RDNA 2アーキテキクチャの追加モデル、RX 6×50シリーズの「Radeon RX 6650 XT」「Radeon RX 6750 XT」「Radeon RX 6950 XT」の3モデルざっくり性能比較・評価です。
ちなみに、今回評価する3モデルの発売日は5月13日となっており、レビューは一足早く解禁されたものの記事執筆時点ではまだ発売されていませんのでご注意ください。
本記事の情報は記事執筆時点(2022年5月11日)のものです。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
仕様
まずは主要な仕様を表にまとめて載せています。
簡易比較表
※価格は2022年5月11日時点での北米での希望小売価格です。
GPU | コア数 | メモリタイプ メモリ容量 | メモリ転送速度 メモリ帯域幅 | レイトレ用 ユニット数 | ダイ サイズ | 消費電力 (TDP等) | 北米希望 小売価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RTX 3090 Ti | 10752 | GDDR6X 24GB | 21.0Gbps 1008GB/s | 84基 | 628.4㎟ | 450W | 1,999ドル |
RTX 3090 | 10496 | GDDR6X 24GB | 19.5Gbps 936GB/s | 82基 | 628.4㎟ | 350W | 1,499ドル |
RX 6950 XT | 5120 | GDDR6 16GB | 18Gbps 576GB/s | 80基 | 約519㎟ | 335W | 1,099ドル |
RX 6900 XT | 5120 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 80基 | 約519㎟ | 300W | 999ドル |
RTX 3080 Ti | 10240 | GDDR6X 12GB | 19Gbps 912GB/s | 80基 | 628.4㎟ | 350W | 1,199ドル |
RTX 3080 | 8704 | GDDR6X 10GB | 19Gbps 760GB/s | 68基 | 628.4㎟ | 320W | 699ドル |
RX 6800 XT | 4608 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 72基 | 519㎟ | 300W | 649ドル |
RTX 3070 Ti | 6144 | GDDR6X 8GB | 19Gbps 608GB/s | 48基 | 392㎟ | 290W | 599ドル |
RX 6800 | 3840 | GDDR6 16GB | 16Gbps 512GB/s | 60基 | 519㎟ | 250W | 579ドル |
RTX 3070 | 5888 | GDDR6 8GB | 14Gbps 448GB/s | 46基 | 392㎟ | 220W | 499ドル |
RX 6750 XT | 2560 | GDDR6 12GB | 18Gbps 432GB/s | 40基 | 336㎟ | 250W | 549ドル |
RX 6700 XT | 2560 | GDDR6 12GB | 16Gbps 384GB/s | 40基 | 336㎟ | 230W | 479ドル |
RTX 3060 Ti | 4864 | GDDR6 8GB | 14Gbps 448GB/s | 38基 | 392㎟ | 200W | 399ドル |
RX 6650 XT | 2048 | GDDR6 8GB | 17.5Gbps 280.3GB/s | 32基 | 237㎟ | 180W | 399ドル |
RX 6600 XT | 2048 | GDDR6 8GB | 16Gbps 256GB/s | 32基 | 237㎟ | 160W | 379ドル |
RX 6600 | 1792 | GDDR6 8GB | 14Gbps 224GB/s | 28基 | 237㎟ | 132W | 329ドル |
RTX 3060 | 3584 | GDDR6 12GB | 15Gbps 360GB/s | 28基 | 276㎟ | 170W | 329ドル |
RX 6500 XT | 1024 | GDDR6 4GB | 18Gbps 144GB/s | 16基 | 107㎟ | 107W | 199ドル |
RX 6400 | 768 | GDDR6 4GB | 16Gbps 128GB/s | 12基 | 107㎟ | 53W | 149ドル |
RX 6×50シリーズはコア構成は元モデルと同じです。たとえば、「RX 6950 XT」のコア構成は「RX 6900 XT」と全く同じとなっています。その代わりにメモリの速度が16Gbpsから17.5~18bpsへと向上し、クロックも少し上昇しています。それに伴い消費電力も上昇しています。
価格も上昇しており、6950 XTは約10%、6750 XTは約14.6%、6650 XTは約5.3%上昇しています。ややバラつきがあるのが気になるところで、元々お得という訳でなかった6700 XTの強化モデルが一番大きな価格上昇というのが謎です。また、その6750 XTの549ドルというのは6800の579ドルと30ドルしか差がないので、正直この時点で間違いなく6800の方がお得だと思います。
要点と元モデルとの違いをそれぞれ下記にまとめています。
- コア構成は元モデルと同じ(6950 XTは6900 XTと同じ)
- 元モデルよりメモリ速度が16Gbpsから17.5Gbps~18Gbpsに向上し、帯域幅も増加
- クロックが少し向上
- 消費電力が少し上昇
- 価格が上昇
GPU | ゲーム クロック | ブースト クロック | メモリ 速度 | メモリ 帯域幅 | TDP | 希望小売 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|
RX 6950 XT | 2100 MHz | 2310 MHz | 18 Gbps | 576 GB/s | 335W | 1,099ドル |
RX 6900 XT | 2015 MHz | 2250 MHz | 16 Gbps | 512 GB/s | 300W | 999ドル |
RX 6750 XT | 2495 MHz | 2600 MHz | 18 Gbps | 432 GB/s | 250W | 549ドル |
RX 6700 XT | 2424 MHz | 2581 MHz | 16 Gbps | 384 GB/s | 230W | 479ドル |
RX 6650 XT | 2410 MHz | 2635 MHz | 17.5 Gbps | 280.3 GB/s | 180W | 399ドル |
RX 6600 XT | 2359 MHz | 2589 MHz | 16 Gbps | 256 GB/s | 160W | 379ドル |
メモリ帯域幅が改善され、RTX 30シリーズに対しての弱点が補強されるが、消費電力も増加
RX 6×50の最大のメリットはメモリ帯域幅の改善です。3モデルとも元モデルより12.5%拡張されています。RX 6000シリーズはRTX 30シリーズに対してメモリ帯域幅で負けているというのが弱点の一つでしたが、そこが補強されています。クロックもわずかに向上しています。
この変化により全体的なパフォーマンスの向上はもちろん、4Kやレイトレーシング等の高負荷処理のボトルネック改善にも影響が期待できます。
ただし、当然ながら消費電力はやや増加してしまっており、逆に元モデルの強みだった電力効率面での影響が懸念されます。
上記の変更が実際のパフォーマンスにどう表れるのか、具体的なパフォーマンス面について下記から見ていきたいと思います。
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームをする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを動作させた際の平均FPS数を見ていきます。今回は25種類のゲームでのデータを基に見ていきます。設定は基本的に最高品質です。使用されたCPUは「Ryzen 7 5800X」、ビデオカードそれぞれ「GIGABYTE Radeon RX 6950 XT Gaming OC」、「MSI Radeon RX 6750 XT Gaming X Trio」、「MSI Radeon RX 6650 XT Gaming X」が使用されています。
また、OSはWindows 10が使用されているため、Windows 11で報告例のあるゲーミングパフォーマンスが低下する問題は発生していません。その他のスペックなどの詳細は、お手数ですが記事上部の参考リンクを参照お願いします。
1080p(1920×1080)
FHD(1920×1080)です。最低限の解像度という感じですが、2022年現在では最も主流な解像度です。ハイエンドGPUを使用していても、特にFPSやTPSでは出来るだけ高いFPS数を維持するためにこの設定にするのが主流だと思います。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RX 6950 XT | 184.8 |
RTX 3090 Ti | 177.9 |
RX 6900 XT | 173.2 |
RTX 3090 | 171.9 |
RTX 3080 Ti | 170.3 |
RX 6800 XT | 165.4 |
RTX 3080 10GB | 159.3 |
RX 6800 | 148.4 |
RTX 3070 Ti | 140.8 |
RX 6750 XT | 137.8 |
RTX 3070 | 135.2 |
RX 6700 XT | 128.0 |
RTX 3060 Ti | 123.0 |
RX 6650 XT | 112.8 |
RX 6600 XT | 107.4 |
RX 5700 XT | 102.7 |
RTX 3060 | 96.5 |
RTX 2070 | 94.5 |
RX 6600 | 93.2 |
RTX 2060 6GB | 81.4 |
RTX 3050 | 70.5 |
GTX 1660 Super | 67.5 |
RX 6500 XT | 49.7 |
RX 6400 | 38.3 |
GTX 1650 | 38.2 |
元モデルから約5%~8%程度向上
1080pでは元モデルから約5%~8%のfps向上が見られました。6950 XTは6.7%、6750 XTは7.7%、6650 XTは5%の向上です。
最大8%の上昇率ということで、価格上昇10%を超えている上位2モデルはコスパ的には正直微妙だと思います。4Kなどでは結果が多少変わるかもしれませんが、やはり現状は軸となるのは1080pだと思うので、そこが微妙だと印象は良くないです。ただし、6650 XTに関してはは性能向上率が価格上昇率とほぼ同じで、コスパは元の6600 XTと同等と考えられます。RX 6600 XTは特にコスパが優秀なGPUの一つなので、RX 6650 XTも強力なコスパのミドルレンジGPUになると思います。
また、コスパ的には 6900 XTより悪化してしまったハイエンドの6950 XTですが、1080pではRTX 3090 Tiを抜き去りトップの性能です。RX 6900 XTと比べると効率面では劣るものの、RTX 3090および3090Tiよりは安くて高性能なので(レイトレ除く)、そこは魅力かなと思います。
1440p(2560×1440)
WQHD(2560×1440)です。4Kは重すぎるけど、1080pよりはキレイな映像で楽しみたいという場合や、1080pでは少し性能を持て余してしまう場合に利用する解像度です。現在の主流解像度は1080pですが、GPU性能が全体的に大幅に向上してきているため、徐々にこの1440pが主流解像度に切り替わっていく気がします。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti | 154.1 |
RX 6950 XT | 153.4 |
RTX 3090 | 143.0 |
RTX 3080 Ti | 141.6 |
RX 6900 XT | 141.3 |
RX 6800 XT | 133.7 |
RTX 3080 10GB | 129.4 |
RX 6800 | 119.1 |
RTX 3070 Ti | 112.2 |
RX 6750 XT | 107.3 |
RTX 3070 | 106.5 |
RX 6700 XT | 98.8 |
RTX 3060 Ti | 93.9 |
RX 6650 XT | 82.1 |
RX 6600 XT | 77.7 |
RX 5700 XT | 75.6 |
RTX 3060 | 71.6 |
RTX 2070 | 70.6 |
RX 6600 | 65.8 |
RTX 2060 6GB | 59.5 |
RTX 3050 | 51.8 |
GTX 1660 Super | 49.0 |
RX 6500 XT | 33.0 |
GTX 1650 | 26.2 |
RX 6400 | 26.0 |
上位2モデルは約8.6%の向上
1440pでは元モデルより6950 XTと6750 XTが約8.6%高いfpsを記録しており、1080pよりもわずかに向上率が高くなっています。やはりメモリ帯域幅の拡張が少し活きているかもしれません。しかし、やはり元モデルよりも価格が1割以上上がっていることを考慮するとコスパ的にはやや悪化しており、消費電力も増えているのが気になります。若干の性能向上のために価格・消費電力の上昇とコスパの悪化を受け入れるかは微妙なところだと思います。
また、6650 XTは約5.7%の向上とわずかな向上ですがこちらは価格上昇も5%程度なので、1080pと同じくコスパは元モデルとほぼ同じです。優れたコスパのミドルレンジGPUになると思います。
4K(3840×2160)
「超高解像度の代名詞」ともいえる解像度の4K(3840×2160)です。非常に繊細で綺麗な映像になりますが、その負荷の大きさから高いFPSを出す事が難しいためTPSやFPSなどの対人競技ゲームで利用されることはまずないです。処理性能の要求が高いだけでなく、高リフレッシュレートの4Kモニターが非常に高価ということもあり、2022年現在では競技性の高いゲームではあまり利用されません。フレームレートよりもグラフィックのキレイさや臨場感が重要なゲームを中心に需要のある解像度です。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti | 104.2 |
RX 6950 XT | 95.6 |
RTX 3090 | 93.4 |
RTX 3080 Ti | 91.9 |
RX 6900 XT | 87.6 |
RTX 3080 10GB | 82.8 |
RX 6800 XT | 81.9 |
RX 6800 | 71.2 |
RTX 3070 Ti | 68.5 |
RTX 3070 | 63.6 |
RX 6750 XT | 60.5 |
RX 6700 XT | 55.9 |
RTX 3060 Ti | 55.6 |
RX 6650 XT | 43.4 |
RX 5700 XT | 43.1 |
RTX 3060 | 41.7 |
RX 6600 XT | 41.2 |
RTX 2070 | 41.1 |
RX 6600 | 34.3 |
RTX 2060 6GB | 32.3 |
RTX 3050 | 29.5 |
GTX 1660 Super | 26.3 |
RX 6500 XT | 15.7 |
GTX 1650 | 14.0 |
RX 6400 | 13.1 |
上位2モデルが8%前後の向上
4Kも1440pと似たような結果となっており、元モデルより6950 XTは約9.1%、6750 XTは約8.1%、6650 XTは約5.3%の向上となりました。
ただし、RX 6950 XT は RTX 3090 Tiにやや大きく抜かされてしまっている他、RTX 3090(無印)にもかなり迫られてしまっています。価格が大幅に安いのでコスパでは依然として優位なものの、RTX 30シリーズのハイエンドに対しては帯域幅の広さによる差がまだ残ってしまっている印象です。
また、6750XTについてはかなり微妙です。希望小売価格的にはより安いRTX 3070に劣っている上に、30ドルしか違わないRX 6800に約15%も劣った結果となっています。元が6700 XTなので4Kでは厳しめという結果は想定内ですが、価格を考えるとかなり微妙な仕上がりです。
レイトレーシング性能
レイトレーシング利用時のパフォーマンスを見ていきます。今回は7種類のゲームでの幾何性能fpsを見ていきます。
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti | 141.0 |
RTX 3090 | 131.6 |
RTX 3080 Ti | 130.1 |
RTX 3080 10GB | 118.7 |
RX 6950 XT | 113.8 |
RX 6900 XT | 106.5 |
RTX 3070 Ti | 101.8 |
RX 6800 XT | 100.2 |
RTX 3070 | 97.2 |
RX 6800 | 89.7 |
RX 6750 XT | 79.5 |
RX 6700 XT | 72.4 |
RX 6650 XT | 59.8 |
RX 6600 XT | 56.6 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti | 111.3 |
RTX 3090 | 101.8 |
RTX 3080 Ti | 100.2 |
RTX 3080 10GB | 89.4 |
RX 6950 XT | 84.9 |
RX 6900 XT | 78.0 |
RTX 3070 Ti | 74.0 |
RX 6800 XT | 73.5 |
RTX 3070 | 70.0 |
RX 6800 | 65.4 |
RX 6750 XT | 55.7 |
RX 6700 XT | 50.8 |
RX 6650 XT | 34.9 |
RX 6600 XT | 32.9 |
GPU名称 | 平均FPS |
---|---|
RTX 3090 Ti | 66.5 |
RTX 3090 | 59.5 |
RTX 3080 Ti | 58.8 |
RTX 3080 10GB | 51.6 |
RX 6950 XT | 47.5 |
RX 6900 XT | 43.4 |
RX 6800 XT | 40.6 |
RX 6800 | 35.6 |
RX 6750 XT | 29.8 |
RX 6700 XT | 27.0 |
RTX 3070 Ti | 27.0 |
RTX 3070 | 25.5 |
RX 6650 XT | 14.5 |
RX 6600 XT | 13.4 |
6750 XTが10%とやや大きな向上
レイトレーシング性能は6950 XTと6650 XTの2つについては向上率もさほど変わらず、多少メモリ性能が強化されたとはいえ、RTX 30シリーズに対して明らかに不利な点は変わりませんでした。やはりレイトレーシングはRTXが無難だと思います。
ただし、6750 XTに関しては1割前後の向上となっており、他よりもやや大きめの性能向上が見られます。
6750 XTと 6650 XTの差を見てもわかるように、レイトレーシングはメモリ性能が必要量より不足していると性能がガクッと落ちる傾向がありますが、12GBメモリがあっても帯域幅のせいでボトルネックとなっていた6700 XTが、帯域幅が少し拡張された6750 XTでは丁度そのボトルネックを大きめに解消することが出来たと考えられます。
これにより、6750 XTは対抗のRTX 3070に対し、4Kでは平均ではわずかながらレイトレーシング性能を上回っています。ボトルネックがあまり発生しないタイトルでは基本劣っているため総合的には上回っているとは言えないものの、高負荷な処理への対応力では勝っていることが伺えます。
電力関連
消費電力
ゲームプレイ時(高負荷時)の平均消費電力を見ていきます。低い方が良い数値となります。測定に使用されたゲームは「Cyverpunk 2077」で、解像度は「2560×1440」です。
GPU名称 | 消費電力(W) |
---|---|
RTX 3090 Ti | 445W |
RX 6950 XT | 389W |
RTX 3090 | 355W |
RTX 3080 Ti | 354W |
RTX 3080 10GB | 318W |
RX 6900 XT | 302W |
RTX 3070 Ti | 298W |
RX 6800 XT | 292W |
RX 6750 XT | 286W |
RTX 2080 Ti | 265W |
RX 6800 | 223W |
RX 6700 XT | 221W |
RTX 3070 | 220W |
RX 5700 XT | 210W |
RTX 3060 Ti | 199W |
RTX 2070 | 192W |
RX 6650 XT | 189W |
RTX 3060 | 183W |
RTX 2060 6GB | 164W |
RX 6600 XT | 160W |
RTX 3050 | 139W |
GTX 1660 Super | 125W |
RX 6600 | 120W |
RX 6500 XT | 101W |
GTX 1650 | 74W |
RX 6400 | 51W |
全モデル消費電力が大幅に上昇
全モデル消費電力は元モデルより大幅に上昇してしまっています。
メモリ性能の向上やクロック向上があるため元モデルより上昇するのは当然としても、気になるのはTDPすらも超えてしまっている点です。GPUにおいてはNVIDIAもAMDも「消費電力≒TDP」という関係を基本保っているのですが、珍しくこの関係が崩れるモデルとなっています。
RX 6950 XTはTDPが335Wなのに389Wで、RX 6750 XTはTDPは250Wなのに286Wで、RX 6650 XTはTDPは180Wなのに189W消費しています。6650XTはまだ小さめの超過なものの、上位2つは大分大きく超えてしまっています。
元モデルと比較すると、6950XTは約28.8%、6750XTは約29.4%、6650XTは約18.1%も消費電力は増加してしまっており、かなり印象は悪いです。電力効率はこのすぐ後に見ていきますが、性能向上は大きくても1割程度ですから、計算しなくてもかなり悪化していることがわかります。
電力消費では特にRX 6750 XTは酷いです。30ドルしか違わない上に性能で大きく負けるRX 6800よりも63Wも多く電力を消費しています。RX 6800がかなり効率に優れたGPUとはいえ、同世代の同価格帯のGPUでここまでの差があるのは珍しい気がします。
ワットパフォーマンス
ゲームプレイ時のワットあたりのパフォーマンス(fps数)を見ていきます。前述の1440pゲーミング時の平均fpsとゲーミング時の消費電力を用いて、1Wあたりのfpsを算出して電力効率としています。消費電力は単一のゲームで測定したものに対し、fpsは複数ゲーム平均なので、厳密には正確な電力効率とは言えない点には注意ですが、各GPUの相対的な差を調べる分には概ね適切な値の範囲になっていると思います。
GPU名称 | 1Wあたりのfps |
---|---|
RX 6600 | 0.548 |
RX 6800 | 0.534 |
RX 6400 | 0.510 |
RX 6600 XT | 0.486 |
RTX 3070 | 0.484 |
RTX 3060 Ti | 0.472 |
RX 6900 XT | 0.468 |
RX 6800 XT | 0.458 |
RX 6700 XT | 0.447 |
RX 6650 XT | 0.434 |
RTX 3080 10GB | 0.407 |
RTX 3090 | 0.403 |
RTX 3080 Ti | 0.400 |
RX 6950 XT | 0.394 |
GTX 1660 Super | 0.392 |
RTX 3060 | 0.391 |
RTX 3070 Ti | 0.377 |
RX 6750 XT | 0.375 |
RTX 3050 | 0.373 |
RTX 2070 | 0.368 |
RTX 2060 6GB | 0.363 |
RX 5700 XT | 0.360 |
GTX 1650 | 0.354 |
RTX 3090 Ti | 0.348 |
RX 6500 XT | 0.327 |
電力効率は大きく悪化
消費電力の大幅な上昇により、電力効率も大幅に悪化しました。大きな強みだった部分が失われるのは致命的だと思います。
6950XTおよび6750XTは約16%も悪化し、元々は比較的優れた効率だったのに一気にやや悪い部類に転落しています。
6650XTに関しては約10.7%の悪化に留まり、元の良さもあってなんとかやや優れた地位を保ってはいるものの、元モデル(6600 XT)の良さを考えると物足りない結果になっていると思います。コスパ面ではほぼ変わらないですし、性能面でも差は5%程度と小さいので、電力効率でやや大きく優れる6600 XTの方が魅力的だと思います。そのため、6650XT自体は悪くないGPUだとは思いますが、大きく安くならない限りはあえて選ぶほどの優位性はない気がします。
まとめ
Radeon RX 6950 XT
- 非常に優れたパフォーマンスで、レイトレ以外ではRTX 3090をも上回る
- 16GB GDDR6の大容量メモリ
- RTX 3090よりも安い
- 非常に高価(希望小売価格:約1,100ドル)
- 非常に多い消費電力(TDPは335Wだけど、実測だと389Wだった)
- RTX 3080以降に劣るレイトレーシング性能
- 電力効率がやや悪い
Radeon RX 6750 XT
- RTX 3070と同等の優れた性能(レイトレ除く)
- 同価格帯では多い12GB GDDR6メモリ
- 高価(希望小売価格:約550ドル)
- 性能の割には多い消費電力(TDPは250W、実測286W)
- コスパが悪い(RX 6800と30ドルしか違わないのに性能は大きく負ける)
- 電力効率がやや悪い
- レイトレーシング性能がより安価なRTX 3070よりも大幅に低い
- RX 6800と30ドルしか違わないのにあらゆる面で大幅に負ける
Radeon RX 6650 XT
- やや安価(希望小売価格:399ドル)
- 同価格帯で優れたコスパ
- やや優れた電力効率
- RX 6600 XTより劣る電力効率
- メモリのバス幅が狭いため、帯域幅もやや狭い
- レイトレーシング性能が低い
RX 6950 XT:RTX 3090より大きく安価なトップクラスGPU
RX 6950 XTは約1,100ドルという価格ながら、約1,500ドルのRTX 3090よりも高い性能を持つトップクラスの性能のハイエンドGPUです(レイトレーシングは除く)。元のRX 6900 XTよりもおおよそ8%性能が向上しましたが、このクラスのハイエンド帯における8%は結構大きいので、数字の見た目以上に優れた性能のハイエンドGPUです。
ただし、消費電力は大幅に増加してしまっており、6900XTではハイエンドでは良い電力効率だったのにやや悪い部類まで落ちてしまっています。
また、レイトレーシングは性能は依然としてRTXには分が悪く、RTX 3090どころかRTX 3080にもやや劣る性能となっている点も注意です。下位モデルと違いレイトレも性能自体は高性能なため、多用する場合でなければあまり気にならないかもしれませんが、折角トップを目指すハイエンドGPUなのに電力効率でもレイトレでもRTX 3090に対して優位性がないというのは、選ぶのを躊躇する要因になりそうです。
RX 6750 XT:選ぶ理由が無さそう
RX 6750 XTは正直選ぶ理由が見当たらないレベルのGPUだと思います。
他の2モデルよりも上昇率が高い約550ドルという価格設定ですが、これはRX 6800の約580ドルと30ドルしか差がありません。にも関わらず、両者はコア数が6750XTは2,560で6800は3,840となっており、RX6800が1.5倍のコア数となっています。同世代で1.5倍のコア差があり30ドルしか差がないという時点でコスパ的には圧倒的に劣る事が間違いないので、正直性能を詳しく見るまでもなく選ぶ価値があるか怪しいです。
百歩譲って消費電力が少なかったり電力効率が物凄く良ければ需要はあるかもって感じですが、消費電力は同性能帯GPUの中では多いですし、電力効率も6700XTより大幅に悪化しており悪いです。何なら上位のはずのRX 6800の方が消費電力が少ない(TDPは同じはずなのに)し、電力効率も良いです。魅力どこ…って感じです。
ただし、RTX 3070 Tiのようにコスパや効率面の悪さから元モデルと同等以下まで安くなる例もあるので、めちゃくちゃ安くなればあるいはって可能性は考えられます。ただし、最低でもRTX 3070 Tiよりは安くならないと選ぶ価値が生まれないと思いますので、かなり値下げの敷居は高いです。仮にそうなったとしても、効率面を重視したい方は迷うレベルだと思うので、RX 6750 XTを選ぶビジョンはやはり見えないです。
RX 6700 XTを元にRTX 3070と同等クラスまで性能を引き上げたのは凄いと思いますが、需要的にはよくわからないGPUです。
RX 6650 XT:悪くないミドルレンジGPU
RX 6650 XTは、他の2モデルよりはコスパも電力効率も悪くなく、悪くないミドルレンジGPUに仕上がっています。
ただし、性能向上も5%程度と控えめですし、電力効率も良い部類ではあるものの元のRX 6600 XTやRX 6600無印の方が電力効率では非常に優秀ということもあり、あえてこちらを選択する必要があるかというと微妙なところです。
RX 6600 XTと同等クラスまで値下げされるか、RX 6600 XTの供給が減り置き換えられる以外ではあえて選択することは無さそうな印象です。
総評:元モデルよりコスパや電力効率が悪化しているため、あえて選ぶ必要はないかも
新たに投入されたRX 6×50の3モデルは、元モデルよりメモリ速度やクロックの向上によりパフォーマンスが少し向上しているものの、価格や消費電力も上がってしまっているため、効率的には元モデルより基本的に悪いです。
そのため、あえて選ぶ必要性は小さく、希望小売価格よりも大幅に安くなったりした場合に検討するくらいの立ち位置になると思います。ただし、RX 6750 XTについては相当値下がりしないとお得と言えるレベルにならないので、基本的には避けて元モデルの「RX 6700 XT」や「RTX 3060Ti / 3070 / 3070 Ti」を検討する方が良いと思います。
といった感じで、本記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。