AMD Zen 5採用のモバイルプロセッサー「Ryzen AI 300シリーズ」を発表

AMDはCOMPUTEX TAIPEI 2024のオープニング基調講演にて、新しい「Zen 5」採用のモバイル端末向けプロセッサー「Ryzen AI 300シリーズ」(コードネーム:Strix Point)を発表しました。

本記事ではその概要についてざっくりと触れています。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2024年6月3日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

ざっくり要点まとめ

Ryzen AI 300シリーズ(モバイル端末向け)の要点

要点は上でほぼ触れたので、多く語ることはないですが、少し補足事項を下記に載せています。


初登場ラインナップ

7月の出荷が予定されている初登場ラインナップは以下の2モデルとなっています。

Ryzen AI 300(モバイル)の初登場ラインナップ
コア/スレッド最大クロックキャッシュNPUGPU
Ryzen AI 9 HX 37012コア/24スレッド5.1GHz36MB最大 50TOPSRadeon 890M(16CU)
Ryzen AI 9 36510コア/20スレッド5.0GHz34MB最大 50TOPSRadeon 880M(12CU)

CPUは10コアと12コアとなっており、競合となる「Snapdragon X(100)」の「10コア or 12コア」と合計コア数も同じです。「Snapdragon X Elite」に対してはAMDによる性能比較では優位に立っているので、搭載製品の価格次第ですが、より魅力的な選択肢となるかもしれません。

NPUは2モデルとも共通なので、NPU性能重視なら特に上位モデルにこだわる必要はありません。CPUもモバイル端末なら10コアあれば十分な場面が多いと思うので、主な決め手は内蔵GPUとなりそうです。


競合モデルとの性能比較(NPU以外)

発表時のスライドで、「Apple M3」「Snapdragon Elite」「Core Ultra 9 185H」との性能比較が示されていたので、そちらをそれぞれ表にまとめています。まずはNPU以外を見ていきます。

vs Apple M3
Ryzen AI 9 HX 370の優位性
3Dレンダリング
Blender
+98
マルチタスク
Cinebench 24 nT
+70
動画編集
Adobe Premiere Pro
+11
生産性
Procyon Office
+9

vs Snapdragon X Elite
Ryzen AI 9 HX 370の優位性
グラフィック性能
3DMark Night Raid
+60
マルチタスク
Cinebench 24 nT
+30
生産性
Procyon Office
+10
レスポンス
GeekBench 6.3 1T
+5

vs Core Ultra 9 185H
Ryzen AI 9 HX 370の優位性
3Dレンダリング
Blender
+73
マルチタスク
Cinebench 24 nT
+47
動画編集
Adobe Premiere Pro
+40
生産性
Procyon Office
+4

シングルスレッド性能に関しては小さな差ではあるものの、現状の競合モデルに対してはどの方面からも見ても優位に立っていることが示されています。

特に、マルチスレッド性能が重要な処理に関しては大きく差を付けていることがわかります。小型コアをSMTサポートありで運用できるメリットかなと思います。


競合モデルとの性能比較(NPU)

次にNPUのAI推論の性能比較です。

NPU 8-bit 性能
TOPS
3rd Gen Ryzen AI
50
Snapdragon X Elite
45
Intel Lunar lake(予想)
40-45
Apple M4
38
Ryzen 8040シリーズ
16
Core Ultra 100シリーズ(推定)
11

先に概要が発表された、Intelの次世代モバイル版プロセッサー「Nunar Lake」の予想性能も併せて比較した上で、NPU性能はトップに立っていることが示されていました。

しかし、上記の表はNPU単体での性能です。「Nunar Lake」ではGPU側にもAIエンジンが搭載される見込みであり、GPU側でも60TOPSのAI推論性能があると言われています。NPUの最大45TOPSと合わせると100TOPSを超えることになるため、合計AI性能ではダントツになります。

GPU側のAIエンジンの使われ方にもよりますが、NPU単体での差も「45 vs 50 TOPS」とわずかですから、AI面だけで見れば正直「Lunar Lake」の方が大分魅力的に見えます。

一応、AMDでもデスクトップ向けのディスクリートGPU「Radeon RX 7000シリーズ」ではAI用の「AI Accelerator」が搭載されていたので、技術的には不可能ではないと思うのですが、今回の発表では特に触れられていなかったように思うので、恐らく搭載されていないものと思われます。コストとの兼ね合いで見送った可能性もありますが、今後の対応が気になるところです。

何にせよ、これで「Copilot +」のローカル動作の要件である40TOPSを、主要メーカー全ての次世代SoCのNPUがクリアすることになりました。正直、急ごしらえだった感は否めないと思いますし、そこまでして対応する必要があるものだったのかも少し疑問を感じますが、PCのAI対応は急速に進んでいることは間違いないですね。


最近のモバイル版SoCは色んな方面で性能向上がめざましいので、見ていて楽しいですね。AI分野の影響も気になるところですし、発売を楽しみに待ちたいと思います。

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