2021年4月現在で在庫不足や高騰が続いているCPUとGPUについてざっとした状況の確認的なものです。デスクトップ向けです。結構ふわっとした内容となっています。
本記事の内容は記事執筆時点(2021年4月23日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
また、憶測を多く含む内容となっているため、的外れなことを言っている可能性も大いにあると思います。おかしい記述があれば、コメント等で指摘してくださると幸いです。
GPU市場について
PCパーツの中で最も深刻なのは、やはりGPU(グラフィックボード・ビデオカード)です。今年の1月頃から急激に価格が高騰し、在庫不足の状況が続いています。2021年4月現在では、本来の適正価格(GPUメーカーの希望小売価格)で購入することは、まず不可能です。
言わずもがな、これはGPUの需要が供給を大幅に上回っているためです。PCゲームの流行、コロナウィルスによる影響、マイニング需要の急増など、さまざまな要因が積み重なった結果です。また、そもそもそれらの事情が無くても、最新世代のGPU(GeForce RTX 30シリーズ、Radeon RX 6000シリーズ)の性能が前世代から大幅に向上し、魅力的だったということもあると思います。
よく聞かれるのが、「このGPUの高騰と在庫不足はいつまで続くのか」という点です。これについては、明確な回答をできる人は居ないと思います。終わりはまだ見えません。現在の需要と高騰は明らかに異常であり、その状況が既に何か月も続いています。コロナによる影響がいつまでどのくらいの規模で続くのか、仮想通貨市場の成長はいつまで続くのか、といったことを明確に答えられる人が居ないように、GPU市場でも明確にそれを予測するのは不可能に近いと思います。
GPUは供給不足?
GPUの在庫不足は需要が供給を大幅に上回っているためなので、GPUの供給不足という見方をすることもできます。ただし、NVIDIAやAMDといった大手のGPUメーカーの生産能力自体は低くはなく、本来の市場なら十分に需要を満たせるレベルです。事実、今回の件の以前は、発売直後以外は問題なく新しいGPUを手に入れることが出来たはずです。
一方で、製造できるチップの数に制限があるのも事実です。NVIDIAやAMDが使用しているTSMCやSamsungといった半導体製造ファウンドリの生産力にも限界があり、GPUだけでなくノートPCやスマートフォン向けのSoCなどにも生産能力を割く必要があるため、これ以上GPUの生産能力を高めることは厳しいと言われています。更には、GPUをボードに載せて提供するには、メモリ、基盤、ファンなど他にも多くの部品が必要となることも、生産能力や速度を高めにくい要素の一つです。
まとめると、GPUの生産能力自体は低くなくて、これ以上高めることは難しいので、GPU関連事情を解消するには需要の方がどうにかならないと厳しいということです。
マイニングについて
GPUの高騰や在庫不足に大きな影響をもたらしたと言われるのが、マイニングです。事実、仮想通貨の高騰とGPUの異常な高騰の時期がほぼ一致しているため、少なからず影響はあると思います。
私はマイニングや仮想通貨の専門家ではないので、雑な見方かもしれませんが、例としてビットコイン(BTC)の取引価格を見てみました。GPUの高騰が始まった1月頃は1BTCあたりおおよそ360万円前後で推移しているのに対し、4月22日現在では1BTCあたりおおよそ580万円あたりで推移しています。約1.6倍と大幅に高くなっています。しかし、GPUの価格は1月の高騰以降で1.6倍も高くなったという感じはありません。GPUが高騰している事態は継続していますが、当初より大きく悪化はしていないとも言えます。
マイニングは今のGPUの需要増の原因の一つでしか無いため、これだけで語ることはできません。ただ、仮想通貨市場はGPU高騰以降も確実に成長しているにも関わらず、GPU価格への影響が見られないということは、既にマイニングを考えている人のほとんどが目当てのGPUを入手し終えたか、消費者や採掘者がGPUに払っても良いと思える上限の価格に達してしまっていると見ることが出来ると思います。理由は何にせよ、GPU価格がこれから更に値上がり可能性は低いかもしれないというのは良い傾向だと思います。
現在のGPUの価格
高騰しているのは周知の事実なので特に語ることはないですが、参考までに現在のGPU価格を載せておきます。現状では最新世代のGPUを単体で購入するには転売価格みたいなものしかありませんが、そちらの価格ではなく、在庫切れだとしても価格更新が行われた形跡のある大手ショップ(ドスパラ、パソコン工房、TSUKUMMO等)の価格を参考にしています。BTO PCに採用されているものも大体そちらの価格を参照して価格が設定されていると思います。比較的安くてコスパの良いモデルを選択しています。
GPU | MSRP (希望小売価格) | 日本での 推定適正価格※1 | 日本での 現在の価格※2 |
---|---|---|---|
GeForce RTX 3090 | $1,500 | ¥202,500 | ¥247,800(+45,300) |
GeForce RTX 3080 | $700 | ¥94,500 | ¥124,400(+29,900) |
GeForce RTX 3070 | $500 | ¥67,500 | ¥95,700(+28,200) |
GeForce RTX 3060 Ti | $400 | ¥54,000 | – |
GeForce RTX 3060 | $330 | ¥44,550 | ¥60,500(+15,900) |
Radeon RX 6900 XT | $1,000 | ¥135,000 | ¥194,700(+59,700) |
Radeon RX 6800 XT | $650 | ¥87,750 | ¥133,100(+45,350) |
Radeon RX 6800 | $580 | ¥78,300 | ¥118,800(+40,500) |
Radeon RX 6700 XT | $480 | ¥64,800 | ¥95,700(+30,900) |
RTX 3060 Tiは発売以降で再入荷が一度も無いのか、どのショップでも高騰後の価格設定となっていなかったので載せていません。Radeon RX 6000シリーズの方が値上がり率がやや高く、在庫も見つけにくい状況となっていました。
CPU市場について
CPU市場は、GPU市場よりも複雑ではありません。希望小売価格が以前より高くなっているということはありますが、GPUのような高騰は見られません。また、在庫状況に関しても、ある程度の改善が見られます。
まず最近での大きな動きは、Intelのデスクトップ向けの第11世代プロセッサ(Rocket Lake)の投入です。ちょっと時代遅れ感もある14nmプロセスのCPUですが、IPCとシングルスレッド性能が大幅に向上し、ゲーミング性能が前世代よりも大きく向上しています。Core i9に関しては正直おすすめはしにくい出来でしたが、Core i5-11400(F)等の安価なモデルはコスパが非常に良い、魅力的なCPUとなっています。
また、在庫も十分に確保されており、今すぐでも購入することができます。Intelは、Ryzenが台頭してくるまではほぼ一強状態だったこともあり、非常に高い生産能力を有しているため、そのIntelが有力なプロセッサを発売したことは朗報です。
Rocket Lakeが発売されるまでは、正直明らかにRyzen 5000シリーズ(特にRyzen 9 5900X)がゲーミングPCにとっては明らかに良い選択肢でした。ただし入手が難しいため、すぐに購入したい人は「旧世代のRyzen」か「発売から日が経った第10世代Intel CPU」という、魅力的でないどちらかを選択せざるを得ない状況がありました。しかし、その状況は改善しつつあります。依然としてマルチスレッド性能や電力面ではRyzen 5000シリーズの方が優勢ではありますが、ゲーミングやコスパ面ではRocket Lakeも優れているため、妥協ではなく有力な選択肢の一つとして浮上しています。
また、Ryzen 5000シリーズについても、在庫状況に少しの改善が見られます。少し前までは、BTOのRyzen 9 5900X搭載PCは購入することが難しかったのに対し、現在では多くのショップで在庫が復活し、購入が可能となっています。未だにCPU単体のネット購入は厳しい状況がありますが、店頭では在庫が復活している店舗もちょくちょくあるようなので、在庫状況はやはり少し改善していると思われます。Rocket Lakeの登場により、今までの「古いCPUは嫌だから待とう」という層がそちらの購入に踏み切ったおかげで緩和された可能性もあるかもしれません。
何にせよ、Ryzenの在庫状況はわずかに改善しつつあります。ただし、気になるのは価格が少し上昇している点です。下記がドスパラやTSUKUMO、パソコン工房等での販売価格です。大手ショップではどのショップも全く同じ価格設定となっていました。
CPU | 市場価格 (発売時:2020年11月) | 市場価格 (現在:2021年4月) |
---|---|---|
Ryzen 9 5900X | 71,500円 | 74,800円(+3,300円) |
Ryzen 7 5800X | 59,500円 | 61,800円(+2,300円) |
Ryzen 5 5600X | 39,500円 | 40,800円(+1,300円) |
1,300円~3,300円の値上げという、GPU市場と比べるとかわいい値上げのようにも思いますが、在庫状況がわずかに改善しつつあるこのタイミングでの値上げは少し不自然です。思ったより高かったRocket Lakeを見ての値上げなのか、よくわかりませんが少し気になりました。前述のGPUの高騰問題は変わらないため、Ryzen 5000シリーズ搭載のゲーミングPCは単純にコストがわずかに増えています。
だったら買うの止めるかってほどの値上げでも無いので、市場的には大きな影響は無いかもしれませんが、そもそも最近のCPUは希望小売価格の時点で明らかに以前より価格が上昇しているので、値上げ方向で調整していくのは消費者側からしたら痛いです。メーカー側からの値上げなのか、ショップ側がマージンを増やした結果なのかわからないので何とも言えないですけれど、さすがにこれ以上高くするのは止めて欲しいというのが消費者の本音ですね。
内容は以上になります。あんまり為になるようなことは何も書けなかった気はしますが、過去の状況確認のための自分用備忘録として、たまにはこういうのも出していくかもしれません。