「Ryzen 9 3900X」と「Ryzen 7 3700X」の評価【性能比較】

2019年7月7日に発売された「Zen2」搭載のAMDの新CPU「Ryzen 3000 シリーズ」のハイエンドモデル「Ryzen 9 3900X」と「Ryzen 7 3700X」を評価しています。

注意
本記事に掲載されている内容は記事執筆時点のものであり、ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。掲載の価格は、主に記事投稿時点での主に価格.comやAmazonを参考にした市場価格となっています。


簡易比較表

他CPUとの簡易比較表です。今回評価する二つのCPUは、どちらもハイエンドCPUなので、現在の主要なハイエンドCPUと一緒に比較しています。
【簡易比較表】
CPU名PassMarkスコアコア(スレッド)TDPクロック周波数
定格 – TB時最大
ワット
パフォーマンス
コスパ参考価格
Ryzen 9 3900X3230012(24)105W3.8GHz4.6GHz307.60.497約65,000円
Ryzen 7 3700X240008(16)65W3.6GHz4.4GHz369.20.558約43,000円
Core i9 9900K202008(16)95W3.6GHz5.0GHz212.60.337約60,000円
Core i7 9700K172008(8)95W3.6GHz4.9GHz181.10.366約47,000円
Ryzen 7 2700X170008(16)105W3.7GHz4.3GHz161.90.567約30,000円
Core i7 8700K161006(12)95W3.7GHz4.7GHz169.50.366約44,000円
Ryzen 7 2700150008(16)65W3.2GHz4.3GHz230.80.6約25,000円
※ベンチマークスコアはPASSMARKのベンチマークスコアを参考にした目安の値。
※参考価格は、価格.comもしくはAmazonの2019年7月上旬時点での最安値価格。
やはり、思わず目を疑ってしまうほどの処理性能の高さが目立ちますね。これまで主流CPUで最高性能だった「Core i9 9900K」を軽々と上回っています。
「Ryzen 9 3900X」はPassMarkで「Core i9 9900K」の約1.5倍という圧倒的な数値を叩き出しています。「Ryzen 7 3700X」も、Core i9 を超える高いPassMarkスコアを叩き出しつつ、TDPは65Wと低いため、ワットパフォーマンスは凄まじい数値となっています。異常ともいえる躍進具合です。
更に、Core iシリーズの末尾Kの倍率ロックフリーモデル(オーバークロック可能)ではCPUクーラーが付属しないのに対し、Ryzenは全モデルそれなりの品質のクーラーが付属するため、価格面での優位性もあります。
後で触れる、純粋なシングルスレッド性能とゲーミング性能の高さでは、Core i9 等に若干負けてしまってはいるのですが、そこを考慮してもコスパでいえば圧倒的勝利という形で異論は無さそうです。


各性能について

CPUの主要な各性能についてです。「シングルスレッド性能」「マルチスレッド性能」「ゲーミング性能」について見ていきます。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能が高いと、軽い処理の処理速度が速くなる他、基本的にほぼ全ての処理に対して有利に働くので重要視される事が多いです。
今回は、Cinebench R15というソフトで測定した数値を見ていきます。
【Cinebench R15 Single】
CPU名称
スコア
Core i9 9900K221
Core i7 9700K214
Core i7 8700K205
Ryzen 9 3900X203
Ryzen 7 3700X203
Core i5 9600K199
Ryzen 7 2700X179
Core i5 8400172
Ryzen 7 2700166

シングルスレッド性能は未だにIntelが優勢だが、Ryzenも大きく近づく

シングルスレッド性能に関しては、今まで通りRyzenよりもIntelのCore iの方が優勢です。数値自体は前世代より向上はしているものの、未だにCore i7とi9には割と大きな差がついています。
ただし、第2世代の頃からは大幅に改善されているのは間違いなく、Core i シリーズよりシングルスレッド性能がやや低いというのは変わりないですが、「弱点」と言い切るには微妙なレベルまできています。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能が高いと、マルチタスクの処理やエンコードの速度などが速くなります。簡単にいうとCPU全体の全力のパフォーマンスを表します。
シングルスレッド性能と同じく、Cinebench R15というソフトで測定した数値を見ていきます。
【Cinebench R15 Multi】
CPU名称
スコア
Ryzen 9 3900X3086
Ryzen 7 3700X2160
Core i9 9900K2073
Ryzen 7 2700X1814
Ryzen 7 27001565
Core i7 9700K1512
Core i7 8700K1417
Core i5 9600K1062
Core i5 8400937

マルチスレッド性能はRyzen 9がぶっちぎりのトップ

一目でわかるRyzen 9 の規格外っぷり。マルチスレッド性能は「Ryzen 9 3900X」が他を大幅に引き離しトップとなっています。
値は張りますが、少しでもマルチスレッド性能が高いCPUが欲しいのであれば、Ryzen 9 一択で文句無しでしょう。
「Ryzen 7 3700X」も「Core i9 9900K」を上回る性能を発揮しており、Ryzen の特長であるマルチスレッド性能の高さは健在です。


ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームする際のパフォーマンスの性能です。
主に実際にゲームを起動してみた際のFPS数で比較されます。
今回は、10種類の人気ゲームでFPS数を測定した平均FPS数(相乗平均)の数値を見ていきます。解像度は1080pで、その他設定は全て「ウルトラ」という可能な限りの最高の設定となっています。
使用されたGPUは「Geforce RTX 2080 Ti」というハイエンドGPUになっています。
【総合ゲーミング性能(10種類のゲームでの平均FPS)】
CPU名称
スコア
Core i7 9700K141.0
Core i9 9900K139.4
Core i7 8700K134.9
Core i5 9600K131.4
Ryzen 9 3900X128.5
Ryzen 7 3700X124.9
Core i5 8400123.9
Ryzen 7 2700X118.1
Ryzen 7 2700112.2

ゲーミング性能も依然Intelが優勢

シングルスレッド性能と同様、Intelの方が優勢です。第3世代のRyzenでも、一世代前の第8世代のCore i7に負けてしまっています。
ゲーミング性能はシングルスレッドと比例する傾向があるので、シングルスレッド性能を見た後では予想通りといったところです。差は大分縮まったものの、Intelと比べて、ゲーミング性能がやや低いというRyzenの弱点は、残っている形となってしまっています。
 
ただし、Ryzenにはマルチスレッド性能の高さという点で圧倒的な優位性があります。
動画エンコード等の作業や、大量のタスクを同時に稼働させるマルチタスクでは、マルチスレッド性能の高さが重要になります。たとえば、「ゲーム」+「何か別の重いタスク」といったマルチタスクになれば、マルチスレッド性能の高さは有利に働きます。更に、最近ではゲームのライブ配信や録画といった事が流行していますから、エンコード作業が必要となる人も多いかと思います。上記のことを考えれば、ゲームをメインとしていても、一概にRyzenが不利とは言えなさそうです。

それに、Ryzenも数値自体はかなり向上し、十分に高いものとなっています。表の平均FPS値は設定を全て「ウルトラ(最高)」にした上での数値ですが、その中で、120FPS以上を記録し、Core i9 やCore i7 に対し11,12FPS程度しか差はありません。ゲーミング性能の一つの目安となるのは「144FPS」ですが(主流なゲーミングモニターのリフレッシュレートによる)、設定を少し下げればRyzenでも余裕で「144FPS」は超えます。計測に使用されたGPUが「Geforce RTX 2080 Ti」という超ハイエンドGPUという事はありますが、実用的な側面での差はほぼ無いと見る事もできます
 
なので、中途半端ですが「ゲーミング性能のみならCore i の方が有利だが、その他の面を考えるとRyzenの方が有利に働く可能性も高い」といった形になるのでしょうか。
やや煮え切らないですが、このような評価になってしまうかと思います。


総合評価値(ゲーミング除く)

ゲーミング性能を除くCPU性能の総合評価値を見ていきます。簡単に言うと、シングルスレッド性能とマルチスレッド性能を併せたスコアです。
ゲーミング性能としての数値は含まれていませんが、ゲーミング性能はシングルスレッド性能と比例する傾向があるので、実質的にはゲーミング性能も含まれていると言っても良いかと思います。
主要なベンチマークソフトの各スコアを利用して、相乗平均として算出した形になっています。
【CPU性能値(ゲーミング除く)】
CPU名称
スコア
Ryzen 9 3900X2278
Core i9 9900K2083
Ryzen 7 3700X1883
Core i7 9700K1813
Core i7 8700K1695
Ryzen 7 2700X1693
Ryzen 7 27001514
Core i5 9600K1455
Core i5 84001304

Ryzenが有利だが、思ったより差は小さい

表を見ると、Ryzenの方が有利ではあります。ただし、PassMarkやマルチスレッド性能の圧倒的な高さからすれば、思ったより差は小さいなという印象。

やはり、シングルスレッド性能(ゲーミング性能)が足を引っ張ってしまっているのは否めないですね。
また、Ryzenのベンチマークスコアは、「PassMark」や「Cinebench R15」といった特に有名なベンチマークテストでは非常に良い数値を叩き出していますが、その他のベンチマークテストでは思ったほどCore i9等と差が開いていませんでした。どのテストを見てもRyzenの方がマルチスレッド性能が高くはありましたが、「シングルスレッド性能込みのCore i9やCore i7との勝負」では「圧勝」という訳にはいかない要因にはなってしまってるように感じました。
 
また、Ryzenの性能は「マルチスレッド性能」に特化しており、このシングルスレッド性能とマルチスレッド性能を併せた指標では、マルチスレッド性能にかなり依存している形になっています。
「シングルスレッド性能」と違い「マルチスレッド性能」は、あらゆる用途において重要というものではありません。ストリーマーや動画編集等に携わる人であれば重要な項目ですが、ユーザーの全体の割合でいえば、そのような用途を頻繁に行う人は多くはありません。

これらの事を考慮すると、実用性でいえば、登場した直後に予想された「Ryzen一強自体」で間違いないとは断言できないのではと思います。
とはいえ、多少のシングルスレッド性能(ゲーミング性能)の低さなど気にならないほどのワットパフォーマンスとマルチスレッド性能を持っているのが第3世代Ryzenですから、「現状」でいえば間違いなく最強コスパです。
一強とは言い切れないとは言ったものの、もし自分が新しくCPUを購入するなら間違いなく第3世代Ryzenを選びます。
ロマンがありますし、マルチスレッド性能の差は圧倒的ですが、ゲーミング性能差は大きくないですからね。
第2世代以前のRyzenや最新でないCore iシリーズのCPUからの交換を考えるのであれば、第3世代Ryzenは乗り換える価値が十二分にある、魅力的なCPUです。


まとめ

最後にまとめです。「Ryzen 9 3900X」および「Ryzen 7 3700X」の要点をざっくりとまとめています。


良い点
  • Core i9 をも圧倒するマルチスレッド性能
  • ワットパフォーマンスがめちゃくちゃ良い
  • 性能を考えれば価格も高すぎず、高品質なクーラー付属でコスパが非常に良い
  • シングルスレッド性能は依然Core i9/7には劣るものの、大きく改善

悪い点
  • 純粋なシングルスレッド性能・ゲーミング性能はCore i9/7には負ける
  • 内蔵GPUが無い


【Core i と Ryzen どっちが良い?】

  • コスパ・マルチスレッド重視ならRyzen
  • ゲーミング性能は依然 Core i9/7の方がやや優勢だが、総合コスパで勝るRyzenが魅力的すぎる

コスパ・マルチスレッド性能を重視ならRyzen

第3世代のRyzenのマルチスレッド性能は、今まではなんだったんだ?となる躍進具合です。
PassMarkでは、Ryzen 9に至っては、これまで主流CPUの最高性能だった「Core i9 9900K」の約1.5倍という異常とも言える高性能さを見せつけています。Ryzen 7も約1.2倍上回るスコアを出しており、もう訳が分からないよ状態です(良い意味で)。
しかしながら、TDPは従来の値を保っており、結果的にワットパフォーマンスも爆発的に向上しています。
 
マルチスレッド性能を最重視するのであれば、Ryzen一択と言って良いです。

ゲーミング性能は依然 Core i9/7の方がやや優勢だが、総合コスパで勝るRyzenが魅力的すぎる

マルチスレッド性能では圧倒的な差を見せつけた第3世代Ryzenですが、シングルスレッド性能とゲーミング性能では、Core i9/7に未だに少し後れを取っています
そのため、ゲーミング用途のみを考えるなら、依然 Core i9/7の方がやや優勢と言えます。

しかし、Ryzenはマルチスレッド性能で圧倒的な優位性があります。エンコード等の作業や、大量のタスクを同時に稼働させるマルチタスクを日常的に行うなど、使い方によっては、このマルチスレッド性能差は非常に役立ちます。ゲーム用途に置いてもマルチスレッド性能が重要になる場合もあります
また、Ryzenは高品質なクーラーが付属しており、価格上の利点もあります。Intelのハイエンド製品のほとんどにはクーラーが付属すらしていないません。
それに、ゲーミング性能はCore i9/7の方が上とは言っても、その差は5%程度のもので、マルチスレッド性能差ほど大きなものではありません。

上記のことなどを考えると、コスパは間違いなくRyzenの方が上です。

以前はゲームが関わってくる時点でCore i9/7 一択に近かったですが、その状況は変わりました。
ゲーミング性能のみならCore i9/7がやや優勢だが、コスパを度外視しないならRyzen、という風になりました。
それほど第3世代Ryzen の驚異的なマルチスレッド性能とコスパは魅力的です。

ただし、現在(2019年7月)最新である第9世代のIntel製CPUは、発売から約9か月と日が結構経っており、その点で不利です。第8世代→第9世代では、ベースのマイクロアーキテクチャは据え置きだった事もありますし、割とすぐに第10世代が発表される可能性はあります。そのため、上述の事もあくまで「現状では」という事は留意しておきたいです。


それでは、記事はここまでになります。ご覧いただきありがとうございました。

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