「Ryzen 5000」の追加モデルの仕様をざっくり説明【Ryzen 7 5800X3D 他】

今月追加されたRyzen 5000シリーズの追加モデルの仕様や特徴をざっくり説明しています。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2022年4月22日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

簡易比較表

まずは追加されたRyzen 5000シリーズ簡易比較表を載せています。既存のモデルも参考までに載せており、ピンク背景が今回追加されたモデルになります。

表の後にそれぞれ軽くですが説明しています。

※価格は2022年4月22日時点でのおおよその市場価格です。

簡易比較
CPU名 アーキ
テクチャ
シリーズ コア/
スレッド
クロック
定格 / 最大
TDP
PL1
TDP
PL2
内蔵
GPU
L3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 5950X Zen3 Vermeer 16/32 3.4 / 4.9GHz 105W 142W × 64MB 約 85,800円
Ryzen 9 5900X Zen3 Vermeer 12/24 3.7 / 4.8GHz 105W 142W × 64MB 約 63,300円
Ryzen 7 5800X3D Zen3 Vermeer 8/16 3.4 / 4.5GHz 105W ? × 96MB 約 65,300円
Ryzen 7 5800X Zen3 Vermeer 8/16 3.8 / 4.7GHz 105W 142W × 32MB 約 47,800円
Ryzen 7 5700X Zen3 Vermeer 8/16 3.4 / 4.6GHz 65W ? × 32MB 約 42,800円
Ryzen 7 5700G Zen3 Cezanne 8/16 3.4 / 4.6GHz 65W 88W Vega 8 16MB 約 41,800円
Ryzen 5 5600X Zen3 Vermeer 6/12 3.7 / 4.6GHz 65W 76W × 32MB 約 32,500円
Ryzen 5 5600 Zen3 Vermeer 6/12 3.5 / 4.4GHz 65W ? × 32MB 約 28,800円
Ryzen 5 5600G Zen3 Cezanne 6/12 3.9 / 4.4GHz 65W 88W Vega 7 16MB 約 28,800円
Ryzen 5 5500 Zen3 Cezanne 6/12 3.6 / 4.2GHz 65W ? × 16MB 約 23,300円

各モデル

Ryzen 7 5800X3D

主要スペック
CPU名称 Ryzen 7 5800X3D
アーキテクチャ
Zen3(Vermeer)
コア/スレッド 8/16
動作クロック 3.4GHz-4.5GHz
TDP 105W
L3キャッシュ合計 96MB
内蔵GPU 無し
価格
約 65,300円
※2022年4月22日時点

3D V-Cache搭載でCore i9-12900KSに匹敵するゲーミング性能

Ryzen 7 5800X3Dは、5800Xを元に3D V-Cacheを搭載し、合計L3キャッシュが96MBと超大容量になったモデルです。L3キャッシュはRyzen 9 5950Xでも64MBで、Core i9-12900Kなどでも30MBということを考えると、8コアで96MBがどれだけ異質かわかると思います。

そのキャッシュメモリのおかげ、Core i9-12900KSと同等のゲーミング性能を実現しており、Ryzen 5000シリーズでは頭一つ抜けたゲーミング性能発揮しており、唯一Alder Lakeにゲーミング性能で対抗できるCPUとなっています。

ただし、クロックは5800Xより下がってしまっているため、純粋なシングルスレッド性能やマルチスレッド性能は低下してしまっています。その大容量キャッシュを活かせる用途でしか強みは正直なく、ゲーミング特化のCPUとなっています。

価格も発売時約65,300円と8コアCPUとしては非常に高く、大きく値下げされた12コアのRyzen 9 5900Xの57,300円よりも高価なので、総合コスパでいえば正直良くないです。

電力効率もゲーミング以外では微妙なので、基本的には新規PCのCPUとして検討するのではなく、旧世代Ryzenのユーザーがマザーボードをそのままで出来るだけ高いゲーミング性能の高いCPUを導入したい場合くらいしか選択肢には入らないのかなという印象です(効率を考えるなら)。


Ryzen 7 5700X

主要スペック
CPU名称 Ryzen 7 5700X
アーキテクチャ
Zen3(Vermeer)
コア/スレッド 8/16
動作クロック 3.4GHz-4.6GHz
TDP 65W
L3キャッシュ合計 32MB
内蔵GPU 無し
価格
約 42,800円
※2022年4月22日時点

8コアにしては安価で省電力なRyzen 7

Ryzen 7 5700Xは、5800Xのクロックと消費電力が低くなった感じのモデルです。価格も発売時点で42,800円となっており、5800Xより安くお手頃なのが魅力です。

これまで消費者向けのZen 3のRyzen 7は、TDP105Wの5800XとAPU(内蔵GPU)搭載の5700Gしかなく、ゲーミングPC用の丁度良い省電力高コスパモデルというのが無かった状況がありました。それがかなり遅めに穴埋めされた形です。

ただし、価格は5800Xと比べると安くてコスパが良く見えますが、対抗のCore i7の12700Fが約43,500円(記事執筆時点)くらいなので同等です。5700Xは5800Xの下位モデルなので、12700Fにもほぼ全ての処理性能で大幅に負けてしまっています。

消費電力の少なさを重視する8コアCPUとして選ぶなら悪くないですが、総合コスパではCore i7-12700に正直敵いません。そのため、これもRyzen 7 5800X3Dと同じく、主に旧世代Ryzenユーザーが出来るだけ安く8コアCPUを導入したい場合に選ぶモデルになるのかなという印象です。


Ryzen 5 5600

主要スペック
CPU名称 Ryzen 5 5600
アーキテクチャ
Zen3(Vermeer)
コア/スレッド 6/12
動作クロック 3.5GHz-4.4GHz
TDP 65W
L3キャッシュ合計 32MB
内蔵GPU 無し
価格
約 28,800円
※2022年4月22日時点

3万円未満のRyzen 5

Ryzen 5 5600は、Ryzen 5 5600Xのクロックがやや低くなり、価格も少し安くなったモデルです。クロックは最大と定格で0.2GHz低くなり、価格は5600Xより約3,700円安いです。

元々Ryzen 5 5600Xは約4万円と非常に高価だったのが32,500円まで値下がり、28,800円の5600無印まで登場し、低価格ゲーミングPC用のRyzenがかなり導入しやすくなりました。

5600Xとの違いはクロックの違いのみと思われ、各種性能差も小さいので、単純にちょっと性能が下がっても良いから価格が安い方を選ぶか、ちょっと高くなっても良いから価格が高い方を選ぶかという話になると思います。

ただし、やはり対抗のIntelのCore i5-12400(F)の方が少し安価かつ高性能なので、若干不利かなと思います。ですが、コア数は同じ6で性能差は小さいですし、消費電力や発熱も少ないので、Ryzen 7よりは新規PC用として競争力がありそうな気がします。

旧世代Ryzenからの移行の場合でも、出来るだけ安くゲーミング性能を上げたいという場合には優れた選択肢になると思います。


Ryzen 5 5500

主要スペック
CPU名称 Ryzen 5 5500
アーキテクチャ
Zen3(Cezanne)
コア/スレッド 6/12
動作クロック 3.6GHz-4.2GHz
TDP 65W
L3キャッシュ合計 16MB
内蔵GPU 無し
価格
約 23,300円
※2022年4月22日時点

非常に安価な6コアCPUだけど、恐らくゲーミング性能は低いので注意

Ryzen 5 5500は2万円台前半で6コア12スレッドの高コスパCPUです。ただし、ここまで紹介してきたRyzen 5 5600やRyzen 7 5700Xとは設計が異なるため、ゲーミング性能が少し低いと思われる点に注意です。

ここまで紹介してきたのはVermeerというシリーズですが、Ryzen 5 5500はCezanneというシリーズになっており、これは元々内蔵GPU搭載のAPUモデルのものです。

そのため、Ryzen 5 5500は、Ryzen 5 5600XやRyzen 5 5600の類似モデルではなく、Ryzen 5 5600Gの類似モデルです。Ryzen 5 5600Gのクロックを下げ、内蔵GPUを無効化した感じのCPUになります。

この違いで特に気にしないといけない点は、「Cezanne」は高性能なGPUと搭載した際のゲーミング性能が「Vermeer」より少し低い点です。原因は恐らくキャッシュ容量で、5600や5600XはL3キャッシュが32MBありますが、5500は16MBとなっています。

Ryzen 7 57800X3Dを見てもわかるように、キャッシュ容量はゲーミング性能において結構重要なので、半減するのは痛いです。実際、同じ「Cezanne」のRyzen 5 5600GやRyzen 7 5700Gは、「Vermeer」よりも高性能なGPUを搭載した場合のゲーミング性能がやや低いことが既に確認されているため、恐らくRyzen 5 5500でも同様にゲーミング性能はやや低くなると思います。設計の違いもあると思いますが、やっぱりキャッシュ量の少なさが要因かなと思います。

ただでさえボトルネックを気にする必要がある性能帯なのに、それに加えキャッシュ量も少なく、クロックも低くシングルコア性能も低いのはやや致命的です。内蔵GPUが無効化され、低価格ゲーミングPC用にも思える売り方でこの仕様はちょっと意地悪だなと正直思います。

具体的な境界を挙げるのは難しいですが、GPUはRTX 3060くらいまでにした方が良いのかなという印象です。

その他

既存のRyzenが値下げされています

追加モデルの投入とほぼ同時に、既存のRyzen 9 5000が値下げされました。元々Intelの第12世代Coreシリーズ「Alder Lake」の登場で競争力を失った事をキッカケに値下がりしていたRyzenが更に安くなりました。対象モデルと価格は下記です。

CPU 元値 値下げ後
Ryzen 9 5950X 85,800円 79,800円
Ryzen 9 5900X 63,300円 57,300円

Ryzen 9が6,000円ずつ安くなりました。Ryzen 9に関しては電力効率が第12世代Coreに勝っていますから、特にマルチスレッド処理時の電力効率を重視する人には魅力的な価格になっているのかなと思います。

ただ、やはりゲーミング需要が物凄く大きいと思うので、そこが負けている以上は基本は第12世代Coreの方が良いと考える人が多いのかなと思います。


といった感じで内容は以上になります。

5800X3Dといったゲーミング特化の特殊なモデルはあったものの、やはり総合コスパではAlder Lakeには及ばない印象でした。他の廉価モデルについてはやはりゲーミング性能が負けているのが大きく、その上で他の性能も基本負けているので、競争力としては厳しいかなという印象です。次世代に期待したいと思います。

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