段々搭載製品が増えてきているモバイル版の第12世代Coreプロセッサー「Alder Lake」を今更ながらざっくりと見ていきたいと思います。
本記事の内容は記事執筆時点(2022年4月13日)のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。
概要
まずは概要です。Alder Lakeと前世代との違いについて、基本情報を比較しています。
第12世代 Alder Lake | 第11世代 Tiger Lake | |
---|---|---|
プロセス | 10nm | 10nm |
コア構成 | 高性能コア(Pコア)+ 高効率コア(Eコア) | 高性能コアのみ |
コア | 5~14 | 2~4 |
スレッド | 6~20 | 2~8 |
消費電力 (TDP) | H:45W~115W P:28W~64W U:15W~55W | H:45W(PL1) G4 / G7:12W~28W(PL1) |
内蔵GPU | Xe Graphics 最大96EU | Xe Graphics 最大96EU |
対応メモリ (最大) | DDR5-4800 / LPDDR5-5200 DDR4-3200 / LPDDR4x-4267 | DDR4-3200 / LPDDR4x-4267 |
L3キャッシュ | 8MB~24MB | 4MB~24MB |
高効率コア(Eコア)の追加
Alder Lakeでの非常に大きな変更点は、高効率コア(Eコア)の追加です。従来は全てのコアがほぼ同じ仕様のものでしたが、Alder Lakeでは高性能コアと高効率コアの2種類が存在する異種コア混在仕様になりました。これによりコア数が大幅に増加し、マルチスレッド性能が飛躍的に向上している点がAlder Lakeの最大の魅力です。また、Pコアの性能も前世代より向上しているとされており、あらゆる面で前世代を大幅に上回る性能となっていると思われます。
ただし、Alder Lakeの高効率コアは、その処理性能はSky Lake(第6世代)と同等程度と言われており、今となっては低性能な点は注意です。また、ハイパースレッディングにも対応しておらず、1コア1スレッドです。そのため、マルチスレッド処理時の性能や電力効率も良くありません。
そのため、たとえば、Alder Lakeの12コアCPUが、Tiger Lake(第11世代)の4コアCPUの3倍の性能があるかというと、基本的にそこまでの差はないため注意です。コア数の内訳を気にする必要があります。ただし、Pコア自体の性能も向上していますし、Pコアの数は基本前世代からほぼ変わらず(変わっても1~2程度)で、Eコアの数は大きく増えているので、マルチスレッド性能は前世代比なら基本的に2倍以上になっており、飛躍的な向上であることは間違いないです。
具体的なコア数を、基本電力が28Wの主流となると思われるモデルで比較すると、Alder Lakeの「Core i7-1260P」が12コア16スレッドなのに対し、Tiger Lakeで主流モデルの一つだった「Core i7-1165G7」が4コア8スレッドだったことを考えると、コア数は3倍、スレッド数は2倍になっています。細かい性能比較を見ずとも、マルチスレッド性能が大きく向上していることが予測できます。
この飛躍的なコア数の向上により、前世代では対抗のRyzen(最大8コア)にマルチスレッド性能で明らかに負けていたという点が解消されています。これから直接競合するRyzen 6000シリーズにも、少なくともマルチスレッド性能では大きく上回っていることが確実です。
また、下位モデルに目を向けてみると、Tiger LakeではCeleronの最下位モデルが2コア2スレッドだったのに対し、Alder LakeではCeleronでも5コア(1P+4E)搭載の6スレッドとなっており、性能が大きく底上げされていることがわかります。従来ではCeleronやPentiumは、軽作業前提でも複数処理が重なると重くなったりといったことが懸念されましたが、その不安が大幅に軽減されることを期待できます。
内蔵GPUは変わらず
CPU面では非常に大きな仕様変更となったAlder Lakeですが、内蔵GPUは前世代と同じXe Graphicsが搭載されています。EU(実行ユニット)数の最大96というのも同じです。その性能はゲームでは軽いものなら快適にプレイすることが出来ますが、重いゲームは変わらず厳しいです。
ただし、Alder Lakeでは従来のDDR4より大幅に帯域幅が広いDDR5 メモリに対応したため、DDR5を採用した場合にはやや大きく性能が向上する可能性はあります。とはいえ、GPU自体は同じなので、DDR4採用の場合には性能向上はわずかだと考えられる点は注意です。内蔵GPUを利用したい場合には、モデルに加えてメモリにも注意を払うと良いです。
また、唯一Core i3は前世代では48EUだったのが64EUへと少し増えているので、前世代よりも性能が向上しています。CPUのコア仕様も含め、Alder Lakeは下位モデルのCPUの性能が大きく底上げされているのが地味に大きい点かもしれません。
末尾にPが追加され、Uが復活
性能に関わる面以外で変わったところを挙げると、末尾があります。
前世代のTiger Lakeでは、内蔵グラフィックスのグレードを表す「G4 / G7」と、高性能モデルの「H」シリーズの二つが使われていましたが、Alder Lakeでは少し変わりました。Hシリーズについてはそのまま続投ですが、「G4 / G7」は廃止されました。
そして、10世代まで省電力な主流モデルとして使われていたUシリーズが復活し、HシリーズとUシリーズの中間にあたる、Pシリーズが追加されました。
各シリーズの立ち位置は、Hシリーズが高性能モデル、Pシリーズが中性能モデル、Uシリーズが省電力モデルという感じです。電力設定はHシリーズが「45W – 115W」、Pシリーズが「28W – 64W」、Uシリーズが「15W – 55W」という感じになっています。Tiger LakeおよびIce Lakeの「G1~G7」といったものより分かり易くて良いと思います。
余談:Eコアのサイズ
最後に余談ですが、これまでコア数増加に苦労していたIntelが急になぜコアをたくさん追加できたかというと、EコアがPコアよりも遥かに小さいスペースで実装できる点が大きいと思われます。設計画像を見る限りでは、Pコア1つのサイズでEコアが4つ実装されているように見え、非常にコンパクトです。これにより多くコアを搭載できるだけでなく、コアあたりの必要となる半導体も少なくなり、コスト面でも非常に大きい利点になっていると思われます。
AMDよりもプロセス微細化や電力効率向上に苦戦している様子が見えたIntelですが、省スペースで低電力・低クロックで動作するコアを多く追加するという、予想外の方法でそこへ対応してきました。
処理性能
各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。ただし、まだ搭載製品が少なくデータが少ないため、参考程度に見てください。
各ベンチマークサイトから登録されているものを少しだけ載せています。各製品の電力設定や搭載メモリなども異なり、製品ごとに性能に多少性能差が出る点にも注意です。
CPU総合性能(PassMark)
CPUの総合性能テストである「PassMark Performance Test 10.2」の「CPU Mark」のスコアを見ていきます。純粋なマルチスレッド性能テストではないようですが、マルチスレッド性能(コア数・スレッド数)が強く影響するテストとなっています。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-12900H | 30605 |
Core i9-12900HK | 29512 |
Core i7-12700H | 27079 |
Ryzen 9 6900HS | 24820 |
Core i5-12500H | 23619 |
Ryzen 9 5980HX | 23402 |
Core i5-1250P | 23120 |
Core i7-1270P | 22842 |
Core i9-11900H | 21618 |
Core i7-11800H | 21447 |
Ryzen 7 5800U | 18852 |
Ryzen 5 5600U | 15299 |
Core i7-1265U | 12281 |
Core i5-1235U | 11119 |
Core i7-1165G7 | 10604 |
Core i5-1135G7 | 10116 |
主流モデルは前世代から2倍以上の向上
全体的に前世代から飛躍的に性能が向上していることがわかります。やはりEコアの大量追加が大きいです。
前世代では主流モデル(例:Core i7-1165G7 等)は4コアだったのが、Alder Lake-Pでは12コア前後となり、その性能は飛躍的に向上しています。ただし、追加されたEコアはPコアよりもコア自体の性能は低いため、コア数が3倍になっても性能は3倍までにはならない点に注意です。Core i7-1165G7とCore i7-1260Pとの比較では2倍ちょっとくらいの差となっています。それでも物凄く大きい性能向上です。
この飛躍的な性能向上によって、Ryzenに対してマルチスレッド性能で負けていた弱点が解消されました。今までは省電力モデルではRyzenの方が明らかにコスパも電力効率面でも良いという状況がありましたが、それが改善され競争力を取り戻したと言えると思います。
ただし、15W~55Wの末尾Uの省電力モデルではPコアの数が少ないため性能がガクッと落ちる点は要注意です。コア数が10のCore i7-1265UやCore i5-1235Uでも、Pコアは2つしかなくEコアが8という構成になっています。そのため、10コアながらCPU全体としての性能は、前世代の4コアCPUに近いものとなっています。電力面での優位性は恐らく生まれると思いますが、性能面ではコア数に惑わされないようにする必要があります。
シングルスレッド性能
シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。
上述と同じようにPassMarkのCPU Markのスコアを見ていきます。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Core i9-12900H | 4022 |
Core i9-12900HK | 3928 |
Core i7-1270P | 3824 |
Core i7-12700H | 3741 |
Core i5-12500H | 3713 |
Core i5-1250P | 3619 |
Core i7-1265U | 3390 |
Ryzen 9 6900HS | 3386 |
Ryzen 9 5980HX | 3341 |
Core i5-1235U | 3335 |
Core i9-11900H | 3213 |
Core i7-11800H | 3140 |
Ryzen 7 5800U | 3095 |
Ryzen 5 5600U | 2934 |
Core i7-1165G7 | 2877 |
Core i5-1135G7 | 2727 |
Pコアの性能も大幅に向上
上位をAlder Lakeが占める形になっており、現状のノートPC向けCPUとしてはRyzenよりも大きくリードする形になっています。
どうしても数の多いEコアに目が行くAlder Lakeですが、Pコアの性能も前世代より大幅に向上しています。「Core i9-12900H」と「Core i9-11900H」を比較すると、Alder Lakeの方が約25%も高速です。プロセスルールの変わらない一世代差でここまで性能差が出ることは珍しく、劇的な変化を遂げています。
Pシリーズ(28W – 64W)
次に各シリーズ毎に見ていきます。まずはPシリーズです。恐らく最も採用率が高くなる主流シリーズだと思われます。電力設定は28W – 64Wとなっており、中性能帯という位置付けですが、従来の主流モデルよりも多めの電力設定となっています。
コア (P + E) | スレッド | クロック 定格 / 最大 | L3 キャッシュ | TDP PL1 – PL2 | 内蔵GPU (最大クロック) | Intel vPro | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i7-1280P | 14(6P + 8E) | 20 | P:1.8GHz / 4.8GHz E:1.3GHz / 3.6GHz | 24MB | 28W – 64W | 96EU 1.45GHz | Enterprise |
Core i7-1270P | 12(4P + 8E) | 16 | P:2.2GHz / 4.8GHz E:1.6GHz / 3.5GHz | 18MB | 28W – 64W | 96EU 1.40GHz | Enterprise |
Core i7-1260P | 12(4P + 8E) | 16 | P:2.1GHz / 4.7GHz E:1.5GHz / 3.4GHz | 18MB | 28W – 64W | 96EU 1.40GHz | Enterprise |
Core i5-1250P | 12(4P + 8E) | 16 | P:1.7GHz / 4.4GHz E:1.2GHz / 3.3GHz | 12MB | 28W – 64W | 80EU 1.40GHz | Enterprise |
Core i5-1240P | 12(4P + 8E) | 16 | P:1.7GHz / 4.4GHz E:1.2GHz / 3.3GHz | 12MB | 28W – 64W | 80EU 1.30GHz | Essentials |
Core i3-1220P | 10(2P + 8E) | 12 | P:1.5GHz / 4.4GHz E:1.1GHz / 3.3GHz | 12MB | 28W – 64W | 64EU 1.10GHz | – |
Eコアは全モデル8つ搭載
Pシリーズでは全モデル8つの高効率コア(Eコア)が搭載されています。これにより全体のコア数は、前世代の2~4から10~14へと飛躍的に増加しています。
Eコアの数でPコアの数の少なさを誤魔化しているようにも見えますが、前世代からPコアの数は基本変わっていない上、Pコア自体の性能も前世代より格段に向上しているので、仮にPコアだけで比較したとしても前世代は大きく上回ります。
Core i7 と Core i5 のコア数は基本同じ
前世代に引き続きですが、主流モデルではCore i7とCore i5のコア数は基本変わりません。12コア16スレッドです。Core i5だとキャッシュ量が削減されている他、クロックも少し低いため、Core i7の方が処理性能は上にはなるものの、モデルナンバーの印象ほど大きな性能差は生まれないと思われます。
ただし例外として、最上位モデル「Core i7-1280P」についてはPコアが2つ多い14コア20スレッドとなっており、一段高い性能を発揮します。電力設定とクロックこそ低いものの、HシリーズのCore i7と同じコア構成になっています。
Core i3 の性能が大きく底上げされる
Alder Lakeでは全モデル4コアか8コアのEコアが追加されており、大幅なマルチスレッド性能の向上は全モデル共通の事項ですが、性能の「向上率」というところで見ると、PシリーズのCore i3は物凄く大きく性能が上がっています。
前世代ではCore i3は2コア4スレッドという仕様でしたが、Alder Lake-PではEコアが8コア追加された10コア12スレッドという仕様になりました。Eコアの追加数がCore i5 / i7 と同じです。Pコアが少ないためコア数だけで比較はできないですが、Core i5 / i7は前世代からコア数が3倍なのに対し、Core i3は5倍です。
また、内蔵グラフィックスも前世代では実行ユニット数(EU)が48であったのに対しAlder Lake-Pでは64EUとなっており、地味に強化されています。
Core i3の前世代までの非力な印象は大きく解消されています。
電力設定は 28W – 64W と少し多い
恐らく前世代までの「Core i5-1165G7」等の主流モデルに置き換わると思われるAlder Lake-Pですが、電力設定は28W – 64Wとやや多めです。
ただし、これがバッテリー消費が増えることを示すとは言えない点は留意です。処理性能が高くなれば処理に掛かる時間が短くなるため、電力効率やアイドル時の電力消費さえ悪くなっていなければ、バッテリー消費が増えるとは限りません。
その辺りの細かな部分はわからないですが、一足先に出ているデスクトップ版のAlder Lakeでは電力効率が大きく改善していたので、モバイル版では悪くなるみたいなことは無いのではないかと思います。
Hシリーズ(45W – 115W)
Hシリーズは、主にゲーミングノートPCやクリエイター向けPCなどの高性能ノートPCに搭載される高性能モデルです。
コア (P + E) | スレッド | クロック 定格 / 最大 | L3 キャッシュ | TDP PL1 – PL2 | 内蔵GPU (最大クロック) | Intel vPro | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i9-12900HK | 14(6P + 8E) | 20 | P:2.5GHz / 5.0GHz E:1.8GHz / 3.8GHz | 24MB | 45W – 115W | 96EU 1.45GHz | Enterprise |
Core i9-12900H | 14(6P + 8E) | 20 | P:2.5GHz / 5.0GHz E:1.8GHz / 3.8GHz | 24MB | 45W – 115W | 96EU 1.40GHz | Essentials |
Core i7-12800H | 14(6P + 8E) | 20 | P:2.4GHz / 4.8GHz E:1.8GHz / 3.7GHz | 24MB | 45W – 115W | 96EU 1.45GHz | Enterprise |
Core i7-12700H | 14(6P + 8E) | 20 | P:2.3GHz / 4.7GHz E:1.7GHz / 3.5GHz | 24MB | 45W – 115W | 96EU 1.40GHz | Essentials |
Core i7-12650H | 10(6P + 4E) | 16 | P:2.3GHz / 4.7GHz E:1.7GHz / 3.5GHz | 24MB | 45W – 115W | 64EU 1.40GHz | – |
Core i5-12600H | 12(4P + 8E) | 16 | P:2.7GHz / 4.5GHz E:2.0GHz / 3.3GHz | 18MB | 45W – 95W | 80EU 1.40GHz | Enterprise |
Core i5-12500H | 12(4P + 8E) | 16 | P:2.5GHz / 4.5GHz E:1.8GHz / 3.3GHz | 18MB | 45W – 95W | 80EU 1.30GHz | Essentials |
Core i5-12450H | 8(4P + 4E) | 12 | P:2.0GHz / 4.4GHz E:1.5GHz / 3.3GHz | 12MB | 45W – 95W | 48EU 1.10GHz | – |
Pコアの最大数が6
前世代のHシリーズではコア数が最大8でしたが、Alder Lake-HではPコア最大数が6になり、Eコアが追加される代わりにPコアが2つ減らされる形になっています。
Alder LakeではPコアの性能も大きく向上しているので、全体のパフォーマンスは前世代よりは大きく向上していますし、特にパフォーマンスの低下に繋がることはないと思いますが、Pコアの数が基本変わらなかったPシリーズより性能向上率は控えめになっています。
Uシリーズ(15W – 55W)
Uシリーズは省電力モデルです。消費電力や発熱が少ない仕様となっているので、主に薄型のノートPCやタブレットPCに採用されることになると思います。ただし、Pコアの数が少なく、処理性能は上位モデルより大幅に落ちるため、軽作業のみを意識したモデルとなっています。
コア (P + E) | スレッド | クロック 定格 / 最大 | L3 キャッシュ | TDP PL1 – PL2 | 内蔵GPU (最大クロック) | Intel vPro | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Core i7-1265U | 10(2P + 8E) | 12 | P:1.8GHz / 4.8GHz E:1.3GHz / 3.6GHz | 12MB | 15W – 55W | 96EU 1.25GHz | Enterprise |
Core i7-1255U | 10(2P + 8E) | 12 | P:1.7GHz / 4.7GHz E:1.2GHz / 3.5GHz | 12MB | 15W – 55W | 96EU 1.25GHz | Essentials |
Core i5-1245U | 10(2P + 8E) | 12 | P:1.6GHz / 4.4GHz E:1.2GHz / 3.3GHz | 12MB | 15W – 55W | 80EU 1.20GHz | Enterprise |
Core i5-1235U | 10(2P + 8E) | 12 | P:1.3GHz / 4.4GHz E:0.9GHz / 3.3GHz | 12MB | 15W – 55W | 80EU 1.20GHz | Essentials |
Core i3-1215U | 6(2P + 4E) | 8 | P:1.2GHz / 4.4GHz E:0.9GHz / 3.3GHz | 10MB | 15W – 55W | 64EU 1.10GHz | – |
Pentium 8505 | 5(1P + 4E) | 6 | P:1.2GHz / 4.4GHz E:0.9GHz / 3.3GHz | 8MB | 15W – 55W | 48EU 1.10GHz | – |
Celeron 7305 | 5(1P + 4E) | 6 | P:1.2GHz E:0.9GHz | 8MB | 15W – 55W | 48EU 1.10GHz | – |
コアのほとんどをEコアが占める
Uシリーズでは、全モデルコアのほとんどをEコアを占める形になっており、Pコアの数は上位モデルでも2しかない点に注意です。10コアというコア数ですが、コア数の割には低性能です。キャッシュもHとPシリーズでは12MB~24MBだったのがUシリーズでは8MB~12MBと大きく削減されています。
省電力モデルということで、完全に軽作業のみを見た割り切った仕様となっています。
正直コスパ的には疑問
Uシリーズは、発熱や消費電力は抑えられていると思うので、薄型のノートPCやタブレットPCには適したモデルにはなっていると思います。
ですが、処理性能は上位モデルより大きく劣るため、やはり性能差を考えるとコスパ的には疑問です。コアが少ない分コストは下がっているはずなので、その分本体価格も安くなっていれば全然ありだと思いますが、公式の希望カスタマー価格を見る限り、Pシリーズとほぼ同じ価格設定です。
10世代まで主流だったUシリーズには置いて欲しくなかった
個人的な意見になりますが、第10世代まではずっと主流だったUシリーズには置いて欲しくなかった性能です。1つ前の11世代では使われなかったので、明らかな悪意を感じるほどではないですが、前からCPUを見ている層からするとちょっとややこしいと思いました。
CPU(コア内訳) | 希望カスタマー価格 ※Intel公式HP参照 |
---|---|
Core i7-1260P(4P+8E) | 438ドル |
Core i7-1265U(2P+8E) | 426ドル |
Core i7-1240P(4P+8E) | 320ドル |
Core i5-1235U(2P+8E) | 309ドル |
Core i3-1220P(2P+8E) | 280ドル |
Core i3-1215U(2P+4E) | 280ドル |
上記はあくまで参考価格なので、実際の取引価格は異なる可能性も十分あると思いますが、仕様的にはPシリーズよりかなり大きく安くならないとお得感がないです。
もし価格差が上記のように小さいようなら、Uシリーズを使うくらいならPシリーズの電力設定を低めにして運用した方がコスパは間違いなく良いので、選択肢に入るケースは少ない気がします。
要点まとめ
最後に要点をまとめています。
- Eコア追加でマルチスレッド性能が飛躍的に向上Alder Lakeの最大の注目点はやはりEコアです。Pコアよりは低性能ながら省スペースで低消費電力動作のEコアが全モデルで追加されています。これにより総コア数が前世代から格段に向上し、マルチスレッド性能が飛躍的に向上しています。特に主流モデルは前世代の2~4コアから10~16コアと格段に増えており、その性能向上率は凄まじいです。対抗のRyzenに対するマルチスレッド性能での後れを一気に改善しました。
- Pコアの性能も大幅に向上Eコアに目が行ってしまいますが、Alder LakeではPコアの性能も前世代より大きく向上しています(Core i7-1165G7とCore i7-1265Pの比較だと約25%差)。そのため、シングルスレッド性能も大きく向上し、ここでもRyzenとの差を大きく広げています。
- 内蔵GPUは変わらず(ただし、DDR5採用で性能は向上するかも)CPU面では物凄く大きな変更があったAlder Lakeですが、GPUは前世代と同じIris Xe Graphics採用となっています(最大の実行ユニット数も同じ)。CPUの性能向上があるため内蔵GPUも少しは良い影響を受けるとは思いますが、元が同じなので大きな差にはならないと思います。ただし、Alder LakeではDDR4よりも帯域幅の大幅に広いDDR5メモリに対応したので、DDR5採用の場合にはやや大きめの性能向上を得ることは可能になるかもしれません。
- 下位モデルの性能が大きく底上げAlder Lakeでは、下位モデルの性能が大きく上がった点も地味に大きいと思います。前世代ではCore i3だと2コア4スレッドとなっていて非力さが気になりましたが、Alder LakeではPシリーズだと10コア、Uシリーズでも8コアとなっており、一気に非力さを感じさせない仕様となりました。内蔵GPUの実行ユニット数も前世代の48EUから64EUへと若干増えて強化されています。ちょっとでも重い処理になると不安があった今までから大きく進化しています。また、PentiumやCeleronでもEコアが追加された上にPコアがハイパースレッディング対応になり、大きく底上げされています。今までは「軽作業前提でも安定して快適に作業したいならCore i5以上」という認識でしたが、Alder Lakeからは少し変わるかもしれません。
- Pシリーズ(恐らく主流):28W~64Wで大体12コア主流になると思われるPシリーズは、全モデルEコアが8コア搭載される仕様となっています。根幹となるであろうCore i5とCore i7モデルは12コア(4P+8E)となっています。電力設定は従来よりやや高くなってしまったものの、その性能は従来より格段に向上し、従来のHシリーズ並みとなっているので、重い処理でも使えるレベルです。メーカー次第ではありますが、ミドルレンジ以下のビデオカードを搭載した、薄型のゲーミングノートやクリエイターノートなどにも適した仕様になっていると思います。
- Hシリーズ(高性能):45W~115Wで最大14コア前世代では最大8コアだったのに対し、Alder LakeではPコアが最大6コアとなっています。そのため、Pコアの数が基本変わらなかったPシリーズよりも性能向上率がやや控えめになっています。従来より優先度やお得度が少し下がっていると思いますし、主流のPシリーズが従来よりやや高い電力設定となっていることもあって、ゲーミングやクリエイター向けでもPシリーズ採用が増えそうな気がするので、相対的に採用が減りそうな予感がします。
- Uシリーズ(省電力):15W~55Wで最大10コアPコアが最大でも2しか搭載されないため、上位モデルよりも大きく処理性能が下がる点に注意です。たとえば、Core i5およびCore i7では、10コアながら2P+8Eという仕様です。消費電力や発熱面での優位性はあると思われるものの、処理性能差が非常に大きいので、よほど安くない限りはPシリーズより優先して選ぶ価値があるとは正直思えず、コスパ的には疑問を感じるシリーズです。元々主流だったUシリーズにこのやや微妙そうなシリーズを配置するのは正直止めて欲しかったです
といった感じで内容は以上となります。個人的には内蔵GPUを強化して欲しかったですが、CPU性能はめちゃくちゃ強力になり魅力的で、Ryzenに対して競争力を大きく取り戻す結果になったと思います。今はまだ搭載製品が少ないですが、これから魅力的な機種がたくさん出てくると思うので楽しみです。