「Core i7-12700」と「Core i7-12700K」どっちが良い?【性能比較】

現在の高コスパなCPUとして人気の「Core i7-12700」と「Core i7-12700K」について、どちらが良いかを性能比較していきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年4月20日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

簡易比較表

今回比較する「Core i7-12700」と「Core i7-12700K」の仕様上の違いについて触れています。

まず始めに二つの簡易比較表を載せています。また、表の後に違いについて軽く説明していきます。

Core i7
1270012700K
コア数12(8P + 4E)
スレッド数20(16P + 4E)
動作
クロック
Pコア2.1GHz3.6GHz
Eコア1.6GHz2.7GHz
TB時最大Pコア4.8GHz4.9GHz
Eコア3.6GHz3.8GHz
TB Max3.0時4.9GHz5.0GHz
キャッシュ
メモリ
L212MB
L325MB
対応メモリ(最大)DDR5-4800 / DDR4-3200
GPUIntel UHD Graphics 770
※Fでは無し
TDPPL165W125W
PL2180W190W
対応ソケットLGA1700
対応チップセットIntel 600シリーズチップセット(Z690 等)

合計12コア(8P+4E)の高性能高コスパCPU

Core i7-12700と12700Kのコア構成は同じです。合計12コア(20スレッド)で、非常に優れたマルチスレッド性能を持つ高性能CPUです。コアは高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)の2種類が搭載されており、8P+4Eという構成になっています。

対抗のRyzen 5000シリーズのRyzen 7は8コアな上にやや古いCPUなので、各種性能はCore i7-12700(K)の方が大幅に上回っています。そのため、ゲーミングPCでは特に人気の性能・価格帯である「7」ではCore i7一択という状況になっています(コスパを重視するなら)。

そこで「Core i7-12700」と「Core i7-12700K」のどちらにしようかと悩む人が多いのかもしれないと思ったため、本記事を作成することにしました。

その他の詳しいことはこの後に触れていくのでここでは語りませんが、他の主要CPUとのざっくりとした比較も下記に載せているので、参考までにご覧ください。

※価格は2022年4月20日時点での参考価格です。

簡易比較
CPU名コア
スレッド
クロック
定格 / 最大
TDP
PL1
TDP
PL2
iGPUL3
キャッシュ
参考価格
Core i9-12900K16(8+8)
/24
3.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W241WUHD 77030MB約 74,000円
Core i9-12900KF16(8+8)
/24
3.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W241W無し30MB約 70,000円
Ryzen 9 5950X16/323.4 / 4.9GHz105W142W無し64MB約 85,800円
Core i7-12700K12(8+4)
/20
3.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W190WUHD 77025MB約 52,000円
Core i7-12700KF12(8+4)
/20
3.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W190W無し25MB約 50,000円
Core i7-1270012(8+4)
/20
2.1 / 4.8GHz
1.6 / 3.6GHz
65W180WUHD 77025MB約 46,000円
Core i7-12700F12(8+4)
/20
2.1 / 4.8GHz
1.6 / 3.6GHz
65W180W無し25MB約 42,000円
Ryzen 9 5900X12/243.7 / 4.8GHz105W142W無し64MB約 63,300円
Core i5-12600K10(6+4)
/16
3.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W150WUHD 77020MB約 39,000円
Core i5-12600KF10(6+4)
/16
3.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W150W無し20MB約 37,000円
Ryzen 7 5800X8/163.8 / 4.7GHz105W142W無し32MB約 47,800円
Core i5-124006/122.5 / 4.4GHz65W117WUHD 73018MB約 26,500円
Core i5-12400F6/122.5 / 4.4GHz65W117W無し18MB約 23,000円
Ryzen 5 5600X6/123.7 / 4.6GHz65W76W?無し32MB約 32,500円

違いについて

次に「Core i7-12700K」と「Core i7-12700」各違いについて、それぞれ抜き出して軽く説明しています。

Core i7-12700と12700Kの違いの要点
  • 価格:12700の方が少し安価(7,000円~8,000円程度)
  • クロック:12700Kの方がクロックが少し高い(処理性能が少し高い)
  • 消費電力:12700の方が消費電力が若干少ない
  • 付属クーラー:12700ではクーラーが付属する
  • オーバークロック:12700Kではオーバークロックが可能

価格:12700の方が少し安価

CPUの単体価格が、記事執筆時点(2022年4月20日)では以下のようになっており、12700の方が少し安価です。確認ショップはドスパラです。末尾にFが付いているものは内蔵GPUが無効化されているモデルで、CPUとしての性能は基本同じです。

Core i7価格(価格差)
12700K52,980円
1270045,980円
(-7,000円)
12700KF49,580円
12700F41,980円
(-7,600円)

通常モデルで7,000円、内蔵GPU無しのFモデルで7,600円ほど無印モデルの方が安くなっています。約15%程度K付きの方が高価という感じになっています。


処理性能(クロック):12700Kが少し高い

12700Kの方が無印よりも少しクロックが高く、処理性能は高くなっています。クロックの違いは下記のようになっています。

クロック比較
Core i7
1270012700K
定格Pコア2.1GHz3.6GHz(+1.5GHz)
Eコア1.6GHz2.7GHz (+1.1GHz)
TB時最大Pコア4.8GHz4.9GHz (+0.1GHz)
Eコア3.6GHz3.8GHz (0.2GHz)
TB Max3.0時4.9GHz5.0GHz (+0.1GHz)

クロックの違いは上記のようになっており、Pコアの場合は定格で1.5GHz、TB時最大で0.1GHz、Eコアの場合は定格で1.1GHz、TB時最大で0.2GHzほど12700Kの方が高くなっていることがわかります。コア構成が同じで電力設定も12700Kの方が緩いので、単純にクロックが高い12700Kの方が少し高性能ということになります。

ただし、最大クロックのみに目を向けると0.1GHz~0.2GHzしか差がないことがわかります。ここでポイントとなるのが、Alder Lakeでは電力設定が従来から変わり、冷却性が確保されている場合には常に全力で稼働できるようになった点です(詳しくは後述)。そのため、十分な冷却性が確保されていれば、高負荷時には最大クロックで常に稼働すると想定されるため、実は両者の実用でのクロック差はわずかです。


消費電力:12700の方が若干少ない

消費電力は無印の方が若干少ないです。電力設定は下記の表のようになっています(メーカーが使う名称が少し分かり難いので、一般的なTDPとして読み替えて載せています)。

電力設定比較
Core i7
1270012700K
TDPPL165W125W
PL2180W190W

電力設定は上記のようになっており、TDP(PL1)が65Wと125Wで60W差、TDP(PL2)で180Wと190Wで10W差となっています。

TDP(PL1)に大きな差があるため12700の方が大きく省電力にも見えると思いますが、実はAlder Lakeでは十分な冷却性が確保されている状況なら高負荷時にはPL1=PL2として稼働するので、PL1の数値は実は実質的には意味を持っていません。

そのため、65Wと125WのCPUと見るより、180Wと190WのCPUと見る方が適切です。

そして、180W~190Wという消費電力はCPUとしては非常に多い部類のものとなります。10W差しかなく、無印の180Wでも省電力とは到底呼べない数値となっています。Core i7-12700でも消費電力は非常に多いという点は留意しておく必要があります。

前世代まではPL2には最大の持続時間が定められており、その時間が使い果たされるとPL1に移行するという仕様でした。無印ではそのPL2の持続時間も短いという状況だったため、無印=省電力というイメージというか一般的な解釈が残っていたりします。ですが、12700のAlder Lakeでは無印でも省電力とは到底呼べない電力設定となっている点は勘違いしやすい部分だと思うので要注意です。


付属クーラー:12700ではクーラーが付属(BOX品)だけど、性能は微妙

単体販売のBOX品の話になりますが、12700ではクーラーが付属します。12700Kでは付属しません。

一見かなりお得に見える要素だと思いますが、正直CPUの付属クーラーの性能は単体販売のクーラーよりも圧倒的に性能に低いので、基本的にはそのまま使うことが推奨されません。一応使えないことはないくらい程度の性能で、冷却性能だけならまだしも、静音性にも難があることが基本なので、正直厳しいです。

ですが、一応Alder Lakeでは前世代までよりも付属クーラーが若干改善されているので、付属クーラーを使用した場合の性能もこの後の性能比較では見ていきたいと思います。


オーバークロック:K付き(12700K)は可能、無印では不可

Intel CPUでは、K付きのモデルではオーバークロックが可能ですが、Kの付かないモデルでは不可能となっています。

オーバークロックはCPUのクロックを規定値よりも高くすることで、通常よりも高い処理性能を実現できるものです。ただし、トラブルの可能性もありますし、かなり上級者向けの機能です。基本的にオーバークロックでトラブルが発生した場合は保証の対象外となっていますし、推奨しません。

そもそも、最近の上位CPUはオーバークロック無しでもクロックは非常に高いですし、消費電力も非常に多く、伸び代が微妙だったりします。レビュアーなどの方が興味本位でやることが恐らくほとんどであり、活用するために使う人はあまりいないです。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。第12世代のIntelプロセッサではより高速なDDR5も使用することができますが、今回のテストでは「DDR4-3200 CL14」メモリが採用されています。遅延が少ないためやや高価で高品質なメモリではありますが、基本の速度は一般的なDDR4メモリとなっています。

CPUクーラーは「Corsair H170i ELITE」が使用されています。ラジエーターサイズ420mm(140mm×3)のハイエンド水冷となっており、冷却性は十分となっています。また、今回は12700の付属クーラー「RM1」を使用した際のスコアも参考までに掲載しています(名前の横に明記しています)。

また、一部のベンチマークやテストではGPUも関係しますが、今回使用されたGPUは「Radeon RX 6900 XT」です。2022年4月現在では非常に高性能なハイエンドGPUです。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
1949
Core i7-12700
1883
Core i7-12700(付属クーラー)
1863

K付きが3.5%高速

シングルスレッド性能はK付きが約3.5%高速という結果でした。1コアのみの稼働だと電力制限は問題にならないので、単純に最大クロック差が性能に出ている感じになっているはずです。

1コアのみの稼働では全力でも発熱も大したことないので、付属クーラーでも性能差はごくわずかでした。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングでのテストです。

Cinebench R23 Multi
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
22784
Core i7-12700
21407
Core i7-12700(付属クーラー)
19714

K付きが約6.4%高速、付属クーラーだと大きめの性能低下

マルチスレッド性能ではK付きが約6.4%高速でした。少し差が出ているものの、約6,000円という価格差を考えるともう少し差がないとコスパ的にはKの方が不利という印象です。

また、マルチスレッドのレンダリングテストはCPU全体を使う非常に高負荷な処理で排熱も非常に大切なので、付属クーラーだと性能が結構大きめに落ちます。水冷クーラー使用時と比べると約7.9%の性能低下が見られます。

同じCPUでこれだけの差が出るのは勿体ないので、高負荷なCPU処理を頻繁に行う場合にはクーラーはしっかりしたものを用意したいです。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPS数を見ていきます。

今回は10種類のゲームで測定したFPSの幾何平均を見ていきます。使用されたGPUは「Radeon RX 6900 XT」です。その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

10種類のゲームでの幾何平均fps(1080p)
CPU名称fps
Core i7-12700KF
214
Core i7-12700
213
Core i7-12700(付属クーラー)
211

ほぼ同等のゲーミング性能

ゲーミング性能は12700の方がごくわずかにfpsが低下していたものの、ほぼ同等と言える誤差レベルの差でした。1fpsとか2fpsとかでも良いので高くしたい場合には意味はありますが、コスパ的なことを考えれば価格が安い分無印の方が良いです。

付属クーラーにした場合はわずかにfps低下が発生しますが、マルチスレッドのレンダリングテストと違い、必ずしもCPU全体が全力で稼働し続ける訳ではないので、CPUが特に重要なゲームでなければその差はほとんどありません。騒音や温度などの問題はありますが、性能のみに関して言えば、ゲーミングなら付属クーラーでもほとんど変わらないです。

圧縮・解凍(7-Zip)

ファイルの圧縮・解凍のパフォーマンスを7-Zipのベンチマークで見ていきます。

7-Zip 圧縮
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
82441
Core i7-12700
82173
Core i7-12700(付属クーラー)
81371

7-Zip 解凍
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
114691
Core i7-12700
110661
Core i7-12700(付属クーラー)
110609

圧縮ではほぼ同じで、解凍では約3.5%K付きが有利

ファイルの圧縮ではK付きでもほぼ性能は変わりませんでした。恐らくはKと無印の性能差が明らかになるほどCPUの使用率が高くないことが予想されます。

対して解凍ではK付きの方が約3.5%高いスコアを記録しました。差はわずかですが、優位性が確認できました。付属クーラーでもスコアに差が無かったので、CPU使用率自体は高くなく、クロック差が表れていると思われます。上述のシングルスレッド性能差とほぼ同じこともそれを裏付けています。


Adobe Premiere Pro 2021(動画編集ソフト)

動画編集のパフォーマンスをAdobe Premiere Proを用いるPugetのベンチマークスコアから見ていきます。Adobe Premie Proなどの高度な動画編集は非常に高負荷なのはもちろん、レンダリングや圧縮などとは異なり、シングルコアタスクとマルチコアタスクが混在しているためにさまざまなパフォーマンスが要求されます。GPUの性能も重要です。

Adobe Premiere Pro 2021
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
866
Core i7-12700
845
Core i7-12700(付属クーラー)
827

K付きが約2.5%高速

動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro 2021」のベンチマークでは、K付きが約2.5%高いスコアでした。少しでも高いスコアを求める場合には当然優位性がありますが、この差なら約15%の価格上昇を受けれ入れて導入価値があるかは微妙な気がします。


Adobe Photoshop 2022(画像編集ソフト)

画像編集のパフォーマンスを、Adobe Photoshopを用いるpugetのベンチマークスコアから見ていきます。シングルコアパフォーマンスが重要な処理です。

Adobe Photoshop 2022
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
1312
Core i7-12700
1289
Core i7-12700(付属クーラー)
1286

K付きが約1.8%高速

PhotoshopのベンチマークテストではK付きが約1.8%高速でした。差はごくわずかで、ほぼ同等と言っても良いレベルです。

また、シングルコアパフォーマンスが重要な処理で発熱も大したことないので、付属クーラーでも性能差はほぼありません。


Blender Open Data(レンダリング)

Blender Open Dataを用いたレンダリングの処理時間を見ていきます。マルチスレッド性能が重要な処理で、コア・スレッド数が多いほど有利になる傾向があります。数値が低い(処理時間が短い)ほど優秀な点に注意です。

Blender open Data
CPU名称スコア
Core i7-12700KF
636
Core i7-12700
655
Core i7-12700(付属クーラー)
735

12700KFが約3%短い時間で終了、付属クーラーだと大きめに性能低下

上述のマルチスレッド性能とやや被りますが、Blender Open Dataの処理時間は12700KFが約3%短かったです。若干の優位性はやはりあるものの、価格差を考えるとコスパは良くは感じないです。

また、やはりCPUにとって非常に高負荷な処理の場合には付属クーラーだと大きめの性能が低下し、水冷クーラーの場合よりも約12.2%処理に長く時間が掛かっています。


その他

消費電力・電力効率

ざっくりとした消費電力と電力効率を見ていきます。「Blender Open Data」を実行した際のもので、CPUの全コア稼働時のものです。数値はシステム全体のものとなっていますが、基本CPUのみで行う処理となっているので、ほとんどがCPUの使用電力となっているはずです。

電力効率は上述のベンチマークで掛かった時間と使用電力から算出した総消費電力の参考値になります。同じ量の処理した場合なら使用した電力が少ないほど電力効率が良いという感じです。ただし、元の電力がCPUだけのものでないので、効率も完全なCPUのものとはなっていない点に注意です。

消費電力・電力効率、共に数値が低いほど良い点に注意してご覧ください。

消費電力(Blender Open Data)
CPU名称消費電力
Core i7-12700
246W
Core i7-12700(付属クーラー)
260W
Core i7-12700KF
279W

電力効率(Blender Open Data)
CPU名称総消費電力(参考値)
Core i7-12700
16.1
Core i7-12700KF
17.7
Core i7-12700(付属クーラー)
19.1

「Core i7-12700」の消費電力は普通に多いので注意

「Core i7-12700」の消費電力は、システムの総使用電力とはいえ246Wと非常に多いです。到底省電力とは呼べないレベルで、最大限性能を発揮させたいなら冷却性能の高いクーラーが必要となりますし、電源容量にも注意を払わなければなりません。無印と第一に表記される65Wという数値に騙されないようにする必要があります。

K付きとの差は33Wとなっています。180Wと190Wという仕様上の数値よりはやや差が開いており、無印でも消費電力が多いという点は変わらないですが、K付きよりはやや少ない電力で稼働することがわかります。

また、付属クーラーを使用した場合は水冷クーラー使用時よりも少し消費電力が増加します。これは排熱が追い付かずにCPUやVRMの温度が想定より高い温度で稼働し続ける時間が長くなり、効率が低下してしまっているといった事が要因と考えられます。CPUクーラーの性能が低いと、CPUの温度が上がり処理性能が下がるだけでなく、消費電力も多くなってしまうことは知らない人も多いと思います。

電力効率は「Core i7-12700」の方がやや良い

使用電力はK付きよりも無印の方が約9%少なくなっており、電力効率は無印の方が良いことがわかります。処理性能のテストでは大きくても約6.4%差だったので(マルチスレッド性能)、やや無印の方が優位に見えます。価格もやや安価ですから、効率面を考えるならちょっとずつ無印の方が良いです。

付属クーラーを使用した場合には電力効率が大きく低下します。水冷クーラーを使用した場合と比べると使用電力は約19%も増加しており、電力効率に大きな悪影響を与えていることがわかります。より優れたVRMを搭載した高価なマザーボードを使用すればやや改善する可能性もあるとは思いますが、そもそもそれをするならクーラーを購入すれば良い話ですし、やはり付属クーラーの使用は出来れば避けた方が良いと思います。長期的に見れば電力料金に差が多少出るはずですし、それで後々数千円の不利益を生むくらいなら、始めからそこそこ良いクーラーを搭載した方が絶対に良いと思います。騒音などの面を考慮すると尚更です。

性能比較まとめ

ここまで各テストの性能を見てきました。そのテストを表にまとめて一覧にしています。基準を「Core 7-12700」の水冷クーラー使用時のものにし、相対的な差を載せています。

12700(基準)12700K12700(付属クーラー)
価格
※2022年4月20日時点
約 46,000円
±0%
約 52,000円
+6,000円 / +13%
約 46,000円
±0% / クーラー節約
マルチスレッド性能
Cinebench R23 Multi
±0%+6.4%-7.9%
シングルスレッド性能
Cinebench R23 Singe
±0%+3.5%-1.1%
ゲーミング性能
10種類のゲームの平均fps
±0%+0.5%-0.9%
圧縮
7-Zip
±0%+0.3%-1.0%
解凍
7-Zip
±0%+3.6%-0.0%
動画編集
Adobe Premiere Pro 2021
±0%+2.5%-2.1%
画像編集
Adobe Photoshop 2022
±0%+1.8%-0.2%
レンダリング時間
Blender Open Data
±0%-2.9%+12.2%
消費電力
Blender Open Data
±0%+13.4%+5.7%
電力効率
Blender Open Data
±0%-9.0%-15.7%

総評・結論

コスパ・電力効率を考えるなら「Core i7-12700(無印)」がおすすめ

上述の比較を見ると、「Core i7-12700」と「Core i7-12700K」は性能差はかなり小さいです。最も大きく差が出たのはマルチスレッド性能でしたが、それでも約+6.4%となっており、小さな差です。両者の価格差は約6,000円となっており、K付きの方が約13%高価だということを考えると、コスパは無印の方が勝っています。

また、電力面は無印の方が有利となっていて、K付きの方が消費電力は約13.4%(33W)も多く、電力効率も9%ほど悪いという結果でした。無印でも消費電力は決して少なくなく、クーラーや電源には注意を払う必要がある点は留意しなければなりませんが、電力面ではやはりK付きの方が不利でした。

上記のように、性能はわずかにK付きの方が有利ですが、コスパや電力効率では無印の方が優れています。性能差が大きく使用感を変えるほどのものなら別でしたが、わずかな差なので、やはり効率面で勝る無印の「Core i7-12700」の方がおすすめです。

ただし、やや大きな差が付いているのは電力面のみで、コスパ差はわずかですし、K付きの方が高性能なのは確かです。そのため、予算が少し増えることが問題でないなら正直K付きでも大して変わらないです。

とはいえ、予算が大きく増えることに問題でないならCore i9にした方が分かり易く性能がアップします。12700Kは素晴らしい性能ですし、十分に魅力あるCPUですが、「最良」を考えると以外と第一候補にはならないCPUかもしれません。

付属クーラー利用はおすすめはしません

「Core i7-12700(K)」のAlder Lakeでは付属クーラーが従来から少し改善されたようですが、やはり性能的にはまだまだです。高負荷な処理時には、水冷クーラー使用時と比べると1割前後もの差が出ますし、CPU温度が高く保たれてしまうことや騒音の問題も気になります。

更には、消費電力の増加や電力効率の悪化も招いてしまうので、おすすめしません。

性能だけを見れば、ゲーミングや軽い処理ではほとんど差はないので、重い処理をさほどしないなら使えないこともないですが、出来れば別のものを選択することをおすすめします。

搭載PC購入の場合はクーラーや電源には要注意

ここまではCPU単体での性能や仕様を見て意見を言いました。しかし、実際の消費者の方のほとんどはCPUを単体ではなく、PCにCPUが搭載されている状態でパソコンを丸ごと購入されると思います。

その際には、価格差もやや異なってくるのはもちろん、特にCPUクーラーや電源には注意が必要です。

CPUだけ違うように見えても、実はK付きの方は水冷クーラーだけど無印の方は小型の空冷だったり、電源もK付きの方だけ多かったりなどはよくあります。単純にCPUだけの比較ではなく、その辺りも含めての価格差で考えるようにしましょう。


といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

1 COMMENT

メロン

初めまして、コメント失礼します。
k付きにするか迷っていたのですが、おかげさまで決心つきました!
大変参考になる記事でした、ありがとうございます。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です