第9世代の「Core i9」「Core i7」「Core i5」はどれが良い?【性能比較・違い】

Intelの第9世代プロセッサ「Coffee Lake Refresh-S」のCPU「Core i9」「Core i7」「Core i5」と、第8世代のIntelCPUの性能比較をしています。
※価格が落ち着いてきてから、内容を加筆・修正しました。(2019/2/22 更新)
要点だけ知りたいという方は、目次から「まとめ」だけ見ても良いかも。

第9世代の「Core i9」「Core i7」「Core i5」

第9世代のCore i9

第8世代までは、Intelの主流CPUの中の最高性能モデルは「Core i7」でしたが、Intelの主流CPUに「Core i9」が初登場しました。これからの、Intelの主流CPUの最高性能は「Core i9」になるようです。コア数が8でスレッド数が16という仕様になっています。
ベンチマークスコアは、前世代の「Core i7 8700K」と比較して25%程向上していますが、今までのCore i7に無かったような仕様や機能がある訳でもないので、従来のCore i7の立ち位置に近い様に感じるのが、第9世代のCore i9です。
ただ、値段が主流CPUとしては異常なくらい高いです(2018年11月時点で約7万円)。「Core i9」という括りをわざわざ設けた理由は、恐らく経営戦略的なものか、今後に向けての布石として新しい区分を作っておきたかったというところでしょうか。
要点だけまとめると、「第9世代のCore i9」はマルチスレッド性能こそ高いものの価格が非常に高く、コスパはあまり良くなさそうです。
一般CPUとしては少し難しそうかなという印象です。

第9世代のCore i7

第8世代の6コア12スレッドから、8コア8スレッドという仕様変更になりました。ハイパースレッディングを利用していない形ですね。
Core i9が8コア16スレッドなので、これからのCore i7はコア=スレッドのCPUになるのかもしれません。性能面は従来より上がってはいますが、コアとスレッドの仕様的には降格とも捉えられる変更となりました。
価格は、現時点(2018年11月時点)ではCore i7は「Core i7 9700K」しか出ていないですが、従来より若干高めとなっています。
性能は第8世代のCore i7より上昇はしているものの、コア数の増加と最大クロック周波数の上昇を考えると、技術的な向上はほぼ無しと言っても良さそうなレベルと言われても仕方ない印象です。

第9世代のCore i5

第8世代と同じく6コア6スレッドCPUとして登場しました。ですが、Core i7と同様に、性能の向上は微増程度で、最大クロック周波数の上昇分程度と言ったところでした。技術的な向上はほぼ無しと言っても良さそうです。
※2019年始めに少し遅れて「Core i5 9400F」が登場しましたが、これは「Core 8400」の改良版で実質第8世代。

簡易比較表

第9世代のCore i9/7/5の簡易比較表です。
【簡易比較表】
CPU名ベンチマークコア(スレッド)TDP定格クロックTB時最大コスパ参考価格
Core i9 9900K205008(16)95W3.6GHz5.0GHz0.31565,000円
Core i7 9700K174008(8)95W3.6GHz4.9GHz0.36348,000円
Core i5 9600K139006(6)95W3.7GHz4.6GHz0.42133,000円
Core i7 8700K161006(12)95W3.7GHz4.7GHz0.36644,000円
Core i7 8700152506(12)65W3.2GHz4.6GHz0.39139,000円
Core i5 8600K128006(6)95W3.6GHz4.3GHz0.432,000円
Core i5 8500121006(6)65W3.0GHz4.1GHz0.41729,000円
Core i5 9400F120506(6)65W2.9GHz4.1GHz0.52423,000円
Core i5 8400117006(6)65W2.8GHz4.0GHz0.43327,000円
※ベンチマークスコアはPASSMARKのベンチマークスコアを参考にした目安の値。
※参考価格は、価格.comの2019年2月下旬時点での最安値価格。
第8世代のCPUと比較してみると、買い替えたいと思うほどの魅力は正直ありませんでした。ベンチマークスコア自体は向上しているものの、コスパは良くはないし、特別な機能なども無いので魅力は少ないです。
1コア(1スレッド)あたりの性能の向上が少ない分、コスパが重視される中でコスパもそこまで良くないのは割と致命的です。まぁ、マイクロアーキテクチャの根本的な部分は変わっていないので、仕方ないですね。
まだ発売から日が浅いので、価格が大幅に下がる可能性もありますが、少なくとも現時点(2018年10月末)では、第8世代CPUの方が全体的にコスパが良いです。
また、全体的にクロック周波数・コア数が増えているため、発熱の問題も第8世代より注意が必要だと考えられ、扱いにくさが気になります。

追記:遅れて登場した「Core i5 9400F」は、コスパがめちゃくちゃ良いです。内蔵GPUが無効化されているので、増設用グラフィックボードは必須ですが、コスパはズバ抜けています。予算を抑える事も優先するなら、一択レベルだと思います。

Core i5 9400F は Core i5 8400とほぼ同じ仕様
「Core i5 9400F」は第9世代に登場しましたがベースは「Core i5 8400」と全く同じもので、内蔵GPUが廃止され動作クロックが僅かに引き上げられたものとなっています。
そのため、記事内の「Core i5 9400F」の性能関連スコアは、「Core i5 8400」のものを3%向上したものとしてます。(動作クロック上昇分)

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能が高いと、軽い処理の処理速度が速くなる他、マルチスレッド(コア)処理に対しての最適化が不十分なアプリケーションに対する処理速度が速くなります。
大きなメリットは上記に挙げたものが主ですが、ほぼ全ての処理に対して有利に働くので重要視される事が多いです。
今回は、Cinebench R15というソフトで測定した数値を見ていきます。
【Cinebench R15 Single】
CPU名称
スコア
Core i9 9900K221
Core i7 9700K218
Core i7 8086K217
Core i7 8700K203
Core i5 9600K201
Core i5 9400F182(推定)
Core i5 8400177

全モデル非常に高いシングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、第8世代から向上が見られました。
特に「Core i5 9600K」は「Core i7 8700K」に迫る性能まで向上しています。
「Core i5 9400F」は「Core i5 8400」とベースが同じなので少しの向上ですが、2万円台前半という価格を考えれば、異常ともいえる高さとコスパです。

マルチスレッド性能

マルチスレッド性能が高いと、マルチタスクの処理やエンコードの速度などが速くなります。簡単にいうとCPU全体の全力のパフォーマンスを表します。
シングルスレッド性能と同じく、Cinebench R15というソフトで測定した数値を見ていきます。
【Cinebench R15 Multi】
CPU名称
スコア
Core i9 9900K2063
Core i7 9700K1515
Core i7 8086K1421
Core i7 8700K1411
Core i5 9600K1074
Core i5 9400F977(推定)
Core i5 8400949

マルチスレッド性能は、大幅にCore i9が上回る

Core i9 9900KがCore i7 9700Kより約25%高い数値を出し、大きく上回っています。「Core i9」という名を冠しているだけあって、CPU全体のパフォーマンスはさすがです。
Core i9はコスパがやや悪いのが玉に瑕ですが、出来るだけ高いマルチスレッド性能を求めるのなら、「Core i9 9900K」は有力候補…というか一択に近いです。
また、Core i9の陰に隠れていますが、8スレッドで1500を超える数値を出している「Core i7 9700K」も凄いですし、6スレッドで1000近い数値を出しているCore i5も同様です。総じて非常に効率の良い処理が行われているという印象で、どれを取っても素晴らしいです。さすがのIntelといったところ。

ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームする際のパフォーマンスの性能です。
主に実際にゲームを起動してみた際のFPS数で比較されます。
今回は、10種類の人気ゲームでFPS数を測定した平均FPS数(相乗平均)の数値を見ていきます。
使用されたGPUは「Geforce GTX 1080 Ti」となっています。
【総合ゲーミング性能】
CPU名称
FPS
Core i9 9900K120.7
Core i7 9700K119.2
Core i7 8086K116.1
Core i7 8700K115.7
Core i5 9600K115.2
Core i5 9400F114.6(推定)
Core i5 8400111.3

性能差はわずか、相変わらずCore i5が驚異的なコスパ

処理性能には大きな差がある「Core i9 9900K」と「Core i5 9600K」を比較しても、FPS数は5程度しか変わりませんでした。
今回の測定に用られているGPUは「GeForce GTX 1080 Ti」という超高性能なハイエンドGPUですが、Core i5でもそのボトルネックとはならないという事がわかります。
そのため、単純にゲーミング性能のコスパを考えるのであれば、Core i5が圧倒的優位です。
中でも「Core i5 9400F」は、2万円台前半という安さなので、特に良いです。
2万円台前半のCPUと4万円以上クラスのCPUのゲーミング性能差がわずかという訳の分からない状況に。エグいです。
とはいえ、やはりマルチタスク方面ではマルチスレッド性能がモノを言うので、「Core i5」は不利です。
「ゲーム+何か重めのアプリケーション」という使い方が主なら「Core i7」以上を選ぶ理由は十分あります。
しかし、最新3Dゲームなら「Core i7以上が最低条件」という時代は終わりを迎えたといっても良さそうです。(これは第8世代からだけど)

まとめ

Core i9は少しでも高いマルチスレッド性能を求める人向け

Core i9は、あらゆる項目でトップの数字を叩き出してはいるものの、シングルスレッド性能・ゲーミング性能ではCore i7と差がほとんどありません。そのため、一般の人が、実際の使用感においてその性能差を活用できる場面は少ないです。
そして何よりも、コスパが良いとは言えない上、価格自体が高すぎるのがネックです。高負荷な作業を日常的に行うような「少しでも高いマルチスレッド性能を求める人」にはもちろん魅力的で最有力候補だと思いますが、それ以外の人には基本的には向かなさそうです。
発熱はどうやらそこまで酷くもないみたいですが、対策自体は必須ですし、「Core i9 9900K」の需要は比較的限られてしまう印象でした。

予算が少しでも気になる人はCore i5で問題ない

Core i5は価格も比較的安価で、ゲーミング性能・シングルスレッド性能が価格の割に非常に高く、コスパが光ります。
特にゲーミング性能はCore i7やi9ともわずかしか変わらず、値段を考えれば驚異的なコスパです。
特に「Core i5 9400F」に関しては何かの間違いかと勘違いしそうなレベルのコスパの良さで、コスパ最重視のゲーミング用CPUなら一択レベルです。内蔵GPUが廃止されている点は注意ですが、グラボ搭載前提なら気にする必要はないです。
とはいえ、マルチスレッド性能だけはCore i9とCore i7に大幅に負けてしまっています。数値自体は決して低いものではなく十分高性能といえるものですが、マルチタスクやレンダリングやエンコード等を頻繁に行う人であれば、Core i7 か Core i9 の方が良いかと思います。ただ、Core i5 も掛かる時間が多少長くなるだけで、作業自体は十分にこなせる性能なので、予算を抑えたい都合であれば、Core i5 でも問題は無いかと思います。
総合的に見て、第9世代のCore i5 は、弱点はあるものの「可・不可」でいえば不可能な事はほぼないCPUといえます。
そのため、少しでも予算が気になる場合であれば無理に15000円~20000円以上をプラスしてCore i7やCore i9を購入する必要性はありません。
なんていったって、7世代以前のCore i7 に匹敵する性能ですからね。

安定はやっぱりCore i7

Core i7はあらゆる方面で高性能でバランスが良く、コスパもCore i9ほどは悪くないです。
マルチスレッド性能は Core i9 に大幅に負けてしまってはいますが、十分に高性能な数値を出しています。第7世代以前のCore i7より圧倒的に良いです。
シングルスレッド性能に関してはCore i9と同程度という非常に高いものを持っており、普段使いの安定感もバツグンです。
Core i9と比較して、一般的な用途なら得られる結果はほぼ変わらないといっても良いです。
実力至上主義のPCパーツにおいて、Core i9 の魅力は捨てがたいものですが、未だに「とりあえず Core i7 が無難」というのは健在かなーという印象です。
コスパは気になるけど、PCゲームの配信や動画のエンコードを頻繁にやるので「Core i5じゃちょっと不安がある」という人に「Core i7」は最適な選択といえます。
それでは、記事はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。