2024年6月版のデスクトップ向けGPU(グラフィックボード・ビデオカード)の相対性能比較用ツール(テーブル)です。一つの表で色々な指標を確認しつつGPUを検討したい人用です。
2024年5月末時点での主要GPUのゲーム用のベンチマーク(3DMark)を基に、好きなGPUを基準とした相対性能(%)を比較することができます(ベンチマークバーをクリックで切り替え)を掲載しています。
また、選択したベンチマークごとにコスパとワットパフォーマンス(電力効率)が表示されるようになっているので、そちらも併せて確認することができます。
- 3DMark Time Spy(DX12のゲーム性能)
- DirectX 12(DX12)のベンチマークテストです。現状WindowsのPCゲームで主流といえるDirectX 12のゲーム性能スコアです。解像度「2560×1440」のGraphicsスコアになります。
- 3DMark Fire Strike(DX11のゲーム性能)
- DirectX 11(DX11)のベンチマークテストです。DirectX 11は2009年発表の古いAPIですが、未だに利用されています。解像度「1920×1080」のGraphicsスコアになります。
- 3DMark Port Royal(レイトレーシングのゲーム性能)
- DirectX Raytracing(DXR)のベンチマークテストです。レイトレーシング性能を測ります。要件には書かれていませんが、Port Royalでは解像度は「2560×1440」以上を前提としているらしいです。メインのシェーダーユニットではなくレイトレーシング用のコアの性能も重要となる他、VRAM占有量が多いので、VRAMが少ないと性能が一気に低下するケースがあります。
- TDP / TBP / TGP(消費電力の目安)
- 消費電力の目安となる指標値です。主にTDP・TBP・TGPなどと示されます。微妙に意味合いは異なるものの、深く気にせず消費電力の目安と思えば良いかと思います。
- コスパ
- 選択中のベンチマーク基準の1円あたりのスコアです。
- 電力効率(ワットパフォーマンス)
- TDP1Wあたりの選択中のベンチマークのスコアです。
- メモリ容量
- VRAMの容量です。同じGPUでもモデルによって異なる場合があるので注意。
- メモリ帯域幅
- VRAMのバス帯域幅です。VRAMが1秒間に転送できるデータ量を表します。小数点以下は四捨五入しています。同じGPUでもモデルによって異なる場合があるので注意。
目次 非表示
GPUのベンチマーク相対性能比較表
ピックアップGPU
各コスパやワットパフォーマンスを見て、筆者が個人的に気になった注目GPUについて、少しずつ軽く触れています。本当は全て触れていきたいところですが、さすがに長くなりすぎるので少しだけピックアップする形にしています。
各コスパや電力効率(ワットパフォーマンス)の上記の表での順位も掲載していますが、設定やゲームタイトルによっては上下するので参考程度に見てください。
GeForce RTX 4070 SUPER
約8.4万円~ | 12GB(504GB/s)| 220W
コスパ:DX12 24位/51|DX11 31位/51|DXR(レイトレ) 10位/51
電力効率:DX12 1位/51|DX11 2位/51|DXR(レイトレ) 1位/51
「RTX 4070 SUPER」は現状でトップクラスの超優秀なワットパフォーマンスを持ちつつ、性能も一世代前(RTX 30/RX 6000)の最上位ハイエンド級で、性能の割にはコスパも悪くないのが魅力のGPUです。
消費電力(TGP)は220Wと性能の割には少なめなので、デュアルファン・スロット厚2.0モデルが結構あるため、ハイエンド用途にも対応できて小型ケースにも採用できるのは強みです。
しかし、気になるのは価格の割には少ないメモリです。10万円弱のGPUで12GBは気になります。
12GBはレイトレーシングや4Kでは不足することも珍しくはないですし、最近注目度の高い画像生成AIでも高解像度の画像の生成には大量のメモリを必要とすることもあり、主に高負荷な次世代技術・設定を利用する際にネックとなる可能性がある点は注意が必要です。
どうしてもメモリ容量が気になる場合は、プラス2~3万円になりますが「RTX 4070 Ti SUPER」を検討することになると思います。純粋な性能コスパも少し落ちてしまいますが、効率は非常に優れていますし、16GB以上のメモリを備えるハイエンド用途でも使える性能のGeForceの中では最も安価です。
GeForce RTX 4070
約8.4万円~ | 12GB(504GB/s)| 200W
コスパ:DX12 29位/51|DX11 30位/51|DXR(レイトレ) 15位/51
電力効率:DX12 3位/51|DX11 3位/51|DXR(レイトレ) 5位/51
「RTX 4070」の基本的な特徴は上述の「RTX 4070 SUPER」とほぼ同様です。少し安い代わりにコア類が少し減っている形です。
非常に優れたワットパフォーマンスで重い処理でも使える性能を持ちつつ、性能の割には少ない消費電力と悪くないコスパが魅力のGPUです。
消費電力(TGP)が200Wと少ないため、デュアルファン・スロット厚2.0モデルも多数存在し、小型ケースでも採用できるのも大きな強みです。
気になるのはSUPERと同じで、価格の割には少ないメモリです。8万円台中盤のGPUで12GBメモリというのは、SUPERほどではないですがやや弱いです。AMDの対抗製品である「RX 7800 XT(8万円弱~)」では16GBメモリを備えています。
Radeon RX 7800 XT
約8万円~ | 16GB(624GB/s)| 263W
コスパ:DX12 10位/51|DX11 14位/51|DXR(レイトレ) 11位/51
電力効率:DX12 14位/51|DX11 13位/51|DXR(レイトレ) 14位/51
「RX 7800 XT」は16GBメモリ搭載で8万円弱~という価格と、優れた基本性能コスパが魅力のGPUです。
レイトレーシング・メタバースプラットフォームの普及や生成AIへのGPU利用などの影響から、VRAM容量の重要性は増しているため、価値が上がってきていると思うGPUです。
基本のゲーム性能(ラスタライズ)では「RTX 4070」を上回る性能を持ちつつも、価格では少し優位ですし、VRAM 16GB以上を備えるアッパーミドル以上の最新GPU(2024年6月時点)としては最も安価というのが非常に魅力的です。現状では一般用途ではほとんど活用されていませんが、実はAI用のユニットも搭載しているため、将来性込みでのコスパを考えるならかなりお得に見えるGPUです。
レイトレーシング性能に関しては基本的に「RTX 4070」にやや劣るものの、レイトレーシングはメモリ容量を大量に消費する傾向があるので、16GB VRAMが活きる場面もあると思いますし、価格も少し安いので、実はレイトレーシングにおいてもコスパでは圧倒的不利というほどではなかったりするのもポイントです。
しかし、明確なデメリットとして、電力面が「RTX 4070 / RTX 4070 SUPER」と比べると劣る点と、現状ではAIも含め多くの用途がNVIDIA製GPU(CUDA)に最適化されており、該当ソフトでは実パフォーマンスが大きく劣るという点があるのは要注意です。
電力面については、単純に効率がRTX 4070にやや劣る上に、小型な製品が少なく、デュアルファン製品もあるものの少ないですし、厚みも2.0スロット製品は皆無なので、小型ケースでの採用に難があるのが、RTX 4070と比べると残念な点です。
最適化面については、必ずしも問題になる訳ではないものの、Stable Diffusionの画像生成や、BlenderによるGPUレンダリングなど、現状の注目度の高い用途でGeForceに不利なことが多いのが割と致命的です。こちらについては今後改善される可能性もあるものの、RTX 4070(SUPER)がメモリ容量以外ではコスパも悪い訳ではないので、現状の大幅デメリットを抱えつつ「RX 7800 XT」を選択するのが無難な選択肢とは言えないのは事実かなと思います。
このように、「RX 7800 XT」は注意点が結構あります。ただし、最適化面については少しずつ改善されてきている部分だったりしますし、電力面も小型ケースでなければ致命的というほどではないので、VRAM容量と基本のゲーム性能コスパを最重視で、その他の用途はある程度使えればOKという人にはおすすめできるGPUです。
「RX 7900 XT(20GB)」や「RX 7900 XTX」についても、特徴としては同じ傾向で、性能とメモリ容量と価格が少し増えた形になっているので、予算が潤沢でメモリ容量や基本ゲーム性能に特化したい方はそちらもおすすめです。
Arc A580 / A750 / A770
約2.6万円~ | 8GB/16GB(512/560GB/s)| 185~225W
コスパ:DX12 1位~4位/51|DX11 1位~8位/51|DXR(レイトレ) 1位~4位/51
電力効率:DX12 26位~31位/51|DX11 27位~32位/51|DXR(レイトレ) 28位~38位/51
※実パフォーマンスはベンチマークスコアより3割前後ほど減るので、上記順位は参考程度に!
「Intel Arc(Xe-HPG)」は、安価でものすごく良いカタログスペックコスパ(主にメモリ)と機能性の高さが魅力のGPUです。
登場当初は、ひどすぎる最適化不足が目立ち、主要ベンチマークから大きく乖離した実ゲーム性能や、不具合の多発によって酷評されたGPUです。3DMarkでは、他社製の同性能帯GPUよりも実ゲーム性能は3割前後ほど低くなるという点は要注意です。
しかし、そのおかげ(?)で価格が非常に安くなったことや、ドライバによる改善が進み、実ゲーム性能も少し向上したことによって、今では絶対おすすめしないというほどではなくなっています。価格が非常に安いおかげで、実ゲーム性能がベンチマークよりも大きく下がることを考慮してもコスパは非常に良い部類なので、低価格でコスパを追求するなら有力な選択肢になっていると思います。
また、基本性能コスパだけでなく、機能性とメモリ面も低価格ながら強力なのが魅力です。
機能性としては、全モデルAV1コーデックのハードウェアデコードおよびエンコードに対応している他、XMXというAIエンジンも統合されている点が、RadeonとGeForceに対しての明確な優位性です。
メモリ面では、2万円台中盤~のA580でも8GB(512GB/s)、A770 16GBなら4万円台で16GB(560GB/s)という、価格を考えれば破格のメモリシステムを備えるのが魅力です。
デメリットとしては、まだ最適化面の不安があることに加え、電力効率が競合GPUよりも明らかに悪い点、Radeonと同様にGeForceではないため一部用途で不利を抱える点は注意する必要がありますが、出来るだけ安く一通りの機能を揃えておきたいコスパ重視のGPUとしては、魅力的な選択肢です。