Ryzen 9 3950X をざっくり評価

Ryzen 9 3950Xのざっくりとした評価記事です。規格的には新しいものは無いので、割とあっさりめです。

注意
掲載の情報は全て、記事執筆時点(2019年12月10日)のものとなります。現在は異なる可能性があるため注意してください。また、価格は記事執筆時点の主に価格.comやAmazonでの最安値価格となります。

簡易比較表

まずは、簡単な性能比較表から見ていきます。第3世代のRyzen(デスクトップ用、主流モデル)を載せています。また、表にはありませんが、内蔵GPUは全モデル搭載していません。

対応
ソケット
CPUPassMarkコア数
(スレッド数)
周波数 (GHz)TDP付属
クーラー
参考価格
定格TB時
Socket AM4Ryzen 93950X3600016 (32)3.54.7105W×99,000円
3900X3190012 (24)3.84.6105W66,000円
Ryzen 73800X246008 (16)3.94.5105W51,000円
3700X239008 (16)3.64.465W43,000円
Ryzen 53600X205006 (12)3.84.465W32,000円
3600199006 (12)3.64.265W26,000円

3950Xは発売時期も離れていますし、別枠のCPUのようなイメージを受けますが、主流の第3世代Ryzenの一つとなります。ソケットとアーキテクチャは、従来の第3世代Ryzenと同じ、「Socket AM4」と「Zen2」です。

詳しい性能は後述しますが、PassMarkスコアにも表れているマルチスレッド性能の圧倒的な高さと3900Xとほぼ変わらぬ商品電力によるワットパフォーマンスの良さが魅力のCPUです。ただし、発売直後とはいえ価格が10万円近くとめちゃくちゃ高いです。更に、クーラーは同梱しておらず水冷システム推奨です。主流ソケット採用としては、必要コストがかなり規格外なCPUとなっています。

処理性能

3950Xの処理性能について見ていきます。詳しい環境等については、下記の参考リンクをご覧ください。

参考
https://www.pcgamer.com/amd-ryzen-9-3950x-review/(外部リンク、海外サイト)

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアあたりの処理性能のことです。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理が速くなる(レスポンスが良くなる)他、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。そのため、数あるCPUの性能指標の中でも特に重要視されています。他の性能が良くても、ここが微妙だったら評価はイマイチ、という事もあるほどです(Ryzen登場前のAMD CPUがそんな感じだった)。

今回は、Cinebench R15というベンチマークソフトで測定した数値を見ていきます。

Cinebench R15 Single
CPU名称
スコア
Core i9-9900K
221
Core i9-9900KS
221
Core i7-9700K
214
Ryzen 9 3950X
213
Ryzen 9 3900X
210
Core i7-8700K
205
Ryzen 7 3700X
204
Ryzen 5 3600X
202
Core i5 9600K
199
Ryzen 5 3600
191
Core i5-9400F
175

3900Xよりわずかに向上

シングルスレッド性能は、3900Xからわずかに向上しました。更にCore iシリーズとの差が縮まる結果となりました。同じアーキテクチャでコア数を4も増やしながらシングルスレッドを向上させるのは素晴らしいです。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能です。マルチスレッド性能が高いと、動画のCPUエンコードやマルチスレッドレンダリングの処理時間が短くなる他、複数のソフト起動時のパフォーマンスなどが向上します。

今回は、Cinebench R15というベンチマークソフトで測定した数値を見ていきます。

Cinebench R15 multi
CPU名称
スコア
Ryzen 9 3950X
3,992
Ryzen 9 3900X
3,160
Core i9-9900KS
2,182
Ryzen 7 3700X
2,119
Core i9-9900K
2,073
Ryzen 5 3600X
1,628
Ryzen 5 3600
1,537
Core i7-9700K
1,512
Core i7-8700K
1,417
Core i5 9600K
1,062
Core i5-9400F
953

3900Xより約26.3%向上

マルチスレッド性能は、3900Xと比較して約26.3%向上しました。コア数とスレッド数の向上率が33.3%なので正直予想の範囲内ですが、3900Xですら主流CPUでは圧倒的なマルチスレッド性能だったのを更に大幅に向上させました。


ゲーミング性能

ゲーミング性能は、言葉の通りゲームする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを起動した際のFPS数で比較されます。

今回は、9種類のゲームでFPS数を測定した平均FPS数の数値を見ていきます。使用されたGPUは「Geforce RTX 2080 Ti」という超ハイエンドGPUとなっており、解像度は全て「1080p」で、その他の設定は全て「ウルトラ(可能な限り最高の設定)」となっています。

Gaming Rating with RTX 2080 Ti
CPU名称
スコア
Core i7-9700K
134.8
Core i9-9900KS
133.9
Core i9-9900K
126.3
Core i7-8700K
119.9
Ryzen 9 3900X
116.7
Ryzen 7 3700X
115.6
Core i5 9600K
114.7
Ryzen 9 3950X
114.3
Ryzen 5 3600X
113.7
Ryzen 5 3600
112.6
Core i5-9400F
111

3900Xとほぼ同じ

ゲーミング性能は3900Xとほぼ変わりません。表に示している参考データでは3900Xよりもわずかに低い結果となっていました。参考元では「さすがに低くなるのはあり得ないので、再測定を検討している」という旨が書いてありましたが、他サイトのどのレビューでも3900Xと同じかわずかに良いくらいの結果となっていたので、大きくは変わらないかと思います。

ゲーミング性能自体は悪くないですが、価格を考えるとゲーミング用途でのコスパは悪いと言わざるを得ません。上述のマルチスレッド性能やワットパフォーマンスの良さを活かすならゲームで頻繁に使う事はないでしょうし、性能は低く無いながら、ゲーム用CPUとはちょっと言い難いですね。

消費電力とクーラー

消費電力とクーラーについて見ていきます。

参考
https://www.techspot.com/review/1940-amd-ryzen-9-3950x/(外部リンク、海外サイト)

消費電力

実際の消費電力の量(W)を見ていきます。高負荷時のものです。

ちなみに、TDPは正確には耐熱値(ざっくり言うと発熱量)を表す数値で、消費電力を示したものではありません。ただ、発熱量と消費電力は相関関係があるため、消費電力の多さの目安としては扱う事が出来るため、よく用いられます。ここでは実際の消費電力を見ていきます。

消費電力
CPU名称
スコア
Core i5 9600K
126
Ryzen 7 3700X
164
Core i7-8700K
176
Ryzen 7 3800X
178
Core i7-9700K
209
Core i9-9900K
244
Ryzen 9 3950X
245
Ryzen 9 3900X
247
Core i9-9900KS
283

まさかの3900Xとほぼ同じ

一番驚いた点はここです。3900Xと比較としてコア数とスレッド数が33.3%増え、マルチスレッド性能も大幅に向上したのにも関わらず、実際の消費電力がほぼ変わりません。どうやら、動作電圧が3900Xより少し下がっているようです。性能はしっかり向上しているので、ワットパフォーマンスがめちゃくちゃ良いです。初期費用の高さにさえ目を瞑れば、非常に魅力的な要素です。


クーラー

付属クーラーについて見ていきます。

第3世代Ryzen 付属クーラー
CPU付属クーラー
Ryzen 9 3950Xなし
Ryzen 9 3900XWraith Prism with RGB LED
Ryzen 7 3800X
Ryzen 7 3700X
Ryzen 5 3600XWraith Spire
Ryzen 5 3600Wraith Stealth

クーラーは付属せず、水冷システム推奨

他の第3世代Ryzenの主流モデルは全てクーラーが付属していますが、3950Xは付属していません。第3世代Ryzenは、付属にしては良いクーラーが付属している事による、実質コスパの良さも大きな魅力の一つだったので、これは残念です。

更に、3950Xは水冷クーラーでの使用が推奨されています。本体だけでもめちゃ高いのに、別途水冷クーラーまで用意しなければならないのはコスト的にかなりの痛手です。ただし、上述の消費電力を見る限りは、「3900Xと発熱も大きくは変わらないのでは?」と感じます。一部のレビュー記事では、水冷でなくても3900Xを冷やせる性能なら空冷でも大丈夫(自己責任)という記述も見受けられたので、単にコスト削減の線もありそうです。

それに、Intelの上位製品は多くがクーラーを付属していませんし、高品質な付属クーラーの要求は、最近のRyzenへの期待度の高さによる消費者のわがままなのかもしれません。性能とワットパフォーマンスの良さを見れば価格相応だと思います。

まとめ

最後に要点をまとめています。

良い点
  • 3900Xさえも大きく上回るマルチスレッド性能
  • 主要ソケット
  • ワットパフォーマンスが非常に良い

悪い点
  • 非常に高価(約9万円~)
  • コスパは良くない(本体価格が高すぎる)
  • ゲーム用CPUではない
    ゲーミング性能自体は低くないけど、3900Xとほぼ変わらない。価格はめちゃ高いのでコスパがかなり悪い。
  • 水冷システム推奨(付属クーラーなし)

性能は素晴らしいが、価格が高すぎてコスパは悪い

マルチスレッド性能はズバ抜けて高いし、ワットパフォーマンスもめちゃくちゃ良くて、その他の性能も十分。性能のみの評価は非常に高いです。ただ、やっぱり高すぎます。個人的には、Core i9 9900KRyzen 9 3900Xの6万円台中盤という価格も主流CPUというのはどうなんだって思うので、尚更です。事業用や一部のヘビーユーザーをまとめてターゲットとしているっぽいので、一般ユーザー目線で言うのがそもそも間違っているかもしれないですが、それならソケットは主流でも別シリーズとして発表して欲しかった感はあります。

また、クーラーが付属しておらず、水冷クーラー推奨というのもコスパ面でマイナスです。更に、ゲーミング性能がRyzen 9 3900Xと大差ないというのも大きいかなと思います。総合的なコスパではRyzen 3900Xの方が明らかに上だと思います。

ただし、ワットパフォーマンスの良さを活かせるなら、最高峰

費用面での批判はしましたが、ワットパフォーマンスの良さを活かせる場合においてはちょっと話が変わります。3950Xは、3900Xよりコア数(スレッド数)が33.3%分増えて性能が向上しているのにも関わらず、実際の消費電力はほとんど差がありません。ワットパフォーマンスの良さは随一です。3900Xから動作電圧が下がったようで、その賜物です。7nmプロセスの本領発揮といったところなのでしょうか。とにかく凄いです。

そのため、ひたすら大量の処理をさせ続けるような用途であれば、費用面でも優位に立てます。主流ソケット対応ではありますが、やはり事業用やごく一部のヘビーユーザー向けの、ワークステーションに近い立ち位置のCPUだと思います。初期費用の高さの問題はあるので、それでも一択とまではならないかもしれませんが、大量の処理をさせ続けるCPUとしては、現状最高のCPU間違いないです。


それでは、記事は以上で終わりになります。ご覧いただきありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です