「Ryzen 4000 G」シリーズが発表【Zen2 採用のデスクトップ版APU】

先日、AMDが「Zen 2」アーキテクチャ搭載のデスクトップ版CPU(APU)のRyzen 4000Gシリーズを発表しました。初発では消費者へのCPU単体販売(BOX)はないらしく、OEM向けのみでの提供となるようです。要するに、完成品のPCへの搭載されている形です。

搭載PC発売に先駆けて、その内容について軽く触れていきたいと思います。発表の際に既存のCPUとの性能差が示されていましたので、それを基に性能の推測値を出し、それ見ながら比較していきます。

注意
掲載の情報は記事投稿時点(2020年7月27日)での情報です。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。


簡易比較表

とりあえず主要スペックの簡易仕様表を置いておきます。発表されたAPUの中には、下位モデルのAthlonシリーズや主に企業向けのRyzen PROシリーズもありましたが、本記事では消費者向けの主流のRyzen Gシリーズのみ見ていきます。

Ryzen 4000G APU
モデルコア/スレッドクロック
定格 / 最大
キャッシュGPU CUGPUクロックTDP
Ryzen 7 4700G8 / 163.6 / 4.4GHz12MB82100 MHz65W
Ryzen 7 4700GE8 / 163.1 / 4.3GHz12MB82000 MHz35W
Ryzen 5 4600G6 / 123.7 / 4.2GHz11MB71900 MHz65W
Ryzen 5 4600GE6 / 123.3 / 4.2GHz11MB71900 MHz35W
Ryzen 3 4300G4 / 83.8 / 4.0GHz6MB61700 MHz65W
Ryzen 3 4300GE4 / 83.5 / 4.0GHz6MB61700 MHz35W

デスクトップ版のRyzen 4000Gシリーズは、既に登場しているモバイル版のRyzen 4000シリーズと基本設計が同じらしく、その通りコア仕様や内蔵GPUの仕様が近いです。

前モデルの第2世代(Ryzen 3000G)ではRyzen 5が最高モデルでしたが、今回のモデルからRyzen 7がラインナップに加わりました。Ryzen 5はコア数が4から6に増え、8コアのRyzen 7も追加されるという形になりました。Ryzen 3はコア数は同じですが、SMTでスレッド数が増えてマルチスレッド性能が向上しています。

更に、7nmプロセスのZen2アーキテクチャによりコアあたりの性能も大幅にアップしていますから性能の向上率は驚異的となります。

仕様面の特徴

まずは、前述の表にはない、性能に直接関わらないかもしれない仕様面での特徴も併せて、ざっとまとめています。

Ryzen 4000Gの特徴
  • 7nmプロセス・Zen2アーキテクチャ採用のAPU
  • GPUのCU数は前世代より減ったが、高速なメインメモリーとクロック上昇でパフォーマンスはやや向上。
  • Ryzen 7がラインナップに追加
  • PCIe 3.0対応
  • チップセットはAMD 500シリーズ


7nmプロセス・Zen2アーキテクチャ採用のAPU

Ryzen 4000Gシリーズは、7nmプロセスのZen2アーキテクチャ採用です。CPU市場に大きな変化をもたらしたZen2が、デスクトップ版のAPUにもついに登場しました。

補足
  • プロセスルール
    簡単にいうと、CPUの配線の幅のこと。小さい方がスペースに余裕が出来たり複雑な配線が可能になったりなど、基本的に良い事尽くめ。
  • APU
    CPUとGPUが統合したAMDのプロセッサ。内蔵にしては高めの性能のGPUを持っているのが特徴。消費者的には少し性能の良い内蔵GPUを持つCPUという認識でOK。性質上、従来のCPUよりもメインメモリー性能がより大きめにパフォーマンスに影響する。

基本設計は、既に登場しているモバイル版のRyzen 4000シリーズと同様となっているようです。モバイル版のRyzen 4000シリーズでは性能向上はもちろん、省電力性もかなり増していたので、小型PC等での活躍も期待できます。

ちなみに補足ですが、RyzenのAPUモデルは番号が一つ後れている形になっており、Ryzen 4000という表記ですが第3世代Ryzenです(Ryzen 3000Gシリーズは第2世代Ryzen)。一応注意しておきましょう。


Ryzen 7がラインナップに追加

前世代のRyzen 3000GシリーズではRyzen 5が最高モデルでしたが、Ryzen 4000GシリーズではRyzen 7がラインナップに追加されました。おかげでコア数が前世代の最高4コアから最高8コアに一気に上昇し、マルチスレッド性能重視でも選びやすくなりました。


PCI-Express 3.0対応

既存のデスクトップ版の第3世代RyzenではPCIe 4.0に対応していましたが、Ryzen 4000GシリーズではPCIe 3.0対応となっており、どうやら4.0には対応していないっぽいです。

現状では3.0でも困ることは恐らくほぼなく、4.0が使えても恩恵はほとんどないはずなので実用性的にはさほど影響は無いかと思いますが、一応注意しておきましょう。


チップセットはAMD 500シリーズ

対応チップセットはAMD 500シリーズとなっているようです。記事執筆時点だと「X570」「B550」の二つです。既存のデスクトップ版の第3世代Ryzenでは400シリーズも使えたので、選択肢はやや狭くなっています。

とはいえ、とりあえずはOEM向けのみの提供となり、完成品PCを購入する形だけになるっぽいので深く気にする必要はないかもしれません。

各性能について

発表の際には具体的なベンチマークスコア自体は公表されませんでしたが、グラフによる既存のCPUとの比較値が示されていました。それを基に推定値なども算出して並べ、ざっと見ていきたいと思います。

補足

発表されたスライドではCore i3-9100が基準としてされていましたが、一緒に並べられていたCore i7-9700の方が、サンプル数的にベンチマークスコアの正確性がより高そうだったので、そちらで算出し直しています。ご了承ください。


シングルスレッド性能

Cinebench R20測定によるシングルスレッド性能の推定値を、他の主要CPUと併せて載せています。

Cinebench R20 Single-Thread
CPUスコア
Ryzen 7 3700X
501
Core i7-10700
499
Ryzen 3 3300X
495
Ryzen 7 4700G
488(推定)
Ryzen 5 3600
472
Ryzen 5 4600G
469(推定)
Core i7-9700
465
Core i7-10400
450
Ryzen 3 4300G
448(推定)
Core i3-10100
443
Ryzen 5 3400G
412

同価格帯の主要CPUとほぼ同性能に

シングルスレッド性能は、Ryzen 5で見ると前世代よりは14%約向上し、他の同価格の主要CPUとほぼ同性能になりました。他のZen2のCPUと同じように、Intelと比較しても弱点ではないくらいに向上しました。

しかし、Ryzen 4000GシリーズはAPUなので内蔵GPUがあり、しかも内蔵にしては高性能です。価格的にも大幅に高くなる訳ではないはずなので、CPU性能が同じならAPUの方がコスパは良いです。別途グラボがあれば活用できる場面はさほど多くないかもしれませんが、あって困るものでもないですし、サブディスプレイ等への出力を内蔵GPUに任せたりできれば、グラボの負担を多少軽減することも期待できます。


マルチスレッド性能

Cinebench R20測定によるマルチスレッド性能の推定値を、他の主要CPUと併せて載せています。

Cinebench R20 Multi-Thread
CPUスコア
Ryzen 7 3700X
4834
Core i7-10700
4834
Ryzen 7 4700G
4778(推定)
Ryzen 5 4600G
3691(推定)
Ryzen 5 3600
3689
Core i7-9700
3644
Core i7-10400
3197
Ryzen 3 3300X
2588
Ryzen 3 4300G
2397(推定)
Core i3-10100
2284
Ryzen 5 3400G
1969

同価格帯の主要CPUとほぼ同性能に

マルチスレッド性能は、Ryzen 5で見ると前世代から約54%という驚異的な向上率となっています。マルチスレッド性能もシングルスレッド性能と同じく、他の同価格帯の主要CPUとほぼ同性能になりました。

こちらもシングルスレッドと同じように、同性能であれば内蔵にしては高性能なGPUを搭載している優位性をそのまま得られるので、その分コスパ的には良くなるはずです。


内蔵グラフィック性能

内蔵グラフィック性能については、6種類のゲームの低設定1080pでのパフォーマンスが示されていました。が、内蔵GPUについては基本設計が同じモバイル版のRyzen 4000シリーズのGPU性能を参考にした方が正確かと思うので、そちらで推測値を算出して比較したいと思います。割と本来に近い数値になっていると思います。

基本設計が同じモバイル版の例を見ると、Ryzen 4000 APUシリーズの内蔵GPUは同モデルでのCU数は減らされていますが(Ryzen 5だと 11→8)、クロックが上昇しているのと対応メモリーが高速化しているため最終的な処理性能は少し向上しているはずです。

3DMark Firestrike 1920×1080 Graphics
GPUスコア搭載CPU(例)
Radeon Vega 8(Ryzen 4000G)
4000~4200?(推測)
Ryzen 7 4700G
Radeon Vega 7(Ryzen 4000G)
3663(推測)
Ryzen 5 4600G
Radeon Vega 11(Ryzen 2,3000G)
3494
Ryzen 5 3400G
Radeon Vega 6(Ryzen 4000G)
3234(推測)
Ryzen 3 4300G
Radeon Vega 8(Ryzen 2,3000G)
2901
Ryzen 3 3200G
Intel UHD 630(デスクトップ)
1460
Core i7-10700等

性能は微増くらいの向上か

クロックやメモリー速度の向上はあるものの、やはりCU数が減らされてしまったせいで、伸び率としては微増程度に留まっているはずです。推測値ですが、Ryzen 5で見ると約4.8%程度の向上です。

依然として内蔵GPUにしては高い性能ではあるものの、単体GPUを搭載したグラボと比較すると、ミドルレンジGPUの半分以下の性能です。要求スペックの重いゲームは未だに厳しいです。軽いゲームでの快適度がやや向上した程度ですね。

ただし、7nmプロセス採用とCU数が減ったことにより、消費電力は減っていると推測でき、同時に発熱も多少減っている事が期待できます。ライトユーザー向けの内蔵GPUの小型PCに搭載する際などには役立ちそうです。

まとめ

グラボを搭載しないPCではかなり強そう

前世代のRyzen 3000Gシリーズでは、やはりCPUとしての処理性能にやや頼りなさがあり、微妙な立ち位置でした。それが今回のRyzen 4000GシリーズではCPUとしての性能も既存の主要CPUと比べて遜色無い性能を発揮しています。そして、内蔵にしては高い性能のGPUまで備えている点は変わらないので、グラボを搭載しないPCではIntel製CPUを駆逐する事もありえそうなレベルのかなり強い選択肢となりそうです。

内蔵GPUの性能は微増程度で、出来ることの幅が広がるほどの向上ではありませんでしたが、重いゲームやクリエイティブな用途に使わないのであれば十分な性能です。ゲームも軽いものならそれなりに快適にプレイすることが出来ますし、クリエイティブ用途に関しても全く使えないって程でも無いです。ライトユーザーであれば困ることはほとんど無いと思います。

高性能なグラボを搭載した場合のボトルネック問題などは出てみないとわからないので何とも言えないですが、使い勝手の非常の良い素晴らしいCPUだと思います。


それでは、記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。

2 COMMENTS

通りすがりのゲーマー

OCで4750Gのグラフィック性能がGTX950程度になったと言う話も出てきたし、その内よっぽど重いゲームをする様なユーザーでもないとグラボを積む必要が無い時代が来そうですね…。

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とねりん:管理人

高FPSや高画質への対応という点ではまだしばらくグラボの優位性は揺るがないと思いますが、「重いゲームやるならグラボ必須」で無くなる日は意外と早いかもしれませんね…。

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