GPUの現在の価格について【2022年7月版】

2022年7月時点のデスクトップ向けGPUの現在価格についてのまとめです。以前は「高騰具合について」とタイトルに付けていましたが、ほとんどのモデルが希望小売価格を下回るようになり、高騰は収束したと見て、今回から外しています。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年7月25日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

概要

GPU価格の動向を調査した記事です。GPUに値下がりの兆候が見えた2022年2月頃から毎月更新しながら投稿しています。

具体的には、現在のGPUの市場価格と予想適正価格との差を調べて確かめていきます。また、先月の同時期にも同様の記事を投稿したので、そちらの結果も利用して先月からの価格の動向も同時に確認していきます。

2か月ほど前から引き続き、懸念はやはり円安と新世代GPUの発売が近付いている点です。

円安については、記事執筆時点(2022年7月時点)だと約136円程度となっており、先月同時期の約135円からわずかに上昇しているという感じです。ですが、一時は139円を超えました。更にはアメリカの物価高も同時進行しているらしく、日本のPC市場にとってはかなり暗い要素ばかりでこれからどうなるか不安なところです。

ですが幸い、現在は仮想通貨の暴落に伴うマイニング収益率の低下によって、GPU価格に関してはむしろ値下がっています。

また、新世代GPUも着々と近付いており、RTX 40シリーズはRTX 30シリーズの在庫過多によって発売が延期されるかもという噂もありますが、どちらにせよその在庫を捌くにも値下げなどの対応が必要になるので、旧世代化直前とはいえ既に安い上に値下がりの可能性もあるGPU市場は消費者にとっては嬉しい感じになっていると思います。

適正価格の計算と市場価格について

本記事では、現在のGPUの販売価格に加え、本来の予想適正価格を載せています。

その計算方法ですが、それぞれのGPUにはメーカーの希望小売価格(ドル)が大体公開されているため、そこから為替や流通マージンなどを考慮して算出しています。内訳は、今回の記事では1ドル136円(記事執筆時点のおおよその為替レート)で計算し、流通などのマージンは全て合わせて雑に20%としています(少し高かったかも…)。しっかりした比較ではないため、その点はご了承ください。

市場価格は筆者が各ショップや価格比較サイトを見回った際に、すぐに購入可能だった(在庫がある)ものの最安値です。また、特別なセール等で大幅に安い価格で販売されていたりすることもありますが、それが明らかな場合には筆者の判断で除外することもあるので、あらかじめご了承くださいませ。

RTX 30シリーズのハイエンドモデルが値下げ

本題に入る前に触れておきたいのが、NVIDIAがRTX 30シリーズのハイエンドモデルの値下げを実施したことです。対象モデルと値下げ内容は以下の通りとなっています。

対象GPU 値下げ前 値下げ後
RTX 3090 Ti $1,999 $1,499
RTX 3090 $1,499 $1,299
RTX 3080 Ti $1,199 $1,099
RTX 3080 12GB ? $799

残念なことに対象はハイエンドモデルに限られている上、ハイエンドモデルなら恐らく最も魅力的であるRTX 3080 10GBが対象外というのも残念です。

正直コスパや電力面を考慮すると、予算に余裕があったとしても魅力的とは言えないモデルです。そのため、この値下げによる影響はあまり大きくないのかなという印象です。そもそも、対象モデル全てが先月時点で希望小売価格を2割前後と大幅に下回っている状況があった(RTX 3080 12GBは価格が非公表だったので除く)のも、今更希望小売価格が下がっても魅力的ではない裏付けになっているのかなと思います。

日本市場では海外価格の反映にやや時間が掛かるため、今回の結果には値下げの影響はまだ出ていないようですが、恐らくは次月からは価格に影響があると期待したいと思います。

また、軽く今回の値下げについて考察という余談的なものをしますと、Nvidiaの今回の値下げの最大の理由は恐らく、対象のハイエンドモデルが単純に現在の価格で売れていないからだと思われます。RTX 30シリーズが登場して既に2年近く(約1年10か月)が経過しており、新世代GPUが今年中には登場するという噂が広まっています。新世代GPUは基本ハイエンドモデルから登場しますし、従来からハイエンドモデルはコスパ的にはあまり良くはないことが多いです。場合によっては電力効率面でも良くないこともあるため、最新でなくなった途端に一気に競争力を失うのがハイエンドモデルの宿命だったりします。そんな中で、今はハイエンドモデルを買うべきではないと消費者の多くが考えており、購入が進んでいないということだと思います。元々ハイエンドモデルは予算を気にせずに購入する人も多いと思われるためか、以前まではハイエンドモデルだけ大幅値下げなんてプロモーションを見た記憶がないので、以前よりも消費者全体のGPUやGPU市場についての理解が大きく進んでいるのかなという印象です。

前置きが長くなりましたが、下記から今月の現在のGPU価格と高騰具合(適正価格と現在価格の差)を見ていきたいと思います。

NVIDIA:GeForce

まずはNVIDIAのGeForceです。

GPU 希望
小売価格
国内予測
適正価格
市場価格
※2022年
7月24日時点
適正価格
との差
先月の価格
※2022年
6月24日時点
先月比
GeForce RTX 3090 Ti 1,499ドル ¥244,637 ¥219,000 -10.5% ¥236,800 -7.5%
GeForce RTX 3090 1,299ドル ¥211,997 ¥188,000 -11.3% ¥198,800 -5.4%
GeForce RTX 3080 Ti 1,099ドル ¥179,357 ¥148,500 -17.2% ¥151,554 -2.0%
GeForce RTX 3080 12GB 799ドル ¥130,397 ¥119,800 -8.1% ¥125,400 -4.5%
GeForce RTX 3080 10GB 699ドル ¥114,077 ¥99,800 -12.5% ¥104,934 -4.9%
GeForce RTX 3070 Ti 599ドル ¥97,757 ¥80,800 -17.3% ¥83,800 -3.6%
GeForce RTX 3070 499ドル ¥81,437 ¥71,800 -11.8% ¥73,800 -2.7%
GeForce RTX 3060 Ti 399ドル ¥65,117 ¥65,800 +1.0% ¥67,480 -2.5%
GeForce RTX 3060 329ドル ¥53,693 ¥46,800 -12.8% ¥49,800 -6.0%
GeForce RTX 3050 249ドル ¥40,637 ¥35,800 -11.9% ¥38,900 -8.0%
GeForce RTX 2060 12GB 299ドル ¥48,797 ¥36,480 -25.2% ¥40,800 -10.6%
GeForce RTX 2060 6GB 299ドル ¥48,797 ¥35,980 -26.3% ¥39,798 -9.6%
GeForce GTX 1660 Ti 279ドル ¥45,533 ¥35,800 -21.4% ¥42,679 -16.1%
GeForce GTX 1660 SUPER 229ドル ¥37,373 ¥28,800 -22.9% ¥29,797 -3.3%
GeForce GTX 1650 GDDR6 149ドル ¥24,317 ¥22,626 -7.0% ¥22,800 -0.8%
GeForce GTX 1630 ?ドル ¥20,800

値下がり傾向は継続しています。先月から全てのモデルが値下がりしており、主要モデルでは大体3%~8%の値下がりが見られます。また、RTX 3080 12GB以降のハイエンドモデルでは公式での値下げが発表されましたが、恐らく日本ではまだ反映されていない中でも値下がりしているので、今後更に大きく値下がりする可能性があります。とはいえ、元々競争力的に微妙だったモデルばかりなので、市場に大きな影響は与えるかは微妙なところだと思います。

全体の価格としてはRTX 3060 Tiを除く全てモデルが予想適正価格を下回っており、RTX 3060 Tiも適正価格とほぼ同じ額です。マイニング需要の低下や次世代GPUが近付いたことにより、全体的に既存GPUの価値が下がっています。値下がり傾向が出始めた頃には中々価格の下がらなかった人気モデル(RTX 3060 TiやRTX 3070)もここ数ヶ月で価格を大きく下げていますから、消費者がGPUを買い渋っているのがよくわかる結果になっています。

特に値下がり幅が大きかったのは、RTX 3060より下の下位モデルです。RTX 2060やGTX 1660 SUPERなど旧世代GPUも多い性能帯となっています。この辺りは基本的にAV1デコードに対応していない上にレイトレーシング性能も低いため、将来性的にも微妙なモデルとなります。性能抜きでも、次世代モデルが到着すると2世代以上古いモデルになってしまいますから見栄えが悪いですし、効率面も最新世代には圧倒的に劣ることが予想されます。そこでこの値下がりですから、販売側が早く在庫を捌きたいとという狙いがあるか、もしくは消費者がそこを察知して買い渋っているかのどちらかだと推測されます。何にせよ、性能の低さだけなら安ければ我慢できるところですが、AV1デコードへの対応や効率面はどうしようもない部分なので、出来ればこの辺りの購入は避けた方が無難ではあると思います。ただし、GTX 1660 SUPERなんかは非常に安くなっており、従来のゲーミング性能のみに限れば非常に優れたコスパとなっているので、一応選択肢には入るかなという印象です。

ですが、やはり魅力的なのはコスパも電力効率も良い「RTX 3070」および「RTX 3060 Ti」です。先月あたりから一気に価格を落とし、競争力を大きく持っています。今月もわずかながら価格を下げていますし、このくらいの効率の良いGPUならRTX 2060やRTX 2060 SUPERなどのように、次世代GPUが出てもめちゃくちゃ見劣りする程では無い可能性も他モデルよりは高いので、どうしてもGPUが欲しいならおすすめはやはりこの2モデルですね。

また、GTX 1630という新モデルが登場しましたが、微妙というか買わない方が良いです。希望小売価格は公表されていませんが、発売時価格はGTX 1650より2,000~3,000円程度しか安くない(2万円ちょっと)にも関わらず、性能はなんと4割も低下します。GTX 1650の価格を考えると、価格は14,000円未満でないと選択肢には入りません。

AMD:Radeon RX

次にAMDのRadeonです。

GPU 希望
小売価格
国内予測
適正価格
市場価格
※2022年
7月25日時点
適正価格
との差
先月の価格
※2022年
6月24日時点
先月比
Radeon RX 6950 XT 1,049ドル ¥179,357 ¥159,800 -10.9% ¥162,800 -1.8%
Radeon RX 6900 XT 999ドル ¥163,037 ¥133,064 -18.4% ¥151,517 -12.2%
Radeon RX 6800 XT 649ドル ¥105,917 ¥117,480 +10.9% ¥122,400 -4.0%
Radeon RX 6800 579ドル ¥94,493 ¥107,980 +14.3% ¥113,300 -4.7%
Radeon RX 6750 XT 549ドル ¥89,597 ¥73,800 -17.6% ¥83,580 -11.7%
Radeon RX 6700 XT 479ドル ¥78,173 ¥67,480 -13.7% ¥67,480 ±0.0%
Radeon RX 6650 XT 399ドル ¥65,117 ¥54,480 -16.3% ¥59,280 -8.1%
Radeon RX 6600 XT 379ドル ¥61,853 ¥49,800 -19.5% ¥52,000 -4.2%
Radeon RX 6600 329ドル ¥53,693 ¥37,800 -29.6% ¥42,979 -12.1%
Radeon RX 6500 XT 199ドル ¥32,477 ¥24,800 -23.2% ¥25,800 -3.9%
Radeon RX 6400 149ドル ¥24,317 ¥18,780 -22.8% ¥19,980 -6.0%

AMDのRadeonも先月からほぼ全てのモデルが値下がりしています。AMDからはNvidiaのようにハイエンドモデルの値下げの発表は確認できていないですが、RX 6900 XTは大きく価格を下げています。

ですが、「RX 6800」と「RX 6800 XT」については未だに適正価格よりも大幅に高い状況です。「RTX 3080」が現在では10万円台で買える今、需要的にこの価格では怪しい気もするのですが、中々下がりません。どちらも電力効率が非常に良くてマイニングで人気だったモデルなので、今でも多少その需要があるということなのでしょうか。ただし、海外では7月からこの二つも大きく値下がりしているようなので、やや価格反映が遅い日本では来月に大きく値下がりしてくる可能性もあるかもしれません。

全体の価格としてRX 6800 / RX 6800 XTの二つを除く全てのモデルが予想適正価格を下回っています。先に述べた通りRX 6800 / RX 6800 XTは未だに予想適正価格を大きく上回っており、どちらもRTX 3080 10GBより高価という状況です。競争力的にはどう見ても微妙です。原因は先のマイニング関連のことと、AMDのRadeonの供給量がGeForceと比べると少ないっぽいので、RTX 30シリーズと違い新品在庫が単純に多くないため、大きく値下げしてまで売る必要を販売側が感じていないなどが考えられるかもしれません。何にせよ、もう少し値下がりしないとRTX 3080の方がコスパは良いです。

ただし、その他のモデルは全て予想適正価格を10%以上下回っており、傾向はGeForceと似たような分布になっていると思います。

適正価格を最も下回っているのは「RX 6600」で、29.6%も下回っています。性能こそ上位には劣るものの、コスパも電力効率も全GPU中でも非常に優れている非常に魅力的なモデルなのですが、あまり人気が無いようです。ミドルレンジ以下は次世代GPUでも登場が遅いですし、これだけの効率のGPUならある程度の競争力を保てると思うので、今コスパ&安さ重視で買うなら特におすすめできるモデルです。また、RX 6600 XTも19.5%と大きく適正価格を下回っており、効率やコスパはRX 6600に近いものがあるので、こちらもおすすめできます。

GeForceとRadeonの価格比較

競合しているNvidiaのGeForceとAMDのRadeonについて、同価格帯のGPUがどれなのかが分かり易いように表にまとめています。結構雑に置いてるので、そこはご了承ください。

GeForce 価格
(2022年7月時点)
Radeon
RTX 3090 Ti 220,000円
RTX 3090 190,000円
160,000円 RX 6950 XT
RTX 3080 Ti 150,000円
130,000円 RX 6900 XT
RTX 3080 12GB 120,000円
110,000円 RX 6800 XT
RTX 3080 100,000円 RX 6800
90,000円
RTX 3070 Ti 80,000円
75,000円
RTX 3070 70,000円 RX 6750 XT
RTX 3060 Ti 65,000円 RX 6700 XT
60,000円
55,000円 RX 6650 XT
50,000円 RX 6600 XT
RTX 3060 45,000円
40,000円
RTX 3050
RTX 2060
GTX 1660 Ti
35,000円 RX 6600
30,000円
GTX 1660 SUPER 25,000円 RX 6500 XT
GTX 1650
GTX 1630
20,000円
15,000円 RX 6400

現在価格から見たコスパと電力効率

価格比較の次は、コスパと電力効率です。

Windowsのゲーム用の主要APIのDirectX 12(DX12)と、レイトレーシング用のDirectX Raytracing(DXR)の3DMarkのベンチマークスコアを利用し、2022年7月25日時点の価格を基に算出しています。

電力効率に関しては価格との関連性はないですが、購入の参考になる部分という事で載せています。

MEMO

DX12性能:3DMark Time SpyのGraphics Scoreです。DirectX 12(DX12)の1440pゲーミングのベンチマークスコアになります。新しめの3Dゲームで主流の方式(API)です。

レイトレ性能:3DMark Port Royalのスコアです。DirectX Raytracing(DXR)のベンチマークスコアになります。

コスパ:1円あたりの性能スコアです。小数点以下が多すぎて見難いので、各数値100倍して見易い数値にしています。

電力効率:1Wあたりの性能スコアです。

性能スコアの参考https://www.3dmark.com/

基本情報
GPU TDP DX12性能
(3DMark Time Spy)
レイトレ性能
(3DMark Port Royal)
RX 6950 XT 335W 22,236 10,946
RTX 3090 Ti 450W 21,977 14,844
RX 6900 XT 300W 20,062 10,365
RTX 3090 350W 19,932 13,641
RTX 3080 Ti 350W 19,608 13,297
RX 6800 XT 300W 18,792 9,545
RTX 3080 10GB 320W 17,692 11,564
RX 6800 250W 15,456 7,783
RTX 3070 Ti 290W 14,825 8,871
RTX 3070 220W 13,789 8,302
RX 6750 XT 250W 13,492 6,447
RX 6700 XT 230W 12,574 5,941
RTX 3060 Ti 200W 11,893 6,978
RX 6650 XT 180W 9,746 4,786
RX 6600 XT 160W 9,698 4,407
RTX 3060 170W 8,867 5,157
RX 6600 132W 8,065 3,779
RTX 2060 12GB 184W 7,996 4,443
RTX 2060 6GB 160W 7,661 4,152
GTX 1660 Ti 120W 6,403 1,654
RTX 3050 130W 6,278 3,605
GTX 1660 SUPER 125W 6,122 1,566
RX 6500 XT 107W 4,975 483
GTX 1650 GDDR6 75W 3,669
GTX 1630 75W 2,091
RX 6400 53W 3,496


コスパ(DX12)

コスパ(TimeSpy / DX12)
GPU コスパ
RTX 2060 12GB
21.9
RX 6600
21.3
RTX 2060 6GB
21.3
GTX 1660 SUPER
21.3
RX 6500 XT
20.1
RX 6600 XT
19.5
RTX 3070
19.2
RTX 3060
18.9
RX 6700 XT
18.6
RX 6400
18.6
RTX 3070 Ti
18.3
RX 6750 XT
18.3
RTX 3060 Ti
18.1
RX 6650 XT
17.9
RTX 3080 10GB
17.7
RTX 3050
17.5
GTX 1650 GDDR6
16.2
RX 6800 XT
16.0
RTX 3080 12GB
15.7
RX 6900 XT
15.3
GTX 1660 Ti
15.0
RX 6800
14.3
RX 6950 XT
13.9
RTX 3080 Ti
13.2
RTX 3090
10.6
GTX 1630
10.1
RTX 3090 Ti
10.0

恐らく現在最も主流であるDX12のコスパです。

最近かなり安くなってきている旧世代CPUがトップ層に多く並んでいます。いずれも4万円を切る安さのGPUということもあり、安さ&コスパ特化なら非常に魅力的な選択肢です。ただし、現在ではAV1デコードがRTX 30シリーズおよびRX 6000シリーズ(一部除く)でしか対応していないので、長期間利用想定の将来性という点ではやや劣る点は注意が必要です。GTX 16シリーズに関してはレイトレーシングアクセラレーションやDLSSに対応しない点も留意です。

最新世代GPUでトップ層に食い込んでいて魅力的なのは「RX 6600」です。レイトレーシング性能は低いですが、最新世代の機能を持っている上にコスパも電力効率も非常に良いので魅力的です。今安さ重視の長期間利用も想定するなら、頭一つ抜けて良いと思います。また、コスパは若干劣るものの「RX 6600 XT」も優れたコスパで電力効率も良く性能も一段上なのでそちらも良い選択肢だと思います。

そして、トップ層に続く「RX 6500 XT」は最新世代かつ非常に優れたコスパで魅力的に見えると思いますが、エンコード機能が無い上に、AV1デコードにも対応していないという罠っぽい仕様のGPUなので、正直おすすめしません。

他に気になるところでいうとやはり「RTX 3070」です。コスパも上位に位置している上、程良い高性能さと電力効率の良さを備えているのが非常に魅力的です。相変わらずの効率で人気のGPUは未だに強力です。今までは各項目で肩を並べている印象だった「RTX 3060 Ti」は、高騰具合が激しかった上に価格低下が他よりもやや緩やかだったため、相対的に位置を下げています。それでも良い部類ですし、電力効率が良いので強力なGPUだとは思いますが、今なら「RTX 3070」の方が総合的にやや上という印象です。

一応新しく追加された「GTX 1630」にも触れておくと、はっきり言って今のコスパでは検討する価値はないです。RTX 3090 Ti並みのコスパで、主流シリーズのどのGPUよりも低性能です。


電力効率(DX12)

電力効率(TimeSpy / DX12)
GPU 電力効率
RX 6900 XT
67.8
RX 6950 XT
66.4
RX 6400
66.0
RTX 3070
62.7
RX 6800 XT
62.6
RX 6800
61.8
RX 6600
61.1
RX 6600 XT
60.6
RTX 3060 Ti
59.5
RTX 3090
56.9
RTX 3080 Ti
56.0
RTX 3080 10GB
55.3
RX 6700 XT
54.7
RX 6650 XT
54.1
RX 6750 XT
54.0
RTX 3080 12GB
53.9
GTX 1660 Ti
53.4
RTX 3060
52.2
RTX 3070 Ti
51.1
GTX 1660 SUPER
49.0
GTX 1650 GDDR6
48.9
RTX 3090 Ti
48.8
RTX 3050
48.3
RTX 2060 6GB
47.9
RX 6500 XT
46.5
RTX 2060 12GB
43.5
GTX 1630 (50Wで計算)
41.8

DX12での電力効率です。価格が影響しないため前月とほぼ同じ内容です。

DX12の電力効率はRadeonが上位を占めています。トップは「RX 6900 XT」で、次点も「RX 6950 XT」です。残念ながら今は手を出しにくいハイエンドモデルではありますが、「RX 6900 XT」は価格がかなり大きく下がっているため、今ハイエンドモデルでとにかく効率の良いGPUが欲しいなら選択肢に入るかもしれません。ただし、やっぱり価格の高さとコスパを考慮すると中々選びにくいとは思います。

GeForceで上位に食い込んでいるのは「RTX 3070」と「RTX 3060 Ti」です。どちらもコスパも良いので、効率重視でレイトレ面なども含めた総合コスパを重視するならこのどちらかが最有力になると思います。ただし、2022年7月時点ではいえば大きく値下がりしている「RTX 3070」の方が若干上かなと思います。

また、TimeSpy(DX12)のコスパで上位に位置していた「RX 6600 XT」と「RX 6600」も優れた電力効率となっています。上で触れているGPUよりも安価なので、安さも重視した場合にはこの二つがやはりかなり強力だと思います。


コスパ(レイトレーシング)

コスパ(Port Royal / DXR)
GPU コスパ
RTX 2060 12GB
12.2
RTX 3080 10GB
11.6
RTX 3070
11.6
RTX 2060 6GB
11.5
RTX 3070 Ti
11.0
RTX 3060
11.0
RTX 3060 Ti
10.6
RTX 3080 12GB
10.4
RTX 3050
10.1
RX 6600
10.0
RTX 3080 Ti
9.0
RX 6600 XT
8.8
RX 6700 XT
8.8
RX 6750 XT
8.7
RX 6650 XT
8.4
RX 6800 XT
8.1
RX 6900 XT
7.8
RTX 3090
7.3
RX 6800
7.2
RX 6950 XT
6.8
RTX 3090 Ti
6.8
GTX 1660 SUPER
5.4
GTX 1660 Ti
4.6
RX 6500 XT
1.9
RX 6400
GTX 1650 GDDR6
GTX 1630

レイトレーシングコスパでは、性能で優位なRTXシリーズが上位を独占しています。今月は大きく値下がりした「RTX 2060 12GB」がトップとなっています。ただし、レイトレーシング性能自体が高くはないので、レイトレーシングならおすすめと言えるかは怪しいところです。

RTX 2060よりは、次にほぼ同率で続く「RTX 3080 10GB」および「RTX 3070」が本命だと思います。特に「RTX 3070」はTimeSpy(DX12)のコスパと電力効率でも優れた結果を示していたので魅力的です。この記事を書くたびに言っていると思いますが、RTX 3070は現行世代の総合コスパ最強のGPU筆頭だと思います。

Radeonでのトップは「RX 6600」となっています。Radeonでは唯一上位のGeForce群に食らいついています。ただし、RTX 2060と同様にレイトレーシング性能自体が高くないので、レイトレーシングならおすすめという感じには言えないかなと思います。


電力効率(レイトレーシング)

電力効率(Port Royal / DXR)
GPU 電力効率
RTX 3090
39.0
RTX 3080 Ti
38.0
RTX 3070
37.7
RTX 3080 10GB
36.1
RTX 3080 12GB
35.6
RTX 3060 Ti
34.9
RX 6900 XT
34.6
RTX 3090 Ti
33.0
RX 6950 XT
32.6
RX 6800 XT
31.8
RX 6800
31.1
RTX 3070 Ti
30.6
RTX 3060
30.3
RX 6600
28.6
RTX 3050
27.7
RX 6600 XT
27.5
RTX 2060 6GB
26.0
RX 6700 XT
25.8
RX 6750 XT
25.8
RX 6650 XT
25.6
RTX 2060 12GB
24.1
GTX 1660 Ti
13.8
GTX 1660 SUPER
12.5
RX 6500 XT
4.5
RX 6400
GTX 1650 GDDR6
GTX 1630

レイトレーシングでの電力効率です。価格に影響されない指標なので、前月とほぼ同じ内容です。

レイトレの電力効率はレイトレ用のコアが多く搭載されるハイエンドGPUほど良くなる傾向があります。レイトレは非常に高負荷な処理なので、メモリも高性能なハイエンドGPUの方が有利ということもあると思います。

レイトレーシング電力効率もレイトレーシング性能が高いRTXシリーズの方がRadeonよりも有利です。

ただし、旧世代の「RTX 2060」や、「RTX 3070 Ti」「RTX 3060」「RTX 3050」についてはレイトレの電力効率は良くない点は注意が必要です。この辺りは「RX 6600」や「RX 6800」などのRadeonの高効率モデルと大して変わらない電力効率なので、レイトレ面でもRadeonより優位とは言えなかったりします。

トップ2は「RTX 3080 Ti」と「RTX 3090」ですが、超高価格なので一般の人には基本的に選択肢から外れることを考えると、実質トップは「RTX 3070」となります。効率を見るとどこから見ても本当に魅力的なGPUです。

今GPUを買うべきなのか

今多くの人の頭を悩ませているであろうことは「今GPUを買うのはどうなのか」という点だと思います。次世代のGPUの方が確実に性能も電力効率も良いのだから待つべきという意見が多いとは思いますが、今は円安に加えアメリカの物価高によりAppleの値上げは既に実施されていますし、Intelからも値上げが発表されていたりなど、先行き的には怪しいところです。また、仮想通貨の価格が下がってもGPUの効率が向上すればマイニング収益は上がるはずですから、次世代GPUで効率が大幅に向上すれば、またマイニングブームが再来する可能性が来る可能性も無いとは言い切れません。そうなるとまた高騰する可能性もあります。

GPUが最も高騰していた時期には、最新世代を購入するよりも旧世代でも適正価格で購入していた人の方が明らかにお得だったケースも多くありましたし、必ずしも次世代を待って様子を見る事が安全とも言い切れないほど情勢は不安定です。

それらすべてを考慮して最善の選択肢を断定することは残念ながら不可能ですが、現状の状況を見て各価格帯においてGPUを購入することがどうなのか、ざっと触れておこうと思います。

ハイエンド:今は避けた方が無難

10万円を超えるレベルのハイエンドモデルを今購入するのはおすすめしません。具体的にいうと、GeForceならRTX 3080 10GBより上、RadeonならRX 6800 XTより上はおすすめしません。

理由の一つ目はトップ層のハイエンドGPUは非常に高価格のため、特に人気のミドルレンジやアッパーミドルクラスのGPUよりもコスパが大幅に悪いためです。次世代GPUは基本的にハイエンドモデルから順に登場しますから、旧世代化までの期間が最も短いので、すぐに更にコスパが悪化するのが目に見えているということもあります。

二つ目は消費電力が非常に多く、モデルによっては電力効率も良くないためです。ハイエンドモデルが消費電力が多くても競争力を保っていられるのは、そのトップクラスの性能の高さ故です。予算に糸目がなく、とにかく高性能なものが欲しい人は雑に選ぶ人も多いと思います。

しかし、当然ながら次世代GPUが到着すると、旧世代のハイエンドGPUはトップ層からは基本的に転落します。そうなると、性能が高いとはいえトップでないのに、消費電力はめちゃくちゃ多くいGPUが残ります。しかも、購入時の価格も非常に高いため、新しく到着したGPUと比べるとコスパはありえないくらい悪かったという事が基本の立場の推移になります。

今回のような情勢が不安定かつ特殊なケースを除いても、ハイエンドモデルは次世代GPUが控える状態ではおすすめできないという感じになり、今回もそのケースに漏れません。

RTX 3080 10GBやRX 6800 XTあたりはまだPC総額かた見たコスパは良いので、どうしても今ハイエンドゲーミングPCが欲しいのなら悪くない選択肢だとは思いますが、それ以上のモデルはよほど安くない限りは止める事をおすすめします。

ミドルレンジ中位まで:高コスパモデルなら悪くない

ミドルレンジモデルに関しては絶対待った方が良いということはなく、今欲しいのであれば普通に検討して良いと思います。

先月からほとんどのGPUが希望小売価格を下回る価格で販売され始めたため、今月は頭打ちとなる可能性も考えていましたが、価格は引き続き下落を続けています。どこまで下がるのか気になるところではありますが、現状の価格でも需要は保たれていると思うので、販売側が無理に売ろうとしない可能性もありますし、既に希望小売価格を大幅に下回るここから更に大幅な値下がりは見込みにくい気がします。実際、海外市場では既にミドルレンジの一部は価格低下が頭打ち状態になっているようです。

また、先に述べた通り次世代GPUはハイエンドモデルから順に登場する傾向があるため、ミドルレンジは旧世代化するまでの期間がやや長い可能性があります。モデルによりますが、ミドルレンジは代替モデルの到着には1年近く待つ可能性すらあると思います。少なくとも今年中に置き換えられる可能性はほぼないです。

それに、現在はミドルレンジGPUの価格がかなり安くなっておりコスパが良いですし、電力効率が良いモデルも多いです。特に効率的なモデルは旧世代でも現在でも需要を保っている「RTX 2060」「RTX 2060 SUPER」「GTX 1660 SUPER」などのように、生き残る可能性もあります。上述のコスパ・電力効率比較を踏まえると「RX 6600」「RX 6600 XT」「RTX 3070」あたりは特に優れた効率を提供しているので、魅力的だと思います。

このように、現在ではミドルレンジ帯の効率に優れたGPUは最も購入しても後悔しにくいと思います。ただし、先のことを正確に予測しての見解ではないので、あくまで参考程度にしてください。購入するべきとか待つべきかというよりも、購入しても価値が大きく落ちる可能性が低い程度のものと考えてください。

ミドルレンジ下位~:将来的には微妙だけど、安さ特化で割り切れるならあり

ミドルレンジ下位クラスは、RTX 3050やRX 6500 XTなど一部のモデルを除き、ほとんどが旧世代GPUで構成されています(主にGTX 16シリーズ)。

ここで注意しなければならないのが機能面です。旧世代GPUは機能面で最新世代に劣ります。特に、現在非常に低価格化が進んでおり検討していそうな人が多い「GTX 1660 SUPER」を含むGTX 16シリーズですが、ハードウェアのレイトレーシングアクセラレーションには対応せず、DLSSも利用できません。また、上記二つはライトゲーマーなら我慢できる部分だと思いますが、特に気になるのはAV1デコードがサポートされていない点です。AV1映像コーデックは、ロイヤリティフリーで現在恐らく最も将来性のある映像コーデックと言われており、YouTubeを含む主要な動画サイトでも採用が進んでいます。

現状ではAV1のみに対応した動画というのはほとんどないため困ることはないですが、長期利用を想定するなら後々にネックとなる可能性が出てきます。上述のレイトレーシングやDLSSの面も含め、将来性を考えての機能性は最新世代に大幅に劣る点は要注意です。

また、RX 6500 XTとRX 6400は最新世代GPUですが、AV1デコードには対応していないどころか、エンコードにすら対応していない点は要注意です。動画編集とかクリエイティブ用途向けの機能は切り捨てられており、ほぼゲーミング専用のGPUです。低価格帯でコスパも良いのに価格が大きく下がり続けている理由は、主にこのコーデック機能面のせいだと思います(各所のレビューでも結構酷評されていました)。

最新機能を一通り揃えているミドルレンジ下位クラスは「RTX 3050」のみというレベルです。ただし、かなり低価格化が進んだ「RX 6600」が同価格帯に割り込んできているので、「RTX 3050」も最適な選択とは言えない状況です。ですが、「RX 6600」はBTOやメーカー製PCではほとんど採用が見られないため、自作以外では「RTX 3050」が唯一の選択肢となることが基本だと思います。「RTX 3050」は最新世代の中ではコスパも電力効率も良くないので、出来れば予算をもう少し出して「RTX 3060」以上のモデルの方が良いとは思いますが、どうしても安くしたいならGTX 16シリーズよりはおすすめしたいモデルです。

ただし、おすすめしにくさを語った「GTX 1660 SUPER」も、現在最安約28,800円(2022年7月25日時点)と非常に安価で、従来のラスタライズでのゲーミング性能のみに焦点を当てるなら物凄くコスパが良い上に安く、1080p/144fpsをターゲットにするのにも丁度良い高性能さです。

最新世代で機能面で劣る点を考慮しても、従来のようなゲーミング性能さえあれば良くて安くコスパ良く仕上げたいという、割り切れる人なら考慮する価値はあるのかなと思います。

おわりに

現在GPU市場はぐんぐんと低価格化が進んでいます。ただし、希望小売価格から察するとそろそろ頭打ちになってきてもおかしくないので、まだ待った方が良いと言える期間はほぼ終わりに近いのではないかと思っています。

次世代GPUを待つか、今GPUを購入するかの検討するには一番最適な時期な気がします。ただし、情勢が色んな側面から見て不安定ですし、次世代GPUの具体的な性能がほとんど明らかになっていないので、「購入するべき/しないべき」ではなく、自分の欲求と用途と照らし合わせて後悔する可能性が低いと思う選択肢を選び取ることが重要だと思います。

その中で、最も可能性があるのはミドルレンジの高コスパモデルです。これらはすぐには次世代には取って替えられませんし、次世代が到着した後でも一定の需要を保つ可能性もあります。また、ミドルレンジというには高性能ですが「RTX 3070」も低価格が予想以上に進んでおり、7万円台前半で購入できるため魅力的です。安いとは言えなくなるものの、どの方面からの効率も現行世代では上位に入る優秀さなので、出来るだけ高性能かつ効率面でも良いものを導入したい場合には無難な選択です。

といった感じで、本記事の内容は以上になります。また来月にも同様の記事を投稿したいと思います。

4 COMMENTS

furupon

多角的な視点で、とても参考になります。
大変わかりやすいです。
予算的にはミドルレンジを狙っていますが、この記事みて RX6600 あたりをポチる一歩手前です。

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とねりん:管理人

コメントありがとうございます。ミドルレンジのRX 6600良いですよね。RTX 3050が正直微妙なので、3万円台では一択レベルかなと感じます。

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ななしさん

毎月のまとめありがとうございます。大変参考になります。
NVIDIA:GeForce欄の下から7行目あたりに “やはり魅力的なのはコスパも電力効率も良い「RTX 3070」および「RTX 3070」です。”となっておりますが、実際はRTX3070とどのモデルでしょうか。
お時間あれば、ご回答よろしく願い致します。

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とねりん:管理人

コメントありがとうございます。励みになります。
該当部分について誤記申し訳ありません。正しくはRTX 3060 Tiですね。修正いたしました。

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