AMD「Radeon RX 7700 XT」および「Radeon RX 7800 XT」のざっくり性能比較・評価です。海外レビューを参考に性能をざっくりと確認していきます。
本記事の情報は記事執筆時点(2023年9月8日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2023年9月8日時点での北米での希望小売価格です(判明しているもののみ)。
GPU | シェーダー ユニット数 |
メモリタイプ | VRAM速度 VRAM帯域幅 |
レイトレ用 ユニット数 |
ダイサイズ (おおよそ) |
消費電力 (TGP等) |
北米 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 4090 | 16384 | GDDR6X 24GB 384bit |
21.0Gbps 1008GB/s |
128 | 608㎟ | 450W | 1,599ドル |
RTX 4080 | 9728 | GDDR6X 16GB 256bit |
22.4Gbps 716.8GB/s |
76 | 380㎟ | 320W | 1,199ドル |
RX 7900 XTX | 6144 | GDDR6 24GB 384bit |
20Gbps 960GB/s |
96 | 36.6㎟*6 + 300㎟ |
355W | 999ドル |
RX 7900 XT | 5376 | GDDR6 20GB 320bit |
20Gbps 800GB/s |
84 | 36.6㎟*6 + 300㎟ |
300W | 899ドル →799ドル? |
RTX 4070 Ti | 7680 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
60 | 295㎟ | 285W | 799ドル |
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB 384bit |
21.0Gbps 1008GB/s |
84 | 628.4㎟ | 450W | 1,499ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB 384bit |
19.5Gbps 936GB/s |
82 | 628.4㎟ | 350W | 1,299ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit |
18Gbps 576GB/s |
80 | 519㎟ | 335W | 949ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
80 | 519㎟ | 300W | 699ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB 384bit |
19Gbps 912GB/s |
80 | 628.4㎟ | 350W | 1,099ドル |
RTX 3080 10GB | 8704 | GDDR6X 10GB 320bit |
19Gbps 760GB/s |
68 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RTX 4070 | 5888 | GDDR6X 12GB 192bit |
21.0Gbps 504GB/s |
46 | 295㎟ | 200W | 599ドル |
RX 7800 XT | 3840 | GDDR6 16GB 256bit |
19.5Gbps 624GB/s |
60 | 37.5㎟*4 + 200㎟ |
263W | 499ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
72 | 519㎟ | 300W | 599ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB 256bit |
19Gbps 608GB/s |
48 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
60 | 519㎟ | 250W | 549ドル |
RX 7700 XT | 3456 | GDDR6 12GB 192bit |
18Gbps 432GB/s |
54 | 37.5㎟*4 + 200㎟ |
245W | 449ドル |
RTX 4060 Ti 8GB | 4352 | GDDR6 8GB 128bit |
18Gbps 288GB/s |
34 | 190㎟ | 160W | 399ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB 256bit |
14Gbps 448GB/s |
46 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit |
18Gbps 432GB/s |
40 | 336㎟ | 250W | 419ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB 192bit |
14Gbps 448GB/s |
38 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB 192bit |
16Gbps 384GB/s |
40 | 336㎟ | 230W | 379ドル |
Arc A770 16GB | 4096 | GDDR6 16GB 256bit |
17.5Gbps 560GB/s |
32 | 406㎟ | 225W | 349ドル |
Arc A770 8GB | 4096 | GDDR6 8GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
32 | 406㎟ | 225W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB 192bit |
15Gbps 360GB/s |
28 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RTX 4060 | 3072 | GDDR6 8GB 128bit |
17Gbps 272GB/s |
24 | 156㎟ | 115W | 299ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
17.5Gbps 288GB/s |
32 | 237㎟ | 180W | 299ドル |
Arc A750 | 3584 | GDDR6 16GB 256bit |
16Gbps 512GB/s |
28 | 406㎟ | 225W | 289ドル |
RX 7600 | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
18Gbps 288GB/s |
32 | 204㎟ | 165W | 269ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB 128bit |
16Gbps 256GB/s |
32 | 237㎟ | 160W | – |
RTX 3050 | 2560 | GDDR6 8GB 128bit |
15Gbps 224GB/s |
20 | 276㎟ | 130W | 249ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB 128bit |
14Gbps 224GB/s |
28 | 237㎟ | 132W | 239ドル |
今回見ていく「Radeon RX 7700 XT」および「Radeon RX 7800 XT」はRDNA 3アーキテクチャ採用の「Radeon RX 7000シリーズ」に属します。どちらも1440p(WQHD)向けのGPUとされており、1080pなら高fpsでの快適なパフォーマンスを実現できるGPUとなっています。
米国におけるメーカー希望小売価格(MSRP)は、「RX 7700 XT」が449ドル、「RX 7800 XT」が499ドルとなっており、競合相手は少し価格差がありますが、それぞれ「RTX 4060 Ti」と「RTX 4070」になると思われます。
「RX 7700 XT」は「RTX 4060 Ti 8GB」よりも50ドル高価ながら、高速で容量の多い12GB VRAMを搭載しており、「RX 7800 XT」は「RTX 4070」よりも100ドルも安価ながら、同レベルの性能を持つ上に、より大容量で高速な16GB VRAMを搭載しているのがポイントです。
日本での発売時の想定価格はそれぞれ、「RX 7700 XT」が7万円台中盤~、「RX 7800 XT」が8万円台中盤~となっているようですが、正直この価格で出ても競争力は怪しめです(全くない訳ではないと思うけど)。希望小売価格的にはもう少し安いはずですし、「RTX 4070」も発売時には約10万円~という価格だったのが、現在では8万円台まで落ち込んでいる状況もあるので、恐らくは発売後にやや価格は下がるものと思われます。
ハードウェア仕様に関しては、どちらもNavi 31チップレット設計を使用しています。メインのグラフィックス機構が含まれる5nmノードのGCD(グラフィックスコンピューティングダイ)と、それを囲むように6nmノードのMCD(メモリキャッシュダイ)が4つ配置されています。
ダイサイズはGCDが約200㎟で、MCDが約37.5㎟が4つで、合計すると約350㎟です。
主要なコア仕様は、「RX 7700 XT」はコンピューティングユニットが54、ストリーミングプロセッサが3456、Ray Acceleratorが54、AI Accleratorが108、「RX 7800 XT」はコンピューティングユニットが60、ストリーミングプロセッサが3840、Ray Acceleratorが60、AI Accleratorが120などとなっています。コア仕様は、Navi 32をフル活用する「RX 7800 XT」から各10%ずつ削減されたのが「RX 7700 XT」となっています。価格差も約500ドルと450ドルとなっていて10%差なので、このコア数差と一致する形になっています。
しかし、ハードウェアの差はコアだけでなくメモリ面もあります。
「RX 7800 XT」ではMCD4つが全て有効化され、VRAMは16GB GDDR6(256bit、19.5Gbps、624GB/s)となり、加えてInfinity Cache 64MBが含まれます。500ドルのGPUとしては非常に優れたメモリとなっており、「RTX 4070」の12GB VRAM(504GB/s)を大きく上回ります。1440pまでなら12GBでも困ることはあまり無いとは思いますが、一部のVRAM容量が重量なゲームや4K環境ではより優れた性能を期待することが出来ます。
対して「RX 7700 XT」ではMCD3つが利用され、VRAMは12GB GDDR6(192bit、18.0Gbps、423GB/s)で、Infinity Cache 48MBです。「RX 7800 XT」から各仕様が25%削られ、帯域幅は約31.8%ダウンする形となっています。価格差の10%を大きく超える削減となっており、コスパではやや悪化している印象があります。価格を考えれば特別悪い仕様ではなく、1440 p以下なら基本的に問題ないメモリであるとは思うものの、50ドルしか変わらずにこの差は大きいです。
消費電力(TBP)は「RX 7700 XT」が245W、「RX 7800 XT」が263Wとなっています。前世代の「RX 6800 XT」が300Wであったことを考えれば、消費電力はやや減っており、効率が向上していることは伺えるものの、正直なところ最新世代に期待していた大きな向上ではないです。「RTX 4070」は200W、「RTX 4060 Ti 8GB」も160Wということを考えると、競合モデルに電力面では明らかに負けていることが推測されるのが懸念点の一つです。
大まかな仕様面については以上ですが、最後に、その他の「RX 7000シリーズ」にも共通する仕様にもざっと触れておきます(基本的に以前の記事のコピペです)。
まず映像コーデックの対応で、「AV1」にデコードだけでなくエンコードに対応しました。「RTX 40シリーズ」と同様です。特にクリエイターの方にとっては嬉しい仕様だと思いますし、AV1は将来性があって採用率が高くなっていく可能性も高いため、これは有難いです。市場では未だに安価な旧世代GPUが人気(特にRTX 3060 TiとRX 6700 XTあたり)ですが、これらにはAV1エンコードが含まれていないので、優位性があります。
レイトレーシングでは「Ray Accelerator」が前世代の第1世代から第2世代に更新されており、前世代からパフォーマンスが向上したとされています。
アップスケーリングでは、AMDでは専用コアが必要のない「FSR」を推しているため、アップスケーリング用のコアの搭載はありません。「FSR」はAMDが提供する技術ですが、オープンソースとして公開されており、Radeon以外のGPUでも使うことができます。そのため、FSRがアップグレードして性能が上がっても、それは「RX 7000」だけの向上とはならないため、競合モデルとの差にならない点に注意です。
対抗のNVIDIAでは、同社の「DLSS」をRTXシリーズでのみ提供(Tensorコアが必要なため)していますが、一般的にこの「DLSS」の方が「FSR」よりも優れていると言われています。フレーム生成機能についてはFSRも近々実装すると言われているものの、全体的な質ではやはり「DLSS」の方がやや上という印象なので、アップスケリーング技術を最大限生かしたいならGeForceの方が現状はやや有利です。
ただし、「RX 7000シリーズ」からはRadeonでも、AI用のコア「AI Accelerator」が搭載されるようになり、FP16における処理性能が高まっています。クリエイティブソフトや計算ソフトなどでのAI処理での差は少し縮まっているかもしれませんし、今後にAI処理を含むアップスケーリングを投入する布石とも考えられるかもしれませんので、AI分野でもRadeonは迫っていこうという意思は見えます。
それでは、カタログスペックについてはここまでとして、実際の各性能についてこれから見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。レイトレーシングやアップスケリーング等は無効の状態でのラスタライズ性能になります。
使用されたグラフィックボードは「Sapphire Radeon RX 7700 XT」と「Radeon RX 7800 XT(リファレンスモデル)」で、CPUは「Core i9-13900K」となっています。RX 7700 XTの方はリファレンスモデルではありませんが、AMDの標準設定と同じクロックを採用しており、電力制限が230Wと少し低くなっています。
OSはWindows 11が使用されています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2023年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPSを維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。ただし、RTX 4090など最新世代の超高性能GPUでは低負荷感も大きくなっているものもあります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
243.2
|
RX 7900 XTX |
218.2
|
RTX 4080 |
214.2
|
RX 7900 XT |
210.2
|
RTX 4070 Ti |
187.1
|
RTX 3090 Ti |
181.8
|
RTX 3090 |
166.6
|
RX 6900 XT |
162.3
|
RX 7800 XT |
156.5
|
RTX 4070 |
153.5
|
RX 6800 XT |
152.6
|
RTX 3080 10GB |
148.3
|
RX 7700 XT |
137.9
|
RTX 3070 Ti |
128.1
|
RTX 3070 |
121.3
|
RTX 4060 Ti 16GB |
119.9
|
RTX 4060 Ti 8GB |
119.5
|
RX 6700 XT |
110.1
|
RTX 3060 Ti |
106.4
|
RTX 4060 |
96.0
|
RX 7600 |
94.0
|
Arc A770 16GB |
91.7
|
RX 6600 XT |
88.5
|
RTX 3060 12GB |
81.3
|
RTX 3050 |
59.1
|
1080pでは十分に快適なパフォーマンス
1080pにおいてはどちらも快適なパフォーマンスを発揮し、重いゲームが中心の最高設定でも平均で144fps~165fpsクラスを実現することが出来ます。
「RX 7800 XT」は「RTX 4070」を約2%上回る結果で、同等のパフォーマンスを発揮します。重量級ゲームでも平均100fps以上を達成することができ、軽いゲームなら240fps以上も狙えると思います。RTX 4070より100ドル安い価格設定で、16GB VRAMを搭載していてこの性能は魅力的です。先代の「RX 6800 XT」と比べてみると約2.6%というわずかな向上となっており、前世代から大きな向上となっていないのは少し残念ではありますが、値下がり後には7万円台も見えそうな希望小売価格を考えると、現在の7~10万円クラスのGPU市場では非常に強力な選択肢となりそうです。
「RX 7700 XT」は「RTX 4060 Ti 8GB」を約15.4%と大きく上回る結果となっています。やや高価にはなるものの、大きい性能差なので競争力はあると思いますし、12GB VRAMのおかげで、「RTX 4060 Ti 8GB」の価格の割には弱すぎるVRAM性能の不安が払拭されるのも嬉しいと思います。
このように単体で見ると悪くないのが「RX 7700 XT」ですが、同時発売の「RX 7800 XT」と価格が50ドルしか安くならないのが微妙なところです。
1080pゲームでは「RX 7800 XT」には約12%劣る結果となっており、価格差よりもわずかに大きな低下率となっている上、VRAMが4GB多い16GB VRAMとなっている点でも大きな差があり、1440p以上やその他の用途でも強力なので、少し追加予算を払って「RX 7800 XT」を買う方がコスパ的には明らかに良いです。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
208.7
|
RX 7900 XTX |
174.3
|
RTX 4080 |
171.8
|
RX 7900 XT |
165.4
|
RTX 3090 Ti |
144.4
|
RTX 4070 Ti |
141.8
|
RTX 3090 |
129.3
|
RX 6900 XT |
124.4
|
RX 7800 XT |
119.4
|
RX 6800 XT |
116.7
|
RTX 4070 |
115.0
|
RTX 3080 10GB |
114.8
|
RX 7700 XT |
102.9
|
RTX 3070 Ti |
97.4
|
RTX 3070 |
90.4
|
RTX 4060 Ti 16GB |
87.7
|
RTX 4060 Ti 8GB |
86.9
|
RX 6700 XT |
81.9
|
RTX 3060 Ti |
79.5
|
Arc A770 16GB |
70.6
|
RTX 4060 |
69.6
|
RX 7600 |
67.7
|
RX 6600 XT |
62.6
|
RTX 3060 12GB |
60.4
|
RTX 3050 |
43.2
|
1440pでも快適と言えるパフォーマンス
1440p向けとして登場したGPUなので、1440pでも実用的な性能を発揮します。
「RX 7800 XT」は「RTX 4070」を約3.8%上回る結果となっています。恐らく価格割に優れたVRAMの恩恵も大きく、500ドルのGPU(日本では7万円台になると思われる)とは思えない1440p性能です。重めのゲームが中心の最高設定でも約120fpsということで、快適と言えるパフォーマンスです。
「RX 7700 XT」は「RTX 4060 Ti 8GB」を約18.4%上回る性能となっています。1440pでは帯域幅の低い8GB VRAMはやはりネックなので、差がやや広がっています。50ドルという価格差を考慮してもこの差は大きいので、1440p以上を考慮するなら「RX 7700 XT」の方が適していると思います。
しかし、やはり「RX 7800 XT」と50ドルしか変わらないので、少し追加予算を出して「RX 7800 XT」を選ぶ方がコスパは良いです。約16%も性能が上がります。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2023年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4090 |
133.0
|
RX 7900 XTX |
107.5
|
RTX 4080 |
103.4
|
RX 7900 XT |
97.8
|
RTX 3090 Ti |
90.7
|
RTX 4070 Ti |
82.3
|
RTX 3090 |
79.8
|
RX 6900 XT |
73.0
|
RX 7800 XT |
70.2
|
RTX 3080 10GB |
69.6
|
RX 6800 XT |
68.2
|
RTX 4070 |
66.5
|
RX 7700 XT |
57.6
|
RTX 3070 Ti |
57.5
|
RTX 3070 |
53.5
|
RTX 4060 Ti 16GB |
49.1
|
RTX 4060 Ti 8GB |
47.9
|
RTX 3060 Ti |
46.6
|
RX 6700 XT |
45.9
|
Arc A770 16GB |
42.2
|
RTX 4060 |
38.7
|
RX 7600 |
35.2
|
RTX 3060 12GB |
35.0
|
RX 6600 XT |
32.0
|
RTX 3050 |
24.5
|
4Kでも実用的な性能
1440p向けのGPUとしての登場ですが、メモリ性能が価格の割に強力なこともあり、4Kにおいても1440p以下からの性能低下率は競合GPUほどではなく、60fps基準なら実用的と言える性能です。
「RX 7800 XT」は「RTX 4070」を約5.6%上回る性能となっています。1080pの2%から差が少し広がっており、16GB VRAMによる恩恵を感じさせます。重めのゲームが中心の4K最高設定でも約70fpsを達成しており、60fps基準なら十分実用的なパフォーマンスと言えますし、軽いゲームや設定次第では100fpsも十分見える性能です。
「RX 7700 XT」は「RTX 4060 Ti 8GB」を約20.3%上回る結果となっています。大きな差です。「RTX 4060 Ti 8GB」は価格の割に弱すぎるVRAMは4Kではネックとなるため、優位性が1080pの頃から5%も増加しています。1440p以上や4Kを意識するなら、「RX 7700 XT」の方がやはりおすすめです。
ただし、例によって「RX 7800 XT」から50ドルしか安くならない割には性能差が大きく、4Kでは約21.9%も優位性を得ることができるので、どちらかを選ぶなら多少の追加予算を我慢して「RX 7800 XT」の選ぶ方が良いです。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「3840×2160(4K)」です。
GPU名称 | 消費電力 |
---|---|
RTX 4060 |
128W
|
RTX 3050 |
132W
|
RTX 4060 Ti 8GB |
152W
|
RX 7600 |
152W
|
RX 6600 XT |
159W
|
RTX 4060 Ti 16GB |
165W
|
RTX 3060 |
183W
|
RTX 4070 |
201W
|
RTX 3060 Ti |
205W
|
RX 6700 XT |
224W
|
RX 7700 XT |
228W
|
RTX 3070 |
232W
|
Arc A770 16GB |
235W
|
RX 7800 XT |
250W
|
RTX 4070 Ti |
273W
|
RX 6800 XT |
298W
|
RTX 3070 Ti |
302W
|
RTX 4080 |
304W
|
RX 6900 XT |
305W
|
RX 7900 XT |
319W
|
RTX 3080 10GB |
336W
|
RX 7900 XTX |
361W
|
RTX 3090 |
368W
|
RTX 4090 |
411W
|
RTX 3090 Ti |
537W
|
消費電力はRTX 40の方が大幅に少ない
消費電力は競合の「RTX 4070」や「RTX 4060 Ti」の方が大幅に少ないです。7800 XTと7700 XTのどちらともTBPの数値よりはやや少ない電力を記録したものの、それ込みでもRTX 40の方が明らかに省電力です。
「RX 7800 XT」は250Wとなっていました。ほぼ同等のパフォーマンスで競合の「RTX 4070」は201Wなので、大幅に劣る消費電力です。
「RX 7700 XT」は228Wとなっていました。「RTX 4060 Ti 8GB」は152Wとなっており、76Wという大きな差があります。性能では平均で約15%~20%と大きな優位を保つことが出来ていたため、明らかに不利という訳ではありませんが、排熱量やボードサイズ(ファンの数)では大きな差があるため、「RTX 4060 Ti」の方が圧倒的に扱いやすいGPUだという点は考慮しておく必要があります。
ワットパフォーマンス
ワットパフォーマンス(電力効率)を見ていきます。ゲーミング時の1フレームあたりの消費電力を算出して比較しています。測定に使用されたゲームは「Cyberpunk 2077」です。
GPU名称 | 1フレームあたりの消費電力 |
---|---|
RTX 4080 |
4.0W
|
RTX 4090 |
4.2W
|
RTX 4060 Ti 8GB |
4.5W
|
RTX 4070 |
4.5W
|
RTX 4070 Ti |
4.6W
|
RX 7900 XTX |
4.6W
|
RX 7900 XT |
4.8W
|
RX 7800 XT |
5.0W
|
RTX 4060 Ti 16GB |
5.1W
|
RTX 4060 |
5.3W
|
RX 7700 XT |
5.5W
|
RX 7600 |
5.6W
|
RTX 3070 |
6.0W
|
RTX 3060 Ti |
6.2W
|
RX 6900 XT |
6.3W
|
RTX 3090 |
6.3W
|
RX 6800 XT |
6.5W
|
RTX 3080 10GB |
6.5W
|
RX 6600 XT |
7.2W
|
RX 6700 XT |
7.2W
|
Arc A770 16GB |
7.3W
|
RTX 3070 Ti |
7.3W
|
RTX 3060 |
7.5W
|
RTX 3090 Ti |
8.0W
|
RTX 3050 |
8.0W
|
効率は前世代からは向上しているけど、最新世代GPUの中では悪めの部類
電力効率は前世代と比較すると向上しており、優れた数値です。ただし、既に登場している最新世代GPU群と比べると、やや悪めに位置します。「RX 7800 XT」と「RX 7700 XT」の両方とも最新GPUでは悪めですが、「RX 7700 XT」の方がより悪めです。
「RX 7800 XT」は、フレームあたりの電力は「RTX 4070」の方が10%少ない結果となっています。基本性能はわずかに上回っているものの、1440p以下のほとんどの場合では同等レベルのパフォーマンスですし、ゲーム時の消費電力も「RTX 4070 」の方が約50Wも少なかったので、電力面を考慮するなら「RTX 4070」の方が優位です。
次に「RX 7700 XT」を見ると、フレームあたりの電力は「RTX 4060 Ti 8GB」の方が約18.2%も少なく、大きな差があります。ゲーム時の消費電力自体も76Wという圧倒的な差があるため、排熱量にも大きな差があります。「RTX 4060 Ti」は少ない消費電力のおかげで、シングルファンのショート基盤モデルも存在し、非常に扱いやすいGPUとなっているため、電力面では「RTX 4060 Ti」の方が大幅に優位です。
性能差が大きいため一概に悪いとは言えませんが、1080pに焦点を当てるなら「RTX 4060 Ti」でも十分な性能だと思いますし、より高い性能を求めるなら「RX 7800 XT」の方がコスパ的にも優秀ですから、総合的に見ると悪い訳ではないけど、あえて選ぶ必要があるGPUではないように感じてしまいます。
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能
レイトレーシング性能を見ていきます。レイトレーシングはメインコアと別のレイトレーシング用のコアも使用するため、上述のラスタライズ性能とやや差が出る可能性があります。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 4070 Ti |
124.8
|
RTX 3090 Ti |
120.6
|
RTX 3090 |
110.4
|
RX 7900 XT |
110.2
|
RTX 4070 |
104.9
|
RTX 3080 10GB |
99.5
|
RX 7800 XT |
90.3
|
RX 6900 XT |
88.5
|
RTX 3070 Ti |
85.2
|
RTX 4060 Ti 16GB |
81.0
|
RX 6800 XT |
83.1
|
RTX 4060 Ti 8GB |
80.8
|
RTX 3070 |
79.7
|
RX 7700 XT |
78.8
|
RTX 3060 Ti |
71.8
|
RTX 4060 |
64.7
|
Arc A770 16GB |
60.6
|
RX 6700 XT |
59.6
|
RTX 3060 12GB |
55.6
|
Arc A750 |
55.6
|
RX 7600 |
50.9
|
RX 6600 XT |
45.7
|
RTX 2060 6GB |
42.0
|
RTX 3050 |
40.3
|
RX 6600 |
39.3
|
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti |
94.8
|
RTX 4070 Ti |
94.3
|
RTX 3090 |
85.4
|
RX 7900 XT |
84.2
|
RTX 4070 |
76.8
|
RTX 3080 10GB |
75.4
|
RX 7800 XT |
67.2
|
RX 6900 XT |
65.3
|
RTX 3070 Ti |
61.9
|
RX 6800 XT |
61.5
|
RTX 4060 Ti 16GB |
58.2
|
RTX 3070 |
58.2
|
RX 7700 XT |
57.6
|
RTX 4060 Ti 8GB |
56.6
|
RTX 3060 Ti |
51.4
|
RTX 4060 |
45.2
|
Arc A770 16GB |
45.2
|
RX 6700 XT |
42.6
|
RTX 3060 12GB |
40.1
|
Arc A750 |
39.2
|
RX 7600 |
32.2
|
RX 6600 XT |
31.0
|
RTX 3050 |
28.7
|
RTX 2060 6GB |
28.6
|
RX 6600 |
26.9
|
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti |
57.7
|
RTX 4070 Ti |
54.3
|
RTX 3090 |
52.9
|
RX 7900 XT |
48.2
|
RTX 3080 10GB |
44.3
|
RTX 4070 |
43.4
|
RX 7800 XT |
37.5
|
RX 6900 XT |
36.7
|
RX 6800 XT |
34.2
|
RTX 4060 Ti 16GB |
32.1
|
RX 7700 XT |
31.3
|
RTX 3070 Ti |
28.8
|
RTX 3070 |
26.9
|
Arc A770 16GB |
26.2
|
RTX 4060 Ti 8GB |
25.6
|
RTX 3060 Ti |
24.2
|
RX 6700 XT |
23.0
|
RTX 3060 12GB |
22.3
|
RTX 4060 |
21.1
|
Arc A750 |
18.1
|
RTX 3050 |
13.5
|
RX 6600 XT |
11.4
|
RTX 2060 6GB |
10.7
|
RX 7600 |
10.2
|
RX 6600 |
8.7
|
レイトレーシング性能はRTXが大きく有利
レイトレーシングについては、依然としてRTXシリーズには劣る結果となっています。
1080pでの性能を見てみると、「RX 7800 XT」は「RTX 4070」に約13.9%劣る性能となっています。上述のラスタライズ性能では基本的にわずかながら有利だったことを考えると、レイトレーシングによって15%以上の大きなギャップが生まれていることになります。
また、ラスタライズでも有利だった電力面がレイトレーシング時には更に顕著になるため、レイトレーシング時の「RTX 4070」の効率には圧倒的に劣ることになる点も留意です。
しかし、差は大きいものの、「RX 7800 XT」のレイトレーシング性能自体は十分実用的と言えるレベルにあり、前世代の「RX 6800 XT」よりは1割近くの向上に成功しています。RTXを含む前世代のGPU相手ならば悪くないレベルにはなっているので、ラスタライズ性能重視で、レイトレーシングはとりあえずは考慮しないという場合には妥協できる水準にはなっているのかなと思います。
「RX 7700 XT」の方を見てみると、「RTX 4060 Ti 8GB」に1080pで約2.5%劣るほぼ同等の性能となっています。性能だけ見ると悪くないですが、価格はやや高価な上、電力面では圧倒的に「RTX 4060 Ti」の方が有利です。こちらも実用的な性能ではあると思うものの、「RX 7800 XT」の方が効率も性能も大幅に高く、レイトレーシングのような高負荷な処理では特に少しの向上でも有難いことを考慮すると、レイトレーシングを考慮するならより他モデルの方が魅力的には見えるかなと感じます。
しかし、結局のところやはりレイトレーシングを視野に入れるなら現状はRTX 40シリーズが非常に強力なのは間違いないです。
コストパフォーマンス
上述のfpsを基にGPUの1フレームあたりの価格を算出し、コストパフォーマンスを比較しています。数値が低い方が良い点に注意です。各GPUの価格は、記事執筆時点のおおよその市場最安値価格です。ラスタライズとレイトレーシング時の両方を見ていきます。
元のゲーミング性能の解像度は1440pを用いています。4Kなどではやや結果が異なる可能性がある点に注意です。
1フレームあたりの価格(ラスタライズ)
まずはラスタライズ性能のコスパです。上述の1440pゲーム時の性能と現在の市場価格を基に、1フレームあたりの価格を算出し、コスパとして比較しています。
「RX 7800 XT」と「RX 7700 XT」の価格は、発売時の想定最安値価格で算出したものと、値下がりすることを考慮した二つの数値を掲載しています。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RX 6600 XT |
¥508
|
¥31,800 |
RX 6700 XT |
¥561
|
¥45,980 |
RX 7600 |
¥573
|
¥38,800 |
RX 7800 XT ※7.6万円 |
¥637
|
¥76,000 |
RTX 3060 12GB |
¥642
|
¥38,800 |
RTX 4060 |
¥646
|
¥44,980 |
RX 7700 XT ※6.7万円 |
¥651
|
¥67,000 |
RTX 3060 Ti |
¥654
|
¥51,980 |
RTX 3070 |
¥662
|
¥59,800 |
RTX 4060 Ti 8GB |
¥679
|
¥58,980 |
RTX 3050 |
¥690
|
¥29,800 |
RX 7700 XT ※7.4万円 |
¥717
|
¥73,800 |
RTX 3070 Ti |
¥718
|
¥69,800 |
RX 7800 XT ※8.6万円 |
¥719
|
¥85,800 |
RTX 4070 |
¥748
|
¥85,980 |
RX 7900 XT |
¥748
|
¥123,800 |
RX 6800 XT |
¥761
|
¥88,800 |
Arc A770 16GB |
¥779
|
¥55,000 |
RTX 3080 10GB |
¥774
|
¥88,800 |
RX 6900 XT |
¥786
|
¥97,800 |
RTX 4060 Ti 16GB |
¥796
|
¥69,800 |
RTX 4070 Ti |
¥818
|
¥116,000 |
RX 7900 XTX |
¥888
|
¥154,800 |
RTX 4080 |
¥1,017
|
¥174,800 |
RTX 4090 |
¥1,173
|
¥244,800 |
RTX 3090 |
¥1,392
|
¥180,000 |
発売時の価格でも最新GPUの中では悪くないコスパで、値下がりを考慮すれば在庫処分の旧世代GPUにも迫る非常に優れたコスパ
ラスタライズ性能コスパは上記のようになっており、上位は在庫処分などによる値下がりが進んだ旧世代GPUがほとんど占めている状況です。
「RX 7800 XT」および「RX 7700 XT」のラスタライズ性能コスパは、やや高価にも見える発売時価格でも、最新GPUの中では悪くありませんでした。
「RX 7800 XT」に関しては、発売時でも「RTX 4070」とほぼ同額な上、ラスタライズ性能はわずかに上回るため、コスパは少し上回ります。また、100ドル差を考慮して、ざっくり1万円ほどの価格差を想定して約7.6万円で計算すると、「RTX 3060 Ti」をも上回るコスパとなります。1440p向けGPUのコスパとしては今までにないレベルの良さとなっているため、実現すれば非常に強力な選択肢となりそうです。
「RX 7700 XT」を見てみると、意外と発売時の価格でも最新GPUの中では悪くありませんでした。とはいえ、「RTX 4060 Ti」にわずかに負けてしまっており、性能では上回るとはいえ、電力面のことなども考慮すると魅力はやや小さめの印象です。しかし、少しの値下がりを考慮すると一気に地位を上げて「RTX 4060 Ti」を上回ることが出来るので、期待値は結構あります。
発売時の「RTX 4060 Ti」との価格差が1.5万円では競争力が弱く見えますが、なんとか5,000円~8,000円くらいまでになれば魅力的な選択肢になりそうです。しかし例によって、値下がりしようがしまいが「RX 7800 XT」の方が魅力的です。
1フレームあたりの価格(レイトレーシング)
次にレイトレーシング時のコスパを見ていきます。DLSSやFSR等のアップスケーリング技術は使用していない場合のものになります。
GPU名称 | 1フレームあたりの価格 | 価格 |
---|---|---|
RTX 3060 12GB |
¥968
|
¥38,800 |
RTX 4060 |
¥995
|
¥44,980 |
RTX 3060 Ti |
¥1,011
|
¥38,800 |
RX 6600 XT |
¥1,026
|
¥31,800 |
RTX 3070 |
¥1,027
|
¥59,800 |
RTX 3050 |
¥1,038
|
¥29,800 |
RTX 4060 Ti 8GB |
¥1,042
|
¥58,980 |
RX 6700 XT |
¥1,079
|
¥45,980 |
RTX 4070 |
¥1,120
|
¥85,980 |
RTX 3070 Ti |
¥1,131
|
¥69,800 |
RX 7800 XT ※7.6万円 |
¥1,131
|
¥76,000 |
RX 7700 XT ※6.7万円 |
¥1,163
|
¥67,000 |
RTX 3080 10GB |
¥1,178
|
¥88,800 |
RTX 4060 Ti 16GB |
¥1,199
|
¥69,800 |
RX 7600 |
¥1,205
|
¥38,800 |
Arc A770 16GB |
¥1,217
|
¥55,000 |
RTX 4070 Ti |
¥1,230
|
¥116,000 |
RX 7800 XT ※8.6万円 |
¥1,277
|
¥85,800 |
RX 7700 XT ※7.4万円 |
¥1,281
|
¥73,800 |
RX 6800 XT |
¥1,444
|
¥88,800 |
RX 7900 XT |
¥1,470
|
¥123,800 |
RX 6900 XT |
¥1,498
|
¥97,800 |
RTX 3090 |
¥2,108
|
¥180,000 |
レイトレコスパはRTXに明らかに劣るし、値下げを考慮しても届かない
レイトレコスパは、競合モデルに明らかに劣っています。
フレームあたりのコストはそれぞれ、「RX 7800 XT」は「RTX 4070」より約14%高くなっており、「RX 7700 XT」は「RTX 4060 Ti 8GB」より約22.9%も高いです。
レイトレーシング性能自体も劣っている上、電力面も劣っているので、レイトレーシングに焦点を当てるならやはりRTXシリーズが大幅に優位なのは明らかな状況です。
しかも、表を見るとわかりますが、値下がりを考慮しても競合モデルにコスパで届かないので、中々厳しい状況です。
一応、一部のゲームではVRAMが8GB以下だとfpsが格段に低下するものがあるため、その場合には「RTX 4060 Ti 8GB」よりは「RX 7700 XT」が上になる可能性もありますが、総合的に不利なのは変わらないレベルの差かなと思います。
クリエイティブ用途
比較の最後は、クリエイティブ用途でのパフォーマンスを見ていきます。
一般的な動画編集等の基準性能としてFP32(単精度浮動小数点演算)の理論演算性能、「Blender」におけるGPUレンダリング性能、「SPECviewperf 2020 v3」によるOpenGL性能、AIイラスト生成ソフト「Stable Diffusion」の性能をそれぞれ見ていきたいと思います。
また、ここのテストは上述までとは異なるテストシステムを使用した海外レビュー(Tom’s Hardware)を参考にしています。「Core i9-13900K」と「DDR5-6600 CL34 32GB(16GBx2)」が使用されています。他の条件について気になる方は上述の参考リンクをご覧ください。
理論演算性能(FP32)
FP32(単精度浮動小数点演算)は、理論演算性能を示す一つの指標です。単位はTFLOPS(テラフロップス)を用います。実際のテストから算出するものではなく、シェーダーユニット数(対応の演算器の数)とクロックから計算した、理論上の処理性能を表します。製品によってクロックが異なるので、下記の表の数値と異なる可能性がある点に注意です。
一般的な動画編集においてのクリエイティブ性能は、このFP32とVRAMの性能(データ量が多い処理の場合)によって比例する傾向があります。実際「Premiere Pro CC」や「Davinci Resolve」などの主要な動画編集ソフトでの編集やプレビュー速度はある程度比例する傾向があるので、まず参考に見ていこうと思います(完全に一致する訳ではないので注意)。
GPU名称 | FP32(TFLOPS) |
---|---|
RX 7800 XT 16GB 624GB/s |
37.32
|
RX 7700 XT 12GB 432GB/s |
35.17
|
RTX 3080 10GB 760GB/s |
29.77
|
RTX 4070 12GB 504GB/s |
29.15
|
RTX 4060 Ti 8GB / 16GB 288GB/s |
22.06
|
RTX 3070 Ti 8GB 608GB/s |
21.75
|
RX 7600 8GB 288GB/s |
21.75
|
RX 6800 XT 16GB 512GB/s |
20.74
|
RTX 3070 8GB 448GB/s |
20.31
|
Arc A770 16GB 16GB 560GB/s |
17.20
|
RTX 3060 Ti 8GB 448GB/s |
16.20
|
RX 6800 16GB 512GB/s |
16.17
|
RTX 4060 8GB 272GB/s |
15.11
|
RX 6700 XT 12GB 384GB/s |
13.21
|
RTX 3060 12GB 12GB 360GB/s |
12.74
|
RX 6600 XT 8GB 256GB/s |
10.61
|
RTX 3050 8GB 224GB/s |
9.10
|
RX 6600 8GB 224GB/s |
8.93
|
FP32性能は競合モデルを大きく上回る
「RX 7000シリーズ」ではFP32性能が全体的に格段に向上しているため、「RX 7800 XT」と「RX 7700 XT」も競合の「RTX 4070」や「RTX 4060 Ti」よりも大きく優れた理論性能を持ちます。
あくまで参考程度の性能ではありますが、後述のAI処理やレンダリングなどを考慮しない、一般的な主要動画編集ソフトでの作業に焦点を当てるなら、実は「RX 7000シリーズ」はVRAM性能が高いこともあり、カタログスペック上は非常に強力です。
Blender(3DのGPUレンダリング)
「Blender」は人気のある定番のレンダリングソフトです。「Blender 3.5.0」を用いた「Blender Benchmark」の3つのテスト結果の幾何平均を総合スコアとし、比較していきます。
「Blender 3.5.0」では、AMD、NVIDIA、Intel Arc GPUでレイトレーシングを使用するCycles Xエンジンが含まれているため、レイトレーシング性能も重要となります。しかし、どうやら「Blender 3.5.0」ではレイトレーシング用のコアを直接使用するのではなく、メインのGPUシェーダーを介しての処理となるようです。そのため、RTコアではなくメインのGPUコア(CUDAコア)でレイトレーシングを高速できるエンジンの「Optix」を持つGeForceに優位性があります。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RTX 4070 |
1940.1
|
RTX 4060 Ti 8GB |
1415.9
|
RTX 4060 Ti 16GB |
1368.7
|
RTX 3070 |
1242.1
|
RTX 4060 |
1147.7
|
RTX 3060 Ti |
1108.8
|
RX 6900 XT |
906.1
|
RX 6800 XT |
840.9
|
RTX 3060 12GB |
839.9
|
RX 7800 XT |
752.6
|
Arc A770 16GB |
691.1
|
RX 6800 |
661.1
|
RX 7700 XT |
649.7
|
RTX 3050 |
552.9
|
RX 6700 XT |
489.2
|
BlenderのレンダリングはGeForceが圧倒的に優位
Blenderにおけるレンダリング性能は、未だにGeForceが圧倒的に優位です。
「RX 7800 XT」は「RTX 4070」の4割ほどの性能ですし、「RX 7700 XT」も「RTX 4060 Ti 8GB」の半分未満の性能です。実はこれでも少し前からややドライバーの最適化によって性能が向上した後なのですが、元の差が大きすぎて優位性が揺らぐ可能性は感じないレベルです。
処理の仕組みがGeForce有利に働いているので仕方がなく、この劇的な差が維持されるかは各GPUメーカーのドライバなどによる改善や、ソフト側の最適化によるものの、少なくとも現状Blenderでのレンダリングを想定するならGeForce一択です。
SPECviewperf 2020 v3(OpenGL)
「SPECviewperf 2020 v3」はOpenGL性能を測るベンチマークです。OpenGLはクロスプラットフォームに対応した汎用型のグラフィックスライブラリとなっており、ゲームだけでなく幅広い分野で利用されています。
今回見るのは「SPECviewperf 2020 v3」の8つのテストの総合スコア(幾何平均)です。ただし、一般的にはテストに使用される処理全てを利用する人はほぼ居ないと思うため、自分が使用するアプリケーションで使用される処理について確認することが重要な点は留意しておきましょう。今回は総合的な性能で相対的な差を求めるために、幾何平均による総合スコアを用いています。
GPU名称 | 総合スコア(幾何平均) |
---|---|
RX 6900 XT |
146.03
|
RX 6800 XT |
130.35
|
RX 7800 XT |
129.15
|
RX 7700 XT |
112.95
|
RX 6800 |
110.00
|
RX 6700 XT |
88.77
|
RTX 4070 |
66.71
|
RTX 3070 |
54.25
|
RTX 4060 Ti 8GB |
50.92
|
RTX 3060 Ti |
47.05
|
RTX 4060 |
43.51
|
RTX 3060 12GB |
35.87
|
Arc A770 16GB |
30.56
|
RTX 3050 |
26.26
|
OpenGL性能はGeForceより圧倒的に優位
OpenGL性能はGeForceよりも圧倒的に優位です。
この差はGPU性能差によるものではなく、NVIDIAがゲーム向けのGeForceではOpenGL性能に制限を強く掛けているためです。同社のプロフェッショナル向けGPUの需要を維持するための調整となっています。
Radeonでも同様にプロフェッショナル向けのGPUがあるため、Radeon RXというゲーム向けGPUでは制限が掛けられていますが、その制限がGeForceよりは緩いため、ゲーム向けGPU同士の比較だとRadeonの方が明らかに良く見えるという状況になっています。
差を見てみると、「RX 7800 XT」は「RTX 4070」よりも約1.94倍高性能で、「RX 7700 XT」は「RTX 4060 Ti 8GB」よりも約2.22倍高性能となっています。大体競合モデル相手に、2倍前後の優位性があるという感じになっています。
何にせよ、ゲーム向けのGPUでOpenGL性能を重視するなら、Radeonの方が圧倒的に優位となっています。
Stable Diffusion(AIイラスト生成)
現在、AIイラストソフトで人気のある「Stable Diffusion」を用いて、AIイラストの生成時間を比較しています。よく利用されるAIイラスト生成ソフトは他にもありますが「Stable Diffusion」が恐らくは一番定番と言えるものだと思います。
各GPUで「512×512の20枚の画像を生成するのに掛かる時間」を測定し、1分あたり何枚の画像を生成できるかを各GPUで算出して比較しています。
GPU名称 | 1分あたりの生成枚数 |
---|---|
RTX 4070 |
22.334
|
RTX 3070 |
15.769
|
Arc A770 16GB |
15.504
|
RTX 4060 Ti 8GB |
15.404
|
RTX 4060 Ti 16GB |
15.182
|
RTX 3060 Ti |
13.624
|
RTX 4060 |
11.267
|
RX 7800 XT |
10.800
|
RTX 3060 12GB |
10.619
|
RX 7700 XT |
8.821
|
RX 6900 XT |
8.136
|
RX 6800 XT |
7.424
|
RTX 3050 |
7.324
|
RX 6800 |
6.593
|
RX 6700 XT |
5.235
|
AIイラスト生成はGeForceが圧倒的に有利
Stable DiffusionにおけるAIイラスト生成でも、GeForceが圧倒的に有利となっています。
「RX 7800 XT」よりも「RTX 4070」の方が約2.1倍高速で、「RX 7700 XT」よりも「RTX 4060 Ti 8GB」の方が約1.75倍高速です。AIイラスト生成を今すぐ始めたいなら、やはりGeForce一択です。
ただ、結果だけを見ると大敗ですが、実はこれでもRadeon側はドライバによる改善が進んで差を縮めていたりします。恐らく今後も改善が続けられていくと思われ、希望が無い訳でもないので、現状AIイラスト生成をすぐにしたい訳ではないなら、ラスタライズ性能コスパとVRAMが優秀なRadeonを選ぶというのも無しではないかなと思います。
とはいえ、現状でこれだけの差がありますし、現在の消費者や企業が今入手可能な最大コスパの製品を求めるのは当然ですから、当面はGeForceがこの面では優位性を持ち続け、選ばれ易い要因の一つとして残るのかなと思います。
まとめ
Radeon RX 7800 XT
- RTX 4070をわずかに上回る性能でより安価(100ドル差)
- 16GB VRAMが価格の割に非常に良い
- 最新GPUの中で優れたコスパと魅力のある価格設定(値下がり考慮なら旧世代の高コスパGPUにも匹敵)
- 前世代から向上した電力効率
- 実用的なレイトレーシング性能
- AV1デコードおよびエンコードをサポート
- レイトレーシング性能はRTX 4070に劣る
- RTX 4070に劣る電力面(消費電力と効率)
- アップスケーリングはFSR次第(3でフレーム生成実装予定)
Radeon RX 7700 XT
- RTX 4060 Tiよりもラスタライズで大幅に高性能で、レイトレーシングでも同等の性能
- 価格の割に優れたVRAM(12GB、432GB/s)
- 最新GPUの中で優れたコスパと魅力のある価格設定(値下がり考慮なら旧世代の高コスパGPUにも匹敵)
- 前世代からやや向上した電力効率
- 実用的なレイトレーシング性能
- AV1デコードおよびエンコードをサポート
- RX 7800 XTから50ドルしか安くならないのに、メモリ性能が大きく低下(12GB 432GB/s と 16GB 624GB/s)
- RTX 4060 Ti 8GBよりもやや高価
- RTX 4060 Tiに大きく劣る電力面(消費電力と効率)
- アップスケーリングはFSR次第(3でフレーム生成実装予定)
RX 7800 XT:16GB VRAMと強力なコスパを魅力的な価格で実現
「RX 7800 XT」は、499ドルという「RTX 4070」の599ドルを100ドルも下回る価格設定で、わずかに上回るラスタライズ性能と16GB VRAMを提供するのが魅力の高性能GPUです。発売時の価格は約86,800円~となっており、現在の「RTX 4070」とほぼ同額ですが、希望小売価格を考えれば最終的には7万円台を期待することができます。
ラスライズ性能は「RTX 4070」と同等かわずかに上なので、仮に同額でもコスパでは上回ることになります。更には「RX 7800 XT」には16GB VRAMの優位性もあるため、非常に魅力的です。値下げを考慮すれば更なるコスパの向上が期待できるのもプラス材料です。「RTX 4060 Ti」の評判があまり評判が良くなかったこともあり、6~9万円程度の価格帯では「RTX 4070」が大きな競争力を持っている印象でしたが、その状況を変える可能性を感じるGPUです。
また、「RX 7000シリーズ」ではFP32性能が格段に向上しており、「RTX 4070」よりも約28%も優れています。VRAM容量が16GBという点も優位性があるため、動画編集における基本性能でも優位であることが期待できます。OpenGLでもGeForceほど制限がきつくないので、一部のアプリ開発などでも優位なのも一部の人には魅力だと思います。
このように、特にラスタライズ性能と価格とVRAMでは大きな魅力を感じる「RX 7800 XT」ですが、「RTX 4070」と比較してすると気になる注意点が結構ある点は注意です。
まずは消費電力です。「RX 7800 XT」はTBPが263Wに設定されており、実際のゲームテストでは250Wを記録していますが、「RTX 4070」は200Wしか必要としません。同等レベルの性能ということを考えると大きな差です。
200Wでも少ないという消費電力ではなく、小型モデルは難しいと思われるので、実用上で劇的な差が生まれる訳ではありませんが、少しでも発熱と消費電力を抑えたい場合には気になる人も居ると思います。
次に、レイトレーシング性能です。レイトレーシング性能は依然としてRTXが有利な状況が続いており、「RTX 4070」の方が1080p~1440pで約14%ほど高い性能となっていました。価格は「RX 7800 XT」の方が安いですし、性能も実用的ではあるので、圧倒的に不利というほどではないとも言えますが、上述の電力面の不利も併せて考えると、やはりレイトレーシングを前提とする場合には「RTX 4070」の方が適しているのは間違いないと思います。
また、今後の改善を見込める部分ではありますが、「BlenderのGPUレンダリング」や「AI関連処理」についても、現状ではGeForceが大幅に有利という点も考慮する必要があります。特に、AIイラスト生成を代表とするAI関連処理は、現在非常に注目度が高い分野なので、ここが現状で劣っているというのは大きそうです。
ただし、先にも触れた通り、これはGPU自体の性能不足というよりは恐らくドライバやソフト側の最適化不足が主な要因で思われるため、今後改善する可能性はありそうなので、今すぐにやりたい訳ではなくラスタライズ性能やVRAM容量を重視するなら、大きなネックとまでは言えないかもしれません。
「RX 7800 XT」の総評としては、価格の割に非常に強力な16GB VRAMを搭載しつつ、「RTX 4070」に対して優位な価格とラスタライズ性能を提供するのが大きな強みの競争力のあるGPUだと思います。GPUとしての基本性能を重視するなら、「RTX 4070」よりも魅力的で競争力のあるGPUに仕上がっています。
しかし、その一方で、基本性能以外で考慮した方が良い注意点が結構あることは見逃せません。特に、レイトレーシングやAIなどの新しめの処理に関しては「RTX 4070」に分がある上、電力面でも「RTX 4070」の方が優位なので、基本性能コスパに特化するよりも、あらゆる用途でそれなりのコスパと優れた効率を実現したいのなら、「RTX 4070」の方が優位性があります。
RX 7700 XT:RX 7800 XTから50ドルしか安くならない
「RX 7700 XT」は、単体で見ると意外と悪くないのですが、「RX 7800 XT」から50ドルしか安くならないのに、各コアの1割減だけでなく、VRAMが16GB→12GBと大きく減量され、帯域幅も大幅に削減されてしまうのが気になるGPUです。また、その代わりに消費電力も大きく削減されれば話が変わったかもしれませんが、TBPの差はわずか18Wとなっており、要件がほぼ変わらないのも残念な理由の一つです。
性能に関しては案の定、恐らくVRAM性能差が大きく、解像度が高くなるごとに「RX 7800 XT」との性能差も大きくなっている結果も見受けられたこともあり、総合コスパでは「RX 7800 XT」の方が良く見えます。そのため、50ドル差(日本だと多分8,000円~9,000円差くらい)という価格設定のままなら「RX 7700 XT」を選ぶくらいなら少し追加費用を出して「RX 7800 XT」を買う方がおすすめです。
一応、50ドル下で競合となると思われる「RTX 4060 Ti 8GB」との比較を見てみると、ラスタライズ性能では1080p~4Kで15%~20%と大きな優位性がありました。価格はやや高くなるものの、VRAM 12GBの優位性もありますし、1080pでより快適なパフォーマンスや、1440pも視野に入れる場合には悪くは無さそうな選択肢です。
ただし、レイトレーシングでは同等レベルまで低下してしまう上、電力面では圧倒的に「RTX 4060 Ti」の方が優れているのに、「RX 7700 XT」の方が高価というのが気になるところです。
更に、現状のRadeonには「Blenderのレンダリング性能」や「AI」関連処理などでGeForceが有利な点も考慮しなければならず、基本性能だけを見ると悪くないのに、少し踏み込んでみると、優先して選ぶ理由を探すのが難しいため、予想を超える値下げが行われない限りは、検討する理由はほぼ無いように感じてしまうGPUです。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。