【最新版】ノートPC向け「Core i」と「Ryzen」の違いを比較

IntelとAMDの主流CPUシリーズのCoreシリーズRyzenシリーズの違いについてざっくり解説しています。ノートPC向けの最新世代と1つ前の世代(2022年12月時点)のものを対象としています。

注意
  • 掲載の情報は記事更新時点(2022年12月15日)でのものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

性能スコア等の参考

はじめに

ノートPC向けの最新世代と1つ前の世代が対象(メインは最新世代)

本記事はPCの主流CPUの、IntelのCoreシリーズAMDのRyzenシリーズの各種のノートPC向け最新世代と1つ前の世代のものを対象としています。
現在(2022年12月時点)の対象は「Core」は第11世代および第12世代で、「Ryzen」は5000シリーズおよび6000シリーズです。

ですが、4つ全てについて細かく比較すると長くなってしまうので、メインの比較は最新世代の2つ(第12世代Core vs Ryzen 6000)として見ていきます。

主流の省電力モデル(TDP:15W~28W)が対象

ノートPC向けのCoreおよびRyzenシリーズには、大きく分けて主流の省電力モデル(TDP:15W~28W)超省電力モデル(TDP:10W未満)性能重視モデル(TDP:35W以上)の3種類がありますが、本記事でメインで扱うのは最も採用率が高いと思われる「主流の省電力モデル(TDP:15W~28W)」です。また、ここでいうTDPはPL1(1段階目の制限)を便宜上で書いているだけで、実際の最大消費電力とは異なる点は注意してください。

また、他の2モデルについては詳しくは触れませんが、記事後半に補足として付け足す形にしているので参考までに気になる方はご覧ください。

簡易比較表

細かい数値を見ていく前に「Core」と「Ryzen」の各性能についての簡易比較表を載せています。

対象は最新世代である「第12世代Core」と「Ryzen 6000」です。「なんとなく各シリーズの特徴を掴めれば」といった感じのかなりざっくりとした比較になります。また、表の後ろに旧世代の比較も載せている(ボタンで表示)ので、興味があればご覧ください。

Core 第12世代 Ryzen 6000
P (例:Core i7-1260P) U (例:Core i7-1255U)
プロセス 10nm 10nm 6nm
コア数 10~14 コア
P:2~6コア
E:8コア
6~10 コア
P:2コア
E:4~8コア
6~8 コア
※Ryzen 3未発表
スレッド数 12~20 スレッド 8~12 スレッド 12~16 スレッド
マルチコア性能
Cinebench R23

~11480

~7385

~10297
シングルコア性能
Cinebench R23

~1739

~1775

~1480
内蔵GPU性能
3DMark Time Spy Graphics

~1784

~1784

~2400
AV1デコード
※内臓GPU
TDP 28W~64W 15W~55W 15W~28W
電力効率
Thunderboltへの対応 Thunderbolt4 Thunderbolt4 USB4
(Thunderbolt3相当)

Core 第11世代 Ryzen 5000
プロセス 10nm 7nm
コア数 2~4 コア 4~8 コア
スレッド数 4~8 スレッド 8~16 スレッド
マルチコア性能
(Cinebench R23)

3236~5175

5522~8154
シングルコア性能
(Cinebench R23)

1312~1439

424~553
内蔵GPU性能
(3DMark Time Spy Graphics)

646~1589

733~1173
AV1デコード
(内臓GPUの)
×
TDP 15W~64W 15W~25W
電力効率
Thunderboltへの対応 Thunderbolt4 ×

要点や注意点

各比較に入る前に、知っておいた方が良いかもしれない仕様の要点や注意点について軽く触れています。

まず知っておいた方が良いと思うのは、第12世代CoreはRyzenや従来のCoreと異なるコア構成をしている点です。

従来のCPUでは、各コアはクロックや質の違いはあれど、物理的な設計は基本同じ1種類のコアを採用しているのが基本でしたが、第12世代Coreでは「高性能コア(Pコア)」と「高効率コア(Eコア)」という、2種の異なるコアが混在する仕様となっています。

後の比較でも載せますが、参考にここでも各モデルのコア構成を下記の表にまとめておくので見てみましょう。

第12世代Core(Alder Lake)のコア構成
Core i7 Core i5 Core i3
末尾P 6P + 8E(=14コア)
4P + 8E(=12コア)
4P + 8E(=12コア) 2P + 8E(10コア)
末尾U 2P + 8E(=10コア) 2P + 8E(=10コア) 2P + 4E(6コア)
Pコア:高性能コア。従来のコアと同じと捉えてOK。
Eコア:高効率コア。非常に小型で低消費電力に特化したコア。ただし、コアあたりの性能はPコアに劣るため注意。

Pコア(高性能コア)は従来のコアと捉えて構わないですが、問題はEコアの方です。Eコアは低消費電力および省スペース化に特化したコアとなっており、重要なのはEコアの性能がPコアよりも大きく劣る点です。ハイパースレッディング(1コアで2スレッド処理)にも対応しないため、コア数の見栄えの割にはマルチスレッド性能は伸びません。そのため、合計コア数だけで処理性能を測るのが従来よりも難しくなっています。今まで以上にベンチマークスコアを参考にすることが大事となっています。

ノートPC向けのCPUでは内蔵グラフィック性能を気にする人も多いと思います。これは基本的に競合モデル同士ならRyzenの方が高性能かつコスパが良いです。中でも、Ryzen 7以降で搭載される「Radeon 680M」は従来の内蔵グラフィックよりも格段に性能が向上しており、数年前のエントリーレベルのビデオカード並みの性能があるので、薄型軽量でちょっと重めのグラフィック処理もしたい場合には有力です。ゲーム性能になりますが、下記にベンチマークスコアの比較を載せておくので参考までにご覧ください。

Time Spy Graphics(DX12)
GPU名称
(搭載CPUの例)
スコア
Radeon 680M
(Ryzen 7 6800U)
2400
Iris Xe G7 96EU (~1400MHz)
(Core i7-1260P)
1756
Iris Xe G7 96EU (~1300MHz)
(Core i7-1165G7)
1589
Radeon 660M
(Ryzen 5 6600U)
1558
Radeon RX Vega 8
(Ryzen 7 5700U)
1173
Iris Xe G7 80EU
(Core i5-1135G7)
1131
Radeon RX Vega 7
(Ryzen 5 5500U)
1045
Radeon RX Vega 6
(Ryzen 3 5300U)
854
UHD G4
(Core i3-1115G4)
646

Ryzen 7 6800Uの「Radeon 680M」は競合の内蔵GPUの中でトップの性能となっており、次点の第12世代Core搭載の「Iris Xe Graphics G7 96EU」よりも約1.27倍も高速です。重いゲームすらもある程度動作させることが出来るレベルとなっています。さすがに重い3Dゲームを快適にプレイできるほどではありませんが、動作は基本可能なレベルにまで到達しているため、ライトユーザーの方な許容レベルかもしれません。

ただし、自前のビデオメモリを持っていないので、重い動画編集についてはゲーム以上に少し苦手なので、素直にビデオカード搭載機を検討することをおすすめします。

タイトルの通りです。第12世代CoreシリーズはRyzenと比べると消費電力が多く、電力効率が悪いです。モバイル版のCPUとしては致命的な弱点です。下記が各CPUシリーズの標準のTDP(消費電力の目安)です。

CPUシリーズ TDP
Ryzen 6000 15W~28W
第12世代Core-P 28W~64W
第12世代Core-U 15W~55W
Ryzen 5000 15W~25W
第11世代Core 15W~64W

※モデルによって異なる可能性があります。

Ryzenは最大でも28Wとなっているのに対し、第12世代Coreは最大55W~64Wとなっており、明らかに多いです。プロセスルールと呼ばれる配線の仕様が第12世代Coreでは10nmなのに対し、Ryzen 6000では6nmとやや微細化されていて優れているのが主な要因と言われています。

各設定はベンダー(メーカー)やユーザーが調整できるため、あくまで参考程度としか言えないものの、実際のテストでも第12世代Coreは消費電力がRyzenより明らかに多くて電力効率が悪いです。そのため、バッテリー持ちや発熱の少なさを重視するなら基本的にRyzenの方が大きく有利という点は知っておいて損はないかもしれません。

また、別記事になりますが、下記の記事でもう少し詳しく触れているので、興味があればご覧ください。

【2022年後半】Ryzen 7 6800U vs Core i7-1260P vs Apple M2:これから注目の最新世代CPUの性能比較

要するに第12世代Coreは50W~60W前後は電力を消費しないと全力を発揮できないと考えることができます。この値は薄型のノートPCに搭載するCPUの設定としては、正直高すぎます。また、消費電力が多いということは発熱が多いということでもあります。十分な冷却が行われないとクロックを低下させる機能がCPUにはあるため、発熱の多い第12世代Core搭載のCPUは、搭載する端末によっても性能が大きく異なる可能性があります。また、薄型のPCではメーカー側が始めから電力設定を低くしており、性能が低下している可能性もあります。

バッテリー持続時間は、デバイスのバッテリー容量や上記のような電力設定などにも左右されるものの、仕様的にはRyzenの方が優秀という点は留意しておく必要があります。

今回比較するCPUシリーズの中では唯一、Ryzen 5000シリーズのみ内蔵GPUに「AV1」のハードウェアデコード機能がありません。Vegaという古いアーキテクチャのGPUを採用していることが原因です。

AV1(AOMedia Video 1の略)は映像コーデック(映像の圧縮の方式)の一つで、高い圧縮率かつロイヤルティーフリーな点が評価されており、採用が進んでいる方式です。YouTubeでも採用が増えており、現在最も将来性があると言われている映像コーデックです。

これが無いと、AV1でエンコードされた動画を観る際にはCPUが直に処理を行うことなりますが、画像処理はCPUにとっては非常に高負荷な処理となるため、他の処理を圧迫してしまうため好ましくないです。そのため、YouTubeをよく視聴する方が長期利用を見据えた将来性を考えるなら「Ryzen 5000シリーズ」は避けた方が無難かもしれません(もしくは、Ryzen 5000シリーズの場合は別のGPUを搭載しているものにする)。

Ryzen 5000シリーズは超高速なUSB通信にもやや弱いです。具体的には、Thunderboltと呼ばれるものやUSB4に対応していません。

まずThunderbolt 4ですが、これはUSB Type-Cで利用できるオルタネートモードというもので利用できる技術の一つです。簡単に言うと、従来のUSBでは行えない超高速・大容量通信を可能にします。よくピックアップされる機能は、外部GPUとの接続です。グラボを搭載したeGPUボックスと接続することで、外付けHDDのような感じで高性能なGPUを利用することができます。

Thunderbolt 4の便利な機能ざっくり(一部)
  • eGPU接続(外付けの単体GPU)
  • 超高速な通信
  • 超高画質な映像の入出力(4K等)

このThunderbolt 4ですが、Coreでは第11世代から対応しているのに対し、Ryzenでは6000シリーズも含め対応していません。

ただし、Ryzen 6000シリーズではUSB4には対応しており、これにはThunderbolt 3相当のコントローラが統合されているため、eGPUも利用可能となっており、完全互換ではないですがある程度は機能を利用できます。

そのため、Thunderboltには完全に非対応なのはRyzen 5000シリーズのみとなっています。

幸い上述のAV1デコードとは違い、特定の人のみに必要な機能かつ、その人の割合もさほど多くないと思われる機能のため、深く気にする必要はありませんが、特に移動が活発なクリエイターの方などはチェックしておくと良いかと思います。

各モデルごとの比較【最新世代】

Core i シリーズとRyzen シリーズは、Core i7 と Ryzen 7といったように、各モデルナンバーごとに対抗製品が存在します。価格帯も大体同じくらいということもあり、よく悩まれる両者を各対抗製品同士を比較します。

各項目では評価を☆形式で載せていますが、あくまで相対的な差を比較したものであり、たとえば☆2だから低性能とは限らない点に留意です。また、記事執筆時点では各最新モデルの搭載製品が少なくベンチマークサンプルが少ないため、一部は筆者による推定値となっている点も留意してください(推測値の場合は明記しています)。


Core i7 と Ryzen 7

Core i7およびRyzen 7はモバイル版の主流CPUにおける上級モデルです。両者高い性能を持っています。

その代わりに、搭載製品の価格は高いです。高級機を中心に採用されます。主流の最高モデルということもあり、10万円を大幅に超えるような製品も珍しくありません。また、2022年12月時点では従来より円安が進んでいる影響も大きく、最新のハイエンドモデルは安くても13万円~と従来よりも高価になっています。最新モデルは性能も大きく向上していて魅力的ではありますが、従来よりは多額の費用が必要となる点にも注意が必要です。

また、第12世代のCore i7には14コアモデル(例:Core i7-1280P)も存在しますが、価格的にも仕様的にも主流モデルとしてはやや特殊な立ち位置と判断し、勝手ながら相対評価には含めていませんのでご了承ください。

以下、簡易比較表です。

Core i7 と Ryzen 7
総合ざっくり評価
CPU名
マルチ
スレッド
シングル
スレッド
内蔵GPU
消費電力
Core i7(第12世代-P)
※14コアモデル除く
4.25
4.5
4.0
2.75
Core i7(第12世代-U)
4.0
4.5
4.0
3.0
Ryzen 7(6000番台)
4.5
4.0
4.5
3.75
Core i7(第11世代)
3.0
4.0
4.0
2.75
Ryzen 7(5000番台)
4.25
3.75
3.5
3.5

Core i7とRyzen 7の人気モデルを一部抜粋して比較しています。

主要スペック
CPU PassMark
スコア
コア/
スレッド
動作クロック
定格/最大
TDP 内蔵GPU
Core i7-1280P 24059 14/20
(6P+8E)
P:1.8 / 4.8GHz
E:1.3 / 3.6GHz
28W – 64W Iris Xe Graphics G7 96EU
Ryzen 7 6800U 20795 8/16 2.7 / 4.7GHz 15W – 28W Radeon 680M
Ryzen 7 5800U 19378 8/16 1.9 / 4.4GHz 15W – 25W Radeon RX Vega 8
Core i7-1260P 17162 12/16
(4P+8E)
P:2.1 / 4.7GHz
E:1.5 / 3.4GHz
28W – 64W Iris Xe Graphics G7 96EU
Ryzen 7 5700U 16418 8/16 1.8 / 4.3GHz 15W – 25W Radeon RX Vega 8
Core i7-1255U 13264 10/12
(2P+8E)
P:1.7 / 4.7GHz
E:1.2 / 3.5GHz
15W – 55W Iris Xe Graphics G7 96EU
Core i7-1185G7 11500 4/8 3.0 / 4.8GHz 15W – 64W Iris Xe Graphics G7 96EU
Core i7-1165G7 10989 4/8 2.8 / 4.7GHz 15W – 64W Iris Xe Graphics G7 96EU
Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Ryzen 7 6800U
10297
Core i7-1260P
9603
Ryzen 7 5700U
8675
Ryzen 7 5800U
8154
Core i7-1255U
7385
Core i7-1185G7
5397
Core i7-1165G7
5186

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Core i7-1260P
1778
Core i7-1255U
1775
Ryzen 7 6800U
1480
Core i7-1185G7
1457
Core i7-1165G7
1455
Ryzen 7 5800U
1427
Ryzen 7 5700U
1256

3D Mark Time Spy Graphics(DX12)
GPU名称
(搭載CPUの例)
スコア
Radeon 680M
(Ryzen 7 6800U)
2400
Iris Xe G7 96EU (~1400MHz)
(Core i7-1260P)
1756
Iris Xe G7 96EU (~1300MHz)
(Core i7-1165G7)
1589
Radeon RX Vega 8
(Ryzen 7 5700U 等)
1173

Ryzen 7 一択に近い

7モデルですが、Ryzen 7(6000シリーズ)の一強に近い状態だと思います。Core i7はEコアの大量追加による恩恵でマルチスレッド性能を格段に伸ばし、Ryzenとの差はほとんど無くなりましたが、内蔵グラフィックスの性能と電力効率では負けているためやや不利です。特に、モバイル端末にとっては電力効率は非常に大きな要素なですし、コア数が多い高性能モデルでは更にそこの差が顕著になりますから、第12世代のCore i7は電力面が大きくネックになっている印象は否めないです。以下から、各項目について触れていきます。

まずはCPUのマルチスレッド性能ですが、Ryzen 7の方がやや高いです。コア数はRyzen 7が8コアで、Core i7(P)は12コア~14コア(4P~6P + 8E)、Core i7(U)は10コア(2P + 8E)となっています。Core i7の方がコア数は多いため優位に見えますが、効率に特化した低性能なEコアを含む上に消費電力が多くことがネックとなっています。12コア以下のモデルならRyzen 7の方が高性能、14コアモデルならCore i7が上回るものの1割程度の差となっており、効率面も考えるとRyzen 7の優位となっています。

次に内蔵GPUの性能ですが、Ryzen 7 6800Uの方がCore i7-1260Pよりも約27%も高速です。特に大きい差の一つです。Ryzen 7 6800U搭載のRDNA 2アーキテクチャ採用のRadeon 680Mはモバイル版のGTX 1050に匹敵する性能と言われており、重いゲームすらもある程度動作させることができるほど高性能です。動画編集に関しては専用のビデオメモリを持たないために単体のGPUには大きく劣るものの、従来の内蔵GPUよりは大きく高性能なので、特別重いものでなければ対応は可能なレベルです。

そして、電力効率の差も大きいです。全ての要素に横たわる部分で、特にノートPCではバッテリー持続時間にも大きく関わるため、電力効率は非常に重要な部分です。まず単純に電力制限値であるTDPを見ても、Ryzen 7が「15W~25W」なのに対し、Core i7(P)は「28W~64W」、Core i7(U)でも「15W~55W」です。実際にはこのままの電力が消費される訳ではないですし、ベンダーや使用者が任意の値を選択して調整するとはいえ、その差は歴然です。実際の電力テストを確認しても明らかにCore i7の方が消費電力が多いです。やや消費電力を装っている末尾Uモデルでも、正直差はあまりなく、Ryzen 7と比べると多いです。

しかも、前述のように内蔵グラフィックの性能はRyzen 7が大きく上回っている上、マルチスレッド性能もCore i7の12コアモデル相手ならRyzen 7の方がやや上回っています。性能でも負けている上に、消費電力も大幅に多い(=電力効率が悪い)ため、バッテリーの持続時間ではかなりの差がつきます。

性能だけを見れば、Core i7側もRyzen 7と比べたらやや性能が低いだけで高性能ではあるため、似たような運用は可能です。ただし、上述のバッテリー面に加え、消費電力が多いということは発熱が多いということでもあり、特に薄型のノートPC向けのCPUとしては致命的です。そのため、Ryzen 7の方が圧倒的優位という印象です。価格次第ではありますが、多少高くても基本的にはRyzen 7の方が魅力的だと思います。

Ryzenは5000シリーズまでは「AV1のハードウェアデコードに非対応」「Thunderboltに対応ができない」といった弱点がありましたが、6000シリーズからはAV1デコードにも対応した他、USB4に対応したためにeGPUボックスなども利用可能となっています。性能以外でも従来より差が縮まっていることもRyzen 7優位の要因の一つです。

Core i7側が勝っている点を挙げるとすれば、シングルスレッド性能(1コアでの性能)があります。Ryzen 7よりも約2割も高速です。最大クロックは両者ほぼ同じで、Ryzenの方が6nmプロセスというやや優位な土台なのにも関わらずこの差はさすがです。ただし、1コアであってもCore i7は消費電力が多いことが確認されており、総合的な部分を考えると優位性としては微妙という印象です。

ですが、12~14コアというコア数とPコアの性能の高さは間違いないですから、最大性能のポテンシャルは高いです。基本ACアダプダーに接続した状態で利用する前提で、CPU性能の高さに重点を置くのであれば悪くはない選択肢と考えることもできるかもしれません。


Core i5 と Ryzen 5

Core i5およびRyzen 5はモバイル版主流CPUにおける中級モデルです。いわゆるミドルレンジに区分されます。

搭載製品は幅が広く、価格重視の安価なものから、コスパやパフォーマンス重視のやや高価なものまでさまざまな製品が発売されます。また、中級とはいっても現在では十分に高性能で数年前のデスクトップ版のハイエンドCPUを上回る性能を持っている点は留意しておきましょう。

Core i5 と Ryzen 5
総合ざっくり評価
CPU名
マルチ
スレッド
シングル
スレッド
内蔵GPU
消費電力
Core i5(第12世代-P)
4.25
4.25
3.5
2.75
Core i5(第12世代-U)
4.0
4.25
3.5
3.0
Ryzen 5(6000番台)
4.0
3.5
4.0
3.75
Core i5(第11世代)
3.0
3.75
3.5
2.75
Ryzen 5(5000番台)
4.0
3.5
3.5
3.5

Core i5とRyzen 5の人気モデルを一部抜粋して比較しています。

主要スペック
CPU PassMark
スコア
コア/
スレッド
動作クロック
定格/最大
TDP 内蔵GPU
Core i5-1240P 18222 12/16
(4P+8E)
P:1.7 / 4.4GHz
E:1.2 / 3.3GHz
28W – 64W Iris Xe Graphics G7 80EU
Ryzen 5 6600U 17645 6/12 2.9 / 4.5GHz 15W – 28W Radeon 660M
Ryzen 5 5600U 15343 6/12 2.3 / 4.2GHz 15W – 25W Radeon RX Vega 7
Core i5-1235U 14122 10/12
(2P+8E)
P:1.3 / 4.4GHz
E:0.9 / 3.3GHz
15W – 55W Iris Xe Graphics G7 80EU
Ryzen 5 5500U 13284 6/12 2.1 / 4.0GHz 15W – 25W Radeon RX Vega 7
Core i5-1135G7 9989 4/8 2.4 / 4.2GHz 15W – 28W Iris Xe Graphics G7 80EU
Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Core i5-1240P
8473
Ryzen 5 6600U
8018
Ryzen 5 5600U
7776
Core i5-1235U
7589
Ryzen 5 5500U
7151
Core i5-1135G7
4982

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Core i5-1240P
1663
Core i5-1235U
1649
Ryzen 5 6600U
1425
Ryzen 5 5600U
1362
Core i5-1135G7
1345
Ryzen 5 5500U
1172

3D Mark Time Spy Graphics(DX12)
GPU名称
(搭載CPUの例)
スコア
Radeon 660M
(Ryzen 5 6600U)
1558
Iris Xe G7 80EU(-1300MHz)
(Core i5-1240P)
1244
Iris Xe G7 80EU(-1300MHz)
(Core i5-1135G7)
1131
Radeon RX Vega 7
(Ryzen 5 5500U 等)
1054

CPU性能重視ならややCore i5有利、電力面とグラフィック性能重視ならややRyzen 5有利

7では明らかにRyzen 7が有利と主張しましたが、5ではどちらが有利と言い切るほどの差がない印象です。マルチスレッド性能重視なら第12世代Core i5、バッテリー持続時間や内蔵グラフィック性能重視ならRyzen 5という形の棲み分けになると思いますが、大して差はありません。

差が縮まった主な要因は、Core i5はCore i7の主流モデルと同じ12コアというコア数なのに対し、Ryzen 5(6000シリーズ)はRyzen 7の8コアから6コアへと減らされているためマルチスレッド性能差が小さくなったことと、GPU性能も低下しているためです(Ryzen 7よりもGPUのコア数が半減しているため)。また、Ryzen 5は性能が低くなったことにより、電力効率もRyzen 7よりは若干悪化していることも差を小さくしています。

まずマルチスレッド性能についてですが、Ryzen 5は6コアで、Core i5(P)は12コア(4P + 8E)、Core i5(U)は10コア(2P + 8E)となっています。効率に特化した低性能なEコアを含むとはいえ、6コア vs 10コア or 12コアではコア数の差が大きいため、最終的なマルチスレッド性能はほぼ同等となっています。ただし、シングルスレッド性能はCore i5の方が大きく優位となっているため、CPUの処理性能はCore i5の方が若干有利という印象となっています。

次に内蔵GPU性能ですが、Ryzen 5の方が若干上です。Ryzen 5はRyzen 7からGPUのコア数が半減させられてしまっており、性能が大きめに低下してはいるものの、それでもまだCore i5の内蔵GPUには勝ります。ただし、差自体は7から少し縮まっていますし、実用性に差が出るほどの性能差ではないと思われるため、実質的には大差なしという印象です。

このように、性能では正直そんなに差がないのがRyzen 5(6000)とCore i5(第12世代)です。

ただし、第12世代Coreの方がRyzenよりも消費電力の多い(電力効率の悪い)という弱点はまだ残っているため、それを考慮すると総合的にはRyzen 5の方がわずかに有利という印象です。

といった感じで、個人的な総評としては基本的には用途や好みに合わせて選ぶレベルだと思いますが、迷うならややバッテリー持ちが良くて発熱の少ないRyzen 5の方がおすすめです。


Core i3 と Ryzen 3

Core i3およびRyzen 3は主流CPUにおける下位モデルです。ただし、もっと低性能なCeleronやPentiumがあるため、最低性能という訳ではなく、いわゆるミドルレンジ下位くらいに区分されます。搭載PCの価格は比較的安いです
価格の安さが魅力のモデルのため、上位モデルと比べると性能は高いとは言えないレベルですが、Web閲覧やOffice作業などの軽作業であれば十分な性能は持っています。その安価さのおかげで、特に重い作業をしないのであればコスパは悪くないですし、最近ではCPUの性能は全体的に底上げされているので、モバイル版であれば以前のハイエンドCPUにも匹敵する性能を持っています。

とはいえ、Core i5Ryzen 5との性能差が大きい割には価格差が意外と小さいため、「3を買うなら、少し予算をプラスして5を買った方がお得」という印象が強いため、人気は低めです。

Core i3 と Ryzen 3
総合ざっくり評価
CPU名
マルチ
スレッド
シングル
スレッド
内蔵GPU
消費電力
発熱
Core i3(第12世代-P)
3.75
4.25
3.25
3.25
Core i3(第12世代-U)
3.5
4.25
3.25
3.5
Ryzen 3(6000番台)
※登場まで未評価
1.0
1.0
1.0
1.0
Core i3(第11世代)
2.25
3.5
2.75
3.5
Ryzen 3(5000番台)
3.25
3.25
3.0
3.5

Core i3とRyzen 3の人気モデルを一部抜粋して比較しています。

主要スペック
CPU PassMark
スコア
コア/
スレッド
動作クロック
定格/最大
TDP 内蔵GPU
Core i3-1220P 15651 10/12
(2P+8E)
P:1.5 / 4.4GHz
E:1.1 / 3.3GHz
28W – 64W UHD Graphics Xe 64EU
Ryzen 3 5400U 11812 4/8 2.6 / 4.0GHz 15W – 25W Radeon RX Vega 6
Core i3-1215U 11603 6/8
(2P+4E)
P:1.2 / 4.4GHz
E:0.9 / 3.3GHz
15W – 55W UHD Graphics Xe 64EU
Ryzen 3 5300U 9231 4/8 2.6 / 3.8GHz 15W – 25W Radeon RX Vega 6
Core i3-1115G4 6422 2/4 3.0 / 4.1GHz 15W – 28W UHD Graphics G4
Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Core i3-1220P(推測)
6500~7500
Core i3-1215U(推測)
6000~7000
Ryzen 3 5300U
5522
Core i3-1115G4
3236

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Core i3-1220P(推測)
1600~1650
Core i3-1215U(推測)
1600~1650
Core i3-1115G4
1312
Ryzen 3 5300U
1129

Time Spy Graphics(DX12)
GPU名称
(搭載CPUの例)
スコア
UHD Xe 64EU(推測)
(Core i3-1220P)
1049
Radeon RX Vega 6
(Ryzen 3 5300U)
839
UHD G4 48EU
(Core i3-1115G4)
646

Core i3が高性能CPUへと変貌を遂げ、Ryzen 3を圧倒(一応推測)

Ryzen 6000シリーズは記事執筆時点(2022年7月)ではRyzen 3が発表されていないため正式な比較は登場まで待つ形になりますが、それを考慮してもCore i3の一択と言い切れるほどCore i3優位です。Core i3は第11世代までは2コアだったのでお世辞にも高性能とは言えませんでしたが、第12世代からは6コア~10コアへとコア数が一気に増えた上にグラフィック性能も強化されたので、モバイル版のCore i3は一気に高性能CPUへと変貌を遂げています

まずマルチスレッド性能ですが、Ryzen 6000シリーズは既存のモデルを見る限りはCPUのコア数は前世代と同じです。そのため、未発表ながらRyzen 6000のRyzen 3も4コアである可能性が高いです。それに対し、Core i3は末尾Pモデルなら10コア(2P + 8E)、末尾Uモデルでも6コア(2P + 4E)となっており、コア数は大きく上回っています。効率に特化した低性能なEコアを含むとはいえ、最低でもPコアが2つ含まれているため、Ryzen 3に後れを取る可能性は低いと思われます。推測からの暫定ながら、Core i3やや有利と見ています。第11世代では2コアだったため圧倒的に劣っていた部分ですが、一気に差が無くなりました。

また、Core i3のPコアの最大クロックはCore i5とほぼ同じです。そのため、シングルスレッド性能はCore i5とほぼ同等程度と推測され、Ryzen 5でもやや下の性能なので、当然Ryzen 3よりはシングルスレッド性能が大幅に高いことは確定だと思います。

次に内蔵GPUですが、Core i3はEU(実行ユニット)数が前世代の48から64へと増やされており、強化されています。Ryzen 5の内蔵GPUに近い性能を持っています。Ryzen 3(6000シリーズ)は未発表のため不明なものの、Ryzen 5よりは低くなることが想定されるため、内蔵GPU性能ではCore i3の方がやや有利な可能性が高いです。ここも前世代から逆転しています。

最後に電力面です。第12世代Coreは電力がネックという印象が強いシリーズとなっており、Core i3でもTDPが同じのため電力効率は良いとは言えないとは思いますが、Ryzen 3は前世代では上位モデルよりはやや電力効率が悪いというデータがありました。6000シリーズのRyzen 3も同様の傾向を受け継ぐとするなら、恐らくはCore i3に対して大きな優位性を持てるほどは電力面も良くない可能性が高いと思われ、Core i3優位を決定付ける要因となりました。

と言った感じで、Ryzen 6000シリーズのRyzen 3はまだ未発表のためあくまで推測となりますが、Core i3が優位となる可能性が高いと思います。

前世代までは、Core i3は低性能感を拭えない出来だったため、Core i3を買うくらいなら頑張って予算を少しプラスしてCore i5かRyzen 5にした方がコスパは良いケースがほとんどだったと思いますが、12世代ではそれが変わっています。Core i3でも前世代のCore i7を上回る高性能さを手に入れたため、価格の安さや軽作業前提のコスパならCore i3は非常に強力な選択肢となりました。しかも、やや重めの処理すらも視野に入れれるレベルです。

用途・予算別おすすめ

最後にここまでの内容を踏まえて、用途・予算別に分けておすすめモデルを紹介しています。

高価格でコスパ重視ならRyzen 7(6000シリーズ)

高価格で選ぶなら、Ryzen 6000シリーズのRyzen 7ほぼ一択だと思います(例:Ryzen 7 6800U)。

Ryzen 7(6000シリーズ)の性能は、Core i7の末尾Pモデル(例:Core i7-1260P)の12コアモデルと比較するとシングルスレッド性能以外のほぼ全ての面で優位に立っており、特に電力効率の良さとグラフィック性能の高さは魅力的です。Ryzen 7000シリーズもZen 3+かZen 4モデルなら選択肢に入りますが、記事更新時点では市場にまだ登場していないため、ひとまず除外しています。

消費電力の少なさおよび電力効率の良さはモバイル端末向けのCPUとしては非常に有力な要素であるため、Ryzen 7はそこが圧倒的に勝っているのがめちゃくちゃ大きいです。電力効率が圧倒的に良いというだけで、多少性能が下でも優先する要因になり得るレベルなのに、Ryzen 7はその上で処理性能も大部分で勝っています。圧倒的に優位になるのは必然と言えると思います。

また、内蔵GPUが重いゲームすらもある程度動作させるほど高性能なのも魅力的です。100を超えるfpsを求めるには当然不十分な性能ですが、1080pの低設定で30fps~60fpsくらいで良いなら、ほとんどの主要ゲームが動作できると思います。ライトゲーマーには十分と言えると思います。更には動画編集もデータ量の少ないものなら対応でき、省電力なCPUながらグラフィック性能も優れる非常に汎用性に優れるCPUと言えます。

ただし、専用のビデオメモリを搭載しない内蔵GPUだと重めの動画編集は単体のGPUには大きく劣る点は留意です。重い動画編集を頻繁に行うのであれば、CPUが旧世代でも単体のGPU搭載のゲーミングノートやクリエイターノートの方が適していますし、2022年7月時点では大幅に高価な最新のCPUモデルよりも安価に手に入る可能性すらあると思います。

また、Core i7もTDPが15W~55Wの末尾Uモデル(例:Core i7-1255U)の方なら省電力さなら対抗できそうな印象も受けるかもしれませんが、Pコアが1コアだけでも高負荷時には結構な電力を消費してしまうことがテストで明らかになっていますし、末尾Uの最大設定の55Wでも省電力CPUとしてはかなり多い消費電力となっているため、本体設定で電力を設定を大きく制限していない限りは実は消費電力面でもほとんど差は変わりません。ただし、コアが少ない分恐らく少し安価にはなると思われるので、価格次第ではUの方がは選択肢に入るかもしれません。ですが、CPUのコア数はCore i5と変わらずにマルチスレッド性能差がほぼ無いため、価格重視ならCore i5の方が良いので…やはりCore i7がRyzen 7との対決で優位になることは厳しい印象です。

中価格ならCore i5かRyzen 5でコスパ良さそうな方

第12世代のCore i5とRyzen 6000シリーズのRyzen 5は、全体的にさほど差がない印象なので、価格とストレージやメモリ構成やその他の本体仕様などの差によるコスパの差で選ぶことになると思います。

一応差を挙げるとするなら、Ryzen 5の方が電力効率はやや良いため、バッテリー持続時間を重視するならRyzen 5の方がやや有利です。Core i5はシングルスレッド性能が高い上、Core i7と基本変わらないコア数のおかげでマルチスレッド性能も優れるため、性能重視の場合には有力な選択肢になります。

特にCore i5はしっかりと電力と冷却さえ行えれば中価格モデルとは思えないほど高性能なので、性能を重視しつつも価格も抑えたい場合には魅力的です。

低価格ならCore i3(重い処理も結構いける)

Ryzen 6000のRyzen 3がまだ未発表なものの、推測される性能を基にすると低価格モデルならCore i3の方が明らかに有利だと思います。第12世代のCore i3は一気に高性能CPUへと変貌を遂げています。

Core i3は11世代までは2コアだっために上位CPUと比べると明らかに非力でしたが、第12世代では末尾P(例:Core i3-1220P)では10コア(2P + 8E)、末尾U(例:Core i3-1215U)でも6コア(2P + 4E)とコア数が大幅に増えており、マルチスレッド性能が飛躍的に向上しています。前世代のCore i7(4コア)をも大きく上回る性能を持つため、十分に高性能と言えるCPUへと進化しています。

更に、GPUのEU(実行ユニット)数も前世代の48から64へと増えており、グラフィック性能も上位CPUとの差が縮まっています。重いゲームなどは厳しい性能ではあるものの、軽いゲームなどの軽いグラフィック処理ならより快適に行える性能になったことも大きいです。

電力効率に関してはやはりRyzen 3の方が優位である可能性はあるものの、前世代と同じ傾向を引き継ぐならRyzen 3に関しては上位モデルほどは電力効率が良くないと予測されるので、大した優位性にはならない可能性もあります。

まだRyzen 6000のRyzen 3が未発表なため、あくまで推測で参考までにとしか言えないものの、総評としては恐らくCore i3が優位になると思います。

その他のモデル

上述の主流の省電力モデル以外のモデルにも、凄くざっくりと触れています。

性能重視モデル(TDP:35W~)

良い点
  • 処理性能が高い

悪い点
  • 消費電力が多い(バッテリー持続時間も短くなる)
  • 発熱が多い
  • 発熱処理のため、PCが大型化する傾向がある
  • 価格が高い(ビデオカード搭載機が中心のため)

ゲーミングノートPCによく採用されるのが性能重視モデルです。モバイル版ではCPU名の末尾にHが付く事が特徴です(Core i / Ryzen 共通)。

主流モデルのTDP(PL1)が15W~28Wなのに対し、性能重視モデルはTDPが35W以上となっており、高負荷時の消費電力と発熱が大幅に増加しています。要するに、より多い電力を使えるようにしたおかげで性能を引き上げているモデルになります。そのため、大きめの冷却ファンなどの冷却機能を搭載することが前提となるため、搭載機はやや大型化してしまう傾向があります。末尾Hは搭載製品のほとんどが単体のGPU(グラボ)を搭載しており、高性能なゲーミングノートやクリエイターノートでの採用が中心となっています。

基本的には処理性能が高い以外には良い点が無く、特にデメリットである消費電力や発熱の増加がモバイル端末ではかなり痛いです。据え置きならデスクトップの方が良いですから、どうしてもPCを持ち運んで重いゲームや動画編集などをしたいという人向けのシリーズとなっています。

末尾Hでは第12世代Coreの弱点である消費電力の多さのネックがやや解消されるため、基本的にRyzenよりも高性能です。また、単体のGPU利用でのゲームやクリエイターソフトではシングルスレッド性能も重要になることが多いため、末尾Hでは省電力モデルと異なりCoreシリーズの方が優位な印象です。電力効率の差はあるにしても、単体のGPUを搭載した末尾H製品という時点でバッテリー性能はそこまで重視されないことが多いこともCore側優位の要因です。ただし、下位モデルの単体GPU(GTX 1650~RTX 3050あたり)を搭載し、バッテリー持続時間も重視するならRyzenの方がやや優位だと思います。

性能重視モデルの一部を表に簡単にまとめています。複数の仕様のコアを持つ場合のクロックは、高性能コアのものとなっています。

CPU名称 PassMark
コア
スレ
ッド
TDP
定格
クロック
最大
クロック
Core i9-12950HX
36058
16 24 55W – 157W 2.5GHz 5.0GHz
Core i9-12900HX
35595
16 24 55W – 157W 2.3GHz 5.0GHz
Core i7-12800HX
35079
16 24 55W – 157W 2.0GHz 4.8GHz
Core i9-12900HK
30213
14 20 45W – 115W 2.5GHz 5.0GHz
Core i7-12800H
28816
14 20 45W – 115W 2.4GHz 4.8GHz
Core i7-12700H
27411
14 20 45W – 115W 2.3GHz 4.7GHz
Core i7-12650H
24600
10 16 45W – 115W 2.3GHz 4.7GHz
Ryzen 9 6900HX
24589
8 16 45W – 54W 3.3GHz 4.9GHz
Ryzen 9 6900HS
24340
8 16 35W – 54W 3.0GHz 4.6GHz
Ryzen 7 6800HS
24189
8 16 35W – 54W 3.2GHz 4.7GHz
Ryzen 9 5900HX
23522
8 16 45W – 54W 3.3GHz 4.6GHz
Ryzen 7 6800H
23496
8 16 45W – 54W 3.2GHz 4.7GHz
Core i9-11980HK
23473
8 16 45W – 65W 2.6GHz 5.0GHz
Core i5-12500H
22629
12 16 45W – 115W 2.5GHz 4.5GHz
Ryzen 9 5900HS
22528
8 16 35W – 54W 3.3GHz 4.6GHz
Ryzen 9 5980HS
22499
8 16 35W – 54W 3.0GHz 4.8GHz
Core i9-11900H
22282
8 16 45W –  2.5GHz 4.9GHz
Ryzen 7 5800H
22002
8 16 45W – 54W 3.2GHz 4.4GHz
Core i7-11800H
21643
8 16 45W –  2.3GHz 4.6GHz
Core i7-11850H
21598
8 16 45W –  2.5GHz 4.8GHz
Core i5-12450H
18622
8 12 45W – 115W 2.0GHz 4.4GHz
Core i7-11370H
12407
4 8 35W – 60W 3.3GHz 4.8GHz
Core i7-11375H
12329
4 8 35W – 60W 3.3GHz 5.0GHz


超省電力モデル(TDP:~10W)

良い点
  • 消費電力が少ない
  • 発熱が少なく、ファンレスにしやすい

悪い点
  • 処理性能が低い
  • 高負荷時にすぐにクロックが下がってしまう
  • 最大性能が低いのに、価格は安くない(上位モデルを電力制限して使った方がお得感がある)

薄型軽量のPCやタブレットに適しているのが、TDP(PL1)が10W未満の超省電力モデルです。2022年7月時点ではRyzen側では該当モデルが無いため、Core側が独占している形になります。以下の説明もCoreのみの説明となります。

TDP(PL1)が主流モデルでは15W~28Wなのに対し、超省電力モデルのTDPは10W未満となっており、消費電力と発熱が大幅に抑えられています。そのおかげで、搭載する冷却用のファンを小型化することができ、ファンレス運用も他モデルより比較的容易になっています。消費電力が少ないことにより、搭載するバッテリー容量も少なくすることが出来る点も軽量化にプラス要素として働きます。

ただし、電力制限がきつくなっているために処理性能は低くなっており、高負荷な作業を前提とする場合には向かない点はデメリットになります。軽作業前提の非常に使い勝手の良いCPUという感じです。

一見すると非常に魅力的で採用が多くなりそうな印象も受けると思いますが、CPUの最大性能が低いにも関わらず、コア数が主流モデルと変わらないためにCPUの価格はTDPが15Wのモデルとほぼ変わらないために採用例は少なめです。このモデルを採用するくらいなら、TDPが15Wの主流モデル(第12世代では末尾U)の電力制限を強くして使った方がコスパが良いため、どうしても基本電力を15W未満にしたいという極端な省電力仕様にしたい場合にしか需要がなく、採用は多くない傾向があります。

超省電力モデルの一部を表に簡単にまとめています。Ryzenには該当モデルが記事更新時点(2022年12月)では存在しないようなので、Coreのみです。複数の仕様のコアを持つ場合のクロックは、高性能コアのものとなっています。

CPU名称 PassMark
コア
スレ
ッド
TDP
定格
クロック
最大
クロック
Core i7-1250U
13644
10 12 9W – 29W 1.1GHz 4.7GHz
Core i7-1160G7
10997
4 8 7W – 15W 2.1GHz 4.4GHz
Core i5-1230U
10826
10 12 9W – 29W 1.0GHz 4.4GHz
Core i5-1130G7
10482
4 8 7W – 15W 1.8GHz 4.0GHz
Core i7-10510Y
5623
4 8 7W 1.2GHz 4.5GHz
Core i5-10210Y
4900
4 8 7W 1.0GHz 4.0GHz
Core i3-10110Y
3639
2 4 7W 1.0GHz 4.0GHz
Core i5-8200Y
3070
2 4 5W 1.3GHz 3.9GHz
Pentium Silver N6000
3037
4 4 6W 1.1GHz 3.0GHz
Core m3-8100Y
2898
2 4 5W 1.1GHz 3.4GHz
Pentium Silver N5030
2707
4 4 6W 1.1GHz 3.1GHz
Pentium Silver N5000
2594
4 4 6W 1.1GHz 2.7GHz
Celeron N4100
2463
4 4 6W 1.1GHz 2.4GHz
Pentium 4425Y
1721
2 4 6W 1.7GHz



それでは、内容はここまでとなります。ご覧いただきありがとうございました。

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