600」のネイティブのレイトレーシング性能は低いです。重いゲームが中心かつ最高設定とはいえ、1080pでも平均60fps未満となっています。1440pでは40fpsを下回り、4Kではガクッと性能が下がり12.8fpsまで落ちます。
価格的に仕方ないですが、レイトレーシングはアップスケーリング(FSR)との同時利用が前提になるかなと思います。その場合でも、ラスター性能を見る限り1440p以上は厳しめかなという印象です。
4万円台半ばでも一応は使えるレベルなのは褒めても良いかもしれませんが、レイトレーシングを使いたいなら、上位GPUをおすすめします。
コストパフォーマンス
上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。
元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。そのため、特に4Kではやや結果が異なる可能性があるため注意です。
また、今回扱う「RTX 4060 Ti 8GB」は、初動想定価格の69,800円~というのが適正価格よりもやや高いように思われるため、後に値下がりする可能性を考慮し、想定価格よりも6,000円安い約6.4万円(63,800円)時の場合のコスパも参考までに載せています。
1フレームあたりの価格(ラスタライズ)
まずはラスタライズ性能のコスパです。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RX 6700 XT |
¥572
|
¥51,980 |
RX 7600 |
¥614
|
¥45,800(仮) |
RTX 3060 Ti |
¥628
|
¥54,800 |
RX 6600 XT |
¥640
|
¥44,800 |
RTX 4060 Ti 8GB ※約6.4万円時 |
¥661
|
¥63,800(仮) |
RX 6800 XT |
¥662
|
¥84,800 |
RTX 3060 |
¥674
|
¥44,980 |
RX 6800 |
¥684
|
¥75,800 |
RTX 3070 |
¥699
|
¥69,800 |
Arc A770 16GB |
¥717
|
¥52,800 |
RTX 4060 Ti 8GB |
¥723
|
¥69,800 |
RTX 4070 |
¥729
|
¥92,800 |
RX 6900 XT |
¥732
|
¥99,800 |
RTX 3080 10GB |
¥740
|
¥93,800 |
RTX 3070 Ti |
¥750
|
¥79,980 |
RX 7900 XT |
¥751
|
¥125,800 |
RTX 3050 |
¥768
|
¥36,800 |
RTX 4070 Ti |
¥777
|
¥119,800 |
RX 7900 XTX |
¥843
|
¥159,800 |
RTX 4080 |
¥961
|
¥178,000 |
RTX 4090 |
¥1,192
|
¥259,800 |
RTX 3090 |
¥1,315
|
¥186,000 |
非常に優れたコスパ
「RX 7600」のコスパは非常に優れています。1440pコスパは「RTX 3060 Ti」や「RX 6700 XT」と肩を並べるレベルです。上記二つは現在では5万円台前半で買える格安GPUで、非常にコスパが優れているものなので、そこと純粋なコスパで肩を並べることが出来るのは凄いです。現在登場している他の最新世代GPUと比較しても、一段優れたコスパを発揮しています。
また、このコスパは1440pのものなので、1080pではより優れたコスパを発揮するはずです。1080pコスパに特化するなら、現状トップクラスのGPUです。
1フレームあたりの価格(レイトレーシング)
次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RTX 4060 Ti 8GB ※約6.4万円時 |
¥933
|
¥63,800(仮) |
RTX 4070 |
¥978
|
¥92,800 |
RTX 3070 |
¥1,007
|
¥69,800 |
RTX 4060 Ti 8GB |
¥1,020
|
¥92,800 |
RTX 3080 10GB |
¥1,040
|
¥93,800 |
RTX 4070 Ti |
¥1,073
|
¥119,800 |
RTX 3070 Ti |
¥1,082
|
¥79,980 |
RX 6800 XT |
¥1,186
|
¥84,800 |
RX 7600 |
¥1,187
|
¥45,800(仮) |
RX 6800 |
¥1,219
|
¥75,800 |
RX 7900 XT |
¥1,272
|
¥125,800 |
RX 6900 XT |
¥1,308
|
¥99,800 |
RTX 4080 |
¥1,339
|
¥178,000 |
RX 7900 XTX |
¥1,431
|
¥159,800 |
RTX 4090 |
¥1,652
|
¥259,800 |
RTX 3090 |
¥1,829
|
¥186,000 |
レイトレコスパ自体は特別悪くないけど、性能が低いので微妙
安さのおかげで「RX 7600」のレイトレコスパは思ったほどは悪くありませんが、「RTX 40シリーズ」と比べると1~2段劣りますし、性能自体が低いので、総合的には微妙です。
「RTX 4060 Ti」か「RTX 4070」の方が、レイトレ性能とコスパの両方が大幅に上回っています。価格こそ高いですが、約2万円程度の上乗せで「RTX 4060 Ti 8GB」を選べば、1.5倍以上の性能と2割以上のコスパ向上に加え、電力効率も大きく良くなります。
価格差は大きいですが、レイトレでは明らかに「RTX 4060 Ti 8GB」の方が良いことがわかると思います。
クリエイティブ用途(AIパフォーマンス)
比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。
一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能と、「Blender」におけるGPUレンダリング、AIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。
また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Core i9-13900K」と「DDR5-6600 CL34 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。
理論演算性能(FP32)
FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。
一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、ある程度参考になるため見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。
GPU名称 | FP32(TFLOPS) |
---|---|
RTX 4060 Ti 8GB 288GB/s |
22.06
|
RTX 3070 Ti 8GB 608GB/s |
21.75
|
RX 7600 8GB 288GB/s |
21.75
|
RTX 3070 8GB 448GB/s |
20.31
|
Arc A770 16GB 16GB 560GB/s |
17.20
|
RTX 3060 Ti 8GB 448GB/s |
16.20
|
RX 6800 16GB 512GB/s |
16.17
|
RX 6700 XT 12GB 384GB/s |
13.21
|
RTX 3060 12GB 12GB 360GB/s |
12.74
|
RX 6600 XT 8GB 256GB/s |
10.61
|
RTX 3050 8GB 224GB/s |
9.10
|
RX 6600 8GB 224GB/s |
8.93
|
FP32は前世代から約2倍の性能となった
「RX 7600」のFP32は、価格の割には非常に高性能です。「RX 6600 XT」と比べると約2倍の理論性能となっています。実行性能がこの通りになるとは限りませんが、主要ソフトの一般的な動画編集をメインとするなら、前世代より優れている可能性は高いです。
ただし、VRAMの性能は価格なりの低さなので、データ量が多い処理は恐らく苦手な点には注意が必要です。
Blender(3DのGPUレンダリング)
「Blender」は人気のある定番のレンダリングソフトです。「Blender 3.5.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。
「Blender 3.5.0」では、AMD、NVIDIA、Intel Arc GPUでレイトレーシングを使用するCycles Xエンジンが含まれているため、レイトレーシング性能も重要となります。しかし、どうやら「Blender 3.5.0」ではレイトレーシング用のコアを直接使用するのではなく、メインのGPUシェーダーを介しての処理となるようです。そのため、RTコアではなくメインのGPUコア(CUDAコア)でレイトレーシングを高速できるエンジンの「Optix」を持つGeForceに優位性があります。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RTX 4060 Ti 8GB |
1415.9
|
RTX 3070 Ti |
1353.1
|
RTX 3070 |
1242.1
|
RTX 3060 Ti |
1108.8
|
RTX 3060 12GB |
839.9
|
RTX 3050 |
552.9
|
Arc A770 16GB |
543.1
|
RX 6700 XT |
496.7
|
RX 6800 |
473.6
|
RX 7600 |
421.6
|
RX 6600 XT |
369.0
|
RX 6600 |
332.0
|
Blenderでは、RTXに対して圧倒的に不利
RadeonのBlenderにおけるGPUレンダリングは、GeForceに対して依然として圧倒的に不利な状況です。
スコアを比較してみると、「RX 7600」は「RTX 3060 12GB」の半分程度のパフォーマンスしか出せていません。前世代の同グレードのGPUに対してすら圧倒的不利となっています。
全体で見てもRadeonはGeForceより下に固まっているため、GPU自体の基本性能ではなく、根本の設計で不利であることが伺えます。また、Intelの「Arc A770 16GB」が「RTX 3050」下位にきているのも性能的にはおかしいので、Radeon固有の問題というよりは、やはりNVIDIA OptiXの存在が特に大きい可能性が高そうです。
Radeon RX 7000シリーズもArcも、レイトレーシング用のコアを備えるGPUなので、あえてそれを使わないレイトレーシング性能を高める機能を今更追加する可能性は低いと思います。そのため、レイトレーシング用のコアを直接利用する機能がソフト側に盛り込まれない限りは、この差が大きく縮まることはなさそうな気がします。
何にせよ、少なくとも現状でBlenderにおけるGPUレンダリングを視野に入れるならRadeonは論外で、RTX一択です。
Stable Diffusion(AIイラスト生成)
現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」を用いて、AIイラストの生成時間を比較しています。よく利用されるAIイラスト生成ソフトは他にもありますが「Stable Diffusion」が恐らくは一番定番と言えるものだと思います。
各GPUで「512×512の20枚の画像を生成するのに掛かる時間」を測定し、1分あたり何枚の画像を生成できるかを各GPUで算出して比較しています。
GPU名称 | 1分あたりの生成枚数 |
---|---|
RTX 3070 Ti |
17.500
|
RTX 3070 |
15.794
|
RTX 4060 Ti 8GB |
15.404
|
RTX 3060 Ti |
13.624
|
RTX 3060 12GB |
10.619
|
Arc A770 16GB |
9.209
|
RTX 3050 |
7.324
|
RX 6800 |
4.824
|
RX 6700 XT |
4.223
|
RX 7600 |
3.300
|
RX 6600 XT |
2.263
|
RX 6600 XT |
2.172
|
前世代からは改善するも、依然としてRTXには圧倒的すぎる差がある
※後の2023年6月2日に、「Stable Diffusion」におけるパフォーマンスが従来のドライバーよりも平均2倍となるとされるRadeonのGPUドライバー「Adrenalin Edition 23.5.2」が公開されたため、該当ドライバー適用時には上記とは異なる結果となる可能性があります。
Stable DiffusionにおけるAIイラスト生成でも、RadeonはRTXに対して圧倒的すぎる差を付けられてしまっています。「RX 7600」は「RTX 3060 12GB」に対しても3倍以上の差を付けられており、勝負になっていません。
他のAIイラストソフトでも同様の結果になるとは限りませんが、レイトレーシング性能差を考慮しても、AIやレイトレーシングなどの次世代技術に関する最適化はRadeonはまだRTXには及ばない印象が強いので、AIやレイトレーシング用のコアを用いる処理に使うなら、現状はRTX一択だと思います。
まとめ
GeForce RTX 4060 Ti 8GB
- 比較的安価(4万円台半ば)
- 1080pで非常に優れたコスパ
- 少ない消費電力(TBP:165W)
- 前世代よりも優れたワットパフォーマンス
- AV1のデコードおよびエンコードをサポート
- RTX 3070並みのFP32理論演算性能
- 他の最新GPUよりも、性能向上率が低い
- 低いVRAM性能(8GB 288GB/s)
- レイトレーシング性能はかなり低い
1080pで非常に強力なコスパの4万円台GPU
「RX 7600」の最大のポイントはやはり1080pにおけるコスパの良さです。価格が大幅に下落した前世代GPUと比較しても劣らないコスパを発揮します。
その上で価格は4万円台半ばと安く、5万円台の「RTX 3060 Ti」や「RX 6700 XT」よりも安価です。それでいて、前世代よりは一段優れた電力効率を発揮しつつ、AV1エンコードにも対応します。1080pコスパに特化するなら非常に強力なGPUと言えます。
また、地味にFP32性能が前世代から大幅に向上しており、「RTX 3070」と同等レベルになりました。メモリ性能は変わらないですし、実行性能についてはわかりませんが、少なくとも前世代の「RX 6600シリーズ」と比べると良くなっていると思われるので、安価で動画編集にも強いGPUを欲しい人には嬉しい向上だと思います。
レイトレーシングや高解像度は厳しめの性能
1080pでは比較的快適なパフォーマンスと圧倒的なコスパを発揮する「RX 7600」ですが、レイトレーシングや高解像度では一気に地位を落とす点は留意です。
価格的に仕方ないですが、VRAM性能が低いので、1440p以上の解像度では1080pと比べて上位GPUよりも大きめに性能が低下します。1440pならまだ実用レベルを維持できてはいると思いますが、快適なパフォーマンスとは言えないケースがかなり増えると思われる点に注意です。4Kに関しては1440pからガッツリとパフォーマンスが低下するため、アップスケーリング無しでは基本厳しいです。
レイトレーシング性能も低いです。ネイティブ画質だと1080pでも高いfpsを出すことは出来ないため、アップスケーリング(FSR)が前提の性能です。それ込みでも、実用レベルなのは1080pだけな印象です。使えないことはないですが、レイトレコスパに関しては良くはないですし、上位のRTXなら性能が格段に上がる上にコスパももっと良いです。
費用は増えてしまいますが、レイトレーシングを視野に入れたいならRTXを検討することをおすすめしたいです。
性能と電力効率の向上率が他の最新GPUよりも小さめ
総合的にはさほどマイナスポイントにならないと思いますが、「RX 7600」は他の最新GPUよりも諸々の向上率が小さめな点は少しだけ気になります。
まず性能ですが、前世代でほぼ同額に位置する「RX 6600 XT」に対しての1080p性能向上率は約7.6%でした。価格が維持されるためコスパは向上しますが、新世代GPUの向上率としては物足りない感もあると思います。
とはいえ、「RTX 4060 Ti 8GB」の性能を見る限り、競合となる「RTX 4060」に対して性能は見劣りするほどではなさそうですし、1080pコスパが市場の中で秀でているのは事実なので、実際に需要への影響はさほどないかもしれないです。
次に電力効率ですが、こちらも他の最新GPUと比べるとやや低い数値でした。1440pゲーミングでの1fあたりの消費電力は「RTX 4060 Ti 8GB」よりも24.4%も多く、他の現在登場している最新GPUに対しても基本劣っています。
前世代のGPUよりは優れている数値となっていますし、消費電力自体も「TBP:165W」ということで、比較的ネックには感じにくい電力レベルだと思うものの、7月発売予定の「RTX 4060」が115Wらしいので、競争力を保てるのか少し不安があります。
もちろん「RTX 4060」の性能次第ではありますが、50Wは大きいです。一気に評価を落とす可能性もある点も考慮しておいて損は無いかなと思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。