「GeForce RTX 3080 Ti(FE版)」のざっくり性能比較・評価です。
追記:マイニング性能が制限されている旨を追記しました。
本記事の情報は記事執筆時点(2021年6月4日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは、主要な仕様だけざっくりと載せています。
簡易比較表
GPU | シェーダー ユニット数 | メモリタイプ メモリ容量 | メモリ転送速度 メモリ帯域幅 | レイトレ用 コア数 | ダイサイズ | 消費電力 (TDP等) | 北米参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB | 19.5Gbps 936GB/s | 82基 | 628.4㎟ | 350W | 1,499ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB | 19Gbps 912GB/s | 80基 | 628.4㎟ | 350W | 1199ドル |
RTX 3080 | 8704 | GDDR6X 10GB | 19Gbps 760GB/s | 68基 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 72基 | 519㎟ | 300W | 649ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 60基 | 519㎟ | 250W | 579ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB | 14Gbps 448GB/s | 46基 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB | 16Gbps 384GB/s | 40基 | 336㎟ | 230W | 479ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB | 14Gbps 448GB/s | 38基 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB | 15Gbps 360GB/s | 28基 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
「GeForce RTX 3080 Ti」はRTX 3080とRTX 3090と同じGA102が使用されており、ダイサイズも同じです。ハイエンドGPUです。参考価格は約1200ドルとなっており非常に高価です。日本円では高騰下でなくても15,6万円程度が相場になりそうな価格帯です。
RTX 3080と比較すると各種コアやVRAMが少し強化されてはいますが、価格が71.5%も上昇してしまうため、コスパは明らかに悪いです。そのため、期待されるのはRTX 3090の代替品ということになると思います。ゲーマー向けのものではないかもしれません。
RTX 3090と比較すると各コアはわずかにしか削減されていないので、VRAMが半分のRTX 3090という認識でも構わないと思います。ベンチマークスコア等はこの後見ていきますが、性能もよく似ています(多くのVRAMを備えていた方が良い処理は例外かもしれませんが)。
また、本モデルはマイニング性能が制限されているLHR(低ハッシュレート)モデルとなっています。ゲーマー等の一般消費者への供給が減らないようにするための対策ですが、以前のLHRモデルでは制限を解除する方法が見つかってしまい、実質意味が無いという状況もありました。今回はそうならないで欲しいですが、どうなるでしょうか。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は12種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。使用されたCPUは「Ryzen 9 5950X」となっています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2021年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPS数を維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RX 6900 XT | 220 |
RTX 3090 | 210 |
RX 6800 XT | 209 |
RTX 3080 Ti | 205 |
RTX 3080 | 193 |
RX 6800 | 186 |
RTX 3070 | 159 |
RTX 2080 Ti | 159 |
RX 6700 XT | 157 |
RTX 3060 Ti | 140 |
RTX 2080 | 134 |
GTX 1080 Ti | 126 |
RX 5700 XT | 124 |
RTX 3060 | 116 |
Radeon RX Vega 64 | 96 |
1080pでは240fpsもいける十分すぎる性能
基本的にRTX 3090のVRAMが半分版なので、1080pでは十分すぎる性能です。RTX 3080より約6.2%高速で、RTX 3090と比較すると約2.4%とわずかに遅れます。更に下位のRTX 3070と比べると大きいギャップが生まれますが、RTX 3080との差は小さいため、大きな予算を追加してRTX 3080 Tiを検討するのは経済的とは言い難いです。
重めのタイトルが中心で最高設定で平均205fpsなので、実環境では平均240fps到達も難しくないと思います。タイトルや設定によっては、最近出てきつつある360Hzディスプレイすらある程度活かせると思います。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。1080pでは性能を少し持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RX 6900 XT | 171 |
RTX 3090 | 168 |
RTX 3080 Ti | 162 |
RX 6800 XT | 157 |
RTX 3080 | 151 |
RX 6800 | 139 |
RTX 2080 Ti | 121 |
RTX 3070 | 119 |
RX 6700 XT | 113 |
RTX 3060 Ti | 104 |
RTX 2080 | 98 |
GTX 1080 Ti | 93 |
RX 5700 XT | 88 |
RTX 3060 | 83 |
Radeon RX Vega 64 | 69 |
1440pでも十分なパフォーマンス
1440pでも平均162fpsと十分なパフォーマンスです。実環境では基本的に200fpsを超えると思いますし、設定やタイトルによっては240fpsも十分到達できると思います。また、RTX 3080と比較すると約7.3%高速で、RTX 3090と比較すると約3.6%遅れます。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。グラフィックの綺麗さや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 102 |
RTX 3080 Ti | 98 |
RX 6900 XT | 95 |
RTX 3080 | 90 |
RX 6800 XT | 87 |
RX 6800 | 77 |
RTX 2080 Ti | 70 |
RTX 3070 | 66 |
RX 6700 XT | 60 |
RTX 3060 Ti | 57 |
RTX 2080 | 53 |
GTX 1080 Ti | 51 |
RX 5700 XT | 47 |
RTX 3060 | 45 |
Radeon RX Vega 64 | 38 |
4Kでも快適なパフォーマンス、144fpsも狙えそう
4Kの最高設定でも平均98fpsと非常に高いパフォーマンスです。RTX 3090と同等の性能となっており、設定やタイトル次第では144fpsも狙えそうな破格のスペックです。現状では4Kはfps数よりも綺麗さ重視のゲームでの利用がメインだと思うので、十分すぎるパフォーマンスだと思います。
他GPUとの比較は、RTX 3080より約8.9%高速で、RTX 3090より約3.9%遅れています。3080 Tiは3090よりVRAMが半分になっていますが、1080pからのギャップを見ても約1.5%しか変わらないため、少なくともゲームではRTX 3090ほどの24GBのVRAMは活かせておらず、3080 Tiの12GBでも十分に見えます。
RTX 3080よりは約8.9%とやや大きめの優位性にも見えますが、価格は71.5%も高いです。RTX 3080でも約90fpsと快適ですし、少しでも高いfpsを求めるなら解像度を下げれば良い話なので、4Kなら3080 Tiというほどのものにはやはりならないです。
レイトレーシング性能
レイトレーシング利用時のパフォーマンスを見ていきます。測定タイトルはMetro Exodusです。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 153.9 |
RTX 3080 Ti | 153.2 |
RTX 3080 | 138.9 |
RX 6900 XT | 121.5 |
RX 6800 XT | 115.6 |
RTX 3070 | 107.2 |
RX 6800 | 98.9 |
RTX 3060 Ti | 92.6 |
RTX 2080 SUPER | 85.9 |
RX 6700 XT | 78.5 |
RTX 2070 SUPER | 74.9 |
RTX 3060 | 70.2 |
RTX 2070 | 64.0 |
RTX 2060 SUPER | 62.9 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 | 113.5 |
RTX 3080 Ti | 112.0 |
RTX 3080 | 104.6 |
RX 6900 XT | 87.5 |
RX 6800 XT | 82.0 |
RTX 3070 | 76.2 |
RX 6800 | 66.2 |
RTX 3060 Ti | 65.0 |
RTX 2080 SUPER | 60.9 |
RX 6700 XT | 51.0 |
RTX 2070 SUPER | 49.0 |
RTX 3060 | 48.7 |
RTX 2070 | 43.6 |
RTX 2060 SUPER | 42.2 |
3090と同等のレイトレーシング性能
レイトレーシング性能はRTX 3090とほぼ同等です。非常に高いパフォーマンスです。タイトルや設定にもよると思いますが、1440pでも快適といえるパフォーマンスです。コスパは3070や3080の方が明らかに優れていますが、3090よりはより経済的な選択肢です。
余談ですが、Radeon RX 6000シリーズのレイトレーシングパフォーマンスが発売当初よりも大幅に改善しています。未だにRTX 30シリーズより大きく劣るという点では変わらないものの、レイトレーシングではRadeon RX 6000は論外というほどではなくなったかなと思います。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「2560×1440」です。
GPU名称 | 消費電力(W) |
---|---|
RTX 3080 Ti | 356 |
RTX 3090 | 355 |
RTX 3080 | 318 |
RX 6900 XT | 302 |
RX 6800 XT | 292 |
RTX 2080 Ti | 265 |
RTX 2080 SUPER | 253 |
RX 6800 | 223 |
RX 6700 XT | 221 |
RTX 3070 | 220 |
RX 5700 XT | 210 |
RTX 2070 SUPER | 206 |
RTX 3060 Ti | 199 |
RTX 2070 | 192 |
RTX 3060 | 189 |
RTX 2060 SUPER | 179 |
RTX 3090とほぼ同じ消費電力
消費電力はTDP通りでRTX 3090とほぼ同じの350W付近です。非常に多い消費電力です。電源容量には十分注意を払って運用する必要があります。ハイエンドCPUと組み合わせて使用することを想定すると、電源はGOLD認証なら1000W以上は欲しくなってくると思います。
ワットパフォーマンス
ゲームプレイ時(高負荷時)のワットあたりのパフォーマンス(フレーム数)を見ていきます。前述の消費電力の項と同じテストでの値になります。
GPU名称 | 1Wあたりのフレーム |
---|---|
RX 6800 | 0.310 |
RX 6900 XT | 0.284 |
RX 6800 XT | 0.273 |
RTX 3070 | 0.254 |
RX 6700 XT | 0.251 |
RTX 3060 Ti | 0.244 |
RTX 3090 | 0.231 |
RTX 3080 Ti | 0.227 |
RTX 3080 | 0.221 |
RTX 2080 Ti | 0.216 |
RTX 2070 SUPER | 0.211 |
RTX 2080 SUPER | 0.195 |
RTX 3060 | 0.195 |
RX 5700 XT | 0.183 |
RTX 3090とほぼ同等のワットパフォーマンス
ワットパフォーマンスも3090とほぼ同じくらいです。前世代のGPUから見ると優れていますが、最新世代のGPUとしては良くはないぐらいの数値です。前世代まではハイエンドモデルの方がワットパフォーマンスが良いという傾向があったと思いますが、RTX 30からは3070あたりをピークに下がってしまっています。ただし、より負荷の大きい4Kなどではもう少し良い数値が出るかもしれません。
まとめ
GeForce RTX 3080 Ti
- RTX 3090より安くてほぼ同等の性能
- 4Kでも使える非常に高い性能
- 非常に優れたレイトレーシング性能
- RTX 3080の約1.7倍と非常に高価(1200ドル)
- コスパが悪い
- 消費電力が非常に多い(TDP:350W)
- マイニング性能が制限されている(LHR:低ハッシュレート)
VRAMが半分のRTX 3090で、代替品としては良さそう
RTX 3080 Tiの仕様はほぼVRAMが半分のRTX 3090です。ただし、ゲーミング性能ではVRAMは12GBでも十分足りている印象で、差はほぼありません。わずかに遅れる程度です(VRAMを大量消費する処理除く)。
VRAMを大量消費する処理を除けば、RTX 3090とほとんど変わらない性能を持ちながら、1500ドルのRTX 3090よりは300ドルも安い1200ドルという価格のため、代替品としては経済的で良さそうです。
コスパはめちゃくちゃ悪いし、電力効率もそこまで
RTX 3090の高コスパ版と見れば良いRTX 3080 Tiですが、消費者ゲーマー視点で見ると正直微妙です。
RTX 3080の700ドルと比較して価格は71.5%も上昇(1200ドル)しているためコスパは物凄く悪いですし、電力効率もRTX 3070やRadeon RX 6000シリーズなどに大きく負けます。
海外で見た批評では「RTX 3090には出来ないけどRTX 3080にするのは勿体ないくらいのシリコンを有効活用するため製品」という考察もされていましたが、明らかに一般ゲーマー向けの製品ではないですし、正直そんな感じの印象はあります。そもそもRTX 3090もカードの性能というよりは圧倒的なVRAM容量が魅力の製品ということで需要があったと思いますし、むしろそこが無くなると誰に向けての製品なのかよくわからないというのも確かだなと思いました。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。