【モバイル版】AMD 「Ryzen 4000」シリーズが発表

AMDが、遂に「Zen 2」アーキテクチャ搭載のモバイル版CPU(APU)のRyzen 4000シリーズを発表しました。搭載PC発売に先駆けて、その内容について軽く触れていきたいと思います。

注意
掲載の情報は記事投稿時点(2020年1月9日)での情報で、モバイル版Ryzen 4000シリーズ搭載のPCはまだ発売されていない時点のものとなりますのでご注意ください。搭載PCの発売は、末尾U(省電力モデル)は2020年第1四半期内(2020年1月~3月)で、末尾H(高性能モデル)は2020年第2四半期内(2020年4月~6月)と予告されています。(日本ではもう少し遅くなるかも)


簡易仕様表

とりあえず簡易仕様表を置いておきます。


末尾H(高性能モデル)
モデルコア/スレッド定格クロックブーストクロック(最大)GPU CUGPUコア数GPUクロックTDP
Ryzen 7 4800H8/163.0GHz4.2GHz74481600MHz45W
Ryzen 5 4600H6/123.0GHz4.0GHz63841500MHz45W

こちらは主に単体のGPU(グラボ)と組み合わせて、ゲーミングノートPCとして運用する事が想定されている高性能モデルです。Intel製品でいえば、同じ末尾H等(例:Core i7-9750H)が競合製品となります。

ゲーミング性能(高性能GPUと組み合わせ時)では、Core i7-9750Hより39%高いゲーミング性能を誇り、デスクトップ版のCore i7-9700Kをも上回ると発表していました。本当なら凄いです。

申し訳ないですが、モバイル版ではこちらの需要は限定的かつ小さいと思われ、末尾Uの省電力モデルが主流になるかと思うので、本記事では詳しくは割愛させていただきます。ご了承ください。


末尾U(省電力モデル)
モデルコア/スレッド定格クロックブーストクロック(最大)GPU CUGPUコア数GPUクロックTDP
Ryzen 7 4800U8/161.8GHz4.2GHz85121750MHz15W
Ryzen 7 4700U8/82.0GHz4.1GHz74481600MHz15W
Ryzen 5 4600U6/122.1GHz4.0GHz63841500MHz15W
Ryzen 5 4500U6/62.3GHz4.0GHz63841500MHz15W
Ryzen 3 4300U4/42.7GHz3.7GHz53201400MHz15W

本命はこちらです。詳しくは後述していきますが、TDP15Wで8コア16スレッドには目を見張りました。TDPは最大負荷時を想定したものではないので、正確な意味を持つものではありませんが、そのインパクトには期待してしまいます。

概要

ついに「Zen2」搭載

モバイル版でもついに、7nmプロセス採用の「Zen2」アーキテクチャ採用CPU(APU)が登場です。満を持して登場です。前世代のRyzen 3000シリーズでは、主に12nmプロセスが採用されていました。

プロセスルール
簡単にいうと、CPUの配線の幅のこと。小さい方がスペースに余裕が出来たり複雑な配線が可能になったりなど、基本的に良い事尽くめ。

同様のアーキテクチャが採用された、デスクトップ向け「Ryzen 3000シリーズ」は性能が爆発的に上昇したので、かなり期待が持てます。というか大幅な性能の向上は確約されたも同然と言って良いかと思います。


性能は大幅に向上

性能は大幅に向上する模様です。まぁこれは7nmプロセスルールの「Zen2」アーキテクチャに切り替わるという事で当たり前といえば当たり前ですね。「Core i7-1065G7」と「Ryzen 7 4800U」との比較では、マルチスレッド性能が90%上回っているとデータが示されました。本当なら、デスクトップ版のCPUと比較できるレベルの性能となります。

また、対応メモリー速度が3000シリーズのDDR4-2400(最大)から、DDR4-3200およびLP-DDR4-4266と大幅に向上しています。これだけでも性能の底上げを期待する事ができ、APUであるRyzenでは内蔵グラフィックにも大きな影響を与えると思われます。メモリー速度だけをみても、性能の大幅な向上は間違いなさそうです。


ワットパフォーマンスも2倍に?

AMDは、Ryzen 4000シリーズはRyzen 2000/3000シリーズよりも、ワットパフォーマンス(消費電力あたりの処理性能)が約2倍に向上したという発表がありました。+100%の向上率の内訳は、70%が7nmプロセスルールへの微細化によるもの、30%が最適化によるものという事でした。

現実的とは思えない向上率ですが、2019年11月末という最近に発売されたデスクトップ向けの「Ryzen 9 3950X」が、とてつもないワットパフォーマンスの良さを発揮したのが記憶に新しいです。なので期待せずにはいられません。仮に2倍とはいかないまでも、ここまでの事を言っている訳なので、かなり大幅な向上は間違いないなさそうです。

となると、現状の2 in 1 PCの主流CPUはIntelの末尾Uシリーズや超省電力モデルがほぼ全てを占めますが、その勢力図が変わる可能性も考えられます。

各性能について

性能について「Core i7-1065G7」と「Ryzen 7 4800U」についての相対比較データが示されました。以下の画像です。

引用:AMD

推定値なども算出して並べ、ざっと見ていきたいと思います。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、Cinebench R20で「Core i7-1065G7」より「Ryzen 7 4800U」の方が4%高い性能と示されています。下記に推定値や他の主要CPUと併せて載せています。

Cinebench R20 Single-Thread
CPUスコア
Ryzen 7 4800U
470.8(推定)
Core i7-1065G7
452
Core i5-8265U
399
Ryzen 5 3500U
362
Ryzen 7 3700U
343

弱点ではないくらいに向上

シングルスレッド性能は前世代よりは大幅に向上したものの、Intelとの差はほとんどつけれなかったという結果です。元は弱点だった部分が大きく改善されているので、現時点ではプラス評価となりますが、Intelが次世代CPUを出したときにはまた抜かれてしまいそうな気もします。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、Cinebench R20で「Core i7-1065G7」より「Ryzen 4800U」の方が90%高い性能と示されています。下記に推定値や他の主要CPUと併せて載せています。

Cinebench R20 Multi-Thread
CPUスコア
Ryzen 7 4800U
3144.5(推定)
Core i7-1065G7
1655
Ryzen 7 3700U
1499
Ryzen 5 3500U
1463
Core i5-8265U
1367

驚異的な向上率

にわかには信じがたい、驚異的な向上率となっています。デスクトップ版の「Core i7-9700」と同じか少し上程度の性能です。これがモバイル版の、しかも省電力CPUとは到底思えません。最近に性能目当てでCore i7やRyzen 7のノートPCを購入した人が知れば、かなりがっかりしそうな気がします。


内蔵グラフィック性能

内蔵グラフィック性能は、3DMark Time Spy Extremeで「Core i7-1065G7」より「Ryzen 4800U」の方が28%高い性能と示されています。下記に推定値や他の主要GPUと併せて載せています。

3DMark Time Spy 2560×1440
GPUスコア搭載CPU(例)
GTX 1050 Ti(デスク)
2568
単体
Radeon Vega ?
1201.9(推定)
Ryzen 7 4800U
Iris Plus Graphics G7
939
Core i7-1065G7
Radeon Vega 10
845
Ryzen 7 3700U
Radeon Vega 8
732
Ryzen 5 3500U
Intel UHD 620
407
Core i5-8265U

劇的という程ではないけど、着々と向上

ついにRyzenのAPUを追い抜いたぞ、と主張してきたIntelをあっさりと追い抜いてしまいました。参考に掲載した、デスクトップ用のGTX 1050 Tiにはまだ大きな差があるものの、かなり近づいてきました。最新ゲームでも設定を低くすればプレイできそうな気配はあります。

ただし、これは前世代から大幅に向上したメモリーの速度(2400MHz→3200MHz~4266MHz)の影響も大きいと思われるので、正直GPU自体の性能は大きく変わらないのではないかとも見れます。とはいえ、そうだったとしても、それもAPUの特徴の一つを活かした結果となりますし、内蔵グラフィック性能が着々と向上しているのは確かです。素晴らしいという他ないでしょう。

UHD 620等のグラフィック性能を大きくは重視していない内蔵GPUとは、かなり大きな差がついています。UHD 620でもゲームや3D描写を意識しなければ十分な性能なのですが、性能スコアでここまでの差がついてしまうと、選ぶのは損な気がしてしまいますね。


それでは、記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。

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