CPUとは?
CPU(Central Processing Unit)は、PCの中心的な処理装置です。日本語では「中央処理装置」「中央演算処理装置」などと言い、人間でいう「頭脳」とよく例えられます。CPUの性能がPC全体に影響するので、性能面でPCにとって最も重要といって良いパーツです。
ただし、画像処理に関しては主に別のユニット(GPU)が担当しており、CPUの性能の良さだけではカバー出来ないため注意です。
性能・仕様について
次に、CPUの各種スペック・仕様について見ていきます。まずは、それぞれの単語と簡単な説明を下記にまとめているのでこちらをご覧ください。
- コア
CPUのメインの処理を行う核となる部品です。コア数が多いほどCPU全コアでの処理の能力が上がり、複数の処理を並行して行う場合(例:ゲーム配信)や膨大な量のデータ処理(例:レンダリング)で有利になります。
- スレッド
コアが行う仕事の単位です。ざっくり分かり易くいうと、システム上で認識するコア数といった感じ。
- クロック(動作周波数)
CPUのデータ処理の速度を示す指標です。単位はHz(ヘルツ)。
- TDP(熱設計電力)
消費電力の目安となる値です。単位はW(ワット)。
- ベンチマークスコア
CPUの処理性能を数値化したものです。専用のソフトを用いて測定します。様々な種類があり、測れる性能の傾向などが異なります。有名なソフトはPassMarkやCinebenchなど。
- プロセスルール
CPUの配線の太さのようなものです。単位はnm(ナノメートル)。細いほどより複雑な設計が可能になるため効率化が図れる他、消費電力の面でも有利です。
CPUに関する用語でよく使うのは上記に挙げたようなものになります。下記からそれぞれについてもうちょっとだけ詳しく説明をしています。
コア
コアはCPUの処理を実際に行う部品の名称です。CPUにとって核ともいえる部分です。2020年現在では、処理性能を上げるために、一つのCPUの中に複数のコアが存在する「マルチコア」が主流となっています。
コア数 |
1コア
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2コア
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4コア
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6コア
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8コア
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呼び方 |
シングルコア
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デュアルコア | クアッドコア | ヘキサコア | オクタコア |
コアはCPUの性能に直結する部品なので重要です。このコアに関する部分で一番手っ取り早くCPUの性能を上げる方法が「コア数を増やす」事です。実際に処理を行うパーツ(コア)が増えるほど処理速度は当然上がります。そのため、基本的にはコア数が多いほどCPU全体の処理能力は高くなります。ただし、CPUのコア数が多いほど発熱や消費電力が多くなる点は注意しておく必要があります。
下記にざっくりとコアを増やす事によるメリット・デメリットをまとめておきます。
多コア化のメリット
- マルチスレッド性能の向上
コアの数を増やすとマルチスレッド性能(CPUの全コアでの処理性能)が高くなります。マルチスレッド性能が高いと単純に重い処理で有利になる他、多数の処理を並行して行う場合や、膨大な量のデータ処理などで特に有利になります。コアを増やす大きなメリットです。
多コア化のデメリット
- 発熱が多くなる
コアはその小さい中で膨大な処理を行うため高負荷時には大きく発熱します。PCにとって熱は天敵なので発熱量が増える事は好ましくありません。また、CPUには温度が規定値より高くなるとクロックが下がる安全機能(サーマルスロットリング)があるため、排熱能力を上げにくいモバイル端末では特に、発熱の多いCPUを使用していると処理速度が低下する事が頻発する可能性があります。デスクトップの場合でも、熱対策のためにより良いCPUクーラーが求められたり、PCケースのエアフローなども気を付けなければいけない度合いが強くなります。
- 消費電力が多くなる
発熱と同じく、コアが増えると消費電力が多くなります。モバイル端末ではバッテリー持ちに影響しますし、デスクトップでも電源ユニットの容量などに気を遣わなければいけなくなります。
- 製造コストが高くなる
コア数が多い方が製造コストは当然高くなり、CPU自体の価格も基本的に高くなります。多コアによる恩恵をあまり得られないほどの軽作業しか行わないのなら多コアCPUをあえて選ぶのは余計な出費になるかもしれない上、上述のデメリットも無駄に受けることになります。
スレッド
スレッドは簡単にいうとCPUのコアが行う仕事の単位です。スレッド数が多いほど作業の手数が多いという感じです。スレッド数が多いほど効率的に処理を行えたり、複数の処理を同時並行する場合に作業を分担させやすいので、特にエンコードやレンダリングなどの膨大な量の処理や、マルチタスクの処理などで有利に働きます。もちろん、単純に高負荷な処理でも有利です。
原則は1コアにつき1スレッドで「1コア=1スレッド」という形になりますが、現在では「ハイパースレッディング(SMT)」という技術を用いて「疑似的に1コアを2コアに見せる事で、1コアで2スレッドを処理する」仕様のCPUが多く存在します(例:8コア16スレッド)。仕組み的には「システム上で認識するコア数」と表現した方がわかりやすいかもしれません。
ハイパースレッディング(SMT)は、1コアで2スレッド処理を実現する技術です。コアの物理的な仕様を変えずに性能を上げることが出来る非常に有益な技術です。ただしデメリットとして、未使用時より高負荷時の消費電力や発熱が増加したり、1スレッドあたりの処理能力は落ちるなどがあります。とはいえ、基本的に低負荷時には問題にならないものですし、コアの物理的な仕様を変えずに性能を上げれるというのは非常に魅力的なので、無いよりは絶対あった方が良い有益な技術です。ちなみにハイパースレッディングというのはCPUの大手メーカー「Intel」の商標で、PCにおけるCPUが長期間「Intel」製CPUがほぼ一強状態だったために普及しましたが、他メーカー製CPUだとこの名前は使えないため、同様の技術の広義的な名前であるSMT(Simultaneous Multi-Threading、同時マルチスレッディング)と呼ばれます。
ベンチマークスコア(CPUの各種処理性能)
また、ベンチマークスコアを基に性能が大まかにランク分けをされている事があります。一般的なものを下記にざっとまとめたので、参考までに良ければ見てください。
ランク | 概要 |
---|---|
ハイエンド | 超高性能帯。トップ層のCPU群。 |
ハイクラス | 高性能帯。ハイエンドには及ばないものの十分な性能。 |
ミドルクラス | 真ん中から中の上くらいの性能帯。この一つ上に「アッパーミドル」という区分けが作られている事もある。 |
エントリークラス | 真ん中~中の下くらいの性能帯。平均的な性能よりは低性能寄りという意味合い強め。 |
ロークラス | 低性能帯。省電力モデルや古いCPUが多い。 |
ローエンド | 超低性能帯。古いCPUが多い。 |
一口にCPUの性能といっても、実は大きく分けて「マルチスレッド性能」「シングルスレッド性能」「ゲーミング性能(高性能GPU使用時)」と3種類の性能あります。特にこれらに触れることなくベンチマークスコアのみが記載されている場合は「マルチスレッド性能」の場合が一般的です。CPU自体にそこまで興味のない方は深く気にする必要はないですが、一応触れておきます。また、下記でもう少し各種性能についての説明をまとめています。
CPUの各種性能のざっくりとした説明です。
- マルチスレッド性能
CPU全体(全コア)での処理性能。マルチスレッド性能が高いと、単純に重い処理を行う際に有利になるのはもちろん、複数の処理を並行して行う際や膨大なデータ量の処理の際に特に役立ちます。
- シングルスレッド性能
1スレッド(1コア)の処理性能。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理のレスポンスが良くなる(サクサク動く)他、基本的にどんな処理に関しても有利に働く汎用性の高い性能です。マルチスレッド性能が多少高くても、シングルスレッド性能が低いと評価が低かったりします。
- ゲーミング性能(外部GPU)
高性能なグラボ(外部GPU)搭載時のゲームパフォーマンスです。平均FPS数などで表されます。ゲームにおける描画処理の中心は基本的にGPUになりますが、ゲームではソフト内の圧縮されたデータを解凍するなどの処理が大量に発生し、その処理は基本的にCPUが行うため、CPUにもGPUが処理できるフレーム数に対して負けないくらいの処理性能が必要になります。具体的には、ゲーミング性能はIPC(1クロックあたりの処理命令数)やシングルスレッド性能が重要と言われています。
動作周波数(動作クロック)
周波数を上げるメリット
- 性能が上がる
周波数が上がるという事はデータ処理の速度が上がるという事なので、当然処理能力が上がります。大きなメリットです。
周波数を上げるデメリット
- 発熱・消費電力が多くなる
データ処理の速度が上がると負荷が増えるため、発熱や消費電力が多くなります。サーマルスロットリングといった安全機能はあるものの、無理にクロックを上げ過ぎると故障や逆に性能低下のリスクが出てきます。
一部のCPUには、「オーバークロック(略称:OC)」という、本来の仕様よりも動作周波数を引き上げる機能が使えるものがあります。これを利用すると、CPUの性能を従来より引き上げる事が可能です。しかし、想定されていない発熱の増加が発生する可能性があるため、故障のリスクが高まります。上級者向けの機能で、基本的に推奨されません。
TDP
TDP(Thermal Design Power)は、熱設計電力を表します。単位はW(ワット)。大体の消費電力や発熱量の目安として扱われます。TDPの数値を見て、CPUクーラーの冷却性能はこれくらいあった方が良いとか、電源ユニットの容量はこれ以上はあった方が良いとかの判断基準にします。
TDPの仕様をもうちょっと具体的にいうと、「TDPの電力量に達するまでは制限を掛けないけど、達したらクロックに制限を掛けて電力量を調整しますよ」といった具合のものです。
ただし、実際にはもっと細かく設定されていて割とアテにならなかったりするので、上述のように「このCPUはこのくらいの電力を使ったときの発熱が発生するので、そのつもりでクーラーや電源を用意してくださいね」という具合の指標と思った方が良いです。割とあいまいな指標です。
また、勘違いされやすいですが、TDPの数値は具体的な消費電力量を表したものではないことには注意が必要です。たとえば、TDPが65WのCPUだからといって最大の消費電力が65Wではないという事です。環境によって多少の変化はありますが、実際の最大消費電力は、大体TDPの1.5倍~2倍程度になるのが一般的です。
ちょっとややこしく感じるかもしれませんが、単純に大体の消費電力や発熱量の目安として見ればOKです。
プロセスルール
プロセスルールとは、CPUの半導体の回路の配線の幅を指します。単位はnm(ナノメートル)。ルールというと何かの決まりや規定を想像してしまいますが、単純に配線の幅と捉えた方が分かり易いです。外国では一般的に「プロセスサイズ」と呼んでおり、そちらの方が直感的で分かり易いと思います。
端的にいうと、プロセスルールは小さいほど良いです。デメリットは基本的にありません。配線の幅が細くなると、より細かな回路設計が可能な他、トランジスタ等の部品を配置するスペースもより大きく取る事ができます。更には消費電力も少なくなるなど、良い事尽くめです。ただし、単位がnmと非常に小さいですから、それを更に微細化するのは並大抵のことではありません。その代わり、実現さえ出来れば大きな強みとなります。
2019年9月現在では、Intel製のCore iシリーズは14nmが主流で、AMD製のRyzen シリーズは7nmが主流です。プロセスルールという点ではAMDが優位に立っており、実際にAMDが7nmの実現に成功した第3世代Ryzenを機に、AMDがIntelを性能面で追い抜いたという状況になっています。
内蔵GPU
CPUには、GPUが内蔵しているものがあります。GPUとは画像処理に特化したプロセッサで、ディスプレイ・モニターに映像を表示するために必須です。
別途、単体のGPU(グラフィックボード・ビデオカード)を搭載することでも対応が可能ですが、GPUはPCを利用する上で実質必須のものなので、利便性などを考慮して、CPUに内蔵されている場合も多いです。そのようなCPUに内蔵されているGPUのことを一般的に内蔵GPUと呼びます。
内蔵GPUの性能
内蔵GPUの性能は単体のGPU(グラフィックボード・ビデオカード)と比べるとかなり低いです。主にメモリー、スペース、発熱などで制約がああり、性能を向上させるのが難しいためです。
しかし、最近では内蔵GPUの性能はかなり向上しており、GPUにもよりますが、高画質な動画を見る程度であれば基本的に問題ありません。とはいえ、未だに最新の3Dゲームなどを快適にプレイする事はやや厳しい状況です。内蔵GPUで快適にプレイできるゲームは軽いものに限られる点は注意が必要です。
内蔵GPUについては、下記の記事でもう少しだけ詳しく解説しているので、気になる方はご覧ください。

他パーツとの関連性
CPUはPCの中心の存在なので、全てのパーツと関係があると言えますが、ここでは特に関係の深いパーツとその関連性をざっくり説明しています。
メモリー

グラフィックボード/GPU
GPUは画像処理に特化したプロセッサです。CPUの画像処理専門バージョンというと分かり易いかもしれません。このGPUは、CPUみたいな中心的な役割は果たさないものの、ディスプレイに映像を表示させるために必須な非常に重要なプロセッサです。一般的なPCでは、CPUの内蔵GPUかグラフィックボードやビデオカードなどと呼ばれるパーツどちらかで利用しています。ちなみに、高画質な3Dゲームなどをしたい場合には、グラフィックボードを利用する事がほぼ必須となっています。
GPUはCPUと異なる役割(画像処理)を担当していますが、GPUが処理を行うためのデータをアプリケーション内から持ってきたりするのはCPUが行いますし、最終的に画像を表示するアプリケーション自体はCPUが動作させています。そのため、仮に物凄く高性能なGPUを利用していたとしても、そのGPUが処理できる膨大なデータ量についていける性能をCPUが持っていなければ、活かす事ができない事があります。特にゲームは、基本的にソフト内の大量の圧縮された画像などを解凍して利用するという感じの処理が多く行われるため、CPUの性能も少なからず関わってきます。このような「CPUの性能の低さが原因でGPUの性能を活かしきれない」ことを「ボトルネック」と呼びます。このボトルネックが少ないCPUがゲーミング性能が高いCPUという訳です。高性能なGPUを活かすためには、高性能なCPUが必須となる訳です。
下記に、上記で触れた事も含めて留意事項をまとめています。
- ボトルネック
CPUの性能の低さが原因で、GPUの性能を活かしきれないこと。ゲーミング性能が高いCPUはボトルネック問題の小さいCPUのことです。
- 内蔵グラフィック(CPUの内蔵GPU)
CPUにはGPUを内蔵しており、別途グラフィックボード等を用意しなくても良いものがあります。Intel製の主流CPUは、ほとんどがGPUを内蔵しています。ただし、内蔵GPUは、グラフィックボード等に搭載される単体GPUより性能は大きく劣るため、高画質の3Dゲーム等を動作させるのは難しいです。(2019年9月時点)
GPUについては、下記でもう少しだけ詳しく説明しています。良ければご覧ください。

CPUクーラー
CPUはその小さなユニットの中で膨大な量の処理を行い、発熱します。それによってCPU自体が非常に熱くなってしまうため、常に冷却しながらの使用が必須です。その冷却の役目をするのが「CPUクーラー」です。
ただし、PC利用者が必ず別途CPUクーラーを用意しなければならない、という訳ではなく、既製品のPCのCPUには最初からCPUクーラーが設置されています。CPUをパーツとして購入する場合も、多くの製品にはCPUクーラーが付属しています。利用者が別途CPUクーラーを用意しなければならないのは、TDPが90Wを超えるような発熱の多いハイエンド(超高性能)CPU限定です。
下記から、CPUクーラーの冷却方式についてざっくりと説明しています。
冷却方式
空冷式CPUクーラー

良い点
- 安価
- こまめなメンテナンスが要らない
悪い点
- 冷却能力が外気温に左右される
簡易水冷式CPUクーラー
良い点
- 空冷を上回る非常に高い冷却能力
悪い点
- 空冷よりやや高価
- ラジエーターを別箇所に設置しないといけない
- 継続使用で冷却能力が落ちることがある
- トラブル発生率が空冷より高い
本格水冷も、冷却液を使って冷却するという図式は簡易水冷と同じです。ただし、本格水冷は自由度が高く、CPUだけでなく他パーツも一緒に冷やしたりなどができます。その代わり、導入は非常に難しく上級者向けです。しっかりと管理できるのであれば、簡易水冷は本格水冷の劣化という考えの人も居ます。
まとめ
最後に、特に重要そうな項目をまとめてリスト化しています。
- CPUはPCの頭脳とも呼ばれる、非常に重要なパーツ
- コア・スレッドは多ければ良いという訳ではない
- メモリーがCPUの作業場となる
- CPUの性能が低いとGPUの性能を最大限発揮できない可能性がある(ボトルネック)
記事はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。