Intel 「Lunar Lake」モバイルプロセッサーを発表(Core Ultra 200Vシリーズ)

IntelはCOMPUTEX TAIPEI 2024にて、新しい「Core Ultra 200V(コードネーム:Lunar Lake)」モバイルプロセッサーシリーズを発表しました。

TSMC 3nmプロセスノード採用、ハイパースレッディング(1コア=2スレッド)の廃止、メモリをパッケージに統合、AI性能の大幅強化など、初代のCore Ultraに引き続き、多くの刷新が含まれる注目のプロセッサーとなっていましたが、本記事ではその概要についてざっくりと触れています。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2024年6月5日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

ざっくり要点まとめ

Core Ultra 200Vシリーズ(Lunar Lake)の要点

今回の発表では具体的なラインナップは公開されませんでしたし、要点は上記でほぼ触れたため、多く語れることはないですが、雑感的なのを少しだけ後に続けます。


かなり良さそうで、「Ryzen AI 300」や「Snapdragon X」よりも魅力的に見える

発表内容を一通りざっと見た印象は「かなり良さそう」です。

既に詳細も明らかになっている「Snapdragon X」や「Ryzen AI 300」と比べても、グラフィック性能はSnapdragonには大きく有利、Ryzenにはやや有利に見えますし、AI性能もNPU単体なら同等ですが、GPU側のAIエンジンも考慮するなら圧倒的に上回っています。

コアについては「4P + 4E」という、競合では10コア~12コアが主流な中で弱い印象を受けましたが、Eコアが第13世代のPコア以上の性能というのが本当なら、薄型の汎用PCとしては十分な処理性能が得られるはずなので、そこまでネックでも無さそうでした。

競合に対してやや劣っている印象もあった省電力性もかなり改善されたように見えますし、注目度の高い「AI性能」で上回っているのも大きな要素だと思います。


少し気になるのは価格とマルチスレッド性能

価格について

「Lunar Lake」の全体的な仕上がりの印象は良さそうですが、気になる点は少しあります。まずは価格です。

「Lunar Lake」はパッケージの大部分を占めるコンピュートタイルにTSMC 3nmを採用しています。最先端のものなので当然コストは高いと思われます。

発売からそこまで期間の経っていない前世代「Meteor Lake」では、自社の「Intel 4(7nm)」をCPU部分に採用した上で、他のノードも最高は5nmでした。それでも「Ryzen 8040」と比べるとやや高価だったので、そこからTSMC 3nmの採用やXMXの搭載など、コストが増大しそうな要素が更に増えているということで、価格面は懸念があります。

ただ、「Lunar Lake」は「Meteor Lake」などのCore Ultraファミリー全体の後継ではないという話もあり、シリーズ名の「Core Ultra 200V」というのもそれを示唆しているにも見えます。

どのメーカーも「AI PC」に乗り遅れないように、急いでAIプロセッサーを用意した感は強いので、価格やコスパ重視の製品についてはこれから登場してくるのかもしれません。これについては続報を待つしかありませんが、高額モデルしかない内は、特に円安の日本においては手を出しにくい価格設定となりそうな気がします。

マルチスレッド性能:Ryzenが頭一つ抜ける形に?

次に気になるのは、マルチスレッド性能です。

「Lunar Lake」は、電力面やIPCを重視するためにPコアのハイパースレッディング(1コア=2スレッド)を廃止した上、合計コア数は8(4P + 4E)でコア数も大きく削減しました。競合の10コア~12コアよりも少なくなっています。

飛躍的なコアパフォーマンスの向上により、それでもモバイル端末向けの汎用プロセッサーとしては十分なパフォーマンス(Meteor Lake以上)を維持できてはいるようですが、純粋なマルチスレッド性能だけを見ると、前世代から大して伸びなかったとも捉えることができます。

となると、依然として全コアでSMT(1コア=2スレッド)が有効な「Ryzen」に対して、最大マルチスレッド性能では大きく劣ることになる気がします(「Ryzen AI 9 HX 370」は発表時に「Core Ultra 9 185H」にマルチタスクで+47%の優位性を主張していた)。

モバイル端末における一般用途では、現状では性能を大きく伸ばす必要は無くなっている感は確かにあるので、効率を重視するのは個人的には良い傾向だとは思いますが、マルチスレッド性能の高さやコスパを重視する層はある程度居ると思います。

その場合には1コア2スレッドの恩恵はやはり大きいですし、Ryzenの小型かつSMT採用の「Zen 4c/5c」はコスパがかなり良さそうに思います。Eコアのみの「Alder Lake-N」のように、小型のZen cコアのみ採用のモデルが登場すれば、安価で非常に競争力のあるSoCになる気がします。

Intelが低~中価格層を切り捨ててRyzen一強となるのを良しとするとは思えないので、直接の競合モデルはまた別で用意する、ということなのかもしれませんが、ただでさえプロセスの微細化で遅れを取っていたIntelがそんなことをして、開発コストや期間が大丈夫なのかなという懸念があります。

様々な要素が絡み合ってきている昨今のプロセッサー事情がどうなっていくのだろうと楽しみな反面、特に最近のモバイルプロセッサー市場は複雑で混沌とし過ぎている感が否めないので、命名規則も含めてもっとシンプルで、普段情報を追っていない人でも分かり易い形になって欲しいなとも思ったりしちゃいますね。


あとがき

「Lunar Lake」の発表で、ひとまずWindows向けのAI PC向けのモバイルプロセッサー3シリーズの情報が出揃いました。

最初に発表されたときは頭一つ抜けた印象のあった「Snapdragon X Elite」が、今ではそこまでの優位性を感じないレベルになっているのが、技術の進歩の早さを感じますね。

「Lunar Lake」の具体的なラインナップやアプリケーションやマルチスレッドの性能が明かされなかったため、3つの予測性能を比較するのが難しいのは残念ですが、そこ抜きでも需要がありそうだったら近い内に簡単な比較記事を出してみようかなと思います。

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