「GeForce RTX 3060 Ti」ざっくり評価【性能比較】

「GeForce RTX 3060 Ti」(FE版)のざっくり性能比較・評価です。コスパ重視派の本命になりそうなAmpere世代の60番台が初登場です。

注意

本記事の情報は記事執筆時点(2020年12月2日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

仕様

まずは、主要な仕様だけざっくりと載せています。

簡易比較表

GPU シェーダー
ユニット数
メモリタイプ
メモリ容量
メモリ転送速度
メモリ帯域幅
レイトレ用
コア数
ダイサイズ TDP 参考価格
(北米)
RTX 3090 10496 GDDR6X
24GB
19.5Gbps
936GB/s
82基 628.4㎟ 350W 1,499ドル
RX 6800 XT 4608 GDDR6
16GB
16Gbps
512GB/s
72基 519㎟ 300W 649ドル
RTX 3080 8704 GDDR6X
10GB
19Gbps
760GB/s
68基 628.4㎟ 320W 699ドル
RX 6800 3840 GDDR6
16GB
16Gbps
512GB/s
60基 519㎟ 250W 579ドル
RTX 3070 5888 GDDR6
8GB
14Gbps
448GB/s
46基 392㎟ 220W 499ドル
RTX 3060 Ti 4864 GDDR6
8GB
14Gbps
448GB/s
38基 392㎟ 200W 399ドル

「RTX 3060 Ti」の北米参考価格は「RTX 3070」よりも100ドル安い399ドルとなっていて、国内での想定市場価格は約6万円~です。正直価格的には従来の60番台よりも大分高く、ミドルレンジというよりはハイエンド下位くらいのGPUになっています。

仕様面では「RTX 3070」より各コア数が削減されクロックが低下した代わりに、消費電力が少し減っています。ただし、メモリ仕様はGDDR6 8GB(14Gbps / 448GB/s)となっていて「RTX 3070」と全く同じです。

価格的には約20%安くなっているにも関わらず、各コアの削減率は概ね20%未満な上、メモリ仕様に至っては全く同じです。コスパ的には良くなる事が確定しているような印象を受けます。ただし、最近は参考価格と実売価格がかけ離れているケースが多いのでそこは注意が必要です。

TDPは200Wとなっていて、「RTX 3070」の220Wと大して変わらないという印象も受けますが、「RTX 3070」の220Wでは8ピンの補助電源1本ではギリギリのため補助電源2本採用が基本だったのに対し、200Wなら8ピン一つでも足りるため、運用的にはW数以上の違いとなるかもしれません。

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は9種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。使用されたCPUは「Core i9-9900K」となっています。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。

また、表に掲載の「Radeon RX 6000シリーズ」については「Ryzen 5000シリーズ」と併用する事でパフォーマンスが向上する「Smart Access Memory」という機能がありますが、現状のスコア向上率は僅かなようですし、実環境ではIntel CPUを利用している人が多いと思うので、申し訳ないですが「Ryzen 5000シリーズ」を使用したテストは割愛させて頂いております。ご了承ください。


1080p(最高品質)

FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2020年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、FPSやTPSでは出来るだけ高いFPS数を維持するためこの設定にするのが主流だと思います。

平均FPS(1080p 最高設定)
GPU名称 平均FPS
RTX 3090
195.9
RX 6800 XT
187.1
RTX 3080
183.9
RX 6800
165.9
RTX 2080 Ti
158.2
RTX 3070
155.8
RTX 3060 Ti OC
153.6
RTX 3060 Ti
144.6
RTX 2080 SUPER
139.9
RTX 2070 SUPER
126.5
RX 5700 XT
119.1
RTX 2060 SUPER
108.2
RX 5700
107.9

1080pでは平均144fps超えで余裕のパフォーマンス

1080pでは平均144FPSを超えました。前世代のハイエンドGPU「RTX 2080 SUPER」をも上回っています。重いゲームが中心でかつ最高設定でこのパフォーマンスなので、実環境では平均200fps超えも珍しくないレベルの性能のはずです。400ドルのGPUがこれほどのパフォーマンスを出すというのは前世代の性能からすると驚異的です。

「RTX 3070」には約7%遅れますが、参考価格が約20%も違うためコスパは上回ります。国内だと価格差は更に小さくなってしまうと思われますが、それでも7%までは小さくなることはないと思うので、1080pでのコスパは「RTX 3060 Ti」の方が確実に上回るはずです。


1440p(最高品質)

WQHD(2560×1440)です。1080pでは性能を少し持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。

平均FPS(1440p 最高設定)
GPU名称 平均FPS
RTX 3090
164.1
RTX 3080
149.8
RX 6800 XT
149.5
RX 6800
131.2
RTX 2080 Ti
124.1
RTX 3070
121.7
RTX 3060 Ti OC
119.6
RTX 3060 Ti
110.9
RTX 2080 SUPER
106.1
RTX 2070 SUPER
94.1
RX 5700 XT
87.6
RTX 2060 SUPER
79.5
RX 5700
78.9

1440pでも十分なパフォーマンス

1440pでは約111fpsを記録しました。重いゲームが中心でかつ最高設定でこの結果なら、実環境では基本的に平均144fps以上は出ると言って良いと思います。これだけのパフォーマンスが出せれば1440pでも十分快適と言って良いと思います。

「RTX 3070」と比較すると約9%遅れており、1080pよりも僅かに差が広がっています。それでもまだ約20%の価格差には届かないため、少なくとも1440pまではコスパは「RTX 3060 Ti」が上回るはずです。


4K(最高品質)

「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。グラフィックの綺麗さや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。

平均FPS(4K 最高設定)
GPU名称 平均FPS
RTX 3090
108.7
RTX 3080
96.0
RX 6800 XT
92.6
RX 6800
83.0
RTX 2080 Ti
74.0
RTX 3070
72.3
RTX 3060 Ti OC
70.8
RTX 3060 Ti
64.8
RTX 2080 SUPER
61.8
RTX 2070 SUPER
53.9
RX 5700 XT
49.8
RTX 2060 SUPER
44.9
RX 5700
44.9

4Kでも60FPS以上は出るので、対人ゲームでないなら及第点

4Kでは約65fpsでした。設定を下げることも考慮しても、やはり高fpsが要求される対戦ゲームでは頼りないと思います。ただし逆にいえば、対戦ゲームでなければ全然実用レベルのパフォーマンスだと思います。400ドルでこの4Kゲーミング性能は凄いです。

「RTX 3070」との比較では約10.4%遅れており、1440pよりもわずかに差が広がっています。ただ、それでもコスパでは約20%安い「RTX 3060 Ti」の方が優位性があるように見えます。ただし、4Kのような低いフレームレート環境だと、少しのパフォーマンス差も気になってくる人も多くなってくると思われるため、そこで性能と価格のどちらを重視するかによって評価は異なってくるかもしれません。

レイトレーシング性能

レイトレーシング利用時のパフォーマンスを見ていきます。10種類のゲームでの平均FPSです。最高設定です。

レイトレーシング平均FPS(1080p)
GPU名称 平均FPS
RTX 3090
94.7
RTX 3080
85.9
RTX 3060 Ti DLSS
76.7
RTX 3070
68.2
RX 6800 XT
67.0
RTX 3060 Ti
60.6
RTX 2080 SUPER
58.5
RX 6800
57.7
RTX 2070 SUPER
50.6
RTX 2060 SUPER
43.6

「RTX 2080 SUPER」や「RX 6800」を超えるレイトレーシング性能

レイトレーシング性能は「RTX 2080 SUPER」や「RX 6800」を少し上回る性能を発揮しています。RTコアが38基しかなくてもこれだけのパフォーマンスを出せるのは、NVIDIAのレイトレーシングへの対応力の高さが伺えます。また、DLSS併用時にはパフォーマンスが約26.5%向上します。

この価格とコア仕様でこれだけのレイトレーシング性能を出すのは驚異的で、映像美を追求するゲームであれば十分に実用レベルにあると思います。

ただし、やはり対戦ゲームで使用するには頼りなさが見えます。特別重いゲームでなければ、設定を下げる事で80~100fps程度は出そうな感じですが、これは対戦ゲームに求める環境として不満があると思います。カクカクでまともにプレイできないという程ではないので、雰囲気を知るためのプレイには支障がないほどに向上した点は評価すべき点ですが、試しに買うにしては高すぎる価格設定なので、始めからレイトレーシングで対戦ゲームを満喫する事が目的の人は上位モデルを選択した方が良いと思います。

4Kでは「RTX 3070」と比較すると約11%遅れます。北米価格では20%の価格差があるので、コスパ的にはまだ「RTX 3060 Ti」の方がやや有利です。DLSS併用時にはTensorコア数が多い「RTX 3070」が差を広げる事も考えられますが、コスパ的にはそこまで考慮してもやっと追い付くかなというレベルです。「RTX 3060 Ti」の方がコスパでは勝っていると考えて良いです。

単純なパフォーマンスではやはり「RTX 3070」以降の方が高いため、その優位性はありますが、コスパのみで考えれば「RTX 3060 Ti」はハイエンド用途においても他の最新のハイエンドGPUを上回るという点は、費用面や手軽さ的にも素晴らしいと思います。

電力関連

消費電力

ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Metro Exodus」で「2560×1440」の最高設定です。

GPU平均消費電力(Metro Exodus 1440p Ultra)
GPU名称 消費電力(W)
RTX 3090
361.3
RTX 3080
332.8
RX 6800 XT
302.5
RTX 2080 Ti
259.3
RTX 2080 SUPER
245.5
RX 6800
233.1
RTX 3060 Ti OC
226.6
RTX 3070
218.1
RX 5700 XT
214.4
RTX 2070 SUPER
212.6
RTX 3060 Ti
205.8
RTX 2060 SUPER
177.3
RX 5700
163.0

消費電力は従来の60番台より上昇

「RTX 3060 Ti」のゲームプレイ時の平均消費電力は約206Wでした。TDPの200Wに近い数値で、やはり従来のGeFoceの60番台よりも消費電力が大きく上昇してしまっています。「RTX 2060 SUPER」と比較すると約28Wの上昇です。

「RTX 3070」よりは約12W少ないですが、TDPでは20Wの差なので少し残念でした。ただ、今回扱った測定は単一ゲームタイトルでの測定で、多少の誤差もあるかと思いますので、実際にはTDP通りの差となる可能性もあるかもしれません。

まとめ

GeForce RTX 3060 Ti

良い点
  • RTX 2080 SUPER を上回る高い性能
  • 1440pでも十分な性能で、4Kゲームにも対応は可能
  • 非常に優れたコスパ
  • 非常に優れたワットパフォーマンス
  • RTX 3070 より安い
  • 実用レベルのレイトレーシング性能(ただしまだ対戦ゲームでは厳しい)

悪い点
  • 高価(発売時 約55,000円~程度)
  • 消費電力が多い(TDP200W)

コスパが非常に良い

「RTX 3060 Ti」は北米参考価格約400ドルという価格ながら「RTX 2080 SUPER」を上回るという非常に高い性能を持ちます。1080pや1440pでは144FPS以上を安定させることができる十分なパフォーマンスを持ち、4Kでも平均60FPS以上は出せます。400ドルのGPUとは思えない驚異的なパフォーマンスです。

そのコスパは非常に優れており、現在登場している「RTX 3070」以降の上位モデルのどれよりも優れています。当然ながら、純粋な費用も上位モデルより少なく済む点も嬉しいです。

レイトレーシングも実用レベル

「RTX 3060 Ti」は、素のパフォーマンス(ラスタライズ性能)の高さだけでなく、レイトレーシング性能でも「RTX 2080 SUPER」を上回っています。RTコアは38基しかないにも関わらず、前世代のRTコア48基採用のハイエンドGPUを上回るという性能です。

そのレイトレーシング性能はAMD GPUでいうと「Radeon RX 6800」に匹敵します。ラスタライズ性能では圧倒的に負けているにも関わらずレイトレーシング性能は同等です。「Radeon 6000シリーズ」に関してはこれからの最適化でスコアが改善する可能性もあるため何とも言えませんが、少なくとも現状では大幅に安いながら同等のレイトレーシング性能を備えているため、これから出てくるであろう対抗の「RX 6700」よりもほぼ確実にレイトレーシング性能は勝っているという事になります。

他の「RTX 30シリーズ」の上位モデルと比べるとレイトレーシングパフォーマンス自体にはやや物足りなさがあるのは確かではありますが、価格の安さからコスパ的には優れており、対戦ゲームでは使わずに映像美が重要なゲームでのみ使用する前提なら「RTX 3060 Ti」でも必要十分な性能であると思うので、実用環境を考えれば丁度良い性能と価格になっているのではないかと思います。

気になるのは実売価格と在庫問題

今新しく出る期待のビデオカードほぼ全てに言えることですが、気になるのは実売価格と在庫問題です。情勢と需要的に仕方ないですが結構深刻です。

たとえば、「RTX 3070」は在庫問題こそ思ったよりは深刻ではなかったものの、実売価格は北米参考価格よりも大幅に高くなっていました。参考価格は499ドルで、これを日本円に換算して中間マージン分を考慮しても、従来ならおおよそ「6万円とちょっと」というところだと思いますが、実際にはおおよそ7万円からという価格でした。

「RTX 3060 Ti」の北米参考価格は399ドルなので、従来であれば国内ではおおよそ5万円程度で取引されると思われますが、最近出たGPU価格を見る限りでは実際には6万円程度からという価格になりそうな気がします(追記:おおよそ55,000円程度からでした)。在庫問題については出てみないと分からないところではありますが、どちらにせよ実際に入手するにあたっては性能以外の問題が付きまとうかもしれない点は注意しておくべきかもしれません。


といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございます。

5 COMMENTS

匿名

oculus Link用に3060ti載ったPC買おうか検討中。来月でそうな3060待った方がいいかな。

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匿名

最安価格税込で五万円半弱ならまぁ妥当ですかね…
Ryzenの値が下がり次第コイツと5600X辺りでPC組もうかなぁ…と模索中(´・ω・`)

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とねりん:管理人

思ったより安くてびっくりしました。
5600Xは今の相場だとやっぱちょっと高すぎますよね…。

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とねりん:管理人 へ返信する コメントをキャンセル

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