「Core Ultra 9 285K」「Core Ultra 7 265K」「Core Ultra 5 245K」ざっくり評価【性能比較】

様々な刷新のあったIntelのデスクトップ向けの新世代CPUシリーズ「Core Ultra 200S」の初投入モデルのざっくり評価です。「Core Ultra 9 285K」「Core Ultra 7 265K」「Core Ultra 5 245K」の3つを見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2024年10月25日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

簡易比較表

前世代との比較

まずは、前世代の「第14世代Coreシリーズ」の先代モデルと比較して仕様を確認していきます。

Core Ultra 9 285K
Core Ultra 7 265KCore Ultra 5 245KCore i9-14900KCore i7-14700KCore i5-14600K
コードネームArrow Lake-SArrow Lake-SArrow Lake-SLaptor Lake-S
Refresh
Laptor Lake-S
Refresh
Laptor Lake-S
Refresh
アーキテクチャP:Lion Cove
E:Skymont
P:Lion Cove
E:Skymont
P:Lion Cove
E:Skymont
P:Raptor Cove
E:Gracemont
P:Raptor Cove
E:Gracemont
P:Raptor Cove
E:Gracemont
プロセス3nm(CPU)
6nm(SoC)
6nm(I/O)
5nm(GPU)
3nm(CPU)
6nm(SoC)
6nm(I/O)
5nm(GPU)
3nm(CPU)
6nm(SoC)
6nm(I/O)
5nm(GPU)
Intel 7
(10nm)
Intel 7
(10nm)
Intel 7
(10nm)
ソケットLGA1851LGA1851LGA1851LGA1700LGA1700LGA1700
コア
24コア
(8P+16E)
20コア
(8P+12E)
14コア
(6P+8E)
24コア
(8P+16E)
20コア
(8P+12E)
14コア
(6P+8E)
スレッド
24スレッド
20スレッド14スレッド32スレッド28スレッド20スレッド
PBP(PL1)125W125W125W125W125W125W
MTP (TDP/PL2)
250W
250W
159W
253W253W181W
Pコアクロック
3.7 – 5.7 GHz
3.9 – 5.5 GHz4.2 – 5.2 GHz3.2 – 6.0 GHz3.4 – 5.6 GHz3.5 – 5.3 GHz
Eコアクロック
3.2 – 4.6 GHz
3.3 – 4.6 GHz3.6 – 4.6 GHz2.4 – 4.4 GHz2.5 – 4.3 GHz2.6 – 4.0 GHz
L2キャッシュ
40MB36MB26MB32MB28MB20MB
L3キャッシュ
36MB
30MB
24MB
36MB
33MB
24MB
Tjunction max
(最大温度)
105℃105℃105℃100℃100℃100℃
内蔵GPUIntel Graphics
(Xe-LPG 4コア)
Intel Graphics
(Xe-LPG 4コア)
Intel Graphics
(Xe-LPG 4コア)
UHD 770
UHD 770
UHD 770
NPUIntel AI Boost
(NPU3)
~13TOPS
Intel AI Boost
(NPU3)
~13TOPS
Intel AI Boost
(NPU3)
~13TOPS
無し
無し
無し
対応メモリ
(定格最大)
DDR5-6400
DDR5-6400DDR5-6400DDR5-5600
DDR4-3200
DDR5-5600
DDR4-3200
DDR5-5600
DDR4-3200
発売時の
希望小売価格
589ドル
394ドル
(F:379ドル)
309ドル
(F:294ドル)
589ドル
(F:564ドル)
409ドル
(F:384ドル)
319ドル
(F:294ドル)

おおまかなCPU仕様の違いは以上のような感じになっています。

多くの刷新を含んだのが「Core Ultra 200S」となっており、名前まで変えたのは見せかけではないです。基盤設計の大幅な刷新、プロセスの大幅な微細化、NPU搭載などが含まれています。

恐らくはコストが増加する大きな変更を伴う新世代ながら、価格は前世代と同水準を維持しているのが嬉しいところです。「Core Ultra 200S」の発売に伴い、「Ryzen 9000」でも30ドル~50ドルの値下げを実施されますが(ホリデーシーズンのプロモーション価格)、その値下げ込みでもCPUの単体価格は少し有利です。

ただし、発売直後では対応マザーボードが上位チップセット「Z890」しか投入されないのが残念です。

Ryzen 9000は既存の600番台チップセットでも利用できるので(BIOS更新は必要になる可能性あり)、安価なマザーボードの選択肢も豊富です。そのため、総合的な費用では発売直後ではRyzenの方が少し安くなる可能性が高いです。発売直後はCPU価格が高価になるのが通例ということもありますし、価格重視なら少し待つ方が賢明かなと思います。

次に具体的な仕様を見ていきます。

まず、プロセス面の設計ががらっと変わっています。先代ではIntel製のIntel 7(10nm)の単一ダイ仕様でしたが、「Core Ultra 200S」からは複数のダイから構成される「タイル設計」になりました。

更に、プロセスルールが大幅に微細化し、CPU部分のコンピュートタイルでは3nm(TSMC N3B)になりました。Ryzen 9000は4nmなので、一気に追い付きました。

プロセスルールとは配線の幅を示すもので、これが細いほど、複雑な記述が可能になったりトランジスタをたくさん使えたりして良いとされており、特に電力面での恩恵が大きいとされているので、これが大幅に微細化されたのは朗報です。

他のタイルも、SoCタイルおよびI/Oタイルでは6nm(TSMC N6)、GPUタイルでは5nm(TSMC N5P)となり、これらがIntel製のベースタイル上に載せて実装されています。これまでと打って変わって最新鋭のプロセスを用いたプロセッサとなっています。

余談ですが、上記見ると分かる通り、メイン部分は全てTSMC製のダイを使用しています。これまでは全て自社製造(Intel製)だったことを考えると、開発の遅れや、現状での性能の敗北を実質認める形にもなっているのかなと思います。

次にCPUのコアアーキテクチャですが、PコアはLion Cove、EコアはSkymontになりました。

モバイル版では既に同アーキテクチャのCPUが既に出荷されていますが、特にEコアの性能や効率は大きな向上が見られたので、期待したいです。

アーキテクチャの変更に伴い、ソケットもLGA1851へと変更になります。先代のLGA1700とは互換性が無くなってしまいますが、どうやらパッケージのサイズは維持されるらしく、CPUクーラーはそのまま取付が可能らしいとの情報があります。

ただし、ホットスポットが異なるらしく、そのまま取り付けても最大冷却性能を発揮できない可能性があるので、一部メーカーではオフセットブラケットなどを利用して対応できるとの話があります。

次にコアの構成ですが、コア数および構成については、先代と全く同じなので分かり易いです。Core Ultra 9が24コア(8P+16E)、Core Ultra 7が20コア(8P+12E)、Core Ultra 5が14コア(6P+8E)です。

ただし、Pコアのハイパースレッディングが廃止されて1コア=1スレッドとなっている点に注意です

キャッシュ容量についてはPコアのL2キャッシュ容量が増量されました。先代の2MBから3MBになり、Pコアあたり1MB増えました。ただし、Eコアや共有のL3キャッシュの最大容量は先代と同じなので、合計キャッシュ容量は微増程度になっています。Ryzen X3Dで特にゲームに影響を与えることが確認されているL3キャッシュが増えなかったのは少し気になるところです。

電力設定面では、「Core Ultra 9 285K」および「Core Ultra 7 265K」は「125W – 250W」で先代とほぼ同じですが、「Core Ultra 5 245K」は「125W – 159W」となっており、最大電力が少し下がっています。これについては後の電力面の項目で実測値と併せて確認していきます。

そして、AI用のNPUが搭載されたことにも注目です。最大性能は13TOPSです。

性能は高いとは言えませんが、Intelによるとそれでも多くのアプリケーションで活用できるとのことです。スマホではもっと低い性能でもAI処理を取り入れた端末もあるので、これは事実かなと思います。

このNPU搭載が実は結構気になるところで、対抗のRyzen 9000シリーズではNPUは搭載されていません。そのため、明確な優位性となります

ゲーミングPCではグラボをAI処理にも利用できるため、NPUの重要性はモバイルデバイスほどではないですが、Z890以外のチップセットが登場すれば、Ryzenよりも少し安くなることも推測されるので、性能がもし同等レベルなら決め手となる可能性を感じます。

また、内蔵GPUも変更になりました。Xe-LPGの4コアGPUになります。結論を言ってしまうと、先代のUHD 770よりも3倍近くの性能となっており、軽いゲームなら快適なプレイが可能なレベルになりました。

K付きの内蔵GPUを使う人はほとんど居ないと思いますが、K無しのモデルが同じGPU仕様ならメインとして利用する人も増えるかもしれません。

カタログスペックについて触れるのは以上です。前置きが長くなりましたが、詳細な性能について見ていきます。

他の既存CPUとの比較表

記事執筆時点の既存の主要CPUとの簡易比較表です。この後にテスト結果の確認に移りたいと思います。

※掲載の価格は記事執筆時点のおおよその市場価格です。

簡易比較
CPU名コアスレッドクロック
定格 / 最大
TDP
(PL1 – PL2)
iGPUL3
キャッシュ
参考価格
Core Ultra 9 285K24
(8P+16E)
243.7 / 5.7GHz
3.2 / 4.6GHz
125W – 250WIntel Graphics
Xe-LPG 4コア
36MB115,800円
Ryzen 9 9950X16324.3 / 5.7GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB114,800円
Ryzen 9 7950X3D16324.2 / 5.7GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)128MB113,800円
Ryzen 9 7950X16324.5 / 5.7GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB90,460円
Core i9-14900K24
(8P+16E)
323.2 / 6.0GHz
2.4 / 4.4GHz
125W – 253WUHD 77036MB81,480円
Core i9-14900KF24
(8P+16E)
323.2 / 6.0GHz
2.4 / 4.4GHz
125W – 253W無し36MB76,980円
Core Ultra 7 245K20
(8P+12E)
203.9 / 5.5GHz
3.3 / 4.6GHz
125W – 250WIntel Graphics
Xe-LPG 4コア
30MB78,800円
Core Ultra 7 245KF20
(8P+12E)
203.9 / 5.5GHz
3.3 / 4.6GHz
125W – 250W無し30MB75,800円
Core i7-14700K20
(8P+12E)
283.4 / 5.6GHz
2.5 / 4.3GHz
125W – 253WUHD 77033MB58,880円
Core i7-14700KF20
(8P+12E)
283.4 / 5.6GHz
2.5 / 4.3GHz
125W – 253W無し33MB55,980円
Core i7-1470020
(8P+12E)
282.1 / 5.4GHz
1.5 / 4.2GHz
65W – 219WUHD 77033MB54,980円
Core i7-14700F20
(8P+12E)
282.1 / 5.4GHz
1.5 / 4.2GHz
65W – 219W無し33MB49,800円
Ryzen 9 9900X12244.4 / 5.6GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)64MB84,800円
Ryzen 9 7900X3D12244.4 / 5.6GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)128MB85,800円
Ryzen 9 7900X12244.7 / 5.6GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB65,790円
Ryzen 9 790012243.7 / 5.4GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)64MB62,980円
Core Ultra 5 245K14
(6P+8E)
144.2 / 5.2GHz
3.6 / 4.6GHz
125W – 159WIntel Graphics
Xe-LPG 4コア
24MB59,800円
Core Ultra 5 245KF14
(6P+8E)
144.2 / 5.2GHz
3.6 / 4.6GHz
125W – 159W無し24MB59,800円
Core i5-14600K14
(6P+8E)
203.5 / 5.3GHz
2.6 / 4.0GHz
125W – 181WUHD 77024MB41,980円
Core i5-14600KF14
(6P+8E)
203.5 / 5.3GHz
2.6 / 4.0GHz
125W – 181W無し24MB38,780円
Ryzen 7 9700X8163.8 / 5.5GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB60,800円
Ryzen 7 7800X3D8164.2 / 5.0GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)96MB73,980円
Ryzen 7 7700X8164.5 / 5.4GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB48,980円
Ryzen 7 77008163.8 / 5.3GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB46,980円
Ryzen 5 9600X6123.9 / 5.4GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB44,800円
Ryzen 5 7600X6124.7 / 5.3GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB33,800円
Ryzen 5 76006123.8 / 5.1GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB32,800円
Core i5-1440010
(6P+4E)
162.5 / 4.7GHz
1.8 / 3.5GHz
65W – 154WUHD 73020MB32,480円
Core i5-14400F10
(6P+4E)
162.5 / 4.7GHz
1.8 / 3.5GHz
65W – 148W無し20MB27,980円
Ryzen 7 5700X3D8163.0 / 4.1GHz105W – 142W無し96MB33,480円
Ryzen 7 5700X8163.4 / 4.6GHz65W – ?W無し32MB23,980円

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアを海外レビューを参考に見ていきます。使用されたメモリは、DDR5に対応しているモデルでは「DDR5-6000 CL36」で、DDR4の場合は「DDR4-3600 CL14」か「DDR4-3400 CL14」となっています。

ゲームのテストで使用されたGPUは「RTX 4090」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench 2024というレンダリングのベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench 2024 Multi
CPU名称スコア
Core Ultra 9 285K
2448
Ryzen 9 9950X
2305
Core i9-14900K
2257
Core i9-13900K
2187
Ryzen 9 7950X
2142
Ryzen 9 7950X3D
2094
Core Ultra 7 265K
2090
Core i7-14700K
1950
Ryzen 9 9900X
1829
Core i7-13700K
1713
Ryzen 9 7900X
1668
Core i9-12900K
1589
Ryzen 9 5950X
1535
Core Ultra 5 245K
1492
Ryzen 9 7900
1467
Core i5-14600K
1410
Core i5-13600K
1322
Core i7-12700K
1312
Ryzen 9 5900X
1258
Ryzen 7 9700X
1208
Ryzen 7 7700X
1149
Ryzen 7 7700
1106
Ryzen 7 7800X3D
1104
Core i5-12600K
1023
Ryzen 5 9600X
975
Ryzen 5 7600X
886
Ryzen 7 5800X3D
885
Ryzen 5 7600
849
Core i5-13400F
837
Ryzen 7 5700X
826
Core i5-12400F
679
Ryzen 5 5600X
676
参考:TechPowerUp

マルチスレッド性能は先代から約5.8%~8.5%の小さめの向上

マルチスレッド性能は先代から1割未満の小さな向上です。

とはいえ、Pコアが1コア=1スレッドになっても性能を維持しているのは褒めるべき部分です。後述のPコアのシングルスレッド性能の向上率はそこまで高くなかったので、Eコアのコアあたりの性能が大きく上がったと推測されます。

また、競合の「Ryzen 9000」もマルチスレッド性能の向上率はイマイチだったこともあり、結果としては小さい向上率ながら上回っています。

CPUの本体価格では若干安くなると思われますから、マルチスレッド性能コスパでは勝ることになります。

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench 2024というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench 2024 Single
CPU名称スコア
Core Ultra 9 285K
143
Ryzen 9 9950X
138
Core Ultra 7 265K
137
Core i9-14900K
137
Ryzen 9 9900X
137
Ryzen 7 9700X
135
Core Ultra 5 245K
133
Core i9-13900K
133
Ryzen 5 9600X
133
Core i7-14700K
129
Core i7-13700K
125
Ryzen 9 7950X
124
Ryzen 9 7950X3D
123
Ryzen 9 7900X
122
Core i5-14600K
122
Core i9-12900K
120
Ryzen 7 7700X
120
Ryzen 9 7900X
119
Ryzen 5 7600X
119
Core i5-13600K
118
Core i7-12700K
116
Ryzen 7 7700
116
Ryzen 7 7800X3D
114
Core i5-12600K
114
Core i5-13400F
107
Core i5-12400F
103
Ryzen 7 5800X3D
95
Ryzen 7 5700X
95
Ryzen 5 5600X
95
参考:TechPowerUp

シングルスレッド性能は先代から約4.4%~9%の小さな向上

シングルスレッド性能もマルチスレッド性能と向上率はほぼ同じの1割未満の向上でした。

ただし、先代よりも最大クロックはわずかに低下した上で向上しているので、コアアーキテクチャの変更などによりIPCが向上していることが伺えます。

また、Pコアのハイパースレッディングが廃止されてスレッド数が大きく減少したにも関わらず、マルチスレッド性能は下がらなかった上、Pコアのシングルスレッド性能向上もさほど大きくないことから、Eコアのシングルスレッド性能が格段に向上していると推測されます

Intelの発売前の発表によると、EコアではIPCが先代から32%向上しているとの話もあるので、ベンチマーク等では明らかになりにくい要素ですが、Eコアの性能向上は大きな進化ポイントです。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。

今回は10種類のゲームで測定したFPSの平均を見ていきます(レイトレーシング含む)。使用されたGPUは「GeForce RTX 4090」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

また、計測タイトルは重量級ゲームが中心な上に最高設定なので、RTX 4090の割には全体的にfpsが低めです。本記事では触れませんが、下記の結果はどの環境でも維持されるものではなく、特に軽いゲームでfpsが非常に高い場合は、他の性能よりもマルチスレッド性能が高いCPUの方が有利な傾向がある点に注意してください。

10種類のゲームでの平均fps(1080p)
CPU名称スコア
Ryzen 7 7800X3D
193.1
Core i9-14900K
186.3
Ryzen 9 7950X3D
186.1
Core i9-13900K
185.1
Core i7-14700K
182.5
Core i7-13700K
181.1
Ryzen 9 9950X
180.0
Ryzen 7 9700X
178.4
Ryzen 9 9900X
178.2
Ryzen 5 9600X
177.5
Ryzen 9 7950X
177.0
Core Ultra 9 285K
176.3
Ryzen 7 7700X
175.9
Ryzen 9 7900X
175.2
Ryzen 7 7700
174.8
Ryzen 5 7600X
173.2
Core i5-14600K
172.9
Core Ultra 7 265K
172.1
Ryzen 7 5800X3D
171.7
Ryzen 9 7900
171.3
Ryzen 5 7600
170.5
Core i5-13600K
170.1
Core i9-12900K
168.7
Core Ultra 5 245K
167.1
Core i7-12700K
164.2
Ryzen 9 5950X
158.2
Ryzen 9 5900X
156.2
Core i5-12600K
153.4
Core i5-13400F
145.9
Ryzen 7 5700X
147.5
Ryzen 5 5600X
147.1
Core i9-11900K
146.6
Core i5-12400F
142.7
Ryzen 7 5700G
128.7
Core i5-11400F
114.9
参考:TechPowerUp
10種類のゲームでの平均fps(1440p)
CPU名称スコア
Ryzen 7 7800X3D
156.8
Core i9-14900K
155.0
Core i9-13900K
154.4
Core i7-14700K
153.2
Ryzen 9 7950X3D
152.6
Core i7-13700K
151.7
Core Ultra 9 285K
150.7
Ryzen 9 7950X
149.4
Core Ultra 7 265K
148.9
Core i5-14600K
148.8
Ryzen 5 9600X
148.6
Ryzen 9 9950X
148.5
Ryzen 9 9900X
148.4
Ryzen 7 9700X
148.3
Ryzen 9 7900X
148.3
Ryzen 7 7700X
148.1
Ryzen 7 5800X3D
147.5
Core i5-13600K
147.2
Core i9-12900K
146.8
Core Ultra 5 245K
146.7
Ryzen 9 7900
145.8
Ryzen 7 7700
146.6
Ryzen 5 7600
144.3
Ryzen 5 7600X
146.2
Core i7-12700K
143.9
Ryzen 9 5950X
140.4
Ryzen 9 5900X
139.3
Core i5-12600K
137.7
Ryzen 7 5700X
134.2
Ryzen 5 5600X
134.0
Core i5-13400F
133.6
Core i9-11900K
133.3
Core i5-12400F
131.4
Ryzen 7 5700G
120.9
Core i5-11400F
111.0
参考:TechPowerUp
10種類のゲームでの平均fps(4K)
CPU名称スコア
Ryzen 7 7800X3D
101.1
Ryzen 9 7950X3D
101.0
Core i9-14900K
100.3
Core i9-13900K
100.0
Core i7-14700K
99.8
Core i7-13700K
99.4
Ryzen 9 7950X
99.1
Ryzen 9 9950X
99.0
Core Ultra 9 285K
98.9
Ryzen 9 9900X
98.9
Ryzen 9 7900X
98.8
Ryzen 7 5800X3D
98.8
Core i5-14600K
98.7
Ryzen 5 9600X
98.7
Ryzen 7 7700X
98.6
Core Ultra 7 265K
98.4
Ryzen 7 9700X
98.3
Core i9-12900K
98.3
Core i5-13600K
98.1
Ryzen 9 7900
98.1
Core Ultra 5 245K
98.0
Ryzen 7 7700
98.0
Core i7-12700K
97.5
Ryzen 5 7600X
97.4
Ryzen 5 7600
97.2
Ryzen 9 5950X
95.5
Core i5-12600K
95.2
Ryzen 9 5900X
95.0
Core i5-13400F
93.7
Ryzen 5 5600X
92.8
Core i5-12400F
92.6
Ryzen 7 5700X
92.6
Core i9-11900K
92.0
Ryzen 7 5700G
88.1
Core i5-11400F
84.9
参考:TechPowerUp

ゲーム性能は前世代からまさかの低下

注目度の高いゲーム性能ですが、まさかの前世代から少し低下という結果になりました。事前発表の時点で7000X3Dに劣るのは認めていたので、大した向上率ではなさそうだなとは思っていましたが、まさかの低下です。

フルHDで「Ryzen 7 7800X3D」と「Core Ultra 9 285K」を比較すると、285Kが約8.7%も劣っています。「Ryzen 7 9800X3D」の登場も控える中、この結果はかなり致命的な気がします。

一つ一つ見てみると、まず「Core Ultra 9 285K」は「Ryzen 9000 非X3Dモデル(Ryzen 5 9600X~Ryzen 9 9950X)」とほぼ同等レベルのゲーム性能です。NPU搭載のメリットもあるので、こちらは価格が落ち着けば悪くないと思います。ただし、先代のCore i9-14900KやRyzen X3Dには普通に負けていますから、ゲーム重視ならやはり強力とは言えず、最新世代の最上位CPUとしては微妙であるのは否めないかなと思います。

続いて「Core Ultra 7 265K」フルHDでは「Ryzen 7000 無印」にもわずかに劣るレベルとなっています。正直微妙です。しかし、1440p以降では「Ryzen 9000 非X3D」と同等レベルになり、相対的に地位を上げます。状況によるので評価が難しいですが、結局は「Ryzen 9000 非X3D」や前世代以下のゲーム性能ということは変わりませんから、微妙感は強いです。ただし、NPU搭載のメリットはありますし、後述の電力・温度面が思ったよりも優秀で「Core Ultra 9 285K」よりも大分良かったので、マルチスレッド性能面や安定運用、NPU搭載を重視するのであれば悪くはないと思います。

最後に「Core Ultra 5 245K」ですが、最大クロックが低いせいか一段低い性能となっており、「Ryzen 7000 無印」と争うレベルなので、大分厳しい立ち位置です。

このように、「Core Ultra 200S」のゲーム性能は競合モデルには基本劣り、正直微妙です。

一応少しだけ擁護をしておくなら、今回のテストはRTX 4090で測定したものですが、実際にはそのレベルのハイエンドGPUで運用する人はごくわずかです。GPUの性能が低くなるほど、各CPU間の性能差は縮小する傾向がありますので、実際には無視できるレベルの差に収まることが多いとは思います。Intelとしては、実用性を度外視した少しのゲーム性能のためよりも、電力・温度面やNPU搭載を優先したのかもしれません。

とはいえ、残念ながら、優れたゲームCPUとしては良い評価は与えられない結果なのは事実です。引き続き、RyzenのX3Dモデルが最強のゲームCPUとしてしばらく王座を守ることになりそうです。

消費電力や効率

消費電力

消費電力を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」による消費電力と、ゲーミング時平均による消費電力の二つを見ていきます。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称消費電力
Ryzen 7 5700X
56
Ryzen 5 5600X
60
Core i5-12400F
63
Core i5-13400F
65
Ryzen 7 7800X3D
74
Ryzen 9 7900
74
Ryzen 5 7600
76
Ryzen 7 7700
80
Ryzen 5 9600X
80
Ryzen 7 9700X
80
Ryzen 7 5800X3D
89
Ryzen 5 7600X
102
Ryzen 9 5950X
117
Core i5-12600K
119
Ryzen 9 5900X
133
Core Ultra 5 245K
134
Ryzen 7 7700X
135
Core i5-13600K
139
Core i5-14600K
145
Ryzen 9 7950X3D
147
Core Ultra 7 265K
155
Core i7-12700K
164
Ryzen 9 9900X
173
Ryzen 9 7900X
197
Core i7-13700K
212
Ryzen 9 9950X
220
Core i7-14700K
222
Core Ultra 9 285K
235
Core i9-12900K
237
Ryzen 9 7950X
260
Core i9-13900K
279
Core i9-14900K
281
参考:TechPowerUp
消費電力(13ゲーム平均)
CPU名称消費電力
Core i5-12400F
40
Ryzen 7 7800X3D
46
Ryzen 5 5600X
47
Core i5-13400F
48
Ryzen 7 5700X
49
Ryzen 5 7600
50
Ryzen 7 5800X3D
58
Ryzen 7 7700
60
Core i5-12600K
61
Core Ultra 5 245K
61
Ryzen 5 9600X
66
Ryzen 5 7600X
66
Ryzen 9 7950X3D
68
Ryzen 7 7700X
70
Ryzen 9 7900
71
Ryzen 7 9700X
71
Core i7-12700K
74
Core i5-14600K
76
Core Ultra 7 265K
77
Core i5-13600K
79
Core Ultra 9 285K
94
Ryzen 9 5900X
98
Core i9-12900K
98
Ryzen 9 9900X
100
Core i7-13700K
102
Ryzen 9 9950X
104
Ryzen 9 7900X
104
Ryzen 9 5950X
108
Core i7-14700K
116
Ryzen 9 7950X
116
Core i9-13900K
145
Core i9-14900K
149
参考:TechPowerUp

消費電力は先代からは大きく減っているものの、Ryzenよりも有利という訳ではない

電力面はIntelが大きくアピールしていたポイントです。実際、消費電力は先代よりは改善していることがわかります。比較した表が下記です。

消費電力比較
CPUBlenderゲーム
Core Ultra 9 285K235W(-46W)94W(-55W)
Core i9-14900K281W149W
Core Ultra 7 265K155W(-67W)77W(-39W)
Core i7-14700K222W116W
Core Ultra 5 245K134W(-11W)61W(-15W)
Core i5-14600K145W76W

特に「Core Ultra 7 / 9」の削減が大きいです。レンダリング時で46W~67W、ゲーム時で39W~55Wもの電力削減となっています。

しかし、そもそも前世代のCore i7(K付き)以降は元の電力面がかなり悪かったので、大きな削減を経ても最終的な数値は思ったよりは良くはないです。

直接の競合となる「Ryzen 5 9600X~Ryzen 9 9950X」と比較すると、「Core Ultra 7 265K」と「Ryzen 9 9900X」を比べるとCoreの方が少し有利かなというくらいで、他は同等レベルかなという感じです。

また、電力設定が異なるものの、依然として「Ryzen 7000X3D」モデルの方が格段に少ない消費電力です。X3Dに対してはゲーム性能でも明確に負けていましたから、X3Dには電力面込みでもゲームでは敵いません

電力効率(ワットパフォーマンス)

電力効率を見ていきます。レンダリングおよびゲーミング時の効率です。

各テストで得られたスコアを消費電力で割って算出した、1Wあたりのスコアで見ていきます。ただし、効率が悪かったとしても、レンダリングなどの処理量が決まっているスコアでは高性能な方が処理を早く終えることが出来るため優位性がありますし、ゲームにおいても高いfpsを得ているので、効率が悪いから一概にダメという訳ではない点を留意です。

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称1Wあたりのスコア
Ryzen 9 7900
20.7
Ryzen 9 7950X3D
17.0
Ryzen 7 7800X3D
16.2
Ryzen 7 9700X
15.7
Ryzen 7 7700
15.0
Core i5-13400F
14.1
Ryzen 7 5700X
13.7
Ryzen 9 5950X
12.8
Ryzen 5 9600X
12.7
Core Ultra 5 245K
12.4
Ryzen 9 9900X
12.0
Core Ultra 7 265K
11.9
Ryzen 9 9950X
11.6
Ryzen 5 5600X
11.6
Core Ultra 9 285K
11.5
Ryzen 5 7600
11.5
Core i5-12400F
11.3
Ryzen 7 5800X3D
10.6
Core i5-14600K
10.4
Ryzen 9 5900X
10.2
Ryzen 9 7900X
10.1
Core i5-13600K
10.1
Ryzen 9 7950X
10.0
Ryzen 7 7700X
9.8
Core i5-12600K
9.4
Core i7-14700K
9.4
Core i7-12700K
9.0
Core i9-14900K
8.6
Ryzen 5 7600X
8.6
Core i7-13700K
8.5
Core i9-13900K
8.3
Core i9-12900K
7.5
参考:TechPowerUp
電力効率(14ゲーム1080p平均)
CPU名称1Wあたりのfps
Ryzen 7 7800X3D
4.25
Core i5-12400F
3.78
Ryzen 5 7600
3.53
Ryzen 5 5600X
3.19
Core i5-13400F
3.18
Ryzen 7 5700X
3.06
Ryzen 7 5800X3D
3.05
Ryzen 7 7700
3.02
Core Ultra 5 245K
2.89
Ryzen 5 9600X
2.80
Ryzen 9 7950X3D
2.76
Ryzen 5 7600X
2.72
Core i5-12600K
2.68
Ryzen 7 7700X
2.66
Ryzen 7 9700X
2.59
Core Ultra 7 265K
2.41
Core i5-14600K
2.41
Core i7-12700K
2.39
Ryzen 9 7900
2.39
Core i5-13600K
2.22
Core Ultra 9 285K
2.01
Core i7-13700K
1.88
Ryzen 9 9900X
1.85
Core i9-12900K
1.82
Ryzen 9 9950X
1.80
Ryzen 9 7900X
1.70
Core i7-14700K
1.63
Ryzen 9 5900X
1.61
Ryzen 9 7950X
1.54
Ryzen 9 5950X
1.48
Core i9-13900K
1.35
Core i9-14900K
1.32
参考:TechPowerUp

効率も前世代からは改善するも、Ryzenよりも有利という訳ではない

最大性能が先代と大差なかったので、効率も消費電力と同じような傾向です。先代との差を一応表にまとめると下記のような感じです。

ワットパフォーマンス比較
CPUBlenderゲーム
Core Ultra 9 285K11.5
(+33.7%)
2.01
(+52.2%)
Core i9-14900K8.61.32
Core Ultra 7 265K11.9
(+26.6%)
2.41
(+47.9%)
Core i7-14700K9.41.63
Core Ultra 5 245K12.4
(+19.2%)
2.89
(+19.9%)
Core i5-14600K10.42.41

先代と比較すると大きく改善していることがわかります。特にCore Ultra 7 / 9のゲーム時の効率は1.5倍ほど向上しており、非常に大きな改善です。

しかし、消費電力と同じように、前世代のCore i7(K付き)以降は元の電力面がかなり悪かったので、これだけの向上率を経ても、最終的な数値は特別良い訳ではないです。K付きの割には良いんじゃない?という程度です。

「Ryzen 5 9600X~Ryzen 9 9950X」の競合モデルとの位置は近く、「Ryzen 9 9900X」がやや悪いかなくらいで、他は同等レベルかなという感じでした。

性能自体はゲーム性能では若干負けており、現在ではゲーム性能を重視する人の方が多そうな事を考慮すると、少し不利になってしまう気がします。

温度

CPUの温度を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」動作時と、ゲーミング時(Cyberpunk 2077)の二つの温度を見ていきます。基準温度は25℃で、動作から10分後の定常状態の温度となっています。

冷却システムは、CPUクーラーに「NH-D15」が使用されています。14cmファン2基でファン1つに付き1つのヒートシンクを備えたツインタワー空冷クーラーとなっており、空冷としては非常に高い冷却能力となっています。しかし、240mm以上の水冷やハイエンド空冷にはやや劣る冷却能力です。

レンダリング時の温度(Blender)
CPU名称温度
Core i5-13400F
42.6
Core i5-12400F
46.1
Ryzen 9 7900
46.4
Ryzen 7 5700X
47.2
Core i9-11900K
54.0
Ryzen 5 5600X
58.6
Ryzen 7 9700X
59.1
Ryzen 9 5950X
60.1
Core Ultra 5 245K
61.2
Ryzen 5 7600
61.6
Ryzen 7 7700
61.7
Ryzen 9 5900X
63.6
Core i5-12600K
65.2
Ryzen 5 9600X
65.4
Core i5-14600K
69.6
Ryzen 9 9900X
71.0
Core i5-13600K
71.5
Core Ultra 7 265K
72.1
Core i7-12700K
72.4
Ryzen 7 5800X3D
73.0
Ryzen 7 7800X3D
75.8
Ryzen 9 7950X3D
77.0
Core i7-14700K
79.8
Ryzen 9 9950X
81.6
Core i7-13700K
86.0
Core i9-14900K
87.5
Core Ultra 9 285K
88.2
Ryzen 7 7700X
89.3
Ryzen 5 7600X
89.7
Core i9-12900K
90.4
Ryzen 9 7900X
91.6
Ryzen 9 7950X
92.0
Core i9-13900K
95.4
参考:TechPowerUp
ゲーム時の温度(Cyberpunk 2077)
CPU名称温度
Core i5-12400F
41.0
Core i5-13400F
42.1
Core Ultra 5 245K
44.1
Ryzen 7 5700X
47.2
Ryzen 9 7900
48.1
Core Ultra 7 265K
49.0
Core i5-12600K
50.5
Core i7-12700K
52.2
Ryzen 9 7950X3D
52.2
Ryzen 5 7600
53.9
Ryzen 5 5600X
55.2
Core i9-11900K
55.6
Core i5-14600K
56.3
Core Ultra 9 285K
58.5
Ryzen 9 5900X
59.7
Core i9-12900K
60.1
Ryzen 9 7950X
60.6
Ryzen 7 7700
61.3
Ryzen 7 9700X
61.3
Core i5-13600K
61.6
Ryzen 9 5950X
62.7
Ryzen 7 7700X
63.6
Ryzen 5 9600X
65.0
Core i7-14700K
65.0
Ryzen 9 7900X
65.2
Ryzen 7 5800X3D
65.3
Ryzen 9 9900X
65.7
Core i7-13700K
65.8
Ryzen 5 7600X
68.2
Ryzen 7 7800X3D
69.2
Ryzen 9 9950X
71.1
Core i9-14900K
73.4
Core i9-13900K
77.6
参考:TechPowerUp

ゲーム時の温度が劇的に改善(-12℃~15℃)

CPU温度は、特にゲーム時の温度が劇的に改善しています。「Core Ultra 9 285K」と「Core Ultra 7 265K」では先代よりも約15℃も温度が下がっています。

そこに関しては「Ryzen 5 9600X~Ryzen 9 9950X」よりも低いので、やや優位性があります。ただし、元々ゲーム時は温度がやや低めで問題になりにくいので、選択の決め手の要素となるかはちょっと微妙な気がします。

また、少し気になるのがレンダリング時の温度です。「Core Ultra 9 285K」は先代とほぼ変わらない温度となっており、良くない数値です。しかし、「Core Ultra 7 265K」からは改善が見られ、「Core Ultra 5 245K」では更に低い温度になります。

この状況を見て、理由をなんとなく推測してみると、Eコアが減るほど温度面が改善しているので、もしかしたらEコアが高負荷時に高い温度になりやすく、冷却が間に合わなくなっているのかなと思いました。

ゲーム時にはEコアが恐らくほとんど使われないと思いますが、ゲーム時にはどのモデルでも大きな温度改善が見られたこととも辻褄が合います。

その他

内蔵GPUの性能

「Core Ultra 200S」では内蔵GPUも変更となったので、ゲームパフォーマンスだけ軽く見てみます。

10ゲームでの幾何平均fps(1080p/最低設定)
CPU名称スコア
GTX 1060
51.5
RX 6400
50.6
GTX 1630
31.0
Core Ultra 9 285K
26.3
Core Ultra 7 265K
25.9
Core Ultra 5 245K
25.2
Ryzen 5 8500G
22.9
Ryzen 7 5700G
18.9
Ryzen 9 9950X
10.9
Ryzen 5 7600
10.7
Core i9-14900K
8.8
参考:TechPowerUp

内蔵GPUは前世代から3倍近く高性能になり、軽いゲームが快適に

内蔵GPUの性能は、前世代のUHD 770からなんと3倍近い性能となりました。GTX 1630の少し下くらいので性能で、軽いゲームなら十分快適にプレイすることができるレベルになりました。

今までのCoreは、重いグラフィック処理をしないにしても内蔵GPUは性能が低いので、グラボ無しの妥協はしにくかったですが、今回からは割と選択肢に入るかもしれません。

Ryzen APU(8600G↑)の方が大きく高性能ではあるので、グラボ無しで決め込むならそちらの方が良いですが、Ryzen APUはキャッシュ量や余剰PCIeレーン数の関係などからグラボありの場合には少し弱いという側面がある中、今回のCore Ultra 200Sはそのような心配が無いので、後からグラボを載せることを視野に入れる場合には魅力的です。


まとめ

ざっくりと各性能を見てきました。最後に評価をまとめています。

Core Ulra 9 285K

良い点
  • Core i9-14900Kから劇的に改善した電力面
  • 24コアによる圧倒的なマルチスレッド性能
  • NPU搭載(~13TOPS)
  • 優れたマルチスレッド電力効率
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 前世代から大きく向上した内蔵GPU

気になる点
  • 非常に高価(589ドル)
  • ゲーム性能が競合モデルにわずかに劣る(Ryzen X3Dには大きく劣る)
  • ゲーム時の電力効率は前世代のX3Dに大きく劣る
  • 高負荷なマルチスレッド処理時には発熱が非常に多い
  • AVX-512に非対応
  • 【発売時】対応チップセットがZ890しかないので、マザーボード費用が高価

Core Ulra 7 265K

良い点
  • Core i7-14700Kから劇的に改善した電力面
  • 20コアによる非常に優れたマルチスレッド性能
  • NPU搭載(~13TOPS)
  • 優れたマルチスレッド電力効率
  • 優れたシングルスレッド性能
  • ゲーム時の温度が低い
  • 最大負荷でも消費電力は155W程度で温度が低めなので、ハイエンド水冷じゃなくてもOK
  • 前世代から大きく向上した内蔵GPU

気になる点
  • 高価(K:394ドル、F:379ドル)
  • ゲーム性能が競合モデルに少し劣る(Ryzen X3Dに大きく劣る)
  • ゲーム時の電力効率は7000 X3Dに劣る
  • AVX-512に非対応
  • 【発売時】対応チップセットがZ890しかないので、マザーボード費用が高価

Core Ulra 5 245K

良い点
  • Core i5-14600Kからやや改善した電力面
  • 低温で空冷運用も十分可能
  • ゲーム時の温度は前世代のK無し並みの低温
  • 14コアによる優れたマルチスレッド性能
  • NPU搭載(~13TOPS)
  • 優れたマルチスレッド電力効率
  • 優れたゲーム時の電力効率
  • 優れたシングルスレッド性能
  • Ryzen 9 9700Xより少し安価でマルチスレッド性能は大きく上回る
  • 前世代から大きく向上した内蔵GPU

気になる点
  • やや高価(K:309ドル、F:294ドル)
  • ゲーム性能が競合モデルよりも低い(Ryzen 7000無印と争うレベル)
  • AVX-512に非対応
  • 【発売時】対応チップセットがZ890しかないので、マザーボード費用が高価

Core Ullra 200(K付き)の総評:NPU搭載をどう評価するかが焦点?

K付きの「Core Ultra 200S」シリーズを見た所感です。

まず価格ですが、「Core Ultra 200S」の発売に伴い「Ryzen 9000」がプロモーションで少し値下げされたので、発表時よりも優位性が若干薄れています。

そのため、内蔵GPU向上が意味を成さないゲーミングPCにおいては、NPU搭載が唯一に近い明確な優位性となると思うので、そこが焦点となりそうな気がします。

NPUは他の要素を見てから触れるとして、まずCPUの処理性能を見てみると、

マルチスレッド性能は前世代や競合の「Ryzen 9000」を少し上回っています。Pコアが1コア=1スレッドになったにも関わらずこれは凄いことで、Eコアのコア性能が大きく向上したと考えられます。とはいえ、結局のところ前世代と性能は大差ないということではあり、印象的な向上を示せませんでした。

次に注目のゲーム性能ですが、まさかの前世代から少し低下となり、競合のRyzen 9000(非X3D)にも少し劣る結果となっていました。差は小さくて同等レベルと言える範囲ではあるものの、特に注目度の高いゲーム性能が低下するのは驚きでした。

また、当然ゲームではRyzen 7000X3Dには大きく負けており、ゲーム性能を重視する人が凄く多い現在では致命的に感じるところです。電力効率も依然としてRyzen X3Dが非常に良いです。これからRyzen 7 9800X3Dも登場する予定ですし、Ryzen X3Dのゲームでの王座はまだしばらく続きそうです。

純性能では微妙な評価が続きましたが、電力面はそれと比べると大分良いです。前世代からは電力面は格段に改善しました。

ただ、改善した電力も最終的な数値は対抗のRyzen 9000と大差はない印象なので、大きな優位性にはなっていなかったりはします。とはいえ、前世代で特に気になるのが電力面でしたので、そこが改善されたのは大きいと思います。特にIntelを前提に考える層にとっては朗報かなと思います。

CPU面では以上のような感じで、正直総合的にはRyzenに優位性があるかと言われると微妙です。

内蔵GPU性能は前世代から飛躍的に向上はしたものの、まだ重いゲームには使えない性能ですし、そこを考慮するのは安価なK無しモデルだと思うので、ここではとりあえず触れないでおきます。

そこで問題となるのがNPUです。Ryzen 9000では搭載しないので、ここは明確な優位性です

ピーク性能は13TOPSなので高い性能ではないものの、Intelはそれでも多くのアプリケーションで活用できるとしていますし、実際にスマホではもっと低い性能のNPUでAI処理に対応していることも結構あるので、これは事実だと思います。

最近のグラボは高いAI処理性能を備えているので、NPUが無くてもAI処理が出来ない訳ではないですが、GPUには余計な負荷を掛けたくない事情もあるかと思うので、やはりあるに越したことはないです。

CPU面ではRyzenに対して明確な優位性こそ無いものの、X3Dモデルを除けば、大きく負けている部分もないので、この差はポイントだと思います。

ゲーム性能の低下は少しでも痛いので、価格が少し安いだけでは魅力を感じにくかったですが、それに加えてNPUがあるとなると割と良い勝負になっているのではないかと思います。

また、CPUの本体価格はCore Ultra 2000Sの方が少し安いですし、これから安価なマザーボードや「K無しモデル」が登場してくるはずですから、その際には搭載PCの価格は少し有利になると推測できます。

以上が総評ですが、今回見ていった各CPUそれぞれについて、下記から軽く言及していこうかなと思います。

Core Ultra 9 285K:Ryzen 9 9950Xに似た性能だけど、ゲーム性能が若干劣るのが気になる

「Core Ultra 9 285K」のCPU面は「Ryzen 9 9950X」に似ており、比較するとマルチスレッド性能が若干高く、ゲーム性能が若干低いという感じの印象です。

ゲーム時の電力面は9950Xを少し上回るものの、高負荷なマルチスレッド性能時にはCore i9-14900Kに近い高温になっており、こちらも差し引きでトントンかなという感じ。

ですが、差し引きで見ると丁度プラマイゼロに見えますが、ゲームをメイン用途とする人が多い現状、ゲーム性能で負けるのはハイエンドCPUとしては致命的に感じます。10万円クラスとなると「Ryzen 9 7950X3D」も選択肢に入りますし、そこと比較してしまうと電力面でも負けてしまいます。

NPUの搭載は明確な優位性ではありますが、この価格帯のハイエンドCPUを導入する人は、超高性能なグラボを搭載するのが基本です。GPUでAI処理にも十分対応する余力がある人が多いと思うので、低性能なNPUで差が埋められるかというと、正直微妙に感じます。

そのため、NPUを凄く魅力的に感じる人ならもちろん選択肢には入りますが、ゲームを重視するのであれば「Ryzen 9 7950X3D」の方がおすすめかなと思います。

Core Ultra 7 265K:競合モデルにゲーム性能で劣るのは気になるけど、ゲーム時の温度が低くてNPUも搭載

「Core Ultra 7 265K」はゲーム時の温度の低さとNPU搭載がポイントだと思います。

ゲーム性能で「Ryzen 9 9900X」に少し劣り、X3Dにも大きく劣るのは凄く残念ですが、その他の面は価格の割に全体的に優秀です。

最大電力が250Wに設定されているK付きモデルながら、実際の消費電力は高負荷なマルチスレッド処理時でも160W未満となっており、前世代のCore i7-14700Kとは打って変わって電力面が優秀なCPUです。水冷必須レベルではなくなっています。

特にゲーム時の温度は劇的に改善しており、今回確認したテストでは平均で50℃未満を記録しています。K付きの7モデルという立ち位置ながら、従来のK無しよりはちょっと高い程度の温度で、こちらはRyzen 7000X3Dよりも優秀だったりします。

K付きとしてはゲーム時の効率も優れている部類で、価格の近い競合モデル「Ryzen 9 9900X」よりも優秀です。

ゲーム効率ではX3Dモデルにはやはり負けてしまうものの、マルチスレッド性能では勝りますし、需要の高まりからX3Dモデルは高価になりそうで、最終的にはこの「Core Ultra 7 265K」の方が少し安くなりそうな気がするので、コスパという面では悪くはなくなる可能性があります。

更に、こちらにはNPUがあります。ゲーミングPC相手だと大きな優位性にこそならない可能性が高いものの、他の面でも良い部分がありつつNPUが付属する形なので、まだ温度面が少し気になるCore Ultra 9 285Kよりは強みになりそうな感じがします。

結局のところ、「競合モデルよりもゲーム性能が少し低い」という部分を妥協できるかという話にはなりますが、選択の余地は十分感じるCPUだと思います。

Core Ultra 5 245K:ゲーム性能が低くて残念。低温で扱い易いのはグッド

「Core Ultra 5 245K」は、今回触れた3つの中では個人的には一番微妙に感じるCPUです。

恐らく、最大クロックが「Core Ultra 7 265K」の5.5GHzから5.2GHzへと大きめに下げられてしまっていることが原因で、ゲーム性能が一段低くなっているのがやはり厳しいです。

ゲーム性能は先代の「Core i5-14600K」にもやや劣るレベルとなっており、Ryzen 7000(無印)と競るレベルです。

電力面は優秀で、マルチスレッド・ゲーム時の両方とも効率は優れているのは良いですが、そもそも先代の14600Kがそこまで悪くなかったので、「Core Ultra 7 265K」ほど良くなったという感じが無いです。

Ryzen 7(8コア)のマルチスレッド性能コスパがあまり良くないので、そこでは優位性がありますが、85ドル差で「Core Ultra 7 265K」が選べることを考えると、「Core Ultra 5 245K」自体のマルチスレッド性能コスパが良いかと言われるとそうでもなく、あえてこちらを選ぶ必要を感じないです。

一応、温度面は非常に優秀で今回のテストでのゲーム時温度は約44.1℃と非常に低かったのは非常に良かったです。前世代のK無し並みとなっており、その低温さでK付きながら空冷で十分対応できるという扱い易さは魅力です。

でも、温度面を重視したいなら、後に登場するであろうK無しモデルの方が安価な分で有利だと思われますから、K付きでそのような路線にしてしまうというのはどういう意図なんだろうと思います。

K付きなら、ぶっちゃけここまで低温でなくても良いので、ゲーム性能を高くして欲しかったCPUです。

一応、NPU搭載の優位性はやはりありますが、他の2つよりもゲーム性能が低めなのがやはり気になるところです。それに、K無しでもNPUが搭載されるのであれば、安くNPU搭載というメリットも薄れてしまいますから、やはり今買うのは躊躇してしまいそうなCPUだと思います。

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