「Ryzen 7 5700G」ざっくり評価【性能比較】

AMDのZen3採用のRyzen APU「Ryzen 7 5700G」のざっくり評価記事です。特にライトユーザーに非常に魅力的なRyzen APUの次世代モデルです。前世代の4000シリーズは一般市場には投入されませんでしたが、今回は一般市場にもリリースされる予定なので、自作ユーザーも注目のモデルです。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2021年7月21日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

簡易比較表

簡易比較表です。現在主要な他の競合CPUも参考に並べています。

簡易比較
CPU名 PassMark 参考価格
(北米)
コア
スレッド
クロック
定格-最大
TDP iGPU L3
キャッシュ
Ryzen 9 5900X 39537 $549 12/24 3.7 – 4.8GHz 105W 無し 64MB
Ryzen 7 5800X 28533 $449 8/16 3.8 – 4.7GHz 105W 無し 32MB
Core i9-11900K 25560 $539 8/16 3.5 – 5.3GHz 125W UHD 750(Xe 32EU) 16MB
Core i7-11700K 25025 $399 8/16 3.6 – 5.0GHz 125W UHD 750(Xe 32EU) 16MB
Ryzen 7 5700G 23663 $359 8/16 3.8 – 4.6GHz 65W Vega 8(8CU 2.0GHz) 16MB
Ryzen 5 5600X 22171 $299 6/12 3.7 – 4.6GHz 65W 無し 32MB
Core i5-11600K 19983 $262 6/12 3.9 – 4.9GHz 125W UHD 750(Xe 32EU) 12MB
Ryzen 5 5600G 19874 $259 6/12 3.9 – 4.4GHz 65W Vega 7(7CU 1.9GHz) 16MB
Core i5-11400 17597 $182 6/12 2.6 – 4.4GHz 65W UHD 730(Xe 24EU) 12MB

Ryzen 7 5700Gの希望小売価格(北米)は360ドルとなっており、5600Xと5800Xの中間あたりの価格になります。国内販売価格はおおよそ4万円台後半~5万円程度になると思います。発売予定日は8月5日です。価格的に、現状OEM限定になっているX無しモデル(例:Ryzen 9 5900)の価格帯を、一般消費者向けへカバーする目的も含まれていると思います。

Ryzen 7 5700GはデスクトップPC向けのRyzen 7ですが、L3キャッシュが5800Xの半分の16MBになっている点に注意です。消費電力やクロックが小さく設定されている事もあり、CPUとしてのパフォーマンスは5800Xよりは劣ることが予想されます。下位のRyzen 5 5600Gも同様にL3キャッシュは半分の16MBになっています。ただし、前世代のRyzen APU(4000G)から見るとL3キャッシュはこれでも倍増しているため、前世代のAPUモデルからすると増量ということにはなります。

内蔵GPUは前世代と同じVegaが搭載され、CU数の上昇もありませんでした。デスクトップ版のRyzen APUはモバイル版のRyzen APUが基となる事は予想できたのでそこまでの落胆はありませんが、Radeon 6000シリーズ採用のRDNA2を期待していた人にはがっかりかもしれません。ただし、CPUのアーキテクチャがZen3になったことにより、IPCや電力効率の向上は見込めるはずなので、副次的にGPUにも良い効果が出ることは考えられると思います。

また、処理性能には大きな影響は無いと思いますが、PCIe 4.0には対応しておらずPCIe 3.0までの対応になる点も注意です。個人的には3.0でも実用レベルで困ることはほとんど無いと思っていますが、規格的には古いです。

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアで見ていきます。一部スコアについては別記事から参照しているものがあるため、完全に同条件という訳ではない点に一応注意です。メモリやクロック設定については下記のようになっています。

その他の設定や環境等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench R20というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench R20 Single
CPU名称 スコア
Core i9-11900K
625
Ryzen 7 5800X
625
Core i5-11600K
602
Ryzen 5 5600X
600
Ryzen 5 5700G
580
Core i9-10900K
549
Core i5-11400F
541
Core i7-10700K
512
Ryzen 7 3700X
510
Ryzen 7 PRO 4750G
500
Ryzen 5 3600
487
Core i5 10400F
433

前世代から16%の大幅な向上

シングルスレッド性能は前世代から16%の大幅な向上です。5600XやTDPが105Wや125Wの最新モデルと比較すると少し劣りますが、TDP65Wのモデルとしては十分な性能だと思います。1コアあたりパフォーマンスは明らかに改善しており、Zen3になったことによる恩恵が見られます。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench R20というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench R20 Multi
CPU名称 スコア
Core i9-10900K
6420
Ryzen 7 5800X
6044
Core i9-11900K
5965
Ryzen 5 5700G
5432
Core i7-10700K
4985
Ryzen 7 3700X
4884
Ryzen 7 PRO 4750G
4834
Ryzen 5 5600X
4462
Core i5-11600K
4327
Core i5-11400F
3954
Ryzen 5 3600
3746
Core i5 10400F
3188

前世代から約12%の大きな向上

マルチスレッド性能は前世代から約12.4%の向上となっています。シングルスレッド性能の向上率からするとやや低めですが、大きな向上です。

5800Xや11900Kと比べると約1割ほど低速ですが、TDPが65WであることやL3キャッシュが少ないことを考慮すると、悪くないスコアだと思います。むしろ効率的に見えます。純粋なスコアでは劣るのは事実ですが、同じ8コアの上位CPUよりも安く、消費電力が少ない上に高性能なiGPUを備えることを考慮すると、とにかく高いCPU性能を求めている訳でなければ魅力的だと思います。価格と性能で5600Xと5800Xの中間を上手くカバー出来ていると思います。


ゲーミング性能

この項目では、実際にゲームを起動した際の平均FPS数を見ていきます。今回はRyzen APUということで、内蔵GPU(iGPU)と、dGPU(グラボ)搭載した際のそれぞれゲーミング性能を見ていきたいと思います。

内蔵GPU

今回は13種類のゲームで測定した平均FPSの数値を見ていきます。解像度は1080pで、設定は可能な限り低い設定です。参考までに一部エントリー~ミドル下位あたりのビデオカードのスコアも載せています。重いゲームも軽いゲームもごちゃ混ぜになっているため、FPS数値自体はあまり参考にせず、相対的な差を見るようにしましょう。

13種類のゲームでの平均FPS(1080p Low)
CPU名称
平均fps
RX 5500 XT (Ryzen 5 5600X)
141.2
GTX 1060 6GB (Ryzen 5 5600X)
124.4
Vega 8 (Ryzen 7 5700G)
47.1
RX 550 (Ryzen 5 5600X)
43.4
Vega 11 (Ryzen 5 3400G)
36.0
UHD 750 Xe (Core i7-11700)
20.1

Ryzen 7 5700GのVega 8はRX 550に近いものとなっており、内蔵としては非常に高い性能です。NVIDIAでいうと、GTX 750 Tiに匹敵するくらいの性能になりそうです。Core i7-11700搭載のUHD 750と比較すると、約2.7倍も優れた結果となっています。

まだ重いゲームを快適にプレイすることは難しいようですが、1080pの最低品質ならおおよそ30fps程度で動作することが可能なレベルにはなっています。また、3Dでも軽いゲームなら60fpsを下回ることがほぼ無いレベルで、快適にプレイすることが可能です。

まだゲーミングGPUの勢力図を塗り替えるほどのパワーはありませんが、着々と性能を上げて対応範囲を広げている事が伺えます。要求の高い用途でも軽いゲームぐらい、というライトユーザーには最適なCPUだと思います。

ただし、専用のビデオメモリを持たないという致命的なデメリットがあるため、高い解像度や動画編集などにおいては単体のGPU(ビデオカード)に対して大きな不利を抱える点は注意が必要です。現状の性能で1080pを超える解像度はを扱うなら、ディスプレイ出力や動画鑑賞ぐらいになってしまうと思います。


ビデオカード搭載時(dGPU)

次に、ビデオカード搭載時のゲーミング性能です。8種類のゲームで測定した平均FPSの数値を見ていきます。使用されているGPUは「RTX 3090」です。2021年現在では非常に性能の高いハイエンドGPUです。解像度は1080pで、設定は可能な限り高い設定です。

8種類のゲームでの平均fps(1080p Ultra)
CPU名称
平均fps
Core i9-11900K
198
Core i9-10900K
198
Ryzen 7 5800X
196
Ryzen 5 5600X
193
Core i7-10700K
188
Core i5-11600K
184
Core i5-11400F
177
Ryzen 7 5700G
175
Core i5-10400F
171
Ryzen 7 3700X
163
Ryzen 5 3600
154

Core i5-11400Fに近いスコアとなっています。旧世代のTDP:65Wモデルと比べると改善していますが、やはり最新の他CPUと比べると劣る印象です。たとえば、Ryzen 5 5600XやRyzen 7 5800Xと比べると約1割のfps低下が見られます。

低いパフォーマンスではないですが、高性能なビデオカードを搭載するなら、他の最新モデルCPUを検討した方が良いと思います。

その他

消費電力

ざっくりとした消費電力を見ていきます。Blender Open Dataを実行した際の消費電力を見ていきます。全コア稼働時の消費電力です。数値が低いほど良いです。

平均消費電力(Blender Open Data)
CPU名称
消費電力(W)
Ryzen 5 3400G
114
Ryzen 5 3600
150
Core i5-10400F
153
Ryzen 5 5600X
157
Core i5-11400F
181
Core i5-10600K
181
Ryzen 7 3700X
182
Ryzen 7 5700G
184
Ryzen 7 5800X
217
Core i5-11600K
221
Core i9-10900K
285
Core i9-11900K
307
Core i7-10700K
321

8コアCPUとしては少なめの消費電力

Ryzen 7 5700Gの消費電力はRyzen 7 3700XやCore i5-11400Fに近い結果となっています。8コアCPUとしては少なめの消費電力で、5800Xよりも約15%少ない電力使用量となっています。5800Xにはマルチスレッド性能では約1割遅れていましたが、15%の電力削減が見られるため、電力効率は上回っています。

価格も上位の8コアCPUよりは概ね安いため、コスパや電力効率も良い上に高性能なGPUを備えるRyzen 7 5700Gは、全体的に効率的なCPUと言えると思います。

まとめ

ざっくりと見てきましたが、評価をまとめています。

Ryzen 7 5700G

良い点
  • 前世代から大幅に向上したシングル・マルチスレッド性能
  • 優れた内蔵GPU性能
  • 優れた電力効率とコスパ
悪い点
  • グラボ搭載時のゲーミング性能がやや低い
    グラボ搭載時のゲーミング性能は、他のRyzen 5000Xや第11世代Coreシリーズにはやや劣ります。ただ、旧世代CPUよりは良いので、普通に使えます。

効率的なCPUで、性能と価格で5600Xと5800Xの中間を上手くカバー

Ryzen 7 5700Gは全体的に効率的なCPUという印象です。5800Xよりも安くて省電力で、コスパと電力効率も優れている点が魅力です。一般消費者向けでは約4万円のRyzen 5 5600Xと約6万円のRyzen 7 5800Xの中間CPUが無い事が問題視されていましたが、Ryzen 7 5800Gはそれを上手くカバー出来ていると思います。

また、Ryzen APUの最大の魅力である内蔵GPU性能も高いです。RX 550やGTX  750 Tiに近い性能を持っており、軽いゲームは快適にプレイすることが可能です。重いゲームはまだ厳しいですが、1080p低設定くらいなら一応動作は出来ます。

CPUは高性能なのでハイエンドな用途にも使えますし、グラフィック性能も軽い処理だけで良いなら十分なものを備えています。内蔵グラフィック性能がやはり重い処理では厳しいため、ライトユーザー向けにはなってしまいますが、CPU単体としては汎用性に優れる効率的なCPUです。

後からグラフィックを強化するという選択肢はどうか

Ryzen APUのようなCPUを見た時に考えられるのが、まずは内蔵GPUで運用し、後からビデオカードを増設してグラフィックを強化するという保険の選択肢だと思います。

これに関してまず留意しないといけないのは、外部GPU搭載時のゲーミング性能がRyzen 7 5700Gはやや低いということです。4万円~5万円の8コアCPUなのに、Core i5-11400Fに近い性能になってしまいます。5800Xと比べるとRTX 3090搭載時に約1割ほどfpsが低くなります。ゲームでない他ソフト処理での1割差なら、わずかに待ち時間が増えるだけで済みますが、ゲームでfpsが減ると明確な差が出るので気になるところです。

とはいえ、前世代のCPUよりはグラボ搭載時でも軒並み高いゲーミング性能ですし、普通に使える性能ではあります。ただ、グラボ搭載を意識するとゲーミングコスパと電源が気になります。

グラボ搭載時の近いゲーミング性能のCore i5-11400Fですが、北米価格で180ドルほどなので360ドルのRyzen 7 5700gよりも、日本円にして約2万円も安く購入することが可能です。CPU性能はやや低くなるものの、2万円の価格差を考えればむしろ高いと言える性能です。グラボ搭載を意識するならコスパではCore i5-11400Fの方が大幅に良いです。

また、後からビデオカードを増設するには、当然電源もその分の容量を備えている必要があります。事前にその分の高い容量の電源を導入しておくのもありですが、それではその追加費用は、ビデオカードを増設しないと活かされません。電源ごと交換する選択肢もありますが、予算的には始めから高い容量のものにしておくよりも悪くなりますし、PC初級者にはハードルが高いです。後からの保険がある選択肢にするにしても中々難しそうだなという印象です。


ざっくりとでしたが記事は以上になります。ご覧いただきありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です