「Ryzen 7 7800X3D」ざっくり評価【性能比較】

「Ryzen 7 7800X3D」のレビューが解禁されたので、海外レビューを参考にざっくりと評価しています。また、グローバルでの発売日は4月6日(本日)ですが、日本国内での発売日は4月14日となっており、少し間があります。メーカーによる想定価格は71,800円です(米国価格:449ドル)。

大容量のキャッシュメモリ「3D V-Cache」を搭載し、Core i9よりも安価ながら優れたゲーミング性能を発揮するとされるゲーミングCPUの実力を見ていきたいと思います。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2023年4月6日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

概要

「3D V-Cache」搭載でゲーム性能の向上が期待

「Ryzen 7 7800X3D」は「Ryzen 7 7700 / 7700X」などと同じ8コアのZen 4 CPUに「3D V-Cache」と呼称するSRAMのL3キャッシュメモリが64MB追加されているモデルです。

元々CCDに持つオンダイのL3キャッシュ32MBと併せて、合計96MBのL3キャッシュとして利用可能になっています。

「3D V-Cache」搭載CPUは既にいくつか登場しており、それらのモデルでは元モデルよりもゲーミング性能において大きな向上が見られています。このゲーミング性能の向上がAMDの主な狙いであり、消費者にとっても注目するポイントです。

現状の「3D V-Cache」搭載以外のモデルのL3キャッシュは、ハイエンドモデルでも「Ryzen 9 7950X」で64MB、「Core i9-13900K」で36MBといった感じになっているため、「Ryzen 7 7800X3D」の合計96MBのL3キャッシュは大きな優位性があることがわかります。

既に「Ryzen 7000シリーズ」でも登場している「Ryzen 9 7950X3D」と「Ryzen 9 7900X3D」では合計128MBのL3キャッシュが搭載されているため、容量自体は劣るものの、これらのモデルでも「3D V-Cache」は一つのCCDに対して適用されており、ゲーム用には基本その一つのCCDが優先コアとして設定され使用されます。実質的にゲームに使われるキャッシュは96MBであり、「Ryzen 7 7800X3D」と同じです。そのため、「ゲームのみ」に限れば、より価格が安い「Ryzen 7 7800X3D」の方が優位とも取ることができます。

また、現状のゲーム性能は、テストなどの結果を見てもコア数は8コアあれば十分であるという傾向があり、Intelも第13世代CoreでPコアを最大8コアまでに設定しているため、これを肯定しています。

「Ryzen 7 7800X3D」が注目される理由はもう一つあり、それは純粋な8コアCPUである点です。現状のゲーム向けのハイエンドCPUは8コアを超えるものが基本ですが、上述のようにゲームに必要なのは8コアです。

これに対応するために、IntelはPコアを8コアまでに制限してゲーム用の優先コアとして設定したり、「Ryzen 9 7950X3D / 7900X3D」でも「3D V-Cache」搭載のCCD(8コア)を優先コアとして設定したりなどしていますが、これは処理やコア割り当てが複雑化しているとも言え、必ずしもシステムが最適に働くとは限りません。その上、8コアを超えるコアのコストについてはゲームに限れば無駄であるとも取れるため、8コアでより安価なゲーム特化型のCPUがあれば、そちらの方がゲーミングコスパは期待できます。

その点「Ryzen 7 7800X3D」は「Core i9-13900K」や「Ryzen 9 7950X3D」と比べると大きく安価ですし、過剰なコアも存在しないため、パフォーマンスが最大化される可能性が高くなることが期待できるため、ゲーム特化のCPUとしては最適な仕様と言えると思います。

マルチスレッド性能コスパはかなり悪い

「Ryzen 7 7800X3D」のゲーミング性能は注目ですが、マルチスレッド性能コスパは詳しく見るまでもなく、他の最新CPUと比べると圧倒的に悪いことが確定している点は要注意です。

「Ryzen 7 7800X3D」の発売時の想定価格は71,800円ですが、8コアのみを搭載するCPUとしては明らかに高いです。現状では16コア(8P+8E)搭載の第13世代のCore i7でも6万円未満、12コアの「Ryzen 9 7900X / 7900」も7万円未満で購入できますから、その差は歴然です。

「ゲームのみ」に焦点を当てるならコスパは悪くない可能性は十分期待できますが、非常に高負荷なマルチスレッド処理や、キャッシュメモリもさほど重要でない他の処理や、「ゲーム+他の処理」といったことを意識するのであれば、適したCPUとは言えないかなと思います。

簡易比較表

同世代の他CPUとの比較

「Ryzen 7000シリーズ」の競合となりそうな他モデルとの比較です。

Ryzen 7 7800X3D
Ryzen 7 7700X
Ryzen 9 7950X3D
アーキテクチャ Zen 4 Zen 4 Zen 4
プロセス
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
ソケット AM5 AM5 AM5
コア
8コア
8コア
16コア
スレッド
16スレッド
16スレッド
32スレッド
TDP(PL1) 120W 105W 120W
PPT (TDP/PL2)
162W
142W
162W
クロック(基本)
4.2GHz
4.5GHz
4.2GHz
クロック(1コア最大)
5.0GHz
5.4GHz
5.7GHz
クロック(16コア最大)
4.6GHz
5.2GHz
5.0GHz
L2キャッシュ
8MB 8MB 16MB
L3キャッシュ
96MB
96MB
128MB
(96MB+32MB)
Tjunction max(最大温度)
89℃
95℃
89℃
内蔵GPU
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
対応メモリ(定格最大)
DDR5-5200
DDR5-5200
DDR5-5200
参考価格
※2023年4月6日時点
71,800円
(449ドル)
46,950円
(325ドル?)
111,800円
(699ドル)

価格が高く、マルチスレッドコスパは明らかに悪いため、ゲーム性能の高さを考慮しても選ばれるかは怪しい?

やはり気になるのは価格です。トップクラスのゲーミング性能を備えるとしても、さすがに7万円超えは高すぎる感が否めません。

「3D V-Chache」無しの「Ryzen 7 7700X」なら現状4万円台中盤で購入することができ、約2.5万円も安いです。発売時は高めの設定となることが多いため、多少値下がりすることを考慮しても、2万円程度の追加費用が必要となるのは大きいかと思います。

また、7万円あれば12コアの「Ryzen 9 7900X / 7900」も検討できますし、第13世代のCore i7なら16コア(8P+8E)を搭載しながら6万円以下で購入できます。

ゲーム性能で大きな向上が期待できるというのも、現状のベンチマークでよく使われる「RTX 4090」などの最新の超高性能ハイエンドGPUを使った際の差であり、ほとんどの人が利用するハイクラス以下のGPUの場合にはそこまでの差がでない可能性も高いのも問題です。8コアで高いけどゲーム性能特化というコンセプトがそもそも、ニーズに応えているように見えるものの、実際に導入するケースは少ないのかなと思います。

先代の「Ryzen 7 5800X3D」がそれなりに売れたのは、AM4プラットフォームが長期化していて、ゲーム用途でのCPUの交換に悩んでいる層に対して、渡りに船の存在となり、魅力的であった点が大きいと思います。新規導入が基本となるAM5で、始めから「Ryzen 7 7800X3D」を検討するかと言われると、やや微妙な気がするのが個人的な印象です。

自分なら、多少の電力効率の悪化を受け入れてでも第13世代のCore i7(Core i7-13700系)の方が魅力的に感じると思います。

TDPが少し上昇し、クロックは少し低下

仕様面については「3D V-Cache」の追加以外にも少し異なる点があります。

まず、クロックが少し低下しており、これによって、特にキャッシュメモリに敏感な処理でない場合は、マルチスレッド性能は元モデルよりも若干低下することが予測されます。

次にTDPが少し上昇している点もあります。「Ryzen 7 7700X」は105W~142Wだったのが、120W~162Wとなっており、少し高くなっています。「3D V-Cache」に搭載によってクロックや温度面での管理が難しいというのは以前から指摘されている部分だったので、その影響だと思います。ただし、前述のクロック低下の面もありますし、最大温度が89℃とやや低く設定されていることもあり、発熱が増えているとは限らないのでそこは留意です。

最大温度が89℃に設定されている点は、オーバークロック(PBO含む)で性能をより高めたい場合にはマイナスとも取れますが、「Ryzen 7000シリーズ」は最大温度をやや低く設定した方が性能がわずかに向上しつつ消費電力も削減できるという報告もあるので、個人的にはマイナス要素ではないかなと思っています。

既存モデルとの比較

※価格は2023年4月6日時点でのおおよその市場価格です。CPU名のリンクはAmazonへの商品リンクです。

簡易比較
CPU名 コア スレッド クロック
定格 / 最大
TDP
(PL1 – PL2)
iGPU L3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 7950X3D 16 32 4.2 / 5.7GHz 120W – 162W RDNA 2(2CU) 128MB 111,800円
Ryzen 9 7950X 16 32 4.5 / 5.7GHz 170W – 230W RDNA 2(2CU) 64MB 89,980円
Core i9-13900K 24
(8P+16E)
32 3.0 / 5.8GHz
2.2 / 4.3GHz
125W – 253W UHD 770 36MB 81,580円
Core i9-13900KF 24
(8P+16E)
32 3.0 / 5.8GHz
2.2 / 4.3GHz
125W – 253W 無し 36MB 79,780円
Ryzen 9 7900X 12 24 4.7 / 5.6GHz 170W – 230W RDNA 2(2CU) 64MB 62,600円
Ryzen 9 7900 12 24 3.7 / 5.4GHz 65W – 88W RDNA 2(2CU) 64MB 68,300円
Core i7-13700K 16
(8P+8E)
24 3.4 / 5.4GHz
2.5 / 4.2GHz
125W – 253W UHD 770 30MB 58,530円
Core i7-13700KF 16
(8P+8E)
24 3.4 / 5.4GHz
2.5 / 4.2GHz
125W – 253W 無し 30MB 56,780円
Core i7-13700 16
(8P+8E)
24 2.1 / 5.2GHz
1.5 / 4.1GHz
65W – 219W UHD 770 30MB 55,550円
Core i7-13700F 16
(8P+8E)
24 2.1 / 5.2GHz
1.5 / 4.1GHz
65W – 219W 無し 30MB 52,980円
Core i9-12900KS 16
(8P+8E)
24 3.4 / 5.5GHz
2.5 / 4.0GHz
150W – 241W UHD 770 30MB 79,800円
Core i9-12900K 16
(8P+8E)
24 3.2 / 5.2GHz
2.4 / 3.9GHz
125W – 241W UHD 770 30MB 75,980円
Ryzen 9 5950X 16 32 3.4 / 4.9GHz 105W – 142W 無し 64MB 78,800円
Core i5-13600K 14
(6P+8E)
20 3.5 / 5.1GHz
2.6 / 3.9GHz
125W – 181W UHD 770 24MB 45,980円
Core i5-13600KF 14
(6P+8E)
20 3.5 / 5.1GHz
2.6 / 3.9GHz
125W – 181W 無し 24MB 42,780円
Ryzen 7 7800X3D 8 16 4.2 / 5.0GHz 120W – 162W RDNA 2(2CU) 96MB 71,800円
Ryzen 7 7700X 8 16 4.5 / 5.4GHz 105W – 142W RDNA 2(2CU) 32MB 46,950円
Ryzen 7 7700 8 16 3.8 / 5.3GHz 65W – 88W RDNA 2(2CU) 32MB 51,660円
Core i7-12700K 12
(8P+4E)
20 3.6 / 4.9GHz
2.7 / 3.8GHz
125W – 190W UHD 770 25MB 52,580円
Core i7-12700 12
(8P+4E)
20 2.1 / 4.9GHz
1.6 / 3.6GHz
65W – 180W UHD 770 25MB 45,980円
Ryzen 9 5900X 12 24 3.7 / 4.8GHz 105W – 142W 無し 64MB 47,540円
Ryzen 5 7600X 6 12 4.7 / 5.3GHz 105W – 142W RDNA 2(2CU) 32MB 33,680円
Ryzen 5 7600 6 12 3.8 / 5.1GHz 65W – 88W RDNA 2(2CU) 32MB 37,500円
Core i5-12600K 10
(6P+4E)
16 3.7 / 4.9GHz
2.8 / 3.6GHz
125W – 150W UHD 770 20MB 41,980円
Core i5-13500 14
(6P+8E)
20 2.5 / 4.8GHz
1.8 / 3.5GHz
65W – 154W UHD 770 24MB 35,880円
Core i5-13400 10
(6P+4E)
16 2.5 / 4.6GHz
1.8 / 3.3GHz
65W – 154W UHD 730 20MB 32,640円
Core i5-13400F 10
(6P+4E)
16 2.5 / 4.6GHz
1.8 / 3.3GHz
65W – 148W 無し 20MB 28,780円
Ryzen 7 5800X3D 8 16 3.4 / 4.5GHz 105W – 142W 無し 96MB 53,000円
Ryzen 7 5800X 8 16 3.8 / 4.7GHz 105W – 142W 無し 32MB 42,200円
Ryzen 7 5700X 8 16 3.4 / 4.6GHz 65W – ?W 無し 32MB 30,980円
Core i5-12400 6 12 2.5 / 4.4GHz 65W – 117W UHD 730 18MB 26,480円
Ryzen 5 5600X 6 12 3.7 / 4.6GHz 65W – ?W 無し 32MB 28,900円

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアを海外レビューを参考に見ていきます。使用されたメモリは、DDR5に対応しているモデルでは「DDR5-6000」で、その他は「DDR4-3600」となっています。また、使用されたGPUは「GeForce RTX 4090」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R23 Multi
CPU名称 スコア
Ryzen 9 7950X
38096
Core i9-13900K
37263
Ryzen 9 7950X3D
35769
Core i7-13700K
30770
Ryzen 9 7900X
29242
Core i9-12900K
27422
Ryzen 9 5950X
25869
Core i5-13600K
23847
Core i7-12700K
22801
Ryzen 9 5900X
21552
Ryzen 7 7700X
19901
Ryzen 7 7700
18710
Ryzen 7 7800X3D
18475
Core i5-12600K
17648
Ryzen 5 7600X
15143
Ryzen 7 5800X
15038
Ryzen 7 5800X3D
14514
Core i5-13400F
14311
Ryzen 7 5700X
13583
Core i5-12400F
11801
Ryzen 5 5600X
11250
参考:TechPowerUp

マルチスレッド性能は7700Xよりやや低く、価格の割にはかなり低い性能

「Ryzen 7 7800X3D」のマルチスレッド性能は、「Ryzen 7 7700X」よりやや低く、「Ryzen 7 7700」にわずかに劣るレベルです。番号と名前的にはRyzen 7の最上位にも見えますが、「3D V-Cache」未搭載モデルよりもクロックが少し低めに設定されているため、キャッシュが特に重要でない処理以外では基本やや劣る性能になります。

コア数が少ないため仕方ないですが、マルチスレッド性能は7万円超えのCPUとしては明らかに低く、コスパは悪いです。「Core i7-13700K」や「Ryzen 9 7900 / 7900X」の方が安価なのにも関わらず、マルチスレッド性能は圧倒的に高性能です(1.6倍前後)。

いくら高いゲーミング性能を持っているとはいえ、この差はさすがに非常に大きいですし、自慢のゲーミング性能も基本的に「RTX 4090」のような最新の超高性能なハイエンドGPU以外ではそこまで大きな差になるかも怪しいところですから、価格が大幅に安くならない限りは、ゲーム特化のコアなユーザー向けの製品になる印象です。

実際に有力な選択肢として入るには、マルチスレッド性能でやや上に位置する「Ryzen 7 7700 / 7700X」や「Core i5-13600K(F)」よりも少し高い程度の価格である必要があると思われます。これらは記事執筆時点で4万円台中盤程度のCPUなので、5万円台前半くらいまでは価格が下がらないと厳しいかもというのが個人的な意見です。「Ryzen 7000シリーズ」が発売時より軒並み大幅に安くなったことを考えるとあり得る範囲だとは思います。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R23というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R23 Single
CPU名称 スコア
Core i9-13900K
2261
Core i7-13700K
2116
Ryzen 9 7950X
2037
Ryzen 9 7950X3D
2036
Ryzen 9 7900X
2033
Core i9-12900K
2028
Core i5-13600K
2002
Ryzen 7 7700X
1993
Core i7-12700K
1944
Ryzen 5 7600X
1959
Ryzen 7 7700
1917
Core i5-12600K
1906
Ryzen 7 7800X3D
1817
Core i5-13400F
1796
Core i5-12400F
1710
Ryzen 7 5800X
1567
Ryzen 7 5700X
1509
Ryzen 5 5600X
1505
Ryzen 7 5800X3D
1476
参考:TechPowerUp

シングルスレッド性能も最新世代のCPUとしては低い

元モデルよりもクロックが低く設定されているため、シングルスレッド性能も他の最新世代のCPUよりも低いです。「Core i5-13400F」に近い性能となっています。

「Core i7-13700K」には約14.1%も劣る結果となっており、「Ryzen 9 7900X」にも約10.6%劣る結果となっていました。

マルチスレッド性能ほどのデメリットにはならないと思いますが、同価格帯の最新世代CPUに大きく劣るのは気になるところです。用途をしっかり考えて選ぶ必要があるCPUです。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。

今回は12種類のゲームで測定したフレームレート(FPS)の幾何平均を見ていきます。使用されたGPUは「GeForce RTX 4090」です。2023年時点では圧倒的な性能を誇るハイエンドGPUとなっています。ただし、超高性能なGPUを使用することはCPUにおける詳細なボトルネック差を測定するには最適ですが、実際にはこのクラスのGPUを使用する人は一般の人ではほとんど居らず、より低い性能のGPUが使用されることが多いと思います。低性能なGPUではCPUに要求される性能も低くなり、その場合にはこのテストほどCPUによる差が顕著には出ない可能性が高い点に注意してください。本テストは、あくまで市場で最高レベルのハイエンドGPUを使用した場合のものです。

その他の設定のついては、基本ウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

12種類のゲームでの幾何平均fps(1080p)
CPU名称 スコア
Ryzen 7 7800X3D
261.1
Core i9-13900K
250.5
Ryzen 9 7950X3D
247.1
Core i7-13700K
241.7
Ryzen 7 7700X
227.7
Core i5-13600K
227.0
Ryzen 9 7900X
226.1
Ryzen 7 7700
224.5
Ryzen 9 7950X
224.2
Ryzen 5 7600X
222.9
Core i9-12900K
221.0
Core i7-12700K
211.5
Ryzen 7 5800X3D
207.1
Core i5-12600K
196.4
Ryzen 9 5950X
187.7
Ryzen 9 5900X
187.2
Core i5-13400F
184.6
Ryzen 7 5800X
183.3
Ryzen 7 5700X
181.4
Ryzen 5 5600X
179.3
Core i5-12400F
177.0
Core i9-11900K
167.8
Ryzen 7 5700G
151.9
Core i5-11400F
135.0
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの幾何平均fps(1440p)
CPU名称 スコア
Ryzen 7 7800X3D
239.7
Core i9-13900K
235.4
Ryzen 9 7950X3D
229.3
Core i7-13700K
228.4
Core i5-13600K
218.4
Ryzen 7 7700X
214.5
Ryzen 9 7900X
214.1
Core i9-12900K
212.8
Ryzen 9 7950X
212.4
Ryzen 7 7700
212.2
Ryzen 5 7600X
210.9
Core i7-12700K
205.0
Ryzen 7 5800X3D
197.2
Core i5-12600K
190.5
Ryzen 9 5950X
182.2
Ryzen 9 5900X
181.8
Core i5-13400F
180.5
Ryzen 7 5800X
178.2
Ryzen 7 5700X
176.1
Ryzen 5 5600X
174.3
Core i5-12400F
173.3
Core i9-11900K
166.2
Ryzen 7 5700G
150.4
Core i5-11400F
134.2
参考:TechPowerUp

12種類のゲームでの幾何平均fps(4K)
CPU名称 スコア
Core i9-13900K
168.1
Ryzen 7 7800X3D
167.9
Core i7-13700K
166.8
Ryzen 9 7950X3D
166.7
Core i5-13600K
164.1
Core i9-12900K
163.5
Ryzen 7 7700X
162.0
Ryzen 9 7950X
161.3
Ryzen 9 7900X
161.2
Core i7-12700K
160.9
Ryzen 7 7700
160.8
Ryzen 5 7600X
160.5
Ryzen 7 5800X3D
159.8
Core i5-12600K
158.1
Core i5-13400F
154.6
Ryzen 9 5950X
152.2
Ryzen 9 5900X
151.7
Core i5-12400F
151.5
Ryzen 7 5800X
150.4
Ryzen 7 5700X
149.1
Ryzen 5 5600X
148.4
Core i9-11900K
143.8
Ryzen 7 5700G
133.6
Core i5-11400F
126.7
参考:TechPowerUp

Core i9-13900Kを上回る非常に優れたゲーミング性能

本題のゲーミング性能ですが、さすがの性能です。今までトップ層だった「Core i9-13900K」および「Ryzen 9 7950X3D」をやや上回る性能を発揮しています。

「Core i9-13900K」と比較すると、1080pで約4.2%、1440pで約1.8%上回っています。4Kではわずかに下回るものの、ほぼ同等の性能です。「RTX 4090」の性能をしっかりと引き出せている印象です。

僅差ではあるものの、現状最強のゲーミングCPUの座を手にしています。また、「Ryzen 7 7800X3D」は「Core i9-13900K」や「Ryzen 9 7950X3D」よりも安価であるため、最強のゲーミング性能を誇るCPUながら、次点のCPUよりも安いということになります。トップクラスのゲーム性能のCPUとしては、ゲーミングコスパは優れています。

ただし、上述の性能は「RTX 4090」使用時である点に注意です。実際に「RTX 4090」クラスのGPUを導入する人は恐らくごく一部であり、もっと低い性能のGPUを採用すると思いますが、その際には差は小さくなることが予想されます。

となると、「Ryzen 7 7800X3D」の優位性を活かすには超高額なGPUが必要ということですが、そのようなGPUを用意できる人にとって、「Ryzen 7 7800X3D」が魅力的かというと、正直そうではない気がします。

確かに「Ryzen 7 7800X3D」は現状最強のゲーミングCPUですが、8コアしかないCPUです。CPUとしての性能はハイエンドCPUとは到底呼べないレベルです。「Core i9-13900K」や「Ryzen 9 7950X」と比べるとマルチスレッド性能はベンチマークスコアは半分程度しか出ておらず、圧倒的に劣ります。

ゲーミングで強いといっても、「Core i9-13900K」との差は「RTX 4090」かつ1080pでも4%程度です。しかも、4Kでは優位性がほぼ感じられなくなっています。CPU自体の価格としては「Core i9-13900K」の方が高価ですが、「RTX 4090」レベルの超高額GPUを検討する人にとって、その数万円の差を惜しみ、2倍のマルチスレッド性能差と引き換えにわずかなゲーミングでの優勢を得ることを優先するとは考えにくいと思います。

「Ryzen 7 5800X3D」のように、古いシステムでCPUのゲーム性能の低さに不満を感じている人への救世主のような存在になれるのなら話はまた変わってくると思いますが、現状では「Ryzen 7000シリーズ」のAM5プラットフォームは新規導入が基本だと思います。超高額なGPUを採用する新規PCで、「Core i7-13700K」や「Core i9-13900K」、「Ryzen 9 7950X3D」を差し置いて「Ryzen 7 7800X3D」を採用するビジョンは正直見えないかなと感じます。

ただし、今後価格が大きく下がり、Core i7の無印モデルなどと比較できるようになれば、また話は変わってくるかもしれません。

消費電力と効率

消費電力

消費電力を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」によるマルチスレッド処理時の消費電力と、ゲーミング時平均(1080p/13タイトル)による消費電力の二つを見ていきます。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称 消費電力
Ryzen 5 5600X
61W
Ryzen 7 5700X
61W
Core i5-12400F
64W
Core i5-13400F
65W
Core i5-12600
67W
Ryzen 7 7800X3D
77W
Ryzen 7 7700
82W
Ryzen 7 5800X3D
90W
Ryzen 5 7600X
115W
Ryzen 9 5950X
117W
Core i5-12600K
121W
Ryzen 7 5800X
125W
Ryzen 9 5900X
126W
Ryzen 7 7700X
138W
Ryzen 9 7950X3D
140W
Core i7-12700K
167W
Core i5-13600K
189W
Ryzen 9 7900X
200W
Core i9-12900K
244W
Core i7-13700K
252W
Ryzen 9 7950X
254W
Core i9-13900K
276W
参考:TechPowerUp

消費電力(13ゲーム1080p平均)
CPU名称 消費電力
Core i5-12400F
38W
Core i5-13400F
43W
Ryzen 5 5600X
45W
Ryzen 7 5700X
48W
Ryzen 7 7800X3D
49W
Core i5-12600
51W
Ryzen 7 5800X3D
52W
Ryzen 7 7700
56W
Ryzen 9 7950X3D
56W
Core i5-12600K
59W
Ryzen 7 7700X
62W
Ryzen 5 7600X
66W
Ryzen 7 5800X
68W
Core i7-12700K
74W
Ryzen 9 5900X
85W
Ryzen 9 7900X
86W
Ryzen 9 7950X
89W
Ryzen 9 5950X
89W
Core i5-13600K
89W
Core i9-12900K
98W
Core i7-13700K
107W
Core i9-13900K
143W
参考:TechPowerUp

非常に省電力

消費電力は少ないです。TDPはやや高めに設定されていたため少し不安だった部分ですが、「Ryzen 7 7700」に似た水準となっていて、普通に省電力なCPUです。Blenderでのマルチスレッドの高負荷テストでは77Wで、「Core i7-13700K」や「Ryzen 9 7900X」の200W以上よりも格段に低い消費電力で済みます。

ゲーミングの消費電力も、トップクラスのゲーム性能を持つCPUとしては一段少ない49Wとなっています。「Core i7-13700K」や「Ryzen 9 7900X」は80W~100W程度であるため、大幅に少ない消費電力です。とはいえ、ゲーム時のCPUの消費電力は総じて少なめと言えますし、「Ryzen 9 7950X3D」なら同等レベルなので、優位性は確かにありますが、選択の決め手とはあまりならない部分だと思います。

しかし、最大消費電力の少なさは魅力的で、「Core i7-13700K」や「Ryzen 9 7900X」を標準設定で使う場合を考えると、電源容量は100W~200Wほど少なくても良いと考えることができるため、その点ではCPUの高額さを少し補うことができます。今後価格が大きく下がることがあれば、更に魅力的で有力なCPUとなる可能性も垣間見えます。

電力効率(ワットパフォーマンス)

電力効率を見ていきます。レンダリングおよびゲーミング時の効率です。

各テストで得られたスコアを消費電力で割って算出した、1Wあたりのスコアで見ていきます。ただし、効率が悪かったとしても、レンダリングなどの処理量が決まっているスコアでは高性能な方が処理を早く終えることが出来るため優位性がありますし、ゲームにおいても高いfpsを得ているので、効率が悪いから一概にダメという訳ではない点には留意です。

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称 1Wあたりのスコア
Ryzen 9 7950X3D
253.3
Ryzen 7 7800X3D
232.7
Ryzen 7 7700
231.6
Core i5-13400F
228.3
Ryzen 7 5700X
223.0
Ryzen 9 5950X
221.1
Core i5-12400F
188.2
Ryzen 5 5600X
186.3
Core i5-12600
178.3
Ryzen 9 5900X
169.7
Ryzen 9 7950X
158.4
Ryzen 7 5800X3D
157.1
Ryzen 9 7900X
152.2
Core i5-12600K
148.7
Ryzen 7 7700X
146.9
Core i7-12700K
138.6
Ryzen 5 7600X
136.2
Core i9-13900K
130.5
Core i5-13600K
125.1
Core i7-13700K
121.4
Ryzen 7 5800X
116.9
Core i9-12900K
110.8
参考:TechPowerUp

電力効率(13ゲーム1080p平均)
CPU名称 1Wあたりのfps
Ryzen 7 7800X3D
5.16
Core i5-12400F
4.55
Ryzen 9 7950X3D
4.33
Core i5-13400F
4.26
Ryzen 7 7700
4.05
Ryzen 7 5800X3D
3.94
Ryzen 5 5600X
3.83
Ryzen 7 5700X
3.64
Ryzen 7 7700X
3.65
Core i5-12600
3.59
Ryzen 5 7600X
3.25
Core i5-12600K
3.24
Core i7-12700K
2.78
Ryzen 9 7900X
2.63
Ryzen 7 5800X
2.62
Core i5-13600K
2.50
Ryzen 9 7950X
2.47
Core i7-13700K
2.22
Core i9-12900K
2.19
Ryzen 9 5900X
2.14
Ryzen 9 5950X
2.06
Core i9-13900K
1.74
参考:TechPowerUp

非常に優れた電力効率で、ゲームではダントツ

「Ryzen 7 7800X3D」の電力効率は非常に優れています。

ゲーミングでは最近優れた効率で驚かされた「Ryzen 9 7950X3D」を約19.2%も上回りトップとなっています。ダントツです。ゲーム面に限れば本当に強いCPUです。

また、効率に関してはマルチスレッド面でも優れています。凄く重いマルチスレッド処理をするならもっとコアの多いCPUの方が適していますが、そういう訳ではなく継続的な処理が求められる場合には意外と強力です。

ただし、ゲームと違ってマルチスレッドは同程度のものが結構あるので、価格と性能を考えれば総合的には大きく高評価にはならないかなとも思います。

温度

CPUの温度を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」動作時と、ゲーミング時(Cyberpunk 2077)の二つの温度を見ていきます。基準温度は25℃で、動作から10分後の定常状態の温度となっています。

冷却システムは、CPUクーラーに「NH-U14S」が使用されています。14cmファン1基の空冷クーラーとなっており、空冷としては高めの冷却性能ですが、ハイエンドCPUでよく利用される240mm以上の水冷クーラーなどのハイエンドクーラーにはやや劣る冷却性能のクーラーとなっています。

レンダリング時の温度(Blender)
CPU名称 温度
Core i5-13400F
49℃
Core i5-12400F
51℃
Ryzen 7 5700X
53℃
Ryzen 5 5600X
64℃
Ryzen 9 5950X
65℃
Ryzen 9 5900X
67℃
Ryzen 7 7700
70℃
Core i5-12600K
74℃
Ryzen 7 5800X3D
79℃
Ryzen 7 7800X3D
82℃
Core i7-12700K
83℃
Ryzen 9 7950X3D
86℃
Ryzen 7 5800X
87℃
Core i5-13600K
92℃
Ryzen 5 7600X
96℃
Ryzen 9 7900X
97℃
Ryzen 9 7950X
97℃
Ryzen 7 7700X
98℃
Core i9-13900K
102℃
Core i7-13700K
103℃
Core i9-12900K
106℃
参考:TechPowerUp

ゲーム時の温度(Cyberpunk 2077)
CPU名称 温度
Core i5-12400F
49℃
Core i5-13400F
50℃
Ryzen 7 5700X
59℃
Core i7-12700K
61℃
Core i5-12600K
62℃
Ryzen 5 5600X
64℃
Ryzen 7 7800X3D
65℃
Ryzen 7 5800X
69℃
Ryzen 7 5800X3D
72℃
Core i5-13600K
72℃
Core i9-12900K
72℃
Ryzen 7 7700
73℃
Ryzen 9 7950X3D
73℃
Ryzen 9 5950X
73℃
Ryzen 9 5900X
74℃
Ryzen 9 7950X
75℃
Ryzen 7 7700X
75℃
Core i7-13700K
75℃
Ryzen 9 7900X
81℃
Core i9-13900K
87℃
Ryzen 5 7600X
90℃
参考:TechPowerUp

消費電力の割には多めの発熱だけど、空冷でも運用は可能

温度ですが、消費電力の割にはやや高めでした。Blenderによる高負荷なマルチスレッド処理時には82℃となっており、「Core i7-12700K」に近い温度です。

消費電力では「Ryzen 7 7700」や「Core i5-13400F」に近い位置にありましたが、温度はそれらよりも大分高くなっています。82℃なら許容範囲内だとは思いますが、性能を考えれば14cmファンの空冷ならもう少し冷えてて欲しかったのが本音です。12cmファン空冷ではやや不安があります。

ただし、ゲーム時には65℃となっており、十分冷やせています。「Core i9-13900K」よりは圧倒的に低いですし、「Ryzen 9 7950X3D」よりもやや低い温度なので、トップクラスのゲームを持つCPUとしては比較的低発熱なCPUといえると思います。

やはりゲーム面ではどこを取っても優秀なCPUです。ただし、マルチスレッド性能と価格を込みで考えると、やはりおすすめしにくい印象も強いCPUです。

まとめ

ざっくりと各性能を見てきました。最後に評価をまとめています。

Ryzen 7 7800X3D

良い点
  • Core i9-13900K以上の非常に優れたゲーミング性能
  • 非常に優れた電力効率(特にゲーム)
  • 低消費電力
  • AVX512命令セットに対応
  • 空冷でも運用可能
  • 内蔵GPU搭載(RDNA 2で性能は高くない)

気になる点
  • 高価(国内想定価格:71,800円)
  • 価格の割にはマルチスレッド性能が非常に低い
  • シングスレッド性能が他の最新世代CPUよりも低い
  • ゲーム以外の面ではコスパが基本的に悪い

Ryzen 7 7800X3D:現状トップクラスのゲームCPUだけど、ゲーム以外でのコスパは悪い

「Ryzen 7 7800X3D」は「Core i9-13900K」に匹敵するゲーミング性能を持つ、現状最強のゲーミングCPUです。また、ゲーム時には性能だけでなく、効率でも非常に優れています。先日登場した「Ryzen 9 7950X3D」がトップクラスのゲーム性能のCPUとしては頭一つ抜けた効率を発揮しており驚きましたが、それをも約19%上回るほど高い効率を発揮します。

ゲーム面においては文句の付けようがないほど優れたCPUが「Ryzen 7 7800X3D」です。

ただし、問題は価格の高さとコア数の少なさです。国内での想定価格は71,800円となっており、純粋な8コアCPUとしては非常に高額です。競合の7万円以下のCPUとしては、合計16コア(8P+8E)の「Core i7-13700」系や、12コアの「Ryzen 9 7900 / 7900X」がありますが、それらの方が安価ながら、マルチスレッド性能では圧倒的に高性能という形になっています。

でもゲームでの優位性があるから一長一短という感じもしますが、ゲームでの優位性が上述の価格とコア数のマイナスを打ち消せると断言できるほどではない点に注意です。

現在のCPUのゲームのベンチマークに使用されるGPUは「RTX 4090」が標準となってきており、上述で触れた性能も「RTX 4090」のものです。ただし、実際に「RTX 4090」ほど高額で高性能なGPUを導入する人はごく一部です。実際には10万円以下のGPUを導入する人がほとんどで、「RTX 4090」よりは格段に低い性能のGPUを使用しているケースが多いはずです。

GPUの性能が低くなりfpsが低くなると、CPUに求められる性能もやや小さくなるため、他CPUとの差が縮まることが考えられます。これは、1080pと4Kのゲーム性能を比べた時に、上位CPUと下位CPUの差が小さくなる点からもわかります。それを考えると、「Ryzen 7 7800X3D」が非常に優れたゲーミングCPUである点は疑う余地がないとしても、ほとんどの人にとってゲームでも優位性はわずかである可能性があります。

それに対し、価格の高さは使用状況に関わらないマイナスですし、マルチスレッド性能が競合モデルに圧倒的に劣る点もやや不透明なゲーム性能の優位性と比べると大きな差です。それらで大きめのマイナスとなる「Ryzen 7 7800X3D」は、やはり「Core i7-13700」系や「Ryzen 9 7900 / 7900X」と比べると魅力は一段落ちる印象です。

ゲーム性能は確かに高いですが、やはり8コアCPUなので、比較するのはマルチスレッド性能で近い位置の性能だと思います。それを考慮して「Ryzen 7 7800X3D」が実際に有力な選択肢として入ることを考えると、マルチスレッド性能で少し上の「Ryzen 7 7700 / 7700X」や「Core i5-13600K(F)」に対して競争力のある価格である必要があると思います。これらは現在4万円台中盤程度のCPUなので、少なくとも5万円台前半程度までは下がって欲しい印象です。それでも「Core i7-13700(F)」が同等の価格になってしまうので、最適と言えるかは難しいところですが、現在よりは大きな競争力を持つことになるのではないかと思います。

また、効率に関しては非常に優れているため、継続的な負荷を考慮するなら魅力的です。とはいえ、ゲーム時の消費電力差はそこまで大きくもないですし、マルチスレッド処理時には高性能なCPUの方が処理を早く終えることができるメリットもありますから、そちらも一概には褒められないという感じです。やはり7万円のCPUと考えるとメリットに対してデメリットが大きいというのが正直な感想です。

といった感じで、「Ryzen 7 7800X3D」はトップクラスの強力なゲーミングCPUですが、少なくとも現状ではマルチスレッド面でのネックが大きすぎて、おすすめはしにくいCPUです。同価格帯と比べると大きすぎるマルチスレッド性能差と、未だに日本での根強いIntel人気を考慮すると、一番有力な選択肢となることは難しい気がするCPUだなと思いました。


といった感じで、記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

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