「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」ざっくり評価【性能比較】

「Zen 5」アーキテクチャ採用の新世代「Ryzen 9000シリーズ」の「Ryzen 9 9950X」と「Ryzen 9 9900X」のざっくり評価記事です。日本での発売はもう少し後になるようですが、海外ではレビューおよび発売が開始されたので、海外レビューを参考にざっくり評価していきたいと思います。

追記:発売予定日は8月23日になったようです。

注意

本記事の内容は記事執筆時点(2024年8月15日)のものとなります。ご覧になっている際には異なる可能性があるため注意してください。

掲載の価格は、主にAmazonや価格.comを参考にしたおおよその市場価格です。

追記:本記事の投稿後に、Windowsの更新による分岐予測性能や、BIOSアップデートでCCD間の遅延が改善し、特にゲーム性能ではわずかに改善が見られているようです(ただし、分岐予測性能の改善はRyzen 9000だけでなく、Ryzen 5000~7000にも影響するらしいので、Ryzen間の相対的な差はほぼ変わらず)。そのため、実際のゲーム性能はわずかに高くなっていることを意識してご覧いただいた方が良いかもしれません。

簡易比較表

前世代との比較

まずは、前世代の「Ryzen 7000シリーズ」の先代モデルと比較して仕様を確認していきます。

Ryzen 9 9950X
Ryzen 9 9900X
Ryzen 9 7950XRyzen 9 7900X
アーキテクチャZen 5Zen 5Zen 4Zen 4
プロセス
4nm + 6nm
(CCD + IOD)
4nm + 6nm
(CCD + IOD)
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
5nm + 6nm
(CCD + IOD)
ソケットAM5AM5AM5AM5
コア
16コア
12コア16コア12コア
スレッド
32スレッド
24スレッド32スレッド24スレッド
TDP(PL1)170W120W170W170W
PPT (TDP/PL2)
230W
162W
230W
230W
クロック(基本)
4.3GHz
4.4GHz4.5GHz4.7GHz
クロック(最大)
5.7GHz
5.6GHz5.7GHz5.6GHz
L1キャッシュ
1280KB960KB1024KB768KB
L2キャッシュ
16MB12MB16MB12MB
L3キャッシュ
64MB
64MB
64MB
64MB
Tjunction max
(最大温度)
95℃95℃95℃95℃
内蔵GPU
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
Radeon Graphics
(RDNA2 / 2CU)
対応メモリ
(定格最大)
DDR5-5600
DDR5-5600DDR5-5200DDR5-5200
発売時の
希望小売価格
649ドル
499ドル
699ドル549ドル

おおまかなCPU仕様の違いは以上のような感じになっています。

「Ryzen 9000シリーズ」では、CPUのアーキテクチャがZen 4からZen 5に更新され、CCDの製造プロセスが5nm→4nmへとわずかに微細化されています。しかし、その他は多くの仕様が前世代を引き継いでいるため、新世代ながら分かり易いシリーズとなっています。

まず、ソケットも前世代と同じ「Socket AM5」を採用しています。そのため、既存の600シリーズチップセット(B650等)を使うことができます。しかし、その際にはBIOSアップデートが必要になる可能性はあるので注意が必要です。

また、ソケットが同じということはCPUクーラーも既存のものを使うことができるため、他パーツの登場や価格を気にせずに導入可能なのは嬉しい点です。

コア・スレッド数も前世代と同じで、Ryzen 9は16コア32スレッドと12コア24スレッドの2種類です。Coreとは異なり、小型コア(Eコア)を含まないシンプルなコア構成です。

キャッシュについても、L1キャッシュはわずかに増量されているものの、L2とL3キャッシュは前世代と全く同じ構成です。L2キャッシュを1コア1MBずつ搭載し、L3キャッシュはCCD1つ(8コアを含む)につき32MBを搭載します。9900XはCCDごとに2つずつコアが無効化された12コア(6+6)構成ですが、無効化コアの影響を受けずにL3キャッシュは搭載されており、64MBを使うことができます。

しかし、TDPについて9900Xには変更があります。先代の7900Xでは170Wだったのが、120Wに削減されています。PPT(最大消費電力)も230Wから162Wになっており、前世代のX3Dモデルと同様の数値になっています。

これにより消費電力と発熱が大幅に減り、標準設定でも空冷クーラーでの運用が可能なレベルになっていそうなのは良い点だと思います。また、先代モデルから性能を下げずに消費電力を大幅に下げるのに成功したということなので、効率の向上も期待できます。

価格面では、日本での価格はまだ明らかになっていませんが、米国における発売時の希望小売価格は前世代よりも若干安くなったのは注目です

「Ryzen 9 9950X」は649ドルとなっており、先代の7950Xの699ドルより50ドル安くなりました。「Ryzen 9 9900X」は499ドルで、先代の7900Xの549ドルよりも50ドル安くなりました。最近のPC関連では珍しい値下げとなっています。

また、最近では円高が急速に進んでおり、一時は1ドル160円を超えていたのが、記事執筆時点では1ドル147円台まで下がっています。

日本の価格に反映されるまでに少し期間が必要になるとは思いますが、少し待てば大幅に値下がりする可能性があるので、購入は価格が下がるのを待ってからの方が良さそうです。

また、CPU自体への変更ではないと思われますが、Ryzen 9000シリーズではRyzen 7000シリーズで利用可能だった「Curve Optimizer」を拡張した「Curve Shaper」という機能が使えるようになります。

詳細は割愛しますが、温度や負荷ごとに電圧オフセットを細かく設定することができる機能で、この機能により低負荷時の無駄なクロックブーストを防ぎつつも、高負荷なワークロードでは高いパフォーマンスを維持できるというものらしいです。

既存の電圧オフセット機能「Curve Optimizer」では全体に一律の値しか与えることができなかったため、低負荷時(シングルスレッド処理など)の負荷のみを下げるには最大クロックを下げるしかなく、そうするとシングルスレッド性能や高負荷時のパフォーマンスにも影響が出てしまうという不便さがありましたが、そこが改善されるっぽい?です。

ただし、恐らくこれは「Ryzen 9000シリーズ」特有の機能ではない可能性もあり、大きく評価を上げる要素とも正直思えないので、触れるだけに留めておこうと思います。

他の既存CPUとの比較

記事執筆時点の既存の主要CPUとの簡易比較表を参考に載せた後に、テスト結果の確認に移りたいと思います。

※掲載の価格は記事執筆時点のおおよその市場価格です。

簡易比較
CPU名コアスレッドクロック
定格 / 最大
TDP
(PL1 – PL2)
iGPUL3
キャッシュ
参考価格
Ryzen 9 9950X16324.3 / 5.7GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB
Ryzen 9 7950X3D16324.2 / 5.7GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)128MB92,800円
Ryzen 9 7950X16324.5 / 5.7GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB79,980円
Core i9-14900K24
(8P+16E)
323.2 / 6.0GHz
2.4 / 4.4GHz
125W – 253WUHD 77036MB92,380円
Core i9-14900KF24
(8P+16E)
323.2 / 6.0GHz
2.4 / 4.4GHz
125W – 253W無し36MB89,280円
Core i7-14700K20
(8P+12E)
283.4 / 5.6GHz
2.5 / 4.3GHz
125W – 253WUHD 77033MB66,030円
Core i7-14700KF20
(8P+12E)
283.4 / 5.6GHz
2.5 / 4.3GHz
125W – 253W無し33MB63,980円
Core i7-1470020
(8P+12E)
282.1 / 5.4GHz
1.5 / 4.2GHz
65W – 219WUHD 77033MB63,950円
Core i7-14700F20
(8P+12E)
282.1 / 5.4GHz
1.5 / 4.2GHz
65W – 219W無し33MB60,980円
Ryzen 9 9900X12244.4 / 5.6GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)64MB
Ryzen 9 7900X3D12244.4 / 5.6GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)128MB66,880円
Ryzen 9 7900X12244.7 / 5.6GHz170W – 230WRDNA 2(2CU)64MB61,900円
Ryzen 9 790012243.7 / 5.4GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)64MB59,800円
Core i5-14600K14
(6P+8E)
203.5 / 5.3GHz
2.6 / 4.0GHz
125W – 181WUHD 77024MB49,480円
Core i5-14600KF14
(6P+8E)
203.5 / 5.3GHz
2.6 / 4.0GHz
125W – 181W無し24MB45,980円
Ryzen 7 9700X8163.8 / 5.5GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB70,800円
Ryzen 7 7800X3D8164.2 / 5.0GHz120W – 162WRDNA 2(2CU)96MB59,800円
Ryzen 7 7700X8164.5 / 5.4GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB46,980円
Ryzen 7 77008163.8 / 5.3GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB45,980円
Ryzen 5 9600X6123.9 / 5.4GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB45,800円
Ryzen 5 7600X6124.7 / 5.3GHz105W – 142WRDNA 2(2CU)32MB33,800円
Ryzen 5 76006123.8 / 5.1GHz65W – 88WRDNA 2(2CU)32MB29,880円
Core i5-1440010
(6P+4E)
162.5 / 4.7GHz
1.8 / 3.5GHz
65W – 154WUHD 73020MB35,480円
Core i5-14400F10
(6P+4E)
162.5 / 4.7GHz
1.8 / 3.5GHz
65W – 148W無し20MB33,480円
Ryzen 7 5700X3D8163.0 / 4.1GHz105W – 142W無し96MB30,980円
Ryzen 7 5700X8163.4 / 4.6GHz65W – ?W無し32MB22,700円

処理性能

各処理性能をベンチマークスコアを海外レビューを参考に見ていきます。使用されたメモリは、DDR5に対応しているモデルでは「DDR5-6000 CL36」で、DDR4の場合は「DDR4-3600 CL14」か「DDR4-3400 CL14」となっています。

ゲームのテストで使用されたGPUは「RTX 4090」となっています。

その他の細かい環境や設定等については、お手数ですが冒頭の参考リンク先の記事を参照してください。


マルチスレッド性能

マルチスレッド性能は、CPUの全コア稼働時の処理性能を表します。マルチスレッド性能が高いと、動画のソフトウェアエンコード(CPUエンコード)やレンダリングなど、膨大な量の処理に掛かる時間が短くなる他、複数タスクでのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあります。

今回は、Cinebench 2024というレンダリングのベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。

Cinebench 2024 Multi
CPU名称スコア
Ryzen 9 9950X
2305
Core i9-14900K
2257
Core i9-13900K
2187
Ryzen 9 7950X
2142
Ryzen 9 7950X3D
2094
Core i7-14700K
1950
Ryzen 9 9900X
1829
Core i7-13700K
1713
Ryzen 9 7900X
1668
Core i9-12900K
1589
Ryzen 9 5950X
1535
Ryzen 9 7900
1467
Core i5-14600K
1410
Core i5-13600K
1322
Core i7-12700K
1312
Ryzen 9 5900X
1258
Ryzen 7 9700X
1208
Ryzen 7 7700X
1149
Ryzen 7 7700
1106
Ryzen 7 7800X3D
1104
Core i5-12600K
1023
Ryzen 5 9600X
975
Ryzen 5 7600X
886
Ryzen 7 5800X3D
885
Ryzen 5 7600
849
Core i5-13400F
837
Ryzen 7 5700X
826
Core i5-12400F
679
Ryzen 5 5600X
676
参考:TechPowerUp

マルチスレッド性能は先代から約7.6%~9.7%の小さめの向上

マルチスレッド性能では9950Xは「Core i9-14900K」を抜き去り、現時点(2024年8月)の一般消費者向けのCPUとしてはトップのマルチスレッド性能となりました。凄まじい性能です。

一方9900Xは、残念ながら競合のCore i7-14700Kには届きませんでした。TDPの低下で電力面では上回るのは考慮すべき要素ですが、後から登場した新世代が既存の競合モデルに負けるというのはちょっと残念です。

そして、先代モデル(7950X / 7900X)と比較してみると、向上率はおおよそ約+7.6%~9.7%に留まっており、新世代の向上率としては小さいです。

旧世代の向上率を見てみると、「Ryzen 9 5950X」と「Ryzen 9 7950X」の比較では+39.5%となっていることを考えると、やはり大きな向上とは言えないです。

9950Xも現状ではトップに立ったものの、第14世代Coreとの差も小さいので、新世代のCoreが出てくると厳しい状況になりそうな気がします。

ただし、希望小売価格の低下や円高傾向など、価格面では期待ができそうな要素が多いため、ハイエンドクラスのマルチスレッド性能コスパという面では、少なくとも新世代のCoreが登場するまでは有力になるかもしれません。

しかし、そもそも前世代と比べて向上率が小さくて実用性に大差は無さそうなので、あえて買い換えたくなるような、新世代に求められるような絶対的な優位性は、あるようには見えないのが本音です。

シングルスレッド性能

シングルスレッド性能は、1コアでの処理性能を表します。シングルスレッド性能が高いと、軽い処理に掛かる時間が短くなる(サクサク動く)他、全コア稼働時にも当然影響がありますので、ほぼ全ての処理に対して有利に働きます。

今回は、Cinebench 2024というベンチマークソフトで測定された数値で見ていきます。レンダリングのベンチマークテストです。

Cinebench 2024 Single
CPU名称スコア
Ryzen 9 9950X
138
Core i9-14900K
137
Ryzen 9 9900X
137
Ryzen 7 9700X
135
Core i9-13900K
133
Ryzen 5 9600X
133
Core i7-14700K
129
Core i7-13700K
125
Ryzen 9 7950X
124
Ryzen 9 7950X3D
123
Ryzen 9 7900X
122
Core i5-14600K
122
Core i9-12900K
120
Ryzen 7 7700X
120
Ryzen 9 7900X
119
Ryzen 5 7600X
119
Core i5-13600K
118
Core i7-12700K
116
Ryzen 7 7700
116
Ryzen 7 7800X3D
114
Core i5-12600K
114
Core i5-13400F
107
Core i5-12400F
103
Ryzen 7 5800X3D
95
Ryzen 7 5700X
95
Ryzen 5 5600X
95
参考:TechPowerUp

シングルスレッド性能は先代から12%程度の向上で、Core i9-14900Kと同等に

シングルスレッド性能は「Core i9-14900K」と同等クラスになりました。現状(2024年8月時点)でトップクラスです。

先代(7950X/7900X)と比較しても12%程度のやや大きめの向上となっています。最大クロックは先代と同じ値を維持しているので、Zen 5でコア自体の性能が向上していることが伺えます。

しかし、現状のCoreに対しても優位性はほぼ無い訳なので、Core側の新世代が登場すれば、再度抜かれる可能性が高そうです。


ゲーミング性能

この項目でのゲーミング性能は、実際にゲームを起動した際のFPSを見ていきます。内蔵GPUの性能ではなく、高性能なグラフィックボードを使用した際の性能である点に注意してください。

今回は10種類のゲームで測定したFPSの平均を見ていきます(レイトレーシング含む)。使用されたGPUは「GeForce RTX 4090」で、その他の設定はウルトラ(可能な限り最高の設定)です。測定に使用されたゲームタイトルやその他の環境は、お手数ですが記事冒頭のリンクからご確認お願いします。

また、計測タイトルは重量級ゲームが中心な上に最高設定なので、RTX 4090の割には全体的にfpsが低めです。本記事では触れませんが、下記の結果はどの環境でも維持されるものではなく、特に軽いゲームでfpsが非常に高い場合は、他の性能よりもマルチスレッド性能が高いCPUの方が有利な傾向がある点に注意してください。

10種類のゲームでの平均fps(1080p)
CPU名称スコア
Ryzen 7 7800X3D
193.1
Core i9-14900K
186.3
Ryzen 9 7950X3D
186.1
Core i9-13900K
185.1
Core i7-14700K
182.5
Core i7-13700K
181.1
Ryzen 9 9950X
180.0
Ryzen 7 9700X
178.4
Ryzen 9 9900X
178.2
Ryzen 5 9600X
177.5
Ryzen 9 7950X
177.0
Ryzen 7 7700X
175.9
Ryzen 9 7900X
175.2
Ryzen 7 7700
174.8
Ryzen 5 7600X
173.2
Core i5-14600K
172.9
Ryzen 7 5800X3D
171.7
Ryzen 9 7900
171.3
Ryzen 5 7600
170.5
Core i5-13600K
170.1
Core i9-12900K
168.7
Core i7-12700K
164.2
Ryzen 9 5950X
158.2
Ryzen 9 5900X
156.2
Core i5-12600K
153.4
Core i5-13400F
145.9
Ryzen 7 5700X
147.5
Ryzen 5 5600X
147.1
Core i9-11900K
146.6
Core i5-12400F
142.7
Ryzen 7 5700G
128.7
Core i5-11400F
114.9
参考:TechPowerUp
10種類のゲームでの平均fps(1440p)
CPU名称スコア
Ryzen 7 7800X3D
156.8
Core i9-14900K
155.0
Core i9-13900K
154.4
Core i7-14700K
153.2
Ryzen 9 7950X3D
152.6
Core i7-13700K
151.7
Ryzen 9 7950X
149.4
Core i5-14600K
148.8
Ryzen 5 9600X
148.6
Ryzen 9 9950X
148.5
Ryzen 9 9900X
148.4
Ryzen 7 9700X
148.3
Ryzen 9 7900X
148.3
Ryzen 7 7700X
148.1
Ryzen 7 5800X3D
147.5
Core i5-13600K
147.2
Core i9-12900K
146.8
Ryzen 9 7900
145.8
Ryzen 7 7700
146.6
Ryzen 5 7600
144.3
Ryzen 5 7600X
146.2
Core i7-12700K
143.9
Ryzen 9 5950X
140.4
Ryzen 9 5900X
139.3
Core i5-12600K
137.7
Ryzen 7 5700X
134.2
Ryzen 5 5600X
134.0
Core i5-13400F
133.6
Core i9-11900K
133.3
Core i5-12400F
131.4
Ryzen 7 5700G
120.9
Core i5-11400F
111.0
参考:TechPowerUp
10種類のゲームでの平均fps(4K)
CPU名称スコア
Ryzen 7 7800X3D
101.1
Ryzen 9 7950X3D
101.0
Core i9-14900K
100.3
Core i9-13900K
100.0
Core i7-14700K
99.8
Core i7-13700K
99.4
Ryzen 9 7950X
99.1
Ryzen 9 9950X
99.0
Ryzen 9 9900X
98.9
Ryzen 9 7900X
98.8
Ryzen 7 5800X3D
98.8
Core i5-14600K
98.7
Ryzen 5 9600X
98.7
Ryzen 7 7700X
98.6
Ryzen 7 9700X
98.3
Core i9-12900K
98.3
Core i5-13600K
98.1
Ryzen 9 7900
98.1
Ryzen 7 7700
98.0
Core i7-12700K
97.5
Ryzen 5 7600X
97.4
Ryzen 5 7600
97.2
Ryzen 9 5950X
95.5
Core i5-12600K
95.2
Ryzen 9 5900X
95.0
Core i5-13400F
93.7
Ryzen 5 5600X
92.8
Core i5-12400F
92.6
Ryzen 7 5700X
92.6
Core i9-11900K
92.0
Ryzen 7 5700G
88.1
Core i5-11400F
84.9
参考:TechPowerUp

フルHDゲーム性能は先代からは約1.7%の微増レベルの向上で、前世代のX3Dには劣る結果に

注目度の高いゲーム性能です。残念ながら、先代から微増レベルです。フルHD平均を見てみると、先代モデル(7950X/7900X)と比較するとfpsは1.7%前後のわずかな向上でした。

先に登場した9700Xと9600Xの性能から予測はできていましたが、やはり微妙でした。事前発表ではIPCは16%向上しているとのことでしたが、その効果はゲームでは大して感じられませんでした。

また、前世代でゲーム性能トップの「Ryzen 7 7800X3D」にはやはり追い付くことができず、その差もフルHDで7%以上と大きめです。キャッシュ量がそこまで影響を与えないゲームであれば少し優位な状況も見られましたが、総合的には7800X3Dの方が有利でした。

X3Dモデルが未だに優位を保ち続けることから見ても、ゲームでは現状はキャッシュメモリ容量の重要度の方がやはり大きそうです。そのため、コアやCCDのキャッシュ容量がほぼ変わらない9000シリーズでは、アーキテクチャ刷新によるゲーム性能向上には限界があり、X3Dモデルに期待するしか無さそうです。

また、第13,14世代のCoreのK付き(例:Core i7-14700K 等)に届いていないのも痛いです。

新世代なのに、既存CPUで優れた選択肢がいくつもあるので、やはりゲームではRyzen 9000シリーズのX3D以外のモデル(3D V-Cache無しモデル)は、強くはないと言わざる得ないと思います。

マルチスレッド性能自体は非常に優れているため、軽いゲームでは優位性が得られることもありますが、重量級ゲームを含む、様々なジャンルのゲームに対応したゲーム特化CPUを求めるなら、大半の人は7000のX3Dモデルを選択するのではないかと思います。

やはり、9000シリーズでゲーム用のCPUを求める場合は、X3Dモデルを待つ方が賢明かなと思います。

ただし、希望小売価格の低下や円高傾向のことを考えると、予想以上に安価に購入できる可能性もある点は注目ではあります。

Coreは不具合の件で信用が落ち気味なので、価格がCoreと同等クラスになればRyzen 9000を選択したいという人は多いと思うので、マルチスレッド性能コスパ重視で、ゲーム性能は特化するほどではない場合には、価格次第で選択肢に入る可能性は十分あると思います。

消費電力や効率

消費電力

消費電力を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」による消費電力と、ゲーミング時平均による消費電力の二つを見ていきます。

消費電力(Blender CPUのみ)
CPU名称消費電力
Ryzen 7 5700X
56
Ryzen 5 5600X
60
Core i5-12400F
63
Core i5-13400F
65
Ryzen 7 7800X3D
74
Ryzen 9 7900
74
Ryzen 5 7600
76
Ryzen 7 7700
80
Ryzen 5 9600X
80
Ryzen 7 9700X
80
Ryzen 7 5800X3D
89
Ryzen 5 7600X
102
Ryzen 9 5950X
117
Core i5-12600K
119
Ryzen 9 5900X
133
Ryzen 7 7700X
135
Core i5-13600K
139
Core i5-14600K
145
Ryzen 9 7950X3D
147
Core i7-12700K
164
Ryzen 9 9900X
173
Ryzen 9 7900X
197
Core i7-13700K
212
Ryzen 9 9950X
220
Core i7-14700K
222
Core i9-12900K
237
Ryzen 9 7950X
260
Core i9-13900K
279
Core i9-14900K
281
参考:TechPowerUp
消費電力(13ゲーム平均)
CPU名称消費電力
Core i5-12400F
40
Ryzen 7 7800X3D
46
Ryzen 5 5600X
47
Core i5-13400F
48
Ryzen 7 5700X
49
Ryzen 5 7600
50
Ryzen 7 5800X3D
58
Ryzen 7 7700
60
Core i5-12600K
61
Ryzen 5 9600X
66
Ryzen 5 7600X
66
Ryzen 9 7950X3D
68
Ryzen 7 7700X
70
Ryzen 9 7900
71
Ryzen 7 9700X
71
Core i7-12700K
74
Core i5-14600K
76
Core i5-13600K
79
Ryzen 9 5900X
98
Core i9-12900K
98
Ryzen 9 9900X
100
Core i7-13700K
102
Ryzen 9 9950X
104
Ryzen 9 7900X
104
Ryzen 9 5950X
108
Core i7-14700K
116
Ryzen 9 7950X
116
Core i9-13900K
145
Core i9-14900K
149
参考:TechPowerUp

消費電力は先代から少し減少

消費電力は先代から少し減少しています。9950Xから見てみると、レンダリングテスト時には220Wとなっており、先代の7950Xの260Wから約-15.4%です。消費電力自体は非常に多くて水冷クーラー推奨レベルなのは変わりませんが、温度の減少が期待できるのは嬉しいです。

ゲーム時には104Wとなっており、先代の116Wから約-10.3%です。Core i9-14900Kの149Wよりは格段に少なくなっており、温度および効率でも大きく上回りそうなのは良いです。

次に9900Xを見てみると、レンダリングテスト時には173Wとなっており、先代の7900Xの197Wから約-12.2%です。170W台なら空冷でも大型なら対応できるレベルなので、結構大きな意味を持ちそうです。

ゲーム時には100Wとなっており、こちらは先代の104Wからわずかな低下に留まっています。

消費電力は先代よりも少し減っており、Intelの競合製品であるCore i9(K付き)よりも優位に立っているのは良いです。

しかし、「Ryzen 9 7950X3D」には圧倒的に負けているというのが気になるところで、マルチスレッド性能をとにかく特化したいユーザーでない場合は、7950X3Dの方が扱い易さ的にも実用的にも明らかに上に見えてしまいます。

電力効率(ワットパフォーマンス)

電力効率を見ていきます。レンダリングおよびゲーミング時の効率です。

各テストで得られたスコアを消費電力で割って算出した、1Wあたりのスコアで見ていきます。ただし、効率が悪かったとしても、レンダリングなどの処理量が決まっているスコアでは高性能な方が処理を早く終えることが出来るため優位性がありますし、ゲームにおいても高いfpsを得ているので、効率が悪いから一概にダメという訳ではない点を留意です。

電力効率(Cinebench Multi)
CPU名称1Wあたりのスコア
Ryzen 9 7900
20.7
Ryzen 9 7950X3D
17.0
Ryzen 7 7800X3D
16.2
Ryzen 7 9700X
15.7
Ryzen 7 7700
15.0
Core i5-13400F
14.1
Ryzen 7 5700X
13.7
Ryzen 9 5950X
12.8
Ryzen 5 9600X
12.7
Ryzen 9 9900X
12.0
Ryzen 9 9950X
11.6
Ryzen 5 5600X
11.6
Ryzen 5 7600
11.5
Core i5-12400F
11.3
Ryzen 7 5800X3D
10.6
Core i5-14600K
10.4
Ryzen 9 5900X
10.2
Ryzen 9 7900X
10.1
Core i5-13600K
10.1
Ryzen 9 7950X
10.0
Ryzen 7 7700X
9.8
Core i5-12600K
9.4
Core i7-14700K
9.4
Core i7-12700K
9.0
Core i9-14900K
8.6
Ryzen 5 7600X
8.6
Core i7-13700K
8.5
Core i9-13900K
8.3
Core i9-12900K
7.5
参考:TechPowerUp
電力効率(14ゲーム1080p平均)
CPU名称1Wあたりのfps
Ryzen 7 7800X3D
4.25
Core i5-12400F
3.78
Ryzen 5 7600
3.53
Ryzen 5 5600X
3.19
Core i5-13400F
3.18
Ryzen 7 5700X
3.06
Ryzen 7 5800X3D
3.05
Ryzen 7 7700
3.02
Ryzen 5 9600X
2.80
Ryzen 9 7950X3D
2.76
Ryzen 5 7600X
2.72
Core i5-12600K
2.68
Ryzen 7 7700X
2.66
Ryzen 7 9700X
2.59
Core i5-14600K
2.41
Core i7-12700K
2.39
Ryzen 9 7900
2.39
Core i5-13600K
2.22
Core i7-13700K
1.88
Ryzen 9 9900X
1.85
Core i9-12900K
1.82
Ryzen 9 9950X
1.80
Ryzen 9 7900X
1.70
Core i7-14700K
1.63
Ryzen 9 5900X
1.61
Ryzen 9 7950X
1.54
Ryzen 9 5950X
1.48
Core i9-13900K
1.35
Core i9-14900K
1.32
参考:TechPowerUp

マルチスレッド効率は先代から16%~18.9%の向上で、Core(K付き)よりも大幅に優れた効率。ただし、前世代のX3Dには大敗

電力効率は、競合の第13,14世代のK付きのCore i7 / i9(例:Core i9-14900K)よりも大幅に優れています。

マルチスレッド効率を先代と比較すると、約+16%~18.9%の大きめの向上が見られます。ベースTDPが125W以上に設定されている高消費電力モデルの電力効率は悪い傾向がありますが、その設定下でも全体で見て良い部類になるくらいには効率が良いです。

数値自体は省電力CPUに大きく見劣りはするものの、電力制限を設ければ更に良い数値になることが期待できるので、調整は必要になりますが、マルチスレッド性能と効率に特化するのであれば、強力なCPUであると思います。

続いてゲーム時の効率を見てみると、9950Xは約16.9%、9900Xは約8.8%の向上となっています。マルチスレッド性能よりも向上率は少し落ちますが、進歩しています。

しかし、ゲーム時の効率に関しては全体で見ると悪い部類であり、他の省電力CPUや、X3Dモデルと比較すると大敗です。

電力制限をして多少改善することを考慮しても、前世代のX3Dモデルにゲーム時効率で追いつくのは厳しそうなので、やはりゲーム用CPUとしては前世代のX3Dには劣る印象です。

マルチスレッド性能の向上は考慮すべきですが、向上率は劇的というほどではなかったので7950X3Dならマルチスレッドの実用性能も大差ないと捉えることができますから、実用性能や効率を考えれば7950X3Dの方が上に見えてしまいます。

しかし、「第13,14世代のK付きのCore(例:Core i9-14900K)」に対しては電力面では全体的に勝っていますし、ゲーム性能差も縮まったので、価格が同等なら競合メーカー製品からシェアを奪える可能性は十分あると思います。

温度

CPUの温度を見ていきます。非常に高負荷なレンダリングソフト「Blender」動作時と、ゲーミング時(Cyberpunk 2077)の二つの温度を見ていきます。基準温度は25℃で、動作から10分後の定常状態の温度となっています。

冷却システムは、CPUクーラーに「NH-D15」が使用されています。14cmファン2基でファン1つに付き1つのヒートシンクを備えたツインタワー空冷クーラーとなっており、空冷としては非常に高い冷却能力となっています。しかし、240mm以上の水冷やハイエンド空冷にはやや劣る冷却能力です。

レンダリング時の温度(Blender)
CPU名称温度
Core i5-13400F
42.6
Core i5-12400F
46.1
Ryzen 9 7900
46.4
Ryzen 7 5700X
47.2
Core i9-11900K
54.0
Ryzen 5 5600X
58.6
Ryzen 7 9700X
59.1
Ryzen 9 5950X
60.1
Ryzen 5 7600
61.6
Ryzen 7 7700
61.7
Ryzen 9 5900X
63.6
Core i5-12600K
65.2
Ryzen 5 9600X
65.4
Core i5-14600K
69.6
Ryzen 9 9900X
71.0
Core i5-13600K
71.5
Core i7-12700K
72.4
Ryzen 7 5800X3D
73.0
Ryzen 7 7800X3D
75.8
Ryzen 9 7950X3D
77.0
Core i7-14700K
79.8
Ryzen 9 9950X
81.6
Core i7-13700K
86.0
Core i9-14900K
87.5
Ryzen 7 7700X
89.3
Ryzen 5 7600X
89.7
Core i9-12900K
90.4
Ryzen 9 7900X
91.6
Ryzen 9 7950X
92.0
Core i9-13900K
95.4
参考:TechPowerUp
ゲーム時の温度(Cyberpunk 2077)
CPU名称温度
Core i5-12400F
41.0
Core i5-13400F
42.1
Ryzen 7 5700X
47.2
Ryzen 9 7900
48.1
Core i5-12600K
50.5
Core i7-12700K
52.2
Ryzen 9 7950X3D
52.2
Ryzen 5 7600
53.9
Ryzen 5 5600X
55.2
Core i9-11900K
55.6
Core i5-14600K
56.3
Ryzen 9 5900X
59.7
Core i9-12900K
60.1
Ryzen 9 7950X
60.6
Ryzen 7 7700
61.3
Ryzen 7 9700X
61.3
Core i5-13600K
61.6
Ryzen 9 5950X
62.7
Ryzen 7 7700X
63.6
Ryzen 5 9600X
65.0
Core i7-14700K
65.0
Ryzen 9 7900X
65.2
Ryzen 7 5800X3D
65.3
Ryzen 9 9900X
65.7
Core i7-13700K
65.8
Ryzen 5 7600X
68.2
Ryzen 7 7800X3D
69.2
Ryzen 9 9950X
71.1
Core i9-14900K
73.4
Core i9-13900K
77.6
参考:TechPowerUp

マルチスレッド処理時の温度が大幅に改善

CPU温度は、マルチスレッド処理時の温度が先代から大幅に改善しています。

7950Xでは92℃だったのが、9950Xでは81.6℃になっており、約-10.4℃と大幅に改善しています。

Core i9-14900Kを超えるマルチスレッドを発揮しつつ、空冷でも80℃前半を維持できるというのは、マルチスレッド性能を断続的に続ける運用の場合には非常に魅力的だと思います。ハイエンド空冷で80℃を超えるので、水冷推奨なのは変わりませんが、先代よりは温度の不安さは格段に軽減されています。

9900Xに関しては71℃になっており、7900Xの91.6℃から-20.6℃という劇的な温度改善が見られます。こちらは空冷でも高性能なものなら運用が可能そうなレベルになったのは大きいと思います。

前世代のRyzen 7000シリーズは消費電力の割に温度が高めなのがややネックでしたが、そこが改善されたのは嬉しいです。マルチスレッド性能特化かつ温度も出来るだけ低く保ちたい場合には、非常に有力です。

しかし、ゲーム時の温度に関しては大きな改善は見られなかったのは残念です。こちらは前世代でもCoreに対して不利という訳でもなかったので、大きなネックになる訳ではないものの、改善されていたら電力面の印象をより引き上げることができたと思います。

まとめ

ざっくりと各性能を見てきました。最後に評価をまとめています。

Ryzen 9 9950X

良い点
  • 16コア32スレッドによる圧倒的なマルチスレッド性能
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 優れたマルチスレッド電力効率
  • 性能の割には低めの温度(14900Kより一段低い)
  • 小型コアを含まないため、コア割り当てや最適化などでの不具合がCoreより起きにくい
  • 内蔵GPUあり(性能は低い)
  • 既存の600シリーズチップセットマザーボードで利用可能(BIOS更新が必要になる可能性はあるので注意)

気になる点
  • ゲーム性能が前世代のX3Dモデルや第13,14世代CoreのK付きに劣る
  • ゲーム時の電力効率が前世代のX3Dに劣る
  • 非常に高価(649ドル)
  • 消費電力・発熱が非常に多く、水冷推奨(~220W)

Ryzen 9 9900X

良い点
  • 12コア24スレッドによる非常に優れたマルチスレッド性能
  • 優れたシングルスレッド性能
  • 優れたマルチスレッド電力効率
  • 高負荷時に性能の割に低温(マルチスレッド時に14700Kより約-8℃)で、水冷が必須レベルではない
  • 小型コアを含まないため、コア割り当てや最適化などでの不具合がCoreより起きにくい
  • 内蔵GPUあり(性能は低い)
  • 既存の600シリーズチップセットマザーボードで利用可能(BIOS更新が必要になる可能性はあるので注意)

気になる点
  • ゲーム性能が前世代のX3Dモデルや第13,14世代CoreのK付きに劣る
  • ゲーム時の電力効率が前世代のX3Dに劣る
  • 高価(499ドル)
  • 空冷クーラー運用の場合、大型で高性能なものが必要

Ryzen 9 9950X:少し強化された7950X。7950X3D以下の価格にならないと有力にはならないかも

「Ryzen 9 9950X」は少しだけ強化された「Ryzen 9 9950」という印象です。新アーキテクチャのZen 5採用ですが、やはり新世代感はあまりなく、Zen 4+(リフレッシュ版)と言った方がしっくりくるレベルです。

まず性能から見ていくと、先代(7950X)からの性能向上率は、マルチスレッド性能は約+7.6%、シングルスレッド性能は約+11.3%、ゲーム性能(フルHD)は約+1.7%となっています。

マルチスレッド性能はCore i9-14900Kを抜き、消費者向けCPUとしてはトップに立ったものの、その差は小さいので実用性は大差ないレベルですし、各種性能の向上率はアーキテクチャ刷新を伴う新世代にしては小さいです。

特に痛かったのは、やはり注目度の高いゲーム性能です。依然として「Ryzen 7 7800X3D」には少し差を付けられて届いていませんし、7950X3Dにもやや負けています。

それだけでなく、ゲーム時の電力効率も7800X3Dや7950X3Dには大きく負けており、ゲーム用のCPUとしては強みをあまり感じることができませんでした。

唯一に近い先代よりも大幅に良かった点としては、消費電力が減り、温度が大幅に改善した点があります。

特にマルチスレッド処理時には大きな改善が見られており、レンダリングテスト時に先代の7950Xでは260Wだったのが220Wまで低下し、温度も先代はハイエンド空冷で92℃だったのが、81.6℃まで低下しており、大幅な改善が見られます。

これはCore i9-14900Kよりも大幅に良い数値であり、最近の高消費電力のハイエンドCPUの中では比較的少なめの消費電力かつ低温です。そのため、高負荷なマルチスレッド処理で常用化する場合には嬉しいCPUにはなっていると思います。

しかし、「Ryzen 9 7950X3D」と比べると電力や温度面でもそこまで良くないのが割と致命的かなと思います。マルチスレッド性能こそ優位なものの、優位性は+10%程度に留まっており、7950X3Dでも非常に高性能で実用性に大きな差はないと思います。そのため、ゲームをメイン用途とするなら7950X3Dの方が魅力的です。

なので、9950Xは価格が7950X3Dと同等以下にならない限りは、ほとんどの人にとって最有力の選択肢となることはあまり無さそうな印象です。

日本での価格はまだ判明していませんが、希望小売価格では7950Xの登場時よりも50ドル安い649ドルに設定されています。9700Xと9600Xの設定価格を見ると、発売時の価格は12万円を超えそうな気配もありますが、1ドル160円の頃よりも円高傾向に転じている状況があるので、発売後に待てば値下げされると思います。

ただし、それ込みでも現状9万円ちょっとから購入できる7950X3Dレベルに安くなるにはかなりの時間が必要になりそうなので、現状は市場全体に大きな影響を与えるCPUでは無さそうに思います。

Ryzen 9 9900X:少し強化された7900Xだけど、温度の大幅改善が嬉しい

「Ryzen 9 9900X」は少し強化された「Ryzen 9 7900X」という印象です。基本的な印象は9950Xと同じ感じです。新世代感はあまりなく、Zen 4+といった印象です。ただし、温度の大幅改善が嬉しいです(後述)。

まず性能から見ていくと、先代(7900X)からの性能向上率は、マルチスレッド性能は約+9.7%、シングルスレッド性能は約+12.3%、ゲーム性能(フルHD)は約+1.7%となっています。各種性能の向上率はアーキテクチャ刷新を伴う新世代にしては小さいです。

しかも、マルチスレッド性能でトップクラス9950Xと違い、競合の14700Kよりも低いマルチスレッド性能なのに高価なので、更に厳しい立ち位置です。

そしてやはり痛いのが、注目度の高いゲーム性能の向上率が微妙だった点です。依然として7800X3Dや7950X3Dに負けています。

例によって、ゲーム性能だけでなくゲーム時の効率でも前世代のX3Dモデルに大幅に負けており、ゲーム用CPUとしては強みはあまり感じないです。

9950Xと同様に、唯一に近い先代よりも大幅に良かった点としては、消費電力が減り、温度が大幅に改善した点があります。しかも、9900XはTDPが低下したこともあってか、9950X以上に優れた電力面の数値を示しています。

レンダリングテスト時には、先代の7900Xではハイエンド空冷で91.6℃だったのが、71.0℃まで低下しており、劇的な改善を見せています。14700Kに迫るマルチスレッド性能を発揮しつつこの温度は素晴らしいです。

空冷運用もなんとか可能なレベルですし、前世代の「Ryzen 9 7900」が非常に優れたマルチスレッド性能を示していたことから、電力設定を調整すれば全CPU中トップのマルチスレッド効率を示す可能性も感じるくらいには、非常に良好な電力面の結果を見せてくれています。

しかし、先に述べた通り、電力面でもゲームに関しては7800X3Dや7950X3Dには効率で負けているのが、評価の難しいところです。

ゲームの性能や効率を妥協するなら、前世代の7900の方が安くて良いじゃんという話になっちゃいそうですし、7900X3Dという選択肢もあって、ゲーム重視なら恐らくそちらの方が魅力的に感じる人が多いと思うので、やはり市場全体で大きな意味を持つCPUには見えないです。

総評:やはり新世代という感じはなく、ゲーム重視ならX3Dの登場を待つか、既存のX3Dを選ぶ方が良さそう

先に触れた9600Xや9700Xの性能も踏まえて、やはりZen 5は新世代として突出した性能を持つようには正直見えないです。

マルチスレッド性能は先代から10%以下の小さい向上率です。実用性は大きく変わりません。そして、重視する人の多いゲーム性能がフルHD平均で2%程度しか向上していないのが特に致命的です。

シングルスレッド性能は10%以上の大きめの向上も見られたものの、正直ゲーム性能で恩恵が無いなら魅力を感じる人は少ないと思います。IPCが16%向上したという発表があり、確かにシングルスレッド性能は向上が見えた上でゲーム性能は微増レベルだったので、現状は「ゲーム性能を大きく伸ばすにはキャッシュ容量を増やすことは必要不可欠」なのかもしれないと感じさせてくれる結果になっています。

温度や電力面では改善している様子も見受けられ、第13,14世代Coreよりは優位な結果があったのは褒めるべき点ですが、効率に関しては劇的というほどの改善は見られなかった上、ゲーム時の効率に関しては7950X3Dや7800X3Dに負けていますから、ゲームメインのユーザーに関しては電力面でも魅力はほぼないというのが厳しいところです。

価格は下がるかもしれない要素が多めにあるものの、今の7000シリーズ並みになるにはまだ時間が掛かりそうですし、今買う理由は多くないかなと思います。

新しいアーキテクチャをとにかく試したい人を除いて、現状の9600X~9950Xを選ぶ理由を探すとするなら、「ゲーム面は少し妥協しても良いから、高負荷なマルチスレッド処理時の効率と温度に特化したい」という場合に限られるのではないかと思います。

そのため、ゲームをメイン用途とするユーザーは、既存の7000シリーズのX3Dモデルを選択するか、9000シリーズのX3Dモデルの登場を待つか、Coreの次世代を待つのが賢明になるのかなと思います。

3 COMMENTS

青空かりん

予想という願望だけど今回のはX3Dまでの前座だと思う。4nmの微細化による低発熱化によってX3Dの前モデルよりはクロックが多少上がるだろうし見た感じ9000シリーズも7000シリーズよりもゲーミング性能強そうだから(低発熱+低電力な上に)

返信する
とねりん:管理人

出てみないことにはわからないですが、この感じだとX3Dも大きな向上となる可能性は大きくは感じられないのが本音ですね。
どちらかというと気になるのは価格ですが、為替の変動もあって予想も難しいですし、CPU(Compute Tile)にTSMC 3nmを採用すると見られているCoreの次世代(Arrow Lake)の性能と価格も気になるところですから、最終的な評価はその辺りが落ち着いてからになるかなとは思います。

返信する
とねりん:管理人

追記:
どうやら、現在出ているレビューの性能はAMDが想定していたものよりも低かったようです。
詳しくは後に載せる参考ページ(海外サイトですが、AMD公式の投稿)を見ていただければと思いますが、Windows 11 24H2 からZen3~Zen5のパフォーマンスが少し改善するらしいです。

返信する

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