「Core i5-11400F」ざっくり評価【性能比較】

Intelの第11世代プロセッサRocket Lakeの「Core i5-11400F」のざっくり評価記事です。2万円台前半で買える、最強コスパCPUとして期待が持てそうな新しいCore i5を、先代の「Core i5-10400F」と比較しながらざっくりと見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2021年4月27日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

簡易比較表

簡易比較表です。現在主要な他の競合CPUも参考に並べています。

簡易比較
CPU名 プロセス
ルール
コア
スレッド
クロック
定格-最大
TDP 参考価格
(北米)
iGPU L3
キャッシュ
Ryzen 9 5900X 7nm 12/24 3.7 – 4.8GHz 105W $549 なし 64MB
Core i9-11900K 14nm 8/16 3.5 – 5.3GHz 125W $539 UHD 750(Xe 32EU) 16MB
Core i9-10900K 14nm 10/20 3.7 – 5.3GHz 125W $479 UHD 630 20MB
Ryzen 7 5800X 7nm 8/16 3.8 – 4.7GHz 105W $449 なし 32MB
Core i7-11700K 14nm 8/16 3.6 – 5.0GHz 125W $399 UHD 750(Xe 32EU) 16MB
Core i7-10700K 14nm 8/16 3.8 – 5.1GHz 125W $319 UHD 630 16MB
Ryzen 5 5600X 7nm 6/12 3.7 – 4.6GHz 65W $299 なし 32MB
Core i5-11600K 14nm 6/12 3.9 – 4.9GHz 125W $262 UHD 750(Xe 32EU) 12MB
Core i5-10600K 14nm 6/12 4.1 – 4.8GHz 125W $262 UHD 630 12MB
Core i5-11400F 14nm 6/12 2.6 – 4.4GHz 65W $157 なし 12MB
Core i5-10400F 14nm 6/12 2.9 – 4.3GHz 65W $157 なし 12MB

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。テストシテスムのハードウェア類は下記のようになっています。

  • メモリ:DDR4-3200の合計32GB(16GB×2)のデュアルチャネル(デュアルランクメモリ使用)
  • マザーボード:MSI B560 Tomahark(Core i5-11400F) or GAGABYTE AORUS Z590 MASTER
  • 電源:Corsair RM850x(850W GOLD認証)
  • GPU:ゲームのテストでは「GeForce RTX 3090」、その他のテストでは「GeForce RTX 2080 Ti」
  • CPUクーラー:Corsair iCUE H150i(360mmラジエーター採用の簡易水冷)

その他の設定や環境等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R20というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R20 Single
CPU名称 スコア
Ryzen 9 5900X
639
Core i9-11900K
625
Ryzen 7 5800X
625
Core i5-11600K
602
Ryzen 5 5600X
600
Core i9-10900K
549
Core i5-11400F
541
Core i7-10700K
512
Ryzen 5 3600
487
Core i5-10600K
483
Core i5-10400F
433

10400Fから約25%と大幅に向上

シングルスレッド性能は先代の10400Fから、約25%と大幅に向上しました。前世代のCore i9やCore i7(10900Kや10700K)に匹敵するレベルの性能となっており、2万円台前半で買えるCPUとは思えない高性能さです。最大クロックは0.1GHzしか向上していないので、対応メモリがDDR4-2933からDDR4-3200へと前進したことやIPCが向上したことが要因だと思われます。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R20というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R20 Multi
CPU名称 スコア
Ryzen 9 5900X
9224
Core i9-10900K
6420
Ryzen 7 5800X
6044
Core i9-11900K
5965
Core i7-10700K
4985
Ryzen 5 5600X
4462
Core i5-11600K
4327
Core i5-11400F
3954
Ryzen 5 3600
3746
Core i5-10600K
3601
Core i5-10400F
3188

10400Fから約24%の大幅な向上

マルチスレッド性能は、先代の10400Fと比較して約24%の大幅な向上となっています。シングルスレッド性能の上昇分がそのまま影響を与えた感じですね。希望小売価格は先代と同じのため、コスパも大きく向上しています。

コア数の差があるためCore i7以上には大幅に劣ってしまいますが、価格は大幅に安いのでコスパはかなり優位です。Core i5の下位モデルと聞くと頼りなさそうにも見えると思いますが、数年前のハイエンドCPUを軽く凌ぐマルチスレッド性能となっているので、普通に高性能です。

やはり少し高いマルチスレッド性能が欲しかったり、最新のハイエンドGPUと併用するにはもっと上位のCPUが優先されますが、そうでなければ十分すぎる性能を備えています。そのCPUが2万円台前半で購入できるというのは驚異的なコスパです。対抗の最新のRyzen(5000シリーズ)には、2021年4月時点ではこれほど安いモデルが存在しないため、低価格の高コスパCPUとしては一択レベルだと思います。

ただし、「Core i5-11400F」だと内蔵GPUが利用できないため、内蔵GPUを利用したい場合にはFの付かないモデルを選択しなければならない事に注意です。その際には最安値の「Core i5-11400」でももちろん良いですが、内蔵GPUの実行ユニットがわずかに削減されているため、一つ上位の「Core i5-11500」も候補に入れると良いです。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際の平均FPS数を見ていきます。

今回は10種類のゲームで測定した平均FPSの数値を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 3090」です。2021年4月27日時点では非常に高性能なハイエンドGPUです。その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)で、解像度は1920×1080です。1440pや4Kなどより解像度の高い場合では多少異なる結果となる可能性もあります。ただ、恐らくCore i5を使用する場合には1080pをターゲットとする場合がメインだと思います。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

10種類のゲームでの平均FPS(1080p)
CPU名称 スコア
Ryzen 9 5900X
201
Ryzen 7 5800X
197
Core i9-10900K
196
Core i9-11900K
192
Ryzen 5 5600X
190
Core i7-10700K
185
Core i5-11600K
178
Core i5-11400F
170
Core i5-10600K
170
Core i5-10400F
166
Ryzen 5 3600
151

前世代からわずかに向上

ゲーミング性能は前世代からわずかに向上しています。10400Fとの比較では約2.4%の向上です。シングル・マルチスレッド性能の向上の割には小さめの進歩でした。とはいえ、価格は同じままで向上はしているので、コスパ的にはやはりプラスです。

また、テストに使用されたGPUが「GeForce RTX 3090」という、本来はCore i5と併用することがまずない超高性能GPUであるため、大きくボトルネックが発生している点は注意です。たとえば、RTX 3060やRTX 3070などのGPUと併用する際には上位CPUとここまでの差は付かないと思われるため、基本的には上記の表で見る程ゲーミング性能で劣ることはないと思います。

その他

消費電力

ざっくりとした消費電力を見ていきます。ベンチマークソフト「Blender Open Data」を実行した際の平均消費電力を見ていきます。数値が低いほど良いです。

平均消費電力(Belnder Open Data)
CPU名称 スコア
Ryzen 5 3600
151
Core i5-10400F
153
Ryzen 5 5600X
157
Core i5-11400F
181
Core i5-10600K
181
Ryzen 7 5800X
217
Core i5-11600K
221
Ryzen 9 5900X
231
Core i7-10700K
232
Core i9-10900K
285
Core i9-11900K
307
※記事掲載時の10700Kの値が間違っていました。お詫びして訂正いたします。

消費電力は先代より少し増加

消費電力は先代の10400Fよりも少し増加してしまっています。181Wで、10400Fより約15%の増加です。K付きやCore i7以上よりは大きく省電力ですが、181Wという値自体は省電力とは言い難い数値です。

また、発熱も少なくないため、最大限性能を発揮させるためにはそれなりに高性能なクーラーが要求されます。通常のTDP(PL1)が65Wと低いために、冷却性能の低いクーラーでも稼働自体は問題無いと思いますが、性能は大幅に制限されてしまう可能性がある点は注意が必要です。

電力効率

ざっくりとした電力効率を見ていきます。ベンチマークソフト「Blender Open Data」を実行した際のもので、マルチコアでの高負荷時のものになります。スコア化したものでなく、処理に掛かった時間を基に算出しているため、数値が低いほど良いです。

電力効率(Belnder Open Data)
CPU名称 スコア
Ryzen 9 5900X
10.9
Ryzen 5 5600X
17.6
Ryzen 7 5800X
18.0
Ryzen 5 3600
20.1
Core i9-10900K
21.2
Core i5-10400F
22.1
Core i5-11400F
22.3
Core i7-10700K
23.1
Core i5-10600K
23.5
Core i9-11900K
24.7
Core i5-11600K
24.9
算出式:処理に掛かった時間 × 消費電力 ÷ 10,000

電力効率はほぼ変わらず、Coreシリーズの中では良い方

電力効率は先代の10400Fとほぼ同じでした。Ryzen 5000シリーズにはやはり負けてしまいますが、現行のCoreシリーズの中では比較的良い数値となっています。やはり、長期化している14nmプロセスでは電力効率をここから上げるのは難しいのかなという印象です。

電力効率が良くても性能が低ければ処理に掛かる時間が長くなるため、ただ良ければ優れているという訳ではありませんが、第11世代のK付きモデルでは10世代の頃よりも電力効率が若干悪くなっている様子さえあるので、多少性能が低くてもK無しの下位モデルや前世代のプロセッサも価格次第では全然アリな選択肢として残りそうな気がします。

また、やはり目立つのはRyzen 9 5900Xの電力効率の良さです。5900Xの電力効率は、他のどのCPUと比べても突出しており、非常に効率的なCPUであることが伺えます。ここまでの差があると、高負荷な処理を頻繁にする場合には電力料金でも結構な差が出ると思われるので、価格が高くても出す価値は十分あると思います。

まとめ

ざっくりと見てきましたが、評価をまとめています。メモリ速度など、処理性能に含まれるものは省いています。

Core i5-11400F

第11世代のCore i5は、電力効率以外ではRyzenにも劣らない非常に競争力のあるCPUに仕上がっていると思います。

良い点
  • 安価
    2万円台前半という安さで、Core i7以上よりも圧倒的に安いです。
  • 優れたシングルスレッド性能
    先代の10400Fから約25%向上しました。前世代のCore i7-10700KやCore i9-10900Kクラスのシングルスレッド性能です。
  • 6コアとしては優れたマルチスレッド性能
    先代の10400Fから約24%向上しました。古い8コアCPUとの差が縮まり、価格は非常に安いためコスパが非常に良いです。
  • 非常に優れたコスパ
    先代から各種性能が大きく向上しているのにも関わらず、希望小売価格は据え置きです。コスパは非常に優れています。
  • 内蔵GPU性能が向上(Fの付かないモデル)
    Fの付かないモデルになりますが、内蔵GPU性能が少し向上しています。また、内蔵GPUを利用する場合には11400より11500の方が実行ユニット数が多いことも知っておくと良いです。

悪い点
  • 消費電力は少なくない
    通常のTDP(PL1)は65Wと低いですが、2段階目のTDP(PL2)が高いため、消費電力は少なくはありません。
  • 内蔵GPUは利用できない(Fモデル)
    Core i5-11400Fを含むFが付くモデルは、内蔵GPUが利用できないため注意です。また、良い点の方でも触れていますが内蔵GPUの性能も前世代より向上しています。
  • Core i7以上にはマルチスレッド性能が大きく劣る
    8コア以上のCore i7にはマルチスレッド性能は大きく劣るため、マルチスレッド性能を重視したい場合やハイエンドなGPUを利用する場合には上位モデルの方が向いています。ただし、価格が安いためマルチスレッド性能コスパは非常に良いですし、上位モデルと比べると低いというだけで、マルチスレッド性能自体は普通に高性能です。

非常に安価でコスパの良い、最強コスパ筆頭CPU

「Core i5-11400F」は先代よりシングル・マルチ性能が2割以上向上しました。その上で価格設定も変わらなかったため、ほぼ上位互換とも言える出来に仕上がっています。安価で非常にコスパの良いCPUです。

さすがにコア数で負けるCore i7以上のモデルには特にマルチスレッド性能で大きく負けるものの、価格差が非常に大きいため、純粋なコスパは圧倒的にCore i5の方が良いです。対抗のRyzen(5000シリーズ)ではCore i5-11400Fほど安いモデルが存在しないため(2021年4月時点)、そのコスパは全CPU中でもトップクラスと言って過言ではないと思います。

ただし、消費電力は安価なミドルレンジCPUとしては多めなので、注意する必要があります。最大限性能を発揮したいなら、それなりの性能のクーラーが必要となってきます。少なくともBOXクーラーは避けることをおすすめします。通常のTDPが65Wと低いため使えないことは無いと思いますが、ファンの音が非常にうるさくて結局交換したくなると思います。2,000円~3,000円の安価なクーラーでも全然違うので、始めから導入しておく方が手間も省けて良いと思います。

内蔵GPUを利用したい場合は注意

Core i5-11400Fを含むCoreシリーズの末尾Fのモデルは内蔵GPUが利用できないため注意が必要です。Fの付かないモデルでは利用することができ、その性能は前世代より少し向上しています。元の性能が低いために出来る事の幅が大きく広がるほどではないですが、各種グラフィック処理を高速化することができます。

また、Core i5-11400では内蔵GPUのユニット数が24なのに対し、Core i5-11500以上のモデルでは32となっているため少し性能が高いです。少し高くはなってしまいますが、内蔵GPU利用を前提とする場合にはその辺りも考慮しておくと良いと思います。


ざっくりとでしたが記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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