「Ryzen 5 3600」は、第3世代Ryzenの中でも非常に優れたコスパを発揮しており、超人気CPUとなっています。その「Ryzen 5 3600」には、同じRyzen 5 で上位にあたる「Ryzen 5 3600X」が存在しますが、どちらを選ぶべきなのかを見ていきたいと思います。
簡易比較表
まずは「Ryzen 5 3600」と「Ryzen 5 3600X」の簡易比較表を見ていきましょう。
CPU | Ryzen 5 3600 | Ryzen 5 3600X |
---|---|---|
価格 | 26,000円 | 32,000円 |
PassMark | 20000 | 20500 |
コア/スレッド | 6(12) | 6(12) |
定格周波数 | 3.6GHz | 3.8GHz |
最大周波数 | 4.2GHz | 4.4GHz |
TDP | 65W | 95W |
L2キャッシュ | 3MB | 3MB |
L3キャッシュ | 32MB | 32MB |
付属クーラー | Wraith Stealth | Wraith Spire |
コスパ | 0.8 | 0.683 |
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PassMarkのスコアでは3600と3600Xの性能差は非常に小さいです。性能についてはこの後もう少し詳しく見ていきますが、同じ世代かつ、同じRyzen 5で、コア・スレッド数やキャッシュ量も同じなので、ベンチマークでも大きな差とはならないでしょう。
最大の問題となってくるのはやはり価格差です。約32,000円と約26,000円で、約6,000円の価格差があります。この価格差を性能差やその他の要素(主に消費電力や発熱、付属クーラー)で埋めれるか、という部分が焦点となるかと思います。
まずは、処理性能について見ていきましょう。
処理性能について
ベンチマーク測定記事を参考に、Ryzen 5 3600とRyzen 5 3600Xの各種性能についてもう少し詳しく見ていきます。「シングルスレッド性能」「マルチスレッド性能」「ゲーミング性能」の3点を見ていきます。3600Xの方が上位モデルで、性能が上なのは当然なため、その差に注目して見ていきましょう。
環境としては、マザーボードが「Gigabyte X570 Aorus Xtreame」、メモリーは「DDR4-3200 16GB」、GPUは「GeForce RTX 2080 Ti」と、全体的にハイエンドな環境となっています。詳細は、お手数ですがページ最下部の参考リンクをご覧ください。
シングルスレッド性能
今回は、Cinebench R20というベンチマークの数値を見ていきます。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Ryzen 5 3600X | 497 |
Ryzen 5 3600 | 481 |
3600Xが約3.3%上回る
マルチスレッド性能
シングルスレッド性能と同じく、Cinebench R20というベンチマークの数値を見ていきます。
CPU名称 | スコア |
---|---|
Ryzen 5 3600X | 3684 |
Ryzen 5 3600 | 3604 |
3600Xが約2.2%上回る
ゲーミング性能
ゲーミング性能は、言葉の通りゲームする際のパフォーマンスの性能です。実際にゲームを起動してみた際のFPS数で比較されます。
今回は、4種類のゲームでFPS数を測定した際の、平均FPS数の数値を見ていきます。前述しましたが、使用されたGPUは「Geforce RTX 2080 Ti」という超ハイエンドGPUとなっており、解像度は全て「1080p」で、その設定は全ていわゆる「ウルトラ(可能な限り最高の設定)」となっています。
CPU名称 | FPS |
---|---|
Ryzen 5 3600X | 127 |
Ryzen 5 3600 | 125 |
3600Xが上回るも、差はほぼ無し
こちらもまた3600Xが上回るものの、平均FPSの差は2FPSと非常に小さいです。率でいえば約1.6%ですね。シングルスレッド性能とマルチスレッド性能も含めほぼ全性能で勝っているとはいえ、どれも非常に僅差でした。実用性的には全く変わらないレベルなので、6,000円の価格差を埋めるにはもう一声欲しいところだと思います。
消費電力と付属クーラー
次に消費電力と付属クーラーについて見ていきます。処理性能では3600Xが全て上回っていたものの、差は僅かでした。なので、実はこちらが本題です。
消費電力
まずは消費電力について見ていきます。それぞれのTDPは、3600が65W、3600Xが95W となっており、3600Xの方が消費電力も高い事が伺えますが、実際にはどれほどの差があるのでしょうか。
CPU | 消費電力 |
---|---|
Ryzen 5 3600X | 146W |
Ryzen 5 3600 | 140W |
TDPでは30Wもの差があった両者ですが、実際の消費電力の差は約6Wと割と小さいようです。消費電力の差がこの程度であれば、同じアーキテクチャの同時発売CPUでは発熱もさほど変わらないはずです。3600Xの「95W」という、ぱっと見印象が悪く見えるTDPは、実際には気にするほどではなさそうです。
とはいえ、処理性能の差も小さいので、褒めるところというよりは懸念材料が減ったという感じですね。
付属クーラー
次に付属クーラーについて見ていきます。処理性能に続き、消費電力や発熱でもあまり差が無かったので、この付属クーラーが価格差を埋めるための最大の焦点です。
それぞれの付属クーラーは、「Ryzen 5 3600」が「Wraith Stealth」で、「Ryzen 5 3600X」が「Wraith Spire」となっています。実物を見れば一目瞭然ですが、3600Xの「Wraith Spire」の方がヒートシンクが大きく、高い冷却性能を持っている事が伺えます。
3600Xの方が処理性能で僅かにリードしている分を、価格差の6,000円から差し引き、ざっとした目安ですが、おおよそ3,000円~4,000円程度の価値を見出せるかという点が勝負の分かれ目となるかなと思います。実際の結果を見ていきましょう。
付属クーラー比較
【Ryzen 5 3600】
クーラー | CPU温度(最大) |
---|---|
Wraith Stealth (3600付属) | 最大 80アイドル時 33 |
Wraith Spire (3600X付属) | 最大 72アイドル時 30 |
【Ryzen 5 3600X】
クーラー | CPU温度(最大) |
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Wraith Stealth (3600付属) | 最大 86アイドル時 35 |
Wraith Spire (3600X付属) | 最大 78アイドル時 31 |
どちらのCPUも、3600のWraith Stealth より3600XのWraith Spire の方が、6度ほど低くなっています。ヒートシンクの大きさは伊達ではなく、確かに3600XのWraith Spire の方が冷却性能が高いです。
ただし、CPU自体の発熱が3600Xの方が多いため、お互いに自身が付属しているクーラー使用時の温度だと、差は2度ほどです。常時2度の差があると考えると割と大きい気もしますが、価格差を埋めるほどの魅力は正直感じません。
その界隈では言わずと知れた超人気CPUクーラー「虎徹」は3,000円~4,000円程度で購入できますが、「虎徹」を使用すれば、常に70度以下で維持する事は可能だと思います。そう考えると…うん。Ryzen 5 3600X を買うくらいなら、Ryzen 5 3600 を買って別のクーラーを購入した方がお得に感じます。しかも、付属クーラーは使い回しが難しいのに対して、例に挙げた「虎徹」は、使い回しが可能な点も優位です。
結論
比較をしてきて、個人的な結論をまとめています。
Ryzen 5 3600 と Ryzen 5 3600X はどっちを買えばいいですか?
Ryzen 5 3600です。あえて3600X を選ぶ理由は小さいと思います。
3600 と 3600X は約6,000円の価格差がありながら、処理性能の差はごく僅かです。割に合いません。付属クーラーは 3600X の「Wraith Spire」の方が冷却性能が高いのは確かですが、価格差の6,000円分の価値があるとは言い難いレベルでした。3600X を購入するくらいなら、3600 にして差額分をクーラー費用に充てる方が良いです。別売りのクーラーであれば汎用性の高いものも多く、今後の使い回しも期待できます。
最後に、3600Xと3600の差をまとめて終わりとしたいと思います。
【比較まとめ】「Ryzen 5 3600」と「Ryzen 5 3600X」
3600X の方が良い点
- 各種処理性能が僅かに高い(2~3%程度)
- 付属クーラーの冷却能力が少し高い
3600X の方が悪い点
- 価格が高い(約6,000円)
- 消費電力・発熱がやや多い
個人的結論:あえて3600Xを選ぶ理由は小さい
処理性能差が僅かで、付属クーラーで差をつけるしかない3600Xでしたが、その付属クーラーも価格差を埋め切れるほどの性能・魅力を発揮してくれませんでした。あえて3600X を購入する価値はあまり感じませんでした。
それでは記事はここまでになります。最後までご覧いただきありがとうございました。
どっちを購入しようかなやんでいてこちらにたどり着きました。
めちゃくちゃ参考になり助かりました。
ありがとうございます!
めっちゃわかりやすかったマジ感謝です
3600がOC耐性が無いのはあちこちで見かけてるので3600XのOC性能とその上での比較も見たかったな。
そうですね…。どちらもOC可能でかつチップ自体はほぼ同一のものだと思っていたので、載せる必要がないと判断して検討していませんでした。
今ちらっと海外レビューサイト等を見た限りでは、3600Xも3600同様に手動OCは出来ても伸びしろはほぼ無さそう感じでした。
どうやらそもそも基本仕様で、冷却性が十分に確保されているようなら本来のTDPよりも高い消費電力まで許容されているみたいで、何もしなくても条件付きでOCで稼働する感じになっているっぽいです。
手動OC耐性が無いことはそれも関係しているかもしれません。
とても参考になりました管理人さんありがとうございました。
日本語での解説、比較
大変ありがたかったです
参考になります!
例えば、価格が全く同じなら3600xもアリ…?
コメントありがとうございます。
価格が同じなら、少し性能が上でクーラーも良い3600Xの方がコスパは良いと思います。
大変勉強になりました。ありがとうございます!